光通信ネットワークの高速化、大容量化が進み、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)伝送信号の処理に代表されるような光信号処理装置へのニーズも高まっている。例えば、多重化された光信号をノード間で経路切り替えする機能が要請されている。光−電気変換を経ないで、光信号のまま経路変換を行なうことで、光信号処理装置の高速化が進められている。
一方、信号処理装置の小型化・集積化の点から、導波路型光回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)の開発研究が進めれている。PLCでは、例えばシリコン基板上に石英ガラスを材料としたコアを形成して1つのチップに多様な機能を集積し、低損失で信頼性の高い光機能デバイスが実現されている。さらには、複数のPLCチップと他の光機能部品を組み合わせた複合的な光信号処理部品(装置)も登場している。
例えば、特許文献1には、AWGなどを含む導波路型光回路(PLC)と液晶素子などの空間変調素子を組み合わせた、光信号処理装置が開示されている。より具体的には、液晶素子を中心として対称に配置されたPLC、コリメートレンズからなる波長ブロッカをはじめ、波長イコライザ、分散補償器などの検討が進められている。これらの光信号処理装置では、異なる波長を持つ複数の光信号に対して、波長毎に独立して光信号処理を行う。
図8は、光信号処理装置の一例を概念図で示したものである。この光信号処理装置では、分光素子51を経由して光信号が入出力される。分光素子51は、異なる波長を持つ複数の光信号を、その波長に応じた出射角度θで分波する。分波された光信号は、集光レンズ52へ向かって出射する。集光レンズ52によって集光された光信号は、出射角度θに対応して、強度変調、位相変調または偏向する機能を持つ信号処理素子53の所定の位置の各集光点に集光される。すなわち、入力光信号の波長に応じて、光信号は信号処理素子の異なる位置に集光されることに留意をされたい。信号処理素子53は、例えば複数の要素素子(ピクセル)からなる液晶素子などである。各要素素子の透過率などの制御によって、各波長の光信号は強度変調などを受け、所定の信号処理機能が実現される。信号処理を受けた光信号は、ミラー54で反射されて進行方向を反転させる。光信号はさらに集光レンズ52を通って、再び分光素子51において合波される。一般によく知られているように、分光素子51は、進行方向によって光信号を合波することもできる。合波された各波長の光信号は、再び出力光として、光信号処理装置外へ出力される。
図8において、分光素子51は概念的に示したものであり、光信号の波長に応じて分波および合波をできるものであれば良い。例えば、分光素子には、グレーティング、プリズム、アレイ導波路回折格子(AWG:Arrayed Waveguide Grating)などがある。信号処理素子は、光信号の強度もしくは位相、または強度および位相を変調できるもの、または光信号の進行方向を偏向できるものであれば良い。例えば、信号処理素子には、液晶素子、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー、非線形結晶などがある。
図8に示した光信号処理装置は、ミラーを使用して光信号を折り返すことで、1つの分光素子によって光信号の分波および合波の両方を行なう構成である。この構成は、一般に反射型と呼ばれている。波長ブロック等の光信号処理を行なう装置は、この構成だけに限られない。例えば、図8のミラーを使用せずに、信号処理素子を対称軸の位置とし、入射光路軸の延長線上であって入射系の反対側に、もう1つのレンズおよび分光素子からなる出射系を配置した構成も可能である。この構成は、独立した入射系および出射系を経由して、それぞれ光信号の分波および合波を行なう構成であり、透過型と呼ばれている。さらに、図8の装置構成において、ミラーの向きを変えることによって、任意の位置に配置された、もう一つのレンズおよび分光素子からなる出射系によって光信号の合波を行う構成も可能である。例えば、ミラーの反射面を光信号の入射光路に対して45度傾けて、入射光路に対して垂直方向に配置されたレンズおよび分光素子により出射系を構成することも可能である。また、信号処理素子が偏向機能を持つ場合は、出射系を複数備えることもできる。
図8において、分光素子51と集光レンズ52とは、前焦点距離FFLだけ離して配置され、信号処理素子53と集光レンズ52とは後焦点距離BFLだけ離して配置される。集光レンズ52によって集光される光の焦点は、使用するすべての波長においてミラー54の面上になくてはならない。ミラー面上からずれると、入出力光間の結合損失を生じる問題が起こる。同時に、集光された光信号のビームスポット径が大きくなることから、波長分解能が低下する問題が生じる。
また、信号処理素子53は、光信号の波長ごとに選択的に変調を行なうために、空間的に周期的な構造を備えている必要がある。例えば、信号処理素子53が液晶素子の場合、液晶素子の要素素子の構造は、分光素子および集光レンズの光学特性に合わせて設計されなければならない。
より具体的には、信号処理素子上における集光位置の波長依存性は、分光素子の角度分散値に集光レンズの焦点距離を乗じたものに従うことが知られている。集光位置の波長依存性は、分光光学系の線分散値とも呼ばれる。分光素子および集光レンズによって決定される光学系の線分散値は、信号処理素子の構造の設計に用いた線分散値と、十分に一致している必要がある。これらの線分散値の間にずれがあれば、光信号の実際の集光点位置は信号処理素子の個々の要素素子(例えば、液晶シャッター素子のピクセル)の位置と一致しなくなる。この不一致のため、処理される光信号の波長誤差が生じる。
特開2002−250828号公報(第16頁、19頁、第20図、第27図、第29D図など)
