以下、適宜図面が参照されて、本発明の好ましい実施形態が詳細に説明される。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態が適宜変更されてもよいことは勿論である。
図1は、本発明の実施形態に係る複合機100の外観構成を示す斜視図である。図2は、プリンタ部102の内部構成を示す縦断面図である。図3及び図4は、本発明の実施形態に係るシート供給装置10の主要構成を示す外観斜視図である。図5は、手差しトレイ14の構成を示す分解斜視図である。図6は、リブ60A,60B及び突出片63A,63Bの構成を示す拡大斜視図である。図7は、図6におけるVII−VII断面図である。
<複合機100>
複合機100は、本発明の実施形態に係るシート供給装置10を備えて、プリンタ部102とスキャナ部103とを一体的に備えた画像記録装置として実現されている。この複合機100は、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する多機能装置(MFD:Multi Function Device)である。なお、複合機100は一実施態様にすぎず、本発明にかかるシート供給装置は、例えばプリンタ機能のみを有する画像記録装置において実現されてもよい。
図1に示されるように、複合機100は、高さより横幅及び奥行きが大きい幅広薄型の概ね直方体の外形を呈する。複合機100の上部がスキャナ部103である。スキャナ部103は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。複合機100の天板として原稿カバー105が開閉自在に設けられている。図1には示されていないが、原稿カバー105の下側の本体内部に、プラテンガラス及びイメージセンサが設けられている。上記プラテンガラスに載置された原稿の画像は、上記イメージセンサによって読み取られる。なお、本発明を実現するうえで、スキャナ部103は任意の構成であるため、ここでは詳細な説明が省略される。
複合機100の下部がプリンタ部102である。プリンタ部102は、スキャナ部103で読み取られた画像データや外部入力された印刷データに基づいて、記録用紙に画像や文書を記録する。プリンタ部102には、給紙カセット11を有するシート供給装置10が搭載されている。給紙カセット11に収容された記録用紙は、シート供給装置10によってプリンタ部102の内部へ給送される。プリンタ部102において、記録用紙に所望の画像が記録される。
複合機100の正面上部には、操作パネル104が設けられている。操作パネル104は、液晶表示部や各種キーを有する。プリンタ部102やスキャナ部103は、操作パネル104において入力された指示信号に基づいて動作される。また、この複合機100は、外部のコンピュータ等の情報処理装置に接続可能であるため、これらのコンピュータ等からプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信された指示信号に基づいても動作される。
<プリンタ部102の概略構成>
図2に示されるように、プリンタ部102にシート供給装置10が搭載されている。シート供給装置10は、大別して、給紙カセット11と給紙機構12とを備える。
プリンタ部102の正面には、開口106が形成されている。開口106の内側に、給紙カセット11が配設されている。詳細には、開口106内に給紙カセット11のほぼ全体が収容されている。給紙カセット11は、複合機100の底側に配設されるように構成されている。この給紙カセット11は、給紙トレイ13と手差しトレイ14とが、手差しトレイ14を上側(上方)として上下二段に配置されている。給紙カセット11の構成については後述する。
給紙機構12は、給紙ローラ25と、駆動伝達機構26と、これらを支持するスイングアーム27とを備えて構成されている。給紙機構12の構成については後述する。
図2に示されるように、プリンタ部102には、記録用紙が搬送される用紙搬送路23が形成されている。用紙搬送路23は、給紙カセット11の搬送方向下流側の端部から装置背面に沿って上方へ向かった後、湾曲されて装置正面側(図2の紙面右側)へ延び、画像記録ユニット24を経て装置正面の開口106へ通じている。したがって、給紙カセット11から用紙搬送路23に給送された記録用紙は、用紙搬送路23によって下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24に至り、画像記録ユニット24によって画像記録が行われた後に、開口106へ排出される。
