JP2008253265A - GPR3、GPR6、およびGPR12からなる群から選ばれる受容体タンパク質を用いる、Nesfatin−1作用調節物質またはNesfatin−1様作用物質のスクリーニング方法 - Google Patents

GPR3、GPR6、およびGPR12からなる群から選ばれる受容体タンパク質を用いる、Nesfatin−1作用調節物質またはNesfatin−1様作用物質のスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Nesfatin-1受容体を同定すること、およびそのNesfatin-1受容体を用いた、Nesfatin-1作用調節物質またはNesfatin-1様作用物質をスクリーニングまたはデザインする方法を提供すること。
【解決手段】GPR3、GPR6、およびGPR12からなる群から選ばれる受容体タンパク質に試験物質を作用させる工程、およびNesfatin-1作用の変化に基づいてNesfatin-1様作用物質を特定する工程を含む、Nesfatin-1様作用物質のスクリーニング方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、本発明により初めてNesfatin-1受容体として機能することが明らかにされたGPR3、GPR6、またはGPR12を用いる、Nesfatin-1作用調節物質またはNesfatin-1様作用物質のスクリーニング方法に関する。
肥満とは、体重(特に白色脂肪組織)が過剰にある状態であり、一般的にBody Mass Index(BMI)が≧25kg/m2であることによって分類され、また体脂肪率では成人男性で25%以上・成人女性で30%以上であることでも分類される。高脂肪食を中心とした食生活や運動不足は現代において、肥満に分類される人の割合は増加の傾向にある。2000年の厚生労働省による国民栄養調査の結果では、男性においてはこの10年および20年での比較で肥満に分類される人は確実に増えており、40歳から69歳においては約30%の人が肥満に分類される。また女性においても60歳から69歳における約30%が肥満に分類される。
現在、肥満そのものよりもそれに随伴する(随伴し得る)健康障害は、臨床上の大きな問題となっており、肥満の予防や治療の医学的根拠となっている。日本肥満学会では、肥満症を「肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、臨床的にその合併が予測される場合で、医学的に減量を必要とする病態」と定義し、疾患として取り扱うことを提唱している。ここで言う健康障害には、2型糖尿病や耐糖能異常のほかに、高血圧、高脂血症、高尿酸血症、脂肪肝、心・脳血管疾患、睡眠時無呼吸症候群、変形性関節症などの整形外科的疾患、月経異常などが含まれる(非特許文献1)。また肥満に起因する疾患としては悪性腫瘍が挙げられ、特に乳ガン、子宮ガン、結腸ガン、腎臓ガン、食道ガン、膵臓ガン、肝臓ガン、胆嚢ガンの発症に関して肥満がリスクファクターとなることが報告されている(非特許文献1〜3)。さらに近年、メタボリックシンドロームと呼ばれる動脈硬化性疾患(心筋梗塞・脳梗塞など)の危険性を高める複合型リスク症候群が提唱されており、我が国における脳血管障害・心血管障害は全死亡率の30%を占めることからも注目されている。そのため、日本肥満学会・日本動脈硬化学会・日本糖尿病学会・日本高血圧学会・日本循環器学会・日本腎臓学会・日本血栓止血学会・日本内科学会は合同でその診断基準をまとめ、2005年4月8日の日本内科学会での記者会見でその基準を公表した。それによると、内臓肥満(内臓脂肪蓄積)をリスクの中心にすえ、ウエストの周囲径が男性では85cm以上、女性では90cm以上あることに加えて、血清脂質異常(トリグリセリド値が150mg/dL以上、HDLコレステロール値が40mg/dL未満の何れかまたは両方)、血圧高値(収縮期血圧が130mmHg以上、拡張期血圧が85mmHgの何れかまたは両方)、高血糖(空腹時血糖値が110mg/dL以上)のうちの2つ以上のリスクを持つ場合をメタボリックシンドロームと診断することとなった(非特許文献4)。この基準を用いた場合、人間ドックを受診した290名の成人男子のうち、肥満症と診断された人が61名(21%)であったのに対して、メタボリックシンドロームと診断された人は27名(9%)であり、肥満症に含まれずにメタボリックシンドロームと診断された人も9名(3%)存在したという報告もある(非特許文献5)。
肥満に対して、過度の体重の低下(いわゆる「やせ」)や摂食の低下(いわゆる「食欲不振」)は、生体防御(免疫)反応の低下による易感染、造血系障害、無月経または月経不順、不妊症、精神的障害、末梢神経麻痺、低血圧、骨粗訴訟症などを引き起こす原因として問題になる。一般的にBMIが<18.5Kg/m2の場合、もしくは体脂肪率が男性では10%以下、女性では15%以下の場合をやせに分類する。2000年の厚生労働省による国民栄養調査では、女性においてはBMI<18.5Kg/m2の人の割合は20歳から39歳でこの10年および20年の間で確実に増えており、20〜29歳の人においては約24%が「やせ」に分類される。これは若年の女性において体型を気にするための意図的な摂食量の調節による可能性もある。しかしながら、この年代層で多発する中枢性摂食異常症の中の神経性食欲不振症(拒食症)などにおいては食欲自体が極度に低下して、栄養状態が悪化して全身衰弱で死亡する場合もある。また、従来胃下垂・胃アトニー・神経性胃炎と言われていた概念を含む食欲が低下する疾患として、Functional dyspepsiaと呼ばれる疾患があり、この疾患は、食後早期の満腹感、食欲低下などの症状を示すと言われている(非特許文献6)。さらに、食欲不振を起こす原因としては癌、炎症性疾患、下垂体・甲状腺・副腎などの機能低下、手術後、過度のストレスなどが挙げられ、このような状態で長期間食欲不振が持続することは身体の衰弱を引き起こす。
このような状況において、近年摂食を調節する生体内因子の研究が盛んに行われており、レプチン・アディポネクチン・グレリンなどの因子と摂食調節との関連についても研究がされている。近年では、摂食や肥満に関係する物質としてNesfatin-1が報告されており(非特許文献7)、摂食調節および/または体重調節に関与する新規因子として期待されている。
ある因子の受容体は、かかる因子と同様の作用を有する物質、またはかかる因子の作用を調節する物質の探索において有益なため、しばしばその単離が試みられる。しかし、かかる因子が作用する細胞の種類や、その細胞が置かれた組織内環境によって、因子−受容体間の相互作用は異なるため、受容体の単離は通常困難である。また、同様の作用を有する因子であっても類似の受容体構造を有するとは限らないため、因子の作用から受容体構造を予測することも極めて困難である。
例えば、摂食を調節する生体内因子であるレプチンは、その受容体の存在が知られているが、その受容体は、1回膜貫通型受容体で、IL-6、G-CSF、LIFなどのサイトカイン受容体に共通したシグナル伝達分子であるgp130に類似する構造を有していることが知られている。一方、Nesfatin-1の受容体は未だ報告がなされておらず、その解明が望まれていた。
Gタンパク質共役型受容体(以下、GPCRと略称する)は、Gタンパク質と共役して情報伝達する受容体群をいい、かかる受容体は細胞膜を7回繰り返して貫通するという特徴的な共通構造を有している。かかるGPCRでは、広い範囲にわたってホルモン、神経伝達物質、感覚刺激等さまざまな応答が知られている。そのうち、いくつかのGPCRにおいて肥満との関連性が報告されている(非特許文献8)。
非特許文献9では、GPCR12(以下、GPR12とも言う)のKOマウスで、体重増加や白色脂肪増加などが示されたが、摂食は何ら影響を受けなかったことが報告されており、GPR12は、低エネルギー消費に関与するであろうことが示唆されている。また、このGPR12は、GPR3およびGPR6とファミリーを形成することが知られており、非特許文献10では、sphingosine 1-phosphate(以下、S1Pと略称する)がGPR12とそのファミリー(GPR3及びGPR6 )の内在性リガンドであることが、非特許文献11では、sphingosylphosphorylcholine(以下、SPCと略称する)がGPR12の内在性リガンドであることが、報告されている。
松澤佑次 日本臨牀 株式会社日本臨牀社発行 2003年7月28日 61巻 増刊号6「肥満症」 p5−8 アブーアビッド(Abu-Abid)等 ジャーナル・オブ・メディシン(Journal of medicine)(ΜSA)2002年1月1日 33巻1−4号 p73−86 ナイアー(Nair)等 ヘパトロジー(Hepatology)(ΜSA) 2002年7月1日 36巻1号 p150−155 日本内科学会雑誌 メタボリックシンドローム診断基準検討委員会 2005年4月号 94巻 p794−809 医学の歩み 高橋和男、齋藤 康 2005年 213巻6号 p549−554 タリィ(Talley )等 ガット(Gut)(England) 1999年 45巻 Suppl 2: p1137-1142 Oh-I S. et al. Nature, 443(7112):709-12, 2006 Xu et al., European Journal of Pharmacology 500: 243-253, 2004 Bjursell M et al. Biochemical and Biophysical Research Communication, 348(2): 359-366, 2006 Uhlenbrock K et al. Cellular Signaling, 14(11): 941-953, 2002 Ignatov A et al. The Journal of Neuroscience, 23(3): 907-914, 2003
本発明が解決しようとする課題は、未知のNesfatin-1受容体を同定し、そのNesfatin-1受容体を用いてNesfatin-1の作用を調節する物質またはNesfatin-1様作用を有する物質を、スクリーニングまたはデザインする方法を提供することである。
本発明者らは、脳に発現するGPCRを候補受容体としてスクリーニングすることにより、GPR12がNesfatin-1によりシグナル伝達が生じるNesfatin-1受容体であることを同定するに至り、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のものに関する。
(1)GPR3、GPR6、およびGPR12からなる群から選ばれる受容体タンパク質に試験物質を作用させる工程、および
Nesfatin-1作用の変化に基づいてNesfatin-1様作用物質を特定する工程を含む、
Nesfatin-1様作用物質のスクリーニング方法。
(2)前記受容体タンパク質が、GPR12である(1)記載のスクリーニング方法。
(3)前記試験物質が、配列番号1〜3、または11〜37のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するペプチドを改変してなるペプチドまたはペプチド類似化合物である(1)または(2)記載のスクリーニング方法。
(4)受容体タンパク質に試験物質を作用させる工程が、前記受容体タンパク質を発現する、細胞または非ヒト動物に、試験物質を作用させる工程である、(1)〜(3)のいずれかに記載のスクリーニング方法。
(5)GPR3、GPR6、およびGPR12からなる群から選ばれる受容体タンパク質と、Nesfatin-1との共存系に、試験物質を作用させる工程、および
Nesfatin-1作用の変化に基づいてNesfatin-1作用調節物質を特定する工程を含む、
Nesfatin-1作用調節物質のスクリーニング方法。
(6)前記受容体タンパク質が、GPR12である(5)記載のスクリーニング方法。
(7)前記受容体タンパク質とNesfatin-1との共存系に、試験物質を作用させる工程が、試験物質をNesfatin-1と共に、前記受容体タンパク質を発現する、細胞または非ヒト動物に作用させる工程である、(5)または(6)記載のスクリーニング方法。
(8)Nesfatin-1受容体構造を、既知のGPR3、GPR6、またはGPR12の構造情報に基づきシミュレーションし、そのシミュレーションされたNesfatin-1受容体構造、またはリガンド構造に基づいて、Nesfatin-1作用調節物質またはNesfatin-1様作用物質をin silicoスクリーニングする方法、またはデザインする方法。
