JP2008225564A - 被害関数作成方法、装置およびプログラム並びに台風の風速・風向予測方法、装置およびプログラム並びに台風被害予測方法、装置およびプログラム - Google Patents

被害関数作成方法、装置およびプログラム並びに台風の風速・風向予測方法、装置およびプログラム並びに台風被害予測方法、装置およびプログラム Download PDF

Info

Publication number
JP2008225564A
JP2008225564A JP2007058784A JP2007058784A JP2008225564A JP 2008225564 A JP2008225564 A JP 2008225564A JP 2007058784 A JP2007058784 A JP 2007058784A JP 2007058784 A JP2007058784 A JP 2007058784A JP 2008225564 A JP2008225564 A JP 2008225564A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
damage
typhoon
function
wind speed
wind
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2007058784A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5044243B2 (ja
Inventor
Zenji Shumuta
善治 朱牟田
Tomomi Ishikawa
智巳 石川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Central Research Institute of Electric Power Industry
Original Assignee
Central Research Institute of Electric Power Industry
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Central Research Institute of Electric Power Industry filed Critical Central Research Institute of Electric Power Industry
Priority to JP2007058784A priority Critical patent/JP5044243B2/ja
Publication of JP2008225564A publication Critical patent/JP2008225564A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5044243B2 publication Critical patent/JP5044243B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Management, Administration, Business Operations System, And Electronic Commerce (AREA)

Abstract


【課題】より狭小な集約単位における台風被害予測を可能とする。
【解決手段】台風の被害予測を行う対象領域内の支持物について、メッシュ単位で作用する外力に対する耐性を示す性能値を求め、対象領域内における総支持物数と既往台風により被害を受けた支持物数との比を地域係数とし、性能値をパラメータとしてすべての対象領域における性能値毎の総支持物数と性能値毎の被害を受けた支持物数との比を基準ハザードとし、この地域係数および基準ハザード関数から台風の被害が発生するか否かの被害率の予測を確率論的に求めることができる被害関数を作成する。
【選択図】図6

