JP2008222955A - 熱伝導性樹脂組成物及び熱伝導性樹脂成形体 - Google Patents

熱伝導性樹脂組成物及び熱伝導性樹脂成形体 Download PDF

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彰信 中村
Masatoshi Ichi
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Masanori Tomita
正憲 富田
Takashi Yanagisawa
隆 柳澤
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Abstract

【課題】樹脂が有する本来の成形加工性、軽量性、機械的強度等の実用特性が損なわれず、優れた熱伝導性を有し、熱伝導の方向性や移動量の制御が可能な異方的な熱伝導性を有する熱伝導性樹脂組成物や、その成形体を提供すること。
【解決手段】炭素繊維をマトリックス樹脂に分散した熱伝導性樹脂組成物であって、該炭素繊維が、少なくとも一部において繊維軸方向と略平行な軸を中心とする単層又は同心円状に積層したグラフェン構造を有し、1mm以上50mm以下の平均繊維長を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱伝導性、機械的強度、成形加工性、帯電防止性、電磁波遮蔽性に優れた熱導電性樹脂組成物や熱伝導性樹脂成形体に関する。
樹脂材料は、優れた成形加工性、軽量性、低コスト、耐腐食性等を有することから、電子部品、機械部品、自動車用部品、事務用品、家庭用の食器や電化製品の内・外装材等、種々の産業分野で重要な部材として利用されている。特に電子機器用途では、各種デバイスから発生する熱を効率よく放熱させるために熱伝導性が要求されるが、一般に樹脂材料は熱伝導性が充分ではなく、電子機器等の部品や筐体材料に適用した場合、放熱の妨げとなり、デバイスの故障や破壊を誘発する問題が生じる。
これに対し、樹脂の熱伝導性を向上する方法として、熱伝導性フィラーを添加する方法が一般に知られている。例えば、アルミナ、窒化ホウ素、カーボン等の熱伝導率の高い無機フィラーが広く用いられており、とりわけ、炭素繊維は、他のフィラーに比べて軽量であること、金属以上の熱伝導率を有すること、さらに毒性等の環境影響もほとんどないことから、実用性に優れた材料として注目されている。
例えば、ピッチ系炭素繊維を熱可塑性樹脂に50重量%の配合比で混練した高熱伝導性樹脂材料において1W/m・K未満の熱伝導率が得られることが報告されている(特許文献1)。また、直径が50〜200nmの微細な気相法炭素繊維(VGCF)を熱可塑性樹脂に混練することにより、70重量%の配合比で最大7.5W/m・Kの熱伝導率が得られることが報告されている(特許文献2)。2〜20mmの特定の繊維長を有するメソフェーズピッチ系炭素繊維を熱可塑性樹脂に混合し、射出成形することにより炭素繊維強化材料を得る方法(特許文献3)が開示されている。
更に、樹脂の溶融成形時に外部から強力な磁場あるいは電場を加えることにより、炭素繊維の磁気異方性を利用して一定方向に配向させ、特定方向の熱伝導性を向上させる方法(特許文献4)が報告されている。また、このような炭素繊維の異方性を利用し、カーボンナノチューブを含有した樹脂被膜を溶射により形成し、被膜面に沿ってカーボンナノチューブを配向させることにより、異方的な熱伝導性を得る方法(特許文献5)が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載される高熱伝導樹脂材料においては、炭素繊維を樹脂と同量の50重量%で配合したものでさえ、せいぜい1W/m・K程度の熱伝導率しか得られていない。この値はセラミックスや金属材料に比べると1桁〜2桁も低い。その理由の一つに、炭素繊維が凝集しやすい性質を持ち、樹脂中に分散させるのが困難なことが挙げられる。すなわち、炭素繊維は、化学的に不活性な表面構造を持ち、ほとんどの樹脂に対して親和性が乏しいため、樹脂中で分散し難く、多量に添加しないと優れた熱伝導性が得られない。これに対し、炭素繊維を分散させるために、強い剪断力により混練し、あるいは長時間混練した場合には、炭素繊維の破断が不可避的に生じ、熱伝導効果は著しく低下してしまう。
特許文献2に記載される複合材組成物に用いられている気相法炭素繊維は、ピッチ系炭素繊維に比べて優れた熱伝導率を有することが知られている。しかしながら、気相法で得られる微細な炭素繊維を樹脂に高配合比で添加した場合、その強い凝集力により溶融粘度が著しく増加し、成形加工性が低下するという製造プロセス上の問題が生じる。これが、熱伝導性樹脂の実用性や応用性を低下させる最大の原因となっている。
また、特許文献3に記載される熱伝導性成形体や、特許文献4に記載される異方性熱伝導被膜等においては、炭素繊維同士や樹脂との界面で、不可避的に生じる断続的な温度ドロップとなって、熱伝導率を著しく低下させる界面熱抵抗の影響を少なくする方法として、アスペクト比の大きな炭素繊維を一定方向に配向させる工夫が取られている。しかし、これらの成形体においては、炭素繊維が高濃度で添加された樹脂を用いているため、その配向により機械的な強度の低下が同時発生することになり、実用性に欠けるという問題がある。すなわち、高濃度の炭素繊維が一定方向に並んだ構造は、応力破壊の起因となる界面が存在することとなり、特定方向の応力に対しては極めて脆く、このような構造を有する樹脂は機械的強度の低下をもたらし、実用材料としては致命的な欠点となる。
