以下、本発明の多連分注装置の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
図1は、本発明の多連分注装置の要部の構成図である。図1において、多連分注加圧部100は、パルスモータ11a、シリンジ12、電磁弁14、パイプ15などより構成される8個の分注加圧器1である。分注加圧器1の詳細構成および動作については後述する。多連ノズル部300は、先端がやや細いノズルの形状で多端がパイプ3fの形状になった8本のノズル3gを有しており、8本のノズル3gそれぞれの間隔すなわちピッチは可変ピッチとなっている。分注加圧器1のパイプ15と多連ノズル部300のノズル3gのパイプ3f部分とはチューブ200により8個それぞれについて別々に結合されている。多連ノズル部300の各ノズル3gの先端部は、多連ディスポーザブルノズル部400に差し込まれる。
各分注加圧器1の各シリンジ12は、後述するように、電磁弁14が開放の状態において、シリンジ12の内部のピストンにより、独立に所定の容積の空気を吸引でき、電磁弁14が閉鎖の状態において、ピストンにより、所望の圧力をシリンジ12の内部にかけることができ、電磁弁14を開放状態にすることにより、上記の圧力により、シリンジ12内の空気を吐出できる。これらの吸引、吐出などの動作は、図4に示す制御器2が各パルスモータ11aと各電磁弁14を制御して行うが、その詳細の動作については後述する。
図2は、多連ノズル部300の構造の一例を示す平面図および正面図より成る図面である。図2(A)は多連ノズル部300の平面図、図2(B)は多連ノズル部300の正面である。
ガイド枠3aは、金属、プラスチック材料などの板または棒に、パイプガイド溝3cで示される長円形の穴を開けた部材である。パイプガイド溝3cの幅は、パイプ3fの外径より少し大きめとする。2枚のガイド枠3aは、スペーサ3bを介して張り合わされ、スペーサ3bの厚さに相当するフランジ溝3kが形成される。パイプ3fは、その先端部がノズル3gのように尖がった形状で、内部には空気が通る穴が設けられている。また、パイプ3fの中央付近には、フランジ3hが設けられている。フランジ3hの厚さは、フランジ溝3kの幅よりやや小さ目とする。フランジ3hは、フランジ溝3kの差し込まれており、パイプ3fは、フランジ溝3kに沿って、図面の上下方向に移動可能となっている。
リンクレバー3dには、両端部に支点3eで示されるような穴があり、中央部には、パイプ3fを通す穴が設けられた板部材である。隣接するリンクレバー3dは、支点3eの穴において、ビスや軸などにより結合されており、互いの角度は、可変になっている。中央部のパイプ3fを通す穴の直径は、パイプ3fの外径よりやや大き目とする。8本のパイプ3f用に設けられた8枚のリンクレバー3dは、A点とB点の距離を変化させると、図3(A)、(B)に示すように伸縮できる。従って、8本のパイプ3fの配列は、A点とB点の距離により、互いのピッチが可変できることになる。リンクレバー3dは、ガイド枠3aの上下の両方に設けられており、パイプ3fが傾くのを防止する。
A点、B点の位置は、手動で動かして変更してもよいが、A点、B点の一方、または両方をモータなどで動かすようにしてもよい。A点、B点の他方は、移動伸縮可能の方向には、固定してもよい。多連ノズル部300の各パイプ3fは、移動可能であるので、チューブ200は、柔軟性のあるチューブであることが好ましい。柔軟性のあるチューブとしては、金属製、プラスチック製、ゴム製などのチューブを適用できる。また、ノズル3gは、多連ディスポーザブルノズル部400の各ノズルにしっかりと嵌合させて機密性が保たれることが望ましいので、多連ディスポーザブルノズル部400の各ノズルの位置誤差を吸収できるように、リンクレバー3dの中央部の穴の内径は、パイプ3fの外径に対して十分な余裕を持たせてもよい。
次に、本発明に用いる分注加圧器1の基本的な構成について説明する。本発明の多連分注装置は、分注加圧器1と制御器2を具備する。分注加圧器1は、液体を出し入れする出入口を有し、容積が可変できる容器と、容器と出入口の間に設けられた弁を備える。容器の容積および弁は、制御器2により制御される。制御器2は、弁を開放状態として、前記容器の容積を微少量だけ増大させることができる。前記弁を閉鎖状態として、前記容器の容積を所定量に減少させて容器の内圧を高めることができる。前記弁を開放状態にして、前記容器内の媒体を前記出入口から放出することができる。具体的な例について次に説明する。
図4は、本発明の多連分注装置の具体的な構成を示す図である。本発明の多連分注装置は、分注加圧器1、チューブ200、多連ノズル部300のパイプ3f、ノズル3g、ノズルチップ16、および、制御器2を具備する。なお、分注加圧器1、チューブ200、多連ノズル部300のパイプ3f、ノズル3g、ノズルチップ16、については、8個の内の1個について図示している。ノズルチップ16は、図1の多連ディスポーザブルノズル部400の1本を示している。なお、多連ノズル部300の可変ピッチの機構については、図示を省略しているが、パイプ3fは、図2により説明したフランジ溝3kに挿入されている。
分注加圧器1は、基板10、ピストン駆動部11、シリンジ12、ピストン13、電磁弁14、パイプ15を有する。ピストン駆動部11は、パルスモータ11a、駆動軸11b、ばね11cを具備する。制御器2は、操作部21、表示部22、MPU(マイクロプロセッサユニット)23、記憶部24、電磁弁駆動部25、および、モータ駆動部26を具備する。電磁弁駆動部25、および、モータ駆動部26は、8個の分注加圧器1、それぞれに対して設けられる。
まず、分注加圧器1について詳述する。
