JP2008245428A - 振動・衝撃吸収素子、振動・衝撃吸収装置及び振動・衝撃吸収素子の作動方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高分子電解質と電極とが複合された複合体の高分子電解質に対して電圧を印加することにより、前記複合体に加えられた振動または衝撃の吸収を効果的にすることが可能な振動・衝撃吸収素子、振動・衝撃吸収装置及び振動・衝撃吸収素子の作動方法を提供する。
【解決手段】振動・衝撃吸収素子10は、構造体14に振動や衝撃が加えられると電解質層11が変形して、振動や衝撃を吸収し、電圧制御部15は、変形検出部16によって検出した電解質層11の変形量を減少させるように、電極部12(12a)と電極部13との間に電圧を印加して、短時間で電解質層11の変形を回復させる。
【選択図】図1
【解決手段】振動・衝撃吸収素子10は、構造体14に振動や衝撃が加えられると電解質層11が変形して、振動や衝撃を吸収し、電圧制御部15は、変形検出部16によって検出した電解質層11の変形量を減少させるように、電極部12(12a)と電極部13との間に電圧を印加して、短時間で電解質層11の変形を回復させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、振動・衝撃吸収素子、振動・衝撃吸収装置及び振動・衝撃吸収素子の作動方法に関する。具体的に有機材料を基材とした振動・衝撃吸収素子及びその作動方法に関する。特に、高分子電解質と電極とが複合された複合体の高分子電解質に対して電圧を印加することにより、前記電解質複合体に加えられた振動または衝撃の吸収を効果的にすることが可能な振動・衝撃吸収素子、振動・衝撃吸収装置及び振動・衝撃吸収素子の作動方法に関する。
近年、ゲル材料を基材としたアクチュエータの開発が盛んである。例えば電圧印加によるゲルの駆動機能を用いて、ゲルと電極とが複合した、小型で軽量な高分子アクチュエータが開発されている。具体的には、平面状に構成された両面に電極を配置し、その電極に電圧を印加することにより、ゲルを湾曲や変形させるアクチュエータが開発されている。例えば、ゲルとして、高分子電解質に水などの極性溶液を含ませ、電極として金属や炭素系の微粒子を用いる構成の高分子アクチュエータが知られている。また、特許文献1では、カーボンナノファイバーとイオン性溶液とのゲルを、導電性と伸縮性のある活性層として用いることにより、低電圧で駆動でき、空気中及び真空中で安定して作動するアクチュエータ素子が提案されている。
これらのゲル材料を基材にしたアクチュエータの特徴は、従来のモータなどの機械的なアクチュエータに比較して柔らかい点にある。
ここで、電気駆動機能を伴わない受動的な柔らかいゲル材料による振動吸収機能や衝撃吸収機能が知られている。これらは、柔らかいゲル材料の挙動を用いて、振動や衝撃を吸収するものである。このようなゲル材料の振動吸収機能や衝撃吸収機能を利用した製品が提案されている。例えば、地震対策家具転倒防止用シートや運動靴内パッドなどが実用化され、市場で販売されている。
ゲル材料の高い振動吸収機能や衝撃吸収機能は、含まれる溶液の挙動を用いて、振動や衝撃が緩和されるためとされる。即ち、ゲルは、振動や衝撃による運動エネルギーを熱エネルギーに変換して、加えられた振動や衝撃を吸収するとされ、他素材では対処しきれない微振動や低周波数の振動を吸収ことが可能とされている。
特開2006−288040号公報
しかしながら、従来のゲル材料を用いた振動吸収機能や衝撃吸収機能を用いた技術では、ゲルの変形量、変形速度、変形回復速度等は、ゲル材料を用いた素材特性に強く依存していた。そのため、振動吸収機能や衝撃吸収機能の対応可能な振動周波数や対応可能な衝撃の繰り返し周期が、ゲル材料を用いた素材特性に強く限定されてしまうという問題点があった。例えば、衝撃が繰り返し加えられる場合に、1度目の衝撃によるゲル材料の変形が元に戻る前に2度目の衝撃が加えられると、2度目の衝撃を吸収しきれなくなってしまうという問題点があった。
