JP2008266702A - 金属基炭素繊維複合材及びその製造方法 - Google Patents

金属基炭素繊維複合材及びその製造方法 Download PDF

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吉田  誠
Chitoshi Masuda
千利 増田
Hisao Uozumi
久雄 魚住
Hironori Sakamoto
宏規 坂元
Yutaka Makuchi
裕 馬久地
Masaki Kuno
昌樹 久野
Takayuki Tsukada
高行 塚田
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Abstract

【課題】優れた強度を有する金属基炭素繊維複合材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】金属基炭素繊維複合材は、成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体、バインダー及び分散媒を混合して懸濁液を得る工程、懸濁液を乾燥して混合物を得る工程、混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程、圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程、ラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2を超え1.2以下である炭素繊維構造体を含む硬化圧縮成形体を800〜1500℃の温度条件で焼成して炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程、及び炭素繊維構造体含有プリフォームに、溶融したマトリックス金属を含浸させ、固化して金属基炭素繊維複合材を得る工程を含む金属基炭素繊維複合材の製造方法により製造される。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属基炭素繊維複合材及びその製造方法に係り、更に詳細には、優れた強度を有する金属基炭素繊維複合材及びその製造方法に関する。
従来、鋳造法によって金属基複合材を作製する場合には、溶湯を含浸させ易いように予め繊維や粒子等の強化材のプリフォームを成形する技術が知られている。
また、強化繊維とマトリックス金属との濡れ性が悪い組合せ(強化繊維にカーボン、マトリックス金属にアルミニウムを選択する場合など)の場合、プリフォームに溶湯を注いだ後に圧力を付与して複合化する技術、いわゆる溶湯鍛造法が広く知られている。この溶湯鍛造法は、溶湯を短時間で凝固させるため、合金組織が緻密であり、鋳巣の無い鋳造物を作製することができ、比較的量産性に優れることが知られている(特許文献1参照。)。
特開昭61−137624号公報
これに対して、本発明者らは、2007年2月14日付けの特許出願にて、金属基複合材を製造するときに、用いる炭素繊維構造体含有プリフォームを製造するに際し、所定の炭素繊維構造体、有機バインダー及び分散媒を混合して懸濁液を得る工程(1)と、該懸濁液を乾燥して混合物を得る工程(2)と、該混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程(3)と、該圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程(4)と、該硬化圧縮成形体を焼成してラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2以下である炭素繊維構造体を含む炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程(5)と、を含む製造方法を提案している(特許文献2参照。)。
上記方法は、炭素繊維構造体含有プリフォームが溶湯から受ける圧力により圧縮変形するのを有機バインダーの焼結体等で抑制しつつ、炭素繊維構造体の優れた熱伝導特性が効果的に発揮され易いようにしている。
(特許文献2):特願2007−032916号
しかしながら、本発明者らが更に検討を重ねたところ、上記特許出願に係る金属基複合材にも更なる改良の余地があることが判明した。
即ち、この特許出願に係る金属基複合材は、従来の金属基複合材に比し優れた熱伝導特性を有するものであるが、硬度、曲げ強度などをはじめとする機械的特性は更に向上させることができる。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、優れた強度を有する金属基炭素繊維複合材及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、カーボンナノチューブとマトリックス金属の濡れ性を向上させるため、プリフォーム製造に用いられる炭素繊維構造体に結晶化度の低いものを用いることとし、炭素繊維構造体の表面近傍にマトリックス金属との反応相を設けるようにすることなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の金属基炭素繊維複合材は、成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体、バインダー、及び分散媒を混合して懸濁液を得る工程(1)と、上記懸濁液を乾燥して混合物を得る工程(2)と、上記混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程(3)と、上記圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程(4)と、ラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2を超え1.2以下である炭素繊維構造体を含む上記硬化圧縮成形体を800〜1500℃の温度条件で焼成して炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程(5)と、上記炭素繊維構造体含有プリフォームに、溶融したマトリックス金属を含浸させ、固化して金属基炭素繊維複合材を得る工程(6)と、を含む金属基炭素繊維複合材の製造方法により製造されることを特徴とする。