シリンジ12は、コ型の基板10の第1の垂直部に固定されている。シリンジ内には、ピストン13が挿入されており、シリンジ12の軸方向に移動可能である。シリンジ12とピストン13は、小型の注射器や注入機のような構造で、空気を吸引したり排出したりできる出入口を有する容量可変の容器である。ピストン13の軸には、ばね固定軸11dが設けられており、ばね固定軸11dには、ばね11cの一端が装着されており、ばね11cは、ピストン13をシリンジ12の外部に引き出すように引っ張っている。パルスモータ11aは、基板10の第2の垂直部(シリンジ12が固定されている方とは逆の方)に固定されている。ばね11cの他端も第2の垂直部上に固定されている。パルスモータ11aの回転によって、駆動軸11bであるモータシャフトは、図面上で左右方向に移動可能になっている。駆動軸11bの一端は、ピストン13の軸に当接している。駆動軸11bが図の右方向に移動すると、ピストン13は、ばね11cの引っ張り力に抗して空気排出方向に移動する。駆動軸11bが左方向に移動すると、ピストン13は、ばね11cに引っ張られて空気吸引方向に移動する。
シリンジ12の右先端部は細いチューブ状であり、電磁弁14の一方の口が接続される。電磁弁14の他方の口には、パイプ15が接続される。パイプ15の先端にはチューブ200が結合されている。チューブ200の他端は、パイプ3fに結合されている。パイプ3fの先端のノズル3gは、多連ディスポーザブルノズル部400の1本のノズルチップ16にしっかり差し込まれている。パイプ15とチューブ200との結合部、チューブ200とパイプ3fの結合部、ノズル3gとノズルチップ16との結合部は、空気漏れがない構造とする。
ノズルチップ16には、微細な直径の穴が設けられている。電磁弁14には、シリンジ12側とパイプ15側の空気の流通を遮断する弁が設けられており、この弁の開閉は、制御器2から供給される電気信号により行われる。電磁弁14が開放状態では、シリンジ12内部、電磁弁14内部、パイプ15内部、チューブ200内部、パイプ3f内部、ノズル3g内部、ノズルチップ16内部は、外部とつながっており、空気の流通が生じ得る。ピストン13をシリンジ12から引き出す方向に引っ張ることにより外部の空気をシリンジ12内に吸引することができる。電磁弁14が閉鎖状態では、シリンジ12内部の空気は外部から遮断される。電磁弁14が閉鎖状態の際に、ピストン13をシリンジ12内に挿入すると、シリンジ12内の空気は圧縮される。
パルスモータ11aの構造の一例を図6(A)の断面図に示す。図6(A)において、パルスモータ11aは、モータシャフト30、回転子31、固定子32、筐体33から成る。回転子31、固定子32は、周知のパルスモータやステッピングモータと同様の構造である。筐体33には、2つの軸受けが設けられる。一方の軸受けは、スラスト軸受けであり、シャフトは軸方向に自由に移動可能とする。他方の軸受けは、ねじ軸受け34であって、拡大図に示すように、モータシャフト30には雄ねじが切られており、筐体33の軸受け部に設けられた雌ねじ状の穴に挿入されている。回転子31が、ねじ軸受け34から見て時計方向に回転すると、モータシャフト30は、スラスト軸受け30の方向に移動する。回転子31が、ねじ軸受け34から見て反時計方向に回転すると、モータシャフト30は、ねじ軸受け34の方向に移動する。すなわち、回転子31の回転運動をモータシャフト30の直線運動に変換できる。モータシャフト30の移動に伴って回転子31も移動するので、回転子31のモータシャフト方向の厚さは、固定子32のモータシャフト方向の長さより小さくして、固定子32の磁界内に出ないように、かつ筐体に当たらないようにする。モータシャフト30に切る雄ねじ部分の長さは、ピストン13が必要な移動最大距離に若干の余裕を加えた長さでよい。
ばね11cの引っ張り力により、ピストン13の軸の端部は、駆動軸11bであるモータシャフト30に当接しているので、パルスモータ11aを、ピストン13の方向に向かって反時計方向に回転させると、ピストン13はシリンジ12から引き出される方向へ移動する。パルスモータ11aをピストン13の方向に向かって時計方向に回転させると、ピストン13は、シリンジ12内部に押し込まれる。
本発明では、ピストン13の位置、移動方向と電磁弁14の開閉とを制御することにより、薬液18の入った容器から薬液の微量サンプル17をノズルチップ16内に吸引し、サンプル17をノズルチップ16から実験用のシャーレなどに向けて吐出させる。本発明の多連分注装置の動作について、図5(A)〜(D)により説明する。なお、図5においては、チューブ200を省いて、パイプ15にノズルチップ16をはめ込むように図示しているが、実際は、パイプ15とノズルチップ16の間には、チューブ200、多連ノズル部300が介在する。
まず、新しいノズルチップ16をパイプ15の先端に嵌め込む。図5(A)に示すように、パルスモータ11aを反時計方向に回転させて、シリンジ12からピストン13を引き出し、ピストン13を所定位置P1まで移動させる。なお、位置P1は、シリンジ12の開口端(図4では左端)を基準としてピストン13の挿入方向に向けて計った距離とする。このときには、電磁弁14は、開放状態にしておく。シリンジ12内部には常圧空気が満たされる。
次に、図5(B)において、ノズルチップ16の先端を薬液18容器内の薬液に浸けて、パルスモータ11aを反時計方向に少しだけ回転させ、ピストン13を所定位置P2に少しだけ引き出す。電磁弁14は開放状態のままとする。シリンジ12の断面内法の円形面積Ssとピストン13の移動距離(P1〜P2)の積に相当する容量の薬液がサンプル17としてノズルチップ16の先端部に吸引される。
次に、図5(C)に示すように、電磁弁14を閉鎖状態とし、パルスモータ11aを時計方向に回転させて、ピストン13を、所定位置P3になるまでシリンジ12内部方向に押し込む。電磁弁14が閉鎖状態であるので、シリンジ12内の空気は圧縮され高圧になる。
次に、分注加圧器1を移動させて、ノズルチップ16の先端が実験用のシャーレなどの容器や実験器具の上に位置するようにして、図5(D)に示すように、電磁弁14を開放状態にする。シリンジ12内の圧縮空気は電磁弁14、パイプ15、ノズルチップ16を経て放出され、ノズルチップ16先端のサンプル17を吐出させる。極めて微量のサンプル17を正確に吐出できる。