本発明により、Nesfatin-1作用調節物質またはNesfatin-1様作用物質を、in vitroまたはin silicoでスクリーニングする方法を提供することができる。
さらに本発明は、摂食調節および/または体重調節の関連因子、特に肥満症候群、摂食障害、代謝異常、糖尿病などの疾患の治療薬をスクリーニングする方法を提供する。
<Nesfatin-1作用調節物質のスクリーニング方法>
本発明は、GPR3、GPR6、およびGPR12からなる群から選ばれる受容体タンパク質と、Nesfatin-1との共存系に、試験物質を作用させる工程、およびNesfatin-1作用の変化に基づいてNesfatin-1作用調節物質を特定する工程を含む、Nesfatin-1作用調節物質のスクリーニング方法に関する。
本発明において、「Nesfatin-1」とは、配列番号1〜3に示される、摂食抑制および/または体重増加抑制活性を有するポリペプチドである。Nesfatin-1は、NESFATIN/NEFAから、生体内のプロホルモン・コンバターゼ等の切断酵素で切り出されることにより、摂食抑制および/または体重増加抑制活性を示すと考えられている(非特許文献7)。
かかるNesfatin-1は、配列番号42〜47のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するNESFATINポリペプチドをプロホルモン・コンバターゼで切断したのち、逆相クロマトグラフィー等で精製することにより、またはNesfatin-1ポリペプチドに対する抗体に対する結合と遊離の工程を行なうことにより取得することができる。また、実施例1のようにして組換えNesfatin-1を取得することもできる。
本発明においてGPR12は、Nesfatin-1受容体として機能することが初めて明らかにされた受容体タンパク質である。GPR12は、具体的には、例えば、配列番号7または8に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。なお、配列番号7および8に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質は、マウス由来のGPR12であるが、本明細書において、「Nesfatin-1受容体」として機能するGPR12には、ヒト、ラット、その他由来の異なるGPR12も含まれ、GPR12と称されるタンパク質であれば、特にその由来は限定されない。
Nesfatin-1は公知の摂食及び/または体重調節活性を有する生体内因子特にペプチドホルモンとは強い相同性を示さないため、従来のそれらの生体内因子に対するレセプターの情報からNesfatin-1の受容体の構造等を類推することは不可能であった。そのため、発明者らは実施例2乃至実施例3において詳述するように、種々の仮説を基に33種類のGPCRを選択し、それらのGPCRの遺伝子を取得して、個々のGPCRが発現する細胞を作成し、種々の条件でNesfatin-1との反応性を解析することによって初めて、GPR12がNesfatin-1の受容体であることが見出された。なお、背景技術に示したように、GPR12のリガンドはS1PやSPCなどの物質と考えられており、Nesfatin-1を含むペプチドのリガンドの受容体であることが予測できる情報がなかった。また、Nesfatin-1を動物に投与した際の該動物の行動としては、顕著な摂食抑制を示すことが知られているが、GPR12のノックアウトマウスは摂食が抑制されなかったということが報告されており(Bjursell M et al. BBRC, 348(2):359-66, 2006)、その点においてもGPR12がNesfatin-1のレセプターであることは予想外のことであった。
さらに、GPR3およびGPR6は、GPR12とファミリーを形成することが知られている。ヒトのGPR12と、GPR6およびGPR3との相互のアミノ酸配列の相同性を調べると(Program:water、Matrix: EBLOSUM62、Gap_penalty: 10.0、xtend_penalty: 0.5の条件)、アミノ酸残基の同一性(Identity)は57〜59%、性質上置換可能なアミノ酸残基の置換を許す類似性(Similarity)は73〜76%と、高い相同性を示し、GPR12、GPR6およびGPR3は構造的に類似性が高い。また、これらのレセプターはS1Pをリガンドとするとされる点で、GPR12と共通する性状を有する。そのため、GPR3およびGPR6が、GPR12と同様「Nesfatin-1受容体」として機能することは、当業者であれば期待するものである。GPR3およびGPR6のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号48および49に示される。
また、本発明において、GPR3、GPR6またはGPR12の代わりに、配列番号7もしくは8に示されるアミノ酸配列(GPR12)、配列番号48に示されるアミノ酸配列(GPR3)、または配列番号49に示されるアミノ酸配列(GPR6)と、70%以上のホモロジーを有するアミノ酸配列を有し、後述のNesfatin-1作用に関与しうるGPR3改変体、GPR6改変体またはGPR12改変体を用いてもよく、かかる改変体も本発明の範囲に含まれる。かかる場合、配列番号7、8、48または49で示されるアミノ酸配列とのホモロジーは、80%以上が好ましく、90%以上がさらに好ましい。また、配列番号7または8に示されるアミノ酸配列において、その一部のアミノ酸が欠失、挿入もしくは置換されたアミノ酸配列を有し、Nesfatin-1作用に関与しうるタンパク質を用いてもよい。このようなタンパク質は、たとえば、配列番号7または8のアミノ酸配列において、1つ以上のアミノ酸残基を、該アミノ酸と化学的性状または構造的に類似のアミノ酸と置換することにより取得することができる。このような化学的性状または構造的に類似したアミノ酸の置換、すなわち保存性の高いアミノ酸の置換の具体的な態様は、当業者によって広く知られている。たとえば、グリシン(Gly)はプロリン(Pro)、アラニン(Ala)およびバリン(Val)と、ロイシン(Leu)はイソロイシン(Ile)と、グルタミン酸(Glu)はグルタミン(Gln)と、アスパラギン酸(Asp)はアスパラギン(Asn)と、システイン(Cys)はスレオニン(Thr)と、Thrはセリン(Ser)およびAlaと、リジン(Lys)はアルギニン(Arg)と、化学的性状または構造が類似するものである。さらに別の方法としては、アミノ酸の置換し易さを行列として表したアミノ酸マトリックス、例えばPAM(ウィルバー(Wilbur)、モレキュラー・バイオロジー・アンド・エボリューション(Molecular biology and evolution)(USA) 1985年 2巻 p434-447)やBLOSUM(ヘニコフ(Henikoff)等、プロシーディング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)(USA) 1992年 89巻 p10915-10919)などを参照して、そのスコアの高さを勘案してアミノ酸の置換を行うことは、当業者であれば容易に行うことができる。このようなアミノ酸が欠失、挿入もしくは置換されたアミノ酸配列を有するタンパク質は、例えば、配列番号7に示されるmGPR12をコードする遺伝子の塩基配列に対して適宜欠失、挿入もしくは置換を行うことによって変異を導入した遺伝子を作成し、その遺伝子を用いてGPR12改変体導入細胞を作成して、Nesfatin-1との結合または細胞のシグナルを検出することによって、Nesfatin-1作用に関与するタンパク質であるかを同定することができる。さらに、本発明において、GPR3、GPR6またはGPR12は、配列番号7、8、48、または49のアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基が、化合物またはペプチドによって修飾され、Nesfatin-1作用に関与しうるタンパク質を用いてもよい。
なお、以下、便宜上、GPR3、GPR6、およびGPR12からなる群から選ばれる受容体タンパク質を、まとめて「Nesfatin-1受容体」という。
本発明において、「Nesfatin-1作用」とは、Nesfatin-1によって引き起こされる一連の作用を意味し、例えば、Nesfatin-1とNesfatin-1受容体との結合、そのNesfatin-1のNesfatin-1受容体への結合によって起こるシグナル伝達、そのシグナル伝達により生じる細胞外への応答、ひいては摂食抑制および/または体重増加抑制作用等があげられる。「Nesfatin-1作用調節物質」とは、かかるNesfatin-1作用を調節する物質をいい、Nesfatin-1作用を阻害または亢進する物質をいう。
Nesfatin-1作用を阻害する物質としては、例えば、Nesfatin-1受容体に対するアンタゴニスト、インバースアゴニスト、ニュートラルアンタゴニストがあげられるが、そのほかNesfatin-1がNesfain-1受容体と結合した際に生じるシグナル伝達の強度または頻度を低下させるような物質や、Nesfatin-1受容体がNesfatin-1やその他のアゴニストと作用した後に生じるシグナルを発生しない不応答期間を開始促進、延長または持続させる作用(レセプターインターナリゼショーンの促進・持続作用、再リクルートメントの阻害など)を有する物質などが挙げられる。
また、Nesfatin-1作用を亢進する物質としては、例えば、Nesfatin-1受容体に対するアゴニストやNesfatin-1がNesfain-1受容体と結合した際に生じるシグナル伝達の持続時間または強度もしくは頻度を亢進させるような増大させる物質などがあげられる。また、本件明細書において、Nesfatin-1受容体に対するアゴニスト作用を持つ物質は、「Nesfatin-1様作用物質」ともいう。
本発明のNesfatin-1作用調節物質のスクリーニング方法において、Nesfatin-1作用調節物質は、Nesfatin-1作用の変化に基づいて特定することができる。かかる「Nesfatin-1作用の変化」とは、Nesfatin-1とNesfatin-1受容体との結合能、Nesfatin-1受容体のシグナル伝達能、ならびに摂食行動および/または体重調節作用の変化等があげられる。
具体的には、Nesfatin-1作用阻害物質は、「Nesfatin-1作用の変化」として、Nesfatin-1作用の減弱に基づいて特定することができる。Nesfatin-1作用の減弱とは、例えば、Nesfatin-1との拮抗等により引き起こされるNesfatin-1のNesfatin-1受容体への結合の低下;Nesfatin-1受容体の不活性化またはNesfatin-1との拮抗等によって引き起こされる、Gタンパク質共役シグナルの減弱、摂食亢進および/または体重増加作用等の事象があげられ、これらの事象を直接的または間接的に測定することにより、Nesfatin-1作用阻害物質を特定することができる。
逆に、Nesfatin-1作用亢進物質は、「Nesfatin-1作用の変化」として、Nesfatin-1作用の亢進に基づいて特定することができる。Nesfatin-1作用の亢進とは、例えば、Nesfatin-1のNesfatin-1受容体への結合の亢進;Nesfatin-1受容体の活性化等によって引き起こされる、Gタンパク質共役シグナルの活性化、摂食抑制および/または体重増加阻害作用等の事象があげられ、これらの事象を直接的または間接的に測定することにより、Nesfatin-1作用亢進物質を特定することができる。
Nesfatin-1のNesfatin-1受容体への結合の低下または亢進の測定は、当技術分野における一般的な解析方法、たとえば、FACSやBIACORE、FRET、古典的な直接結合アッセイ等の結合能解析により実施することができる。より具体的には、Nesfatin-1とNesfatin-1受容体との結合の評価は、例えば125Iで標識したNesfatin-1のNesfatin-1受容体発現細胞への結合を定量する系によって実施できる。この評価に用いる細胞としては、後述のNesfatin-1受容体発現細胞を用いることができ、また該細胞をホモジェナイズによって破壊して受容体が発現している細胞膜を回収して用いることによって行うことも可能である。標識化Nesfatin-1として、125Iの他にHで標識化されたNesfatin-1も用いることができ、該H標識化Nesfatin-1は、H標識化されたアミノ酸を用いて上記の方法で細胞系もしくは無細胞系で発現させることによって、またはペプチド合成法によって得ることができる。これらのラジオアイソトープされたNesfatin-1のNesfatin-1受容体への結合量は、例えばガンマカウンターやシンチレーションカウンターを用いることで測定できる。