用紙搬送路23は、画像記録ユニット24等が配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。例えば、複合機100の背面側の用紙搬送路23の湾曲部分は、外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とが装置フレームに固定されることにより構成されている。
用紙搬送路23のうち、装置背面側から開口106へ至る途中に画像記録ユニット24が設けられている。画像記録ユニット24は、キャリッジ38を備えている。キャリッジ38は、インクジェット記録ヘッド39を搭載している。キャリッジ38の搬送方向両側において、記録用紙の搬送方向と直交する主走査方向(図2の紙面に垂直な方向)に平板形状のガイドレール43,44が延設されている。キャリッジ38は、その搬送方向の両端がガイドレール43,44上に支持されて、ガイドレール43,44の延出方向へ往復動可能である。
インクジェット記録ヘッド39には、複合機100内に配置されたインクカートリッジからインクチューブを通じて各色のインクが供給される。なお、インクカートリッジ及びインクチューブは図2に示されていない。キャリッジ38が往復動される間に、インクジェット記録ヘッド39から各色インクが微小なインク滴としてプラテン42へ向かって選択的に吐出される。これにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像が記録される。
画像記録ユニット24の搬送方向上流側には、搬送ローラ46及びピンチローラが設けられている。このピンチローラは他の部材で隠されているため、図2には表れていない。上記ピンチローラは、搬送ローラ46の下側で、搬送ローラ46に対して圧接された状態で配置されている。搬送ローラ46及びピンチローラは、用紙搬送路23を搬送されている記録用紙を挟持してプラテン42上へ搬送する。画像記録ユニット24の搬送方向下流側には、排紙ローラ48及び拍車49が設けられている。排紙ローラ48及び拍車49は、記録済みの記録用紙を挟持しつつ開口106へ搬送する。搬送ローラ46及び排紙ローラ48は、図示しないモータから回転駆動力が伝達されて、各種記録モードに応じた所定の改行幅で間欠駆動される。
前述された用紙搬送路23、搬送ローラ46及び図示しないピンチローラが本発明の搬送部に対応している。また、画像記録ユニット24が本発明の記録部に対応している。また、排紙ローラ48及び拍車49が本発明の排出部に対応している。
<給紙カセット11>
以下、給紙カセット11の構成について説明する。図3には、手差しトレイ14が第1姿勢とされた状態が示されており、図4には、手差しトレイ14が第2姿勢とされた状態が示されている。
図3及び図4に示されるように、給紙カセット11は、給紙トレイ13と、手差しトレイ14とを具備する。給紙トレイ13が本発明の第1トレイに相当する。手差しトレイ14が本発明の第2トレイに相当する。給紙トレイ13の上側(上方)に手差しトレイ14が配設されている。本実施形態にかかるシート供給装置10が特徴とするところは、図1に示されるように給紙カセット11が装置本体に装着され、図3に示されるように給紙ローラ25が給紙トレイ13の上面に当接している状態において、操作者が手差しトレイ14に対して所定の操作を行うと、図4に示されるように、スイングアーム27とともに給紙ローラ25が手差しトレイ14の上面に押し上げられる点にある。また、上記所定の操作とは逆の操作を行うと、スイングアーム27とともに給紙ローラ25が給紙トレイ13の上面に降下され、図3に示される元の状態、つまり、給紙ローラ25が給紙トレイ13の上面に当接している状態に戻される点にある。以下に、給紙トレイ13及び手差しトレイ14の構成が詳細に説明される。
給紙トレイ13及び手差しトレイ14は、いずれも、給紙カセット11から記録用紙が搬送される搬送方向(矢印59で示される方向、以下同じ。)に長い矩形状に形成されている。給紙トレイ13及び手差しトレイ14それぞれに、記録用紙が積層状態で収容される。本実施形態では、給紙トレイ13は手差しトレイ14より深く形成されている。したがって、給紙トレイ13は、手差しトレイ14より多くの記録用紙を収容できる。給紙トレイ13は、A4サイズ以下の記録用紙、例えば、A4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ、写真L判サイズなどの各種サイズの記録用紙を収容できる。一方、手差しトレイ14は、後述するように、記録用紙の載置面が拡大されることによって、A4サイズ以上のサイズ、例えば、リーガルサイズやA3サイズの記録用紙を載置できる。給紙トレイ13に収容保持される記録用紙が、本発明において第1シートと称される。手差しトレイ14に収容保持される記録用紙が、本発明において第2シートと称される。なお、記録用紙は、第1シート及び第2シートの一例であり、記録用紙の他に樹脂シートなどが給紙トレイ13又は手差しトレイ14に収容保持されてもよい。