Description

本発明は、被害関数作成方法、装置およびプログラム並びに台風の風速・風向予測方法、装置およびプログラム並びに台風被害予測推定方法、装置およびプログラムに関する。さらに詳述すると、台風接近時に迅速かつ精度良く台風の被害予測を行うのに好適な被害関数作成方法、装置およびプログラム並びに台風の風速・風向予測方法、装置およびプログラム並びに台風被害予測推定方法、装置およびプログラムに関する。
台風の襲来は風水害等の深刻な自然災害を生じさせる。このため、台風発生時における数時間〜数十時間後の台風位置や地上風速、風向等の予測および予測される各地点での風速、風向等に基づいて起こりうる自然災害の被害を予測する手法の研究が進められている。
例えば、非特許文献1には、台風通過時の九州、中国地方の電柱の被害率(被害を受けた設備数/総設備数)と最大風速との関係を用いて、台風の被害予測を行う方法が提案されている。
光田寧、藤井健「台風による風被害の予測」、日本風工学会誌第72号、平成9年
しかしながら、非特許文献1に記載の技術は、単に過去の台風を分析し、電柱の被害率と最大風速との関係を示す分布から線形回帰により被害関数を求めているに過ぎず、当該被害関数を用いても台風の被害予測を精度良く行うことはできないという問題がある。
具体的には、非特許文献1に記載の技術では、例えば電力会社における各営業所を基本集約単位とした広い範囲で被害関数の推定を行っているので電柱の被害率と最大風速との間に一応の相関性を見出しているが、この関係を2次メッシュ(10km×10km)や3次メッシュ(1km×1km)等を集約単位とする分布として表すと、その分布には相関性を見出すことはできず(相関係数が低い)、被害関数を構築することはできなかった。また、構築をしたとしてもその推定精度は低く、被害の推定に用いることはできないという問題がある。
この理由は、各集約単位内で被害を受けた電柱は数本であるのに対して、被害率の分母となる集約単位内の総電柱数は数十本から数万本とばらつきが大きく、被害率を適性に評価できないためである。
例えば電力会社では、台風接近時の支持物の折損や倒壊およびそれに起因する停電等の被害に早急に対応し、被害の最小化を図るため、台風襲来時に各営業所毎に予測される被害の程度を考慮して復旧に必要な人員・資材を事前に配備し、巡視や設備の強化等を行っている。当該業務においては、限りある人員を効率よく配置することが要求されるため、細かい地域ごとに精度良く被害予測がなされていることが要求される。尚、本明細書における支持物とは例えば、電柱等の設備を指し、以下、特に断りのない限り電柱を例に説明する。しかしながら、支持物とはこれには限られず、例えば鉄塔、道路標識等であっても良い。
このように、2次メッシュや3次メッシュといったより細かい集約で被害を正確に予測する必要がある場合には非特許文献1に記載の技術を適用することはできなかった。
そこで、本発明は、既往台風の被害情報に基づいて精度良く台風の被害予測を可能とする被害関数作成方法、装置およびプログラムを提供することを目的とする。更に、台風襲来時に簡易且つ迅速に地上風速、風向等を予測する台風の風速・風向予測方法、装置およびプログラムを提供することを目的とする。更に、被害関数作成方法、装置およびプログラム並びに台風の風速・風向予測方法、装置およびプログラムを利用して台風襲来時に迅速且つ精度良く台風の被害予測を行う台風被害予測推定方法、装置およびプログラムを提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、請求項1記載の被害関数作成方法は、台風の被害予測を行う各対象領域において、各対象領域内に予め設定したメッシュ毎に一つの代表地点を決定し、メッシュ内でのすべての支持物の安全率の平均値および既往台風の気象データから求めた代表地点での既往台風の通過時の最大風速に基づいて、支持物の力学特性を性能値として求め、各対象領域内における総支持物数と既往台風により被害を受けた支持物数との比を地域係数とし、すべての対象領域における性能値毎の総支持物数と性能値毎の被害を受けた支持物数との比を性能値をパラメータとする基準ハザード関数とし、対象領域毎に地域係数と基準ハザード関数との積により被害関数を作成するようにしている。
したがって、台風の被害予測を行う対象領域内の支持物について、メッシュ単位で、作用する外力(風力)に対する耐性を示す性能値を求め、対象領域内における総支持物数と既往台風により被害を受けた支持物数との比を地域係数とし、性能値をパラメータとしてすべての対象領域における性能値毎の総支持物数と性能値毎の被害を受けた支持物数との比を基準ハザードとし、この地域係数および基準ハザード関数から台風の被害が発生するか否かの被害率の予測を確率論的に求めることができる被害関数を作成している。尚、対象領域とは、任意の大きさの領域であり特に限られるものではないが、例えば電力会社における1営業所や1支店の管轄区域程度の大きさの領域をいう。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の被害関数作成方法において、性能値を各対象領域内の全支持物についての安全率および既往台風の気象データから求めた各支持物が存在する地点での既往台風の通過時の最大風速に基づいて求めるようにしている。したがって、性能値を支持物毎に求めるようにしている。
また、請求項10に記載の被害関数作成装置は、台風の被害予測を行うすべての対象領域の地図データ、対象領域内の全支持物についての位置情報および安全率を記録したデータベース、既往台風の気象データから求めた各支持物が存在する地点での既往台風の通過時の最大風速および対象領域内の総支持物数、および既往台風により被害を受けた支持物数を記憶する初期情報設定手段と、安全率および最大風速から各支持物の力学特性を性能値として算出する性能値算出手段と、各対象領域内における総支持物数と既往台風により被害を受けた支持物数との比を地域係数として算出する地域係数算出手段と、すべての対象領域における性能値毎の総支持物数と性能値毎の被害を受けた支持物数との比を性能値をパラメータとする基準ハザード関数を作成する基準ハザード関数作成手段と、対象領域毎に地域係数と基準ハザード関数との積により被害関数を作成する被害関数作成手段とを備えるものである。
また、請求項12に記載の被害関数作成プログラムは、台風の被害予測を行うすべての対象領域の地図データ、対象領域内の全支持物についての位置情報および安全率を記録したデータベース、既往台風の気象データから求めた各支持物が存在する地点での既往台風の通過時の最大風速および対象領域内の総支持物数、および既往台風により被害を受けた支持物数を予め記憶装置に記憶させておき、安全率および最大風速から各支持物の力学特性を性能値として算出して記憶装置に記憶させる処理と、各対象領域内における総支持物数と既往台風により被害を受けた支持物数との比を地域係数として記憶装置に記憶させる処理と、すべての対象領域における性能値毎の総支持物数と性能値毎の被害を受けた支持物数との比を性能値をパラメータとする基準ハザード関数を作成して記憶装置に記憶させる処理と、地域係数および基準ハザード関数を記憶装置から読み出して対象領域毎に地域係数と基準ハザード関数との積を被害関数として記憶装置に記憶させる処理とをコンピュータに実行させるものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれかに記載の被害関数作成方法において、安全率および最大風速を風向別に求めておき、性能値を風向別に算出するようにしている。したがって、風速に加え風向をパラメータとして性能値を求めている。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3までのいずれかに記載の被害関数作成方法において、被害関数を支持物の被害の原因、被害の区分または存在する地点の土地の用途区分毎の被害モード別に作成するようにしている。
したがって、被害関数の作成において被害総数についての被害率だけでなく、被害モード毎、即ち、樹木倒壊・土砂崩れ等の被害原因、倒壊・折損等の被害区分、森林・田等の当該地点での土地の用途区分毎に被害関数を作成している。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4までのいずれかに記載の被害関数作成方法により作成された被害関数を評価対象台風の被害情報を用いてベイズの定理により更新するようにしている。
また、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の被害関数作成装置において、更に、評価対象台風の被害情報を記憶する更新情報設定手段および評価対象台風の被害情報に基づいてベイズの定理により被害関数を更新する被害関数更新手段とを備えるものである。
また、請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の被害関数作成プログラムにおいて、更に、評価対象台風の被害情報を予め記憶装置に記憶させておき、評価対象台風の被害情報を記憶装置から読み出して、ベイズの定理により被害関数を更新し、該更新した被害関数を記憶装置に記憶させる処理をコンピュータに実行させるものである。
したがって、既往台風の被害情報に基づいて作成された被害関数をベイズの定理における事前確率とし、更に、別の台風(評価対象台風)の被害情報によりベイズの定理を用いて更新し、評価対象台風を反映した被害関数(事後確率)を作成している。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の被害関数作成方法において、評価対象台風について支持物の被害が存在しなかった場合に、尤度関数の確率パラメータを対象領域の最小性能値に被害が一つ生じたと仮定し、かつ変動係数を一定と仮定して求めた尤度関数により被害関数を更新するようにしている。
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の被害関数作成方法において、評価対象台風について支持物の被害が発生した場合であって、被害情報が支持物の位置情報まで既知であるが、被害設備数が分散値を算出できない程度の数である場合に、尤度関数の確率パラメータを被害設備数の対数性能平均値を用い、かつ変動係数を一定と仮定して求めた尤度関数により被害関数を更新するようにしている。
請求項8に記載の発明は、請求項5に記載の被害関数作成方法において、評価対象台風について支持物の被害が発生した場合であって、被害情報が支持物の位置情報まで既知であり、かつ被害設備数が分散値を算出可能な程度の数である場合に、尤度関数の確率パラメータを標本抽出法により求めた尤度関数により被害関数を更新するようにしている。
請求項9に記載の発明は、請求項5に記載の被害関数作成方法において、評価対象台風について支持物の被害が発生した場合であって、被害情報が支持物の位置情報まで既知でない場合に、基準ハザード関数の更新を行わず、評価対象台風により被害を受けた支持物数に基づいて地域係数の更新のみを行って被害関数を更新するようにしている。
したがって、評価対象台風により支持物に
(1)被害が存在しなかった場合
(2)被害が発生した場合であって、被害情報が支持物の位置情報まで既知であるが、被害設備数が分散値を算出できない程度の数である場合
(3)被害が発生した場合であって、被害情報が支持物の位置情報まで既知であり、かつ被害設備数が分散値を算出可能な程度の数である場合
(4)被害が発生した場合であって、被害情報が支持物の位置情報まで既知でない場合
の4つのケースについて、
(1)の場合は、尤度関数の確率パラメータを対象領域の最小性能値に被害が一つ生じたと仮定し、かつ変動係数を一定と仮定して求めた尤度関数により、
(2)の場合は、尤度関数の確率パラメータを被害設備数の対数性能平均値を用い、かつ変動係数を一定と仮定して求めた尤度関数により、
(3)の場合は、尤度関数の確率パラメータを標本抽出法により求めた尤度関数により、
(4)の場合は、基準ハザード関数の更新を行わず、評価対象台風により被害を受けた支持物数に基づいて地域係数の更新のみを行って、被害関数の更新を行っている。これにより、被害情報レベルが異なる場合でも、その違いを考慮した被害関数の更新を可能としている。尚、被害情報レベルとは、被害情報の情報量、被害情報の詳細さをいうものであり、台風の被害情報には、常に位置情報まで詳細に調査することは困難等の様々な理由により上述のような情報レベルが存在する。
請求項14に記載の台風の風速・風向予測方法は、n時間後までの気象予報情報における台風の予測時点での中心位置、中心気圧、進行速度およびn時間後までの台風の中心位置、中心気圧に基づいて、n時間後以降の任意に設定したk時間後までの台風の中心位置および気圧場情報を予め設定されたケース数分モンテカルロシュミレーションにより推定する処理と、モンテカルロシュミレーションにより推定された全ケースについての台風の中心位置および気圧場情報を平均化して平均気象パラメータを求める処理と、平均気象パラメータおよび気圧分布式を用いて傾度風の風速および風向を推定する処理と、傾度風の風速、風向および鉛直分布式を用いて地上風の風速および風向を推定する処理とを行って評価領域内の任意の対象地点におけるk時間後までの台風の風速および風向を予測するようにしている。
また、請求項15に記載の台風の風速・風向予測装置は、n時間後までの気象予報情報に基いて台風の予測時点における中心位置、中心気圧、進行速度およびn時間後までの台風の中心位置、中心気圧を記憶する気象情報設定手段と、n時間後以降の任意に設定されたk時間後までの台風の中心位置および気圧場情報を予め設定されたケース数分モンテカルロシュミレーションにより推定する推定手段と、モンテカルロシュミレーションにより推定された全ケースについての台風の中心位置および気圧場情報を平均化して平均気象パラメータを求める平均気象パラメータ算出手段と、平均気象パラメータおよび気圧分布式から傾度風の風速および風向を推定する傾度風推定手段と、傾度風の風速、風向および鉛直分布式から地上風の風速および風向を推定する地上風推定手段とを備え、評価領域内の任意の対象地点におけるk時間後までの台風の風速および風向を算出するものである。
また、請求項16に記載の台風の風速・風向予測プログラムは、n時間後までの気象予報情報に基いて台風の予測時点における中心位置、中心気圧、進行速度およびn時間後までの台風の中心位置、中心気圧を予め記憶装置に記憶させておき、n時間後以降の任意に設定されたk時間後までの台風の中心位置および気圧場情報を予め設定されたケース数分モンテカルロシュミレーションにより推定し、記憶装置に記憶させる処理と、モンテカルロシュミレーションにより推定された全ケースについての台風の中心位置および気圧場情報を記憶装置から読み出して、該中心位置および該気圧場情報の平均値を求めて、これを平均気象パラメータとして記憶装置に記憶させる処理と、平均気象パラメータおよび予め記憶装置に記憶された気圧分布式を読み出して傾度風の風速および風向を算出し、記憶装置に記憶させる処理と、傾度風の風速、風向および予め記憶装置に記憶された鉛直分布式を読み出して地上風の風速および風向を算出し、記憶装置に記憶させる地上風推定処理とをコンピュータに実行させ、評価領域内の任意の対象地点におけるk時間後までの台風の風速および風向を算出するものである。
したがって、既存の気象予報情報より中心位置、中心気圧および進行速度を入力値とするだけで、モンテカルロシュミレーションにより台風の進路を数ケース(例えば1000ケース)推定し、各ケースでの出力値である気象パラメータ(中心位置、気圧場情報(中心気圧、周辺気圧等))を平均化処理し、当該平均気象パラメータと気圧分布式により、先ず傾度風の風速・風向を求め、更に、当該傾度風の風速・風向と鉛直分布式により評価領域内の任意の対象地点におけるk時間後までの地上風の風速・風向を求めている。尚、評価領域とは、特に限られるものではないが、例えば日本全域をいう。
請求項17に記載の台風被害予測方法は、評価対象台風の気象予報情報に基づいて請求項14に記載の台風の風速・風向予測方法により推定された風速のうち任意の各地点でのk時間内での最大値を最大風速とし、最大風速に基づいて求めた支持物の性能値をパラメータとして、請求項1から9までのいずれかに記載の被害関数作成方法により作成された被害関数を計算し、評価対象台風による支持物の被害数を算出するようにしている。
また、請求項18に記載の台風被害予測装置は、評価対象台風の気象予報情報に基づいて請求項15に記載の台風の風速・風向予測装置により推定された風速のうち任意の各地点でのk時間内での最大値を最大風速とし、最大風速に基づいて求めた支持物の性能値をパラメータとして、請求項10または11のいずれかに記載の被害関数作成装置により作成された被害関数を計算し、評価対象台風による支持物の被害数を算出する台風被害予測手段を備えるものである。
また、請求項19に記載の台風被害予測プログラムは、評価対象台風の気象予報情報に基づいて請求項16に記載の台風の風速・風向予測プログラムにより推定され記憶装置に記憶された風速のうち任意の各地点でのk時間内での最大値を最大風速とし、最大風速に基づいて求めた支持物の性能値をパラメータとして、請求項12または13のいずれかに記載の被害関数作成プログラムにより作成され、記憶装置に記憶された被害関数を読み出して計算し、評価対象台風による支持物の被害数を算出するものである。
したがって、本発明の台風の風速・風向予測方法により推定された各地点での風速から各地点でのk時間内の最大風速を求め、当該最大風速から各支持物の性能値を求めておき、当該性能値をパラメータとして予め作成された被害関数を解くことで評価対象台風の被害予測を行っている。
