JP2008277532A - 点火コイル - Google Patents

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秀一 松林
Ikuo Hirayama
育男 平山
Masami Kojima
政美 小島
Koji Tauchi
孝司 田内
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Abstract

【課題】点火コイルのエンジンブロックへの取付時に、ハウジング内部に発生する応力を低減し、注型材におけるクラックの発生を防止できる高強度の内燃機関用の点火コイルを提供する。
【解決手段】一次コイルと、二次コイルと、磁路を形成するコア18とを備えたコイル組立体10を外表面に取付フランジ5を備えたハウジング1内に嵌挿し、各構成部材相互間に絶縁樹脂を充填した内燃機関用の点火コイルにおいて、コイル組立体10の外表面を構成する二次コイルボビン12の外周部に、位置決め手段として複数のガイドリブ28を設けると共に、ハウジング1の内壁面を介して取付フランジ5に対向する二次コイルボビン12の外表面に、ガイドリブ28が存在しない制限エリア30を設ける。
【選択図】図5

Description

本発明は、点火コイルに関し、特に、一般的な内燃機関の点火コイル及びエンジンのプラグホールに直接装着される点火コイルに関する。
自動車エンジンをはじめとする内燃機関においては、例えば燃料であるガソリンを燃焼させる起爆装置として点火コイル及び点火プラグが適用される。
内燃機関用の点火コイルに関する従来技術の文献としては、例えば、特許文献1及び特許文献2が挙げられる。
図10は、このような従来の点火コイルを示す縦断面図である。図10において、この点火コイルは、いわゆるプラグトップコイル(以下、PTCという )と呼ばれるもので、一端が開放された円筒状のコイルケース91と、このコイルケース91の下方の開口部に嵌合されるプラグのカバー92と、コイルケース91の上方部分外側に装着された低圧端子ソケット93及びこれと対向して設けられた取付フランジ103と、コイルケース91内に収納されたコイル組立体とから主としてなっている。
コイル組立体は、一次コイル94が巻装された一次コイルボビン95と、その外側に同心円状に配置され、二次コイル96が巻装された二次コイルボビン97と、その中空軸内に挿入された棒状のコア98とを備えている。コイル組立体の二次側コイルボビン97の下端には、高圧端子の取付部99が形成されており、この取付部99に取り付けられた高圧端子100に接触子101を介してその先端部が接続するように点火プラグ102が装着される。
各構成部材は、単品で、又は複数の部材の組立体として位置決めされた後、構成部材相互間に熱硬化性の絶縁樹脂、例えばエポキシ樹脂が充填されて一体的に形成される。
図11は、図10の取付フランジ103の周辺部を示す水平断面図である。
図11において、取付フランジ103は、コイルケース91の外周壁に、例えば一体成形されており、コイルケース91の長さ方向に沿った上下2箇所のリブを備えている。上下2箇所のリブによって、取付フランジ103の強度を確保し、取付け時の変形が防止される。取付フランジ103の頂部近傍はボルト座105となっており、ボルト座105には、コイルケース91と平行にボルト孔106が形成されている。
コイルケース91の内部にはイグナイタ107が配置されており、イグナイタ107は、取付フランジ103と対向するコイルケース91の内周面に設けられたガイドリブ108によって支持されている。ガイドリブ108はイグナイタ107を備えた制御ユニットだけでなく、一次コイル94及び二次コイル96を備えたコイル組立体の外周面をガイドしてコイルケース91内で位置決めしている。
特開平9−186031号公報 特開平10−74645号公報
しかしながら、上記従来技術における点火コイルは、取付フランジ103に対向する、コイルケース91内壁面に構成部材を支持するためのガイドリブ108が設けられているために、点火コイルの固定時、すなわちボルト座105にフランジボルトを挿入して点火コイルをエンジンブロックの所定位置に固定する際、フランジボルトの締め付け応力によって取付フランジ103周辺に微小な変形が生じ、この変形がガイドリブ108に伝わるために、硬化した絶縁樹脂(注型材)にも応力が発生してクラックが生じるという問題がある。