給紙トレイ13の搬送方向(矢印59で示される方向)の下流側の端に、傾斜分離板54が設けられている。傾斜分離板54は、幅方向(矢印59で示される搬送方向に直交する方向、以下同じ。)に長い板状部材からなる。傾斜分離板54は、給紙トレイ13の幅と略同じ幅長さに形成されている。傾斜分離板54は、装置背面側へ所定の角度をもって傾倒している。したがって、傾斜分離板54に記録用紙の前端が当接すると、その前端が傾斜分離板54の内面に沿って斜め上方へ案内される。
傾斜分離板54の幅方向における中央に分離部材57が設けられている。分離部材57には、給紙トレイ13の内側へ突出された複数の爪が記録用紙の搬送方向に並んで配設されている。仮に、複数枚の記録用紙が重ねられた状態で給紙トレイ13から傾斜分離板54へ給送されると、用紙束の前端が分離部材57によって捌かれる。その際に、分離部材57の爪が記録用紙間に入り込み、記録用紙間に隙間ができる。これにより、記録用紙が分離されやすくなり、給送の際に給紙ローラ25から記録用紙に付与された力と記録用紙の接触摩擦とが相俟って、最上位位置の記録用紙のみが下位位置の記録用紙から確実に分離される。
傾斜分離板54には、その上端から深く切り欠かれた2つの切り欠き51A,51Bが形成されている。これらの切り欠き51A,51Bは、分離部材57の両側に配置されている。切り欠き51A,51Bに、後述されるリブ60A,60Bがそれぞれ挿入される。図4に示されるように、手差しトレイ14が第2姿勢にされると、リブ60A,60Bは、切り欠き51A,51Bに挿入されて、その第1ガイド部61A,61Bが切り欠き51A,51Bの上端に支持される。これによって、手差しトレイ14の第1スライド板71の前端73が切り欠き51A,51Bにより支持される(図12参照)。また、手差しトレイ14が第2姿勢にされると、リブ60A,60Bは、その第2ガイド部62A,62Bが傾斜分離板54の内面から突出しない位置まで、切り欠き51A,51Bに挿入される。
傾斜分離板54には、前述された切り欠き51A,51Bの両側に、貫通孔52A,52Bが形成されている。貫通孔52A,52Bは、後述される突出片63A,63Bの高さ位置に対応している。つまり、図4に示されるように、手差しトレイ14が第2姿勢にされると、突出片63A,63Bは、貫通孔52A,52Bに挿入される。この状態において、突出片63A,63Bが貫通孔52A,52Bにより支持される。これによって、手差しトレイ14の第1スライド板71の前端73が貫通孔52A,52Bにより支持される(図12参照)。
図5に示されるように、手差しトレイ14は、主として、トレイ本体70と、第1スライド板71と、第2スライド板72とにより構成されている。手差しトレイ14は、トレイ本体70の下側に第1スライド板71が配設され、トレイ本体70の上側に第2スライド板72が配設された3層構造を有する。第1スライド板71及び第2スライド板72は、トレイ本体70に対してスライド可能に構成されている。第1スライド板71及び第2スライド板72がトレイ本体70に対してスライドされることで、手差しトレイ14の用紙支持面が拡大或いは縮小される。図3に示されるように、第1スライド板71及び第2スライド板72がトレイ本体70に収容された状態において、給紙機構12により給紙トレイ13から記録用紙が給紙可能となる。このような手差しトレイ14の姿勢が、本発明において第1姿勢と称される。図4に示されるように、第1スライド板71及び第2スライド板72がトレイ本体70から引き出された状態において、給紙機構12により手差しトレイ14から記録用紙が給紙可能となる。このような手差しトレイ14の姿勢が、本発明において第2姿勢と称される。そして、手差しトレイ14は、給紙トレイ13に支持された状態において、第1姿勢と第2姿勢との間でスライド可能である。
トレイ本体70は、図3及び図4に示されるように、給紙機構12より搬送方向上流側、詳細には、給紙ローラ25より搬送方向上流側に設けられている。図5に示されるように、トレイ本体70は、給紙トレイ13によって着脱可能に支持されている。トレイ本体70は、平板状の基体75と、一対のアーム76A,76Bと、ギヤユニット78とを備える。