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、具体的にゲル材料を基材とした振動・衝撃吸収素子及びその作動方法を提供することを目的とする。特に、高分子電解質と電極とが複合された電極高分子電解質複合体の高分子電解質に対して電圧を印加することにより、電極高分子電解質複合体に加えられた振動または衝撃の吸収を効果的にすることが可能な振動・衝撃吸収素子、振動・衝撃吸収装置及び振動・衝撃吸収素子の作動方法を提供することを目的とする。
さらに本発明は、電気信号によって変形して能動的に振動・衝撃を吸収する能動的なゲル材料に対して、電気駆動機能を伴わない受動的な柔らかいゲル材料やゴム材料を補強材として適用して、さらに両材料をゲル材料とすることで、あるいは両材料に共通の材料を使用することで、強度や形状維持性能が高く、さらに両材料間の高親和性や高接着性を有する振動・衝撃吸収素子及びその作動方法を提供することを目的とする。
上述した従来の問題点を解決すべく下記の発明を提供する。
本発明の第1の態様にかかる振動・衝撃吸収素子は、振動または衝撃を吸収する振動・衝撃吸収素子であって、液体を保持する電解質層と、前記電解質層の表面に電気的に離間した2個以上の電極部とを有した構造体と、前記構造体の複数の前記電極部間に電圧を印加する制御手段と、を備え、前記制御手段によって印加される前記電圧により前記電解質層の変形量を制御して、前記構造体に加えられた振動または衝撃を吸収することを特徴とする。
これにより、ゲルである電解質層に対して、電圧を印加することによりゲルの振動吸収機能や衝撃吸収機能の対応可能な振動周波数の範囲や対応可能な衝撃の繰り返し周期の範囲を、拡大することができる。例えば、ゲルに加えられる振動周波数に対応する電圧を印加することにより、ゲルの変形の回復を促すことができる。また、例えば、電圧印加を用いて、加えられた衝撃によるゲルの変形の変形回復速度を上げることができる。
本発明の第2の態様にかかる振動・衝撃吸収素子は、振動または衝撃を吸収する振動・衝撃吸収素子であって、液体を保持する電解質層と、前記電解質層の片側の表面に電気的に離間した2個以上の電極部とを有した構造体と、前記構造体の複数の前記電極部間に電圧を印加する制御手段と、を備え、前記制御手段によって印加される前記電圧により前記電解質層の変形量を制御して、前記構造体に加えられた振動または衝撃を吸収することを特徴とする。
これにより、ゲルである電解質層に対して、電圧を印加することにより、ゲルの振動吸収機能や衝撃吸収機能の対応可能な振動周波数の範囲や対応可能な衝撃の繰り返し周期の範囲を、拡大することができる。
本発明の第3の態様にかかる振動・衝撃吸収素子は、振動または衝撃を吸収する振動・衝撃吸収素子であって、液体を保持する電解質層と、前記電解質層の両側の表面に、それぞれ1個以上の電極部とを有した構造体と、前記構造体の両表面の前記電極部間に電圧を印加する制御手段と、を備え、前記制御手段によって印加される前記電圧により前記電解質層の変形量を制御して、前記構造体に加えられた振動または衝撃を吸収することを特徴とする。
これにより、ゲルである電解質層に対して、電圧を印加することにより、ゲルの振動吸収機能や衝撃吸収機能の対応可能な振動周波数の範囲や対応可能な衝撃の繰り返し周期の範囲を、拡大することができる。
本発明の第4の態様にかかる振動・衝撃吸収素子は、振動または衝撃を吸収する振動・衝撃吸収素子であって、液体を保持する電解質層と、前記電解質層の両側及び片側の表面に電気的に離間した2個以上の電極部とを有した構造体と、前記構造体の複数の前記電極部間に電圧を印加する制御手段と、を備え、前記制御手段によって印加される前記電圧により前記電解質層の変形量を制御して、前記構造体に加えられた振動または衝撃を吸収することを特徴とする。
これにより、ゲルである電解質層に対して、電圧を印加することによりゲルの振動吸収機能や衝撃吸収機能の対応可能な振動周波数の範囲や対応可能な衝撃の繰り返し周期の範囲を、拡大することができる。例えば、ゲルに加えられる振動周波数に対応する電圧を印加することにより、ゲルの変形の回復を促すことができる。また、例えば、電圧印加を用いて、加えられた衝撃によるゲルの変形の変形回復速度を上げることができる。
本発明の第5の態様にかかる振動・衝撃吸収素子は、本発明の第1から4のいずれか1つの態様にかかる振動・衝撃吸収素子に、ゲル状またはゴム状の補強材料であって、電極層または電極部とヤング率の異なる補強材料を更に備えることを特徴とする。