特開2004−239991号公報
特表2003−036345号公報
米国特許第6、714、743号明細書
C. R. Doerr, et al., IEEE Photon. Technol. Lett., vol. 12, spp. 1195-1197, 2000.
しかしながら、従来の光信号処理装置では、分光素子が持つ分波特性に偏波依存性の問題があった。例えば、分光素子のAWGにおいては、AWG内を伝播する光信号がTEモードかTMモードかによって、分波特性が異なる。PLC構成によって実現されるAWGの導波路基板としては、シリコンウェハが用いられる。シリコンウェハの上に形成する導波路材料には石英系ガラスが用いられている。導波路基板のシリコンと導波路材料の石英系ガラスとの間には熱膨張差があり、製造時に高温から室温に冷却する過程で内部残留応力が発生する。この結果、アレイ導波路内に応力による0.0002程度の導波路複屈折が生じる。この導波路複屈折は、基板と垂直な電界を有するTMモードの透過中心波長を、基板に平行な電界を有するTEモードの透過中心波長に比べて、長波長側にシフトさせる。すなわち、偏波依存性によって、透過中心波長の波長シフトが生じる(特許文献3を参照)。
図8で示した光信号処理装置は、空間変調素子を組み合わせた光学系を含んでいる。このために、上述の偏波依存性は、異なる偏波間での分光素子からの出射角度の差として現れる。より具体的には、光信号処理装置が処理を行なう通信帯域の中心波長において、AWG端から出射されるTEモードの光信号の出射角度θTEとTMモードの光信号の出射角度θTMとの差異PDθ(Polization Dependent θ)として、次式で定義することができる。
PDθ=θTE― θTM 式(1)
図8を再び参照すると、上述のPDθに起因して、同じ波長の光信号であるにもかかわらず、偏波によって信号処理素子上の異なる位置に集光する。すなわち、同じ波長の光信号であるのに、TMモードの光信号成分とTMモードの光信号成分とは、それぞれ異なる位置に集光する。以下、このPDθの問題について、さらに詳細に説明する。
図9は、PDθにより生じる問題をより詳細に説明する図である。図9は、透過型の光信号処理装置の構成と動作を示している。信号処理素子は、所定の偏波の光信号に対して変調作用を及ぼすことができる素子をいう。このような信号処理素子には、例えば、液晶素子、非線形光学結晶などがある。ここで液晶素子について、所定の偏光状態であるTMモードの光信号に対してのみ強度変調を行なう必要がある場合を考える。図9aは、AWGによる分光平面を垂直に見た上面図である。z軸は、光信号の進行方向の軸であり、x軸は、レンズ面と平行で光学系の主光路軸に垂直な軸である。図9bは、側面図であり、y軸はAWGの厚み方向である。見やすくするために、y軸方向は拡大して表示されていることに注意されたい。
図9に示した光信号処理装置は、第1のAWG61、第1のAWG61の出射端に配置され光信号を平行光にするシリンドリカルレンズ62、シリンドリカルレンズ62からの出射光を偏波成分別に分離する偏波分離素子63、分離された一方の偏波成分の光信号の偏波状態を回転させる偏波回転素子64を含む。偏波分離素子63により、第1のAWG61からの出射光は、TEモード成分を起源とする光路72およびTMモード成分を起源とする光路73に分離される。
偏波成分別に分離された各々の光信号は、第1の集光レンズ65により集光され、信号処理素子66により変調を受ける。さらに、信号処理素子66を透過した光信号は第2の集光レンズ67によりコリメートされる。コリメートされた光信号のうち、光路73の光信号は、第2の偏波回転素子68を経て、第2の偏波分離素子69、さらに第2のシリンドリカルレンズを進み、第2のAWG71の入射端に入力される。一方、光路72の光信号は、第2の偏波回転素子68を経由せずに、第2のAWG71に入力されることに留意されたい。図9bの側面図によれば、偏波分離素子63、69および偏波回転素子64、68は、光路72および光路73の光信号がそれぞれ1回だけ偏波変換されるようなy軸方向の位置関係で配置されている。また、本光信号処理装置の空間光学系は、信号処理素子66を中心として、左右対称に構成されている。
上述の構成の光信号処理装置においては、偏波分離素子63、69によって、光信号を偏波成分別に分離するとともに、偏波回転素子64、68によってTEモード光信号をTMモード光信号に変換している。光信号の一部の偏波成分を変換し、光信号をTMモード成分のみからなる光信号へ変換することによって、信号処理素子66は所定の偏波(TMモード)の光信号に対して変調作用を及ぼすことができる。このように偏波成分ごとに異なる光路を形成して信号処理を行なう光学系構成を、偏光分離構造とも呼ぶ。
図9における光路72の光信号は、第1のAWG61の端面(z1点)から出射するTEモード光である。z1点では、TEモードの光信号が出射する光路72とTMモードの光信号が出射する光路73との間で、各光信号の出射角度にPDθの差異があることに注目されたい。光路72のTEモード光信号は、偏波回転素子64を通ると、z2点からは破線で表されたTMモードの光信号に変換されて、TMモードの光信号として第2のAWG71の入射端(z4点)に入射する。一方、光路73の光信号は、偏波分離素子62によってy軸方向に分離されるが、x−z面内では、集光レンズ65(z3点)まで直進する。すなわち、PDθの出射角度差を維持したまま、集光レンズ65に入射する。