一対のアーム76A,76Bは、それぞれが細長の平板状部材で構成されている。各アーム76A,76Bは、基体75の幅方向の両端にそれぞれ設けられている。詳細に説明するに、アーム76A,76Bは、平板の表裏面が基体75に垂直で、かつ、その長手方向が基体75の両側端から搬送方向下流側へ延出されている。アーム76A,76Bは、基体75の両側端の中央付近を基端として搬送方向下流側へ延出されている。一対のアーム76A,76Bが延出される方向は平行である。
ギヤユニット78は、基体75に設けられている。ギヤユニット78は、軸81と、2つのピニオンギヤ80A,80Bとを有する。ピニオンギヤ80A,80Bの外周面には、後述するラックギヤ96B及びラックギヤ98Bそれぞれと噛み合うことが可能な複数の歯が形成されている。各ピニオンギヤ80A,80Bには、その軸中心を貫通する軸孔が形成され、この軸孔に軸81が嵌め入れられることにより、2つのピニオンギヤ80A,80Bが軸81の両端にそれぞれ固定されている。
軸81は、一対のアーム76A,76Bの離間距離より若干短いものであり、軸81の両端に固定された2つのピニオンギヤ80A,80Bは、各アーム76A,76Bの内側に配置される。軸80は、基体75に回転自在に支持されている。基体75において、ピニオンギヤ80A,80Bが配置される箇所には、貫通孔86A,86Bが穿たれている。これにより、軸81が基体75に支持された状態で、ピニオンギヤ80A,80Bの概ね上側半分が基体75の上面に露出され、概ね下側半分が基体75の下面に露出される。
各アーム76A,76Bが基体75の上面から突出する内側面には、ガイド溝88A,88Bが形成されている。ガイド溝88A,88Bは、アーム76A,76Bの長手方向に延びる凹溝である。このガイド溝88A,88Bに、第2スライド板72の両端に設けられたレール97A,97Bがそれぞれ挿入されて、第2スライド板72がアーム76A,76Bの延出方向にスライド可能に案内される。
各アーム76A,76Bの下端には、互いに対向する方向へ突出する支持片92A,92Bが設けられている。なお、支持片92Bは、アーム76Bの内面において支持片92Aと対向する位置に設けられているが、図5には示されていない。支持片92A,92Bは、アーム76A,76Bの下端から水平方向に突出されている。支持片92A,92Bは、所定の長さに分断されて、第1スライド板71の両側端を挟持可能に上下方向へ離間されて配置されている。支持片92A,92Bに第1スライド板71の両側端がそれぞれ挿入されて、第1スライド板71がアーム76A,76Bの延出方向にスライド可能に支持される。
第2スライド板72には、一対のサイドガイド93A,93Bが設けられている。サイドガイド93A,93Bは、第2スライド板72の上面において、幅方向へスライド可能である。サイドガイド93A,93Bは、第2スライド板72に載置された記録用紙の幅方向の位置を規制する。具体的には、第2スライド板72に載置された記録用紙の幅方向の位置を予め定められた基準位置(本実施形態では第2スライド板72の幅方向の中央)に略一致させるように規制する。一対のサイドガイド93A,93Bは、不図示のラックギヤ及びピニオンギヤを用いた機構により連動するように構成されている。したがって、一対のサイドガイド93A,93Bのうちいずれか一方がスライドされると、他方が連動して相反する方向へスライドする。なお、各図には、サイドガイド93A,93Bが、第2スライド板72の側端付近に配置された状態が示されている。
サイドガイド93A,93Bには、支持プレート95A,95Bがそれぞれ設けられている。支持プレート95A,95Bは、サイドガイド93A,93Bの上面を構成して、第2スライド板72の上面に平行な庇形状を呈する。排紙ローラ48によって装置正面側へ排出された記録用紙は、支持プレート95A,95B上に支持される。
第2スライド板72の後端に、把手99が設けられている。把手90は、第2スライド板72の後端において幅方向中央に設けられている。把手90は、第2スライド板72の厚み方向に凹凸する形状であって、第2スライド板72に一体形成されている。第2スライド板72がトレイ本体70に支持された状態で、操作者が把手90を摘んで搬送方向へ力を作用させると、第2スライド板72がアーム76A,76Bの延出方向に沿ってスライドされる。
第2スライド板72の下面の両側端には、ラックギヤ98A,98Bが設けられている。なお、図5ではラックギヤ98Aは示されていないが、第2スライド板72においてラックギヤ98Bと幅方向に対称に設けられている。ラックギヤ98A,98Bは、第2スライド板72と一体に形成されている。ラックギヤ98A,98Bは、2つのピニオンギヤ80A,80Bに対応して、第2スライド板70の幅方向に隔てられて2つ設けられている。ラックギヤ98A,98Bの歯の形状及びピッチは、ピニオンギヤ80A,80Bと噛み合うことが可能な寸法に形成されている。第2スライド板72がトレイ本体70に組み付けられた状態において、ラックギヤ98A,98Bがピニオンギヤ80A,80Bと噛合する。