また、本発明の金属基炭素繊維複合材の製造方法は、成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体、バインダー、及び分散媒を混合して懸濁液を得る工程(1)と、上記懸濁液を乾燥して混合物を得る工程(2)と、上記混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程(3)と、上記圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程(4)と、ラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2を超え1.2以下である炭素繊維構造体を含む上記硬化圧縮成形体を800〜1500℃の温度条件で焼成して炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程(5)と、上記炭素繊維構造体含有プリフォームに、溶融したマトリックス金属を含浸させ、固化して金属基炭素繊維複合材を得る工程(6)と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、金属基炭素繊維複合材を作製する際に、3次元ネットワーク状に配された微細径の炭素繊維が、その成長過程において成長の起点となる粒状部によって互いに強固に結合され、粒状部から炭素繊維が複数延出する形状を有する炭素繊維構造体を用いており、且つプリフォームに含浸されるマトリックス金属と炭素繊維構造体との反応相を含有させることなどとしたため、優れた強度を有する金属基炭素繊維複合材及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の金属基炭素繊維複合材について説明する。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、含有量などの「%」については、特記しない限り質量百分率を表すものとする。
上述の如く、本発明の金属基炭素繊維複合材は、成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体、バインダー、及び分散媒を混合して懸濁液を得る工程(1)と、懸濁液を乾燥して混合物を得る工程(2)と、混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程(3)と、圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程(4)と、ラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2を超え1.2以下である炭素繊維構造体を含む上記硬化圧縮成形体を800〜1500℃の温度条件で焼成して炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程(5)と、上記炭素繊維構造体含有プリフォームに、溶融したマトリックス金属を含浸させ、固化して金属基炭素繊維複合材を得る工程(6)と、を含む金属基炭素繊維複合材の製造方法により製造されるものである。
このような構成とすることにより、金属基炭素繊維複合材が優れた強度を示すものとなる。また、詳しくは後述するが、有機バインダーを用いて製造した場合には、優れた熱伝導特性をも示すものとなる。
ここで、用いる各原料について詳細に説明する。
まず、炭素繊維構造体について詳細に説明する。
本発明においては、用いる炭素繊維構造体が、図1の走査型電子顕微鏡(SEM)写真又は図2の透過型電子顕微鏡(TEM)写真に示すように、成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であることを要する。
このように、微細炭素繊維同士が単に絡合しているものではなく、粒状部において相互に強固に結合されているものであることから、当該構造体の形態を保持した状態で、プリフォームを形成することができ、金属を含浸させる際も、含浸させる圧力によって炭素繊維がプリフォームの形態を保持することができ、マトリックス金属に配した場合に当該構造体が炭素繊維単体として分散されることなく、構造体のままマトリックス金属中に分散配合することができる。また、炭素繊維の成長過程において形成された粒状部によって炭素繊維同士が互いに結合されていることから、その構造体自体の強度も非常に優れたものとなる。
また、用いる炭素繊維構造体は、金属基炭素繊維複合体を形成する際において、高い強度を有する上から、炭素繊維を構成するグラフェンシート中における欠陥が多いことを要し、具体的には、プリフォーム焼成前のラマン分光分析法で測定されるI/I比が、0.2を超え1.2以下の範囲であることを要し、0.25〜0.85の範囲であることが好ましい。ここで、ラマン分光分析では、大きな単結晶の黒鉛では1580cm−1付近のピーク(Gバンド)しか現れない。結晶が有限の微小サイズであることや格子欠陥により、1360cm−1付近にピーク(Dバンド)が出現する。このため、DバンドとGバンドの強度比(R=I1360/I1580=I/I)が上記したように所定の範囲であると、グラフェンシート中における欠陥量が多いことが認められるためである。