しかしながら、このような偏光分離構造を持つ光学系構成においては、次の問題点がある。第1の問題点は、図9aよりわかるように、2つの光路72、73を進む光信号が、それぞれ信号処理素子66上の異なる位置x1、x2に集光していることである。本信号処理装置では、光信号の波長に応じて、信号処理素子66のx軸方向に配列された複数の異なるピクセルの位置にそれぞれ光信号が集光されることで、波長選択的に信号処理を行なわれる。光路72および光路73は共に同一波長の光信号の光路であるので、信号処理素子66の同一点に集光する必要がある。しかし、PDθのために、信号処理素子66の異なる位置x1、x2にそれぞれ集光することと成る。これは、集光点が大きく広がってしまうの同じである。したがって、信号処理素子による変調機能の精度は低下し、光信号処理装置の信号処理の波長分解能を低下させてしまう。
第2の問題点は、光路72を進む光信号が、z1点でTEモード光信号としてAWGから出射したにもかかわらず、z4点ではTMモード光信号として「TEモードの入射角」でAWGへ入射することである。第2のAWG71への入射角度(出射角度)にPDθの不整合があるため、光路72の光信号は、PDθに起因する光結合損失が発生する。同様に、光路73を進む光信号は、z1点でTMモード光信号としてAWGから出射したにもかかわらず、z4点ではTEモード光信号として「TMモードの入射角」でAWGへ入射する。したがって、光路73の光信号についても同様に、PDθに起因する光結合損失が発生する。この第2の問題は、反射型の構成の光信号処理装置においても生じる。
従来、上述のAWG偏波依存性(複屈折)に起因するPDθの問題点を解決するために、PDθを補償する方法が検討されてきた。例えば、非特許文献1、特許文献3、特許文献4のような技術があった。
図10は、偏波ダイバーシティを用いた第1の従来技術の光信号処理装置の構成を示す図である。詳細は、非特許文献1に開示されている。詳細は述べないが、非特許文献1には、光信号処理装置の外部に構成部品を備え、TMモードの光信号だけで装置を動作させることにより、AWGにおいて発生する偏波依存性を回避する技術が開示されている。図10には、透過型構成の光信号処理装置が記載されており、図9と同じ要素には同じ符号がつけられている。相違点について説明すれば、光信号処理装置の外部に、サーキュレータ74、偏波スプリッタ75、および偏波保持ファイバー76a、76bを設けているところに特徴がある。光信号は、サーキュレータ74の2つの端子から入力し出力する。
この構成によれば、光信号処理装置内の光学系ではTMモードの光信号(片偏波)のみで動作しているので、AWG等の偏波依存性の影響を受けない。しかし、光信号処理装置の外部に追加的な構成部品が必要となり構成は複雑であり、コスト高となる。さらには、原理的に反射型の構成の光信号処理装置に適応できないという大きな欠点を持つ。反射型に装置を構成できないため、構成要素は反射型構成の装置の2倍の数だけ必要となる。また、図10に示した構成は、複数の出射系を備える装置にも適用できない。
図11は、AWGの偏波依存性を改善した第2の従来技術の光信号処理装置の構成図である。詳細は、特許文献3に開示されている。構成は、図9に示した光信号処理装置とほとんど同一の偏光分離構造なので、説明は省略する。図11aは、上面図であり、図11bは側面図である。図11bより、光信号の経路をTEモードとTMモードとに分ける偏光分離構造であることがわかる。
図9に示した光信号処理装置の構成との相違点は、各AWG61、71上にそれぞれλ/2板80、81を備えていることである。AWG上にλ/2板80、81を形成することによって、それぞれのAWG61、71自体の偏波依存性を解消する。PDθ=0とすることにより、図11aにおいてAWGの分光平面を含む面内(x−z面)では、空間光学系におけるTEモード光信号の光路77bとTMモード光信号の光路77aとは完全に一致する。したがって、信号処理素子上の集光点は、x軸上で偏波モードに関係なく一点x0に重なり、光信信号処理装置の波長分解能は低下しない。しかしながら、AWG61、71の光導波路の中点にそれぞれλ/2板80、81を形成する必要がある。このため、AWG自体の製作に複雑なプロセスを必要とし、製造コストも増える。さらには、λ/2板80、81をアレイ導波路の途中に挿入する構造であるため、AWGにおいて発生する過剰損失が増加する。
以上述べたように、単一の偏波モード光信号に対して信号処理素子を用いて信号処理を行なう場合、従来の構成の光信号処理装置においてPDθを補償する方法は、複雑で高価であった。偏波ダイバーシティを使用する方法は、装置構成が複雑であり、反射型の構成もしくは複数の出射系を備える装置構成を実現できない問題点があった。さらに、AWG内にλ/2板を形成する方法では、AWG自体の製造の困難さや製造コストの増加、さらには過剰損失の増加の問題点があった。