これにより、第2スライド板72をトレイ本体70に対してスライドさせると、第2スライド板72の直線運動がラックギヤ98A,98Bによってピニオンギヤ80A,80Bを回転させる回転運動に変化される。つまり、操作者が、第2スライド板72をスライドさせることにより、ピニオンギヤ80A,80Bを回転させることができる。
さらに、第2スライド板72の下面がピニオンギヤ80A,80Bによって支持されるとともに、第2スライド板70のスライドがラックギヤ98A,98Bによって規制される。なお、ラックギヤ98A,98Bの長さは、第2スライド板72のスライド範囲により決定される。ここで、図3には、第2スライド板72がトレイ本体70に対して搬送方向下流側へ最大限にスライドされた姿勢、つまり、第2スライド板72がトレイ本体70に収容された姿勢(本発明の第1姿勢に相当)が示されている。また、図4には、第2スライド板72がトレイ本体70から搬送方向上流側へ最大限に引き出された姿勢、換言すれば、手差しトレイ14の用紙支持面が拡大された姿勢(本発明の第2姿勢に相当)が示されている。
第1スライド板71の上面の両側端には、ピニオンギヤ80A,80Bに対応させて2つのラックギヤ96A,96Bが設けられている。なお、図5ではラックギヤ96Aは示されていないが、第1スライド板71においてラックギヤ96Bと幅方向に対称に設けられている。ラックギヤ96A,96Bは、第1スライド板71と一体に形成されている。ラックギヤ96A,96Bの歯の形状及びピッチは、ピニオンギヤ80A,80Bと噛み合うことが可能な寸法に形成されている。第1スライド板71がトレイ本体70に組み付けられると、ラックギヤ96A,96Bは、ピニオンギヤ80A,80Bに噛み合わされる。
これにより、第2スライド板72をトレイ本体70に対してスライドさせると、ラックギヤ98A,98B及びピニオンギヤ80A,80Bを介して、ラックギヤ96A,96Bに第1スライド板71をスライドさせる力が与えられる。つまり、操作者が、第2スライド板72をスライドさせることにより、ピニオンギヤ80A,80Bが回転され、その回転力がラックギヤ96A,96Bに伝達されて、第1スライド板71がスライドされる。なお、ラックギヤ96A,96Bの長さは、第1スライド板71のスライド範囲により決定される要素であるが、実質的に、ラックギヤ98A,98Bと同じ長さに形成される。ここで、図3には、第1スライド板71がトレイ本体70に対して搬送方向上流側へ最大限にスライドされた姿勢(本発明の第1姿勢に相当)が示されている。また、図4には、第1スライド板71がトレイ本体70から搬送方向下流側へ最大限に引き出された姿勢(本発明の第2姿勢に相当)が示されている。
第1スライド板73には、第2姿勢において給紙ローラ25が当接する位置にコロ82,83が設けられている。コロ82,83は、第1スライド板73の幅方向を回転軸方向として、第1スライド板73の上面から露出されて回転自在に設けられている。第1スライド板73が第1姿勢にされると、2つの給紙ローラ25に各コロ82,83がそれぞれ当接する(図12参照)。コロ82,83によって、第1スライド板73上における記録用紙の搬送が円滑となる。
<リブ60A,60B及び突出片63A,63B>
以下、リブ60A,60B及び突出片63A,63Bの構成が説明される。図6は、第1スライド板71の前端73の中央付近を示す拡大斜視図である。図7は、図6におけるVII−VII断面図である。
第1スライド板71の前端(シート搬送方向側の先端)73には、リブ60A,60B及び突出片63A,63Bが設けられている。リブ60A,60Bは、第1スライド板71の前端73の幅方向中央に対して、幅方向へ均等に離れた位置に設けられている。リブ60A,60Bは、手差しトレイ14が第1姿勢から第2姿勢へスライドされる際に、スイングアーム27と当接して、給紙ローラ25を手差しトレイ14より上方へ位置するようにスイングアーム27を回動させるものである。リブ60A,60Bが設けられている位置は、スイングアーム27が設けられている位置に対応している。つまり、リブ60A,60Bは、第1スライド板71がスライドされる際にスイングアーム27と当接し得るが、給紙ローラ25とは当接しない位置に設けられている。リブ60A,60Bは、第1スライド板71における配置が異なる他は同形状なので、以下にリブ60Aを例に説明がなされ、リブ60Bの説明が省略される。