次に、制御器2について説明する。図4に示した制御器2は、分注加圧器1の薬液の吸引量や、吐出の強さなどの使用条件のような吐出に関わるパラメータの設定や、吸引、吐出におけるピストン13や電磁弁14の制御を行う。制御器2において、操作部21は、8本のノズルを識別するノズル番号の設定、設定されたノズルについての薬液の吸引量、薬液の吐出の強さの設定、8本のノズル全部についての薬液の吸引操作、薬液の吐出操作などを操作指示する部分であって、典型的にはスイッチにより構成される。表示部22は、ノズル番号、薬液の吸引量、薬液の吐出の強さなどの設定値を表示するディスプレイ装置であって、液晶パネルを用いた表示装置が適用できる。MPU23は、マイクロプロセッサであって、後述する各種処理を行う。記憶部24は、各種パラメータ項目名、単位名、8本のノズル番号それぞれについての薬液の吸引量、薬液の吐出の強さなどのパラメータ設定値、各種パラメータの算出式などの算出手順、および、MPU23が行う処理の手順のプログラムなどを記憶するメモリであって、不揮発性記憶装置が適している。電磁弁駆動部25は、前記電磁弁14の開閉駆動を行うドライバ回路であって、8個が設けられる。モータ駆動部26は、前記パルスモータ11a用に駆動パルス信号を生成し供給するドライバ回路であって、8個が設けられる。特に図示しないが、制御器2には電源が設けられる。電源は、電池であってもよいし、交流電源を整流したものでもよい。記憶部24に揮発性メモリを使用する場合は、電池電源によって記憶保持を行うようにすればよい。
図7(A)に、操作部21と表示部22の一例を示す。図7(A)において、操作部21には、押ボタン状のパラメータ選択スイッチ41、数値を増減設定するために上下に傾けられるレバー状の数値選択スイッチ42、ノズル番号を指定するノズル番号スイッチ43、薬液の吸引を指示する押ボタン状のスイッチである吸引ボタン44、および、薬液の吐出を指示する押ボタン状のスイッチである吐出ボタン45が設けられている。これらのスイッチは、それぞれ、MPU23の割込み端子に接続され、MPU23は各スイッチやボタンの操作を検知したときに、MPU23において割り込みが発生するように構成される。表示部22には、吸引量(μL)、吐出距離(cm)、薬液の粘度(cP)の表示エリアが設けられ、吸引量:0.XX(μL)、吐出距離:YY(cm)、薬液の粘度:ZZ(cP)のように3つのパラメータ項目名、単位とパラメータ設定値の表示、および、ノズル番号の表示が可能である。ノズル番号に対応したノズルに関して、3つのパラメータ項目名の内の1つのパラメータ項目が選択され、その表示の回りには、選択されていることを示す枠が表示される。図7(A)の例では、「吐出距離」の欄に枠が表示されている。枠を表示する代りに数値を点滅させてもよい。
図7(A)の例では、操作部21を操作することにより3つのパラメータを設定することが可能である。その操作手順および制御器2の動作について、図8(A)および図8(B)に示したフローチャートを用いて説明する。記憶部24には、あらかじめ、パラメータ項目名、単位名、および、8個のノズルについて、それぞれデフォルト値をテーブルとして記憶しておき、このテーブルから読み出して表示に使用するものとする。一例としては、吸引量:1.00(μL)、吐出距離:5.0(cm)、薬液の粘度:1.0(cP)(=センチ・ポアズ)などである。また、各パラメータ項目に対応して、それらの設定値の記憶エリアを8個のノズルそれぞれについて記憶部24に設けておく。
制御器2の電源がONになると、MPU23において、メインルーチンが起動され、MPU23は、パラメータ項目名、単位名、デフォルト値を記憶部24から読み出し、表示部22に表示させる。ノズル番号は、デフォルト値として第1番目の「1」が表示される。各パラメータ項目の値は、記憶部24に格納されているノズル番号1の各パラメータ項目の値となる。枠表示は、最上段の「吸引量」の位置とする。この処理後に、MPU23は、割り込み待ちの状態になる。ノズル番号スイッチ43を押すと、ノズル番号スイッチ割り込みが発生して、MPU23は、ノズル番号を1つ増やし、「2」を表示する。また、MPU23は、ノズル番号2の各パラメータ項目の値を記憶部24から読み出し、表示部22に表示する。ノズル番号「8」の場合は、ノズル番号スイッチ43を押すと、ノズル番号スイッチ割り込みが発生して、MPU23は、「1」を表示し、ノズル番号1の各パラメータ項目の値を記憶部24から読み出し、表示部22に表示する。この操作により、所望のノズル番号を選択できる。
ノズル番号「n」(n=1〜8)の選択が終わると、パラメータ値の設定操作に移る。パラメータ選択スイッチ41がONになると、図8(A)の手順において、(S10)においてパラメータ選択スイッチ割込みが発生し、(S11)に進み、入力パラメータ項目を選択する。すなわち、表示部22において枠に囲まれて選択されているパラメータ項目を1つ下の項目に切り換える。図7(A)では、「吸引量」から「吐出距離」に切り替わった状態を示す。この後、MPU23は、(S10)の割り込み待ち状態に戻る。パラメータ選択スイッチ41をONにするたびに、選択されるパラメータ項目が「吸引量」、「吐出距離」、「粘度」の順に1つずつ循環的に切り替わる。MPU23は、選択されたパラメータ項目が何であるかを記憶部24に記憶しておく。使用者は、所望のパラメータ項目を選択の後、数値選択スイッチ42を操作してパラメータ値を入力する。数値選択スイッチ42のレバーを上に倒すと表示部22に表示されているYYの値をデフォルト値から増加させることができる。数値選択スイッチ42のレバーを下に倒すと表示部22に表示されているYYの値を減少させることができる。この動作は、図8(B)のフローチャートの手順により行える。MPU23は、(S20)において、数値選択スイッチ42からの割り込みを待っており、数値選択スイッチ42が操作されると割り込みが発生し、(S21)に進む。(S21)において、数値選択スイッチ42の操作に応じて、入力パラメータ項目にパラメータ値を入力する。すなわち、MPU23は、数値選択スイッチ42のレバーの操作が上方向か下方向かを検知し、上方向の場合、記憶部24内のパラメータ値欄の内、選択されているノズル番号「n」であって、かつ、選択されているパラメータ項目に対応したメモリ内の数値を所定変化分だけ増加させ、その数値を設定値として表示部22に表示させる。下方向の場合、選択されているパラメータ項目に対応したパラメータ値欄の数値を所定値だけ減少させ、その数値を設定値として表示部22に表示させる。