これにより、強度や形状維持性能が高い振動・衝撃吸収素子が構成される。また、非周期的な振動を補強材料で吸収し、周期的な振動を振動・衝撃吸収素子で吸収することなどが可能となる。
本発明の第6の態様にかかる振動・衝撃吸収素子は、本発明の第5の態様にかかる振動・衝撃吸収素子であって、電解質層または電極部を構成する材料の一部とゲル状またはゴム状の補強材料を構成する材料の一部とが同一素材であることを特徴とする。
これにより、強度や形状維持性能が高く、さらに両材料間の高親和性や高接着性を有する振動・衝撃吸収素子が構成される。
本発明の第7の態様にかかる振動・衝撃吸収素子は、本発明の第5から6のいずれか1つの態様にかかる振動・衝撃吸収素子であって、補強材料上に、複数個の振動・衝撃吸収素子が、列状にまたは平面上に配列していることを特徴とする。
これにより、1個の振動・衝撃吸収素子では吸収できない振動または衝撃を複数個の素子で分散して、安定して吸収することができる。これらの素子の配列をどのようにするかは、必要に応じて決めれば良く、列状に一列、二列等の複数の列や格子配列、千鳥配列等の所定間隔での2次元配列等が可能である。
本発明の第8の態様にかかる振動・衝撃吸収素子は、本発明の第1から7のいずれか1つの態様にかかる振動・衝撃吸収素子に、前記電解質層の変形を検出する変形検出手段を更に備え、前記制御手段は、前記変形検出手段によって検出される前記電解質層の変形に基づいて、印加する前記電圧を制御することを特徴とする。
これにより、振動または衝撃によるゲルの変形、及び、変形回復に従って変化するゲルに変形量を定量的に検出することができる。
本発明の第9の態様にかかる振動・衝撃吸収素子は、本発明の第8の態様にかかる振動・衝撃吸収素子の前記制御手段が、前記変形検出手段によって検出される前記電解質層の変形に基づいて、電圧印加タイミングを制御することを特徴とする。
これにより、電圧を印加するタイミングを調節して、振動や衝撃を最も効率よく吸収することができる。
本発明の第10の態様にかかる振動・衝撃吸収素子は、本発明の第8または9の態様にかかる振動・衝撃吸収素子の前記制御手段が、前記変形検出手段によって検出された、振動または衝撃による前記電解質層の変形に基づいて、前記電極部間に印加される前記電圧の大きさを制御することを特徴とする。これにより、振動や衝撃を吸収するために最も効果的な大きさの電圧を印加することができる。
本発明の第11の態様にかかる振動・衝撃吸収素子は、本発明の第8から10のいずれか1つの態様にかかる振動・衝撃吸収素子の前記変形検出手段が、前記電解質層の変形を、前記電極を介して出力される電気信号を用いて検出することを特徴とする。
これにより、振動または衝撃によるゲルの変形、及び、変形回復に従って変化するゲルに変形量を定量的に検出することができる。
本発明の第12の態様にかかる振動・衝撃吸収素子は、本発明の第1から11のいずれか1つの態様にかかる振動・衝撃吸収素子の前記電解質層を、イオン液体をフッ素系のポリマーまたはその他のポリマーに混合した層に置換し、前記電極層を、イオン液体とカーボン系材料とをフッ素系のポリマーまたはその他のポリマーに混合した層に置換することを特徴とする。
これにより、アクチュエータ層に対して、電圧を印加することにより、アクチュエータ層の振動吸収機能や衝撃吸収機能の対応可能な振動周波数の範囲や対応可能な衝撃の繰り返し周期の範囲を、拡大することができる。
本発明の第1の態様にかかる振動・衝撃吸収素子の作動方法は、振動または衝撃を吸収する振動・衝撃吸収素子の作動方法であって、(a)液体を保持する電解質層と、前記電解質層の表面に電気的に離間した2個以上の電極部とを有した構造体に加えられた振動または衝撃による前記電解質層の変形を検出する工程と、(b)前記工程(a)によって検出された前記電解質層の変形に基づいて、前記構造体の複数の前記電極部間に印加する電圧を制御する工程と、(c)前記工程(b)によって印加された電圧により、前記電解質層の変形量を減少させる工程と、を備えていることを特徴とする。
これにより、上述した本発明の第1の態様にかかる振動・衝撃吸収素子の作動方法に関して、本発明の第1の態様にかかる振動・衝撃吸収素子の場合と同様の効果が得られる。
