JP2008229540A - 六価クロムを含む被汚染体の浄化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 取り扱いが容易でかつ環境への影響が低い、六価クロムを含む被汚染体の浄化方法を提供する。
【解決手段】 六価クロムを含む土壌などに、還元性を備えた糖類である還元糖を添加して、六価クロムを三価クロムに還元する。さらに、三価クロムを固定化、不溶化させるキレート剤を土壌などに添加する。
【選択図】 図3
【解決手段】 六価クロムを含む土壌などに、還元性を備えた糖類である還元糖を添加して、六価クロムを三価クロムに還元する。さらに、三価クロムを固定化、不溶化させるキレート剤を土壌などに添加する。
【選択図】 図3
Description
この発明は、六価クロムを含む土壌や地下水、表層水などの被汚染体を浄化する浄化方法に関し、特に、取り扱いが容易でかつ環境にやさしい浄化方法に関する。
薬品や化成品の製造工場、メッキ工場、あるいは廃棄物中間処理場や廃棄物保管場所などが設置されている土壌や地下水などには、カドミウム、鉛、水銀、六価クロムなどの重金属が含まれている場合がある。そして、このような重金属が土壌などに溶出することを防止するために、重金属を固定化することが有効である。ここで、鉛や水銀などの重金属は陽イオンとして存在するため、キレート剤や硫化剤、リン酸などの固定化剤による固定化処理が可能である。これに対し、六価クロムは陰イオンであるクロム酸イオンとして存在するため、キレート剤などによる固定化処理が不可能である。このため、六価クロムを陽イオンである三価クロムに還元する必要があり、還元剤として、鉄粉や硫酸第一鉄などの鉄系薬剤や亜硫酸水素ナトリウムなどが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2006−204963号公報
ところで、硫酸第一鉄や亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤は、酸性環境下においては顕著な還元効果を発揮するが、中性からアルカリ性の環境下では還元反応が遅い。また、硫酸第一鉄は、空気中で容易に酸化するため長期保存ができない。特に、水に硫酸第一鉄を溶解するとすぐに酸化して硫酸第二鉄に変化するため、還元剤として利用できない。このため、液状にして土壌などに注入する薬液注入工法を用いることができず、六価クロムで汚染された土壌を掘り起こし、地上で重機を用いて土壌と硫酸第一鉄とを十分に撹拌して処理する必要があった。あるいは、掘り起こした土壌を大量の酸性水で洗浄し、その洗浄水のpH(ペーハー、水素指数)を中性から弱いアルカリ性に調整して、硫酸第一鉄とキレート剤と高分子凝集剤を添加して凝集沈殿させ、固液分離するなどの処理が必要であった。このように、土壌を掘り起こさなければならないため、土壌や地下水の上に構造物が設置されている場合には、処理が難しく、大規模な処理工事が必要であった。さらに、鉄系還元剤を用いた場合、鉄が優先的にキレート化する性質があるため、クロムが水中などに残留する場合があり、その場合には、キレート剤の添加量を増加させなければならなかった。
また、鉄系薬剤を還元剤とした場合、鉄自身は酸化されて価数が3になる。この鉄は赤茶色で、土壌や水を鉄さび色に変色させる可能性がある。また、硫酸第一鉄や塩化第一鉄は、近くに鉄製構築物や鉄筋構造物などがある場合に、その鉄や周囲のコンクリートを腐食させる場合がある。一方、亜硫酸水素ナトリウムは、還元処理の際に刺激臭のガスを発生させるため、十分な換気を要する。
そこでこの発明は、取り扱いが容易でかつ環境への影響が低い、六価クロムを含む被汚染体の浄化方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、六価クロムを含む土壌や地下水、表層水などの被汚染体を浄化する浄化方法であって、還元性を備えた糖類である還元糖を前記被汚染体に添加して、前記六価クロムを三価クロムに還元することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の六価クロムを含む被汚染体の浄化方法において、前記三価クロムを固定化させる固体化剤を前記被汚染体に添加することを特徴とする。