より簡単で低コストにPDθを補償した光信号処理装置が望まれている。
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、光信号を分光して異なる波長の複数の光信号に分離して、各波長の光信号に対して信号処理を行なう光信号処理装置であって、光信号の波長に応じた出射角度で、異なる波長を有する複数の光信号に分光する分光手段と、前記分光手段からの出射光を異なる2つの偏波モード成分の光信号に分離する偏波分離手段と、前記偏波分離手段から分離され第1の光路を進む第1の偏波モード成分の光信号の光路を屈折させて、前記偏波分離手段から分離され第2光路を進む第2の偏波モード成分の光信号の光路と、屈折後の前記第1の光路とを平行にする光路屈折手段と、前記第1の光路の光信号および前記第2の光路の光信号を集光させる集光手段と、前記集光された光信号を変調する信号処理手段とを備えていることを特徴とする光信号処理装置である。
請求項2の発明は、光信号を分光して異なる波長の複数の光信号に分離して、各波長の光信号に対して信号処理を行なう光信号処理装置であって、光信号の波長に応じた出射角度で、異なる波長を有する複数の光信号に分光する分光手段と、前記分光手段からの出射光を異なる2つの偏波モード成分の光信号に分離する偏波分離手段と、前記偏波分離手段から分離され第1の光路を進む第1の偏波モード成分の光信号と前記偏波分離手段から分離され第2の光路を進む第2の偏波モード成分の光信号とを集光させる集光手段と、前記集光手段を通過した前記第1の偏波モード成分の光信号の前記第1の光路を屈折させて、前記分光手段により分光される光信号の光路で形成される分光面内において、屈折後の前記第1の光路と前記第2の光路とを一致させる光路屈折手段と、前記光路屈折手段により屈折された前記第1の光路を進む光信号ならびに前記第2の光路を進む光信号を変調する信号処理手段とを備えることを特徴とする光信号処理装置である。
請求項3の発明は、請求項2に記載の光信号処理装置であって、前記集光手段を通過した前記第2の光路の光信号に対して、前記光路屈折手段に起因する光軸方向の焦点位置の変動を相殺する焦点距離調整手段をさらに備えることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項2または3いずれかに記載の光信号処理装置であって、前記光路屈折手段は、平行ガラス板であることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項2または3いずれかに記載の光信号処理装置であって、前記光路屈折手段および前記焦点距離調整手段は、それぞれ平行ガラス板であり、2つの平行ガラス板の相対角度を調整することにより前記第1の光路の集光点と前記第2の光路の光信号の集光点とを前記分光面内において一致させることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の光信号処理装置であって、前記集光手段は、前記分光手段の前記分光面を含む面ならびに前記偏波分離手段が偏波分離する前記第1の光路および前記第2の光路を含む面にレンズ作用を持つレンズであることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の光信号処理装置であって、前記集光手段は、前記分光手段の分光面を含む面にレンズ作用を持つシリンドリカルレンズであることを特徴とする。
請求項8の発明は、光信号を分光して異なる波長の複数の光信号に分離して、各波長の光信号に対して信号処理を行なう光信号処理装置であって、光信号の波長に応じた出射角度で、異なる波長を有する複数の光信号に分光する分光手段と、前記分光手段からの出射光を異なる2つの偏波モード成分の光信号に分離する偏波分離手段と、前記偏波分離手段から分離され、第1の光路を進む第1の偏波モード成分の光信号ならびに前記偏波分離手段から分離され、第2の光路を進む第2の偏波モード成分の光信号を、前記分光手段の分光面に平行な面内のみで集光させる集光手段と、前記集光された光信号を変調する信号処理手段であって、第1の分光線上に配列され、前記第1の光路の光信号を変調する複数の第1の変調素子と、第2の分光線上に配列され、前記第2の光路の光信号を変調する複数の第2の変調素子とを含み、前記第1の変調素子および前記第2の変調素子は、分光線方向に所定のオフセット距離だけずれて配置され、前記第1の変調素子および対応する前記第2の変調素子は同期して変調されることとを備えることを特徴とする光信号処理装置である。
請求項9の発明は、請求項8に記載の光信号処理装置であって、前記第1の変調素子を電気的に駆動する手段と対応する前記第2の変調素子を電気的に駆動手段はそれぞれ接続されていることを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の光信号処理装置であって、前記信号処理手段は、液晶素子、非線形光学素子ならびにMEMSミラーのうちのいずれかであることを特徴とする。