さらに、近年のデバイスの高集積化、製品の小型化や多機能化に伴う発熱密度の増加により、電子機器や電子部品の放熱の問題は極めて深刻になってきている。特に、進歩がめざましいモバイル情報端末においては、低温火傷を生ずるほどの熱が素子から発生することが問題になっており、このため、熱を筐体にダイレクトに伝えるというだけでなく、材料自体の熱伝導の方向性や移動量を制御でき、安全に放熱を行える熱伝導性を有する材料が求められている。電子機器や電子部品に適用される材料においては、既存の樹脂やセラミックスあるいは金属固有の特性だけでなく、優れた熱伝導性を備えた新しい材料が必要であり、特に、樹脂材料に対して、その長所である成形加工性、軽量性、低コスト等の実用性を損なわずに、優れた熱伝導性及び熱の方向性が制御できるような熱伝導性を備えた材料が求められている。
特開2003−327836号公報 特開2005−325345号公報 特開2003−301048号公報 特開2003−200437号公報 特開2004−188286号公報
本発明の課題は、樹脂が有する本来の成形加工性、軽量性、機械的強度等の実用特性が損なわれず、優れた熱伝導性を有し、熱伝導の方向性や移動量の制御が可能な異方的な熱伝導性を有する熱伝導性樹脂組成物や、その成形体を提供することにある。
本発明者らは、熱伝導性に優れる炭素繊維と樹脂とのモルホロジーが熱伝導性や強度、流動性、成形性に強く影響することに着目し、炭素繊維のサイズや構造、マトリックス樹脂との相互作用、分散状態、粘度、成形方法、他の成分の影響等について詳細な解析を行い、これらと熱伝導性との関係について一つ一つ検証した。その結果、特定のサイズと構造を有する炭素繊維をマトリックス樹脂と非相溶な低分子有機化合物と共に樹脂に配合することによって、極めて少ない配合量で炭素繊維間の熱抵抗を大幅に低減し、高熱伝導化が実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
その経緯は以下のとおりである。炭素繊維の分散状態は、炭素繊維のサイズや形状、添加量のほか、表面状態、機械的強度、さらに溶融混練時の樹脂の流動性、剪断力、混練方法、成形方法といった諸々の要因が加わることが、本発明者らの実験によりわかった。従来の熱伝導性樹脂が、主にフィラーや樹脂の物性面、あるいは成形加工等における機械的作用のいずれか一方に着目して設計されていたのに対して、本発明者らは、樹脂と炭素繊維間に生じる物理化学的作用に加え、混合から成形に至るまでの各過程での外的要因、すなわち非平衡的要因を含めた相互作用を検討した。炭素繊維の分散状態は、幾何学的要因のほか、熱伝導にかかわる物理的要因、さらに樹脂と炭素繊維間等における化学的要因、混合、成形加工時の機械的要因が影響しているため、これらの相互バランスを考慮し、最適な炭素繊維条件を導出するため、最終的に形成するモルホロジーを予め想定した。予め想定した理想のモルホロジーに近似したモルホロジーを構築するために、混合から成形に至るまでの外的要因を把握することが重要であり、特に繊維状のフィラーでは、物性を著しく損ねてしまう繊維破断の影響、即ち、不必要な剪断力の影響を極力排除することが重要な鍵となる。
このようなモルホロジーの形成のため、炭素繊維自体の構造や熱伝導率を向上させることにより、炭素繊維の添加量を少なくし、炭素繊維の添加による樹脂の溶融粘度増加による剪断力増加を抑制することを可能とすることに着目して研究を進めた。気相法で合成されたグラファイト性の炭素繊維は、その結晶性の高さから、熱伝導率が高く、カーボンナノチューブに見られるグラフェンシートが繊維軸中心付近から同心円状に積層した構造の気相法炭素繊維は、繊維軸方向の熱伝導率が非常に高く、ダイヤモンドに匹敵すると言われている。このような構造の炭素繊維は、従来は繊維長がナノサイズ、サブミクロンサイズ程度のものしか得られていなかったが、ミリオーダー以上の繊維長を有するものが合成されている。これらについて樹脂との相関性について検証を行った。その結果、特定のサイズと構造を持った炭素繊維と、これと相互作用を持つ低粘性の有機化合物とを微量添加することによって、樹脂の溶融粘度を低下させ、溶融樹脂中において、炭素繊維は十分に分散し、かつ、個々の炭素繊維同士は、お互いに接触あるいは近接した状態を形成する。そして、樹脂中で、炭素繊維による幾何学的なネットワーク効果が生まれ、炭素繊維間を伝導する熱の発散や減衰が大幅に抑えられ、その結果、炭素繊維本来の高い熱伝導性が有効に引き出され、樹脂の熱伝導にダイレクトに反映されるため、少ない炭素繊維量で、極めて高い熱伝導性を樹脂に付与し得ることを見い出した。また、炭素繊維は、形状由来の異方的な熱伝導性を有しているが、樹脂の溶融時に流動方向や成形面へ配向させることによって、樹脂自体も異方的な熱伝導性を示すようになる。このような異方熱伝導性は、電子機器筐体等において熱の伝導方向を制御したい場合には特に有効である。