(作用)
キレート剤などの固体化剤(不溶化剤)を添加することで、三価クロムがキレート化合物など(固体化化合物)となって固定化、安定化する。
(作用)
キレート剤などの固体化剤(不溶化剤)を添加することで、三価クロムがキレート化合物など(固体化化合物)となって固定化、安定化する。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の六価クロムを含む被汚染体の浄化方法において、前記被汚染体が水である場合に、前記固体化剤による固体化化合物を沈殿させる沈殿剤を添加することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の六価クロムを含む被汚染体の浄化方法において、前記被汚染体がセメントである場合に、前記還元糖としてグルコースを添加することを特徴とする。
(作用)
六価クロムをグルコースで還元すると、グルコースは酸化されてグルコン酸に変化する。
(作用)
六価クロムをグルコースで還元すると、グルコースは酸化されてグルコン酸に変化する。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の六価クロムを含む被汚染体の浄化方法において、前記還元糖を液状(流体状)にし、前記被汚染体に注入して添加することを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、還元糖を被汚染体に添加することで、被汚染体中の六価クロムを三価クロムに還元するため、取り扱いが容易でかつ環境への影響が低い。すなわち、還元糖による還元反応は、中性からアルカリ性の環境下で良好かつ迅速に行われる。このため、アルカリ性の土壌などに対してはそのまま還元糖を添加するだけで浄化処理でき、また、酸性の土壌などに対しては、石灰散布などによって土壌などをアルカリ化することは容易であり、その後に還元糖を添加するだけで浄化処理できる。また、還元糖は結晶であり、そのほとんどは水溶性である。このため、還元糖による還元は、地上で水とともに撹拌したり、土壌を洗浄したりして行うことができる。
一方、還元糖は天然有機化合物であり、生物の基本栄養素であることから生分解性が高い。さらに、還元処理後に生成した還元糖の酸化物も生分解性が高いため、未反応の還元糖も反応後の糖酸化物も共に土壌などに蓄積することがない。そして、毒性がないことから、作業環境の悪化をもたらすこともなく、極めて安全性が高い。さらに、還元糖によって還元された三価クロムが人体に悪影響を与える可能性は極めて低く、自然環境下において三価クロムが六価クロムに酸化する可能性も極めて低い。
請求項2に記載の発明によれば、キレート剤などの固定化剤の添加によって、三価クロムが固定化、安定化されるため、環境中への溶出、拡散を防止することができる。つまり、被汚染体中に六価クロム(クロム)を多く含む場合であっても、三価クロムが環境中に溶出、拡散するのを防止することができる。また、固定化剤は、クロムのみならず、鉛や水銀、カドミウムなどの重金属をも固定化する効果を有するため、これらの重金属の溶出、拡散も同時に防止することができる。しかも、キレート剤などは、中性からアルカリ性の環境下で良好な固定化性能を発揮する。つまり、還元糖による還元反応が良好な環境下で良好な固定化性能を発揮するため、還元糖で還元処理をした後に、中和や再アルカリ化処理などをすることなく、キレート剤などを添加して連続的に固定化処理を行うことができる。
請求項3に記載の発明によれば、沈殿剤を添加することで固定化化合物が沈殿するため、固定化化合物を容易に除去することが可能となる。
請求項4に記載の発明によれば、還元糖として添加したグルコースがグルコン酸に変化する。このグルコン酸は凝結遅延のためのコンクリート混和剤として利用可能であるため、セメントに凝結遅延剤を別途添加する必要がなくなる。つまり、グルコースをセメントに添加することで、浄化作用(還元作用)と凝結遅延作用とを得ることができる。