本発明の第2の態様にかかる振動・衝撃吸収素子の作動方法は、振動または衝撃を吸収する振動・衝撃吸収素子の作動方法であって、 (a)液体を保持する電解質層と、前記電解質層の両側及び片側の表面、両側の表面、または、片側の表面の中のいずれか1つの組み合わせの表面に電気的に離間した2個以上の電極部とを有した構造体に加えられた振動または衝撃による前記電解質層の変形を検出する工程と、 (b)前記工程(a)によって検出された前記電解質層の変形に基づいて、前記構造体の複数の前記電極部間に印加する電圧を制御する工程と、(c)前記工程(b)によって印加された電圧により、前記電解質層の変形量を減少させる工程と、を備えていることを特徴とする。
これにより、上述した本発明の第2の態様にかかる振動・衝撃吸収素子の作動方法に関して、本発明の第2、3、4の態様にかかる振動・衝撃吸収素子の発明の場合と同様の効果が得られる。
本発明によれば、ゲルである電解質層に対して、電圧を印加することにより、ゲルの振動吸収機能や衝撃吸収機能の対応可能な振動周波数の範囲や対応可能な衝撃の繰り返し周期の範囲を、拡大することができる。また、加えられた振動または衝撃によるゲルの変形、及び、変形回復に従って変化するゲルに変形量を定量的に検出することができる。また、電圧を印加するタイミングを調節して、加えられた振動や衝撃を最も効率よく吸収することができる。また、加えられた振動や衝撃を吸収するために最も効果的な大きさの電圧を印加することができる。
この発明の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施態様は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なもので置換した実施態様を採用することが可能であるが、これらの実施態様も本発明の範囲に含まれる。
図1は、本発明の一実施形態にかかる振動・衝撃吸収素子の一例を示す図である。図1に示すように、振動・衝撃吸収素子10は、液体を保持する電解質を平面状にした電解質層11を、電極部12(12a、12b)と電極部13とで挟んだ構造体14と、電極部12(12a)と電極部13との間に電圧を印加する電圧制御部15と、電極部12(12b)と電極部13とを介して出力される電気信号により電解質層11の変形を検出する変形検出部16とから構成されている。構造体14は基材17に設置されている。
構造体14の電極部12側に振動や衝撃が加えられると電解質層11が変形して、振動や衝撃を吸収する。電解質層11の変形により電解質層11の液体中のイオンが移動し、イオンの分布が不均一になる。変形検出部16は、このイオン分布の変化を電圧に変換して検出する。即ち、変形検出部16は、電解質層11の変形を検出する。
電圧制御部15は、変形検出部16によって検出した電解質層11の変形量を減少させるように、電極部12(12a)と電極部13との間に電圧を印加して、短時間で電解質層11の変形を回復させる。
図1に示される素子に対して、ゲル状の電気駆動機能を伴わない受動的な柔らかいゲル材料を補強材として組み合わせて利用することも可能とされる。あるいはゴム材料を利用することも可能とされる。特に、素子に利用される材料と受動的なゲル材料やゴム材料とに同一素材を用いることが望ましい。例えば、素子に利用される溶液、高分子電解質、電極部などの素材の一部を用いて受動的なゲル材料やゴム材料を構成することが望ましい。同一の素材を利用することで両材料間の高親和性や高接着性が発現することとなる。一つの補強材上に複数の素子を配列することも望ましい。すなわち、全体の形状を維持するための支持体として補強材料を利用し、必要な部分のみに振動・衝撃吸収素子を配置することも望ましい。
次に、図2及び図3を用いて、本発明にかかる振動・衝撃吸収素子10の電圧制御部15について説明する。図2は、電圧制御部15の一実施形態にかかる機能ブロック図の一例である。図2では、本発明に関連する部分の機能のみを示している。電圧制御部15は、変形取得部41、電圧印加タイミング制御部42、電圧量制御部43、及び電圧印加部44を備えている。
変形取得部41は、変形検出部16によって検出した電解質層11の変形を取得する。電圧印加タイミング制御部42は、変形取得部41よって取得された電解質層11の変形に基づいて、電圧印加タイミングを決定する。例えば、電解質層11に加えられる圧力が除去されときに電圧印加をONにし、電解質層11の変形量がゼロになったときに電圧印加をOFFにする。また、電解質層11に加えられる周波数に基づいて、電圧印加のON/OFFを調整する。ここで、常に、電圧印加をONの状態にしておいてもよい。