本発明の被害関数作成方法、装置およびプログラムによれば、従来の確定論的な閾値の設定により被害の有無を判断する被害関数に比べて、比例ハザードモデルにより被害関数を構築することで、確率論的に閾値を設定することが可能となるので、被害関数の評価精度の向上を図ることが可能となる。これにより従来よりも細かい集約単位での被害予測が可能となる。
更に、請求項2に記載の被害関数作成方法によれば、性能値を各支持物について求めることで、更なる被害関数の予測精度の向上を図ることが可能となる。
更に、請求項3に記載の被害関数作成方法によれば、風向を考慮した性能値を算出することで、更なる被害関数の予測精度の向上を図ることができる。
更に、請求項4に記載の被害関数作成方法によれば、被害モード別の被害率を算定できるので、より詳細かつ精度良く台風の被害予測を行うことが可能となる。
更に、請求項5に記載の被害関数作成方法、請求項11に記載の被害関数作成装置および請求項13に記載の被害関数作成プログラムによれば、既往台風から作成された被害関数をベイズの定理により評価対象台風の被害情報を反映させて更新することで、被害関数の予測精度の向上を図ることができる。
更に、請求項6から9までのいずれかに記載の被害関数作成方法によれば、評価対象台風の被害情報の情報レベルがどの程度であるかに応じて被害関数の更新を行うようにしているので、評価対象台風の被害情報レベルが相違していても、異なるパターンを考慮して被害関数を更新することができ、被害関数の予測精度の向上を図ることができる。
また、請求項6に記載の被害関数作成方法によれば、被害のなかった評価対象台風の情報についても、当該台風の風速分布の情報に基づいて被害関数に反映させることで被害関数の予測精度向上に活用することが可能となる。
また、請求項7に記載の被害関数作成方法によれば、被害設備の支持物性能値が得られてはいるが、その数が十分でなく尤度関数内の被害設備性能分布関数の分散量を求めることができない場合であっても当該評価対象台風の風速分布の情報に基づいて被害関数に反映させることで被害関数の予測精度向上に活用することが可能となる。
また、請求項8記載の被害関数作成方法によれば、被害設備の支持物性能値の情報が十分得られている場合は、変動係数が未知であっても、一般的なベイズの定理尤度関数を求める方法(標本抽出法)により尤度関数のパラメータを安定して求めることができ、当該評価対象台風の被害情報を被害関数に反映させることで被害関数の予測精度向上に活用することが可能となる。
また、請求項9に記載の被害関数作成方法によれば、被害設備の位置情報が得られない場合でも、地域係数を更新して評価対象台風の被害情報を被害関数に反映させることで被害関数の予測精度向上に活用することが可能となる。
請求項14に記載の台風の風速・風向予測方法、請求項15に記載の台風の風速・風向予測装置および請求項16に記載の台風の風速・風向予測プログラムによれば、初期データとして、例えば、気象庁発表の気象庁予報データを用いればよいため、初期データの入手が容易である。また、既存の気象予報情報より中心位置、中心気圧、進行速度を入力値とするだけで良いので、計算量を減らし、計算時間を短縮することが可能となる。計算時間が非常に短いので、台風襲来時に一定時間置きに発表される台風の実況、予報情報に対応して、迅速に再計算を行うことが可能となる。
請求項17に記載の台風被害予測方法、請求項18に記載の台風被害予測装置および請求項19に記載の台風被害予測プログラムによれば、台風襲来時に簡易かつ迅速に予測される最大風速から、本発明の被害関数作成方法、装置またはプログラムにより作成される被害関数を用いて台風襲来時の被害発生場所および被害数を事前に精度良く予測が可能となる。
これにより、例えば上述の電力会社の巡視業務において、配電設備の被害予測精度の向上を図ることができるので、人員、設備の配置を適切に行うことが可能となり、被害を最小限に抑えることができる。また、被害時の復旧作業を迅速に行うことが可能となり、被害対策コストの削減を図ることが可能となる。
また、台風の進路予測が外れた場合でも、台風の接近時に一定時間置きに発表される台風の実況情報に応じて、すぐに再計算を行うことが可能となる。
更に、その他の緊急性のある業務に活用することが可能であり、例えば、台風襲来時の鉄道の運行・運休の決定支援、船、飛行機の運航・欠航の決定支援情報としても活用することが可能となる。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
本実施形態の台風被害予測方法は、台風被害予測装置1として装置化される。この台風の被害予測装置1は、図1に示すように、被害関数作成装置20、台風の風速・風向予測装置30及び台風被害予測手段15を少なくとも備えている。
ここで、被害関数作成装置20は、台風の被害予測を行うすべての対象領域の地図データ、対象領域内の全支持物についての位置情報および安全率を記録したデータベース、既往台風の気象データから求めた各支持物が存在する地点での既往台風の通過時の最大風速および対象領域内の総支持物数、および既往台風により被害を受けた支持物数を記憶する初期情報設定手段21と、安全率および最大風速から各支持物の力学特性を性能値として算出する性能値算出手段22と、各対象領域内における総支持物数と既往台風により被害を受けた支持物数との比を地域係数として算出する地域係数算出手段23と、すべての対象領域における性能値毎の総支持物数と性能値毎の被害を受けた支持物数との比を性能値をパラメータとする基準ハザード関数を作成する基準ハザード関数作成手段24と、対象領域毎に地域係数と基準ハザード関数との積により被害関数を作成する被害関数作成手段25と、評価対象台風の被害情報を記憶する更新情報設定手段26と、評価対象台風の被害情報に基づいてベイズの定理により被害関数を更新する被害関数更新手段27とを備えている。
また、台風の風速・風向予測装置30は、n時間後までの気象予報情報に基いて台風の予測時点における中心位置、中心気圧、進行速度およびn時間後までの台風の中心位置、中心気圧を記憶する気象情報設定手段31と、n時間後以降の任意に設定されたk時間後までの台風の中心位置および気圧場情報を予め設定されたケース数分モンテカルロシュミレーションにより推定する推定手段32と、モンテカルロシュミレーションにより推定された全ケースについての台風の中心位置および気圧場情報を平均化して平均気象パラメータを求める平均気象パラメータ算出手段33と、平均気象パラメータおよび気圧分布式から傾度風の風速および風向を推定する傾度風推定手段34と、傾度風の風速、風向および鉛直分布式から地上風の風速および風向を推定する地上風推定手段35とを備えている。
上記台風被害予測装置1は、例えば既存の又は新規のコンピュータ(計算機)により実現される。図2に本実施形態の台風被害予測装置1のハードウェア構成の一例を示す。本実施形態の台風被害予測装置1は、ディスプレイ等の出力装置2と、キーボード、マウス等の入力装置3と、演算処理を行う中央処理演算装置(CPU)4と、計算中のデータ、パラメータ等が記憶される主記憶装置(RAM、メモリ)5と、計算結果等が記録される補助記憶装置6としてのハードディスク、外部ネットワークとの通信を行う通信インタフェース7等を備えている。以下、主記憶装置5および補助記憶装置6を総称して、単に記憶装置ともいう。また、上記のハードウェア資源は例えばバス8を通じて電気的に接続されている。
また、被害関数作成プログラム9a、被害関数更新プログラム9b、台風の風速・風向予測プログラム10および台風被害予測プログラム11は、例えば補助記憶装置6に記録されており、これらのプログラムがCPU4に読み込まれ実行されることによって、コンピュータが台風被害予測装置1として機能する。その実行の際に必要なデータは、メモリ5にロードされる。
また、補助記憶装置6には、支持物に関する情報を記録する支持物データベース12を予め構築しておく。支持物データベース12は、一意の支持物番号をキーとして、位置情報(緯度、経度)や安全率等を情報として有するデータベースである。
更に、補助記憶装置6には、風速・風向を予測する各対象地点における地表面粗度との対応関係を記録した粗度データベース13および各対象地点における風向別(例えば、16方向別)の増速率との対応関係を記録した増速率データベース14を予め構築しておく。
尚、上記ハードウェア構成は一例であってこれに限られるものではない。本実施形態の台風被害予測装置1は必ずしも単一のハードウェアにより実現されることに限らず、例えば、被害関数作成装置20と台風の風速・風向予測装置30とを別途構成し、分散処理を行うようにしても良い。
以下、本実施形態の被害関数作成方法について説明する。本実施形態の被害関数作成方法は、台風の被害予測を行う各対象領域において、各対象領域内に予め設定したメッシュ毎に一つの代表地点を決定し、メッシュ内でのすべての支持物の安全率の平均値および既往台風の気象データから求めた代表地点での既往台風の通過時の最大風速に基づいて、支持物の力学特性を性能値として求め、各対象領域内における総支持物数と既往台風により被害を受けた支持物数との比を地域係数とし、すべての対象領域における性能値毎の総支持物数と性能値毎の被害を受けた支持物数との比を性能値をパラメータとする基準ハザード関数とし、対象領域毎に地域係数と基準ハザード関数との積により被害関数を作成するようにしている。
従来の被害関数(λ(z)とする)は、図3に示すように確定論的に性能値Zの閾値Zlimitを決定しておき、被害なし(λ=0)、被害有り(λ=1.0)で判断するものであった。しかしながら、本願発明者等による幾つかの台風について被害のあった電柱の性能値とその確率分布の検討によれば、例えば、図4に示すように実際に被害の発生した電柱の性能値の分布は広く分布しており、図3に示すような確定論的力学モデルでは、閾値Zlimitを設けることは困難である。また、仮に閾値Zlimit設けたとしても、当該閾値により被害の有無を判断することはできない。
換言すれば、台風の被害予測には、性能値である台風の大きさ(風速)だけでなく地域特性、樹木倒壊、土砂崩れ等の様々な他の2次的要因の影響を考慮に入れなければならず、性能値のみから確定論的に被害を正確に推定することは難しい。
そこで、本実施形態の被害関数作成方法では、図5に示すように被害率λを力学的な観点から支持物の性能値zの関数としてモデル化し、かつ、過去の経験的な被害情報を利用して閾値Zlimitを確率的に設定するようにしている。
本願発明者等が被害関数による被害評価精度の向上をはかるため鋭意研究を重ねた結果、比例ハザードモデルにより被害関数を構築することで被害評価精度の向上を図ることが可能となることを新たに知見した。具体的には、本実施形態における比例ハザードモデルを用いた被害率関数は、先ず、台風の被害予測を行う対象領域内のすべての支持物についての安全率と既往台風の気象データから求めた各支持物が存在する地点での台風通過時の最大風速(または風向別の最大風速)とに基づいて支持物の性能値を求め、次に、対象領域内での総支持物数と台風により被害を受けた総支持物数の比を地域係数として求める。更に、性能値ごとの総支持物数、性能値毎の被害を受けた支持物数から基準ハザード関数を作成することで、地域係数と基準ハザード関数の積を性能値を説明変数として被害率を求める被害関数(以下、事前被害関数ともいう)として作成される。
また、本実施形態の被害関数は、事前被害関数に対してベイズの定理を応用し、新たな評価対象台風の風速・風向情報、被害情報を反映させて被害関数(以下、事後被害関数ともいう)を更新していくことで、被害関数の高精度化を図ることができるものである。
先ず、被害評価の対象となる支持物の性能を評価する方法について説明する。
電柱の性能値Zは例えば数式1で表される。尚、数式1は、構造物の信頼性設計手法において一般的な抵抗力と荷重から定義される性能関数の考え方を応用し、抵抗力をS、荷重を(V/40)とみなして支持物の性能を評価した式である(参考文献:星谷勝、石井清「構造物の信頼性設計法」,鹿島出版会,1993.)。尚、数式1中「40」とあるのは一般的な設計用最大風速の設定値であって、これに限られるものではない。
また、電柱のうち木柱以外の安全率(S)は数式2、木柱の安全率(S)は数式3で表される。ここで安全率の算定式(数式2,3)は、公知の算定式(参考文献:「配電規程JEAC7001−1999低圧および高圧電気技術規程 (第5版) 日本電気技術規格委員会 /日本電気協会,848p,オ−ム社,2000/02」)によるものであり、特に限られるものではない。
ここで、
Z:性能値
S:安全率
V:最大風速(m/s)(台風通過時の地上高10m、10分間平均風速の最大値)
P:支持物の破壊荷重(kgf)
K:係数
:支持物の垂直投影面積1m当りの風圧荷重(kgf/m
:架渉線の垂直投影面積1m当りの風圧荷重(kgf/m
:支持物の末口直径(m)
:支持物の地際直径(m)
H:支持物の地上高(m)
L:両側の径間の和の1/2(m)
d:架渉線の直径(m)
h:架渉線の地上高(m)
n:架渉線数
である。
数式1の性能関数は、最大風速Vを用いて性能値Zを計算しているが、風向が考慮されていないので性能を過大評価することが起こりうる。そこで本実施形態では、支持物に対してどの方向から荷重が掛かるか、即ち、性能値評価に際し風向についてもパラメータとして考慮することで、支持物の性能を更に精度良く評価することが好ましい。数式1に示した性能関数に風向をパラメータとして考慮した場合の支持物の風向別の性能関数(z(θ))は例えば数式4、同様に風向別の安全率(s(θ))は例えば数式5で表される。
ここで、
θ:風向(度,θ=22.5・(i−1)±11.25,i=1〜16)
θ:架渉線と風向との角度
である。尚、架渉線と風向との角度θは、例えば架渉線の走行方位を、北から南方向を0°、西から東方向を90°、南から北方向を180°、東から西方向を270°とする0〜360°の値で表して、当該架渉線の走行方位と風向との角度として定義することができる。例えば、この0〜360°の値を16方位(i=1〜16)に分けておき、方位別に計算することで風向別の性能関数を導出することができる。
ここで、必ずしもすべての電柱について性能値を求める必要はなく、例えば、3次メッシュ(1km×1km)毎に一つの代表地点を決定し、当該代表地点での最大風速と当該メッシュ内のすべての電柱の安全率の平均(平均安全率)を求めて性能値(代表性能値という)を算出することで、処理量を軽減して処理の迅速化を図るようにしても良い。尚、代表地点を求めるためのメッシュの大きさは、計算時間の制約等を考慮して設定すれば良く、特に限られるものではない。風向を考慮した場合の代表性能値は数式6、風向を考慮しない場合の代表性能値は数式7により表される。
次に、被害関数について説明する。本実施形態での比例ハザードモデルによる被害関数λit (z)は、例えば数式8で表される。尚、iは対象領域、tは台風番号、nは被害モードを示している。本実施形態では、対象領域iは、被害求める集約単位である営業所(i=0,1,...,m、但し、i=0は1〜mの全ての対象領域を指すものとする)を指し、台風番号は評価対象となる台風(t=1,...,k)を指す。
また、本実施形態の被害関数作成方法では、被害モードnを設定することが好ましい。被害モードを設定して各モード毎に被害関数を導出することで、例えば、飛来物、樹木倒壊等の被害の原因別の被害関数や倒壊、折損等の被害区分別の被害関数等を求めることを可能としている。表1に本実施形態での被害モードnの分類の一例を示す。
例えば、被害モードnを1から12まですべて計算すれば、被害全体での被害関数に加え、原因別、被害区分、用途区分毎の被害関数を構築することが可能となる。いずれの被害モードnについて被害関数を構築するかは適宜選択可能であり、特に限られるものではない。例えば、全体の被害率のみを推定したいのであれば、本実施形態では、被害モードn=1のみを設定して被害全体で一つの被害関数を構築すれば良く、この場合は、全体として被害が生じるか否かの判断を少ない計算量で迅速に求めることが可能となる。
被害関数(数式8)の第二項は、性能値毎の総被害設備数/性能値毎の総設備数を示している。ここで、DPit (z)は対象領域iで台風t時の被害モードnの性能値毎の総被害設備数であり、TPit (z)は、対象領域iで台風t時の被害モードnの性能値毎の総設備数である。
また、被害関数(数式8)の第三項では、DP は対象領域iでの被害モードnの総被害設備数、TPは、対象領域iでの総設備数、ait (z)は被害モードnが発生した設備の性能値分布を示す被害設備性能分布関数、bit(z)は対象領域iにおける全設備の性能値分布を示す設備性能分布関数を示している。被害関数をこのように分割して構築することにより地域毎の被害率をどのように設定するかと、その被害率を実現するために性能値毎にその値をどのように振り分けるのかとに分けて考慮することが可能となる。ここで、被害設備性能分布関数ait (z)、設備性能分布関数bit(z)は、それぞれ数式9、数式10で表される。また、後述するように本実施形態では、被害設備性能分布関数(数式9)および設備性能分布関数(数式10)を対数正規分布に従うと仮定しているが、これには限られず、正規分布、最大極値分布、ベータ分布、ガンマ分布、三角分布、ワイブル分布等と仮定しても良い。
ここで、
λλit nd:対象領域iで台風t時の被害モードnで生じた被害設備に対する性能値の対数平均
λλit all:対象領域iで台風t時の被害モードnでの全電柱に対する性能値の対数平均
ζit nd:対象領域iで台風t時の被害モードnで生じた被害設備に対する性能値の対数標準偏差
ζit all:対象領域iで台風t時の被害モードnでの全電柱に対する性能値の対数標準偏差
である。
また、被害関数(数式8)の第四項は、被害関数は、「地域係数×基準ハザード関数」の関係(比例ハザードモデル)になることを示している。ここで、地域係数r(i,t)は、性能値zに依存しない対象領域iに応じた比例定数であり数式11で表される。