また、Nesfatin-1を蛍光物質または発光物質で標識して、標識化Nesfatin-1のNesfatin-1受容体への結合量を測定することも可能である。Nesfatin-1の蛍光物質または発光物質の標識は、ハーマンソン(Hermanson)著 バイオコンジュゲート・テクニックス(BIOCONJUGATE Techniques) アカデミック・プレス(Academic Press)発行 1996年などに記載の方法で行うことができる。蛍光物質で標識されたNesfatin-1の結合量は、例えば蛍光分光光度計による測定やフローサイトメトリーなどの方法が用いられる。また、発光物質で標識されたNesfatin-1の結合量は、例えば発光光度計やシンチレーションカウンターでの測定法などが用いられる。さらに、別のNesfatin-1の標識法としては、アルカリフォスファターゼやパーオキシダーゼなどの酵素を結合させることであり、それらの酵素活性を測定するための基質を反応させて各基質の性状によって発色、蛍光、発光などを測定することで結合したNesfatin-1量を測定できる。酵素のNesfatin-1への結合は、ハーマンソン(Hermanson)著 バイオコンジュゲート・テクニックス(BIOCONJUGATE Techniques) アカデミック・プレス(Academic Press)発行 1996年などの方法を用いることができる。また、遺伝子工学的にNesfatin-1をコードするDNA分子とアルカリフォスファターゼなどの酵素をコードするDNA分子を使って融合タンパク質として発現させることも可能である(稗島(Hieshima)等 ジャーナル・オブ・イムノロジー(Journal of Immunology)(USA)1997年 159巻 p1140-1149)。また、Nesfatin-1をビオチンやその類縁物質で標識して、酵素や蛍光物質や発光物質などが結合したアビジンまたはその類縁タンパク質を反応させることによって、結合量を測定することも可能である。さらに、標識されていないNesfatin-1を用いてNesfatin-1受容体との結合を検出することも可能である。その一つの方法は、BIACORE(R)等の表面プラズモン共鳴法による測定で、センサーに固定化されたNesfatin-1受容体発現細胞または該細胞の細胞膜に対してのNesfatin-1の結合を、BIACORE(R)システム(BIACORE社)などを用いて測定することができる(永田・半田編 生体物質相互作用のリアルタイム解析実験法 シュプリンガー・フェアラーク東京発行 1998年)。また別の方法としては、BRET法によるNesfatin-1の結合を検出することも可能である。この方法はNesfatin-1受容体をコードするDNAとルシフェラーゼをコードするDNAを、これらが融合タンパク質として発現するように遺伝子を構築して細胞に遺伝子導入し、受容体が活性化した際に結合が認められるアレスチンにオワンクラゲの蛍光タンパク質を融合したタンパク質を発現するように作られた遺伝子を同時に細胞に導入してルシフェラーゼの発光性基質と反応させると、受容体にNesfatin-1が結合したときにのみ発光基質からの光エネルギーがオワンクラゲ蛍光タンパク質に転移することで波長のシフトが起こることを測定することにより、Nesfatin-1の結合量を測定することが可能となる(パッカード・バイオサイエンス社 アプリケーション・ノート#BLT-001)。
Nesfatin-1受容体によるGタンパク質共役シグナル伝達能の減弱または活性化の測定は、直接的または間接的な方法を用いて行うことができる(モリス(Morris)等、フィジオロジカル・レビューズ(Physiolosical Reviews) 1999年 79巻 p1373-1430)。直接的な方法とは、受容体と共役しているGタンパク質におけるGDP/GTP交換の状態の検出や、細胞内のcAMP量の増減、フォスフォリパーゼCの作用によるイノシトール−3リン酸の生成、細胞内カルシウムイオンの増減、Nesfatin-1受容体のインターナリゼーションなどを指標にして測定することができる。また間接的な方法としては、細胞の増殖、形態変化、遊走、発光などの指標を介して測定することが可能である。この測定による評価においては、目的に応じて後述のNesfatin-1受容体発現細胞や該細胞をホモジェナイズによって破壊して受容体が発現している細胞膜を回収して用いることが可能である。さらに当業者であれば、該細胞または細胞膜と必要な試薬および/または機器を組み合わせることによって、測定する方法を適宜構成することが可能である。
直接的に細胞のシグナルを測定する方法としては、より具体的な例としては共役するGタンパク質におけるGDP/GTP交換反応を測定する方法として、Nesfatin-1または後述の改変ペプチドまたはその他の被検物質を、Nesfatin-1受容体発現細胞または該細胞をホモジェナイズによって破壊して受容体が発現している細胞膜に反応させた際に、共役しているGタンパク質(Gs)に取りこまれる放射能標識されたGTP−γSなどGTPアナログの量の測定することで実施することができる。この場合、放射能標識としては、35S、32PやHなどを適宜用いることができる。
また、直接的に細胞のシグナルを測定する別の方法としては、cAMPの産生の減少または上昇の測定が挙げられ、Nesfatin-1もしくは後述の改変ペプチドまたはその他の被検物質を、Nesfatin-1受容体発現細胞に反応させ、その細胞内のcAMP量を測定することで、実施することができる。ここで、Nesfatin-1受容体であるGPR12はGs型のGタンパク質と共役しているため、受容体が活性化した状態では細胞内のcAMPの上昇として、作用が検出される。このcAMPの量の測定は、市販のELISAキット(Cayman社 Cat#581101 等)やパーキンネルマー社cAMP AlphaScreen camp assay kit(CatNo.6760600)などを用いることで測定できるが、これに限定されるものではない。
上述のように細胞内のcAMPが増大した場合には、細胞内のシグナル系が連続的に反応して細胞内での遺伝子発現の活性化にいたる。その代表的な例としては、cAMP依存的に活性化するプロテインキナーゼA(PKA)がゲノム遺伝子上のCRE(cAMP responcsive element)に結合する転写因子であるCREB(CRE-binding protein)をリン酸化して活性化し、さらに活性化したCREBによってCREの下流に存在する遺伝子の転写の反応が起こる経路である(ラリ(Ralli)等、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry)、1994年 269巻 p17359-17362)。したがって、細胞のシグナルを測定する方法としては、この経路のコンポーネントを使用することも可能であり、例えばPKAの活性化やCREBのリン酸化、CREの下流遺伝子の発現などによってシグナルの測定を行うことが可能である。その実例として、実施例7にCREBのリン酸化による測定方法を、実施例8にCREの下流に配置されたレポーター遺伝子(標的遺伝子発現の指標遺伝子)の発現による酵素活性の変化での測定方法を例示しているが、これらに限定されず、当業者であれば適宜測定系を構築することが可能である。
さらに、別の直接的に細胞のシグナルを測定する方法としては、フォスフォリパーゼCの作用によるイノシトール−3リン酸の生成、細胞内カルシウムイオンの増減によるGタンパク質シグナルの検出が挙げられる。Uhlenbrock らはGPR12の遺伝子を導入して発現させた細胞で、S1PやSPCを作用させたときに細胞質カルシウムイオン濃度の上昇が起こることを報告している(Cell Signal. 2002 Nov;14(11):941-53)。また、フォスフォリパーゼCの作用によるイノシトール−3リン酸の生成、細胞内カルシウムイオンの増減の作用はGq型またはG11型に分類されるGタンパク質の反応として知られているが、細胞にGα15またはGα16を発現させておくと、Gs型のGタンパク質と共役するGPCRの反応でもイノシトール−3リン酸の生成、細胞内カルシウムの細胞質への流入の反応が認められる場合がある。そのため、イノシトール−3リン酸の生成、細胞内カルシウムイオンの増減は、Nesfatin-1もしくは後述の改変ペプチドまたはその他の被検物質を、Gα15またはGα16を発現させたNesfatin-1受容体発現細胞に反応させ、その細胞内のイノシトール−3リン酸の量、細胞内カルシウムイオンの変動量を測定することで、実施することができる。ここで、細胞内のIP3測定については既知の方法で実施可能であるが、たとえばパーキンエルマー社のAlpha Screen IP3 assay supplement(Cat No.6760621)とGST detection kit(Cat No. 6760603)の組み合わせなどを用いることもできる。また、細胞質へのカルシウムイオンの流入反応はFura2−AM試薬を用いて蛍光波長のシフトによる細胞内カルシウム濃度変化を見る方法が良く用いられるが、Fura2−AMの代わりにFura3などの試薬が使われることもある。また、細胞質内へのカルシウムイオンの流入を測定する方法としては、カルシウム結合発光蛋白質エオクリンをNesfatin-1受容体発現細胞に注入または発現させることによって、発光によって検出することも可能である(レ・ポウル(Le Poul)等 ジャーナル・オブ・バイオモレキュラー・スクリーニング・ザ・オフィシャル・ジャーナル・オブ・ザ・ソサエティ・フォー・バイオモレキュラー・スクリーニング(Journal of biomolecular screening: the official journal of the Society for Biomolecular Screening.) 2002年 7巻 p57-65)。
さらに、直接的に細胞のシグナルを測定する方法を例示すると、Nesfatin-1がNesfatin-1受容体発現細胞に反応した後のリガンド不応答状態の検出によっても実施することができる。Gタンパク質共役型受容体はリガンドと反応した後、受容体が細胞内にインターナリゼーションによって取り込まれ、細胞表面から消失することや一定の時間リガンドと反応できない時間が生じることが知られている。したがって、例えば受容体のインターナリゼーションの解析は、後述のNesfatin-1導入細胞を作製する際に、Nesfatin-1受容体のN末端またはC末端にGFPなどの蛍光タンパク質を結合させるか、Nesfatin-1受容体を認識する蛍光標識化抗体を反応させ、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、Nesfatin-1受容体の細胞膜上と細胞内の分布を調べる方法が挙げられる。また、細胞の不応答期間とシグナルの強度の測定については、例えばGα15またはGα16を発現させたNesfatin-1受容体発現細胞に、細胞質内のカルシウムイオンをモニタリングしながら、被検物質存在下で一度Nesfatin-1などのリガンドを反応させ、さらにもう一度以上リガンドを反応させたときの反応強度や、再度反応性が得られるまでの時間を計測するなど、適宜測定する方法を構築することができる。
Nesfatin-1とNesfatin-1受容体との共存系に、試験物質を作用させる工程は、試験物質をNesfatin-1と共に、Nesfatin-1受容体発現細胞またはNesfatin-1受容体発現非ヒト動物に作用させることによって行うことができる。
本発明で用いるNesfatin-1受容体発現細胞としては、例えば遺伝子組換えによって作製された「Nesfatin-1受容体導入細胞」、または動物より取得した、Nesfatin-1受容体を発現する細胞もしくは培養細胞株などが挙げられる。