電圧量制御部43は、変形取得部41よって取得された電解質層11の変形に基づいて、印加する電圧量を決定する。例えば、電解質層11の素材により、電圧量を決定する。また、例えば、加えられた振動や衝撃による電解質層11の変形量を有効時間内に回復させることが可能な最も低い電圧量を決定する。また、電圧印加のON/OFF判定基準電圧と、ON状態とOFF状態との電圧差を決定してもよい。例えば、ON/OFF判定基準電圧を正値にしておけば、常に、電圧印加のOFFの状態でも、電極部12(12a)と電極部13との間に電圧が印加される。
電圧印加部44は、電圧印加タイミング制御部42によって決定されて電圧印加タイミンで、電圧量制御部43によって決定されて電圧量を電極部12(12a)と電極部13との間に印加する。
図3は、印加される電圧のパターンの例を示した図である。図3(a)は、印加される電圧の電圧量が一定である場合のパターンであり、図3(b)は、印加される電圧が矩形波であり、かつ、電圧印加のON/OFF判定基準電圧がゼロである場合のパターンである。図3(c)は、印加される電圧が矩形波であり、かつ、電圧印加のON/OFF判定基準電圧が正値である場合のパターンである。
加えられる振動や衝撃が微少であるときに、図3(a)に示すように、振動を抑制するように一定量の電圧を印加する。また、繰り返して加えられる振動や衝撃による電解質層11の変形を、短時間に回復させるときに、図3(b)及び図3(c)にように、電圧印加のON状態とOFF状態を繰り返す矩形波の電圧を印加する。また、電解質層11の素材や加えられる振動や衝撃の大きさ等により、電圧印加のON/OFF判定基準電圧を決定される。
上述した振動・衝撃吸収素子10は、本発明の振動・衝撃吸収素子に対応し、電解質層11は本発明の電解質層に対応し、電極部12(12a、12b)と電極部13は本発明の電極部に対応し、構造体14は本発明の構造体に対応し、電圧制御部15は本発明の制御手段に対応し、変形検出部16は変形検出手段に対応する。
また、上述したように電圧制御部15は電極部12(12a)と電極部13との間に印加される電圧を直接制御しているが、電流を制御することによって、電極部12(12a)と電極部13との間に印加される電圧を制御するようにしても良い。
また、上述した電解質層11の電解質は、特に限定されず、陽イオン電解質であっても、陰イオン電解質であってもよい。また、有機電解質、無機電解質、それらを組み合せた電解質のいずれの電解質であってもよい。
特に、電解質として、印加電圧が低くも、振動や衝撃による変形の回復が早い材料が望ましい。
有機電解質としては、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、4級アンモニウム基、3級アミノ基、2級アミノ基、1級アミノ基等を有する有機電解質が挙げられ、それらの1つまたは複数を有する高分子電解質が好ましい。特に、スルホン酸基、カルボキシル基を有する高分子電解質が好ましい。具体的には、例えば、パーフルオロスルホン膜(例えば、ナフィオン(商品名)デュポン社製)等が挙げられる。
無機電解質としては、例えば、イオン液体、リチウム、リン、硫黄等により構成された電解質、無機プロトン導電性酸化物粒子(例えば、水和酸化アンチモン(Sb2O5・nH2O))からなる電解質、またはそれと無機マトリックス(例えばジルコニア成分)からなる電解質等が挙げられる。
また、特開2004−335231号公報、特開2004−281147号公報、特開2004−247286号公報、特開2003−190962号公報、特開2003−151580号公報、特開2002−329524号公報、Solid State Ionics5(1981)663−666、電気化学65,No.11(1997)914−919、特開2001−250580号公報、J.Am.Cream.Soc,84[2]477−479(2001)、特公平5−48582号公報、特開平4−231346号公報、第26回固体イオニクス検討会講演要旨集(2000)174−175、米国特許6025094号公報、米国特許5314765号公報、特開2002−56857号公報、特開2001−357879号公報、特開2000−103899号公報、ワイ.エム.リ(Y.M.Li)ら,ソリッド.ステート.イオニクス(Solid State Ionics),134,271−278頁,2000等に開示されたものを用いてもよい。