基準ハザード関数dpit (z)は、性能値zをパラメータとする基準ハザード関数であり、数式12で表される。
以上から、求める被害設備数(以下、期待被害設備数という)E(DPit (z))は、被害率λit (z)と対象領域iの総設備数TPitを乗じた値となる。代表性能値を用いた場合および電柱1本1本の性能値を用いた場合の期待被害設備数は、数式13で表される。数式13は、被害モードnに対する各支持物の期待被害発生率から支持物1本あたりの被害設備数に換算し、対象領域全体の期待被害設備数を求めるものである。
ここで、
TPit:対象領域iで台風t時の総設備数
λit (z):対象領域iで台風t時の被害モードnの被害が発生した設備jの性能値zにおける被害率
である。
このように構築される本実施形態の被害関数によれば、被害率を力学的な観点から支持物の性能値の関数としてモデル化し、かつ、過去の経験的な被害情報を利用して閾値を確率的に設定することが可能となり、被害関数による被害予測精度の向上を図ることができる。
ここで台風の被害情報は、上述のように台風毎に被害のあった支持物、例えば電柱1本1本の位置情報までが詳細に調査されたミクロな被害情報である場合もあるが、多くは、台風毎の営業所等の大きな集約単位の被害総数が既知である程度のマクロな被害情報であるという特徴を有している。換言すれば、台風の被害情報は、マクロな被害情報しか有さない台風とミクロな被害情報まで有する台風についての情報が混在しており、被害情報レベルが異なるマルチデータであるという特徴を備えている。
そこで、本願発明者等は上述のように構築した被害関数をベイズの定理の考え方を応用し更新していくことで被害関数の高精度化を図ることができることが可能となることを新たに知見した。本実施形態の被害関数作成方法によれば、新たに台風が発生した場合に、その被害情報を被害関数に反映させていくことで、台風の評価数が増えれば増えるほど被害関数の推定精度を向上することができ、台風被害が正確に予測可能となる。
ここで、ベイズの定理とは事前確率に対しある結果が得られたときに、その結果を反映した下での事後確率を求める公知の定理である。ベイズの定理の基本式を数式14に示す。
ここで、
P(ε/θ=θ):母数(母集団の母平均と母分散)についてΘ=θの場合に実験結果がεとなる確からしさ、即ち、母数をθと仮定したとき特定の実験結果が得られる条件付き確率
P(θ=θ):母数についてΘ=θとなる事前確率、即ち、実験から情報が得られる前のΘに関する確率
P(θ=θ/ε):母数についてΘ=θとなる事後確率、即ち、実験結果に照らしてベイズ改訂されたΘに関する確率
である。
本実施形態の被害関数作成方法は、上記数式14のベイズの定理を応用して、基準ハザード関数をある台風tのある被害モードnにおいて被害を受けた支持物の性能値の分布に基づいて更新するものである。尚、以下に述べる被害関数の更新過程においては、以下に述べる計算式を、対象とする台風tおよび被害モードn毎に行うものであるが、以下、本明細書においては数式中の添字tおよびnについては省略して表記する。
本実施形態の被害関数作成方法における事後基準ハザード関数は、数式15、即ち数式16で表される。尚、基準ハザード関数の更新には、上述のように任意の既往台風による被害情報が観測されて、それらの性能値(以降、zで示す)が観測されていることを前提とする。
<数15>
事後基準ハザード関数=正規化係数×尤度関数×事前基準ハザード関数
ここで、
i:対象領域(営業所)
θold:既往台風により設定した事前被害設備性能分布関数の母数(以下、確率パラメータともいう)
dp(z;θold):性能値Zの被害率を評価するθoldを母数に持つ事前基準ハザード関数
L(z;Z/θold):性能値z ,z ・・・z の組Zが同時に被害を受けた場合にθoldを母数とする事前基準ハザード関数により評価された同時被害確率分布関数(尤度関数)
k:正規化係数
dp(z;θnew/Z):Zにより修正された母数θnewを持つ事後基準ハザード関数
である。
上記数式16において、尤度関数は数式17で表される。また、正規化係数は数式18で表される。
ここで、
DP:被害の生じた総被害支持物数
である。
ここで、
max,Zmin:評価対象台風で記録された最大性能値の最大値、最小値
である。尚、Zmax,Zminは、被害関数により評価したい性能値の範囲で任意に設定すれば良い。
更に、上記数式16において、上記数式12と同様に、基準ハザード関数は数式19で表される。
ここで、
(z;θ):母数θをもつ対象領域iの被害設備性能分布関数
(z;θ):母数θをもつ対象領域iの全支持物を対象とする設備性能分布関数
である。
上記数式9、数式10に示したように被害設備性能分布関数および設備性能分布関数を対数正規分布としてモデル化すると、それぞれ数式20、数式21で表される。
本実施形態においては、被害設備性能分布関数(数式20)および設備性能分布関数(数式21)を台風や地域に関わらず常に対数正規分布に従うと仮定している。これは、対数正規分布の性質として、対数正規変数の積も比も対数正規分布するので、数式17に示した尤度関数も対数正規分布に従うこととなり、尤度関数の計算における計算量を軽減することが可能となるという理由によるものである。
このように本実施形態では、被害設備性能分布関数および設備性能分布関数を対数正規分布に従うと仮定することで、計算量の軽減を図っているが、同様に正規分布に従うと仮定しても計算量の軽減を図ることが可能である。また、上記数式17に示した尤度関数を直接求める必要があり計算量は増加するが、最大極値分布、ベータ分布、ガンマ分布、三角分布、ワイブル分布等と仮定することも可能である。
次に、尤度関数について説明する。尤度関数L(z;Z/θold)は母数θoldを事前情報とした場合に、観測された被害が発生する条件付同時確率分布関数となる。ここで事前基準ハザード関数は対数正規分布である被害設備性能分布関数(数式20)を分子、設備性能分布関数(数式21)を分母に持つため基準ハザード関数自体も対数正規分布となる。したがって、その積事象である尤度関数自体も対数正規分布に従う関数となる。
以上の性質から尤度関数L(z;Z/θold)は数式22で表すことができる。数式22の右辺の分子は尤度関数内の被害設備性能分布関数として確率パラメータλ’,ζ’/√DPを持つ対数正規分布、分母は尤度関数の設備性能分布関数として確率パラメータλobs ,ζobs /√DPを持つ対数正規分布を示す。また、λobs ,ζobs は尤度関数を構築する際に観測された対象領域の全支持物の性能値ziにより最尤法により評価される数式23、数式24で評価した対数平均および対数標準偏差をそれぞれ示す。尚、数式22において被害設備性能分布関数および設備性能分布関数の母数である対数標準偏差が√DPで割られているのは、尤度関数により特定しようとしている母数が対数平均であるため、観測された各被害設備の対数性能値を同一分布に従う任意の標本グループの性能値の対数平均とみなすためである。
ここで
TP:対象支持物数の総数
DP:総被害設備数
である。
最尤法(Maximum likelihood estimation)とは、尤度の概念を利用し、与えられたデータからそれが従う確率分布の母数について推測する手法である(参考文献:三根久・河合一:信頼性・保全性の基礎数理,日科技連信頼性工学シリーズ(2),日科技連,1984年)。最尤法による尤度関数のパラメータの評価について以下に述べる。
L(z;Z/θ)の被害支持物の性能値郡Zに含まれる個々の被害支持物の性能値をz、f( )を事前情報により確率パラメータθが与えられた条件下で被害性能値が観測される確率関数とする。DPを総被害支持物数とすると、尤度関数は、数式25に示されるように同時確率分布となる。
ここで尤度関数の確率分布の確率パラメータをθとし、確率パラメータθを求めるために数式26に示すように対数をとる。
ここで、適切な確率パラメータθを求めるためには,確率パラメータについて偏微分した対数尤度関数(数式27)を0とする方程式を確率パラメータ分だけ作成し、その連立方程式を解くことにより求めることができる。
この場合、その確率密度関数は数式28、尤度関数は数式29、対数尤度関数は数式30で示される。
ここで
z:性能値
λ:対数平均
ζ:対数標準偏差
である。
θは対数正規分布の場合、対数平均λ、対数標準偏差ζとなるため、λとζでl(θ)を偏微分すると、数式31、数式32で表される。
数式31、数式32の右辺を0として方程式を作ると、それぞれ数式33、数式34となる。
更に、数式33、数式34をλとζについて解くと数式35、数式36となる。尚、分散量を標本分散でなく、不偏標準分散とする場合には数式37として尤度関数に対する対数標準分散を定義することが必要である。
以上が本実施形態における最尤法を用いた尤度関数のパラメータの推定方法である。尚、上記最尤法による尤度関数のパラメータの推定方法は一例であり、他の新規または公知の手法によるものとしても良い。
更に、本実施形態の被害関数作成方法では、評価対象台風の被害状況についての情報がミクロな被害情報まで既知であるか、マクロな被害情報については既知であるがミクロな被害情報はない等といった被害情報レベルに応じて尤度関数において被害設備性能分布関数を決定するλ,ζの評価方法を設定し尤度関数を更新することで、被害情報レベルが異なるマルチデータを同時に考慮した被害関数の更新を行うことを可能としている。尚、具体的な更新方法については、図6のフローチャートについての以下の説明において詳説する。
以下に、本実施形態の被害関数作成プログラム9aおよび被害関数更新プログラム9b(双方を単に、被害関数作成プログラムともいう)が実行する処理について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。
本実施形態では、先ず、既往台風の被害情報を基に事前被害関数(地域係数×基準ハザード関数)の構築を行う(S101)。本実施形態では、補助記憶装置6に予め入力された既往台風の被害情報をメモリ5に読み出して、上述の被害関数の作成方法により事前被害関数が構築される。
例えば、対象領域内の各被害モードn毎の被害電柱数が、上述の表1のような被害情報であれば、地域係数は表2のように表される。
事前基準ハザード関数の構築に際しては、先ず、対象領域のすべての電柱についての性能値を安全率と既往台風の最大風速に基づいて数式1により求める。また、風向をパラメータとする場合は、最大風速および風向に基づいて数式4により求める。
ここで性能値を求めるに際しては、各電柱における最大風速(風向をパラメータとする場合は最大風速および風向、以下同様)の値を入力する必要がある。本実施形態では、当該最大風速の値は、既往台風について発表された気象データに基づいて予測する。この際に、すべての電柱の設置地点での最大風速の値を予測するのは困難であり、推定精度も低くなるので、最大風速は予め対象領域に設定されたメッシュ毎に予測することが好ましい。
本実施形態では、各メッシュの中心点での最大風速を予測し、これを当該メッシュ内の電柱に対する最大風速の入力値としている。尚、各電柱がどのメッシュ内に存在するかは、支持物データベース12に記憶された電柱の位置情報(緯度、経度)より求めることができる。
各メッシュの中心点での最大風速の予測方法は特に限られるものではないが、S102において述べる本実施形態の台風の風向・風速予測方法により予測することが好適である。しかしながら、各メッシュ毎の最大風速の予測が可能であればこれには限られず、他の公知または新規の手法を用いても良い。例えば、MM5、WRF(いずれも米国大気科学研究所)等の公知の気象予報モデルを用いても良い。尚、既往台風についての気象データが全く存在せず、各メッシュ毎の最大風速の予測が困難な場合は、性能平均値1.0、変動係数(標準偏差/平均値)0.25等の通常考え得る範囲のデフォルトのパラメータを設定すれば良い。
求めた各電柱の安全率は原則として不変であるので、これを一意の支持物番号に関連づけて支持物データベース12に記録しておく。
また、求めた対象領域内のすべての電柱の性能値または代表性能値に基づいて、設備性能分布関数を構築する(数式20)。本実施形態での設備性能分布関数は、例えば、図7に示すように性能値を横軸、被害率を縦軸とした性能値分布で表される。
更に、既往台風の被害情報に基づいて、当該対象領域内で被害を受けた電柱の性能値に基づいて被害設備性能分布関数を構築する(数式21)。本実施形態での被害設備性能分布関数は、例えば、図8に示すように性能値を横軸、被害率および度数を縦軸とした性能値分布で表される。
求めた設備性能分布関数および被害設備性能分布関数から基準ハザード関数を構築することができる。このようにして求められる事前被害関数は、記憶装置に記憶され、S101は終了する。本実施形態での事前被害関数は、例えば、図9に示すように性能値を横軸、被害率を縦軸とした性能値分布で表される。尚、図9中の符号16は、風向をパラメータとして考慮した場合、符号17は風向をパラメータとして考慮しない場合の被害関数の例である。
次に、対象となる台風の風速、風向分布を計算の評価を行う(S102)。本実施形態では、台風の風速、風向の計算は、以下に述べる本発明の台風の風速・風向予測方法により行う。
本実施形態の台風の風速・風向予測方法は、n時間後までの気象予報情報における台風の予測時点での中心位置、中心気圧、進行速度およびn時間後までの台風の中心位置、中心気圧に基づいて、n時間後以降の任意に設定したk時間後までの台風の中心位置および気圧場情報を予め設定されたケース数分モンテカルロシュミレーションにより推定する処理と、モンテカルロシュミレーションにより推定された全ケースについての台風の中心位置および気圧場情報を平均化して平均気象パラメータを求める処理と、平均気象パラメータおよび気圧分布式を用いて傾度風の風速および風向を推定する処理と、傾度風の風速、風向および鉛直分布式を用いて地上風の風速および風向を推定する処理とを行って評価領域内の任意の対象地点におけるk時間後までの台風の風速および風向を予測するようにしている。
以下、図10に示すフローチャートを用いて本実施形態の台風の風速・風向予測プログラム10が実行する処理の一例を示す。
本実施形態の台風の風速・風向予測方法では、先ず、初期データ入力処理を行う(S201)。初期データ入力とは、予測時点での台風位置(緯度、経度)等の情報を初期データとして入力し、記憶装置に記憶させるものである。台風の予測時点での情報としては、定期的に発表される気象予報情報を用いることが可能であり、例えば気象庁発表の予報データ(以下、気象庁予報データという)を用いることができる。因みに、気象庁予報データは3時間毎に台風の実況と予報が各時刻の正時約50分後に発表され、台風の日本への接近時においては1時間毎に実況と1時間後の予報が発表される。尚、初期データとして利用可能な情報は、気象庁予報データに限らず他の気象予報情報であっても良いのは勿論である。
気象庁予報データには台風の予測時点での情報に加え、72時間後までの台風進路、12時間後・24時間後・48時間後・72時間後の予報円、暴風警戒域(風速25m/s以上)および強風域(風速15m/s以上)についての情報が含まれる。ここで、予報円とは台風の中心位置が70%の確率でその中に入ると推定される円をいい、暴風警戒域、強風域とは台風の中心が予報円内に進んだ場合にそれぞれ暴風域または強風域に入るおそれのある範囲をいう。
本実施形態では、発表される気象庁予報データのうち、初期データとして予測時点における台風の中心位置(緯度・経度)、中心気圧、進行速度および気象庁予報データを利用する時間(n時間:最大72時間)までの台風の中心位置および中心気圧を入力するようにしている。また、n時間後までの予報円半径を入力することが好ましい。尚、上記の初期データは一例であって、これらに限られるものではない。例えば、予報円半径に予想される暴風域半径を加えた値である暴風警戒域半径等を併せて入力し、最大旋衡風速半径を計算するようにしても良い。
次に、評価期間の設定を行う(S202)。現在発表されている気象庁予報データは72時間後までの台風の情報に限られる。しかしながら、例えば、上述の電力会社の巡視業務等においては、72時間後以降の台風の進路およびある地点における風向、風速が予測されていることにより、人員配置等の業務を円滑に遂行することが可能となる。
そこで、本実施形態では評価期間(以下、k時間ともいう)を、例えば120時間として、0時間から72時間後までは気象庁予報データを利用し、72時間後以降120時間後までは、モンテカルロシュミレーションによる推定処理(S204)による台風の進路推定に基づいた予測を行っている。これにより気象庁予報データが発表されない72時間後以降の台風の進路情報の推定を可能としている。
ここで、モンテカルロシュミレーションによる推定処理(S204)により台風の進路推定を行う時間幅(72時間後以降〜120時間後)と、既存の気象データ(気象庁予報データ)を用いる時間幅(0時間〜72時間後)は、特に限られるものではなく、必要に応じて任意に設定すれば良い。例えば、24時間後までしか発表されない他の気象予報情報に基づいて台風の進路推定を行う場合であれば、24時間後以降については、モンテカルロシュミレーションによる推定処理(S204)により台風の進路推定を行えばよい。また、評価期間(k時間)も必要に応じて設定すれば良く、120時間には限られず、それ以上であっても以下であっても良いのは勿論である。
また、気象庁予報データには、最大旋衡風速半径および周辺気圧についての情報は含まれていないという問題がある。そこで、本実施形態では最大旋衡風速半径および周辺気圧については、0〜120時間後までのすべての時間幅においてモンテカルロシュミレーションによる推定処理(S204)により推定値を求めるようにしている。