更に、特定のサイズの炭素繊維が幾何学的なネットワークを形成して分散した樹脂においては、炭素繊維の配向による機械的強度の低下はほとんどなく、むしろ、機械的補強効果が得られる上、樹脂の溶融粘度の低下により、成形加工性が大幅に改善され、一般的な成形加工方法の適用も可能になり、理想的なモルホロジーが得られることを確認した。
すなわち、本発明は、マトリックス樹脂、該マトリックス樹脂に非相溶な低分子有機化合物、及び炭素繊維とを含む熱伝導性樹脂組成物であって、該炭素繊維が、少なくとも一部において繊維軸方向と略平行な軸を中心とする単層又は同心円状に積層したグラフェン構造を有し、1mm以上50mm以下の平均繊維長を有することを特徴とする熱伝導性樹脂組成物に関する。
本発明の熱伝導性樹脂組成物によれば、マトリックス樹脂が有する本来の成形加工性、軽量性、機械的強度が損なわれず、優れた熱伝導性を有し、かつ熱伝導の方向性や移動量の制御が可能な異方的な熱伝導性を有する成形体を得ることができる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、マトリックス樹脂、該マトリックス樹脂に非相溶な低分子有機化合物、及び炭素繊維とを含む熱伝導性樹脂組成物であって、該炭素繊維が、少なくとも一部において繊維軸付近から同心円状にグラフェンシートが積層した構造を有し、1mm以上50mm以下の平均繊維長を有することを特徴とする。
本発明の熱伝導性樹脂組成物に用いられるマトリックス樹脂としては、成形分野で使用される樹脂を用いることができ、成形する成形体に要請される特性に応じて選択して適用することができる。かかるマトリックス樹脂としては、例えば、ABS等のポリスチレン系樹脂や、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。ポリエステル樹脂は、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性、加工性等の実用面での特性に優れているばかりでなく、種々のフィラーや他の樹脂との配合が容易に行えるなどの利点がある。上記ポリエステル系樹脂としては、合成ポリエステルであってもよいが、生分解性のポリエステル系樹脂が環境破壊を抑制することができる点から好ましい。生分解性のポリエステル系樹脂としては、バイオマス由来系樹脂やその誘導体を挙げることができる。バイオマス由来系樹脂とは、バイオマスを原料として作られる樹脂を主成分に含む樹脂をいい、その誘導体とは、分子構造の一部が、他の化合物や官能基により置換され、又は変性されたものをいう。バイオマス由来系樹脂は、石油系樹脂に比べて生体親和性に優れており、人体や生物に直接接触するような機器あるいは部品材料等において特に好ましく、省資源対策、CO2排出低減等、材料自体に内在する環境負荷を大幅に削減できる効果を有する。このようなバイオマス由来系樹脂としては、具体的には、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、酢酸セルロース、澱粉樹脂等を挙げることができ、その誘導体としては、芳香族カルボン酸、脂環式カルボン酸、飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール等との共重合体等を挙げることができる。これらのポリエステル樹脂は、他の熱可塑性樹脂と任意に混合して用いることができる。
また、上記熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、ウレタン系樹脂等を挙げることができる。特にエポキシ系樹脂は、電気絶縁性、機械的特性、耐熱性、耐薬品性等に優れ、プリント基板や半導体パッケージ等発熱量の大きい電子機器に汎用的に用いられており、好適に用いることができる。エポキシ系樹脂は、分子内にエポキシ基を含む化合物、又はエポキシ基の3次元的な架橋によって得られる樹脂であり、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノバラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等を挙げることができ、これらは通常用いられる、アミン系、フェノール系、酸無水物系等の硬化剤と混合して用いることができる。このようなエポキシ系樹脂は、種類の異なるエポキシ系樹脂あるいは他の熱硬化性樹脂と任意に混合して用いることができる。さらに、適切な添加量であれば、他の熱可塑性樹脂と混合して用いることができる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物に用いる炭素繊維は、少なくとも一部において繊維軸方向と略平行な軸を中心とする単層又は同心円状に積層したグラフェン構造を有するものである。単層又は同心円状に積層したグラフェン構造を有するものとしては、グラフェン構造を有するグラフェンシートが筒状となった単層のCNT(single-walled carbon nanotube)又は同心筒状の積層構造のMWCNT(multi-walled carbon nanotube)構造を有するものであり、同心筒状カーボンチューブの直径、積層数等いずれであってもよい。これらの筒状グラフェン構造の炭素繊維は、繊維軸方向に対する異方的な結晶構造のため、ダイヤモンド並みの熱伝導率を有しており、樹脂に対してより高い熱伝導性を付与することができる。これら、CNT、MWCNTはアーク放電法、レーザ蒸着法、化学気相成長法(CVD法)等により合成されたものであってよい。このようなグラフェン構造を有する炭素繊維の含有量としては、炭素繊維全体に対し、例えば、25質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。