請求項5に記載の発明によれば、還元糖を液状にして被汚染体に注入するため、被汚染体の上に構造物が設置されている場合であっても、被汚染体に還元糖を注入することで浄化処理することが可能であり、重機などを用いた大規模な処理工事が不要となる。また、還元糖は水溶液であっても化学的性質はほとんど変化しないため、還元糖を水で液状にして被汚染体に注入しても、還元効果が損なわれることはない。
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
この実施の形態では、六価クロムを含む被汚染体に還元性を備えた糖類である還元糖を添加して、六価クロムを三価クロムに還元するとともに、被汚染体にキレート剤(固定化剤)を添加して、三価クロムを固定化、安定化(不溶化)させることで、被汚染体を浄化するものである。
ここで、還元糖としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、リボースなど還元性末端基を有する単糖類、マルトースやラクトースなど還元性末端基を有する二糖類・少糖類、上白糖などのショ糖分解物、還元性末端基を多く有するデキストリンなどが挙げられる。このうち、還元力や水への溶解性、経済性を考慮すると、グルコースやマルトースが、この実施の形態に最も適している。
また、キレート剤としては、鉛やカドミウム、水銀などを固定化するキレート剤や、硫化水素ナトリウムや硫化ナトリウムなどの硫化剤、リン酸、有機キレート剤などが挙げられる。このうち、クロムとの反応性は、有機キレート剤であるジチオカルバミン酸塩がよく、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムやピロリジンジチオカルバミン酸ナトリウムが適している。これらの有機キレート剤は、粉末でも水溶液でもスラリー状態でもよく、特に水溶液として使用する場合、ジエチルジチオカルバミン酸カリウムは水溶液の濃度を50%以上にすることができるため、水溶液での使用には最適である。
具体的には、被汚染体の種類や状態などに応じて、次のような方法・手順で六価クロムを含む(六価クロムで汚染された)被汚染体を浄化する。ここでは、数ppm〜50ppmレベルの微量の六価クロムを含む土壌T1を浄化する場合(ケース1)と、比較的大量の六価クロムを含み小石などが少ない(土壌の粒径が細かい)土壌T2を浄化する場合(ケース2)と、比較的大量の六価クロムを含み小石などが多い土壌T3を浄化する場合(ケース3)と、六価クロムを含む地下水T4を浄化する場合(ケース4)について説明する。また、すべての場合において、被汚染体T1〜T4が酸性である場合には、被汚染体T1〜T4に石灰を散布などして、予め被汚染体T1〜T4のpHを中性からアルカリ性に調整する。なお、土壌T1〜T3は有機分を多く含んだ土壌であってもよく、岩石が風化してできた有機分をほとんど含まない土壌であってもよい。
(ケース1)
還元糖1とキレート剤2とを薬液注入工法によって土壌T1に添加する。すなわち、図1に示すように、まず、水に溶かして液状にした還元糖1を注入装置10で土壌T1に注入する。次に、一定時間経過後に、水に溶かして液状にしたキレート剤2を注入装置10で土壌T1に注入する。なお、土壌T1が粘土質などのために溶液の浸透性が悪い場合には、ケース2またはケース3による浄化手順(方法)が適している。
還元糖1とキレート剤2とを薬液注入工法によって土壌T1に添加する。すなわち、図1に示すように、まず、水に溶かして液状にした還元糖1を注入装置10で土壌T1に注入する。次に、一定時間経過後に、水に溶かして液状にしたキレート剤2を注入装置10で土壌T1に注入する。なお、土壌T1が粘土質などのために溶液の浸透性が悪い場合には、ケース2またはケース3による浄化手順(方法)が適している。
(ケース2)