次に、台風の風速・風向予測を行う評価領域の設定を行う(S203)。評価領域は、例えば日本国内の任意の領域とし、風速・風向を予測する地点(以下、対象地点)は、例えば、評価領域を区切る3次メッシュの中心点とすればよい。尚、評価領域の設定は、予め記憶装置に記憶された既存の地図データ(図示せず)に対し、緯度、経度情報を用いて設定すればよい。また、対象地点は、3次メッシュの中心点の例に限られず任意に設定することが可能である。また、S201〜S203の処理は、初期パラメータの入力処理であるので処理の前後関係は特に限られるものではない。また、入力される各パラメータは記憶装置に記憶され、必要に応じて読み出される。
次に、モンテカルロシュミレーションによる推定処理を行う(S204)。本実施形態では、入力された初期データに基づいて評価期間である120時間後までの1時間毎の台風の中心位置および中心気圧、中心気圧低下量、周辺気圧等の気圧場情報をモンテカルロシミュレーションにより解析を行う。
以下にモンテカルロシュミレーションによる推定処理(S204)による1時間おきの中心位置、気圧場の解析方法の一例を図11のフローチャートを用いて説明する。
モンテカルロシュミレーションによる推定処理(S204)では、先ず、過去の台風データに基づいて確率モデルを予め設定する(S204−1)。本実施形態では、過去の台風データとして、例えば、北緯23度〜43度、東経123度〜147度の領域に突入もしくは領域内で発生した1951年〜1999年の台風データを収集し、進行速度、中心気圧低下量、最大旋衡風速半径および周辺気圧の確率モデルを作成しているが、収集の対象とする台風データは特に限られるものではない。尚、本実施形態では、中心気圧低下量(周辺気圧−中心気圧)の確率モデルの作成において、周辺気圧を1015hPaとしている。
先ず、本実施形態での進行速度および中心気圧低下量の確率モデルの設定について述べる。本実施形態では、先ず、ある評価領域(北緯23度〜43度、東経123度〜147度)を、例えば図12に示すように48の小領域(領域番号1〜48)に区分している。尚、小領域の設定は、評価領域の地図データに対し、緯度、経度情報に基づいて設定すればよい。また、図12に示す小領域の設定は一例であり、これに限られるものではない。
次に、各小領域毎に当該小領域内に台風が存在しているときの中心気圧P、進行速度(東向きC、北向きC)を収集し、中心気圧低下量の変化量および進行方向に関して、前後1時間の値の間に数式38に示す関係があるものと仮定して回帰係数と誤差の標準偏差を求めるものである。
ここで、
(new):現時点での値
(old):1時間前の値
A,B:回帰係数
ε:誤差(平均値0の正規分布)
である。
ここで、発達した台風域内の気圧分布については、等圧線が同心円状に分布していると仮定することができる。このような気圧分布は、例えば数式39のSchloemerの気圧分布式により表すことができる。尚、用いる気圧分布式は特に限られるものではなく、例えばBjerknesの気圧分布式、Fujitaの気圧分布式等を用いても良い。
ここで、
P:風速評価点における海面気圧
:中心気圧
ΔP:中心気圧低下量(周辺気圧P−中心気圧P
:最大旋衡風速半径
r:風速評価点と台風中心との距離
である。
本実施形態では最大旋衡風速半径および周辺気圧については、気圧分布から傾度風を算定する際に必要となる最大旋衡風速半径のモデル化を行うため、台風中心から100km内に気象官署が少なくとも1つ入り、かつ500km圏内に4箇所以上の気象官署が入るすべての評価対象台風に対して、対象となる気象官署の海面気圧データを収集して各台風の3時間ごとの気圧分布を求め、更に、Schloemerの気圧分布式(数式39)の最小自乗近似により最大旋衡風速半径rと周辺気圧Pを求めている。
また、本実施形態では、周辺気圧については、小領域に関係なく正規分布でモデル化を行い、また、最大旋衡風速半径については、中心気圧低下量ΔP(=P−P)を(1)30hPa未満、(2)30hPa以上45hPa未満、(3)45hPa以上の3区分に分けたうえでrを対数正規分布でモデル化しているが、特に限られるものではない。
本実施形態では、以上の数値モデルを用いてj時間における台風の中心位置、中心気圧、中心気圧低下量および最大旋衡風速半径を既知として、評価期間k時間までのj+1時間時点での台風中心位置と気圧場を評価している。
次に、台風中心位置の推定を行う(S204−2)。j時間における中心位置(x(j),y(j))(単位:度)および緯度方向(y方向)および経度方向(k方向)の進行速度をそれぞれC(j),C(j)(単位:km/s)とすると、j+1時間における台風の中心位置は、経度方向については数式40および緯度方向については数式41で求めることができる。
ここで、気象庁予報データにより予報値が与えられる72時間後までは、j+1時間の予報値が与えられるので予報円の中心位置(x(j+1),y(j+1))、予報円半径S(j+1)より、進行速度C(j),C(j」はそれぞれ数式42、数式43により求められる。尚、本実施形態では、予報値が6時間後、12時間後などのように1時間間隔ではなく数時間間隔でしかない場合は、線形内挿により1時間おきの値を求めることとしている。また、予報円半径を設定していない(S=0)の場合は、台風は中心位置を進むものとして以降の処理を行えばよい。
ここで、
Δx(j),Δy(j):j時間とj+1時間の台風位置間の距離(km)
ΔS(j):予報円中心位置からの標準偏差(km)
f:は標準正規乱数
である。尚、ΔS(j)は、予報円内に入る確率が70%であることを考慮し数式44で与えられる。
一方、予報値が与えられない領域、即ち、72時間後以降〜120時間後までは、S201で設定した過去の台風の進行速度に関する確率モデルに基づいて数式45、数式46により進行速度C(j),C(j)を設定する。
ここで、
(m),A(m),B(m),B(m):小領域m(j時間に位置する領域)における回帰係数
ε(m),ε(m):小領域m(j時間に位置する領域)における誤差の標準偏差
f:標準正規乱数
である。
次に、中心気圧の推定を行う(S204−3)。本実施形態では、j時間における中心気圧をP(j)(単位:hPa)とするときのj+1時間における中心気圧P(j+1)は以下のように算定できる。
先ず、予報値が与えられる場合(0〜72時間後)は、予報値をそのまま用いることができる。尚、予報値のない時間については、上述のように線形内挿により算定すれば良い。
一方、予報値が与えられない場合(72時間後以降〜120時間後)は、1015hPaからの中心気圧差の変化量をもとに各領域毎に定めた確率モデル(数式38)にしたがい数式47で求めることができる。
ここで、
(m),B(m):小領域m(j時間に位置する領域)における回帰係数
ε(m):小領域m(j時間に位置する領域)における誤差の標準偏差
f:標準正規乱数
である。
次に、中心気圧低下量の推定を行う(S204−4)。中心気圧低下量は、S204−3で求めた中心気圧および周辺気圧の確率モデル(数式38)をもとに数式48により求めることができる。尚、P(j+1)はj+1時間における周辺気圧であり数式49の確率モデルにより求めることができる。
次に、最大旋衡風速半径の推定を行う(S204−5)。j+1時間における最大旋衡風速半径は、中心気圧低下量に応じて算定することができる。中心気圧低下量が30hPa以下の時は数式50、中心気圧低下量が30hPaより大きく45hPa以下の時は数式51、中心気圧低下量が45hPaより大きい時は数式52でそれぞれ推定される。
以上でモンテカルロシュミレーションによる推定処理(S204)は終了する。尚、本実施形態では、台風の進路予測を、例えば1000ケースの推定を行うようにしているが推定ケース数は特に限られるものではない。これにより、120時間後までの1時間毎の台風の中心位置(経度方向、緯度方向)、進行速度(x方向、y方向)、中心気圧、中心気圧低下量、最大旋衡風速半径および周辺気圧が各ケースについて推定される。モンテカルロシュミレーションによる推定処理(S204)による推定結果は、記憶装置に記憶される。
図10のフローチャートの説明に戻る。次いで、平均気象パラメータの算定を行う(S205)。このステップでは、S204で推定された全ケースの1時間毎の台風の中心位置、中心気圧、最大旋衡風速半径、周辺気圧を記憶装置から読み出して平均値を算定する。以下、この平均化された上記パラメータを総称して平均気象パラメータという。
本実施形態では、計算量の軽減を図るため、平均気象パラメータの算定を行っているが、モンテカルロシュミレーションにより推定された各ケース毎に以降の処理(S206〜S207)を行って地上風速を求めることも好ましい。これにより、地上風速の確率分布を求めることができ、当該地上風速の確率分布を用いて種々の応用処理が可能となる。
次に、傾度風の風速・風向の算定を行う(S206)。具体的には、平均気象パラメータに対して、前述のSchloemerの気圧分布式(数式39)より傾度風の風速Vおよび傾度風の風向θを10分間隔で算定する。尚、傾度風とは気圧傾度力、遠心力、転向力の3つの力がバランスしているとの仮定に基づいて気圧分布から計算することができる仮想的な風をいう。よって、傾度風の風向θは、気圧に関する等圧線の接線方向となる。また、傾度風速Vは数式53により求められる。数式53中の大気圧に関する偏分項は、Schloemerの気圧分布式より数式54のように表される。本実施形態では、傾度風の風速Vおよび傾度風の風向θを1時間おきの平均気象パラメータの線形内挿により10分間隔の気象パラメータとして算定している。
ここで、
C:台風の進行速度
f:コリオリパラメータ(=2Ωsinφ)、Ωは地球自転角速度(=7.292×10−5−1)、φは緯度
ρ:空気の密度
θ:台風の移動方向から時計回りに回った角度
である。
数式53により算出された傾度風の風速Vおよび傾度風の風向θは、記憶装置に記憶される。
次に、地上風速・風向の算定を行う(S207)。具体的には、S206で求めた傾度風の風速、風向を記憶装置から読み出して、先ず地表面が平坦であると仮定した場合の地上風速および風向を算定する。この場合の地上風の推定方法は特に限られるものではないが、例えば、孟・松井の鉛直分布式を用いるようにすればよい。孟・松井の鉛直分布式では、地上風速V(z)は数式55で、地上風向θ(z)は数式56で示される。尚、Zは傾度風が吹いている地上からの高さ、即ち、地表面の摩擦の影響のない高さを表す。
上記数式55,56において、べき指数αは、数式57、傾度風高さzは数式58、風向の偏角θは数式59、地表ロスビー数R0λは数式60、絶対渦度fλは数式61、渦度の非一様性を表すパラメータξは数式62で表される。
また、数式57における、Zは粗度長(m)を示す。ここで、地表面粗度を評価する方法は、公知または新規の技術を用いれば良く、特に限られるものではないが、本実施形態では、地表面粗度の評価に「風向別粗度評価支援ツール」(財団法人電力中央研究所)を用いている。
「風向別粗度評価支援ツール」では、例えば表3に示す粗度区分と粗度長との関係を用いて、対象地点における各風向に対する平均的な粗度を国土地理院発行の土地利用データを用いて算定し、求めた粗度区分の値を出力値として記憶装置に記憶するものである。尚、各3次メッシュの中心位置での地表面粗度との対応関係については、予め粗度データベース13として補助記憶装置6に記憶しておく。
最後に、対象地点における地上風速を推定する(S208)。ここで、地表面付近を吹く風は、地形の凹凸や地表面粗度の影響を受けて増減速する。このため、予め対象地点での風向別の地表面粗度の評価およびそれを考慮した風の増減速効果を評価しておく必要がある。
地形による風の増減速効果を評価する方法には、公知または新規の技術を用いれば良く、特に限られるものではない。本実施形態では、地形による風の増減速効果の評価に「簡易増速率算定ツール(「k-1 adviser」)」(財団法人電力中央研究所)を用いている。「簡易増速率算定ツール(「k-1 adviser」)」は、対象地点の緯度、経度および粗度区分の値を入力値とし、地形がないときの風速に対する地形があるときの風速の比(増速率)を出力値として記憶装置に記憶するものである。
「風向別粗度評価支援ツール」、「簡易増速率算定ツール(「k-1 adviser」)」については公知の技術であるので、その処理の詳細については省略する(参考文献:石川智巳,松浦真一:「送電用鉄塔の風荷重指針・同解説(2005)」の概要と設計支援ツール,電気現場技術,Vol.45,No.532,pp.15-21,2006.9、松浦真一:強風から送電用鉄塔を守る-実用的で簡便な耐風設計法を提案-,電中研ニュース419,2005.12)。
求めた増速率にS207で求めた地表面が平坦と仮定した場合の地上風を乗じることで、対象地点における地上風速を推定することができる。尚、各3次メッシュの中心位置での風向別(16方向)の増速率との対応関係については、予め増速率データベース14として補助記憶装置6に記憶しておく。
以上で、本実施形態の台風の風速・風向予測方法およびプログラム10が実行する処理は終了し、以下の推定値が出力値として記憶装置に記憶される。本実施形態での推定値およびその出力形式は、例えば次のようになる。尚、「営業所」とは予め定めた3次メッシュの集約単位を指し、「マップ出力」とは出力装置2に表示される評価領域の地図データ上にオーバレイ表示することをいう。マップ出力には既存の手法を用いれば良く、当該手法は、特に限られるものではない。また、上記出力データのデータ形式はその一例であって、これには限られない。
(1)「中心位置」(緯度、経度)(テキストデータ出力、マップ出力)
(2)「中心気圧」(テキストデータ出力)
(3)「強風域、暴風域半径」(テキストデータ出力、マップ出力)
(4)「最大旋衡風速半径」(テキストデータ出力)
(5)「1時間毎の風速,風向」(テキストデータ出力、マップ出力)
(6)「k時間内の最大風速およびそのときの風向」(10分刻みで算出された風速の最大値、テキストデータ出力、マップ出力)
(7)「k時間内の風向別最大風速」(10分刻みで算出された風速、16方向毎、テキストデータ出力、マップ出力)
(8)「営業所別の最大風速、風向、発生時刻、強風域/暴風域突入・離脱時間」(テキストデータ出力、表出力)
(9)「営業所別の風速の時間変化図」(確定、未確定色別のグラフ出力)
以上説明した本実施形態の台風の風速・風向予測方法、装置およびプログラムによれば、既存の気象予報データに基づいて、風速、風向等の予測を行うことができる。また、本実施形態の被害関数作成方法における最大風速および風向の予測に用いることができる。
更に、後述するように本実施形態の台風の風速・風向予測方法と本実施形態の被害関数作成方法により作成される被害関数を組み合わせることで、台風の被害予測を行うことが可能となる。また、本実施形態の台風の風速・風向予測方法、装置およびプログラムに公知または他の新規の手法により求めた被害関数を組み合わせて台風の被害予測を行うようにしても良い。
図6のフローチャートに示すの被害関数の作成方法の説明に戻る。次に、全設備の性能分布の評価を行う(S103)。具体的には、評価対象台風が去った後の被害情報に基づいて設備性能分布関数を構築し、記憶装置に記憶するものである。ここで、評価対象台風の被害情報についても既往台風と同様に予め補助記憶装置6に入力しておくものである。設備性能分布関数の構築は、S101と同様の手法により行うものであるので説明は省略する。尚、対象となる台風毎に最大風速は異なり性能分布も当然に異なることになるため、全設備の性能分布の評価は、台風毎に行う必要がある。
次に、被害設備の性能値分布の評価を行う(S104)。具体的には、対象となる台風が去った後の被害情報に基づいて被害設備性能分布関数を構築し、記憶装置に記憶するものである。被害設備性能分布関数の構築は、S101と同様の手法により行うものであるので説明は省略する。
更に、本実施形態の被害関数作成方法は、ベイズの定理を応用し、台風の被害情報レベルに応じた被害関数の更新を行うことによりマルチデータを同時に取り扱うことを可能としている。
次に、評価対象台風で被害が生じたかどうかの判断を行う(S105)。具体的には、入力される評価対象台風の電柱被害の実測数の有無により判断する。被害モードnを設定している場合は、被害モード毎に被害が生じていたかどうかの判断を行うものである。
被害がない(被害本数=0)場合(S105:No)は、対象領域の最小性能値を用い、変動係数を一定と仮定して尤度関数を構築する(S107)。
具体的には、更新前の被害関数では被害が発生するとされた性能値レベル(被害率が0でない場合)において被害が発生しなかったので、従来関数での評価は過大であると判断できる。尚、当該判断は、本願発明者等の検討による事前基準ハザード関数により評価される予測結果は被害を過大に評価する場合が存在するという知見に基づくものである。そこで、本実施形態では、従来関数に重みを付け直して、被害が出難い方向に被害関数をシフトさせるようにしている。しかしながら、実際に被害は全く生じていないので尤度関数の確率パラメータθは被害情報から求めることは原理的に不可能である。
そこで、本実施形態の被害関数の作成方法では、被害関数を更新する際に評価対象台風に被害事例がない場合、対象台風の性能値区間では少なくとも被害が生じなかったので最小性能値に被害が1つ出たと仮定し、尤度関数の更新を行うようにしている。具体的には、尤度関数の確率パラメータθの設定に際し、以下の仮定をおくものである。
先ず、数式63に示すように評価対象台風の台風被害に対して対象領域全体で記録された対数最小性能値をλ’と仮定する。尚、TPは対象領域iの総設備数である。また、本実施形態では、最小性能値が特異な値(例えば、平均値+3標準偏差以上等)に達する場合には、最小性能に関する上位支持物の対数平均と仮定している。