「Nesfatin-1受容体導入細胞」は、Nesfatin-1受容体を一過性または定常的に発現するようにNesfatin-1受容体をコードする遺伝子を宿主細胞へ導入して形質転換することによって、得ることができる。形質転換方法としては、例えば、生物学的方法、物理的方法、化学的方法などの当技術分野における一般的な手法を用いることができる。生物学的方法としては、例えば、ウイルスベクターを使用する方法、特異的受容体を利用する方法、細胞融合法(HVJ(センダイウイルス))、ポリエチレングリコール(PEG)、電気的細胞融合法、微小核融合法(染色体移入)が挙げられる。物理学的方法としては、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、ジーンパーティクルガン(gene gun)を用いる方法が挙げられる。化学的方法としては、リン酸カルシウム沈殿法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、プロトプラスト法、赤血球ゴースト法、赤血球膜ゴースト法、マイクロカプセル法が挙げられ、当業者であれば、適宜選択し実施することができる(横田および新井編集 バイオマニュアルシリーズ4 遺伝子導入と発現解析 羊土社発行 1994年、およびハービン(Harbin)著クローニング・ジーン・イクスプレッション・アンド・ピューリフィケイション・エクスペリメンタル・プロシデゥアー・アンド・プロセス・ラショナル(Cloning, Gene Expression and Protein Purification: Experimental Procedures and Process Rationale)オックスフォード大学出版(Oxford University Press)2001年)。
形質転換に使用される宿主細胞としては、HeLa細胞、HEK293細胞、COS7細胞、CHO細胞、分裂酵母細胞、出芽酵母細胞等を用いることができる。
また、Nesfatin-1受容体発現細胞としては、動物の臓器より取得した細胞を用いることもでき、かかる臓器としては、哺乳類の臓器、より好ましくは脳(視床下部、海馬)、肝臓、脂肪組織、筋組織などが挙げられる。また後述のNesfatin-1受容体発現非ヒト動物の臓器から分離した細胞なども用いることが可能である。
さらに、Nesfatin-1受容体発現細胞としては、細胞培養細胞株を用いることもでき、かかる細胞培養細胞株としては、これらに限定されるものではないが、例えばマウス海馬由来細胞株であるHT22細胞株やマウス脳神経芽細胞腫由来細胞株であるNB41A3細胞(ATCC-CCL147);ヒト臍帯静脈上皮細胞(HUVEC);ヒト肝細胞癌細胞株であるHep3b細胞(ATCC No.HB-8064)等があげられる(Cell Physiol Biochem 13:p75-p84, 2003、J Neuroscience 23(3):p907-p914, 2003)。
本件明細書において「Nesfatin-1受容体発現非ヒト動物」とは、遺伝的に同一種の標準的な発現量よりも高いレベルでNesfatin-1受容体を発現している非ヒト動物、またはNesfatin-1受容体を導入することにより、一過性または定常的にNesfatin-1受容体を発現させたNesfatin-1受容体導入細胞を移植された非ヒト動物、またはNesfatin-1受容体導入非ヒト動物をいう。
「Nesfatin-1受容体導入非ヒト動物」は、具体的には、Nesfatin-1受容体を過剰発現するようにNesfatin-1受容体をコードする遺伝子を導入して、Nesfatin-1受容体を一過性または定常的に発現するトラスジェニック非ヒト動物をいう。該「Nesfatin-1受容体発現非ヒト動物」は、一般的なトランスジェニック動物を得る方法を用いて作製することができる。例えば、遺伝子と卵を混合してリン酸カルシウムで処理する方法や、位相差顕微鏡下で前核期卵の核に、微小ピペットで遺伝子を直接導入する方法(マイクロインジェクション法、米国特許第4873191号)、胚性幹細胞(ES細胞)を使用する方法などによってトランスジェニック動物を得ることができる。その他、レトロウイルスベクターに遺伝子を挿入し、卵に感染させる方法、また、精子を介して遺伝子を卵に導入する精子ベクター法等も開発されている。精子ベクター法とは、精子に外来遺伝子を付着またはエレクトロポレーション等の方法で精子細胞内に取り込ませた後に、卵子に受精させることにより、外来遺伝子を導入する遺伝子組換え法である(Lavitranoet Mら, Cell (1989)57, 717-723)。
さらに、「Nesfatin-1受容体発現非ヒト動物」を用いたスクリーニング方法では、「Nesfatin-1作用の変化」として、摂食抑制および/または体重増加抑制作用の変化に基づいて、「Nesfatin-1作用調節物質」をスクリーニングすることができる。
本発明の方法における「試験物質」は、これらに限定されるものではないが、例えば、配列番号1〜3、または11〜37のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するペプチドを改変してなるペプチドまたはペプチド類似化合物を用いることができる。かかるペプチドまたはペプチド類似化合物を用いることにより、スクリーニングの精度を向上させることができる。
かかる改変ペプチドは、配列番号1〜3、または11〜37のいずれかに示されるアミノ酸配列と少なくとも60%以上のホモロジーをもつアミノ酸配列からなるペプチドが挙げられる。配列番号1〜3、または11〜37で示されるアミノ酸配列とのホモロジーは、70%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましい。また、ペプチド類似化合物としては、配列番号1〜3、または11〜37のいずれかに示されるアミノ酸配列において、その一部のアミノ酸が欠失、挿入もしくは置換されたアミノ酸配列からなるペプチドがあげられる。このようなペプチドは、たとえば、配列番号1〜3、または11〜37のアミノ酸配列において、1つ以上のアミノ酸残基を、該アミノ酸と化学的性状または構造的に類似のアミノ酸と置換することにより取得することができる。このような化学的性状または構造的に類似したアミノ酸の置換、すなわち保存性の高いアミノ酸の置換の具体的な態様は、当業者によって広く知られている。たとえば、グリシン(Gly)はプロリン(Pro)、アラニン(Ala)およびバリン(Val)と、ロイシン(Leu)はイソロイシン(Ile)と、グルタミン酸(Glu)はグルタミン(Gln)と、アスパラギン酸(Asp)はアスパラギン(Asn)と、システイン(Cys)はスレオニン(Thr)と、Thrはセリン(Ser)およびAlaと、リジン(Lys)はアルギニン(Arg)と、化学的性状または構造が類似するものである。さらに別の方法としては、アミノ酸の置換し易さを行列として表したアミノ酸マトリックス、例えばPAM(ウィルバー(Wilbur)、モレキュラー・バイオロジー・アンド・エボリューション(Molecular biology and evolution)(USA) 1985年 2巻 p434-447)やBLOSUM(ヘニコフ(Henikoff)等、プロシーディング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)(USA) 1992年 89巻 p10915-10919)などを参照して、そのスコアの高さを勘案してアミノ酸の置換を行うことは、当業者であれば容易に行なうことができる。
ペプチド類似化合物とは、配列番号1〜3、または11〜37のアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基が、化合物またはペプチドによって修飾されたものも含む。この場合、化合物の例としては、糖、脂質、核酸、アミンなどの物質や人工的に合成された化合物が含まれ、また、ここでペプチドとは1つ以上のアミノ酸が結合したオリゴペプチドまたはタンパク質をいい、その化合物自体またはペプチド自体が配列番号1〜3、または11〜37のアミノ酸配列とは独立して機能を持つものも持たないものも含まれる。また、該ペプチド類似化合物にはNesfatin-1やNesfatin-1受容体の構造情報をもとにデザインされ、合成された化合物、例えばペプチドミミックやペプトイドなども含まれる。
なお、本発明のスクリーニング方法に供される「試験物質」は特に制限されるものではなく、その他のペプチド、抗体、および化合物等を用いてもよい。
また、本発明は、前記スクリーニング方法により得られたNesfatin-1作用調節物質にも関する。かかるNesfatin-1作用調節物質は、Nesfatin-1作用阻害物質とNesfatin-1作用亢進物質とが含まれる。Nesfatin-1作用阻害物質は、例えば、Nesfatin-1に対するアンタゴニスト、インバースアゴニスト、ニュートラルアンタゴニストであり、手術後および/または癌の患者における食欲不振や拒食症などの栄養・摂食障害に係る疾患の予防または治療に利用することができる。
Nesfatin-1作用亢進物質は、例えば、Nesfatin-1に対するアゴニストであり、肥満または肥満症、神経性過食症などの代謝・摂食障害に係る疾患、2型糖尿病、耐糖能異常、高血圧、高脂血症、高尿酸血症、脂肪肝、心臓疾患、脳血管疾患、睡眠時無呼吸症候群、変形性関節症などの整形外科的疾患、月経異常、悪性腫瘍などの肥満症に関連する疾患の予防または治療に利用することができる。
<Nesfatin-1様作用物質のスクリーニング方法>
本発明は、Nesfatin-1受容体に試験物質を作用させる工程、およびNesfatin-1作用の変化に基づいてNesfatin-1様作用物質を特定する工程を含む、Nesfatin-1様作用物質のスクリーニング方法にも関する。
本発明において「Nesfatin-1様作用物質」とは、前述の「Nesfatin-1作用」と同様の作用を有する物質をいい、より強力なNesfatin-1作用を有する物質、スーパーアゴニスト等があげられる。
本発明において、「Nesfatin-1作用」とは、<Nesfatin-1作用調節物質のスクリーニング方法>に記載したとおりであり、「Nesfatin-1様作用物質」は、例えば「Nesfatin-1受容体との結合能」または「Nesfatin-1受容体のシグナル伝達能」に基づいてスクリーニングすることができる。
「Nesfatin-1受容体との結合能」は、試験物質のNesfatin-1受容体への結合の亢進事象を検出することより評価することができる。Nesfatin-1のNesfatin-1受容体への結合への亢進の測定は、前述の通り、当技術分野における一般的な解析方法、たとえば、FACSやBIACORE、FRET、古典的な直接結合アッセイ等の結合能解析により実施することができる。
「Nesfatin-1受容体のシグナル伝達能」は、直接的または間接的な方法を用いて行うことができ、直接的な方法とは、受容体と共役しているGタンパク質におけるGDP/GTP交換の状態の検出や、細胞内のcAMP量の増減、フォスフォリパーゼCの作用によるイノシトール−3リン酸の生成、細胞内カルシウムイオンの増減、Nesfatin-1受容体のインターナリゼーションなどを指標し、また間接的な方法としては、細胞の増殖、形態変化、遊走、発光などの指標を介して測定することが可能である。「Nesfatin-1受容体との結合能」や「Nesfatin-1受容体のシグナル伝達能」の測定は、前述の<Nesfatin-1作用調節物質のスクリーニング方法>に記載したとおりである。
Nesfatin-1受容体に試験物質を作用させる工程は、Nesfatin-1受容体発現細胞またはNesfatin-1受容体発現非ヒト動物に、試験物質を作用させることによって行うことができる。「Nesfatin-1受容体発現細胞」および「Nesfatin-1受容体発現非ヒト動物」に関しては、前述の<Nesfatin-1作用調節物質のスクリーニング方法>に記載したとおりである。
本発明の方法における「試験物質」は、配列番号1〜3、または11〜37のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するペプチドを改変してなるペプチドまたはペプチド類似化合物を用いることができる。かかるペプチドまたはペプチド類似化合物を用いることにより、スクリーニングの精度を向上させることができる。