次に、(S22)に進み、MPU23は、選択されているノズル番号「n」について、入力されているパラメータ値、すなわち前記設定値に従い、ピストン位置P1、P2、P3を算出し、その値を記憶部24のP1、P2、P3の欄に格納し、(S20)に戻る。算出方法については後述する。(S20)に戻ったときに、まだ、数値選択スイッチ42が操作されていると、その操作に従って、再び割り込みが発生し、(S21)、(S22)が実行される。
使用者は、表示される数値を見て、希望の数値になったところで、レバーを離すと、そのときの記憶部24内の数値が、当該パラメータ項目での設定数値となる。MPU23は、そのときの設定値に従い(S22)を実行した後、(S20)の割り込み待ちに戻る。以上により1つのパラメータ項目のパラメータ値が設定される。使用者が、「吸引量」、「吐出距離」、「粘度」について、上記操作を行い、MPU23が、(S10)〜(S11)、(S20)〜(S22)を実行すれば、「吸引量」、「吐出距離」、「粘度」のそれぞれのパラメータ値の設定が済む。MPU23は、(S22)において、「吸引量」、「吐出距離」、「粘度」の最新の設定値に基づきピストン位置P1、P2、P3を算出することになる。
ノズル番号スイッチ43を押して、所望のノズル番号を表示すると、設定されている吸引量、吐出距離、粘土の3つのパラメータ値が表示されるから、8個のノズルについて所望の設定値かどうか確認ができる。所望のノズル番号を選択して、そのノズルだけについて、設定パラメータ値を変更することもできる。
薬液のノズルチップ16からの吐出距離YYは、薬液の吸引量XX、薬液の粘度ZZ、シリンジ内の圧縮空気の圧力Psによりおおむね決まる。これらの関係を表す近似式は、一般的な力学または流体力学の原理により求めることが可能である。近似式とその解法のプログラムを記憶部24に記憶しておき、MPU23が、プログラムを使用して、設定された吐出距離YY、薬液の吸引量XX、薬液の粘度ZZから、シリンジ内に必要な圧縮空気の圧力Psを求めればよい。
また、実験により、吐出距離YY、薬液の吸引量XX、薬液の粘度ZZ、シリンジ内の圧縮空気の圧力Psの関係を求め、この実験結果を利用して圧力Psを算出することも可能である。たとえば、薬液の吸引量XX、薬液の粘度ZZ、シリンジ内の圧縮空気の圧力Psについて、それぞれ、例えば5通りの条件を選んで吐出実験を行い、吐出距離YYを求める。このようにして得られた5×5×5=125通りの(XX、YY、ZZ、Ps)のテーブルを記憶部24に記憶しておく。操作部21と表示部22を使用して設定された吐出距離YY、薬液の吸引量XX、薬液の粘度ZZを元に、125通りのテーブルの数値を使用した補間演算により、シリンジ内の圧縮空気の圧力Psを近似的に求めることができる。吐出距離YY、薬液の吸引量XX、薬液の粘度ZZによる3次元空間において、125点により形成される64個の立方体または直方体のエリアの内、設定値(XX、YY、ZZ)が属する直方体の頂点8点に対応する圧力Psの値の平均値を算出して使用してもよい。更に正確を期す場合は、(XX、YY、ZZ)と上記8点との距離に従って圧力Psの値の補間値を求める演算を3つの軸方向で順次行い、圧力Psを求めればよい。このような補間演算の演算過程をプログラム化して記憶部24に格納しておき、MPU23がプログラムを読み出しながら補間演算を行い、圧力Psを近似的に求めればよい。
次に、薬液の吸引量XX、圧力Psよりピストンの位置P1、P2、P3を計算する。シリンジ12の内部の断面積をSsとすると、吸引量XX=Ss×(P1−P2)である。ピストン13がP1の位置にあるときのシリンジ内のピストン13から電磁弁14の弁までの容積をV1とすると、ピストン13がP2の位置にあるときのシリンジ内のピストン13から電磁弁14の弁までの容積V2は、V1+Ss×(P1−P2)である。P2からP3まで圧縮したとき、圧力Ps=V2/{V2−Ss×(P3−P2)}である。P1をピストンの基準位置としてあらかじめ決めておけば、P2とP3を計算で求めることができる。このための計算の手順をプログラムとして記憶部24に記憶しておき、MPU23がプログラムを読み出して計算を行い、P2とP3を求める。
図4に示した制御器2は、上記P1、P2、P3の値を使用して、図5で説明したピストン13と電磁弁14の一連の制御を行う。図8(C)、図8(D)は、制御器2が行うパルスモータ11aと電磁弁14の制御の手順を示すフローチャートである。吸引ボタン44がONになると、MPU23は、(S30)において割込み発生を検知し(S31)に進み、ピストンを位置P2に薬液容量分だけ引き出す。この処理は8個のピストンのそれぞれについて行われる。すなわち、P2の値は、8個の分注加圧器1毎に異なる値をとることができる。次に、(S32)に進み、電磁弁14を閉鎖し、ピストンを位置P3に押し込む。P3の値についても、8個の分注加圧器1毎に異なる値をとることができる。以上で吐出の準備ができ、(S30)に戻る。(S31)は、図5(B)で説明した制御であり、(S32)は、図5(C)で説明した電磁弁14の制御と圧縮の制御である。吐出ボタン45がONになると、MPU23は、(S40)において割込み発生を検知し(S41)に進み、8個の電磁弁14を開放状態にする。次に、(S42)に進み、ピストンを位置P1に引き出す。P1の値についても、8個の分注加圧器1毎に異なる値をとることができる。以上で次の吸引の準備ができ、(S40)に戻る。(S41)は、図5(D)で説明した電磁弁14の開放の制御である。(S42)は、図5(A)で説明した制御である。なお、図8のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。図8に示したフローチャートによるプログラムは、記憶部24に格納される。