また、本願発明者等が複数の台風について被害風速分布の統計をとったところ、被害風速分布はどの風速状況でもほぼ一定の変動係数で推移していることを知見した。当該知見に基づき、数式64に示すように尤度関数内の被害性能設備分布関数の対数標準偏差は不変として事前基準ハザード関数内の被害設備性能分布関数の対数標準偏差ζと同じ、即ち変動係数一定(σ/μ)と仮定する。
上記数式63,数式64の仮定をおいて求めた尤度関数を用いて基準ハザード関数(数式16)の更新を行う(S112)。S107からS112へ移った場合における、尤度関数、事前基準ハザード関数、事後基準ハザード関数の更新の一例を図13に示す。
例えば、図13においては、事前基準ハザード関数の評価によれば被害率が大きい性能値が5以下の箇所が、事後基準ハザード関数により低く抑えられ、代わりに、性能値が大きい部分の被害率が大きくなっていることがわかる。このように徐々に被害が出にくくなるように事後確率をシフトすることができる。
これにより被害のなかった評価対象台風の情報についても、当該台風の風速分布の情報に基づいて被害関数に反映させることを可能とすることで、被害関数の予測精度向上に活用することが可能となる。
一方、被害の有無を判断し、入力された評価対象台風による電柱被害の実測被害が一本でも生じている場合(S105:Yes)は、被害設備の情報が位置情報まで詳細にわかっているかどうかの判断を行う(S106)。
本実施形態では、S106の判断は被害を受けた電柱の支持物番号まで入力されているかどうかにより判断する。支持物番号が既知であれば、予め支持物データベース12において関連づけられた位置情報により被害のあった電柱の位置情報を読み出すことが可能となるからである。
位置情報まで詳細に既知である場合(S106:Yes)、即ちミクロな被害情報まで既知である場合は、次いで被害設備数の情報から分散値を抽出できるかどうかを判断する(S108)。
本実施形態では、S108の判断は信頼限界を任意の値(例えば95%、有意水準=0.05)に設定し、例えば、1つの母分散の検定(参考文献:永田靖,サンプルサイズの決め方P.44-45,朝倉書店,2005)等を用いてサンプル数が必要十分であるかを判断する。尚、サンプル数が必要十分であるかの判定は、公知又は新規の統計的手法を用いれば良く、特に限られるものではない。例えば、カイ二乗検定、t検定、コルモゴロフ−スミルノフ検定等を用いるようにしても良い。
S108の判断により被害設備数の情報から分散値が抽出できない場合(S108:No)は、被害設備数の対数性能平均を用い、変動係数一定と仮定して尤度関数を構築する(S109)。
具体的には、被害設備の支持物性能値が得られてはいるが、その数が十分でなく尤度関数内の被害設備性能分布関数の分散量を求めることができない場合であり、この場合には以下のような仮定に基づいて尤度関数内の被害設備性能分布関数を更新する。
数式65に示すように尤度関数の対数平均λ’は、観測された被害支持物の対数平均と一致すると仮定する。このように被害設備数の対数性能平均をそのまま用いることで、尤度関数の解を簡単に求めることを可能としている。
また、上記数式64に示すように尤度関数内の被害設備性能分布関数の対数標準偏差は不変として事前基準ハザード関数内の被害設備性能分布関数の対数標準偏差ζと同じ、即ち変動係数一定(σ/μ)と仮定する。
また、サンプル数が十分でないと尤度関数の解が発散する場合が存在するが、本実施形態では、この場合も同様に情報量が不足しているといえるのでS109の仮定をおくこととしている。
上記数式65、数式64の仮定をおいて求めた尤度関数を用いて基準ハザード関数(数式16)の更新を行う(S112)。S109からS112へ移った場合における、尤度関数、事前基準ハザード関数、事後基準ハザード関数の更新の一例を図14に示す。
例えば、図14においては、事後基準ハザード関数が事前基準ハザード関数よりも特定の性能値に被害が集中するように改善されたことが示されている。尚、通常は事後基準ハザード関数のほうが事前基準ハザード関数よりも性能値に対する被害率の感度(違い)は大きくなる。
これに対し、被害設備数の情報から分散値を抽出できる場合(S108:Yes)は、被害設備の性能値分布情報を用いて標本抽出法により尤度関数を決定する(S110)。
被害が発生しており、かつ被害設備の支持物性能値の情報が十分得られている場合は、変動係数が未知であっても、一般的なベイズの定理における尤度関数を求める方法(標本抽出法)により尤度関数のパラメータを安定して求めることができるものである。
具体的には、上述の最尤法により対数平均は上記数式65で、対数標準偏差は数式66から求めることができるので、これを標本抽出法を用いて尤度関数を更新するものである。
標本抽出法を用いて求めた尤度関数を用いて基準ハザード関数(数式16)の更新を行う(S112)。S110からS112へ移った場合における、尤度関数、事前基準ハザード関数、事後基準ハザード関数の更新の一例を図15に示す。
例えば、図15においては、事後基準ハザード関数が事前基準ハザード関数よりも特定の性能値に被害が集中するように改善したことを示している。尚、一般に事後基準ハザード関数のほうが事前基準ハザード関数よりも性能値に対する被害率の違いは大きくなる。
一方、被害設備の情報が位置情報まで詳細にわかっていない場合(S106:No)、即ち、台風の被害情報としては最も一般的なマクロな被害情報のみ存在する場合は、基準ハザード関数が一定と仮定する(S111)。
具体的には、被害情報が限られているため、基準ハザード関数を対象領域が同一あれば同じであると仮定して、S114において地域係数の値のみ更新するものである。
基準ハザード関数の更新を行わないため、尤度関数は例えば数式67のように仮定することができる。
よって、事後基準ハザード関数は数式68に示すように事前基準ハザード関数と同一となる。
尚、営業所単位で、ミクロな被害情報まで有する営業所とマクロな被害情報しか有さない営業所が混在する場合は、営業所毎にS108とS111の処理に区別して処理を行うことで、更なる精度の向上を図ることが可能となる。
一方、S112で基準ハザード関数の更新を行った場合は、評価対象となったすべての台風について評価したか否かの判断を行う(S113)。即ち、被害関数に反映させるべき評価対象台風tが複数ある場合であって、全ての評価対象についての評価していない場合(S113:No)は、t=t+1としてS102の処理へ戻りループ処理を行う。
これに対し、すべての評価対象台風(以下、評価対象台風群という)について評価し、被害関数の更新が終了した場合(S113:Yes)は、評価対象台風群Tの被害設備数と総設備数(被害設備数/総設備数)を用いて被害関数の地域係数の更新を行う(S114)。
具体的には、上記数式11で示した地域係数を数式69により更新する。
ここで、
(i,T):被害モードnの地域係数
U(r(i,T)):評価対象台風tの被害設備数と総設備数で更新する場合の被害モードnに対する地域係数設定のための評価関数
R(DPit ):台風t時に対象領域iで観測された被害モードnの被害設備数
E(DPit ):事前被害関数の地域係数と評価対象台風群Tで記録された対象領域iの被害モードnで更新された事後基準ハザード関数とを用いて推定された台風tの期待被害設備数
j:対象領域iの総設備数を示す
である。
数式69を最小にするrα(i)を、数式70により求めることで地域係数の更新を行うものである。
数式70を解くと、地域係数は数式71で示される。
ここで、
t:台風
l:総台風数
である。
最後に、以上述べた処理で更新された地域係数および基準ハザード関数により被害関数の更新を行う(S115)ものである。また、この被害関数(事後被害関数)に総設備数を乗じることで期待被害設備数を求めることができる(数式13)。
尤度関数の更新を行わない場合、即ち、S111からS114へ移った場合は、基準ハザード関数は一定のまま地域係数のみ更新される。S111からS114へ移った場合における事前基準ハザード関数(事後基準ハザード関数)、事後被害関数の更新の一例を図16に示す。例えば、図16においては、基準ハザード関数が一定のため被害関数は地域係数rの値のみで変動している。尚、当該被害関数の補正には、例えば最小2乗法を用いればよい。
以上説明した本実施形態の被害関数作成方法により作成および更新される被害関数を用いれば、従来の被害関数では実現不可能な推定精度を実現することが可能となる。また、以下に述べるように本発明の被害関数作成方法および台風の風向・風速予測方法を併せて用いることで、実際に台風が接近している場合の台風の被害予測が可能となる。
本実施形態の台風被害予測方法は、評価対象台風の気象予報情報に基づいて上述の台風の風速・風向予測方法により推定された風速のうち任意の各地点でのk時間内での最大値を最大風速とし、最大風速に基づいて求めた支持物の性能値をパラメータとして、上述の被害関数作成方法により作成された被害関数を計算し、評価対象台風による支持物の被害数を算出するようにしている。このように被害関数作成方法により作成される被害関数および台風の風速・風向予測方法により予測された気象データに基づいて台風接近時の被害予測を実現することが可能となる。
ここで、被害関数は、予め先ず1つの既往台風の被害情報に基づいて事前確率を設定(S101)し、更に、数個から数十個の既往台風の被害情報に基づいて被害関数の更新を行っておき、多くの台風被害情報を反映した高精度の被害関数を構築しておくことが好ましい。この高精度に被害率を予測可能な被害関数を用いて、実際の台風接近時の被害予測を行うことができるものである。
以下、図17に示すフローチャートを用いて本実施形態の台風被害予測プログラム11が実行する処理の一例を説明する。尚、以降の処理においても、被害モード毎に被害予測を行う場合は、被害モードn毎に被害設備数の計算をおこない、被害全体を予測する場合は、被害モードn=1として、全体の被害設備数の計算を行うものである。
先ず、台風情報の入力を行う(S301)。具体的には、現在襲来している台風の詳細情報を入力するものである。具体的な処理内容はS201と同様であり、予測時点で発表されている気象予報データに基づいて入力するものである。
次に、風向・風速分布予測を行う(S302)。本実施形態では、評価期間をk時間とし、上述の台風の風速・風向予測方法を用いて、例えば、3次メッシュ(中心点)毎に10分間隔でk時間後までの風向・風速の予測を行う。具体的な処理内容はS202〜S208と同様である。
次に、各3次メッシュの中心点のk時間の中での方向別の最大風速の値を抽出する(S303)。本実施形態では、方向は16方向としているがこれに限られるものではない。
ここで、最大風速とは、ある任意の地点において、k時間の間で推定された風速のうちの最大値である。しかしながら、風速情報は数時間おきに更新される値であるので、計算を行うたびに確定情報と推定情報が混在した状況となる。本実施形態では、1回目の最大風速の計算では、k時間の間で推定された風速のうちの最大値を用い、2回目以降の計算では、1回目の計算時の最大風速と2回目の計算地点からk時間の間で推定された風速のうちの最大値との最大値を最大風速としている。
次に、最大風速の累積最大値に対する支持物の性能値評価を行う(S304)。処理内容はS103と同様であるので説明を省略する。
次に、被害予測モデルによるメッシュ毎の期待被害設備数の計算を行う(S305)。このステップでは、求めた最大風速および支持物の性能値を構築された被害関数に当てはめ、各メッシュ毎の期待被害設備数の計算を行うものである(数式13)。
次に、営業所毎に被害設備数の集計を行う(S306)。具体的には、各営業所を構成する各メッシュ毎の期待被害設備数を合計し、各営業所について被害設備数の集計を行うものである。尚、各メッシュがどの営業所に該当するかについては、予めデータベース化して記憶装置に記憶させておいても、営業所の境界を地図データに関連づけて記憶させておいても良く、特に限られるものではない。
次に、被害設備数・風速分布等の結果表示を行う(S307)。本実施形態の台風被害予測プログラム11によれば、例えば、図18から図22に示すような画面が結果表示画面として出力装置2に表示される。
図18は、本実施形態の台風被害予測プログラム11により予測された台風進路の結果表示画面の一例であり、1月1日3時の予測時点での気象データから120時間後までの進路予測を行った例である。
また、図19は、本実施形態の台風被害予測プログラム11により予測された風速予測の結果表示画面の一例であり、各メッシュ毎の予測最大風速を地図上の色の濃淡で表示するものである。また、図20は、図19の結果表示に併せて風向予測についても結果をオーバレイ表示させた例を示している。
また、図21は、本実施形態の台風被害予測プログラム11により予測された被害電柱数を地図上に表示した例である。また、図22は、各営業所毎に気象予測情報(最大風速、風向、強風域、暴風域)および被害予測情報(電柱、電線)を予測し、一覧として表示させた例を示している。このように各営業所毎に、予測される被害電柱数を結果表示することが可能となるので、一目で人員、設備をどの地域に配置するかを決定することが可能となる。
尚、以上説明した結果表示画面の表示方法は特に限られるものではない。また、結果として表示する内容も本発明の台風被害予測プログラム11において予測されるデータであれば特に限られるものではなく、そのデータをどのように加工し表示させるかは公知の技術によれば良く、特に限られるものではない。更に、マウスでクリックした範囲を拡大表示させるなど、使用者のユーザインタフェースの利便性向上のために公知の画像処理技術等を用いた種々の機能を備えるようにすることが好ましい。
最後に、台風の勢力が衰えたかどうかを判断する(S308)。即ち、台風が通過および熱帯低気圧等に変わる等の理由により、被害予測を行う必要がなくなった場合(S308:Yes)は、処理を終了する。当該判断は、例えば、気象予報データの中心気圧の値により判断する。
一方、台風の勢力が衰えていない、即ち、依然として被害が生じる可能性がある場合(S308:No)は、一定時間経過後S301に戻り以降の処理を繰り返すものである。尚、一定時間とは、例えば、次の台風情報が発表されるまでを指す。新たな台風情報が発表された後に、当該台風情報に基づいて、S301〜S307の処理を繰り返し、最新の情報に基づく結果に更新するものである。
このように、本実施形態の被害予測方法によれば、更新型の被害予測関数を用いて精度の良い被害関数を作成し、更新を図ることができる。また、簡易的に台風の風向、風速を推定が可能であるので、台風接近時等の緊急時に迅速且つ精度良く台風被害を予測することが可能となる。
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、電柱、鉄塔、道路標識等の支持物に限らず電線等の被害予測に応用することも可能である。
本発明の台風被害予測装置の機能ブロックの一例を示す図である。 本発明の台風被害予測装置のハードウェア構成の一例を示す図である。 確定論的に性能値に閾値を設定した被害関数の一例を示すグラフである。 ある台風で実際に被害を受けた電柱の性能値とその確率分布の一例を示すグラフである。 確率論的に性能値に閾値を設定した被害関数の一例を示すグラフである。 本発明の被害関数作成プログラムおよび被害関数更新プログラムが実行する処理の一例を示すフローチャートである。 設備性能分布関数の一例を示すグラフである。 被害設備性能分布関数の一例を示すグラフである。 事前被害関数の一例を示すグラフである。 本発明の台風の風速・風向予測プログラムが実行する処理の一例を示すフローチャートである。 モンテカルロシュミレーションによる推定処理の一例を示すフローチャートである。 評価領域および小領域を説明するための図である。 評価対象台風により支持物に被害が存在しなかった場合の基準ハザード関数の更新の一例を示すグラフである。 評価対象台風により支持物に被害が発生した場合であって、被害情報が支持物の位置情報まで既知であるが、被害設備数が分散値を算出できない程度の数である場合の基準ハザード関数の更新の一例を示すグラフである。 評価対象台風により支持物に被害が発生した場合であって、被害情報が支持物の位置情報まで既知であり、かつ被害設備数が分散値を算出可能な程度の数である場合の基準ハザード関数の更新の一例を示すグラフである。 評価対象台風により支持物に被害が発生した場合であって、被害情報が支持物の位置情報まで既知でない場合の基準ハザード関数の更新例の一例を示すグラフである。 本発明の台風被害予測プログラムが実行する処理の一例を示すフローチャートである。 本実施形態の台風被害予測プログラムによる台風進路の予測結果表示画面の一例である。 本実施形態の台風被害予測プログラムによる台風の最大風速の結果表示画面の一例である。 本実施形態の台風被害予測プログラムによる台風の最大風速および風向の結果表示画面の一例である。 本実施形態の台風被害予測プログラムによる支持物の被害予測の結果表示画面の一例である。 本実施形態の台風被害予測プログラムによる営業所毎の台風の台風の最大風速および風向、支持物の被害予測等の結果表示画面の一例である。
符号の説明
1 台風被害予測装置
9a 被害関数作成プログラム
9b 被害関数更新プログラム
10 台風の風速・風向予測プログラム
11 台風被害予測プログラム
15 台風被害予測手段
20 被害関数作成装置
21 初期情報設定手段
22 性能値算出手段
23 地域係数算出手段
24 基準ハザード関数作成手段
25 被害関数作成手段
26 更新情報設定手段
27 被害関数更新手段
30 台風の風速・風向予測装置
31 気象情報設定手段
32 推定手段
33 平均気象パラメータ算出手段
34 傾度風推定手段
35 地上風推定手段