また、かかる「改変ペプチド」および「改変ペプチドの類似化合物」は、前述の<Nesfatin-1作用調節物質のスクリーニング方法>に記載したとおりである。なお、本発明のスクリーニング方法に供される「試験物質」は特に制限されるものではなく、その他のペプチド、抗体、および化合物等を用いてもよい。
また、本発明は、前記スクリーニング方法により得られたNesfatin-1作用調節物質にも関する。かかるNesfatin-1様作用物質は、例えば、Nesfatin-1に対するスーパーアゴニストであり、肥満または肥満症、神経性過食症などの代謝・摂食障害に係る疾患、2型糖尿病、耐糖能異常、高血圧、高脂血症、高尿酸血症、脂肪肝、心臓疾患、脳血管疾患、睡眠時無呼吸症候群、変形性関節症などの整形外科的疾患、月経異常、悪性腫瘍などの肥満症に関連する疾患の予防または治療に利用することができる。
<Nesfatin-1作用調節またはNesfatin-1様作用物質のin silicoスクリーニング方法>
本発明は、さらに、Nesfatin-1受容体構造を、既知のGPR3、GPR6、またはGPR12の構造情報に基づきシミュレーションし、そのシミュレーションされたNesfatin-1受容体構造、またはリガンド構造に基づいて、Nesfatin-1作用調節物質またはNesfatin-1様作用物質をin silicoスクリーニングする方法、またはデザインする方法に関する。
本発明において「既知のGPR3、GPR6、またはGPR12の構造情報」とは、すでに解明されているGPR3、GPR6、またはGPR12の構造、例えばウシロドプシンの3次元構造データを用い、GPR3、GPR6、またはGPR12の3次元構造をホモロジーモデリングなどの方法を用いて得られた情報をいう。そのようなモデリングは、例えばBallesteros J;Curr Opin Drug Discov Devel. 2001 4(5) p561-574 やTrabanino RJ;Biophysical Journal Volume 86 April 2004 p1904-1921、Vaidehi N;THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY VOL.281 2006 p27613-27620などに記載の方法を参照して実施することが可能である。また、GPR3、GPR6、またはGPR12の構造情報を用いたin silicoスクリーニングする方法、またはデザインする方法は、例えばBallesteros J,Curr Opin Drug Discov Devel. 2001 4(5) p561-574 、Reggio PHらThe AAPS Journal 2006; 8 (2) Article 37 pE322-E326、Becker OM;Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America Vol.101 2004 p 11304-11309、Kortagere S.ら;Journal of Computer-aided molecular design Vol.20 2006 p789-802などを参照して当業者であれば、適宜実施することが可能である。
さらに、リガンドであるNesfatin-1の構造から、GPR3、GPR6、またはGPR12に作用する合成化合物をデザインする方法としては、例えばGoede Aら;BMC Bioinfomatics Vol.7 2006 p1-5、Jamesら;Bioorganic & medicinal chemistry letters Vol.16 p5462-5467などの方法を参照して、実施することが可能である。
[実施例1]
<組換えNesfatin-1の作製>
マウスNesfatin-1をコードする遺伝子を取得し、そのN末端にGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)とヒスチジンタグの遺伝子を結合し、翻訳後のタンパク質においてヒスチジンタグのアミノ酸配列とマウスNesfatin-1のアミノ酸配列の間にトロンビンによる切断部位(-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser-)が介在する形となるように、発現ベクターを構築した。マウスNesfatin-1の遺伝子の取得は、mouse Brain cDNA(Clontech社)を用いて2回のPCR(Nested PCR)を行うことで行った。1回目のPCRは以下のForward(mNucB2-F337:配列番号38)およびReverse(mNucB2-R712:配列番号39)を各100pMの濃度で、Pyrobest DNA polymerase(タカラバイオ(株)R005A)、添付の反応バッファーおよびdNTPを使用し、添付のプロトコールに従って反応を行った。PCR反応は90℃1分の反応の後、98℃10秒・68℃1分の温度サイクルを30サイクル、その後68℃で2分間反応させる温度条件で行った。
Forward Primer (mNucB2-F337):5’-GCACGCTGAC CGCTC TGGAAG-3’(配列番号38)
Reverse Primer (mNucB2-R712):5’-CAAATGTGTT AGGAT TCTGGTGGTTCA-3’(配列番号39)
得られたPCR産物0.5μlを用いて、2回目のPCRを以下のForward(mNucB2-N3[SacI-Thr])およびReverse(mNucB2-R389[NotI])プライマーが100pMを用いて、1回目のPCRと同様に、Pyrobest DNA polymeraseを用いてPCR反応を行った。PCR反応は90℃1分の反応に続いて、98℃10秒・60℃30秒・68℃1分の温度サイクルを20サイクル行った後、68℃で2分間反応させる温度条件で行った。
Forward Primer (mNucB2-N3[SacII-Thr]):
5’-GGTTCCGCGGGTCTGGTTCCGCGTGGTTCTCCTATCGATGTGGACAAGACCAA -3’(配列番号40)
Reverse Primer (mNucB2-R589[NotI]):
5’-GGTTGCGGCCGCTTACCTCT TCAGCTCATCCAGTCTCG-3’(配列番号41)
2回目のPCRを行ったPCR反応サンプルは、フェノール/クロロホルム抽出によって精製した後、制限酵素SacIIおよびNotIで切断し、アガロースゲル電気泳動を行って、約300bpの長さに相当するバンドを切り出し、QIAEX-IIキット(QIAGEN社)によって精製した。精製された約300bpのPCR産物は、制限酵素SacIIおよびNotIで切断されたpET41a(+)プラスミドベクター(Novagen社)に、Quick DNA ligase kit(New England Bio Lab社)を用いてライゲーションを行った。ライゲーションを行ったベクターを大腸菌J409株に導入し、得られた形質転換体8個について小スケールでのプラスミド抽出を行い、得られたプラスミドを用いて組み込まれたNesfatin-1遺伝子の配列をアプライドバイオシステムズ社のBigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction kitおよびABI377型DNAシーケンサー(Perkin-Elmer社)を用いて塩基配列の解析を行った。その結果正しいNesfatin-1の配列を持つ遺伝子が組み込まれている発現ベクターが得られ、これをpET41a(+)GST-His-LVPRGS-mNAP1と命名した。
得られたpET41a(+)GST-His-LVPRGS-mNAP1を大腸菌BL21(DE3)Codon Plus RIPLに導入して発現させることで、GST・ヒスチジンタグ・トロンビン切断配列・Nesfatin-1の融合タンパク質(GST-His-LVPRGS-mNAP1)の発現を行った。pET41a(+)GST-His-LVPRGS-mNAP1を大腸菌BL21(DE3)Codon Plus RIPLに導入してカナマイシンを含むLB培地で選択して得たクローンを、10mlのカナマイシンを含むLB倍地で37℃において培養した。培養は、その培養液の600nmの波長による吸光度が0.8になった時点で停止した。その培養液3mlを100mlのカナマイシンを含むLB培地に植え継ぎ、さらに37℃で培養してその培養液の600nmの波長による吸光度が0.8になった時点で100mMのIPTGを1ml加えてタンパク質の発現を誘導した。IPTG添加後、さらに37℃で3時間振盪培養を行った。その培養液を8000rpmで20分間(4℃)で遠心分離して、大腸菌の菌体を回収した。
得られた大腸菌の菌体からGST-His-LVPRGS-mNAP1融合タンパク質を抽出して、ニッケルキレートカラム(Ni-NTA agarose)を用いて精製を行った。菌体を20mlの1倍濃度のComplete−EDTA free(ロッシュ・ダイアグノスティックス社)および0.5倍濃度のBugBuster(メルク社Novagen Cat.No.70584)を含むSonication Buffer(50mM KH2PO4, 50mM NaCl, 2mM DTT, pH7.5)に懸濁し、氷水中で10分間超音波による破砕を行った。超音波処理後のサンプルは15,000rpmで20分間遠心分離して、その上清を回収した。得られた上清10mlを、Lysis Buffer(50mM NaH2PO4, 300mM NaCl, 10mM イミダゾール, pH8.0)で平衡化した1mlのNi-NTA agaroseカラムにアプライし、さらに10mlのWash Buffer(50mM NaH2PO4, 300mM NaCl, 20mM イミダゾール, pH8.0)で2回洗浄を行った。洗浄後のカラムを2.5mlのElution Buffer(50mM NaH2PO4, 300mM NaCl, 250mM イミダゾール, pH8.0)で2回溶出を行い、溶出されたGST-His-LVPRGS-mNAP1融合タンパク質を含む画分を回収した。残りの菌体からの抽出上清も同様に処理して、GST-His-LVPRGS-mNAP1融合タンパク質を含む画分を回収した。
GST-His-LVPRGS-mNAP1融合タンパク質からGSTおよびヒスチジンタグの部分を除去してさらに精製すると共に、炎症性物質として作用する大腸菌由来のリポポリサッカライド(LPS)を除去するため、GST-His-LVPRGS-mNAP1融合タンパク質がGSTレジンに結合した状態でのトロンビン処理および逆相クロマトグラフィーによる精製を行った。なお、これ以降の処理におけるBufferは、LPSを含まないことを確認したものを使用した。Ni-NTA agaroseカラムでの精製で得られたGST-His-LVPRGS-mNAP1融合タンパク質を含む画分7.2mlを1倍濃度のGST Bind/Wash Buffer(メルク社Novagen Cat.No.70571)で洗浄して、最終的に3mlGST Bind/Wash Bufferで懸濁したGSTレジン(メルク社Novagen Cat.No.70541)(7.2ml相当)に添加して、20℃で1時間弱く攪拌した。遠心分離によってレジンを回収した後、該レジンを36mlのGST Bind/Wash Bufferで2回洗浄した。洗浄後のレジンに20units/mlのトロンビンをPBSに溶解したもの3.6mlを加えて懸濁し、20℃で弱い攪拌状態において20時間反応を行った。反応後のレジンはポアサイズ0.22μmのフィルター付カップ(Millipore)に1.8mlずつ分注して、3,000rpmで2分間遠心して、ろ過されたトロンビン処理後サンプルを回収した。得られたトロンビン処理後サンプル450μlに対して50μlの酢酸を加え、C18逆相クロマトグラフィーのサンプルとした。逆相クロマトグラフィーは0.1%トリフルオロ酢酸存在下でアセトニトリルのグラジエントによる溶出法を用い、そのグラジエントは10%アセトニトリル:10分/10から20%アセトニトリル勾配:60分/30から40%アセトニトリル勾配:40分/40から60%アセトニトリル勾配:5分に設定して行った。カラムから溶出されたタンパク質は、波長280nmの吸光度を測定することでモニタリングした。アセトニトリルのグラジエントで溶出を行った画分についてSDS-PAGE法およびウエスタンブロッティング法で調べたところ、Nesfatin-1はアセトニトリル濃度36.2%の所で溶出されることが判明した。そのため、この画分を回収し、凍結乾燥を行った後、注射用蒸留水に再度溶解し、マウスNesfatin-1組換え体を得た。