パルスモータ11aは、供給する複数のパルス信号の位相やパルス数により、回転角度を決めることができ、1パルスで0.5度程度回転させることも可能である。従って、ピストン13の位置を正確に設定するのが容易である。図6(A)の構造のパルスモータ11aでは、ねじ軸受け34により、回転子31の回転運動をモータシャフト30の微小移動に変換できるので、ピストン13の位置の分解能を細かく設定できる。制御器2は、位置(P3−P1)、(P1−P2)、(P2−P3)に応じた極性とパルス数の制御信号をパルスモータ11aに供給する。このために、ピストン13をP1、P2、P3の位置に移動させるに必要なパルス数を計算するための係数値を記憶部24に格納しておき、MPU23はそれらの係数値とP1、P2、P3から必要なパルス数を計算するようにする。
薬液により、吸引量、吐出圧力を変更する場合もあるから、制御器2では、各手順におけるパルス数を変更設定できるようにするのが好ましい。このためには、吸引量や吐出圧力を設定するためのつまみやテンキーによる入力操作部を制御器2に設けて、パルス数を変更できるようにすればよい。ノズルチップ16の内径も、薬液18の粘度、混合物質、吸引量などにより変更できるように、複数種類のノズルチップ16を用意して、選択して使用するようにすればよい。
シリンジ12と電磁弁14の結合は、直接的でも間接的でもよい。間接的な場合とは、直線状、あるいは湾曲状のパイプを介して結合することになるが、シリンジ12と電磁弁14が結合されていることに変わりはない。電磁弁14とパイプ15の結合も、直接的でも間接的でもよい。間接的の場合、直線状、あるいは湾曲状のパイプを介して結合してもよい。図15(A)に湾曲したパイプ19により、シリンジ12と電磁弁14、電磁弁14とパイプ15が間接的に結合された例を示す。パイプ15自身が湾曲していてもよい。パイプ15は、チューブ200を嵌め込む取り付け部の機能を果たす。電磁弁14の一方の口がチューブ200の取り付け部になる場合は、パイプ15は省略できる。
なお、図4において、シリンジ12とピストン13が内容積可変の容器を形成し、パイプ15とノズルチップ16が容器の出入口を形成し、出入口の途中に電磁弁14が設けられていると見てもよい。図15(A)においても、シリンジ12が容器を形成し、パイプ19、パイプ15およびノズルチップ16が容器の出入口を形成し、出入口の途中に電磁弁14が設けられていると見てもよい。また、ノズルチップ16は、出入口の一部と見てもよいし、別部分と見てもよい。
表示部22の数値選択スイッチ42のレバーを上下に加えて左右にも倒すことができるようにし、左右に倒すことにより、表示部22のパラメータ値表示の数値の桁を1桁だけ左右に移動選択できるようにし、1桁ずつレバーの上下操作により数値入力するようにしてもよい。2桁以上の数値を入力する場合、各桁毎に数値を入力でき、入力操作時間を少なくできる。
図7(B)に示した表示部22aでは、吸引量:XX(μL)と吐出圧力:Ps(気圧)の2つのパラメータ値を入力、表示するようにした例である。この場合は、「吸引量」、「吐出距離」、「粘度」に対する吐出圧力値Psの数表を紙などに数表として印刷、作成しておき、使用者は、その数表を見て必要な吐出圧力値Psを探し、パラメータ選択スイッチ41と数値選択スイッチ42により、入力するようにする。
操作部21を、スイッチに代えてマウスとし、表示部22をパソコンで使用するような液晶表示装置とし、マウスにより、ポインタのアイコンを移動させて、所望のパラメータ項目を選択し、数値を入力するようにしてもよい。数値はキーボードなどに設けられているようなテンキーを使用して入力するようにしてもよい。
制御器2にメモリカードの読み取り器を設けておき、メモリカードにパラメータ設定値を記憶しておき、このメモリカードを読み取り器に挿入し、読み取り器がパラメータ設定値を読み出して記憶部24に格納し、MPU23がパラメータ設定値を使用するようにしてもよい。MPU23は記憶部24からパラメータ設定値を読み出して表示部22に表示させてもよい。
上記、本実施の形態におけるパラメータ項目は一例であり、他の項目を追加してもよいし、別のパラメータ項目を使用してもよい。たとえば、ノズルチップ16の内径が異なるものを複数種類用意する場合、内径によって、粘度が及ぼす影響が異なるので、内径値をパラメータ項目に加えるとより正確な吐出距離の設定が可能になる。
上記図6(A)では、ねじ軸受け34を有するパルスモータ11aを使用したが、モータは、他の一般的なモータを使用してもよい。図6(B)では、普通のパルスモータ11aのモータシャフトにピニオン36を設け、回転動作をラック37により直線動作に変換して、ラック37がピストン13の軸を兼ねる構造としている。他の部分の構造は、図4と同様でよい。この場合は、ピストン13の軸を引っ張るばね11cはなくともよい。
回転するモータ以外に、リニアモータや、超音波モータなど種々のモータを使用してもよい。
(実施の形態2)
図9は、本発明の多連分注装置の外観の一例である。制御器・電源回路2aには、図4の制御器2と電源回路が格納される。その前面には、表示部22が設けられる。8連・ビューレット電磁弁加圧メカユニット100aには、図1において説明した多連分注加圧部100が格納される。図7の操作部21は、8連・ビューレット電磁弁加圧メカユニット100aの外面に設置される。可変ピッチメカユニット300aには、図1の多連ノズル部300が格納される。8本のチューブ200が、8連・ビューレット電磁弁加圧メカユニット100aと可変ピッチメカユニット300aの内部に設置され、多連分注加圧部100と多連ノズル部300を結合する。可変ピッチメカユニット300aの下部には、8連ディスポーザブルノズル400aが装着される。各ディスポーザブルノズルの間隔は、9mm〜15mmの間でピッチが可変できる。
制御器・電源回路2aには充電回路と電池が内蔵されており、電池を充電すると、コードレスでの使用ができる。図10は、8連・ビューレット電磁弁加圧メカユニット100aの内部での8個の分注加圧器1の取り付け構造の例である。図10(A)は、取り付け基板100bに分注加圧器1を4個ずつ対向させて配置した例である。図10(B)は、8角形の取り付け基体100cを取り巻くように分注加圧器1を配置した例である。取り付け基体100cは円柱状でもよい。取り付け構造は、これらの例に限らず、他の構造でもよい。