請求項11の発明は、請求項1乃至10のいずれかに記載の光信号処理装置であって、前記信号処理手段を通過する光信号を反射する反射手段をさらに備えることを特徴とする。
請求項12の発明は、請求項1乃至11のいずれかに記載の光信号処理装置であって、前記分光手段は、AWGであることを特徴とする。
以上説明したように、本発明によれば、偏光分離構造を持つ光信号処理装置の空間光学系において、安価な光学素子を用いてAWGにおける偏波依存性を解消し、光結合損失を減らすことができる。光信号処理の波長分解能を低下させることなく、PDθの補償が可能となる。AWGの製作に複雑な追加工程が不要なため低コストを実現し、過剰損失も極めて少ない。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明に係る光信号処理装置の1つの態様では、偏光分離構造の光学系において、偏光分離した光路途中に安価で簡単な構造の光学素子を配置することによって、所定の偏波の光路を進む光信号に対して、分光素子からの出射角度または集光点を調整することを特徴とする。さらに、本発明に係る別の態様では、信号処理素子のピクセル構造を分光素子の偏波依存性に応じて変形させることに特徴がある。いずれも、AWG等における複屈折に起因する分波特性の偏波依存性(PDθ)を補償し、光信号処理装置の偏波依存性の問題を解決する点で共通する。以下、異なる着目点に基づくPDθ補償の解消手段を用いた各実施形態についてそれぞれ説明する。
第1の実施形態は、2つの偏波モードの出射光の出射角度を補償する実施形態である。すなわち、偏波モード間で集光レンズへの入射角度を揃えることにより、信号処理素子上の集光点を一致させることを特徴とする。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光信号処理装置の構成図である。本装置では、信号処理素子が、単一の偏波状態の光信号に対して変調機能を発揮できるものであるとする。したがって、基本的な構成は、偏波モード別に光信号を分離して信号処理を行なう偏光分離構造である。図1aは、AWGによる分光平面を垂直に見た上面図である。z軸は、光信号の進行方向であり、x軸は、集光レンズのレンズ面と平行で光学系の主光路に垂直な軸である。図1bは、側面図であり、y軸はAWGの厚み方向である。見やすいように、y軸方向は拡大して表示している。図1は、透過型の構成を示しているが、反射型の構成も可能である点で従来技術と異なる。また、本発明の光信号処理装置においては、AWGには、従来技術2に示したような複雑で高価なλ/2板挿入構造を必要としない。
本発明の光信号処理装置は、信号処理素子7の位置を対称軸として、入射光学系および出射光学系が左右対称に配置された構成となっている。光信号は、第1のAWG1の出射端(z1)から、波長に応じた出射角度でシリンドリカルレンズ2へ向かって出射される。ここで、同一波長であっても、偏波モードによって出射角度が異なる。図1では、TEモードの光信号成分の光路14およびTMモードの光信号成分の光路15は、PDθの出射角度差を持っていることに注意されたい。
シリンドリカルレンズ2によって平行光とされた光信号は、偏波成分別に分離する偏波分離素子3によって、y軸方向に分離される。光路14で示されるTEモードの光信号は、偏波回転素子5によって、z2点からTMモードの光信号に変換される。TMモードに変換された光信号は集光レンズ6で集光されて、信号処理素子7によって所定の変調を受け、さらに出射光学系へ進む。
本発明は、偏波分離素子3によって分離された光路15で示されるTMモードの光信号の進行方向を、ウエッジ板4によって角度補正をする点に特徴がある。すなわち、偏光分離素子3と集光レンズ6との間の光路中にウエッジ板4を配置することによって、z2―z3区間においては、光路14と光路15とがx−z面内で平行となる。したがって、平行とされた光路14および光路15を進む各信号光は、信号処理素子7上におけるx軸上の一点に集光する。
また、図9とともに説明したPDθに起因する光結合損失の第2の問題点も、本発明の特徴的な構成により解決される。例えば、光路14について考える。TEモードの光信号がz1点で出射すると、偏波回転素子5によりz2点でTMモードの光信号に変換される。変換された光信号は、信号処理素子7で変調を受けた後に、出射光学系の第2の集光レンズ8を経て、第2のウエッジ板9に入射される。第2のウエッジ板9によって、第2のAWG13への入射角度が調整される。すなわち、光路14を進む光信号は、TMモードの光信号として、「TMモード」の入射角度で第2のAWG13に入射する。偏波モードと入射角度が一致しているので、図9の構成の場合と異なり、光結合損失は全く発生しない。光路15を進む光信号についても同様である。
上述のように、本発明の構成は、信号処理素子7を中心として左右対称の構成であるため、反射型の光信号処理装置を構成しても、同様に動作することは明らかである。したがって、従来技術1と比較して、装置構成はより簡単にすることができる。本発明の構成は、透過型構成、反射型構成ならびに複数の出射系を備える構成などにかかわらず適用できる。また、従来技術2のように製作プロセスが複雑で高価なλ/2板を挿入したAWGを必要としない。ウエッジ板は、無偏光性の安価なガラスで構成できるため、従来技術と比較して、格段に簡易で安価な構成を実現できる。PLC部品との親和性も高い。