かかる問題は、点火コイル取付部周辺のスペース狭小化等によって取付フランジそのものを大きくできない型式の点火コイル、取付フランジに増強用の例えば三角形状リブを設けることができない点火コイルにおいて発生し易く、特に、PTCのようにエンジンのプラグホールに直接取付けられる型式の点火プラグの場合には、周囲の制約が多いために上記問題が発生する傾向が大きい。
本発明の目的は、点火コイルのエンジンブロックへの取付時に、コイルケ−ス内部に発生する応力を低減し、注型部材におけるクラックの発生を防止することができる高強度の点火コイルを提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1記載の点火コイルは、一次コイルと、二次コイルと、磁路を形成するコアとを備えたコイル組立体を外表面に取付フランジを備えたコイルケース内に収納し、各構成部材相互間に絶縁樹脂を充填した点火コイルにおいて、前記コイルケースの内壁面又は前記コイル組立体の外表面に、前記コイルケースの内壁面に対する前記コイル組立体の外表面を位置決めする複数の位置決め手段を設けると共に、前記取付フランジに対向する前記コイルケース内壁面又は前記取付フランジに前記コイルケース内壁面を介して対向する前記コイル組立体外表面に、前記位置決め手段が存在しない制限エリアを設けたことを特徴とする。
請求項2記載の点火コイルは、請求項1記載の点火コイルにおいて、前記制限エリアは、前記取付フランジが前記コイルケースの外表面に占める面積と同じか、又はそれよりも広いことを特徴とする。
請求項3記載の点火コイルは、請求項2記載の点火コイルにおいて、前記制限エリアは、前記取付フランジが前記コイルケースの外表面に占める面積の1.0乃至1.5倍であることを特徴とする。
請求項4記載の点火コイルは、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の点火コイルにおいて、前記位置決め手段は、前記コイルケースの内壁面又は前記コイル組立体の外表面に設けられた所定の高さを有するガイドリブであることを特徴とする。
請求項5記載の点火コイルは、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の点火コイルにおいて、前記コイル組立体は、円筒状の一次コイルボビンに巻装された前記一次コイルと、前記一次コイルボビンよりも径が大きく、且つ前記一次コイルボビンと同心円状に配置された円筒状の二次コイルボビンに巻装された前記二次コイルと、同心円状に配置された前記一次コイル及び二次コイルの中心軸に沿う前記一次コイルボビンの中心空間に嵌挿された前記コアとを有することを特徴とする。
請求項6記載の点火コイルは、請求項5記載の点火コイルにおいて、前記位置決め手段は、前記二次コイルボビンの巻線領域に設けられた仕切板の外周部を部分的に突出させたガイドリブであることを特徴とする。
請求項1記載の点火コイルによれば、コイルケースの外表面に設けられた取付フランジに対向するコイルケース内壁面又はコイル組立体外表面に、位置決め手段が存在しない制限エリアを設けたので、点火コイルの固定時に、取付フランジで発生する応力の位置決め手段としての、例えばガイドリブと注型材との当接面への伝達を回避することができ、これによって注型材におけるクラックの発生を防止することができる。
請求項2記載の点火コイルによれば、制限エリアを、取付用フランジがコイルケース外表面に占める面積と同じか又はそれよりも広くしたので、上記発明の効果に加え、取付応力に起因した注型部材におけるクラックの発生をより確実に防止することができる。
請求項3記載の点火コイルによれば、制限エリアを、取付用フランジがコイルケース外表面に占める面積の1.0乃至1.5倍としたので、上記発明の効果に加え、コイルケース内壁面に対するコイル組立体の位置決め精度を低下させることなく、クラックの発生を防止することができる。
請求項4記載の点火コイルによれば、位置決め手段をコイルケースの内壁面又はコイル組立体の外表面に設けられた所定高さのガイドリブとしたので、上記発明の効果に加え、ガイドリブを一体成形することができ、成形容易性を確保することができる。
請求項5記載の点火コイルによれば、コイル組立体を、同心円状に配置された一次コイル及び二次コイルと、その中心軸に沿う一次コイルが巻装された一次コイルボビンの中心空間に嵌挿されたコアとを有するものとしたので、上記発明の効果に加えて、点火コイル全体の小型化を図ることができる。
請求項6記載の点火コイルによれば、位置決め手段を、二次コイルボビンの巻線領域に設けられた仕切板の外周部を部分的に突出させたガイドリブとしたので、上記発明の効果に加え、ガイドリブを二次コイルボビンの構成部材の成型時に一体成形することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る内燃機関用の点火コイルの組立図である。
図1において、この点火コイルは、二つの二次出力端子を有するデュアル(DUAL)点火方式の点火コイルであって、コイルケースとしてのハウジング1と、このハウジング1内に嵌挿されるコイル組立体10とから主として構成されている。
コイル組立体10は、一次コイル(図示省略)が巻装された略円筒状の一次コイルボビン11と、二次コイル(図示省略)が巻装され、一次コイルボビン11よりも径が大きい略円筒状の二次コイルボビン12とを備えており、二次コイルが巻装された二次コイルボビン12は一次コイルが巻装された一次コイルボビン11の外側に同心円状に配置される。これによって一次コイルと二次コイルは同心円状に配置されたコイル対を形成する。
一次コイルボビン11の一端には、一次端子13及び14が圧入されており、一次コイルの巻き始め端及び巻き終わり端はそれぞれ一次端子13及び14にフュージング等で接続されている。一次端子13及び14は、コネクタ15にその一端から挿入されており、コネクタ15は、二次コイルボビン12の所定位置に固定される。
一次コイルと二次コイルが同心円状に配置されたコイル対の中心軸に沿う一次コイルボビン11の中心空間には、磁路を形成するコア18のセンターコア部分が嵌挿され、これによって、一次コイルと、二次コイルと、コア18とから主としてなるコイル組立体10が構成されている。
図2は、図1のコイル組立体の結線図である。
一次コイル19の巻き始め端である一次端子13は、コネクタ15を介して一次コイルの導通を制御する制御回路(図示省略)に接続される。また、コネクタ15に固定されたダイオード16(図1参照)のカソードは、一次コイルの巻き終わり端である一次端子14と接続されると共に、コネクタ15を介して図示省略したバッテリの+(プラス)側に接続される。ダイオード16のアノードは、例えばL字形に形成され、このL字形部分で二次コイルボビン12の二次コイルの中点としての中間タップ17と接続されている。二次コイルボビン12に巻装された二次コイル27a及び27bの外側端はそれぞれ二次出力端子22及び23に接続されている。
コイルケースとしてのハウジング1の上部開口端には、図1に示したように、上述のコネクタ15が嵌合される切欠部2が設けられており、切欠部2とはハウジング1の中心軸を挟んで対向する位置に、二次出力の取出端であるH/Tタワー4が嵌合される切欠部3が設けられている。また、ハウジング1の外表面には、点火コイルをエンジンブロックに固定するための取付フランジ5が設けられている。
切欠部3に、H/Tタワー4を嵌合したハウジング1に、コイル組立体10を嵌挿して切欠部2にコネクタ15を嵌合させると共に、H/Tタワー4に一方の二次出力端子を接合させ、もう一つの二次出力端子用のコネクタとしてハウジング1の一端(図1中、下方端)に、スプリング6を内装したプラグキャップ7を嵌合させ、さらに、各構成部材相互間に絶縁樹脂を充填することによって点火コイルが構成されるが、ハウジング1の内壁面に対するコイル組立体10の位置決めを行うため、コイル組立体10の構成部材である二次コイルボビン12の外周部に複数のガイドリブが設けられている。
図3は、コイル組立体の構成部材である二次コイルボビンの平面図である。
図3において、二次コイルボビン12は、例えば、変性PPO(ポリフェニレンオキサイド)樹脂からなる円筒状の二次コイルボビン本体21と、その長さ方向の両端部にそれぞれ設けられた第1の二次出力端子22及び第2の二次出力端子23とから主として構成されている。
二次コイルボビン本体21の外表面は、コイルが巻装される巻線領域24となっており、巻線領域24のほぼ中央には、上述の中間タップ17が設けられており、この中間タップ17によって巻線領域24が第1巻線領域24aと第2巻線領域24bとに分かれている。巻線領域24a及び24bは、それぞれ外周面の法線方向に沿って延設された複数の仕切板26によって、例えば等間隔に仕切られている。
第1巻線領域24aと第2巻線領域24bには、中間タップ17を境にしてそれぞれコイルが逆方向に巻装され(逆巻きされ)ており、互いに逆方向に巻かれた二つの二次コイル27a及び27bが形成されている。
二次コイル27a及び27bのコイルボビンの長さ方向中央部側の端部はそれぞれ中間タップ17の中点に接続されている。一方、第1の二次コイル27aの他端は第1の二次出力端子22に、第2の二次コイル27bの他端は第2の二次出力端子23に接続されている。二つの二次出力端子22及び23は、コイル組立体10がハウジング1に嵌挿されることによって、ハウジング1の二次高圧ターミナル(H/Tタワー4やプラグキャップ7に接続される端子)と接続し、これによって、高圧出力が外部に取り出される。
巻線領域24a及び24bを等間隔に仕切る複数の仕切板26のうち任意の仕切板(図3中4枚)、例えば、第1巻線領域24a及び第2巻線領域24bにおける中間タップ17から2枚目の仕切板及び最も外側に配置された仕切板は、その外周部に複数の位置決め用のガイドリブ28となるべき突出部が設けられたリブ付き仕切板26aとなっている。
図4は、図3におけるIV−IV線に沿う断面図である。図4において、リブ付き仕切板26aの外周部には、複数、図中3個のガイドリブ28が設けられている。一のリブ付きガイド板26aにおけるガイドリブ28の配置間隔は、必ずしも等間隔である必要はないが、二次コイルボビン12の外表面においてガイドリブ28が等間隔に配置されるようにガイドリブ28及びリブ付きガイド板26aを配置又は設けることが好ましい。これによって、二次コイルボビン12、ひいてはコイル組立体10とハウジング1の内壁面との隙間を均等に保持し、コイル組立体10のハウジング1内壁面に対する位置を正確に決めることができる。
ガイドリブ28のリブ付き仕切板26a外周部からの突出高さは、例えば1〜1.5mmである。これによって、正確な位置決めができると共に、仕切板26aの強度を十分に確保することができる。
本実施の形態において、ハウジング1の外表面に設けられた取付フランジ5にハウジング1の壁面を介して対向するコイル組立体10の外表面には、ガイドリブ28が設けられていない制限エリアが形成されている。
点火コイルを取付フランジ5によって図示省略したエンジンブロックに固定する際、取付応力がガイドリブ28と注型材との境界面に作用し、これによって注型材にクラックが発生することがあるが、本実施の形態においては、このようなクラックの発生を回避するために、ハウジング1の壁面を介して取付フランジ5に対向するコイル組立体10の外表面に、ガイドリブ28が設けられていない制限エリアを形成している。
図5は、コイル組立体10をハウジング1に挿着した点火コイルを示す縦断面図、図6は、図5のVI−VI線に沿う断面図である。
図5において、ハウジング1にコイル組立体10が嵌挿されている。ハウジング1の外表面には取付フランジ5が設けられており、この取付フランジ5にハウジング1の壁面を介して対向するコイル組立体10、具体的には二次コイルボビン12の表面の仕切板26にはガイドリブ28が設けられていない制限エリア30が形成されている。
図7乃至図9は、それぞれガイドリブが設けられていない制限エリアを説明するための図であって、図7は、ハウジング1の取付フランジ5近傍を示す水平断面図、図8は、ハウジング1の取付フランジ5近傍を示す垂直断面図、図9は、ハウジング1の取付フランジ5近傍を示す概念的な斜視図である。
図7乃至図9において、制限エリアは、図7における取付フランジ5の水平断面図上の最大幅Aと、図8における取付フランジ5の垂直断面図上の最大厚さBとで規定される領域31と対向する二次コイルボビン12の表面部分(図5及び図6の符合30)をいう。このようなガイドリブ28が設けられていない制限エリア30を設けることによって、点火コイルをエンジンブロックに取り付ける際の応力がガイドリブ28と注型材との接合面に作用することによるクラックの発生を防止することができる。
本実施の形態において、ガイドリブ28が設けられていない制限エリア30は、ハウジング1を挟んで取付フランジ5に対応する二次コイルボビン12の表面に設けられており、取付フランジ5がハウジング1の外表面に占める最大幅Aと最大厚さBとで規定される面積を含み、その面積と同じか又はそれ以上である。少なくとも取付フランジ5の最大幅Aと最大厚さBとで規定される面に対応する面内にガイドリブ28が存在しなければ、ハウジング1に対するコイル組立体10を位置決めするためのガイドリブ28の存在に起因する注型材におけるクラックの発生を抑制することができる。
本実施の形態においては、コイル組立体10の表面、換言すれば二次コイルボビン12の表面にガイドリブ28を設けた点火コイルについて説明したが、本発明において、ガイドリブは、コイル組立体10の外表面だけでなく、ハウジング1の内壁面に設けることもできる。この場合も上述した実施の形態と同様、ハウジング1の内壁面においてガイドリブの配置間隔が均等になるように、例えばハウジング1と一体的に成形することによって、ハウジング1の内壁面に対するコイル組立体10の位置決めが行われる。また、上述した実施の形態と同様、取付フランジ5の最大幅Aと最大厚さBとで規定される面と対向するハウジング1の内壁面には、ハウジング1の外表面における取付フランジ5が占める面積と同じか又はそれよりも広い面積の、ガイドリブが存在しない制限エリア30が設けられる。この場合も上述した実施の形態と同様の効果を奏することができる。
本実施の形態において、一次コイルの巻幅方向(一次コイルボビン11の長さ方向)の中心点を、この一次コイルに対向する二次コイルの巻幅方向(二次コイルボビン12の長さ方向)の中心点よりも、ハイテンションコード及びH/Tタワー4を介して一の点火プラグに接続される二次出力端子23を有する二次コイル27b側に所定幅だけずらして配置する。
本実施の形態に係る点火コイルは、上述したように、二次出力端子(22、23)を二つ備えたデュアル点火方式のコイルであり、一のシリンダ内に2個の点火プラグを有するエンジンに適用される。二次出力端子の一方(22)は一の点火プラグに直結され、他方(23)はハイテンションコードを介してもう一つの点火プラグに接続される。ここで、ハイテンションコードを介して点火プラグに接続される二次出力端子23側の浮遊容量は、点火プラグに直結される二次出力端子22側の浮遊容量よりも大きくなる。
一般に、浮遊容量の大きい出力端子からの出力電圧は、浮遊容量の小さい出力端子からの出力電圧に比べて低下する。従って、本実施の形態においては、かかる問題を解消するため、一次コイルの巻幅方向の中心点を、二次コイルの巻幅方向の中心点よりも浮遊容量の大きい二次出力端子23を有する二次コイル27b側に所定幅、例えば1.5〜3.0mmだけずらし、これによって浮遊容量の大きい二次出力端子23側における一次コイルと二次コイルの結合係数Kを大きくして浮遊容量の増大に起因する二次出力の低下を補い、二つの二次出力端子22、23から出力される電圧をバランスさせている。
本実施の形態において、コイル組立体10の中心空間に嵌挿、配置されるコア18は、例えばコの字状に形成された二つの構成部材の組み合わせによって構成されており、閉磁路を形成する。すなわちコア18は、例えば上下方向に平行に延びるセンターコアとサイドコアとを有し、センターコアがコイル組立体10の中心空間に嵌挿され、サイドコアは二次コイルボビン12の外側表面に沿って配設され、その長さ方向の両端部でセンターコアと連結した閉磁路を形成している。
二つのコの字状のコア構成部材の接合面の一方は、接合方向に対して所定角度、例えば10〜20度傾斜している。接合面には、板状のマグネットが介在され、これによって、磁束に逆バイアスをかけて出力を増大している。二つのコア構成部材はそれぞれ絶縁樹脂で被覆されており、両部材の傾斜接合面周縁のモールド樹脂は、二つの構成部材を傾斜接合面で接合した際、上述の板状のマグネットが収容される閉空間を形成するように、その一方又は両方が接合平面よりも所定幅、例えば0.5〜2mm程度突出している。
このような構成のコア18において、二つのコア構成部材を接合して閉磁路を形成する際は、一方の構成部材の傾斜接合面におけるモールド樹脂によって囲まれた部分に板状のマグネットを、該マグネットの磁力によって接合し、この接合面をマグネットを介して他方の構成部材の接合面に当接させると共に、マグネットを介さないで当接するもう一つの接合面、例えば凹凸に嵌合する接合面を接合させることによって閉磁路を形成する。なお、このとき、センターコアは、コイル組立体10の一次コイルボビン11の中心空間に嵌挿され、サイドコアは二次コイルボビン12の外表面に沿って配置される。
板状のマグネットをモールド樹脂によって形成された閉空間内に閉じ込めることによって、閉磁路を形成するコア18を有するコイル組立体10をハウジング1内に収容し、構成部材相互間に、注型材を充填し、熱硬化させて点火コイルを完成させる際に、注型材が直接板状のマグネットに触れることが無いので、接合面に板状のマグネットを介在させたことに起因するマグネット周辺部における応力の発生を抑制することができ、これによって、点火コイルの強度を確保することができる。
本実施の形態においては、コア18を形成するコア構成部材をモールド樹脂で被覆する際に形成されたピン跡に、絶縁樹脂を充填して表面の凹凸を緩和している。
コアをインサート成形する場合、すなわちコア構成部材にモールド樹脂を被覆する際、その表面に、コアを金型内に保持する保持ピン跡が凹状部として残り、この凹状部に起因して点火コイルの注型材にクラックが発生する場合がある。従って、本実施の形態では、このような問題を解消するため、コア構成部材を一旦モールド樹脂で被覆した後、被覆時に形成されたピン跡をなくすために、例えば2度成形を行い、表面の凹部を絶縁樹脂で塞ぎ、これによってクラックの発生を防止している。
本実施の形態において、閉磁路を形成するコアのうちコイル組立体10の中心空間に嵌挿されるセンターコアの表面には、その長さ方向及び外周方向に沿って複数の同じ高さの凸状部が設けられている。凸状部の高さは、例えば0.05〜0.6mmである。
センターコアの表面にその長さ方向及び外周方向に沿って複数の同じ高さの凸状部を均等に設けることによって、一次コイルボビン11の内周面に接する凸状部による位置決め効果が発揮され、一次コイルボビン11の内周壁と、これに嵌挿されるコア18のセンターコアの外表面との間隔を均等に保つことができ、これによって点火コイルの注型材における発生応力が均等なものとなり、クラックの発生が抑制される。
本実施の形態において、閉磁路を形成するコア18の一端は、弾性部材で被覆されている。
コア18の一端、例えばハウジング1にコイル組立体10を嵌挿した際、ハウジング1の開口端側に位置するコア18の端部はインサート成形の関係上、磁性材が露出している。このような磁性材露出部分を、例えば方向性珪素鋼板を適用して被覆すると、磁歪の影響を無視することができない。一方、そのまま注型材を充填すると、注型材の例えば底面による歪で、応力が発生して注型材にクラックが入ることがある。そこで、本実施の形態においては、上述した磁性材露出端を弾性部材によって被覆している。
この場合、例えばコア18の端面の周囲を被覆するモールド樹脂を磁性材露出端面から所定高さ、例えば弾性材の厚さである1〜2mm程度高くして磁性材露出面を囲むように周壁を形成し、コア端面が凹部の底面となるように構成することが好ましい。モールド樹脂で囲まれた凹部空間内に弾性部材を配置し、この弾性部材がモールド樹脂に熱加締される。
弾性部材としては、例えばシリコンゴムの発泡スポンジが好適に適用される。この場合、弾性部材としての発泡スポンジには、その厚さ方向貫通する貫通孔を設けておくことが好ましい。これによって、注型材の充填時に、ボイドや注型材をスムーズに通すことができる。
上述した一次コイルと、二次コイルとを備え、これらを同心円状に配置したコイル対の中心空間に、閉磁路を形成するコア18のセンターコアを嵌挿したコイル組立体10を、外表面に取付フランジ5を備えたハウジング1に嵌挿し、位置決めした状態で各構成部材相互間に絶縁樹脂を充填することによって本実施の形態における点火コイルが形成される。
このような構成の点火コイルは、エンジンブロックの所定位置に固定され、一方の二次出力端子22はエンジンのプラグホールに装着され、ハウジング1の例えば下端に取り付けられたプラグキャップ7に嵌合される一の点火プラグと直結される。また、他方の二次出力端子23はハイテンションコードを介して同一シリンダ内に配置された他方の点火プラグと接続され、それぞれ二次出力電圧を出力してエンジンの発火源として作用する。
本実施の形態によれば、ハウジング1とコイル組立体10との対向面であって、取付フランジ5に対向するコイルケースの内壁面に、取付フランジ5の最大幅Aと最大厚さBとで規定される面積と同じか又はそれ以上の面積を有する、ガイドリブ28が設けられていない制限エリア30を設けたことによって、点火コイルをエンジンブロックに固定する際の応力に起因する注型材における各構成部材を起点とするクラックの発生を防止することができる。
本実施の形態において、制限エリア30は、取付フランジがハウジング1の外表面に占める面積と同じか又はそれよりも広くされるが、制限エリア30の面積は、取付フランジがハウジング1の外表面に占める面積の1.0〜1.5倍である。制限エリア30が狭すぎるとクラック発生を抑制する効果が不足し、一方、広すぎるとコイル組立体の位置決め効果に悪影響を与えることになる。
なお、本実施の形態において、位置決め用のガイドリブ28が存在しない制限エリア30は、コイル組立体10の外表面とハウジング1の内壁面とが対向する全面積の一部であり、このような制限エリア30を設けても、ハウジング1の内壁面に対するコイル組立体10の位置決め効果に対する影響はほとんどなく、ハウジング1の内壁面とコイル組立体10との間隔は均一に保たれる。従って、絶縁注型材への応力が均一に作用してクラックの発生を有効に防止できるというガイドリブ28を設けることによる作用効果は十分に発揮される。
本実施の形態においては、二つの二次出力端子を有するデュアル点火方式の点火コイルについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、二次出力端子が一つの点火コイル、その他の点火コイルに適用することもできる。
本発明の実施の形態に係る内燃機関用の点火コイルの組立図である。 図1のコイル組立体の結線図である。 コイル組立体の構成部材である二次コイルボビンの平面図である。 図3におけるIV−IV線に沿う断面図である。 コイル組立体をハウジングに挿着した点火コイルを示す縦断面図である。 図5のVI−VI線に沿う断面図である。 制限エリアを説明するための図であって、ハウジングの取付フランジ部分を示す水平断面図である。 制限エリアを説明するための図であって、ハウジングの取付フランジ部分を示す垂直断面図である。 制限エリアを説明するための図であって、ハウジングの取付フランジ部分の概念的な斜視図である。 従来の点火コイルを示す縦断面図である。 図10の取付フランジ周辺部を示す水平断面図である。
符号の説明
1 ハウジング(コイルケース)
2 切欠部
3 切欠部
4 H/Tタワー
5 取付フランジ
6 スプリング
7 プラグキャップ
10 コイル組立体
11 一次コイルボビン
12 二次コイルボビン
13 一次端子
14 一次端子
15 コネクタ
16 ダイオード
17 中間タップ
18 コア
19 一次コイル
21 二次コイルボビン本体
22 二次出力端子
23 二次出力端子
24 巻線領域
24a 第1巻線領域
24b 第2巻線領域
26 仕切板
26a リブ付き仕切板
27a 二次コイル
27b 二次コイル
28 ガイドリブ
30 制限エリア
31 制限エリアと対向する外表面
91 コイルケース
92 プラグカバー
93 低圧端子ソケット
94 一次コイル
95 一次コイルボビン
96 二次コイル
97 二次コイルボビン
98 コア
99 高圧端子の取付部
100 高圧端子
101 接続子
102 点火プラグ
103 取付フランジ
105 ボルト座
106 ボルト孔
107 イグナイタ
108 ガイドリブ

Claims (6)

  1. 一次コイルと、二次コイルと、磁路を形成するコアとを備えたコイル組立体を外表面に取付フランジを備えたコイルケース内に収納し、各構成部材相互間に絶縁樹脂を充填した点火コイルにおいて、
    前記コイルケースの内壁面又は前記コイル組立体の外表面に、前記コイルケースの内壁面に対する前記コイル組立体の外表面を位置決めする複数の位置決め手段を設けると共に、
    前記取付フランジに対向する前記コイルケース内壁面又は前記取付フランジに前記コイルケース内壁面を介して対向する前記コイル組立体外表面に、前記位置決め手段が存在しない制限エリアを設けたことを特徴とする点火コイル。
  2. 前記制限エリアは、前記取付フランジが前記コイルケースの外表面に占める面積と同じか、又はそれよりも広いことを特徴とする請求項1記載の点火コイル。
  3. 前記制限エリアは、前記取付フランジが前記コイルケースの外表面に占める面積の1.0乃至1.5倍であることを特徴とする請求項2記載の点火コイル。
  4. 前記位置決め手段は、前記コイルケースの内壁面又は前記コイル組立体の外表面に設けられた所定の高さを有するガイドリブであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の点火コイル。
  5. 前記コイル組立体は、円筒状の一次コイルボビンに巻装された前記一次コイルと、前記一次コイルボビンよりも径が大きく、且つ前記一次コイルボビンと同心円状に配置された円筒状の二次コイルボビンに巻装された前記二次コイルと、同心円状に配置された前記一次コイル及び二次コイルの中心軸に沿う前記一次コイルボビンの中心空間に嵌挿された前記コアとを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の点火コイル。
  6. 前記位置決め手段は、前記二次コイルボビンの巻線領域に設けられた仕切板の外周部を部分的に突出させたガイドリブであることを特徴とする請求項5記載の点火コイル。
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