図2、3に示すように、まず、土壌T2を掘り起こし(ステップS1)、掘り起こした土壌T2と還元糖1とをミキサー20に投入する(ステップS2)。ここで、投入する還元糖1の量は、投入した土壌T2に対する重量比で1〜5%とする。次に、ミキサー20を稼動させて、土壌T2と還元糖1とが均一に混ざるように撹拌する(ステップS3)。続いて、水3に溶かしたキレート剤2をミキサー20に投入し(ステップS4)、ミキサー20を稼動させて、土壌T2と還元糖1とキレート剤2とが均一に混ざるように撹拌する(ステップS5)。ここで、投入するキレート剤2の量は、投入した土壌T2に対する重量比で1〜5%とし、水3の量は泥状にならない程度とする。その後、天日で乾燥させて、土壌T2を掘り起こした穴に埋め戻す(ステップS6)。
図2、3に示すように、まず、土壌T2を掘り起こし(ステップS1)、掘り起こした土壌T2と還元糖1とをミキサー20に投入する(ステップS2)。ここで、投入する還元糖1の量は、投入した土壌T2に対する重量比で1〜5%とする。次に、ミキサー20を稼動させて、土壌T2と還元糖1とが均一に混ざるように撹拌する(ステップS3)。続いて、水3に溶かしたキレート剤2をミキサー20に投入し(ステップS4)、ミキサー20を稼動させて、土壌T2と還元糖1とキレート剤2とが均一に混ざるように撹拌する(ステップS5)。ここで、投入するキレート剤2の量は、投入した土壌T2に対する重量比で1〜5%とし、水3の量は泥状にならない程度とする。その後、天日で乾燥させて、土壌T2を掘り起こした穴に埋め戻す(ステップS6)。
(ケース3)
図4、5に示すように、まず、土壌T3を掘り起こし(ステップS11)、掘り起こした土壌T3と還元糖1と水3をミキサー20に投入する(ステップS12)。ここで、投入する還元糖1の量は、投入した土壌T3に対する重量比で1〜5%とし、水3の量は泥水にならない程度(土壌T3に対する重量比で50〜100%)とする。次に、ミキサー20を稼動させて、土壌T3と還元糖1と水3とが均一に混ざるように撹拌する(ステップS13)。これにより、土壌T3がスラリー状となって洗浄される。続いて、キレート剤2をミキサー20に投入し(ステップS14)、ミキサー20を稼動させて、土壌T3と還元糖1とキレート剤2とが均一に混ざるように撹拌する(ステップS15)。ここで、投入するキレート剤2の量は、投入した土壌T2に対する重量比で1〜5%とする。次に、アニオン系高分子凝集剤などの凝集剤4を添加して土壌T3を沈降させ(ステップS16)、遠心脱水機やフィルタプレスなどで脱水する(ステップS17)。これにより形成された脱水ケーキ状の土壌T3を掘り起こした穴に埋め戻す(ステップS18)。なお、脱水した濾液は、pH調整して処分する。
図4、5に示すように、まず、土壌T3を掘り起こし(ステップS11)、掘り起こした土壌T3と還元糖1と水3をミキサー20に投入する(ステップS12)。ここで、投入する還元糖1の量は、投入した土壌T3に対する重量比で1〜5%とし、水3の量は泥水にならない程度(土壌T3に対する重量比で50〜100%)とする。次に、ミキサー20を稼動させて、土壌T3と還元糖1と水3とが均一に混ざるように撹拌する(ステップS13)。これにより、土壌T3がスラリー状となって洗浄される。続いて、キレート剤2をミキサー20に投入し(ステップS14)、ミキサー20を稼動させて、土壌T3と還元糖1とキレート剤2とが均一に混ざるように撹拌する(ステップS15)。ここで、投入するキレート剤2の量は、投入した土壌T2に対する重量比で1〜5%とする。次に、アニオン系高分子凝集剤などの凝集剤4を添加して土壌T3を沈降させ(ステップS16)、遠心脱水機やフィルタプレスなどで脱水する(ステップS17)。これにより形成された脱水ケーキ状の土壌T3を掘り起こした穴に埋め戻す(ステップS18)。なお、脱水した濾液は、pH調整して処分する。
(ケース4)