PDθは、AWGの分光素子としての角度分散値をDa、TEモードとTMモード間の分光波長差をPDλとすると、下式によって求めることができる。
PDθ=Da・PDλ 式(2)
一方、ウエッジ板を挿入することによる偏向角の最小値δmは、ウエッジ板の材料の屈折率をn、ウエッジ角度をαとすると、下式で表される関係によって求めることができる。
n・sin(α/2)=sin(δm/2+α/2) 式(3)
上記の2つの式の関係を用いて、PDθ=δmを満たすαを求めて、ウエッジ角がαであるウエッジ板を挿入することで、偏波依存性を補償することができる。
具体的には、典型的なAWGとして、PDλを0.2nm、Daを0.14度/nmとし、ウエッジ板を安価なガラス(屈折率n=1.5)によって作製した場合、PDθは0.028度となる。この時、ウエッジ角度を0.056度とすることによって、このPDθの補償が可能である。
図1に示した構成では、y軸方向で上方に、偏波回転素子5に接してウエッジ板4を配置しているが、これに限定されない。すなわちz軸上の位置に関しては、ウエッジ板4は、偏波分離素子3と集光レンズ6との中間のいずれの場所に配置されていても、同様な効果が得られるのは言うまでも無い。偏光分離素子3で分離された2つの光路を、集光レンズに入射する前に平行とすることができれば、ウエッジ板4はどのような配置も可能である。また、ウエッジ板4の向きを調整することで、焦点位置の微調整も可能である。
以上に述べたように、偏光分離構造の光信号処理装置において、空間光学系にウエッジ板を配置することで、簡単にAWGなどによる偏波依存性の問題を解消できる。図1に示した構成は、様々に変形が可能である。
図2は、本発明の第1の実施形態の別の例を示す構成図である。図1の構成と比較すると、集光レンズがシリンドリカルレンズである点で相違する。入射光学系にシリンドリカルレンズ21を、出射光学系にシリンドリカルレンズ22を、それぞれ配置している。この構成では、図2bに示されているように、偏光分離素子3によって、信号処理素子7上のy軸方向においてTMモードの出射光の光路24とTEモードの出射光の光路23とに分離する。したがって、信号処理素子7上の各ピクセルをy軸方向に長い形状とするだけで、図1の構成と同様な光信号処理機能が実現できる。
上述の図1および図2にそれぞれ示した実施形態は、偏波分離後であって集光レンズの前の位置で、各偏波の光信号の光路の集光レンズへ入射角度を補償するものであった。しかし、本発明はこれに限られず、異なる視点からの補償が可能である。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る光信号処理装置の構成図である。第2の実施形態は、2つの偏波モードの出射光を集光レンズを通過した後で補償する実施形態である。集光レンズを通過した後で、信号処理素子上における集光点の位置を直接調整することを特徴とする。信号処理素子は、単一の偏波状態の光信号に対して変調機能を発揮できるものであるとする。したがって、基本的な構成は、光信号を偏波モード別に分離して信号処理を行なう偏光分離構造である。
図3aは、AWGによる分光平面を垂直に見た上面図である。z軸は、光信号の進行方向であり、x軸は、集光レンズのレンズ面と平行であって光学系の主光路z軸に垂直な軸である。図3bは、側面図であり、y軸はAWGの厚み方向である。見やすくするために、y軸方向は拡大して表示されている。図3は、透過型の構成を示しているが、反射型の構成も可能である点で従来技術と異なる。また、本発明の光信号処理装置では、AWGには、従来技術2に示したような複雑で高価なλ/2板挿入構造を必要としない。
本発明の第2の実施形態の光信号処理装置は、信号処理素子7の位置を対称軸として、入射光学系および出射光学系が左右対称に配置された構成となっている。第1のAWG1の出射端(z1)からは、光信号が波長に応じた出射角度でシリンドリカルレンズ2へ出射される。AWGの偏波依存性のため、同一波長であっても、偏波モードによって出射角度が異なる。図3では、TEモードの光信号成分の光路35およびTMモードの光信号成分の光路34は、PDθの出射角度差をもっていることに注意されたい。
図3に示した光信号処理装置は、図1に示した光信号処理装置と多くの構成要素が共通するので、相違点のみを説明する。図1と同一の要素には、同一の符号を付けてある。図3に示した構成においては、図1のウエッジ板の代わりに、集光レンズ6と信号処理素子7との間の光路中に、1組の平行ガラス板30、31を配置しているところに特徴がある。出射光学系にも、信号処理素子7と第2の集光レンズ8との間の光路中に、第2の1組の平行ガラス板32、33が配置されている。
図9に示した従来技術の偏光分離構造と比較すればわかるように、1組の平行ガラス板30、31のうち一方の平行ガラス板31の向きを集光レンズのレンズ面に対して傾けることで、信号処理素子7上における2つの異なる偏波モード光信号の集光点を一致させるよう調整している。他方の平行ガラス板30は、レンズ面に平行に配置する。