このようなI/Iの値を有する炭素繊維構造体は、結晶構造の乱れたカーボン層を有するものであり、結晶構造の乱れたカーボン層を有する炭素繊維は、アモルファスCNTとも呼ばれる。結晶構造の乱れたカーボン層は、通常の結晶構造が整ったCNTよりも反応性に富み、マトリックス金属と反応し易く、より高強度な金属基炭素繊維複合材となる。
更に、用いる炭素繊維構造体を構成する多層型カーボンナノチューブは、チューブの長手方向に対する軸直交断面の最大径が15〜100nmであることが望ましい。
炭素繊維構造体を構成する多層型カーボンナノチューブの外径を15〜100nmの範囲のものとするのは、外径が15nm未満であると、マトリックス金属への改質剤として比較的多量に利用する本用途において、カーボンナノチューブの工業的生産を困難とし適当でないためであり、一方、外径が100nmを超えると、炭素繊維の物性上直径が小さいほど単位量当たりの本数が増えると共に、炭素繊維の軸方向への長さも長くなり、高い導電性が得られるため、マトリックス金属へ改質剤、添加剤として配される炭素繊維構造体として適当でないためである。
また、用いる炭素繊維構造体は、面積基準の円相当平均径が50〜100μm程度であることが望ましい。ここで、面積基準の円相当平均径とは、炭素繊維構造体の外形を電子顕微鏡などを用いて撮影し、この撮影画像において、各炭素繊維構造体の輪郭を、適当な画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製、商品名「WinRoof」。)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各繊維構造体の円相当径を計算し、これを平均化したものである。
複合化されるマトリックス金属の種類によっても左右されるため、全ての場合において適用されるわけではないが、この円相当平均径は、マトリックス金属中に配合された場合における当該炭素繊維構造体の最長の長さを決める要因となるものである。概して、円相当平均径が50μm未満であると、例えば、マトリックス中へ配合する際に大きな粘度上昇が起こり、混合分散が困難又は成形性が劣化するおそれがあるためである。
更に、用いる炭素繊維構造体は、上記したように、3次元ネットワーク状に存在する炭素繊維が粒状部において互いに結合され、該粒状部から該炭素繊維が複数延出する形状を呈しており、このため当該構造体は、炭素繊維が疎に存在した嵩高な構造を有するが、具体的には、例えばその嵩密度が0.0001〜0.05g/cmであることが好ましく、0.001〜0.02g/cmであることがより好ましい。嵩密度が0.05g/cmを超えるものであると、少量添加によって、マトリックス金属の物性を改善することが難しくなるためである。
上記したような形状を有する炭素繊維構造体は、特に限定されるものではないが、例えば、次のようにして調製することができる。
基本的には、遷移金属超微粒子を触媒として炭化水素等の有機化合物をCVD法で化学熱分解して繊維構造体(以下、「中間体」という。)を得、これを更に高温熱処理する。
原料有機化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素、一酸化炭素(CO)、エタノール等のアルコール類などが使用できる。特に限定されるわけではないが、本発明に用いる繊維構造体を得る上においては、炭素源として、分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることが好ましい。なお、本明細書において述べる「少なくとも2つ以上の炭素化合物」とは、必ずしも原料有機化合物として2種以上のものを使用するというものではなく、原料有機化合物としては1種のものを使用した場合であっても、繊維構造体の合成反応過程において、例えば、トルエンやキシレンの水素脱アルキル化(Hydrodealkylation)などのような反応を生じて、その後の熱分解反応系においては分解温度の異なる2つ以上の炭素化合物となっているような態様を含むものである。
雰囲気ガスには、アルゴン、ヘリウム、キセノン等の不活性ガスや水素を用いることができる。
また、触媒としては、鉄、コバルト、モリブデンなどの遷移金属又はフェロセン、酢酸金属塩などの遷移金属化合物と、硫黄やチオフェン、硫化鉄などの硫黄化合物との混合物を使用する。
図3のSEM写真に示す中間体の合成は、通常行われている炭化水素等のCVD法を用い、原料となる炭化水素及び触媒の混合液を蒸発させ、水素ガス等のキャリアガスとして反応炉内に導入し、800〜1300℃の温度で熱分解する、これにより、外径が15〜100nmの繊維相互が、上記触媒の粒子を核として成長した粒状体によって結合した疎な三次元構造を有する炭素繊維構造体(中間体)が複数集まった数cmから数十cmの大きさの集合体が合成される。
原料となる炭化水素の熱分解反応は、主として触媒粒子ないしこれを核として成長した粒状体表面において生じ、分解によって生じた炭素の再結晶化が当該触媒粒子ないし粒状体より一定方向に進むことで、繊維状に成長する。
しかしながら、本発明に用いる炭素繊維構造体を得る上においては、このような熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させる。例えば上記したように炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることで、一次元的方向にのみ炭素物質を成長させることなく、粒状体を中心として三次元的に炭素物質を成長させる。もちろん、このような三次元的な炭素繊維の成長は、熱分解速度と成長速度とのバランスにのみ依存するものではなく、触媒粒子の結晶面選択性、反応炉内における滞留時間、炉内温度分布等によっても影響を受ける。