<Nesfatin-1受容体候補の絞込み>
摂食調節に関わるペプチドに対する受容体は、レプチン受容体に代表されるCytokine Receptor Typeとα-MSH受容体(=MC4R, MC3R)に代表されるGPCRとに大きく分けられる。そこで、まず、GPCRについて解析を進めた。
以下の3種の方法(実施例2および3)でそれぞれピックアップされてきたGPCRをNesfatin-1受容体の候補としてNesfatin-1の作用解析を実施した(実施例5および6に記載)。
[実施例2]
<Nesfatin-1投与により発現変動するGPCRのピックアップ>
ICRマウス(日本エス・エル・シー)へ、暗期直前に組換えマウスNesfatin-1(0.5mg/head)あるいは生理食塩水を腹腔内投与し、2時間後に視床下部を採取した。採取した組織からISOGEN(Nippon Gene社)を使用し、添付プロトコールに従ってRNA抽出を実施した。抽出したRNAを使用してイルミナ社のマウスDNAアレイ(47000遺伝子)にて発現解析を実施(イルミナ社に外注)した。その結果、生理食塩水投与と比較して組換えマウスNesfatin-1投与により発現変動が確認されたGPCRをピックアップした。
[実施例3]
<視床下部で発現の高いGPCRのピックアップ>
マウスの全脳と視床下部のtotal RNA(BD Bioscience社)を購入し、Agilent Technologies社のマウスDNAマイクロアレイ「Whole Mouse Genome Oligo Array」(Cat.No.G4122A (10.Oct.2005のVersion), 約4万遺伝子を搭載、遺伝子リストはAgilent Technologies社ホームページ参照のこと、RefSeq, RIKEN Build7.1, USCS GoldenPath, Ensemble, NIA Mouse Gene Index, UniGene Build 135, MGI, NCBI Mouse genome Build 32)にて解析を実施(北海道システムサイエンス社に外注)し、発現強度が全脳より視床下部で高いオーファンGPCRをピックアップした。
[実施例4]
<候補GPCR発現ベクター構築>
実施例2および3でピックアップされた33種のGPCRに関して、GenBankのcDNA配列に基づき視床下部cDNAを鋳型としてPCRクローニングを実施した。増幅DNAフラグメントをpEF1/MycHisA(Invitrogen社)、あるいはpEF4/MycHisA(Invitrogen社)発現ベクターに連結して塩基配列を決定し候補GPCR発現ベクターを構築した。
[実施例5]
<HeLa細胞一過性発現系におけるcAMP産生評価>
実施例4で作製したGPCR発現ベクターをリポフェクションによりHeLa細胞に導入し、一過性発現させた。
HeLa細胞をトリプシンEDTAではがして回収した。7×105cells/2mL/wellにて6well plateにまき、CO2インキュベーターにてオーバーナイト培養をおこなった。翌日、4μgのPlasmidに対して250μLの無血清培地OPTI-MEMに添加してPlasmid溶液を作製した。一方、10μL のLipofectamin2000 (Invitrogen社)を250μLの無血清培地OPTI-MEMに添加してLipofectamine2000溶液を作製した。これらを室温で5分インキュベーションしてLipofectamine2000溶液をPlasmid溶液に少しずつ添加して混合し、室温で20分インキュベーションしリポフェクション用の溶液を作製した。HeLa細胞は上清を除いてOPTI-MEMで一回洗浄し、2mLのOPTI-MEMを添加した後、上記、リポフェクション用の溶液をHeLa細胞の培地中にゆるやかに揺らしながら少しずつ加えた。5時間、CO2インキュベーターにて培養して、その後、培地を血清入りの培地に交換し、さらにCO2インキュベーターにて培養をおこなった。翌日、トランスフェクション細胞をトリプシンではがし、血清ありの培地にて懸濁して遠心により細胞を沈殿させ、無血清培地にて懸濁してさらに遠心し、再度無血清培地にて懸濁してさらに遠心し、無血清培地にて1×106cells/mLの細胞懸濁液を調製した。
この懸濁液を100μLずつ96 well plateにまいた(1×105cells/well)。CO2インキュベーターにて終夜培養をおこなった。
一過性発現HeLa細胞を一回無血清培地にて洗浄し、その後、80μL/wellで無血清培地を添加した。5倍濃度のLigand溶液(組換えマウスNesfatin-1あるいはα-MSH(ポジティブコントロールとして使用))を無血清培地にて調製した。
5×リガンド溶液を最終濃度10-6Mになるように20μL/well添加してCO2インキュベーターにて30minインキュベートした。アデニレートシクラーゼ活性化剤であるForskolinを添加する際は、最終濃度2μMとなるように添加し、さらに30分間インキュベートした。その後、培地を除いて、Lysis Bufferを200μL/well添加して攪拌した。細胞を十分溶解するためCO2インキュベーターにて30minインキュベートした。さらに完全に細胞を溶解するため−20℃にて一旦凍結し、再度溶解した後、cAMP-Screen System (AppliedBiosystems,T1500)を用いた細胞内cAMP濃度測定を行った。
細胞内cAMP濃度測定の結果、33種類の視床下部発現GPCRのうち、mGPR12において組換えマウスNesfatin-1の添加により細胞内cAMP産生の上昇が認められた。mGPR12に関して評価した測定結果を図1(Forskolin非添加)および図2(Forskolin添加)に示す。図1および2において、mGPR12_mNSF1(-)は、組換えマウスNesfatin-1を無添加のmGPR12一過性発現HeLa細胞、mGPR12_mNSF1(+)は、組換えマウスNesfatin-1添加のmGPR12発現細胞、hMCR3R_αMSH(-)は、αMSH無添加のhMC3R一過性発現HeLa細胞、hMCR3R_αMSH(+)は、αMSH添加のhMC3R一過性発現HeLa細胞を表す。hMC3R_α-MSHはポジティブコントロールとして使用した。mGPR12の塩基配列およびアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号7および8に、hMC3Rの塩基配列およびアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号9および10に示す。
測定の結果、Forskolin添加および非添加のいずれにおいても、mGPR12一過性発現HeLa細胞にマウスNesfatin-1を作用させた際にcAMP産生上昇が確認され、GPR12がNesfatin-1の受容体であることが明らかになった。
[実施例6]
<CHO-K1細胞定常的発現系におけるcAMP産生評価>
実施例5においては、HeLa細胞にGPR12を一過性に発現させ、該細胞にNesfatin-1を接触させて、細胞内のシグナルの変化をcAMPの濃度変化で測定できることを示した。今度は、GPR12をコードする遺伝子が導入され、GPR12を定常的に発現するCHO-K1細胞を作製して、細胞内のシグナルをcAMPの濃度変化で測定できることを検証した。また、ここでの被検物質としては、実施例5ではNesfatin-1(82アミノ酸)をもちいたのに対し、そのMid-segmentであるNesfatin-1M30(配列番号11)を用いて検討を行った。さらに、Nesfatin-1やNesfatin-1M30の改変ペプチドの例として、ヒトNesfatin-1M30(Mid Segment)の配列のうち、N末端側から11番目(Leu)及び13番目から17番目(Gln-Val-Ile-Glu-Val)のアミノ酸配列を全てアラニン(Ala)に置換したペプチドであるM30_Ag-A(配列番号50)、N末端から22番目から25番目(Lys-His-Phe-Arg)のアミノ酸配列を全てアラニンに置換したペプチドであるM30_MSH-A(配列番号51)を用い、該改変ペプチドの細胞内のcAMP濃度変化に対する影響についても検討した。
GPR12を定常的に発現する細胞の作製は定法によって行なったが、簡単に以下に記す。マウスGPR12(配列番号8)をコードする遺伝子(cDNA)がpcDNA3.1(TM)(Invitrogen社)のCMVプロモーターの下流に挿入されたベクター(pcDNA3.1-GPR12)を作製し、そのベクター10μgを250μLのOPTI-MEMTM培地(Invitrogen社)と混和し、10μlのLipofectamineTM 2000 Reagent(Invitrogen社)を250μLのOPTI-MEMTM培地と混和し、5分後に両者を混和して室温で20分間放置しトランスフェクション試薬を調製した。前日に1.5x106細胞/wellで6 well plateに蒔いてあったChinese hamster ovary cells (CHO-K1) [ATCC Cat. No. CCl-61]をOPTI-MEMTM培地で一度洗い、上記トランスフェクション試薬(ベクターおよびLipofectamineTM 2000 Reagent)を細胞へ滴下し、トランスフェクションを行った。37℃で5時間、CO2インキュベータでインキュベートした後、Ham’s F12培地に置換した。また、その翌日、培地を100μg/mlのGeneticin(登録商標)(Invitrogen社)を含むHam’s F12培地に交換し、さらにその翌日には200μg/mlのGeneticin(登録商標)を含む同培地、そしてその次の日に700μg/mlのGeneticin(登録商標)を含む同培地と交換して、以後同濃度のGeneticin(登録商標)を含有する培地で37℃、5%CO2の条件で培養を継続した。トランスフェクションから2週間後に、細胞のコロニーを回収し、再度10cmデッシュに蒔きこんで700μg/mlのGeneticin(登録商標)を含むHam’s F12培地で培養して、コロニーを回収して、定常的にGPR12を発現しているCHO-K1細胞(CHO-K1-GPR12)を取得した。
CHO-K1-GPR12細胞に被検物質を接触させる工程は、以下のように行った。CHO-K1-GPR12細胞が10cmデッシュに完全にいっぱいになった状態(Confluent)のものから細胞を回収し、4分の1の数ずつ10cmデッシュに蒔きこんで、700μg/mlのGeneticin(登録商標)を含むHam’s F12培地で2日間培養した。その培地を除去した後、一度Geneticin(登録商標)を含まない培地で洗ったあと、細胞に被検物質を含まず10-5MのForskolinを含有するHam’s F12培地((−)群)、10-9MのNesfatin-1M30ペプチドと10-5MのForskolinを含む同培地(Mid-segment群)、10-9MのM30_Ag-Aペプチドと10-5MのForskolinを含む同培地(M30_Ag-A群)、10-9MのM30_MSH-Aペプチドと10-5MのForskolinを含む同培地(M30_MSH-A群)で細胞を30分間、37℃、5%CO2の条件で培養を行った。
細胞内のcAMPを測定する工程は、前記被検物質と接触させた細胞を、それぞれ、Hirayu等 Molecular and cellular Endcrinology 1985年 42巻 p21-27に記載の方法で、95%エタノールでcAMPを抽出し、サイクリックAMPキット「ヤマサ」(ヤマサ醤油株式会社;カタログ番号YSI-7701)を用い、キット添付のプロトコールにしたがってcAMP量の測定を行った。
測定した細胞内cAMP量は、ペプチドを含まない培地でCHO-K1-GPR12細胞を培養した群(−)における細胞内cAMP量の平均値を1としたときの、各細胞内cAMPが何倍存在したかという比率(Fold)で換算した。
GPR12を定常的に発現したCHO-K1細胞(CHO-K1-GPR12)に、Nefatin-1M30(Mid-segment)、M30_Ag-A、M30_MSH-Aを接触させた際の細胞内cAMP量を、ペプチドを含まない培地で培養した場合(−)のcAMP量とともに図3に示す。