図6、7に示すように、まず、地下水T4を汲み上げ(ステップS21)、貯水タンク30に貯める(ステップS22)。次に、貯水タンク30から第1の撹拌槽31に地下水T4を送るとともに、第1の撹拌槽31に還元糖1を投入する(ステップS23)。ここで、投入する還元糖1の量は、第1の撹拌槽31内の地下水T4に対する重量比で5〜10%とする。そして、六価クロムの残存量をチェックしながら、残存量がなくなるまで一定時間滞留させ(ステップS24)、その後、地下水T4を第2の撹拌槽32に送る(ステップS25)。続いて、キレート剤2と、ポリ硫酸第二鉄や塩化第二鉄などの沈殿助剤(沈殿剤)5とを第2の撹拌槽32に投入する(ステップS26)。ここで、投入するキレート剤2の量は、地下水T4に対して300ppm〜1%とし、沈殿助剤5の量は、地下水T4に対して100〜500ppmとする。この状態で一定時間滞留させ(ステップS27)、その後、地下水T4を凝集沈殿槽33に送り、アニオン系高分子凝集剤などの凝集剤4を添加する(ステップS28)。これにより、固定化したクロムなどの重金属を含むスラッジが凝集沈殿槽33内に沈降する。そして、凝集沈殿槽33内の上澄み水を地下水T4(地下)に戻し(ステップS29)、スラッジを脱水処理する。
図6、7に示すように、まず、地下水T4を汲み上げ(ステップS21)、貯水タンク30に貯める(ステップS22)。次に、貯水タンク30から第1の撹拌槽31に地下水T4を送るとともに、第1の撹拌槽31に還元糖1を投入する(ステップS23)。ここで、投入する還元糖1の量は、第1の撹拌槽31内の地下水T4に対する重量比で5〜10%とする。そして、六価クロムの残存量をチェックしながら、残存量がなくなるまで一定時間滞留させ(ステップS24)、その後、地下水T4を第2の撹拌槽32に送る(ステップS25)。続いて、キレート剤2と、ポリ硫酸第二鉄や塩化第二鉄などの沈殿助剤(沈殿剤)5とを第2の撹拌槽32に投入する(ステップS26)。ここで、投入するキレート剤2の量は、地下水T4に対して300ppm〜1%とし、沈殿助剤5の量は、地下水T4に対して100〜500ppmとする。この状態で一定時間滞留させ(ステップS27)、その後、地下水T4を凝集沈殿槽33に送り、アニオン系高分子凝集剤などの凝集剤4を添加する(ステップS28)。これにより、固定化したクロムなどの重金属を含むスラッジが凝集沈殿槽33内に沈降する。そして、凝集沈殿槽33内の上澄み水を地下水T4(地下)に戻し(ステップS29)、スラッジを脱水処理する。
以上のような六価クロムを含む被汚染体の浄化方法によれば、還元糖1を被汚染体T1〜T4に添加することで、被汚染体T1〜T4中の六価クロムを三価クロムに還元するため、取り扱いが容易でかつ環境への影響が低い。すなわち、還元糖1は生分解性が高く、還元処理後に生成した還元糖1の酸化物も生分解性が高いため、未反応の還元糖1も反応後の糖酸化物も共に被汚染体T1〜T4などに蓄積することがない。そして、毒性がないことから、作業環境の悪化をもたらすこともなく、極めて安全性が高い。さらに、還元糖1によって還元された三価クロムが人体に悪影響を与える可能性は極めて低く、自然環境下において三価クロムが六価クロムに酸化する可能性も極めて低い。
また、キレート剤2の添加によって、三価クロムが固定化、安定化されるため、環境中への溶出、拡散を防止することができる。つまり、被汚染体T1〜T4中に六価クロム(クロム)を多く含む場合であっても、三価クロムが環境中に溶出、拡散するのを防止することができる。また、キレート剤2は、クロムのみならず、鉛や水銀、カドミウムなどの重金属をも固定化する効果を有するため、これらの重金属の溶出、拡散も同時に防止することができる。しかも、キレート剤2は、中性からアルカリ性の環境下で良好な固定化性能を発揮する。つまり、還元糖1による還元反応が良好な環境下で良好な固定化性能を発揮するため、上記のように、還元糖1で還元処理をした後に、中和や再アルカリ化処理などをすることなく、キレート剤2を添加して連続的に固定化処理を行うことができる。
さらに、ケース1のように、還元糖1とキレート剤2とを薬液注入工法によって土壌T1に添加することで、土壌T1を浄化できるため、土壌T1の上に構造物が設置されている場合であっても、重機などを用いずに容易に浄化処理を行うことができる。また、還元糖1やキレート剤2を水に溶かしても化学的性質はほとんど変化しないため、還元糖1による還元効果やキレート剤2による固定化効果が損なわれることはない。また、ケース4のように、沈殿助剤5と凝集剤4とを添加することで、キレート化合物がスラッジとなって沈殿、凝集するため、スラッジを容易に除去することが可能となる。さらに、キレート剤2としてジチオカルバミン酸を添加する場合、その化合物である金属キレート(キレート化合物)が水に溶解しないため、水による環境中への拡散を抑えることができ、また、金属キレートを容易に除去することが可能となる。