上記炭素繊維としては、CNT、MWCNT以外のものを含有していてもよく、筒状でないグラフェン構造や、グラファイト構造を有していないものを含んでいてもよい。これらの炭素繊維としては、PAN系、ピッチ系等いずれであってもよく、アーク放電法 、レーザー蒸発法、CVD法(化学気相成長法)、CCVD法(触媒化学気相成長法)など、任意の原料あるいは合成方法で作製したものを用いることができる。これらのうち炭化水素ガスを原料として気相法で合成された炭素繊維は、結晶性に優れ、熱伝導性の高いものが得られやすいため、好ましく、更に、非酸化性雰囲気下で1500℃以上で結晶化処理された黒鉛性の炭素繊維は、結晶性が向上し、熱伝導性が向上され、強度的にも強く、樹脂に対して、より大きな補強効果を付与することができるため、より好ましい。
上記炭素繊維は、繊維軸方向の熱伝導率が1000W/m・K以上であることが好ましい。上記筒状グラフェン構造を有する炭素繊維を一部に含むことにより、炭素繊維は高い熱伝導率を有し、少量で樹脂の熱伝導率を向上させることができる。ここで、熱伝導率は、レーザーフラッシュ法、平板熱流計法、温度波熱分析法(TWA法)、温度傾斜法(平板比較法)、周期加熱法(3ω法)、カロリメトリ法等の測定法による実測値、あるいは熱伝導率以外の物性値及び炭素材料の統計的データから外挿法により推定される試算値を採用することができる。
上記炭素繊維の平均繊維長は、1mm以上50mm以下である。このような繊維長を有する炭素繊維は、凝集しにくく、取り扱いが容易である上、樹脂中に分散しやすいという特徴がある。また、樹脂中に分散した炭素繊維が数%の低配合量であっても、炭素繊維同士が幾何学的に接触し合う状態が形成でき、熱伝導性の向上において極めて重要な効果が得られる。更に、樹脂の成形時には面方向に配向し易く、異方的な熱伝導性も得られやすい。例えば、電子機器の部品や筐体の成形体の厚さは、薄いもので1mm程度であり、成形体の厚さ以上の長さの炭素繊維が、特に面方向に配向し易い。炭素繊維の繊維長が1mm以上であれば、薄肉の筐体や部品に用いられても面方向に容易に配向し、50mm以下であれば、射出成形でのノズル詰まりや、成形体の反りや変形等を抑制することができる。
ここで炭素繊維の平均繊維長は顕微鏡観察、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法、画像解析法等の測定方法により得られる繊維長を平均して求めた値を採用することができる。
上記炭素繊維の繊維径は、1μm以上100μm以下であることが好ましい。炭素繊維の平均径が1μm以上であれば、樹脂中への分散が容易で、嵩密度が小さいことによる浮遊等が少なく取扱いが容易で作業性に優れる一方、100μm以下であれば、樹脂中への均一な分散が容易で、射出成形の際のノズル詰まりや、成形体の表面に露出して外観不良の発生を抑制することができる。炭素繊維の繊維径については、顕微鏡法、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法、画像解析法等の測定方法により求めた値を採用することができる。
上記炭素繊維は、上記範囲の平均繊維長、平均径を有することから、アスペクト比として、30以上50000以下を有することになる。
上記炭素繊維は、必要に応じて、表面処理して用いることができる。具体的には、湿式処理、気相処理、機械的処理等の物理化学的処理等を挙げることができる。このような表面処理により、少なくとも表面の一部に、酸素含有基、窒素含有基、若しくは硫黄含有基のいずれか1種又は2種以上の極性基が付与された炭素繊維は、ポリエステル樹脂等のマトリックス樹脂との化学的な相互作用が強化されるため、成形体において機械的強度が向上する効果が得られる。例えば、酸化性雰囲気中で、200℃以上で熱処理することにより、炭素繊維表面には薄い酸化層が形成される。また、酸化処理や窒化処理、ニトロ化、スルホン化、又はこれらの処理によって表面に極性基が形成され、これらの極性基又は炭素繊維に直接、金属、金属化合物、有機化合物等が付着若しくは結合したものは、マトリックス樹脂との化学的、物理的結合が形成され、成形体において機械的強度が向上する。さらに、炭素繊維表面を、フッ素処理などで疎水化することにより、表面を疎水化し、極性の低い樹脂とより強い相互作用を示すようにしてもよい。上記表面処理を行った炭素繊維は、未処理の炭素繊維と共に、適宜、併用して添加することができる。