電解質層11の大きさや形状に、特に制限は無いが、平板状のときは縦横100mm程度が好ましく、厚さは200μm以下が好ましい。平板状以外の形状とするときは、例えば、円筒状、目的の形状に合わせた型取り形状のもの等を用いてもよい。
また、上述した電極部12、13の材料は、必要な導電性が得られればどのようなものであってもよいが、金、白金、銅、その他の金属、カーボン等を用いることができ、それらを単独で、または複数を組み合せて用いてもよい。具体的な電極状態は、電解質膜の面形状に沿って被覆された状態であっても、ポーラス状の薄膜であってもよい。このような形態の得られる形成方法であれば、その方法は特に限定されないが、化学メッキ、金属薄膜の接着、スパッタリング等の方法により形成することができる。また、ポーラス加工は、金属薄膜作製時で行うことも、金属薄膜作製後に行うことも可能である。更に詳しく言えば、例えば、ポーラス加工にはナノインプリント加工やマスキング加工がある。電極部12、13の厚さに特に制限は無いが、10μm以下が好ましい。
上述した電圧制御部15による電圧の印加は、どのような方法であってもよいが、通常は、電極部12及び電極部13にそれぞれ端子を設け(例えば、銅、金、白金等)、両端子を電源(例えば、変圧可能な低電圧源等)の正極及び負極に接続しても良い。
上述した変形検出部16は、既存の加速度計等の技術やピエゾ等の技術を用いてもよい。あるいは、レーザと光受信機との間に反射ミラー付の構造体14を配置して、光の反射量から電解質層11の変形を検出してもよい。また、電極高分子電解質は自身の変形を電圧に変換して出力することが可能であり、変形検出部16として機能する。そのため、上述の方法で作製した複数の電極部12、13の一部を利用して、電解質層11の変形を電流や電圧に変換して出力して、電解質層11の変形を検出してもよい。
また、上述した振動・衝撃吸収素子10による振動吸収材の実施例を示す。例えば、変形検出部16により電解質層11のゲルが吸収しきれない周波数振動を検出する。電圧印加によってゲルを適切に駆動し、変形検出部16により検出された周波数振動を吸収する。具体的には、対応する周波数に応じて、適切な遅れを付与しながら、検出された電解質層11の変形を促す電圧を印加する。
また、上述した振動・衝撃吸収素子10による衝撃吸収材の実施例を示す。例えば、衝撃が加えられると、電解質層11のゲルは変形しながら該衝撃を吸収する。圧力が除去された後、ゲルの変形は回復する。該圧力の除去を変形検出部16によって検出し、電圧印加を用いて、ゲルの変形回復速度を上昇させる。このようにして、例えば、偏心した回転体から発生する衝撃や振動を吸収する。また、車や電車等の大型移動手段のエンジンや車輪からの衝撃や振動の抑制、洗濯機や乾燥機やエアコン室外機等の家電製品の衝撃や振動の抑制、コンプレッサの衝撃や振動の抑制などを可能にする。
図4は、振動・衝撃吸収素子10による衝撃吸収材のメカニズムの示す一例である。衝撃吸収材は、偏心した回転体から発生する繰り返し加えられる衝撃や振動において、n回目の衝撃や振動を、電解質層11のゲルが変形して吸収する(図中(1))。次に、電極部12(12a)と電極部13との間に電圧を印加して、短時間に、即ち、(n+1)回目の衝撃や振動衝撃や振動が加えられる前に、電解質層11の変形を回復させる(図中(2))。次に、(n+1)回目の衝撃や振動を、電解質層11のゲルが変形して吸収する(図中(3))。これにより、衝撃吸収材は、偏心した回転体から発生する繰り返し加えられる衝撃や振動を吸収する。
上述した図4では、回転体による衝撃や振動の周期と、電極部12(12a)と電極部13との間の電圧の印加タイミングとを同調させているが、n回目の衝撃や振動による変形を完全に回復させる前に、(n+1)回目の衝撃や振動が加えられた場合に(n+1)回目の衝撃や振動を吸収可能な回復である場合は、回転体による衝撃や振動のm周期毎に、電極部12(12a)と電極部13との間に電圧に印加して、電解質層11の変形を回復させるようにしても良い。例えば、回転体による衝撃や振動の3回に1回の割合で、電極部12(12a)と電極部13との間に電圧を印加して、電解質層11の変形を回復させるようにしても良い。