本発明の多連分注装置は、8連ディスポーザブルノズル400aの8個の各ノズルについて、吸引量、吐出圧力をそれぞれ別々に、任意の値に設定できる。従って、図11(A)のように、8本のノズルに同じ薬液を充填する場合にも、ノズル毎に異なる量の薬液を吸引でき、かつ、吐出圧力を互いに異なる値に設定できる。従って、1つのシャーレ上に8本のノズルから薬液を吐出する場合にも、シャーレ上の位置によって薬液の密度を制御することが可能になる。また、8個のノズルから別々の試験管に薬液を注入する場合、それぞれの薬液量を自由に選べるので、薬液濃度による反応の違いを調べる試験などで、効率的な薬液分注の作業が可能になる。
また、図11(B)のように、8個のノズル毎に別々の薬液を使用する場合、薬液容器の寸法に合わせたピッチの8連ディスポーザブルノズル400aを選び、そのピッチに合わせて、多連ノズル部300のノズル3gのピッチが選択できるので、実験の自由度が確保できる。また、異なる薬液を使用する場合、それぞれの吸引量は異なるのが普通であり、粘度などの違いに合わせて吐出圧力も変える必要があるが、本発明の多連分注装置なら、このようなニーズに対応可能となる。
なお、マイクロプレートは、8行×12列の96Wellタイプのものが主流である。また、今後、384Wellに移行しつつある。従って、多連分注機を8連に構成することは極めて好適である。
(実施の形態3)
図12は、本発明の多連分注装置の別の実施の形態の外観の一例である。双方向通信回路・制御器・電源回路2bには、図4の制御器2の回路と電源回路に加えて、双方向通信回路が格納される。8連・ビューレット電磁弁加圧メカユニット100aには、図1において説明した多連分注加圧部100が格納される。8連・ビューレット電磁弁加圧メカユニット100aの外面には、操作SW・表示ランプ21aとして、吸引ボタン44、吐出ボタン45、表示ランプなどが設置される。操作SW・表示ランプ21aが図4の制御器2の操作部21と表示部22を構成する。可変ピッチメカユニット300aには、多連ノズル部300が格納される。チューブ200が、8連・ビューレット電磁弁加圧メカユニット100aと可変ピッチメカユニット300aの内部に設置され、多連分注加圧部100と多連ノズル部300を結合する。可変ピッチメカユニット300aの下部には、8連ディスポーザブルノズル400aが装着される。各ディスポーザブルノズルの間隔は、9mm〜15mmの間でピッチが可変である。
図4で説明した制御器2の操作部21、表示部22、MPU23、記憶部24の各機能の内、図8(A)、(B)のフローチャートなどにより説明した、ノズル番号の選択、パラメータ項目の選択、パラメータ値の設定、ピストンの位置情報P1、P2、P3の計算などの機能は、パソコン500によって実現される。従って、パソコン500は、図4で説明した制御器2の操作部21、表示部22、MPU23、記憶部24などと同様の回路などの構成により実現される。操作部としては、キーボードやマウスが用いられる。表示部として時は、液晶ディスプレイが用いられる。パソコン500において計算されたピストンの位置情報P1、P2、P3は、双方向通信ユニット500aを介して無線通信により双方向通信回路・制御器・電源回路2bの双方向通信回路に送信され、制御器2の内部の記憶部24に格納される。8連ディスポーザブルノズル400aの先端を薬液に挿入して、吸引ボタン44を押すと、位置情報P1、P2に従って、8個のノズルにそれぞれの量の薬液が吸引される。次に、位置情報P2、P3に従って、シリンジ12内の空気が加圧される。実験対象の物質が入った実験容器に8連ディスポーザブルノズル400aの先端をそれぞれ差し込んで、吐出ボタン45を押すと、吸引した薬液が、試験管などの実験容器に吐出される。
吸引ボタン44、吐出ボタン45の操作時刻などの操作結果情報を双方向通信回路・制御回路・電源回路2bから双方向通信ユニット500aを介してパソコン500の送信し、パソコン500が操作結果情報を記憶格納するようにすれば、実験過程のデータが蓄積できる。
図13は、パソコン500の表示装置上でノズル番号の選択、パラメータ項目の選択やパラメータ値の設定などを行うようにした実施の形態である。パソコン500の表示装置は、タッチパネル機能を有する液晶ディスプレイとする。液晶ディスプレイの上部に図13に示すような画面を表示する。図13(A)に示した表示部22bの画像において、最上段の欄は、吸引量(μL)の欄であり、吸引量Li(i=1〜8)が表示される。iは、ノズル番号である。中段の欄は、吐出圧力(気圧)の欄であり、吸引量Pri(i=1〜8)が表示される。最下段の欄は、ノズル番号i(i=1〜8)である。図13(B)は、操作部21bの画像の例であって、液晶ディスプレイの下部に表示される。操作部21bの画像として、押ボタン状のパラメータ選択スイッチ41の画像、数値を増減設定するために左右に矢印が付加された数値選択スイッチ42の画像、薬液の吸引を指示する吸引ボタン44の画像、および、薬液の吐出を指示する吐出ボタン45の画像、ノズル番号を指定する8個のノズル番号スイッチ43bの画像が表示されている。ノズル番号3を押さえると、タッチパネルの働きによりその操作が検知され、図13(A)のノズル番号3が選択されたことを示す囲み表示が、図13(A)に示すように強調表示として行われる。もう一度、図13(B)のノズル番号3の画像を押さえると、ノズル番号3の選択が解除され、図13(A)の囲み表示が消える。図13(B)のノズル番号3、5、8のノズル番号スイッチの画像を押さえると、図13(A)において、ノズル番号3、5、8に囲み表示がなされる。すなわち、本実施の形態では、1つのノズルでも複数のノズルでも自由に選択ができる。
