JP2008238379A - 研磨方法および研磨装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも一対の電極3,4と、前記電極間に配置された絶縁部材8と、前記一対の電極と前記絶縁部材とにより形成された空間9に配置された被研磨体6,7と、前記一対の電極と前記絶縁部材とにより形成された空間に収容され、前記被研磨体のモース硬度よりも小さいモース硬度の研磨用粉体Fと、前記電極に電圧を印加することにより、前記電極および前記絶縁部材により形成された空間に収容された研磨用粉体を前記電極間で往復動させる電源装置Eと、を備えた研磨装置1。
【選択図】図1
Description
特許文献1には、光学ディスク等のプラスチック製円板の表面に予め研磨剤を塗布しておき、円板表面にバフを押圧した状態で回転させることで、プラスチック製円板表面を研磨する技術が記載されている。
(J02)特許文献2(特開平10−175157号公報)記載の技術
特許文献2には、研磨粒子が含まれた懸濁液(スラリー)状の研磨材を、電極による電界で平坦状に保持し、懸濁液の表面側から被研磨材(ウェハ等)を接触させて、被研磨材表面を研磨する技術が記載されている。
特許文献3には、水にダイヤモンド砥粒と酸化シリコン微粒を混合した研磨剤中に、被加工物を浸漬した状態で、陽電極となる研磨工具と陰電極を浸漬して電極間に電圧を印加することで、電気泳動現象により研磨工具に酸化シリコン微粒とともにダイヤモンド砥粒を付着させ、ダイヤモンド砥粒の付着した研磨工具を移動させることで被加工物を研磨する技術が記載されている。
この他にも、硫酸や硝酸、フッ酸を使用して表面を溶かすことで研磨する化学的な湿式の研磨法も知られている。
被研磨物と、研磨剤とを擦り合わせる従来の乾式の研磨技術では、被研磨物と研磨物との粒子の衝突あるいは、場所による研磨が一様でないので、一様に研磨することが困難であるという問題がある。
また、湿式の研磨技術では、酸を使用するため、設備が大型化してコストがかかり、研磨後の洗浄等の作業もあり、面倒であるという問題がある。また、廃液が環境に負荷を与え、廃液の処理等でコストがかかるという問題がある。
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の研磨方法は、
少なくとも一対の電極および前記電極間に配置された絶縁部材により形成された空間に、被研磨体を配置し且つ研磨用粉体を封入して、前記電極間に前記研磨用粉体を往復動させ且つ前記研磨用粉体が前記被研磨体表面に付着して成膜されない電圧を印加することにより、被研磨体表面を研磨することを特徴とする。
前記被研磨体のモース硬度よりも小さいモース硬度の研磨用粉体を使用することを特徴とする。
前記被研磨体がステンレスまたはモリブデンにより構成され、且つ、前記研磨用粉体が銅、スズおよび白金のいずれかにより構成されたことを特徴とする。
少なくとも一対の電極と、
前記電極間に配置された絶縁部材と、
前記一対の電極と前記絶縁部材とにより形成された空間に配置された被研磨体と、
前記一対の電極と前記絶縁部材とにより形成された空間に封入された研磨用粉体と、
前記電極に電圧を印加することにより、前記電極および前記絶縁部材により形成された空間に収容された前記研磨用粉体を前記電極間で往復動させ且つ前記研磨用粉体が前記被研磨体表面に付着して成膜されない電源装置と、
を備えたことを特徴とする。
請求項2記載の発明によれば、前記被研磨体のモース硬度よりも小さいモース硬度の研磨用粉体を電極間で往復動させることにより、被研磨体を研磨することができるため、被研磨体よりもモース硬度が小さい研磨用粉体を使用することができ、使用可能な研磨材の自由度を高めることができる。
請求項3記載の発明によれば、研磨用粉体として銅、スズおよび白金を使用して、前記被研磨体としてのステンレスやモリブデンを研磨することができる。
請求項4記載の発明によれば、研磨装置により、前記被研磨体のモース硬度よりも小さいモース硬度の研磨用粉体を電極間で往復動させることにより、被研磨体を研磨することができるため、被研磨体よりもモース硬度が小さい研磨用粉体を使用することができ、使用可能な研磨材の自由度を高めることができる。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