測定の結果、Nesfatin-1M30をCHO-K1-GPR12に接触させた群(Mid-segment)は、ペプチドを含まない培地で培養した群(−)と比較して、約5倍細胞内のcAMP量が上昇していることが示された。このことから、実施例5のNesfatin-1の場合に加えて、Nesfatin-1M30もGPR12を介した細胞内シグナルを惹起できることが判明した。また、Nesfatin-1M30の改変ペプチドであるM30_Ag-AとM30_MSH-Aについての結果を見ると、M30_MSH-Aを接触させた群(M30_MSH-A)では、ペプチドを含まない培地で培養した群(−)と比較して約10倍細胞内のcAMP量が上昇していることが示されたのに対して、M30_Ag-Aではほとんど細胞内cAMP量の上昇は起こっていなかった。このように変異ペプチドの種類によって細胞シグナルを惹起に違いが見られることから、GPR12を発現した細胞を用いることにより、このような改変ペプチドや改変ペプチドの類似物質をスクリーニングできることの可能性が示された。
[実施例7]
<CHO-K1細胞定常的発現系におけるCREBリン酸化評価>
細胞内でcAMPの上昇が起こったあとの代表的なシグナル伝達系としては、cAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)の活性化、PKAによるCRE結合タンパク質(CREB)のリン酸化、cAMP反応性転写制御部位(CRE)を上流にもつ遺伝子群の発現上昇という経路が知られている。したがって、細胞のシグナルの測定の指標としては、細胞内のcAMP濃度変化のみではなく、それ以降のシグナル伝達系の反応も利用が可能かどうか、まずCREBのリン酸化による反応について検討を実施した。
被検物質としてNesfatin-1M30(Mid-segment)を用い、被検物質と細胞を接触させる方法は以下のように実施した。10cmデッシュにConfluentになったCHO-K1細胞およびCHO-K1-mGPR12細胞を回収し、4分の1の数ずつ10cmデッシュに蒔きこんで、Ham’s F12培地(CHO-K1-mGPR12に関しては700μg/mlのGeneticin(登録商標)を含む)で2日間培養を行った。その培地を除去した後、一度Geneticin(登録商標)を含まない培地で洗ったあと、細胞に10-9MのNesfatin-1M30(Mid-segment)ペプチドを含有するHam’s F12培地を加えた。被検物質を含有する培地を加えたあと、0分(被検物質無し)、5分、15分、30分、60分後に被検物質を含有する培地を除去し、抽出Buffer(1% Igepal CA-630、0.5% sodium deoxycholate、0.1% SDS、1mM DTT、1mM sodium orthovanadate、100uM PMSF in PBS(-))を用いて細胞のタンパク質を抽出し、さらにその一部(15μl)をSDS-PAGE用サンプル処理液(第一化学薬品(株))で希釈して、ウエスタンブロティング法での検出を行った。ウエスタンブロティングは各細胞のタンパク質抽出物を用いてSDS-ゲル電気泳動を行ったのち、タンパク質をAmersham hybond-P(GEhealthcare社)に転写し、リン酸化されたCREBを検出するために抗リン酸化CREB抗体(Cell Signaling Technology社;カタログ番号#9191)を用い、ECL plus western blotting detection reagents(GEhealthcare社)キットを使用して添付プロトコールに従ってリン酸化CREBを検出した。また用いた細胞のタンパク質抽出物に含まれるCREBの量が同じであることを示すため、前記と同じタンパク質抽出物を用いて、同様にウエスタンブロティング法でCREBに対する抗体(リン酸化されていないCREBにも反応)(Cell Signaling Technology社;カタログ番号#9197)を用いて検出を行った。(図4のA)
さらに、Nesfatin-1M30(Mid-segment:配列番号11)を使用して、濃度依存性を検討した。使用した濃度は10-12M, 10-11M, 10-10M, 10-9Mであった。上述の実験と同様に、それぞれの濃度のNesfatin-1M30をCHO-K1-mGPR12細胞に接触させて15分間インキュベーションした後、細胞タンパク質を抽出して、ウエスタンブロティング法でCREBのリン酸化(p-CREB)を検出した。結果を図4のBに示す。
図4のAでは、Nesfatin-1M30(Mid-segment)を接触させて15分後以降、リン酸化されたCREB(p-CREB)の染色バンドが濃くなっていることがCHO-K1-mGPR12細胞において観察され、Nesfatin-1M30(Mid-segment)がCREBのリン酸化を誘導することが示された。なお、CREB自体を検出(CREB)した場合、染色されるバンドの濃度は各時間で差が見られないので、細胞のタンパク質抽出物に含有しているCREBの総量には差がないと考えられる。
また、図4のBでは、M30ペプチドの濃度依存的にCREBのリン酸化が亢進していることが示された。このことから、CREBのリン酸化の検出も、GPR12発現細胞を用いたシグナルの検出に用いることが可能であることが示された。
[実施例8]
<内因性GPR12発現NB41A3細胞におけるCRE-レポーター遺伝子発現評価>
実施例7においてはcAMPの上昇によって引き起こされる細胞内でのシグナルの一つとして、CREBのリン酸化を指標にシグナルを検出して、Nesfatin-1M30の評価の実例について示した。cAMPの上昇に伴うシグナルとしては、リン酸化CREBがゲノム上のCRE(cAMP responsive element)と呼ばれる部位に結合して、CREの下流にある遺伝子の発現を活性化すると言われている。また、CREによる転写活性化を調べる方法としてはレポーター遺伝子による方法がある。CREの下流部分に、酵素(例えばルシフェラーゼなど)や蛍光タンパク質(例えばGFPなど)などのレポーター遺伝子を結合させることで、CREを介して転写が活性化されたレポーター遺伝子が、最終的に細胞内で機能を持つタンパク質として発現される。その酵素活性や蛍光強度などを測定することによって、CREの転写活性化の程度を測定することができる。そこで、GPR12とNesfatin-1関連ペプチドの反応を、CRE-レポーター遺伝子を用いた系で測定できるか検討を行った。
細胞は内因性にGPR12を発現しているマウス脳神経芽細胞腫由来細胞株NB41A3細胞(ATCC−CCL147)を使用した。10cmデッシュにConfluentになったNB41A3細胞を回収し、4分の1の数ずつ10cmデッシュに蒔きこんで、Ham’s F12K培地で1日間培養した。その細胞に対して、CREの下流にTATA-BOXとルシフェラーゼが組み込まれたレポータープラスミドpCRE-Luc(STRATAGENE社;カタログ番号219074)5μgを、リン酸カルシウム法でトランスフェクションを行った。トランスフェクションから16時間後に、細胞をHam’s F12K培地で洗浄し、被検物質を含まないHam’s F12K培地(Vehicle)、10-10MのNesfatin-1M30を含むHam’s F12K培地(Mid-Segment:配列番号11)、10-10Mの改変ペプチドM30_Ag-A(配列番号50)を含むHam’s F12K培地(M30_Ag-A)、10-10Mの改変ペプチドM30_MSH-A(配列番号51)を含むHam’s F12K培地(Mid-Segment)を細胞に加えて、37℃、5%COの条件で16時間培養を行った。培養後、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、細胞を4mlの溶解バッファー(25mM glycylglicine(pH7.8)、15mM 硫酸マグネシウム、4mM グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)、1mM ジチオトレイトール(DTT)、及び1%(容量/容量) Triton X-100を含む水溶液)で細胞を溶解し、その細胞溶解液100μlに対して350μlの測定バッファー(25mM glycylglicine(pH7.8)、15mM 硫酸マグネシウム、4mM グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)、16mM リン酸二水素カリウム、及び2mM アデノシン3リン酸(ATP)を含む水溶液)で希釈し、200μlの0.2mM d-luciferinを加えてから10秒間の発光をルミノメーターで測光し、その発光量(units)を求めた。また、各細胞溶解液の中に含まれるタンパク質量を、BCATM Protein Assay Kit-Reducing Agent Compatible(Pearce社カタログ番号;23250)により測定して、発光量(units)を試料中のタンパク質量(μg)で割った値をルシフェラーゼ活性(Activity)として求めた。同様に、NB41A3細胞にレポータープラスミドpCRE-Lucをトランスフェクションした後、それぞれ10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M及び0M(被検物質無し)の、M30_Ag-A又はM30_MSH-Aを加えて、16時間培養した場合のルシフェラーゼ活性も求めた。
NB41A3細胞にレポータープラスミドpCRE-Lucをトランスフェクションした細胞に、Nesfatin-M30(Mid-segment)、M30_Ag-A、M30_MSH-Aを、それぞれ10-10Mの濃度で16時間接触させたときのルシフェラーゼ活性を図5のAに示す。
図5のAの結果から、ペプチドを接触させなかった場合(Vehicle)に対して、Nesfatin-M30(Mid-segment)、M30_MSH-Aを、レポータープラスミド(レポーター遺伝子)が導入された細胞に接触させた場合はルシフェラーゼ活性の亢進が認められたが、M30_MSH-Aを接触させた場合にはVehicleとの差は全く認められなかった。この結果は、実施例6における細胞内cAMP濃度の変化及び実施例7のCREBのリン酸化と同様の結果であった。
また、図5のB及びCに、NB41A3細胞にレポータープラスミドpCRE-Lucをトランスフェクションした細胞に、M30_Ag-A(図5のB)又はM30_MSH-A(図5のC)を、それぞれ10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M及び0Mの濃度で16時間接触させたときのルシフェラーゼ活性を示す。
M30_Ag-Aの濃度を変えてレポータープラスミド(レポーター遺伝子)を含む細胞に接触させた場合は、濃度に依存したルシフェラーゼ活性の亢進は認められなかった(図5のB)。一方、M30_MSH-Aの濃度を変えてレポータープラスミド(レポーター遺伝子)を含む細胞に接触させた場合は、濃度に依存したルシフェラーゼ活性の亢進が認められた(図5のC)。
以上のことから、CREの下流に存在する遺伝子発現の検出も、GPR12を発現している細胞を用いたシグナルの検出に用いることが可能であることが示された。
[比較例1]
<Nesfatin-1改変ペプチドのマウス腹腔内投与による摂餌量への影響>
実施例6〜8においては、GPR12発現細胞における細胞シグナルの検出による、Nesfatin-1関連ペプチドの活性の評価の可能性について示した。一方、国際公開第WO2006/137597号パンフレットにおいては、Nesfatin関連ペプチドを投与された動物の摂餌量や体重増加の抑制を調べることで、Nesfatinの活性を評価できることを開示している。このことから、Nesfatin-1改変ペプチドについて、GPR12を介した細胞シグナルによる評価結果と動物による評価結果に、整合性がみられるか検討した。
実験動物として7週齢の雄のC57BL/6J系マウス(日本クレア(株))を用い、購入後午前6時から午後6時までの12時間を明期、午後6時から翌朝午前6時を12時間の暗期の周期で、ペレット飼料(日本クレア社 CE−2)を自由摂餌させ、22℃において飼育した。