次に、パラメータ選択スイッチ41の画像を押さえて、吸引量または吐出圧力の何れかのパラメータ項目を選択する。吸引量を選択すると、吸引量の文字と、ノズル番号3、5、8の吸引量L3、L5、L8の値に囲み表示がなされる。この状態で、数値選択スイッチ42の画像の左矢印を押さえるとL3、L5、L8は減少し、数値選択スイッチ42の画像の右矢印を押さえるとL3、L5、L8は増加する。L3、L5、L8が、適当な値になった時点で、数値選択スイッチ42の画像の左端を押さえるとL3、L5、L8は減少し、数値選択スイッチ42の画像から手を離すと、所望の値が設定される。数値選択スイッチ42の画像の丸いボタン部分を2度押さえると、L3、L5、L8の値はリセットされゼロにできる。
次に、パラメータ選択スイッチ41の画像を押さえると、吐出圧力が選択される。吐出圧力の文字と、ノズル番号3、5、8の吐出圧力Pr3、Pr5、Pr8の値に囲み表示がなされる。数値選択スイッチ42の画像の矢印をタッチすることにより、吐出圧力Pr3、Pr5、Pr8の値を設定することができる。
吸引ボタン44の画像をタッチすると、8本のノズルに所望の薬液量を吸引できる。吐出ボタン45の画像をタッチすると、8本のノズルに吸引した薬液量を所望の吐出圧力により吐出できる。吸引操作と吐出操作を図12の操作スイッチ21aの吸引ボタン44と吐出ボタン45の方で行う場合は、図13(B)の吸引ボタン44の画像と吐出ボタン45の画像の操作は行わなくともよい。
図14は、上記の動作を実現するためのパソコン500におけるプログラムの流れを示したフローチャートである。パソコン500の電源をONにすると、図13(A)に示す表示部22bの画面と図13(B)の操作部21bの画面を表示する。ただし、強調表示は行わない。パソコン500は、各ノズル番号iに設定されている吸引量Liと吐出圧力Priの値をパソコン500内部の記憶部から読み出して表示する。図14(A)の(ステップS50)の割り込み待ちにおいて、パソコン500は、タッチパネル上のノズル番号スイッチ43bの画像に対するタッチの有無を検知しており、タッチが検知されると、割り込みが発生する。(ステップS51)に進み、タッチされたノズル番号スイッチ43bの番号iをタッチパネルにより識別し、番号iが非選択の場合、図13(A)の表示画面のノズル番号iを強調表示して選択済みとする。次に(ステップS52)に進み、タッチされたノズル番号スイッチ43bの番号iを識別し、番号iが既に選択されている場合、図13(A)の表示画面のノズル番号iの強調表示を解除し非選択とする。その後、パソコン500は、割り込み待ち(ステップS50)に戻る。この処理により、8個のノズルから任意のノズルを任意の数だけ選択できる。
また、パソコン500は、図14(B)の(ステップS60)において、タッチパネル上のパラメータ選択スイッチ41の画像に対するタッチの有無を検知しており、タッチを検知すると、割り込みが発生し(ステップS61)に進む。(ステップS61)において、パソコン500は、入力パラメータ項目を選択し、選択されたノズル番号のパラメータ値を強調表示する。パラメータ項目として吸引量が選択された場合、選択されているノズルi=3、5、8について、吸引量L3、L5、L8の値が強調表示される。この後、パソコン500は、割り込み待ち(ステップS60)に戻る。
また、パソコン500は、図14(C)の(ステップS70)において、タッチパネル上の数値選択スイッチ42の画像に対するタッチの有無を検知しており、タッチを検知すると、割り込みが発生し(ステップS71)に進む。(ステップS71)において、パソコン500は、数値選択スイッチ42の操作に応じて、入力パラメータ項目にパラメータ値を入力する。すなわち、図13(A)のように、ノズルi=3、5、8について吸引量L3、L5、L8が選択されている場合、これらの3つの値を増減できる。図13(B)の数値選択スイッチ42の画像の左矢印がタッチされると、パソコン500は、このタッチを検知して、強調表示されている吸引量L3、L5、L8の値を1ステップ小さくする。一方、数値選択スイッチ42の画像の右矢印がタッチされると、パソコン500は、このタッチを検知して、吸引量L3、L5、L8の値を1ステップ大きくする。次に、パソコン500は、(ステップS72)に進み、入力されているパラメータ値に従い、ノズルi=3、5、8についてピストンの位置情報P1、P2、P3を算出してパソコン500の内部の記憶部に格納し、かつ、双方向通信ユニット500aを介して、双方向通信回路・制御器・電源回路2b宛に送信する。双方向通信回路・制御器・電源回路2bでは、ピストンの位置情報P1、P2、P3を記憶部24に格納する。パソコン500は、次に(ステップS70)に戻る。
以上説明したように、本実施の形態では、パラメータ値を設定するための制御器であるパソコン500は、8個ある複数のノズルの任意の2つ以上を選択する手順と、上記選択した2つ以上のノズルについて、パラメータの値を同時に設定する手順を実行可能であって、分注加圧器1の任意の複数個についてパラメータの値を同時に設定可能になっている。
表示部22bの画面において、8個のノズルのパラメータ値を所望の値に設定すると、吸引操作の準備が終わる。図12の操作スイッチ・表示ランプ21aの吸引ボタン44を押さえると、図8(C)のフローチャートの処理手順に従い、モータ駆動部26が、8個のパルスモータ11aを駆動して、各ピストン13に吸引動作を行わせる。8連ディスポーザブルノズル400aの先端部を薬液に浸しておけば、所望の薬液が8個の各ノズル内にそれぞれ所望の量だけ吸引される。つぎに8連ディスポーザブルノズル400aの先端部を試験管などに挿入して、図12の操作スイッチ・表示ランプ21aの吐出ボタンを押さえると、図8(D)のフローチャートの処理手順により、8個のノズルから、それぞれ設定した吐出圧力で、薬液が試験管などに吐出される。
パソコン500の方で、図13(B)の吸引ボタン44の画像を押さえた場合は、パソコン500は、吸引指示情報を生成して双方向通信ユニット500aを介して、双方向通信回路・制御器・電源回路2bに送信する。双方向通信回路・制御器・電源回路2bは、吸引指示情報に従って、図8(C)と同様の吸引動作を行う。すなわち、MPU23は、記憶部24に格納された位置情報P1、P2、P3を8個のノズルについてそれぞれ読み出し、各位置情報P1、P2に従って、モータ駆動部26に、各パルスモータ11a用の駆動パルスを発生させて、パルスモータ11aを駆動して、各ピストン13を引き出し、各電磁弁駆動部25により各電磁弁14の閉鎖を行い、次に、各位置情報P2、P3に従って、各モータ駆動部26に、各パルスモータ11a用の駆動パルスを発生させて、各パルスモータ11aを駆動して、各ピストン13を各P3の位置まで押し込む。