また、上述した振動・衝撃吸収素子10の利用した製品として、計量台に物体を置くことによる計量台の揺れを短時間に吸収する天秤等の精密機器や、微少振動を吸収する電気メス等の医療機器等にも応用することが可能である。
図5は、平板形状の振動・衝撃吸収素子10を応用した天秤の計量台50の一例を示す図である。図5に示すように、4つの平板形状の振動・衝撃吸収素子10を、計量する物体を載せる四角形の計量板51の4隅に、構造体14の片面と計量板51の裏面とが接触するように固定する。また、固定されていない振動・衝撃吸収素子10の構造体14の片面を計量台50の基材に固定する。計量する物体53を計量板51の表面に載せることによる計量台50の揺れを、ゲルの凹みによる変形を利用して、4つの平板形状の振動・衝撃吸収素子10により吸収する。
また、図6は、片持ち梁形状の振動・衝撃吸収素子10を応用した天秤の計量台60の一例を示す図である。図6(a)は、天秤の計量台60の側面図であり、図6(b)は、天秤の計量台60の平面図である。図6に示すように、8個の片持ち梁形状の振動・衝撃吸収素子10の構造体14の片面を、計量する物体を載せる計量板61の表面とする。また、計量板61の表面で無い計量板振動・衝撃吸収素子10の構造体14の片面を計量台60の基材62に固定する。計量する物体63を計量板61の表面に載せることによる計量台60の揺れを、ゲルの撓みによる変形を利用して、8つの平板形状の振動・衝撃吸収素子10により吸収する。更に、8つの平面形状の振動・衝撃吸収素子の隙間に、振動・衝撃を検出するためのセンサーを配置しても良い。これらのセンサーが振動・衝撃吸収素子と同一の構造であっても良い。
10 振動・衝撃吸収素子
11 電解質層
12、13 電極部
14 構造体
15 電圧制御部
16 変形検出部
11 電解質層
12、13 電極部
14 構造体
15 電圧制御部
16 変形検出部
Claims (15)
- 振動または衝撃を吸収する振動・衝撃吸収素子であって、
液体を保持する電解質層と、前記電解質層の表面に電気的に離間した2個以上の電極部とを有した構造体と、
前記構造体の複数の前記電極部間に電圧を印加する制御手段と、
を備え、
前記制御手段によって印加される前記電圧により前記電解質層の変形量を制御して、前記構造体に加えられた振動または衝撃を吸収することを特徴とする振動・衝撃吸収素子。 - 振動または衝撃を吸収する振動・衝撃吸収素子であって、
液体を保持する電解質層と、前記電解質層の片側の表面に電気的に離間した2個以上の電極部とを有した構造体と、
前記構造体の複数の前記電極部間に電圧を印加する制御手段と、
を備え、
前記制御手段によって印加される前記電圧により前記電解質層の変形量を制御して、前記構造体に加えられた振動または衝撃を吸収することを特徴とする振動・衝撃吸収素子。 - 振動または衝撃を吸収する振動・衝撃吸収素子であって、
液体を保持する電解質層と、前記電解質層の両側の表面に、それぞれ1個以上の電極部とを有した構造体と、
前記構造体の両表面の前記電極部間に電圧を印加する制御手段と、
を備え、
前記制御手段によって印加される前記電圧により前記電解質層の変形量を制御して、前記構造体に加えられた振動または衝撃を吸収することを特徴とする振動・衝撃吸収素子。 - 振動または衝撃を吸収する振動・衝撃吸収素子であって、
液体を保持する電解質層と、前記電解質層の両側及び片側の表面に電気的に離間した2個以上の電極部とを有した構造体と、
前記構造体の複数の前記電極部間に電圧を印加する制御手段と、
を備え、
前記制御手段によって印加される前記電圧により前記電解質層の変形量を制御して、前記構造体に加えられた振動または衝撃を吸収することを特徴とする振動・衝撃吸収素子。 - ゲル状またはゴム状の補強材料であって、電極層または電極部とヤング率の異なる補強材料を更に備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の振動・衝撃吸収素子。