上記炭素繊維は、組成物の総量に対して1〜50質量%で含有されることが好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。配合比が1質量%以上であれば、高熱伝導性が得られ、含有量が50重量%以下であれば、体積分率の増加による炭素繊維同士の絡み合いによる樹脂溶融粘度の増加を抑制し、良好な成形加工性を有するものとなる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物には、マトリックス樹脂に非相溶な低分子有機化合物が含有される。上記有機化合物は、樹脂と炭素繊維との溶融混合において、その溶融粘度が当該マトリックス樹脂よりも低く、かつ融点がマトリックス樹脂よりも低いことが好ましい。そのような有機化合物を用いることで、組成物の溶融粘度が有効に低下し、流動性が向上するために、炭素繊維の分散性が格段に上昇される。また、上記有機化合物の極性あるいは溶解度パラメーター(以下、SP値と表記する)は、マトリックス樹脂の値よりも低く、その差がマトリックス樹脂のSP値の1〜30%の範囲にあることが好ましい。これは、特に熱伝導率が高い炭素繊維では、表面が化学的に不活性な疎水構造になっており、極性あるいはSP値の低い樹脂とより強い相互作用を持つことで、炭素繊維の分散性を向上させ得るからである。更に、上記範囲のSP値を有する有機化合物は、マトリックス樹脂中に分散粒子となって分散し、分散粒子中又はその表面に炭素繊維が接触して炭素繊維を2次元的に接触させるバインダー的作用も有する。
ここで、SP値としては、定性的な見地から、汎用的に用いられる原子団寄与法(the group contribution method)を用いて理論的に算出した値を適用することができる。具体的には、数式(1)を用いて算出することができる。算出に必要となる各物性値については、文献値(例えば、D.W.Van Krevelen and P.J.Hoftyzer,PROPERTY OF POLYMERS:THEIR ESTIMATION AND CORRELATION WITH CHEMICAL STRUCTURE,Elsevier,New York,1976に記載)、あるいは実験値の何れを用いてもよい。
δ:溶解度パラメーター(SP値)
Ecohi:各原子団のモル凝集エネルギー
EVmi:各原子団のモル体積
上記低分子有機化合物は、マトリックス樹脂中において、平均粒子径として、0.5〜200μmの範囲で分散していることが好ましい。低分子有機化合物の平均粒子径が0.5μm以上であれば、可視光域での光学的な非相溶性が認められ、非相溶性に基づき、炭素繊維とのネットワーク構造を形成し、熱伝導性の向上を図ることができる。一方、平均粒子径が200μm以下であれば、マトリックス樹脂中での凝集を抑制することができ、マクロ相分離による界面破壊等を抑制することができる。ここで平均粒子径は顕微鏡法による測定値とすることができる。
上記低分子有機化合物は、エステル化合物、オレフィン化合物、カーボネート化合物、又はアミド化合物であって、融点が80℃〜200℃であり、分子量が2000以下の低分子化合物であることが好ましい。このような低分子量の有機化合物は、ポリエステル樹脂などのマトリックス樹脂に対して、加水分解やエステル交換反応等による分子量低下等の問題を生じ難く、溶融粘度も低いため、マトリックス樹脂に容易に微分散するという利点がある。また、有機化合物の融点が80℃以上であれば、電子機器などの発熱を伴う製品の部品や筐体に用いた場合には、筐体が軟化するのを抑制し、成形体から溶出することが抑制される。一方、融点が200℃以下であれば、成形加工温度を低く抑えることができ、とりわけ、熱分解し易いポリ乳酸などの生分解性ポリエステル樹脂において成形加工過程での熱分解を抑制し、ガスの発生や、変色を抑制することができる。
上記低分子有機化合物として、分子構造の主鎖の炭素数が8〜44であり、分子量が200〜1500、より好ましくは300〜1000である脂肪族カルボン酸アミド、芳香族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等の結晶性有機化合物であることが好ましい。このような特定の炭素数と分子量を持つ結晶性の有機化合物は、植物性油脂や動物性油脂等の天然油脂から合成できるものが多く、特に、ひまし油由来のカルボン酸アミドが好ましい。これらは、取り扱いが容易であることに加えて、安価で得られることが多い。しかも、マトリックス樹脂が結晶性樹脂の場合には、結晶核剤として作用し、成形サイクルを大幅に短縮できる効果が得られる。更に、これらの低分子有機化合物としては、分子中に1つ又は2つ以上の極性基が導入されたものを適用することができる。かかる極性基としては、例えば、水酸基やカルボキシル基、グリシジル基等の酸素含有基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、イソシアネート基等の窒素含有基、フッ素含有基等を挙げることができる。これらの極性基を有する低分子有機化合物は、炭素繊維を含む無機フィラーと相互作用を持ちつつ、マトリックス樹脂に対して水素結合等の物理化学的作用を持つため、マトリックス樹脂と炭素繊維等との双方に対してそれぞれの相互作用を強化するバインダー的な効果が強化され、成形体において機械的強度が向上する。