ところで、普通ポルトランドセメントなど六価クロムを含むセメントを被汚染体として浄化する場合には、還元糖1としてグルコースを添加するのが望ましい。すなわち、セメントと水、砂、砂利などとともに、対セメント比でグルコースを1%程度添加し、定法にて混練する。この際、還元された三価クロムはセメントの水和反応で生成する結晶に取り込まれるため、キレート剤(固定化剤)を添加する必要はない。一方、グルコースによってセメント中の六価クロムが還元されるとともに、グルコースがグルコン酸に変化する。このグルコン酸は凝結遅延のためのコンクリート混和剤として利用されており、セメントに凝結遅延剤を別途添加する必要がなくなる。つまり、グルコースをセメントに添加することで、浄化作用と凝結遅延作用とを得ることができる。
ここで、還元糖およびキレート剤の添加による浄化効果を確認するために、次のようにして行った実証実験の結果を説明する。ここで、土壌中含有量の分析は、「底質調査方法(昭和63年環境庁水質保全局水質管理課通達127号)」で定める方法に従い、六価クロムの含有量は、同方法5.12.2で定められた「吸光光度法」によって測定し、全クロムの含有量は同方法、12.2.1「酸溶出クロム原子吸光法」によって測定した。また、土壌からの溶出量の分析は、「土壌の汚染に係る環境基準(平成3年8月23日環境庁告示第46号)」に定められた方法に従って溶出試験を行った。さらに、六価クロムの溶出量は、日本工業規格K0102の65.2.1で定められた「ジフェニルカルバジド吸光光度法」によって測定し、全クロムは、同規格K0102の65.1.2「フレーム原子吸光法」によって測定した。
まず、六価クロムで汚染された土壌の汚染状況を上記の方法に従って分析した結果を図8に示す。なお、法的な規制値は、上記の「土壌の汚染に係る環境基準」で定められたものであり、六価クロムの溶出量がその対象となっている。
土壌の浄化は、上記ケース3での浄化方法・手順と同等の方法・手順に従って行い、濾液と脱水ケーキ(脱水ケーキ状の土壌)における六価クロムおよび全クロムの動態を調べた。ここで、浄化対象の土壌は乾燥させた200gで、上記ステップS12における水の投入は200gとした。また、還元糖としてグルコースを用い、キレート剤としてジエチルジチオカルバミン酸カリウム水溶液を用いた。さらに、キレート剤のみよる浄化効果などを検証するために、上記ステップS12でグルコース(還元糖)を添加しない場合も行い、さらに、グルコースを土壌の重量比で0.5%および1.0%添加した場合について調べた。つまり、図9に示すように、1.0%のキレート剤のみを添加した検体Aと、0.5%のグルコースと1.0%のキレート剤とを添加した検体Bと、1.0%のグルコースと1.0%のキレート剤とを添加した検体Cとについて、六価クロムおよび全クロムの動態を調べた。
各検体A〜Cの濾液中の六価クロムと全クロムの溶出量を分析した結果を図10に示す。この結果から、グルコースを添加していない検体Aの濾液では、全クロムの溶出量が多いことが確認された。このことは、次のように考えられる。すなわち、本来キレート剤は三価クロムとキレート化合物を形成してクロムを不溶化するが、検体Aではグルコースが添加されていないため三価クロムとのキレート化合物が形成されない。このため、キレート剤が六価クロムによって酸化され、破壊されている可能性があり、この結果、全クロムの固定化をほとんどできなかったと考えられる。一方、六価クロムの溶出量は、すべての検体A〜Cで規制値未満であった。これは、キレート剤やグルコースが濾液に溶解し、これらがすべて六価クロムの還元に寄与したためと考えられる。