リブ60Aは、前端73から上方へ鈎状に突出されている。詳細には、前端73から搬送方向下流側へ斜め上方に第2ガイド部62Aが突出され、第2ガイド部62Aの上端から水平方向へ連続して第1ガイド部61Aが突出されている。この第1ガイド部61A及び第2ガイド部62Aを側面視すると鈎状をなしている。
図7に示されるように、第1ガイド部61Aにおける上面64と、第2ガイド部62Aにおける搬送方向上流側の側面65とは連続しており、後述されるように、スイングアーム27を回動させるガイド面となる。第1スライド板71のトレイ面74から第1ガイド部61Aの上面64までの高さHは、給紙ローラ25の半径R(図9参照)より大きい。この作用効果については後述される。
第2ガイド部62Aの側面65は、第2ガイド部62Aの延出方向に沿ってトレイ面74と鈍角をなすように傾斜されている。この側面65にスイングアーム27が案内されて、給紙ローラ25がトレイ面74へ緩やかに降下される。この側面65が、本発明におけるガイド面に相当する。
突出片63A,63Bは、第1スライド板71の前端73の幅方向中央に対して、幅方向へ均等に離れた位置であって、リブ60A,60Bの外側に設けられている。突出片63A,63Bが設けられた位置は、2つの給紙ローラ25が設けられた位置にそれぞれ対応している。
突出片63A,63Bは、第1スライド板71のトレイ面74を搬送方向下流側へ拡大するように延出されている。突出片63A,63Bの幅(前端73に沿った方向)は、給紙ローラ25の幅より若干大きい。突出片63A,63Bが前端73から搬送方向下流側へ突出する長さは、給紙ローラ25の最下位置の回動軌跡を考慮して設定されている。つまり、前述されたようにリブ60A,60Bにスイングアーム27が案内されて給紙ローラ25がトレイ面74へ降下される際の給紙ローラ25の最下位置の回動軌跡と、トレイ面74を含む面との交差位置より、搬送方向下流側へ突出片63A,63Bが突出されている。要するに、突出片63A,63Bの上面が上記交差位置を含む。これにより、トレイ面74へ降下する給紙ローラ25は、突出片63A,63B上に着地して、突出片63A,63Bに担持される。その結果、手差しトレイ14が第1姿勢から第2姿勢へとスライドされる際に、第1スライド板71の前端73に給紙ローラ25が直接衝突することがないので、給紙ローラ25に傷がつくことが防止される。
<給紙機構12>
以下、給紙機構12の構成が説明される。前述されたように、給紙機構12は、給紙ローラ25と、駆動伝達機構26と、これらを支持するスイングアーム27とを備えて構成されている。給紙ローラ25が本発明におけるローラに相当し、スイングアーム27が本発明におけるアームに相当する。
図2及び図10に示されるように、給紙トレイ13の上方に、装置の幅方向に延びる駆動軸29が設けられている。なお、図3及び図4においては駆動軸29が省略sれている。駆動軸29の一端は給紙トレイ13の外側へ延出されて、不図示のモータから駆動力が伝達される。駆動軸29の他端は給紙トレイ13の幅方向の中央に延出されて、駆動伝達機構26に連結されている。つまり、駆動軸29は、モータの駆動力を駆動伝達機構26に伝達する。駆動軸29は、複合機100の本体フレームで回転可能に支持されている。
スイングアーム27は、駆動軸29に支持されて、駆動軸29の軸方向と直交する方向へ延出されている。スイングアーム27は、駆動軸29の他端側に連結されている。つまり、スイングアーム27は、給紙カセット11において幅方向の中央に配置されている。換言すれば、手差しトレイ14におけるスライド方向と直交する方向の中央に配置されている。スイングアーム27は、駆動軸29に対して回転自在である。スイングアーム27の回動端(先端)は、駆動軸29から搬送方向下流側(図2における紙面左側)へ延出されている。スイングアーム27の回動端は、給紙カセット11の上側において、給紙カセット11に収容された記録用紙に対して接離する方向へ回動可能である。
スイングアーム27は、スイングアーム27自身の自重や、給紙ローラ25及び駆動伝達機構26の自重によって、駆動軸29を中心(支点)として回動される。そして、給紙ローラ25の表面が給紙カセット11内の記録用紙に当接した位置でスイングアーム27は静止する。図2に示されるように、給紙ローラ25が給紙トレイ13の記録用紙に当接した状態で、スイングアーム27は搬送方向下流側へ斜め下方に傾斜される。