上記低分子有機化合物としては、具体的に、ラウリン酸アミド、リシノール酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、アラキン酸アミド、エルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、p−キシリレンビスステアリン酸アミド等のカルボン酸アミド、また、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、オレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、エルカ酸エステル、N−オレイルパルミチン酸エステル、N−オレイルオレイン酸エステル、N−オレイルステアリン酸エステル、N−ステアリルオレイン酸エステル、N−ステアリルステアリン酸エステル、N−ステアリルエルカ酸エステル、メチレンビスステアリン酸エステル、エチレンビスラウリン酸エステル、エチレンビスカプリン酸エステル、エチレンビスオレイン酸エステル、エチレンビスステアリン酸エステル、エチレンビスエルカ酸エステル、エチレンビスイソステアリン酸エステル、ブチレンビスステアリン酸エステル、p−キシリレンビスステアリン酸エステル等のカルボン酸エステル、これらの分子中の一部に上記極性基が導入された化合物等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、特に、ひまし油由来のリシノール酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、アラキン酸アミド、又はこれらの誘導体を好ましいとして挙げることができる。
上記低分子有機化合物は、組成物の総量に対して0.5〜30質量%で配合することが好ましく、より好ましくは1〜20質量%である。低分子有機化合物の含有量が0.5質量%以上であれば、組成物の溶融粘度を充分に低く抑えることができ、炭素繊維を充分に分散させることができる。低分子有機化合物の含有量が30質量%以下であれば、微分散した低分子有機化合物の凝集を抑制し、マクロ相分離により機械的強度が低下するのを抑制すると共に、成形体の表面への露出を抑制し、外観不良や塗装不良の発生を抑制することができる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物には、上記成分の他、必要に応じて、上記成分の機能を阻害しない範囲において、添加剤を含有させることができる。かかる添加剤としては、例えば、補強剤、難燃剤、発泡剤、劣化防止剤、結晶核剤、着色剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、耐光剤、加工安定剤、抗菌剤、防かび剤、可塑剤等を挙げることができる。補強剤としては、マイカやタルク等の充填剤、アラミドやポリアリレート等の有機繊維やガラス繊維、さらにケナフのような植物繊維等を使用することができる。難燃剤としては、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、メラミンやイソシアヌル酸化合物等の窒素系難燃剤、リン酸化合物等のリン系難燃剤等を使用することができる。また、種々の無機系あるいは有機系結晶核剤、酸化チタン等の着色剤、ラジカルトラップ剤、酸化防止剤、加水分解抑制剤等の安定剤、銀イオン等の抗菌剤を適宜、配合することができる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物の製造方法としては、各種成分を公知の装置により混合し、適宜加熱して混合する方法を挙げることができる。公知の装置としては、ハンドミキシング、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、単軸や多軸混合押出機、ロール等を挙げることができる。これらの中で、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、単軸押出機などの比較的混合力が弱いものを用いることが、混合中における炭素繊維の破断や粉砕が抑制されるため好ましい。
本発明の熱伝導性樹脂成形体は、上記熱伝導性樹脂組成物を用いたものであれば、いずれであってもよく、シート状、平板状のもの、電気機器、電子機器の基板や筐体等に好適に適用することができる。
上記熱伝導性樹脂成形体の成形方法としては、公知の方法を適用することができ、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形法等、樹脂成形方法を挙げることができる。これらの溶融混合や成形時における温度については、マトリックス樹脂の融点以上で、かつそれぞれの成分の劣化しない範囲を選択することができる。
また、上記熱伝導性樹脂成形体の表面に、熱伝導性の異なる樹脂からなる被膜を設けてもよい。被膜としては、具体的には、炭素繊維の構造、繊維長、濃度、添加量、炭素繊維の配向方向等が異なる樹脂、配合成分の異なる樹脂等を原料とし、積層あるいは薄膜に成形したものを挙げることができる。このような積層構造あるいは薄膜からなる被膜が形成された熱伝導性樹脂成形体は、熱伝導性の方向性を3次元的に制御することも可能であり、特に、電子機器の筐体等に有効である。
以下に、本発明の熱伝導性樹脂組成物および成形体を具体的に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
[実施例1〜10、比較例1〜7]
市販のポリ乳酸(ユニチカ製、融点170℃、δ=21〜22[J/cm31/2)に対し、表1に示す炭素繊維、表2に示す有機化合物について、表3〜5に示す配合量(表中の数値は質量%を表す。)で、190〜200℃で約1分間かけてハンドミキシングにより混合した。得られた混合物を、175℃の条件で圧縮成形し、70×70×2mmの平板のサンプルを作製した。得られたサンプルについて、以下の熱伝導性評価及び機械的強度試験を行った。