図1において、本発明の実施例1の研磨装置1は、板状のベース2を有する。前記ベース2上には、第1電極部材3が支持されており、前記第1電極部材3の上方には、第1電極部材3に対向して第2電極部材4が配置されている。なお、実施例1では、前記電極部材3,4間の距離は10mm(=1cm)に設定されているが、前記距離は設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。
前記一対の電極部材3,4には、電源装置Eが接続されている。前記各電極部材3,4の対向する側の面には、非導電性の板状部材(被研磨体)6,7が固定支持されている。一対の前記板状部材6,7の内側にはリング状の絶縁部材8が挟持されている。前記一対の電極部材3,4(より正確には板状部材6,7)および絶縁部材8により囲まれた空間により粉体Fが収容される粉体収容空間9が構成されている。なお、実施例1では、前記絶縁部材8は、内周が直径25cmのリング状に形成されているが、直径は設計等に応じて任意に変更可能である。また、前記絶縁部材8として、ガラスが使用されているが、材料は特に限定されず、任意の絶縁性の部材(セラミック、樹脂等)を採用可能である。
実施例1では、前記粉体収容空間9は、10−8torr〜10−10torr程度の真空に排気され、室温環境下に配置されている。そして、前記電源装置Eにより、電極部材3,4間に15kV程度の直流電圧(即ち、電界強度は15kV/cm)と、交流電圧が重畳されて印加される。
また、実施例1では、前記粉体収容空間9には、前記板状部材6,7を研磨する研磨用粉体が収容されており、前記研磨用粉体Fは、インゴットを瑪瑙乳鉢で粉砕して、500μm以下に微細化されている。
前記構成を備えた実施例1の研磨装置では、粉体収容空間9に粉体Fを収容した状態で、電源装置Eにより電極3,4間に、放電しない程度の所定の電圧値以上の高電圧(実施例1では4kV)が印加されると、粉体Fが電極3,4間で振動(往復動)を開始する。なお、高電圧が印加されると粉体Fが振動する原理は、特開2000−17455号公報等に記載されているように従来公知であるので、詳細な説明は省略する。
電極3,4で往復動が行われると、粉体Fが被研磨体としての板状部材6,7に繰り返し衝突することで、表面が研磨される。このとき、粉体Fのモース硬度が小さい場合でも、粉体Fよりもモース硬度が大きい被研磨体としての板状部材6,7に、高速で繰り返し衝突することで、板状部材6,7の表面(粉体収容空間9側の面)の凹凸が削られて、板状部材6,7の表面が研磨され、平坦化される。なお、粉体Fは、板状部材6,7間で、振動(往復動)する際に、粉体どうしの衝突により、粉体収容空間9の全域に拡散するため、板状部材6,7表面が一様に研磨することができる。
次に、実際に実施例1の研磨装置1を使用して研磨が行われるか否かの実験を行った。
図2は実施例1の実験例の実験条件および実験結果の一覧表である。
実験の各種条件(装置のサイズや電圧等)は、前記実施例1の条件で行い、研磨装置1の板状部材6,7(基板)と、研磨材との組み合わせを図2に示すように、以下のようにした。
(実験例1)
実験例1では、研磨材としてモース硬度が3.0の銅(Cu)を使用し且つ、基板としてモース硬度が2.75のアルミニウム(Al)を使用した。なお、印加電圧は15kVとした。
実験例2では、研磨材としてモース硬度が3.0の銅(Cu)を使用し且つ、基板としてモース硬度が6.0のステンレス(SUS304)を使用した。なお、印加電圧は15kVとした。
(実験例3)
実験例3では、研磨材としてモース硬度が3.0の銅(Cu)を使用し且つ、基板としてモース硬度が5.5のモリブデン(Mo)を使用した。なお、印加電圧は15kVとした。
(実験例4)
実験例4では、研磨材としてモース硬度が1.5の錫(Sn)を使用し且つ、基板として、実験例1〜3と同様に、アルミニウム(モース硬度2.75)、ステンレス(モース硬度6.0)、モリブデン(モース硬度5.5)をそれぞれ使用した。なお、印加電圧は15kVとした。
実験例5では、研磨材としてモース硬度が3.5の白金(Pt)を使用し且つ、基板として、実験例1〜3と同様に、アルミニウム(モース硬度2.75)、ステンレス(モース硬度6.0)、モリブデン(モース硬度5.5)をそれぞれ使用した。なお、印加電圧は15kVとした。
(比較例1)
比較例1では、粉体としてモース硬度が6のチタン(Ti)を使用し且つ、基板として、真鍮(Brass:モース硬度3〜4程度)を使用した。なお、印加電圧は30kVとした。