本実施形態では、偏波分離素子3によって分離された光路34で示されるTMモードの光信号について、平行ガラス板31によってその集光位置を調整する点に特徴がある。すなわち、信号処理素子7と集光レンズ6との間の光路中(z3―z5間)に平行ガラス板31配置することによって、光路34を進む光信号の集光点と光路35を進む光信号の集光点とを一致させている。本実施形態では、偏波分離素子5によってy軸方向に空間分離された2つの光路のうち、一方の光路を平行ガラス板によって平行移動させることによって、集光点を一致させることができることに留意されたい。
図3に示した構成では、光路35および光路34の両方に、それぞれ平行ガラス板30および平行ガラス板31を配置しているが、平行ガラス板30は集光レンズ6のレンズ面と平行に置かれており、光路35には何ら影響を与えていない。平行ガラス板30は、平行ガラス板31を挿入することによる焦点距離の変動などを補償する機能を持つ。したがって、本発明における信号処理素子上の集光点の位置調整という観点からは、平行ガラス板30は必須ではないことに注意すべきである。したがって、平行ガラス板31のみからなる構成であっても、PDθを補償する効果が得られる。さらに、図3に示した構成では、焦点補償用の平行ガラス板30は、集光レンズ6のレンズ面に平行であるとしたが、これに限定されない。平行ガラス板31と平行ガラス板30との相対角度を適切に設定すれば、信号処理素子7上で、集光点の位置を任意の一点に一致させることができることを理解されたい。
さらに、図3においては、光路35および光路34の途中で、それぞれ平行ガラス板30と平行ガラス板31をz軸上の同じ位置に、積み上げた構成としている。しかし、光路34および光路35中にそれぞれ安定に固定して配置できる限り、平行ガラス板30、31は、それぞれ、z3−z5間の異なる位置にあっても良い。
図9において説明したPDθに起因する光結合損失の第2の問題点も、第2の実施形態の構成により解決される。例えば、光路35について考える。TEモードの光信号がz1点で出射すると、偏波回転素子5によりz2点でTMモードの光信号に変換される。変換された光信号は、信号処理素子7で変調を受けた後に、出射光学系にある第2の1組の平行ガラス板のうちの平行ガラス板33によって光路を平行移動させられる。このため、第2のAWG13への入射角度はTMモードの入射角度に調整される。すなわち、光路35を進む光信号は、TMモードの光信号として、「TMモード」の入射角度で第2のAWG13に入射する。偏波モードと入射角度が一致しているので、図9の構成の場合と異なり、光結合損失は全く発生しない。光路34を進む光信号についても全く同様である。
上述のように、本実施形態の構成では、信号処理素子7を中心として左右対称の構成であるため、反射型の光信号処理装置としても、同様に動作することは明らかである。したがって、従来技術1と比較して、装置構成はより簡単であり、透過型、反射型、複数の出射系を備えたの構成などにかかわらず適用できる。また、従来技術2のように製作プロセスが複雑で高価なλ/2板をAWG上に構成する必要も無い。平行ガラス板は、無偏光性の安価なガラスで構成できるため、従来技術と比較して、格段に簡易で安価な構成を実現できる。PLC部品との親和性も高い。
TEモードとTMモード間の集光位置の差Δxは、集光レンズの焦点距離をfとした場合、次式によって求められる。
Δx=f・tan(PDθ) 式(4)
一方、平行板を挿入することによる光線の移動量δxは、平行板の材料の屈折率をn、厚さをT、傾き角をθとすると、次式によって求められる。
δx=T・sin(θ−sin-1(sin(θ)/n)) 式(5)
上記の2式の関係を用いて、δx=Δxを満たすθを求め、平行板をθ傾けて配置することによって、PDθの偏波依存性を補償することが出来る。
具体的には、典型的なAWGとして、PDθを0.028度、集光レンズの焦点距離fを50mmとした場合、補償が必要となる集光位置の差δxは0.024mmである。このとき、平行ガラス板の屈折率を1.5、厚みを1mm、2つの平行ガラス板の相対角度を4.2度とすることによって、PDθの補償が可能である。
以上に述べたように、偏光分離構造の光信号処理装置において、空間光学系に平行ガラス板を配置し、集光点を調整することで、簡単にAWGなどの偏波依存性の問題を解消できる。
図4は、本発明の第2の実施形態の別の例を示す構成図である。図3の構成と比較すると、集光レンズの変わりに、シリンドリカルレンズを使用している点で相違する。入射光学系にシリンドリカルレンズ21を、出射光学系にシリンドリカルレンズ22を、それぞれ配置している。この構成では、図4bに示されているように、偏光分離素子3によって、信号処理素子7上のy軸方向にTMモードの出射光の光路34とTEモードの出射光の光路35とに分離する。したがって、信号処理素子7の各ピクセルをy軸方向に長い形状とするだけで、図3に示した構成と同様な光信号処理機能を実現できる。