[熱伝導性評価]
材料の熱伝導率と熱容量がバランスして得られる成形体表面の温度拡散変化について評価した。
[面内熱伝導性]
サンプルを支持台に固定し、予め80℃に加熱したラバーヒーターでサンプルの一部に定常熱を負荷した。ラバーヒーターとの接触部分からサンプル全体に熱が拡散していく様子を赤外線サーモトレーサー(NEC三栄製 サーモスキャナTS5304)で測定し、サーモグラフィ解析により、面内熱伝導性を評価した。既知の放射率を有する黒体塗料をサンプル表面に塗装して測定に供した。図1(a)に示すサンプルの熱伝導性aと図1(b)に示すステンレス板の熱伝導性bとを比較し、以下の基準により評価した。
◎:同形状のステンレスに比べて1分後の熱の広がり(高さ)が1.5倍以上向上
○:同形状のステンレスに比べて1分後の熱の広がり(高さ)が0.9倍以上1.5倍未満
△:同形状のステンレスに比べて1分後の熱の広がり(高さ)が0.5倍以上0.9未満。
×:同形状のステンレスに比べて1分後の熱の広がり(高さ)が0.5倍未満。
[異方熱伝導性]
アルミニウム台の上にサンプルを置き、その上から予め80℃に加熱した分銅を置いて、定量熱を負荷した。分銅の設置から一定時間内に広がる熱の様子を、上記同様、サーモトレーサーにより測定した。このときの平面内の熱の広がりを調べることにより、面方向に対する異方熱伝導性を評価した。図2(a)に示すサンプルの異方性伝熱性面積aと、図2(b)に示すステンレス板の異方性伝熱性面積bとを比較し、以下の基準により評価した。
○:同形状のステンレスに比べ、1分後の熱の広がり(面積)が1.5倍以上。
△:同形状のステンレスに比べ、1分後の熱の広がり(面積)が1.1倍以上1.5倍未満。
×:同形状のステンレスに比べ、1分後の熱の広がり(面積)が1.1倍未満。
[機械的強度]
成形体の機械的強度について、JIS規格K7203に基づき万能試験機(インストロン製 5567)を用いて曲げ強度試験を行った。サンプルは、何れも110℃で2時間アニールしてから測定した。評価基準は、以下の通りとした。
◎:ポリ乳酸のみに比べて曲げ弾性率、曲げ歪みが共に20%以上増加
○:ポリ乳酸のみに比べて、曲げ弾性率、曲げ歪みの一方が15%以上増加
△:ポリ乳酸のみに比べて、弾性率、曲げ歪みの一方が15%以上低下
×:ポリ乳酸のみに比べて弾性率と曲げ歪みが共に20%以上低下
実施例1〜10では、長さが1mm未満の短繊維の炭素繊維及びグラフェンシートが同心円状構造を有さない炭素繊維を加えた比較例1〜4に比べ、いずれも熱伝導性が向上した。特にグラフェンシートが同心円状構造の長繊維の炭素繊維B、Cを5質量%以上加えた実施例2、3、9、10では、熱伝導性が大きく改善された。これらの実施例のサンプルの体積密度の増加比は、マトリックス樹脂のポリ乳酸に比べて何れも1.2倍未満であり、ほぼ軽量性が維持されている。また、機械的強度についてもマトリックス樹脂のポリ乳酸に比べ、少なくとも剛性又は靱性のいずれかの向上が認められており、本発明における炭素繊維のネットワーク構造による補強効果が示されている。
一方、炭素繊維の添加量が0.5質量%と著しく少ない比較例5や、ポリ乳酸に相溶のポリブチレンサクシネート(三菱化学製)を加えた比較例6、及び有機化合物を全く加えなかった比較例7では、熱伝導性はステンレスよりも大幅に劣った。特に比較例6と比較例7では、樹脂と炭素繊維を溶融混練する際に著しい粘度増加が生じ、成形加工性(流動性)の低下が認められた。
上記結果は、同心円状のグラフェンシート構造を一部に有する長繊維の炭素繊維と、これに非相溶かつ低分子の有機化合物が相互作用することによって形成されるネットワーク構造、すなわちモルホロジーの制御効果に加え、優れた熱伝導性と、成形加工性や機械的強度特性が得られることを明確に示している。また、わずか5質量%程度の炭素繊維の配合量であっても、ステンレスより優れた熱伝導性と面方向の異方的な熱伝導性が得られるため、樹脂本来の成形加工性や軽量性を損なうことなく、機械的強度を向上できる熱伝導性樹脂が得られることが明らかである。
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、電子機器等の発熱を生じる機器の筐体や部品への適用、家電製品、電池材料、熱エネルギー変換材料、自動車部品、航空部品、鉄道部品、宇宙分野等の高度な熱伝導性が必要とされる材料分野全般に適用できる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物の一例から得られる成形体(a)の熱伝導性を従来例(b)との比較において示すサーモグラフィーを示す図である。 本発明の熱伝導性樹脂組成物の一例から得られる成形体(a)の異方性熱伝導性を従来例(b)との比較において示すサーモグラフィーを示す図である。

Claims (21)

  1. マトリックス樹脂、該マトリックス樹脂に非相溶な低分子有機化合物、及び炭素繊維とを含む熱伝導性樹脂組成物であって、該炭素繊維が、少なくとも一部において繊維軸方向と略平行な軸を中心とする単層又は同心円状に積層したグラフェン構造を有し、1mm以上50mm以下の平均繊維長を有することを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。