(比較例2)
比較例2では、粉体としてモース硬度が4.75のパラジウム(Pd)を使用し且つ、基板として、真鍮(Brass:モース硬度3〜4程度)を使用した。なお、印加電圧は30kVとした。
実験例6では、研磨材としてモース硬度が3.0の銅(Cu)を使用し且つ、基板として、真鍮(Brass:モース硬度3〜4程度)を使用した。実験例6において、粒径80μm程度の銅粉末を使用して、実施例1の研磨装置で、直流高電圧27kVを印加し、電極間の電流は最大で80マイクロアンペア(約2W)、15時間行った。この時、真鍮表面は研磨され、単位面積あたりの重量減少は平均で200μg/cm2であり、表面が鏡面状となった。
実験例7では、研磨剤として修正モース硬度が13の炭化珪素(SiC)を使用し且つ、被研磨体としての基板として、モース硬度5.5のモリブデン(Mo)を使用した。実験例7において、実施例1の研磨装置を使用して、真空中で印加電圧27kV、100マイクロアンペア(2.7W)で10時間行った。このとき、基板の単位面積あたりの重量減少は平均で280μg/cm2であり、表面は研磨前の薄緑色から金属光沢となった。
したがって、実施例1の研磨装置1では、従来、被研磨体6,7よりも硬い材料を使用して研磨していた場合と異なり、被研磨体6,7よりも軟らかい材料を使用して研磨することもできる。すなわち、研磨材(研磨用粉体F)として使用可能な材料の選択肢が増え、研磨材の選択の自由度が向上する。さらに、研磨後は、研磨材を回収でき、研磨材が外部に漏出する等の公害の発生を防止できる。また、研磨材の粒径や、材料、電圧を変化させることにより、被研磨体表面の凹凸をコントロールすることもできる。
なお、この実施例2の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には下一桁に同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この実施例2は、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
前記構成を備えた実施例2の研磨装置21では、他端壁29を外して、粉体収容空間34の他端部に粉体Fを収容した状態(図4A参照)で他端壁29を装着し、電源装置Eにより高電圧を印加すると、粉体Fが電極22,23の間で往復動を開始する。このとき、粉体Fどうしの衝突や筒状部材26,27との衝突等により、粉体Fはドーナツ状の粉体収容空間34の軸方向および周方向に速やかに拡散していく。そして、粉体Fと筒状部材26,27との衝突により筒状部材26,27の内周面または外周面が研磨される。したがって、実施例2の研磨装置21では、板状の部材でなく、筒状の部材の内周面または外周面も研磨できる。その他、実施例2の研磨装置21は、実施例1の研磨装置1と同様の作用、効果を有する。
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H011)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、常温、真空下で研磨装置1,21を稼働させたが、これに限定されず、粉体収容空間9,34を加熱または冷却したり、大気圧あるいは高圧ガス封入による高圧条件等任意に変更可能である。すなわち、真空圧、大気圧、高圧状態のいずれでも、研磨可能である。なお、このとき、温度や圧力、粉体材料の種類、粉体のサイズ等により放電条件が変わるため、放電せず且つ粒子の往復動が行われ、被研磨体表面に成膜されない電圧を電源装置で印加することが必要となる。前記電圧としては、研磨材の種類や結晶の状態、研磨材と被研磨体との組み合わせ、間隔等により異なるが、約3kV〜30kV程度である。
(H04)前記実施例において、被研磨体6,7,16,17として使用可能な材料は、例示した材料に限定されず、金属、非金属、合金、あるいは、樹脂やセラミックス等の絶縁体等任意の材料を使用可能である。
(H05)前記実施例において、装置のサイズや印加する電圧は、実施例に例示した値に限定されず、設計に応じて変更可能である。このとき、電極間の間隔と、電圧は、放電条件や粉体の往復動と関連するため、放電せず且つ往復動可能で、しかも、粉体が被研磨体に叩き込まれることで表面に成膜されない電圧および電極間間隔に設定することができる。