図5は、第2の実施形態を反射型の構成に適用した光信号処理装置の構成図である。図3に示した透過型の構成における出射光学系の構成要素を、信号処理素子7の位置で折り返した構成になっている。入射光は、ミラー36で反射されて、同一の光学系を逆方向に進み、AWG1に再び入射する。透過型の構成しか実現できなかった従来技術1と比較すれば、装置構成を大幅に簡素化できることがわかる。
これまで説明した各実施形態は、PDθに起因して、偏波モードによって信号処理素子上の集光点位置がずれるのを、空間光学系に配置した簡易な光学素子を利用して補償している。しかし、偏波モードによる集光点位置のズレを許容したままで、従来の問題点を解決することもできる。
図6は、本発明の第3の実施形態に係る光信号処理装置の構成図である。本実施形態の構成は、図4に示した構成において平行ガラス板30、31、32、33を除去したものと同一である。平行ガラス板が無いため、信号処理素子7上のx軸上で、集光点は偏波モードごとに分離している。AWG1からの出射光のうちTEモードの出射光成分は偏波回転素子5によりTMモードの光信号(破線)に変換され光路37を進む。AWG1からの出射光のうちTMモードの出射光成分は、PDθの出射角度差を持って出射し、偏波分離素子3により光路37とy軸上で距離dだけ離れた光路38を進む。
図6に示した構成では、平行ガラス板が無いので、信号処理素子7上においてx軸方向で、TEモードの光路37とTMモードの光路38には、Δxの差異がある。ここで、信号処理素子のピクセルパターンを、予め、TMモード光の集光点とTMモード光の集光点でPDθに対応する長さだけずらしておくことにより、波長分解能を低下させることなく信号処理が可能と成る。
図7は、第3の実施形態に係る光信号処理装置における信号処理素子のピクセルパターン形状を示す図である。図7は、信号処理素子のx−y面の集光部の形状を示している。すなわち、図6bにおいて、第2のAWG13から信号処理素子7を見たピクセルパターン形状図である。本実施形態において、信号処理素子は単一の偏波モードの光信号を変調できる信号処理素子を前提としている。例えば、液晶素子、非線形結晶などを含む。さらに本実施形態では、信号処理素子に、MEMSミラーを含むことに留意されたい。
代表的な信号処理素子である液晶素子は、個々のピクセル(要素素子)から構成されている。光信号は、AWGなどの分波作用により、波長ごとにx軸方向の異なる位置のピクセルに集光する。各ピクセルにおいて、光結合損失なしに光信号を処理するためには、ピクセルの位置が集光点と一致している必要がある。
図7に示した液晶素子は、TMモード光の集光線42に沿って、複数のピクセル40がピッチWで配列されている。集光線42からy軸方向にdだけ離れたTEモード光の集光線43に沿って、複数のピクセル41がピッチWで配列されている。ピクセル40および対応するピクセル41は、各々がx軸上でΔxだけオフセットして配置されている。対応するピクセル同士は接続されている。TMモードの集光線42は図6における光路38に対応し、TEモードの集光線43は図6における光路37に対応する。
図7に示したパターン形状からわかるように、ピクセル40と対応するピクセル41を同期して制御することにより、PDθのために偏波モード間で集光点の位置ずれがあっても、TMモード成分とTMモード成分の光信号が一体として変調される。したがって、光路37と光路38がx軸上でΔxだけ分離していても、光路を一致させて単一のピクセルに集光させた場合と、同一の信号処理ができる。PDθに起因して、光結合損失を発生させたり、光信信号処理装置の波長分解能を低下させることがない。
図7においては、ピクセル40と対応するピクセル41は接続されているが、分離したパターン形状であっても、両ピクセルが40、41が同期して制御される限り同様な効果を発揮することに留意されたい。信号処理素子のピクセル位置を、TMモードの集光点とTMモードの集光点にそれぞれ適応させれば同じ効果が得られるので、MEMSミラーの場合にも適用可能である。
PDθに対応する中心波長のシフト量をPDλ(nm)、対象のシステムの波長チャンネル間隔をChspace(nm)、液晶ピクセルの配置ピッチをW(μm)とすると、液晶ピクセルのオフセット長さΔxは、次式(6)で表される。
Δx=PDλ/Chspace ×W 式(6)
例えば、PDλ=0.2(nm)、LバンドにおいてChspace=0.84(nm)、W=100(μm)とすると、Δx=24μmとなる。
以上、詳細に述べたように、本発明の光信号処理装置によれば、偏光分離構造を持つ光信号処理装置の光学系において、安価な光学素子を用いることによってAWGにおける偏波依存性を解消し、光結合損失を減らすことができる。光信号処理の波長分解能を低下させることなく、PDθの補償が可能となる。AWGの製作に複雑な追加工程を必要とせず、低コストとなり、AWG自体において発生する過剰損失も極めて少ない。さらに、空間光学系に光学素子を追加することなく、信号処理素子のピクセルパターンの構成を調整するだけで偏波依存性を解消し、光結合損失を減らすことができる。反射型の構成によって、従来技術と比べてより簡単な光信号処理装置を実現できる。