  2. 炭素繊維が、繊維軸方向に対して1000W/m・K以上の熱伝導率を有することを特徴とする請求項1記載の熱伝導性樹脂組成物。
  3. 炭素繊維が、非酸化性雰囲気下で結晶化処理された黒鉛性の炭素繊維を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の熱伝導性樹脂組成物。
  4. 炭素繊維が、30以上50000以下のアスペクト比を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  5. 炭素繊維が、1μm以上30μm以下の平均直径を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  6. 炭素繊維が、総質量に対して1〜50質量%含有されたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  7. 炭素繊維が、酸素含有基、窒素含有基、若しくは硫黄含有基のいずれか1種又は2種以上の極性基を有し、又は、金属、金属化合物、若しくは有機化合物のいずれか1種又は2種以上を結合若しくは付着していることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  8. マトリックス樹脂に非相溶な低分子有機化合物の分散粒子中又はその表面に2つ以上の炭素繊維が接触していることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  9. 低分子有機化合物の分散粒子中又は表面に接触した2つ以上の炭素繊維が、2次元的に接触していることを特徴とする請求項8記載の熱伝導性樹脂組成物。
  10. 低分子有機化合物が、エステル化合物、オレフィン化合物、カーボネート化合物、又はアミド化合物であって、2000以下の分子量、80℃以上200℃以下の融点を有する化合物のいずれか1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項8又は9記載の熱伝導性樹脂組成物。
  11. 低分子有機化合物が、植物性油脂、動物性油脂、若しくはこれらから合成されるワックスの1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  12. 低分子有機化合物が、主鎖の炭素数が8〜44であり、分子量が200〜1500であり、極性基を有していてもよい脂肪族カルボン酸アミド、芳香族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸エステル、又は芳香族カルボン酸エステルのいずれか1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項8から11のいずれか記載の熱伝導性樹脂組成物。
  13. 極性基が、酸素含有基又は窒素含有基のいずれか1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項12記載の熱伝導性樹脂組成物。
  14. アミド化合物が、ひまし油由来のカルボン酸アミド化合物を含むことを特徴とする請求項10から13のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  15. 低分子有機化合物が、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、アラキン酸アミド、又はこれらの誘導体を含むことを特徴とする請求項10から14のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  16. 低分子有機化合物が、総質量に対して0.5〜30質量%含有されることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  17. マトリックス樹脂が、ポリスチレン系樹脂又はポリエステル系樹脂のいずれか1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  18. マトリックス樹脂が、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート、酢酸セルロース、澱粉樹脂、若しくはこれらの誘導体、又は、これらの石油系ポリエステル樹脂とのアロイのいずれか1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  19. マトリックス樹脂が、エポキシ系樹脂を含むことを特徴とする請求項1から18のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  20. 請求項1から19のいずれかに記載される熱伝導性樹脂組成物を用いたことを特徴とする熱伝導性樹脂成形体。
  21. 請求項1から19のいずれかに記載される熱伝導性樹脂組成物を含む長さ1mm以上50mm以下のペレットを用いて射出成形されたことを特徴とする熱伝導性樹脂成形体。
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