また、上記熱分解反応と成長速度とのバランスは、上記したような炭素源の種類のみならず、反応温度及びガス温度等によっても影響を受けるが、概して、上記したような熱分解速度よりも成長速度の方が速いと、炭素物質は繊維状に成長し、一方、成長速度よりも熱分解速度の方が速いと、炭素物質は触媒粒子の周面方向に成長する。
従って、熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させることで、上記したような炭素物質の成長方向を一定方向とすることなく、制御下に多方向として、上記したような三次元構造を形成することができるものである。
なお、生成する中間体において、繊維相互が粒状体により結合された上記したような三次元構造を容易に形成する上では、触媒等の組成、反応炉内における滞留時間、反応温度、ガス温度等を最適化することが望ましい。
例えば、触媒及び炭化水素の混合ガスを800〜1300℃の範囲の一定温度で加熱生成して得られた中間体は、炭素原子から成るパッチ状のシート片を張り合わせたような(生焼け状態の、不完全な)構造を有し、ラマン分光分析をすると、Dバンドが非常に大きく、欠陥が多い。また、生成した中間体は、未反応原料、非繊維状炭化物、タール分及び触媒金属を含んでいる。
従って、このような中間体からはこれら残留物を除去するため、炭素繊維構造体含有プリフォームを得る以前において、この中間体を800〜1500℃で加熱して未反応原料やタール分などの揮発分を除去してもよいが、この中間体をそのまま用いて、炭素繊維構造体含有プリフォームを得る過程における焼成により、これら残留物を同時に除去するようにしてもよい。
このような加熱処理前もしくは処理後において、炭素繊維構造体の円相当平均径を数cmに解砕処理する工程と、解砕処理された炭素繊維構造体の円相当平均径を50〜100μmに解砕処理する工程とを経ることで、所望の円相当平均径を有する炭素繊維構造体を得る。なお、解砕処理を経ることなく、粉砕処理を行ってもよい。また、用いる炭素繊維構造体を複数有する集合体を、使いやすい形、大きさ、嵩密度に造粒する処理を行ってもよい。更に好ましくは、反応時に形成された上記構造を有効に活用するために、嵩密度が低い状態(極力繊維が伸びきった状態でかつ空隙率が大きい状態)で、加熱処理すると更にマトリックス金属を含浸させる上で効果的である。
次に、バインダーについて詳細に説明する。
本発明においては、用いるバインダーとしては、プリフォームが溶湯鍛造時の圧力によって圧壊、若しくは圧縮しないように、上記炭素繊維構造体同士を結合できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば無機バインダーや有機バインダーを好適例として挙げることができる。
このような無機バインダーとしては、例えばアルミナ系、シリカ系バインダーを挙げることができ、有機バインダーとしては、例えばフェノール系バインダーやピッチ系バインダーを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
次に、分散媒について詳細に説明する。
本発明においては、用いる分散媒としては、上記炭素繊維構造体とバインダーとを均一となるように分散させ得るものであれば特に限定されるものではなく、例えば有機溶媒を好適例として挙げることができる。
このような有機溶媒としては、例えばメタノールやプロパノール、エタノールなどのアルコール、ベンゼンやトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは適宜混合して用いてもよい。
なお、このような有機溶媒は、有機バインダーを溶解するものである必要はない。
次に、マトリックス金属について詳細に説明する。
本発明においては、金属基炭素繊維複合材を構成するマトリックス金属として、特に限定されるものではないが、通常のアルミニウム(Al)やマグネシウム(Mg)などを含む軽金属を適用することができる。
例えばAlを含む軽金属としては、Al金属単体でもよいが、融点を下げて溶融金属の流動性を向上させる効果のある、即ち溶湯鋳造法における含浸工程の含浸抵抗を低下させる効果のあるケイ素(Si)を適量添加したAl合金が望ましく、ケイ素(Si)の含有量が1〜15%であるAl合金が特に好ましい。
また、例えばMgを含む軽金属としては、Mg金属単体でもよいが、鋳造性や強度、耐熱性を向上させる効果のある亜鉛(Zn)やアルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、希土類元素(RE)を添加したMg合金を挙げることができる。
なお、希土類元素としては、特に限定されるものではないが、典型的にはセリウム(Ce)やランタン(La)を主成分とするミッシュメタルが挙げられる。
そして、代表的なマトリックス金属として、Si、Mg、Cu又はNi、及びこれらの任意の組み合わせに係る合金元素を含むAl合金や、主たる合金元素として、Zn、Al、Ca、Mn、Si、Zr又はRE、及びこれらの任意の組み合せに係る合金元素を含むMg合金などを挙げることができる。
このときAl合金内には、マトリックス金属と炭素繊維構造体のカーボンとの反応相に相当する高強度であるAlを形成することができ、Al基炭素繊維複合材の高強度化を図ることができる。
次に、本発明の金属基炭素繊維複合材の製造方法について説明する。