スイングアーム27の回動端に、給紙ローラ25が回転可能に支持されている。詳細には、スイングアーム27の回動端に回動自在に回転軸28が支持されており、この回転軸28の両端に2つの給紙ローラ25がそれぞれ固定されている。つまり、2つの給紙ローラ25が、スイングアーム27を挟むようにして配置されており、2つの給紙ローラ25は、回転軸28の回転に伴って一体として回転される。給紙ローラ25は、スイングアーム27の回動に応じて、給紙カセット11に収容された記録用紙に対して接離する。図2では、給紙ローラ25のローラ表面が給紙トレイ13の上面に当接した状態が示されている。もちろん、給紙トレイ13に記録用紙が載置されている場合は、給紙ローラ25のローラ面は記録用紙の上面に当接する。給紙トレイ25のローラ面には、記録用紙との摩擦が大きいゴムなどの弾性部材が用いられる。
駆動伝達機構26は、スイングアーム27の延出方向に直列に噛合された複数のギヤから構成される。この各ギヤは、スイングアーム27に回転自在に支持されている。駆動伝達機構26における一端側のギヤは、駆動軸29に固定されており、駆動軸29とともに回転される。駆動伝達機構26の他端側のギヤは、前述された回転軸28と噛合されている。この駆動伝達機構26によって、駆動軸29の回転が回転軸28に伝達される。
モータから駆動軸29、駆動伝達機構26、回転軸28を順次介して給紙ローラ25へ回転駆動力が伝達されることによって、給紙ローラ25が図2において時計方向に回転される。給紙ローラ25が記録用紙に当接した状態で上記回転駆動力が給紙ローラ25に伝達されると、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力によって、記録用紙を搬送方向下流側の用紙搬送路23へ給送する搬送力が生じる。
<手差しトレイ14のスライドとスイングアーム27の回動>
以下、シート供給装置10において、手差しトレイ14の姿勢変化による給紙機構12の状態変化が説明される。図8は、手差しトレイ14が姿勢変化される過程における給紙カセット11及び給紙機構12を示す平面図である。図9は、図8におけるIX−IX断面図である。図10は、手差しトレイ14が姿勢変化される過程における給紙カセット11及び給紙機構12を示す平面図である。図11は、図10におけるXI−XI断面図である。図12は、手差しトレイ14が第2姿勢にされた状態における断面図であり、XI−XI断面と同じ断面を示す。
給紙カセット11の給紙トレイ13には、例えば使用頻度の高いサイズ及び紙種の記録用紙が収容される。手差しトレイ14には、必要に応じて使用される比較的使用頻度が低いサイズ及び紙種の記録用紙が収容される。これにより、種類やサイズの異なる2種類のシートが給紙トレイ13及び手差しトレイ14にそれぞれ独立して保持される。
図3に示されるように、給紙ローラ25が給紙トレイ13の上面に当接している状態において、操作者が把手90を操作して、第2スライド板72を搬送方向上流側へ引き出すと、ラックギヤ98A,98B、ピニオンギヤ80A,90B、ラックギヤ96A,96Bを順次介して、第1スライド板71を搬送方向下流側へ押し出す力が第1スライド板71に作用する。これにより、第2スライド板72が装置手前側へ引き出されるとともに、第1スライド板71が搬送方向下流側へ押し出される。言い換えれば、第2スライド板72の姿勢変化に連動して、第1スライド板71が姿勢変化される。この姿勢変化により、手差しトレイ14が第1姿勢から第2姿勢へ姿勢変化される。
図8及び図9に示されるように、前述された第1スライド板71の姿勢変化の過程において、リブ60A,60Bがスイングアーム27と当接して、スイングアーム27の下側へ潜り込むようにしてスイングアーム27を上方へ押し上げる。つまり、リブ60A,60Bによってスイングアーム27が上方へ回動される。そして、リブ60A,60Bの第1ガイド部61A,61Bによって、スイングアーム27が支持される。
前述されたように、リブ60Aの第1ガイド部61Aの上面64は、第1スライド板71のトレイ面74から高さHだけ上方にある(図7参照)。図には示されていないが、リブ60Bの第1ガイド部61Bの上面も同様の高さにある。この高さHは、給紙ローラ25の半径Rより大きい。したがって、第1ガイド部61A,61Bによってスイングアーム27が支持されることにより、スイングアーム27の回動端に支持された給紙ローラ25の最下位置は、必ず第1スライド板71のトレイ面74より上方に位置される。したがって、第1スライド板71がさらに押し出されても、第1スライド板71の前端73や突出片63A,63Bが給紙ローラ25に当接することがない。