Claims (19)

  1. 台風の被害予測を行う各対象領域において、前記各対象領域内に予め設定したメッシュ毎に一つの代表地点を決定し、前記メッシュ内でのすべての支持物の安全率の平均値および既往台風の気象データから求めた前記代表地点での前記既往台風の通過時の最大風速に基づいて、前記支持物の力学特性を性能値として求め、前記各対象領域内における総支持物数と前記既往台風により被害を受けた支持物数との比を地域係数とし、すべての対象領域における前記性能値毎の総支持物数と前記性能値毎の被害を受けた支持物数との比を前記性能値をパラメータとする基準ハザード関数とし、前記対象領域毎に前記地域係数と前記基準ハザード関数との積により被害関数を作成することを特徴とする被害関数作成方法。
  2. 前記性能値を前記各対象領域内の全支持物についての安全率および前記既往台風の気象データから求めた各支持物が存在する地点での前記既往台風の通過時の最大風速に基づいて求めることを特徴とする請求項1に記載の被害関数作成方法。
  3. 前記安全率および前記最大風速を風向別に求めておき、前記性能値を風向別に算出することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の被害関数作成方法。
  4. 前記被害関数を前記支持物の被害の原因、被害の区分または存在する地点の土地の用途区分毎の被害モード別に作成することを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の被害関数作成方法。
  5. 請求項1から4までのいずれかに記載の被害関数作成方法により作成された前記被害関数を評価対象台風の被害情報を用いてベイズの定理により更新することを特徴とする被害関数作成方法。
  6. 前記評価対象台風について前記支持物の被害が存在しなかった場合に、尤度関数の確率パラメータを前記対象領域の最小性能値に被害が一つ生じたと仮定し、かつ変動係数を一定と仮定して求めた前記尤度関数により前記被害関数を更新することを特徴とする請求項5に記載の被害関数作成方法。
  7. 前記評価対象台風について前記支持物の被害が発生した場合であって、前記被害情報が前記支持物の位置情報まで既知であるが、被害設備数が分散値を算出できない程度の数である場合に、尤度関数の確率パラメータを前記被害設備数の対数性能平均値を用い、かつ変動係数を一定と仮定して求めた前記尤度関数により前記被害関数を更新することを特徴とする請求項5に記載の被害関数作成方法。
  8. 前記評価対象台風について前記支持物の被害が発生した場合であって、前記被害情報が前記支持物の位置情報まで既知であり、かつ被害設備数が分散値を算出可能な程度の数である場合に、尤度関数の確率パラメータを標本抽出法により求めた前記尤度関数により前記被害関数を更新することを特徴とする請求項5に記載の被害関数作成方法。
  9. 前記評価対象台風について前記支持物の被害が発生した場合であって、前記被害情報が前記支持物の位置情報まで既知でない場合に、前記基準ハザード関数の更新を行わず、前記評価対象台風により被害を受けた支持物数に基づいて前記地域係数の更新のみを行って前記被害関数を更新することを特徴とする請求項5に記載の被害関数作成方法。
  10. 台風の被害予測を行うすべての対象領域の地図データ、前記対象領域内の全支持物についての位置情報および安全率を記録したデータベース、既往台風の気象データから求めた各支持物が存在する地点での前記既往台風の通過時の最大風速および前記対象領域内の総支持物数、および前記既往台風により被害を受けた支持物数を記憶する初期情報設定手段と、前記安全率および前記最大風速から前記各支持物の力学特性を性能値として算出する性能値算出手段と、前記各対象領域内における総支持物数と前記既往台風により被害を受けた支持物数との比を地域係数として算出する地域係数算出手段と、すべての対象領域における前記性能値毎の総支持物数と前記性能値毎の被害を受けた支持物数との比を前記性能値をパラメータとする基準ハザード関数を作成する基準ハザード関数作成手段と、前記対象領域毎に前記地域係数と前記基準ハザード関数との積により被害関数を作成する被害関数作成手段とを備えることを特徴とする被害関数作成装置。
  11. 更に、評価対象台風の被害情報を記憶する更新情報設定手段および前記評価対象台風の前記被害情報に基づいてベイズの定理により前記被害関数を更新する被害関数更新手段とを備えることを特徴とする請求項10に記載の被害関数作成装置。
  12. 台風の被害予測を行うすべての対象領域の地図データ、前記対象領域内の全支持物についての位置情報および安全率を記録したデータベース、既往台風の気象データから求めた各支持物が存在する地点での前記既往台風の通過時の最大風速および前記対象領域内の総支持物数、および前記既往台風により被害を受けた支持物数を予め記憶装置に記憶させておき、前記安全率および前記最大風速から前記各支持物の力学特性を性能値として算出して記憶装置に記憶させる処理と、前記各対象領域内における総支持物数と前記既往台風により被害を受けた支持物数との比を地域係数として記憶装置に記憶させる処理と、すべての対象領域における前記性能値毎の総支持物数と前記性能値毎の被害を受けた支持物数との比を前記性能値をパラメータとする基準ハザード関数を作成して記憶装置に記憶させる処理と、前記地域係数および前記基準ハザード関数を前記記憶装置から読み出して前記対象領域毎に前記地域係数と前記基準ハザード関数との積を被害関数として記憶装置に記憶させる処理とをコンピュータに実行させることを特徴とする被害関数作成プログラム。
  13. 更に、評価対象台風の被害情報を予め記憶装置に記憶させておき、前記評価対象台風の前記被害情報を前記記憶装置から読み出して、ベイズの定理により前記被害関数を更新し、該更新した被害関数を記憶装置に記憶させる処理をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項12に記載の被害関数作成プログラム。
  14. n時間後までの気象予報情報における台風の予測時点での中心位置、中心気圧、進行速度およびn時間後までの前記台風の中心位置、中心気圧に基づいて、n時間後以降の任意に設定したk時間後までの前記台風の中心位置および気圧場情報を予め設定されたケース数分モンテカルロシュミレーションにより推定する処理と、前記モンテカルロシュミレーションにより推定された全ケースについての前記台風の前記中心位置および前記気圧場情報を平均化して平均気象パラメータを求める処理と、前記平均気象パラメータおよび気圧分布式を用いて傾度風の風速および風向を推定する処理と、前記傾度風の風速、風向および鉛直分布式を用いて地上風の風速および風向を推定する処理とを行って評価領域内の任意の対象地点におけるk時間後までの台風の風速および風向を予測することを特徴とする台風の風速・風向予測方法。
  15. n時間後までの気象予報情報に基いて台風の予測時点における中心位置、中心気圧、進行速度およびn時間後までの前記台風の中心位置、中心気圧を記憶する気象情報設定手段と、n時間後以降の任意に設定されたk時間後までの前記台風の中心位置および気圧場情報を予め設定されたケース数分モンテカルロシュミレーションにより推定する推定手段と、前記モンテカルロシュミレーションにより推定された全ケースについての前記台風の前記中心位置および前記気圧場情報を平均化して平均気象パラメータを求める平均気象パラメータ算出手段と、前記平均気象パラメータおよび気圧分布式から傾度風の風速および風向を推定する傾度風推定手段と、前記傾度風の風速、風向および鉛直分布式から地上風の風速および風向を推定する地上風推定手段とを備え、評価領域内の任意の対象地点におけるk時間後までの前記台風の風速および風向を算出することを特徴とする台風の風速・風向予測装置。
  16. n時間後までの気象予報情報に基いて台風の予測時点における中心位置、中心気圧、進行速度およびn時間後までの前記台風の中心位置、中心気圧を予め記憶装置に記憶させておき、n時間後以降の任意に設定されたk時間後までの前記台風の中心位置および気圧場情報を予め設定されたケース数分モンテカルロシュミレーションにより推定し、記憶装置に記憶させる処理と、前記モンテカルロシュミレーションにより推定された全ケースについての前記台風の前記中心位置および前記気圧場情報を前記記憶装置から読み出して、該中心位置および該気圧場情報の平均値を求めて、これを平均気象パラメータとして記憶装置に記憶させる処理と、前記平均気象パラメータおよび予め記憶装置に記憶された気圧分布式を読み出して傾度風の風速および風向を算出し、記憶装置に記憶させる処理と、前記傾度風の風速、風向および予め記憶装置に記憶された鉛直分布式を読み出して地上風の風速および風向を算出し、記憶装置に記憶させる地上風推定処理とをコンピュータに実行させ、評価領域内の任意の対象地点におけるk時間後までの前記台風の風速および風向を算出することを特徴とする台風の風速・風向予測プログラム。
  17. 前記評価対象台風の気象予報情報に基づいて請求項14に記載の台風の風速・風向予測方法により推定された風速のうち任意の各地点でのk時間内での最大値を最大風速とし、前記最大風速に基づいて求めた前記支持物の前記性能値をパラメータとして、請求項1から9までのいずれかに記載の被害関数作成方法により作成された前記被害関数を計算し、前記評価対象台風による前記支持物の被害数を算出することを特徴とする台風被害予測方法。
  18. 前記評価対象台風の気象予報情報に基づいて請求項15に記載の台風の風速・風向予測装置により推定された風速のうち任意の各地点でのk時間内での最大値を最大風速とし、前記最大風速に基づいて求めた前記支持物の前記性能値をパラメータとして、請求項10または11のいずれかに記載の被害関数作成装置により作成された前記被害関数を計算し、前記評価対象台風による前記支持物の被害数を算出する台風被害予測手段を備えること特徴とする台風被害予測装置。
  19. 前記評価対象台風の気象予報情報に基づいて請求項16に記載の台風の風速・風向予測プログラムにより推定され前記記憶装置に記憶された風速のうち任意の各地点でのk時間内での最大値を最大風速とし、前記最大風速に基づいて求めた前記支持物の前記性能値をパラメータとして、請求項12または13のいずれかに記載の被害関数作成プログラムにより作成され、記憶装置に記憶された被害関数を読み出して計算し、前記評価対象台風による前記支持物の被害数を算出することを特徴とする台風被害予測プログラム。
JP2007058784A 2007-03-08 2007-03-08 被害関数作成方法、装置およびプログラム並びに台風被害予測方法、装置およびプログラム Expired - Fee Related JP5044243B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007058784A JP5044243B2 (ja) 2007-03-08 2007-03-08 被害関数作成方法、装置およびプログラム並びに台風被害予測方法、装置およびプログラム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007058784A JP5044243B2 (ja) 2007-03-08 2007-03-08 被害関数作成方法、装置およびプログラム並びに台風被害予測方法、装置およびプログラム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008225564A true JP2008225564A (ja) 2008-09-25
JP5044243B2 JP5044243B2 (ja) 2012-10-10