上述の如く、本発明の金属基炭素繊維複合材の製造方法は、上記本発明の金属基炭素繊維複合材を製造する方法であって、下記の工程(1)〜(6)を含む。
(1)成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体、バインダー、及び分散媒を混合して懸濁液を得る工程
(2)懸濁液を乾燥して混合物を得る工程
(3)混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程
(4)圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程
(5)ラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2を超え1.2以下である炭素繊維構造体を含む上記硬化圧縮成形体を800〜1500℃の温度条件で焼成して炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程
(6)炭素繊維構造体含有プリフォームに、溶融したマトリックス金属を含浸させ、固化して金属基炭素繊維複合材を得る工程
このような構成とすることにより、優れた強度を示す金属基炭素繊維複合材を得ることができる。また、バインダーとして有機バインダーを用いた場合には、熱伝導特性にも優れたものとなる。
ここで、上記各工程について更に詳細に説明する。
上記工程(1)においては、所望の懸濁液が得られれば、即ち炭素繊維構造体とバインダーを均一に混合し得れば特に限定されるものではなく、従来公知の手法により混合すればよい。
また、上記工程(2)においては、所望の混合物が得られれば、特に限定されるものではなく、従来公知の手法により乾燥すればよい。
更に、上記工程(3)においては、所望の圧縮成形体が得られれば、特に限定されるものではなく、従来公知の手法により圧縮すればよい。
また、上記工程(4)においては、所望の硬化圧縮成形体が得られれば、特に限定されるものではなく、ホットプレスなどの従来公知の手法により硬化処理すればよい。
更に、上記工程(5)においては、所定の炭素繊維構造体含有プリフォームが得られれば、特に限定されるものではなく、従来公知の手法により焼成すればよい。
なお、800〜1500℃の範囲外で焼成した場合、800℃未満においては、添加されたバインダーが炭化されることなく残存するとともに、未反応原料やタール分の除去を行っていないときは、これらも残存することとなるため、金属基炭素繊維複合材の強度において所望の効果を得られなくなることから好ましくなく、また、1500℃超においては、炭素繊維構造体の黒鉛化が進むことで、金属基炭素繊維複合材における炭素繊維含有プリフォームとマトリックス金属との界面における濡れ性が低下するため、金属基炭素繊維複合材の強度において所望の効果を得られなくなることから好ましくない。
更にまた、上記工程(6)においては、所期の金属基炭素繊維複合材が得られれば、特に限定されるものではなく、従来公知の手法によりマトリックス金属を含浸し、固化すればよい。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図4は、実施例1に係る金属基炭素繊維複合材の製造方法の一例を示すフローチャートである。同図に示すように、まず、炭素繊維構造体(多層型カーボンナノチューブの長手方向に対する軸直交断面の平均径:50nm、ラマン分光分析法で測定されるI/I:0.85)と、バインダーとしてのフェノール樹脂と、分散媒としてのメタノールを用意した。
次に、メタノール中に、得ようとする炭素繊維構造体含有プリフォームの全体積に対して、炭素繊維構造体を30体積%となるように、更にフェノール樹脂を15体積%となるように添加し、約5分間撹拌混合して、懸濁液を得た。
次に、得られた懸濁液を乾燥炉において、大気中、70℃で、1時間乾燥させて、混合物を得た。
次に、得られた混合物を図5に示すような内径40mmの成形型を用いて、図6に示すような圧縮成形体(直径40mm、厚み6mm)を得た。なお、図5は、用いた成形型の断面図であり、図5に示すように、成形型10は、ダイ11と下パンチ12と上パンチ13から構成される。また、図6は、得られた圧縮成形体の上面図(a)及び側面図(b)である。
次に、得られた圧縮成形体を乾燥炉において、大気中、150℃で、10分間熱処理し、フェノール樹脂を硬化(硬化処理)させ、硬化圧縮成形体を得た。
次に、硬化圧縮成形体を焼成炉において、Ar中、900℃で、20分間焼成して、炭素繊維構造体含有プリフォームを得た。
次に、得られた炭素繊維構造体含有プリフォームを加熱(予熱温度:700℃)した後、マトリックス金属としてのAl金属単体(JIS‐H 4000で規定されるA1050P)を用いて、溶湯鍛造(鋳込み温度:700〜750℃、加圧力:80〜100MPa)することにより、本例の金属基炭素繊維複合材(インゴット)を得た。
得られたインゴットを用いて、X線回折法(XRD)分析を行った。得られた結果を図7に示す。同図に示すように、マトリックス金属であるアルミニウムと炭素繊維構造体との間に介在する反応相としてのAlが検出された。
(実施例2)
炭素繊維構造体として、ラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.5であるものを用いた以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の金属基炭素繊維複合材(インゴット)を得た。
得られたインゴットを用いて、XRD分析を行ったところ、図示しないが実施例1と同様にマトリックス金属であるアルミニウムと炭素繊維構造体との間に介在する反応相としてのAlが検出された。
(比較例1)
炭素繊維構造体として、ラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2であるものを用い、更に、硬化圧縮成形体を焼成炉において、不活性雰囲気中、2500℃で、20分間焼成して炭素繊維構造体含有プリフォームを得たこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の金属基炭素繊維複合材(インゴット)を得た。
得られたインゴットを用いて、XRD分析を行った。得られた結果を図8に示す。同図に示すように、マトリックス金属であるアルミニウムと炭素繊維構造体との間に介在する反応相としてのAlは検出されなかった。
[性能評価]
(曲げ試験)
上記各例のインゴットから試験片を切り出し、曲げ試験を下記条件で実施した。得られた結果を表1に示す。なお、表1中の「曲げ強度」とは、曲げ試験結果における最大荷重値を試験片断面積で除することにより算出した応力値である。また、「ヤング率」は、曲げ試験結果(応力−歪線図)から算出した。
(曲げ試験条件)
・装置名 :Instron社製 デジタル静的材料試験機 5867型
・試験速度 :0.1mm/min
・試験温度 :室温(23℃)
・試験片形状 :36×4×3(mm)
Figure 2008266702
表1より、本発明の範囲に属する実施例1及び2は、本発明外の比較例1に対して、曲げ強度及びヤング率が向上していることが分かる。
本発明に用いる炭素繊維構造体の一例を示すSEM写真である。 本発明に用いる炭素繊維構造体の一例を示すTEM写真である。 本発明に用いる炭素繊維構造体の中間体の一例を示すSEM写真である。 実施例1に係る金属基炭素繊維複合材の製造方法の一例を示すフローチャートである。 実施例1において用いた成形型を示す断面図である。 実施例1において得られた圧縮成形体を示す上面図(a)及び側面図(b)である。 実施例1におけるXRD分析の結果を示す図である。 比較例1におけるXRD分析の結果を示す図である。
符号の説明
10 成形型
11 ダイ
12 下パンチ
13 上パンチ

Claims (6)

  1. 成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体、バインダー、及び分散媒を混合して懸濁液を得る工程(1)と、
    上記懸濁液を乾燥して混合物を得る工程(2)と、
    上記混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程(3)と、
    上記圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程(4)と、
    ラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2を超え1.2以下である炭素繊維構造体を含む上記硬化圧縮成形体を800〜1500℃の温度条件で焼成して炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程(5)と、
    上記炭素繊維構造体含有プリフォームに、溶融したマトリックス金属を含浸させ、固化して金属基炭素繊維複合材を得る工程(6)と、
    を含む金属基炭素繊維複合材の製造方法により製造されることを特徴とする金属基炭素繊維複合材。
  2. 上記マトリックス金属が、主たる合金元素として、ケイ素、マグネシウム、銅及びニッケルから成る群より選ばれた少なくとも1種を含有するアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1に記載の金属基炭素繊維複合材。
  3. 上記多層型カーボンナノチューブは、チューブの長手方向に対する直交断面の最大径が15〜100nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属基炭素繊維複合材。
  4. 上記炭素繊維構造体は、面積基準の円相当平均径が50〜100μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の金属基炭素繊維複合材。
  5. 上記炭素繊維構造体は、嵩密度が0.0001〜0.05g/cmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の金属基炭素繊維複合材。
  6. 成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体、バインダー、及び分散媒を混合して懸濁液を得る工程(1)と、
    上記懸濁液を乾燥して混合物を得る工程(2)と、
    上記混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程(3)と、
    上記圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程(4)と、
    ラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2を超え1.2以下である炭素繊維構造体を含む上記硬化圧縮成形体を800〜1500℃の温度条件で焼成して炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程(5)と、
    上記炭素繊維構造体含有プリフォームに、溶融したマトリックス金属を含浸させ、固化して金属基炭素繊維複合材を得る工程(6)と、
    を含むことを特徴とする金属基炭素繊維複合材の製造方法。
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