そして、さらに第1スライド板71が押し出されると、図10及び図11に示されるように、スイングアーム27の回動端が第1ガイド部61A,61Bの上面64から第2ガイド部62A,62Bの側面65へ移動する。そして、この側面65に沿ってスイングアーム27の回動端が降下することにより、スイングアーム27が下方へ回動すると共に、給紙ローラ25が下降して突出片63A,63Bに着地する。前述されたように、突出片63A,63Bは、給紙ローラ25の最下位置に回動軌跡と第1スライド板71のトレイ面74との交差位置より搬送方向下流側へ突出されているので、給紙ローラ25は必ず突出片63A,63Bに着地する。
そして、図12に示されるように、第1スライド板71がさらに押し出されて手差しトレイ14が第2姿勢にされると、リブ60A,60Bが切り欠き51A,51Bに進入すると共に、突出片63A,63Bが貫通孔52A,52Bに進入する。これにより、前述されたように、第1ガイド部61A,61Bがリブ60A,60Bを介して切り欠き51A,51Bの上端に支持されると共に、突出片63A,63Bを介して貫通孔52A,52Bに支持される。また、この状態において、給紙ローラ25とコロ82,83とが対向する。
一方、給紙ローラ25が手差しトレイ14のトレイ面74に当接している状態において、操作者が把手90を操作して、第2スライド板72を搬送方向下流側へスライドさせて、トレイ本体70に第2スライド板72を収容させると、ラックギヤ98A,98B、ピニオンギヤ80A,80B、ラックギヤ96A,96Bを順次介して、第1スライド板71を搬送方向上流側へ引き戻す力が第1スライド板71に作用する。これにより、手差しトレイ14が第2姿勢から第1姿勢へ姿勢変化される。
第1スライド板71が引き戻される際に、スイングアーム27の回動端がリブ60A,60Bの第2ガイド部62A,62Bの側面65に案内されて、スイングアーム27が上方へ回動される。そして、スイングアーム27の回動端が第1ガイド部61A,61Bの上面64に支持されると、給紙ローラ25がトレイ面74より上方へ持ち上げられる。さらに、第1スライド板71が引き戻されると、第1ガイド部61A,61Bがスイングアーム27の駆動軸29側へ移動して、スイングアーム27が緩やかに下方へ回動され、やがて給紙ローラ25が給紙トレイ13の上面に着地する。これにより、給紙ローラ25によって給紙トレイ13に載置された記録用紙を給送することが可能な状態となる。
<本実施形態による作用効果>
このように本実施形態によれば、手差しトレイ14が第1姿勢から第2姿勢へスライドされる際に、第1スライド板71の前端73に設けられたリブ60A,60Bがスイングアーム27と当接して、給紙ローラ25が手差しトレイ14のトレイ面74より上方へ位置するようにスイングアーム27が回動されるので、第1スライド板71の前端73及び突出片63A,63Bが給紙ローラ25に当接しない。したがって、手差しトレイ14がスライドされる際に給紙ローラ25を損傷することが防止される。また、手差しトレイ14が斜行することなく真っ直ぐにスライドでき、さらに、このスライドトレイ14に連動して円滑にスイングアーム27が上方へ回動される。
また、本実施形態では、スイングアーム27が手差しトレイ14におけるスライド方向と直交する方向の中央に配置されているが、従来の如くスイングアーム27から手差しトレイ14の側端へウィングなどを延出させる必要がなく、手差しトレイ14の第1スライド板71に設けられたリブ60A,60Bが直接スイングアーム27を回動させるので、シート供給装置10の小型化が実現される。
さらに、リブ60A,60Bは、第1スライド板71の幅方向のほぼ中央においてスイングアーム27と当接するので、スイングアーム27を回動させるために第1スライド板71に加わる負荷がスライド方向に対して偏らない。これにより、手差しトレイ14の円滑なスライドが可能となる。また、手差しトレイ14に過剰な剛性を付与する必要がないので、手差しトレイ14の薄型化が実現される。
また、リブ60A,60Bが第1スライド板71のトレイ面74から上方へ突出する高さHが、給紙ローラ25の半径Rより大きいので、給紙ローラ25が確実にトレイ面74の上方へ持ち上げられる。
また、リブ60A,60Bにおいて、第2ガイド部61A,61Bの側面65がスイングアーム27を第1スライド板71のトレイ面74へ案内することにより、給紙ローラ25が第1スライド板71のトレイ面74に衝撃無く着地させることができる。
また、第1スライド板71の前端73から搬送方向下流側へ延出された突出片63A,63Bによって、第2ガイド部62A,62Bに案内されるスイングアーム27とともに回動する給紙ローラ25が担持されるので、第1スライド板73を過剰な大きさにすることなく、給紙ローラ25が第1スライド板73の前端73に接触することを防止できる。