- 電解質層または電極部を構成する材料の一部とゲル状またはゴム状の補強材料を構成する材料の一部とが同一素材であることを特徴とする請求項5に記載の振動・衝撃吸収素子。
- 補強材料上に、複数個の振動・衝撃吸収素子が、列状にまたは平面上に配列していることを特徴とする請求項5または6のいずれか1項に記載の振動・衝撃吸収素子。
- 前記電解質層の変形を検出する変形検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記変形検出手段によって検出される前記電解質層の変形に基づいて、印加する前記電圧を制御することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の振動・衝撃吸収素子。 - 前記制御手段は、前記変形検出手段によって検出される前記電解質層の変形に基づいて、電圧印加タイミングを制御することを特徴とする請求項8に記載の振動・衝撃吸収素子。
- 前記制御手段は、前記変形検出手段によって検出された、振動または衝撃による前記電解質層の変形に基づいて、前記電極部間に印加される前記電圧の大きさを制御することを特徴とする請求項8または9に記載の振動・衝撃吸収素子。
- 前記変形検出手段は、前記電解質層の変形を、前記電極を介して出力される電気信号を用いて検出することを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の振動・衝撃吸収素子。
- 前記電解質層を、イオン液体をフッ素系のポリマーまたはその他のポリマーに混合した層に置換し、前記電極層を、イオン液体とカーボン系材料とをフッ素系のポリマーまたはその他のポリマーに混合した層に置換することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の振動・衝撃吸収素子。
- 振動または衝撃を吸収する振動・衝撃吸収素子の作動方法であって、
(a)液体を保持する電解質層と、前記電解質層の表面に電気的に離間した2個以上の電極部とを有した構造体に加えられた振動または衝撃による前記電解質層の変形を検出する工程と、
(b)前記工程(a)によって検出された前記電解質層の変形に基づいて、前記構造体の複数の前記電極部間に印加する電圧を制御する工程と、
(c)前記工程(b)によって印加された電圧により、前記電解質層の変形量を減少させる工程と、
を備えていることを特徴とする振動・衝撃吸収素子の作動方法。 - 振動または衝撃を吸収する振動・衝撃吸収素子の作動方法であって、
(a)液体を保持する電解質層と、前記電解質層の両側及び片側の表面、両側の表面、または、片側の表面の中のいずれか1つの組み合わせの表面に電気的に離間した2個以上の電極部とを有した構造体に加えられた振動または衝撃による前記電解質層の変形を検出する工程と、
(b)前記工程(a)によって検出された前記電解質層の変形に基づいて、前記構造体の複数の前記電極部間に印加する電圧を制御する工程と、
(c)前記工程(b)によって印加された電圧により、前記電解質層の変形量を減少させる工程と、
を備えていることを特徴とする振動・衝撃吸収素子の作動方法。 - 前記電解質層を、イオン液体をフッ素系のポリマーまたはその他のポリマーに混合した層に置換し、前記電極層を、イオン液体とカーボン系材料とをフッ素系のポリマーまたはその他のポリマーに混合した層に置換することを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の振動・衝撃吸収素子の作動方法。
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JP2007082494A JP2008245428A (ja) | 2007-03-27 | 2007-03-27 | 振動・衝撃吸収素子、振動・衝撃吸収装置及び振動・衝撃吸収素子の作動方法 |
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- 2007-03-27 JP JP2007082494A patent/JP2008245428A/ja active Pending
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