図13(B)の吐出ボタン45の画像を押さえた場合は、パソコン500は、吐出指示情報を生成して双方向通信ユニット500aを介して、双方向通信回路・制御器・電源回路2bに送信する。双方向通信回路・制御器・電源回路2bは、吐出指示情報に従って、図8(D)と同様の吐出動作を行う。すなわち、MPU23は、各電磁弁駆動部25により各電磁弁14を開放状態にして、各ノズルの薬液を吐出させ、記憶部24に格納された位置情報P1、P3を8個のノズルについてそれぞれ読み出し、各位置情報P1、P3に従って、モータ駆動部26に、各パルスモータ11a用の駆動パルスを発生させて、パルスモータ11aを駆動して、各ピストン13をP1の位置まで戻す。
なお、上記タッチパネルを使用せず、図13(B)の各画像をマウス操作により選択して、上記の操作を行うようにしてもよい。また、図13(B)の各スイッチやボタンをパソコン500のキーボードのファンクションスイッチや他のスイッチに割り振って、キーボードにより操作するようにしてもよい。パラメータ値をキーボード上のテンキーなどにより直接的に入力するようにしてもよい。
パソコン500が、制御器として、8個ある複数のノズルの任意の2つ以上を選択する手順と、上記選択した2つ以上のノズルについて、パラメータの値を同時に設定する手順としては、上記方法以外でもよい。例えば、使用者が、マウスやキーボードを操作して、ノズル番号iを2つ以上選択すると、それらのノズル番号を、パソコン500がその表示部に表示し、次に、使用者が、マウスやキーボードを操作して、パラメータ項目を選択すると、そのパラメータ項目を、パソコン500がその表示部に表示し、次に、使用者が、キーボードのテンキーを操作して、選択したパラメータ項目についてパラメータの値を入力すると、そのパラメータ値を、パソコン500がその表示部に表示し、かつ、そのパラメータ値を、上記2つ以上のノズル番号用として、パソコン500の記憶部に格納する手順でもよい。
(その他の実施の形態および補足)
図4において説明した、シリンジ12とピストン13を左右逆方向にしてもよい。ピストン13の軸をパイプ状にして、シリンジ12の代りに基盤0の垂直部に固定する。ピストン13の軸のパイプは電磁弁14に接続される。シリンジ12をピストン13にかぶせてパルスモータ11aのモータシャフトにより、押さえるようにする。シリンジ12は、ばね11cと同様の構造により、ピストン13と反対側に引っ張るようにしておく。
図15(B)に、ノズルチップ16の一変形例であるノズルチップ16aを示す。ノズルチップ16aにおいて、ノズル部を透明の部材、透明プラスチックなどで作る。薬液の吸引状態が眼で確認できるので、誤操作が防止できる。ノズルチップ16aの根元部分にフィルタ60を設ける。フィルタ60の材質としては、空気を透過し、液体の通過を遮断する性質の膜、または、栓になるものである。ウレタン樹脂や不織布などが使用できる。薬液の吸引がフィルタ60の位置で止まり、パイプ15まで吸引されないので、細菌や微生物が混じった液体などによる分注器の本体部分の汚染を防止できる。また、意図しない異なる薬液の混合が起きにくい。
本発明の多連分注装置によれば、微量の液体の吸引、吐出が可能になる。例えば、100nLから20μLのような微量の液を扱うことも可能である。また、吐出距離としては、5mmから50mm程度が実現可能である。吸引量と吐出量がほぼ同じになるので、薬液の無駄がない。分注精度は、1μLでCV値を5%以内とすることが可能である。
上記説明では、薬剤として液体について説明したが、本発明の多連分注装置は、粉体の吸引、吐出に使用してもよい。
シリンジは、上記説明したように注射器とよく似た構造でもよい。シリンジ12の材料には金属、プラスチックなどが適用できる。シリンジ12は、内径1.5mm、ピストン13の最大移動距離2mm程度が一例として挙げられるが、これには限らない。空気を圧縮するので、ピストン13とシリンジ12は機密性がよい構造が好ましいことは言うまでも無い。
ノズルチップ16、多連ディスポーザブルノズル400、8連ディスポーザブルノズル400aは、衛生面、薬液混合を避ける安全面から、容易に交換可能なディスポーザブルタイプのチップとする。ノズルチップ16などの穴の内径は0.4mm、長さ35mm程度の円錐状の外形のものが扱いやすいが、この寸法には限らない。滅菌されたチップを使用することが好ましいことは言うまでも無いので、交換用のノズルチップ16、多連ディスポーザブルノズル400、8連ディスポーザブルノズル400aを1セットずつ密閉した袋に収納しておき、使用後は使い捨てにすることもできる。
既に説明したように、シリンジ12内の圧縮空気の圧力は、ノズルの内径、液の量、液の粘度、混合物質などによって変更できることが好ましい。一例として、1μリットルの薬液を4気圧で吐出する多連分注装置を実現できる。
上記説明では、8個の多連分注加圧部100、チューブ200、8連のノズル部300、8連ディスポーザブルノズル400aのように、8個を1セットとした。8連のノズル部300と8連ディスポーザブルノズル400aを各2セット、2列に並べた形態とし、2×8個=16個単位で分注できるようにしてもよい。この場合、多連分注加圧部100は、図10(B)に示した円形配置よりも、図10(A)に示した取り付け基板100b上の対向配置が好ましい。
なお、本実施の形態における多連分注装置が吐出する液体は、何でも良い。液体は、例えば、生物の血液や体液などである。本実施の形態における多連分注装置を使用すれば、例えば、貴重な生物体内の液体を有効に利用して、バイオテクノロジーの研究が促進できる。
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。