次に、各検体A〜Cの脱水ケーキを乾燥した後に再溶出試験を行い、その溶出液中の六価クロムと全クロムの溶出量を分析した結果を図11に示す。なお、脱水ケーキには薬剤などを添加せず、有姿そのままを溶出試験に供した。この結果から、検体Aの脱水ケーキを再溶出試験すると六価クロムが溶出しており、キレート剤の添加のみでは、六価クロムが土壌に残存することが確認された。
一方、グルコースを添加した検体B、Cでは、濾液、脱水ケーキの再溶出試験いずれにおいても、六価クロムは検出されなかった。また、全クロムの溶出量が検体Aよりも大きく下回っていることから、キレート剤が六価クロムによる酸化の影響をあまり受けなかったと考えられる。以上の結果から、グルコースによって六価クロムを安全な三価クロムに還元でき、さらに、キレート剤によってクロムを不溶化、固定化させることができることが確認された。
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記で示した還元糖や固定化剤(キレート剤)は例示であって、その他の還元糖や固定化剤であってもよく、また、還元糖や固定化剤の添加手順なども、上記ケース1〜4の手順などに制限されない。例えば、比較的大量の六価クロムを含む土壌T2、T3を浄化する場合に、作業環境(構造物の設置など)や汚染範囲などに応じて上記のような薬液注入工法を用いてもよい。さらに、キレート化合物の除去方法も上記の方法に制限されない。例えば、ジチオカルバミン酸塩化合物は浮遊選鉱剤として利用されているため、キレート剤としてジチオカルバミン酸塩化合物を添加することで、キレート化した金属をスラッジにして水から容易に除去することが可能となる。
1 還元糖
2 キレート剤(固定化剤)
3 水
4 凝集剤
5 沈殿助剤(沈殿剤)
10 注入装置
20 ミキサー
30 貯水タンク
31 第1の撹拌槽
32 第2の撹拌槽
33 凝集沈殿槽
T1〜T3 土壌(被汚染体)
T4 地下水(被汚染体)
2 キレート剤(固定化剤)
3 水
4 凝集剤
5 沈殿助剤(沈殿剤)
10 注入装置
20 ミキサー
30 貯水タンク
31 第1の撹拌槽
32 第2の撹拌槽
33 凝集沈殿槽
T1〜T3 土壌(被汚染体)
T4 地下水(被汚染体)
Claims (5)
- 六価クロムを含む土壌や地下水、表層水などの被汚染体を浄化する浄化方法であって、還元性を備えた糖類である還元糖を前記被汚染体に添加して、前記六価クロムを三価クロムに還元することを特徴とする六価クロムを含む被汚染体の浄化方法。
- 前記三価クロムを固定化させる固体化剤を前記被汚染体に添加することを特徴とする請求項1に記載の六価クロムを含む被汚染体の浄化方法。
- 前記被汚染体が水である場合に、前記固体化剤による固体化化合物を沈殿させる沈殿剤を添加することを特徴とする請求項2に記載の六価クロムを含む被汚染体の浄化方法。
- 前記被汚染体がセメントである場合に、前記還元糖としてグルコースを添加することを特徴とする請求項1に記載の六価クロムを含む被汚染体の浄化方法。
- 前記還元糖を液状にし、前記被汚染体に注入して添加することを特徴とする請求項1に記載の六価クロムを含む被汚染体の浄化方法。
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Cited By (2)
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CN114213056A (zh) * | 2022-01-17 | 2022-03-22 | 安徽精公检测检验中心有限公司 | 硫酸亚铁-三硫化二锑复合型液体除铬剂及其制备方法和应用 |
WO2022209597A1 (ja) * | 2021-03-31 | 2022-10-06 | 国立大学法人 香川大学 | 六価クロム無害化剤、及び六価クロムを含有する被処理物質の無害化処理方法 |
-
2007
- 2007-03-22 JP JP2007074791A patent/JP2008229540A/ja active Pending
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