5nmolの、Nesfatin-1M30(Mid-segment:配列番号11)、M30_Ag-A(配列番号50)、またはM30_MSH-A(配列番号51)を、各100μlの生理食塩水に溶解したものを、マウスの体重1gあたり0.25nmolの量で、C57BL/6Jマウスの腹腔内に投与した。コントロール群は、生理食塩水(Vehicle)のみを投与した。試料を26Gの注射針を付けたツベルクリン注射筒で各マウス(各群5匹)の腹腔に単回投与し、投与は暗期に入る直前(午後6時)に行った。
投与を行った各マウスを個別ケージに入れ、被検物質投与後0〜3時間の間で減少したペレット飼料の重量を測定することで摂餌量を測定した。各被検試料を投与されたマウスについて、投与後3時間における摂餌量(g/3hr)を図6に示す。
図6に示されるように、Nesfatin-1M30(Mid-segment)およびM30_MSH-Aが投与されたマウスにおいては、コントロール群(Vehicle)に比較して有意に摂餌量の低下が観察された。それに対して、M30_Ag-Aが投与されたマウスの摂餌量は、コントロール群との差が認められなかった。
この比較例の結果のM30_Ag-Aでは摂餌抑制が認められなかったことは、実施例6〜8でM30_MSH-AではGPR12を介した細胞シグナルで反応が認められたことと同様の考察を導くものである。このことから、GPR12を用いた細胞シグナルによるNesfatin-1作用の評価は、動物におけるNesfatin-1活性(摂餌抑制、体重増加抑制)を反映することが示された。
以上より、GPR12に関連する細胞シグナルに基づいて、Nesfatin-1関連物質(Nesfatin-1様作用物質およびNesfatin-1作用調節物質)をスクリーニングすることができることが示された。
Nesfatin-1作用調節またはNesfatin-1様作用物質を、in vitroまたはin silicoでスクリーニングする方法を提供することができる。また、本発明の利用により取得されたNesfatin-1作用調節物質あるいはNesfatin-1様作用物質は、肥満症候群、摂食障害、代謝異常、糖尿病、自己免疫疾患、RA、COPDなどの疾患の治療薬として期待される。
図1は、mGPR12一過性発現HeLa細胞およびhMC3R一過性発現HeLa細胞における、Forskolin無添加の条件下でのcAMP産生量の比較実施の結果を表した棒グラフである。mGPR12_mNSF1(-)は、mNSF1を無添加のmGPR12一過性発現HeLa細胞、mGPR12_mNSF1(+)は、mNSF1添加のmGPR12発現細胞を示す。ポジティブコントロールとして、hMCR3R_αMSH(-)は、αMSH無添加のhMC3R一過性発現HeLa細胞、hMCR3R_αMSH(+)は、αMSH添加のhMC3R一過性発現HeLa細胞を示す。N数は3(hMC3Rはn=2)にて実施し、SDをバーで示した。 図2は、mGPR12一過性発現HeLa細胞およびhMC3R一過性発現HeLa細胞における、Forskolin添加の条件下でのcAMP産生量の比較実施の結果を表した棒グラフである。mGPR12_mNSF1(-)は、mNSF1を無添加のmGPR12一過性発現HeLa細胞、mGPR12_mNSF1(+)は、mNSF1添加のmGPR12発現細胞を示す。ポジティブコントロールとして、hMCR3R_αMSH(-)は、αMSH無添加のhMC3R一過性発現HeLa細胞、hMCR3R_αMSH(+)は、αMSH添加のhMC3R一過性発現HeLa細胞を示す。N数は3(hMC3Rはn=2)にて実施し、SDをバーで示した。 図3は、mGPR12定常的発現細胞(CHO-K1-GPR12)における、Forskolin添加の条件下でのcAMP産生量の比較実施の結果を表した棒グラフである。Mid-segment、M30_Ag-A、およびM30_MSH-Aは、それぞれ、10-9MのNesfatin-1M30ペプチド、M30_Ag-A、およびM30_MSH-A添加培地で培養されたCHO-K1-GPR12を示す。(−)は、被検物質無添加の培地で培養されたCHO-K1-GPR12を示す。 図4のAは、10-9Mの濃度のNesfatin-1M30(Mid-segment)を接触させたCHO-K1およびCHO-K1-GPR12細胞から経時的に抽出したタンパク質における、CREBおよびリン酸化CREB(p-CREB)のウエスタンブロティング像である。図4のBは、10-12M、10-11M、10-10M、10-9M及び0Mの濃度のNesfatin-1M30(Mid-segment)を、15分間接触させたCHO-K1-GPR12細胞から抽出されたタンパク質における、CREBおよびp-CREBのウエスタンブロティング像である。 図5のAは、レポータープラスミド(pCRE-Luc)をトランスフェクションされたNB41A3細胞に、それぞれ、10-10Mの、Nesfatin-M30(Mid-segment)、M30_Ag-A、M30_MSH-Aを16時間接触させたときのルシフェラーゼ活性の結果を示す棒グラフである。Vehicleは、被検物質を接触させなかった、pCRE-LucがトランスフェクションされたNB41A3細胞における結果を示す。図5のBは、レポータープラスミド(pCRE-Luc)をトランスフェクションされたNB41A3細胞に、それぞれ、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M及び0Mの、M30_Ag-Aを接触させたときのルシフェラーゼ活性の結果を示す棒グラフである。図5のCは、レポータープラスミド(pCRE-Luc)をトランスフェクションされたNB41A3細胞に、それぞれ、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M及び0Mの、M30_MSH-Aを接触させたときのルシフェラーゼ活性の結果を示す棒グラフである。 図6は、生理食塩水(Vehicle)、Nesfatin-1M30(Mid-segment)、M30_Ag-A、またはM30_MSH-Aを腹腔投与されたマウスにおける、各被検物質投与後3時間の摂餌量(g/3hr)を示す棒グラフである。
配列表の説明
(1)配列番号1 ヒト由来Nesfatin-1のアミノ酸配列
(2)配列番号2 マウス由来Nesfatin-1のアミノ酸配列
(3)配列番号3 ラット由来Nesfatin-1のアミノ酸配列
(4)配列番号4 ヒト由来Nesfatin-1の塩基配列
(5)配列番号5 マウス由来Nesfatin-1の塩基配列
(6)配列番号6 ラット由来Nesfatin-1の塩基配列
(7)配列番号7 マウス由来GPR12の塩基配列およびそのCDSのアミノ酸配列
(8)配列番号8 マウス由来GPR12のCDSのアミノ酸配列
(9)配列番号9 ヒト由来MC3Rの塩基配列およびそのCDSのアミノ酸配列
(10)配列番号10 ヒト由来MC3RのCDSのアミノ酸配列
(11)配列番号11 ヒト由来Nesfatin-1M30のアミノ酸配列
(12)配列番号12 ラット由来Nesfatin-1M30のアミノ酸配列
(13)配列番号13 マウス由来Nesfatin-1M30のアミノ酸配列
(14)配列番号14 ヒト由来Nesfatin-1M16のアミノ酸配列
(15)配列番号15 ヒト由来Nesfatin-1M14のアミノ酸配列
(16)配列番号16 ヒト由来Nesfatin-1M10Mのアミノ酸配列
(17)配列番号17 ラット由来Nesfatin-1M16のアミノ酸配列
(18)配列番号18 ラット由来Nesfatin-1M14のアミノ酸配列
(19)配列番号19 ラット由来Nesfatin-1M10Mのアミノ酸配列
(20)配列番号20 マウス由来Nesfatin-1M16のアミノ酸配列
(21)配列番号21 マウス由来Nesfatin-1M14のアミノ酸配列
(22)配列番号22 マウス由来Nesfatin-1M10Mのアミノ酸配列
(23)配列番号23 ヒト由来NUCB1−1のアミノ酸配列
(24)配列番号24 ラット由来NUCB1−1のアミノ酸配列
(25)配列番号25 マウス由来NUCB1−1のアミノ酸配列
(26)配列番号26 ヒト由来NUCB1−M30のアミノ酸配列
(27)配列番号27 ラット由来NUCB1−M30のアミノ酸配列
(28)配列番号28 マウス由来NUCB1−M30のアミノ酸配列
(29)配列番号29 ヒト由来NUCB1−M16のアミノ酸配列
(30)配列番号30 ヒト由来NUCB1−M14のアミノ酸配列
(31)配列番号31 ヒト由来NUCB1−M10Mのアミノ酸配列
(32)配列番号32 ラット由来NUCB1−M16のアミノ酸配列
(33)配列番号33 ラット由来NUCB1−M14のアミノ酸配列
(34)配列番号34 ラット由来NUCB1−M10Mのアミノ酸配列
(35)配列番号35 マウス由来NUCB1−M16のアミノ酸配列
(36)配列番号36 マウス由来NUCB1−M14のアミノ酸配列
(37)配列番号37 マウス由来NUCB1−M10Mのアミノ酸配列
(38)配列番号38 NESFATIN-1 1stPCR Primer mNucB2-F337
(39)配列番号39 NESFATIN-1 1stPCR Primer mNucB2-R712
(40)配列番号40 NESFATIN-1 2ndPCR Primer mNucB2-N3
(41)配列番号41 NESFATIN-1 2ndPCR Primer mNucB2-R589
(42)配列番号42 ヒト由来NESFATINのアミノ酸配列
(43)配列番号43 ヒト由来NESFATIN(Mature)のアミノ酸配列
(44)配列番号44 マウス由来NESFATINのアミノ酸配列
(45)配列番号45 マウス由来NESFATIN(Mature)のアミノ酸配列
(46)配列番号46 ラット由来NESFATINのアミノ酸配列
(47)配列番号47 ラット由来NESFATIN(Mature)のアミノ酸配列
(48)配列番号48 マウス由来GPR3のCDSのアミノ酸配列
(49)配列番号49 マウス由来GPR6のCDSのアミノ酸配列
(50)配列番号50 ヒト由来Nesfatin-1M30の改変ペプチド(M30_Ag-A)アミノ酸配列
(51)配列番号51 ヒト由来Nesfatin-1M30の改変ペプチド(M30_MSH-A)アミノ酸配列

Claims (8)

  1. GPR3、GPR6、およびGPR12からなる群から選ばれる受容体タンパク質に試験物質を作用させる工程、および
    Nesfatin-1作用の変化に基づいてNesfatin-1様作用物質を特定する工程を含む、
    Nesfatin-1様作用物質のスクリーニング方法。
  2. 前記受容体タンパク質が、GPR12である請求項1記載のスクリーニング方法。
  3. 前記試験物質が、配列番号1〜3、または11〜37のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するペプチドを改変してなるペプチドまたはペプチド類似化合物である、請求項1または2記載のスクリーニング方法。
  4. 受容体タンパク質に試験物質を作用させる工程が、前記受容体タンパク質を発現する、細胞または非ヒト動物に、試験物質を作用させる工程である、請求項1〜3のいずれかに記載のスクリーニング方法。
  5. GPR3、GPR6、およびGPR12からなる群から選ばれる受容体タンパク質と、Nesfatin-1との共存系に、試験物質を作用させる工程、および
    Nesfatin-1作用の変化に基づいてNesfatin-1作用調節物質を特定する工程を含む、
    Nesfatin-1作用調節物質のスクリーニング方法。
  6. 前記受容体タンパク質が、GPR12である請求項5記載のスクリーニング方法。
  7. 前記受容体タンパク質と、Nesfatin-1との共存系に、試験物質を作用させる工程が、試験物質をNesfatin-1と共に、前記受容体タンパク質を発現する、細胞または発現非ヒト動物に作用させる工程である、請求項5または6記載のスクリーニング方法。
  8. Nesfatin-1受容体構造を、既知のGPR3、GPR6、またはGPR12の構造情報に基づきシミュレーションし、そのシミュレーションされたNesfatin-1受容体構造、またはリガンド構造に基づいて、Nesfatin-1作用調節物質またはNesfatin-1様作用物質をin silicoスクリーニングする方法、またはデザインする方法。
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