(H07)前記実施例において、粉体収容空間9,34は、密閉し、長時間往復動させることが望ましいが、これに限定されず、例えば、一端側から順次粉体を供給し、通路状の粉体収容空間9,34を通過させて研磨することも可能である。また、往復動させる時間や印加電圧を調整することで研磨速度や研磨が終了するまでの時間を調整することができる。
(H09)前記実施例において、瑪瑙乳鉢で粉砕した粉体Fを例示したが、これに限定されず、任意の方法で往復動可能な程度の大きさ(比重等により異なるが、500μm以下程度が好ましい)にすることが可能である。
(H011)前記実施例において、粉体Fを衝突させることで、研磨だけでなく、印加電圧を調整することで、表面のクリーニングや、被研磨体の吸蔵ガスの脱ガスに利用することもできる。
2…ベース、
3,22…第1電極部材、
4,23…第2電極部材、
6,7,26,27…被研磨体、
8,28,29…絶縁部材、
9,34…粉体収容空間、
11…支柱、
12…アーム、
13…軸部材、
14…押圧部材、
16…スプリング、
31,32…パッキン、
33…ナット、
F…研磨用粉体。
Claims (4)
- 少なくとも一対の電極および前記電極間に配置された絶縁部材により形成された空間に、被研磨体を配置し且つ前記空間に研磨用粉体を封入して、前記電極間に前記研磨用粉体を往復動させ且つ前記研磨用粉体が前記被研磨体表面に付着して成膜されない電圧を印加することにより、被研磨体表面を研磨することを特徴とする研磨方法。
- 前記被研磨体のモース硬度よりも小さいモース硬度の研磨用粉体を使用することを特徴とする請求項1に記載の研磨方法。
- 前記被研磨体がステンレスまたはモリブデンにより構成され、且つ、前記研磨用粉体が銅、スズおよび白金のいずれかにより構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の研磨方法。
- 少なくとも一対の電極と、
前記電極間に配置された絶縁部材と、
前記一対の電極と前記絶縁部材とにより形成された空間に配置された被研磨体と、
前記一対の電極と前記絶縁部材とにより形成された空間に封入された研磨用粉体と、
前記電極に電圧を印加することにより、前記電極および前記絶縁部材により形成された空間に収容された前記研磨用粉体を前記電極間で往復動させ且つ前記研磨用粉体が前記被研磨体表面に付着して成膜されない電源装置と、
を備えたことを特徴とする研磨装置。
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---|---|---|---|
JP2007086144A JP4399611B2 (ja) | 2007-03-29 | 2007-03-29 | 研磨方法および研磨装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012036087A1 (ja) * | 2010-09-15 | 2012-03-22 | 旭硝子株式会社 | 研磨剤および研磨方法 |
US20190184507A1 (en) * | 2017-12-19 | 2019-06-20 | Baizheng Innovation Technology Co., Ltd. | CNC Single-Turret Twin-Spindle Efficiency-Doubled Metal Processing Machine |
-
2007
- 2007-03-29 JP JP2007086144A patent/JP4399611B2/ja active Active
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WO2012036087A1 (ja) * | 2010-09-15 | 2012-03-22 | 旭硝子株式会社 | 研磨剤および研磨方法 |
US20190184507A1 (en) * | 2017-12-19 | 2019-06-20 | Baizheng Innovation Technology Co., Ltd. | CNC Single-Turret Twin-Spindle Efficiency-Doubled Metal Processing Machine |
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