Family

ID=39844158

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007058784A Expired - Fee Related JP5044243B2 (ja) 2007-03-08 2007-03-08 被害関数作成方法、装置およびプログラム並びに台風被害予測方法、装置およびプログラム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5044243B2 (ja)

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013050417A (ja) * 2011-08-31 2013-03-14 Seiko Epson Corp 風向風速情報提供システム及び風向風速情報提供方法
JP2018503105A (ja) * 2014-12-22 2018-02-01 ユーザー−セントリック アイピー, エル.ピー.User−Centric Ip, L.P. 中規模モデリング
WO2018216620A1 (ja) * 2017-05-22 2018-11-29 三菱日立パワーシステムズ株式会社 状態分析装置、状態分析方法、およびプログラム
JP2020197662A (ja) * 2019-06-04 2020-12-10 清水建設株式会社 気象災害対応支援システム
CN112630864A (zh) * 2020-12-10 2021-04-09 中国人民解放军63796部队 一种高分辨率高空风的短期预报方法
WO2021215014A1 (ja) * 2020-04-24 2021-10-28 日本電信電話株式会社 学習装置、予測装置、学習方法、予測方法、学習プログラム及び予測プログラム
CN114910980A (zh) * 2022-06-08 2022-08-16 中国气象局上海台风研究所(上海市气象科学研究所) 基于主观路径强度预报和参数化风场模型的热带气旋大风风圈预报方法
WO2022259294A1 (ja) * 2021-06-07 2022-12-15 日本電信電話株式会社 早期被害予測装置、早期被害予測方法、及び、早期被害予測プログラム
WO2023243096A1 (ja) * 2022-06-17 2023-12-21 日本電信電話株式会社 推定装置、推定システム、推定方法、及びプログラム

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002286863A (ja) * 2001-03-28 2002-10-03 Songai Hokenryoritsu Santeikai 台風による風害評価システム
JP2003302478A (ja) * 2002-02-08 2003-10-24 Kyushu Electric Power Co Inc 熱帯性低気圧被害有無の判別方法および熱帯性低気圧被害予測方法および装置
WO2005083471A1 (en) * 2004-02-26 2005-09-09 Swiss Reinsurance Company Method and system for automated location dependent probabilistic tropical cyclone forecast

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002286863A (ja) * 2001-03-28 2002-10-03 Songai Hokenryoritsu Santeikai 台風による風害評価システム
JP2003302478A (ja) * 2002-02-08 2003-10-24 Kyushu Electric Power Co Inc 熱帯性低気圧被害有無の判別方法および熱帯性低気圧被害予測方法および装置
WO2005083471A1 (en) * 2004-02-26 2005-09-09 Swiss Reinsurance Company Method and system for automated location dependent probabilistic tropical cyclone forecast

Cited By (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013050417A (ja) * 2011-08-31 2013-03-14 Seiko Epson Corp 風向風速情報提供システム及び風向風速情報提供方法
JP2018503105A (ja) * 2014-12-22 2018-02-01 ユーザー−セントリック アイピー, エル.ピー.User−Centric Ip, L.P. 中規模モデリング
US11488034B2 (en) 2017-05-22 2022-11-01 Mitsubishi Heavy Industries, Ltd. State analysis apparatus, state analysis method, and program
WO2018216620A1 (ja) * 2017-05-22 2018-11-29 三菱日立パワーシステムズ株式会社 状態分析装置、状態分析方法、およびプログラム
JP2018195266A (ja) * 2017-05-22 2018-12-06 三菱日立パワーシステムズ株式会社 状態分析装置、状態分析方法、およびプログラム
CN110651192A (zh) * 2017-05-22 2020-01-03 三菱日立电力系统株式会社 状态分析装置、状态分析方法以及程序
TWI687699B (zh) * 2017-05-22 2020-03-11 日商三菱日立電力系統股份有限公司 狀態分析裝置、狀態分析方法、及記錄程式的記憶媒體
JP2020197662A (ja) * 2019-06-04 2020-12-10 清水建設株式会社 気象災害対応支援システム
JP7300896B2 (ja) 2019-06-04 2023-06-30 清水建設株式会社 気象災害対応支援システム
WO2021215014A1 (ja) * 2020-04-24 2021-10-28 日本電信電話株式会社 学習装置、予測装置、学習方法、予測方法、学習プログラム及び予測プログラム
CN112630864A (zh) * 2020-12-10 2021-04-09 中国人民解放军63796部队 一种高分辨率高空风的短期预报方法
CN112630864B (zh) * 2020-12-10 2022-11-22 中国人民解放军63796部队 一种高分辨率高空风的短期预报方法
WO2022259294A1 (ja) * 2021-06-07 2022-12-15 日本電信電話株式会社 早期被害予測装置、早期被害予測方法、及び、早期被害予測プログラム
CN114910980A (zh) * 2022-06-08 2022-08-16 中国气象局上海台风研究所(上海市气象科学研究所) 基于主观路径强度预报和参数化风场模型的热带气旋大风风圈预报方法
WO2023243096A1 (ja) * 2022-06-17 2023-12-21 日本電信電話株式会社 推定装置、推定システム、推定方法、及びプログラム

Also Published As

Publication number Publication date
JP5044243B2 (ja) 2012-10-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5044243B2 (ja) 被害関数作成方法、装置およびプログラム並びに台風被害予測方法、装置およびプログラム
Taszarek et al. Sounding-derived parameters associated with convective hazards in Europe
Yoshie et al. Cooperative project for CFD prediction of pedestrian wind environment in the Architectural Institute of Japan
Irwin et al. Wind tunnel testing of high-rise buildings
Zhang et al. Predicting Typhoon Morakot’s catastrophic rainfall with a convection-permitting mesoscale ensemble system
Powell et al. Estimating maximum surface winds from hurricane reconnaissance measurements
Wang et al. Joint distribution model for prediction of hurricane wind speed and size
KR20210030031A (ko) 사전 기상정보 연동 산사태 조기경보 방법 및 산사태 조기경보 시스템
JP2008050903A (ja) 洪水予測方法および洪水予測システム
Darestani et al. Effects of adjacent spans and correlated failure events on system-level hurricane reliability of power distribution lines
Tang et al. Dynamic modeling for noise mapping in urban areas
WO2019225064A1 (ja) 気象予測装置、気象予測方法、並びに風力発電出力推定装置
US20210026039A1 (en) System and method for forecasting snowfall probability distributions
Ouyang et al. A performance-based wind engineering framework for engineered building systems subject to hurricanes
Valamanesh et al. Wind-wave prediction equations for probabilistic offshore hurricane hazard analysis
Giachetti et al. A risk analysis procedure for urban trees subjected to wind-or rainstorm
Elsner et al. A spatial point process model for violent tornado occurrence in the US Great Plains
Marjerison et al. Does population affect the location of flash flood reports?
Lombardo et al. Approach to estimating near-surface extreme wind speeds with climate change considerations
Mitchell et al. Comparison of wind speeds obtained using numerical weather prediction models and topographic exposure indices for predicting windthrow in mountainous terrain
Wolter et al. Instability in eight sub-basins of the Chilliwack River Valley, British Columbia, Canada: A comparison of natural and logging-related landslides
Subramanian et al. Constructing and validating geographically refined HAZUS-MH4 hurricane wind risk models: A machine learning approach
Cusack Increased tornado hazard in large metropolitan areas
Yunxia et al. Comparison of extreme wind speeds predicted by Monte-Carlo simulation and empirical track model
Karstens Observations and laboratory simulations of tornadoes in complex topographical regions

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100112

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120501

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120622

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120710

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120713

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5044243

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150720

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees