JP2008220291A - 等温条件下において行うpcr法 - Google Patents
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Abstract
【課題】反応溶液量が微少容量である場合に、高精度かつ簡便にPCR増幅する方法の提供。
【解決手段】各工程を等温条件下において行うPCR法であって、a)標的塩基配列を有する鋳型核酸と前記標的塩基配列をPCR増幅するために用いられるプライマーからなるプライマーセットとPCRに供されるヌクレオチドを有するPCR反応溶液を調製する工程と、b)PCR反応溶液にアルカリ変性液を添加して攪拌することにより鋳型核酸を一本鎖に解離させる変性工程と、c)工程(b)により得られたPCR反応溶液に中和液を添加して攪拌することにより一本鎖の鋳型核酸とプライマーがアニーリング可能なpHに調整する中和工程と、d)工程(c)により得られたPCR反応溶液にDNAポリメラーゼ溶液を添加して攪拌することにより前記標的塩基配列をPCR増幅する増幅工程と、e)前記工程(b)〜(d)を2回以上繰り返す工程とを有し、前記攪拌が表面弾性波処理等であることを特徴とするPCR法。
【選択図】なし
【解決手段】各工程を等温条件下において行うPCR法であって、a)標的塩基配列を有する鋳型核酸と前記標的塩基配列をPCR増幅するために用いられるプライマーからなるプライマーセットとPCRに供されるヌクレオチドを有するPCR反応溶液を調製する工程と、b)PCR反応溶液にアルカリ変性液を添加して攪拌することにより鋳型核酸を一本鎖に解離させる変性工程と、c)工程(b)により得られたPCR反応溶液に中和液を添加して攪拌することにより一本鎖の鋳型核酸とプライマーがアニーリング可能なpHに調整する中和工程と、d)工程(c)により得られたPCR反応溶液にDNAポリメラーゼ溶液を添加して攪拌することにより前記標的塩基配列をPCR増幅する増幅工程と、e)前記工程(b)〜(d)を2回以上繰り返す工程とを有し、前記攪拌が表面弾性波処理等であることを特徴とするPCR法。
【選択図】なし
Description
本発明は、微小容量であっても、各工程を等温条件下において行うことのできるPCR(Polymerase Chain Reaction)法、該PCR法に用いられるPCR装置、及び該PCR法に用いられるPCR用キットに関する。
近年、ヒトや動植物等の生命現象を遺伝子レベルで解明するための研究が活発に続けられている。このような研究の重要な手段として、遺伝子操作技術や遺伝子組換え技術等がある。生物の遺伝情報は、遺伝子DNAに塩基配列として格納されており、このような塩基配列の解析を行うために、被分析サンプルのDNAを多量に増幅する必要性が生じている。特に、一塩基多型(SNP)検出や遺伝的変異の検出等の遺伝子解析では、被分析サンプルが微量である場合や、非常に多くの被分析サンプルを解析する場合が多いため、多数のサンプルを、微少容量で効率よくDNA増幅ができる簡便な手法の開発が望まれている。
DNAを多量に増幅する手段として、PCR(Polymerase Chain Reaction、ポリメラーゼ連鎖反応)法が1985年にマリス(Mullis)らにより開発された。PCR法は、解析の目的である標的塩基配列を挟んだ2種類のプライマーからなるプライマーセットと、DNAポリメラーゼによるDNAポリメラーゼ反応を繰り返すことにより、該標的塩基配列を数十万倍に増幅する方法である。該方法は、その後、耐熱性酵素Taqポリメラーゼを利用した方法に改良されたことで、効率の良いPCR法として確立された。PCR法は基本的に、(1)変性工程、(2)アニーリング工程、及び(3)伸張工程の3つの工程1サイクルとし、該サイクルを25〜30回繰り返すことにより特定の標的塩基配列を増幅していく(例えば、非特許文献1参照。)。該PCR反応によって、nサイクル後には理論的には標的塩基配列は2n倍に増幅されることになる。実際には、増幅が進むとともに、増幅塩基配列同士のアニーリングが起こるため、PCR反応が頭打ちになり、数十万倍程度の増幅となる。
通常用いられているPCR法は、加熱変性式であり、具体的には、先ず、(1)94℃付近で7分間加熱し、二本鎖DNAを熱変性により一本鎖に変性した後、Taqポリメラーゼを加える。続いて、(2)54℃付近、30秒間加熱し、一本鎖になったDNAとプライマーとのアニーリングを行う。次に、(3)72℃付近、1分間加熱し、TaqポリメラーゼによりDNA鎖を伸長させる。次に、(4)再びDNA加熱変性を行うが、2回目以降のDNA加熱変性は94℃付近で1分間加熱することにより行う。以上の工程(2)〜(3)〜(4)のサイクルを1サイクルとし、該サイクルを29回繰り返すが、最後のサイクルでは工程(3)を72℃付近、7分間加熱した後、PCRを終了する。
上記加熱変性式PCR法では、変性工程、アニーリング工程、及び伸長工程のそれぞれの工程毎に温度が大きく異なるため、PCR反応溶液の温度を昇降させる必要がある。通常、温度制御のために特殊な装置や容器を用いてPCRを行っているが、高精度にPCR反応溶液の温度制御を行うことは、困難である場合が多い。特に、90〜98℃の変性作業と、50〜70℃のアニーリング作業は、連続工程であり、アニーリング温度がPCR反応溶液に正確に伝達すること、すなわち、PCR反応溶液の熱追従性を保たせることは難しい。各工程における反応時間を延長することにより、PCR反応溶液の熱追従性の問題は解決できるが、総反応時間が長くなることに加え、DNAポリメラーゼに過剰な熱が加わるため、効率のよいPCR増幅反応を維持できるサイクル数が抑えられる、という問題が生じる。さらに、高温条件下でPCRを行うため、PCR反応溶液の水分の蒸発制御が困難であるという問題もある。
また、アニーリング工程では、各プライマーに適したアニーリング温度にする必要があるため、アニーリング温度が異なる場合には、それぞれ別個にPCR増幅を行わなければならない。
その他、上記加熱変性式PCR法では、耐熱性のDNAポリメラーゼを使用するが、該耐熱性DNAポリメラーゼは、通常高価であり、経済的にはあまり好ましくない。該耐熱性DNAポリメラーゼは、非耐熱性DNAポリメラーゼに比べて、校正機能が劣るため、フィデリティが低いという問題もある。
その他、上記加熱変性式PCR法では、耐熱性のDNAポリメラーゼを使用するが、該耐熱性DNAポリメラーゼは、通常高価であり、経済的にはあまり好ましくない。該耐熱性DNAポリメラーゼは、非耐熱性DNAポリメラーゼに比べて、校正機能が劣るため、フィデリティが低いという問題もある。
加熱変性式以外のPCR法として、化学変性式、特にアルカリ変性式のPCR法が提案されている。アルカリ変性式PCR法では、上記加熱変性式PCR法の(1)変性工程及び(2)アニーリング工程を、加熱ではなく、PCR反応溶液のpHを変動させることにより行うものである。例えば、まず、(1)変性工程において、PCR反応溶液をアルカリ性とする。二本鎖DNAは、pHが10以上の環境において解離し、一本鎖に変性するためである。該変性はアルカリ変性と呼ばれている。次に、(2)アニーリング工程において、PCR反応溶液のpHを中性とする。pHを中性域の7付近にすると、一本鎖DNAとプライマーをアニーリングさせることができるためである。さらに、(3)伸張工程において、DNAポリメラーゼを添加することにより、DNA鎖を伸長させることができる。
上記アルカリ変性式PCR法では、高温条件下でPCRを行う必要がないため、温度制御と水分蒸発制御が簡便である。全工程を等温条件下で行うことができるため、温度制御のための特殊な装置等を必要としない。また、各プライマーに応じて反応条件を変更する必要がないため、いずれのプライマーを用いる場合であっても、同時にPCR増幅することが可能である。さらに、校正機能に優れたフィデリティが高いDNAポリメラーゼを選択して使用することができる。
しかしながら、上記アルカリ変性式PCR法では、各工程において、アルカリ変性液、中和液、及びDNAポリメラーゼ溶液を添加する必要があるため、操作が煩雑となり、多種類のサンプルを同時にPCR増幅することは困難である。このような操作の煩雑さを回避するために、例えば、化学変性によりDNA断片の増幅反応を行わせるための所定の方向に延長される第1の流路と、アルカリ変性試薬溶液を供給するための所定の方向に延長される第二の流路と、中和反応試薬溶液を供給するための所定の方向に延長される第三の流路を有し、所定量のアルカリ変性試薬溶液を秤取するための複数本の第四の流路を有し、所定量の中和反応試薬溶液を秤取するための複数本の第五の流路を有し、該流路と前記第一の流路とを連通するこれらの流路よりも細い第六の流路を有し、かつ、前記第五の流路は該流路と前記第一の流路とを連通するこれらの流路よりも細い第七の流路を有することを特徴とする化学変性DNA断片増幅装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
服巻保行、「PCR法の原理と実際」、DNA診断と疾患の分子生物学、実験医学、羊土社、1991年、第9巻10号 p28〜34 特開2005−6504号公報
服巻保行、「PCR法の原理と実際」、DNA診断と疾患の分子生物学、実験医学、羊土社、1991年、第9巻10号 p28〜34
微少容量でPCR増幅を行う場合には、加熱変性式PCR法では、PCR反応溶液の水分の蒸発制御が特に問題となる。元来、熱効率が良く、PCR反応溶液の熱追従性を保つことができるため、反応溶液量が微少容量であることが、反応効率及び速度の観点から好ましい。しかしながら、反応溶液量が微少容量である場合には、極微少な水分の蒸発も、反応効率上無視できず、極めて反応効率が悪くなる。PCR容器の蓋に熱を持たせる等により、水分の蒸発を抑える工夫は取られているが、十分ではなく、10μL以下の反応溶液量で、精度の良いPCRは困難である。水分蒸発を防止するために、鉱物性の油滴でPCR反応溶液を被覆する方法もあるが、一般に鉱物油には耐熱性DNAポリメラーゼ活性に対する阻害物質が含有されているため、PCR反応溶液量が微少容量である場合には、鉱物油内の阻害物質の影響が大きく、好ましくない。さらに、PCR後の鉱物油の処理も問題となる。
一方、上記アルカリ変性式PCR法では、反応溶液量が微少容量である場合には、当然各工程において適宜添加される各溶液も微少容量となるため、添加した各溶液をPCR反応溶液中に均一に拡散させることが困難であり、PCR反応溶液のpH追従性や反応効率が劣るという問題があった。
本発明は、反応溶液量が微少容量である場合に、高精度かつ簡便にPCR増幅することを可能とする方法、該方法に用いられるPCR装置、及び、該方法に用いられるPCR用キットを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、PCR反応溶液全体を、表面弾性波(Surface Acoustic Wave、SAW)処理等することにより、反応溶液量が微少容量であっても、等温条件下において、アルカリ変性式PCR法により、簡便にPCR増幅を行うことが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、各工程を等温条件下において行うPCR(Polymerase Chain Reaction)法であって、(a) 標的塩基配列を有する鋳型核酸と、前記標的塩基配列をPCR増幅するために用いられるプライマーからなるプライマーセットと、PCRに供されるヌクレオチドを有するPCR反応溶液を調製する工程と、(b) PCR反応溶液に、アルカリ変性液を添加して攪拌することにより、鋳型核酸を一本鎖に解離させる変性工程と、(c) 工程(b)により得られたPCR反応溶液に、中和液を添加して攪拌することにより、一本鎖の鋳型核酸とプライマーがアニーリング可能なpHに調整する中和工程と、(d) 工程(c)により得られたPCR反応溶液に、DNAポリメラーゼ溶液を添加して攪拌することにより、前記標的塩基配列をPCR増幅する増幅工程と、(e) 前記工程(b)〜(d)を1回以上繰り返す工程と、を有し、かつ、前記攪拌が、表面弾性波(Surface Acoustic Wave、SAW)処理、超音波処理、及びピペッティングからなる群より選ばれる1以上であることを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記工程(a)において調製されたPCR反応溶液の容量が5μL以下であることを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記アルカリ変性液、前記中和液、及び前記DNAポリメラーゼ溶液の容量が0.1〜1.0μLであることを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、湿度調整下において行うことを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記湿度調整により、PCR反応溶液の容量を15μL以下に保つことを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記湿度調整を、乾燥手段及び/又は湿潤手段を用いることによって行うことを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記アルカリ変性液のpHが10以上であり、かつ、前記中和液のpHが3以下であることを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記アルカリ変性液が、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸水素2ナトリウム溶液、炭酸2水素ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、及び水酸化アンモニウム溶液からなる群より選ばれる1以上の溶液であり、かつ、前記中和液が、塩酸、酢酸、及びクエン酸からなる群より選ばれる1以上の溶液であることを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記DNAポリメラーゼが、耐アルカリ性DNAポリメラーゼ、非耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性DNAポリメラーゼ、及びストランド置換型DNAポリメラーゼからなる群より選ばれるDNAポリメラーゼであることを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記等温が、10〜42℃であることを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記プライマーセットが、標識されたプライマーを有するプライマーセットであることを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記プライマーセットが、鎖長が3〜60塩基であるプライマーを有するプライマーセットであることを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記いずれか記載のPCR法に供されるPCR装置であって、反応基板設置部、液吐出手段、攪拌手段、湿度調整手段、湿度検出手段、及び恒温維持手段を有することを特徴とするPCR装置を提供するものである。
また、本発明は、前記攪拌手段が、SAW発生器を用いる手段であることを特徴とするPCR装置を提供するものである。
また、本発明は、前記湿度調整手段が、乾燥手段及び/又は湿潤手段であることを特徴とするPCR装置を提供するものである。
また、本発明は、前記湿度調整手段が、PCR反応溶液の容量を15μL以下に保つ手段であることを特徴とするPCR装置を提供するものである。
また、本発明は、PCRに供されるヌクレオチド、DNAポリメラーゼ溶液、DNAポリメラーゼ用のバッファー、アルカリ変性液、及び中和液を有することを特徴とするPCR用キットを提供するものである。
また、本発明は、前記アルカリ変性液が、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸水素2ナトリウム溶液、炭酸2水素ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、及び水酸化アンモニウム溶液からなる群より選ばれる1以上の溶液であり、かつ、前記中和液が、塩酸、酢酸、及びクエン酸からなる群より選ばれる1以上の溶液であることを特徴とするPCR用キットを提供するものである。
また、本発明は、前記工程(a)において調製されたPCR反応溶液の容量が5μL以下であることを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記アルカリ変性液、前記中和液、及び前記DNAポリメラーゼ溶液の容量が0.1〜1.0μLであることを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、湿度調整下において行うことを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記湿度調整により、PCR反応溶液の容量を15μL以下に保つことを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記湿度調整を、乾燥手段及び/又は湿潤手段を用いることによって行うことを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記アルカリ変性液のpHが10以上であり、かつ、前記中和液のpHが3以下であることを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記アルカリ変性液が、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸水素2ナトリウム溶液、炭酸2水素ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、及び水酸化アンモニウム溶液からなる群より選ばれる1以上の溶液であり、かつ、前記中和液が、塩酸、酢酸、及びクエン酸からなる群より選ばれる1以上の溶液であることを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記DNAポリメラーゼが、耐アルカリ性DNAポリメラーゼ、非耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性DNAポリメラーゼ、及びストランド置換型DNAポリメラーゼからなる群より選ばれるDNAポリメラーゼであることを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記等温が、10〜42℃であることを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記プライマーセットが、標識されたプライマーを有するプライマーセットであることを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記プライマーセットが、鎖長が3〜60塩基であるプライマーを有するプライマーセットであることを特徴とするPCR法を提供するものである。
また、本発明は、前記いずれか記載のPCR法に供されるPCR装置であって、反応基板設置部、液吐出手段、攪拌手段、湿度調整手段、湿度検出手段、及び恒温維持手段を有することを特徴とするPCR装置を提供するものである。
また、本発明は、前記攪拌手段が、SAW発生器を用いる手段であることを特徴とするPCR装置を提供するものである。
また、本発明は、前記湿度調整手段が、乾燥手段及び/又は湿潤手段であることを特徴とするPCR装置を提供するものである。
また、本発明は、前記湿度調整手段が、PCR反応溶液の容量を15μL以下に保つ手段であることを特徴とするPCR装置を提供するものである。
また、本発明は、PCRに供されるヌクレオチド、DNAポリメラーゼ溶液、DNAポリメラーゼ用のバッファー、アルカリ変性液、及び中和液を有することを特徴とするPCR用キットを提供するものである。
また、本発明は、前記アルカリ変性液が、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸水素2ナトリウム溶液、炭酸2水素ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、及び水酸化アンモニウム溶液からなる群より選ばれる1以上の溶液であり、かつ、前記中和液が、塩酸、酢酸、及びクエン酸からなる群より選ばれる1以上の溶液であることを特徴とするPCR用キットを提供するものである。
本発明のPCR法を用いることにより、反応溶液量が5μL以下の微少容量であっても、簡便にpH追従性を保つことができるため、反応効率よく、アルカリ変性式のPCR増幅を行うことが可能となる。また、等温条件下でPCRを行うことができるため、温度制御と水分蒸発制御が簡便であることに加え、校正機能に優れたDNAポリメラーゼを用いることができるため、より高精度にPCR増幅することが可能となる。
また、本発明のPCR装置やPCR用キットを用いることにより、反応溶液量が微少容量であっても、多くのDNAサンプルを、簡便かつ効率よく、PCR増幅することが可能となる。
また、本発明のPCR装置やPCR用キットを用いることにより、反応溶液量が微少容量であっても、多くのDNAサンプルを、簡便かつ効率よく、PCR増幅することが可能となる。
本発明において、等温条件下とは、PCR反応溶液を含有するPCR反応用容器が設置されている環境の温度が各工程において一定となるように制御されている条件下を意味し、PCR反応溶液自体の温度が厳密に一定である必要はない。該環境とは、例えば、PCR装置内の、該PCR反応用容器が設置されている部位等をいう。該等温は、温度が一定である限り、特に限定されるものではなく、使用するDNAポリメラーゼの至適温度等を考慮して、適宜設定することができる。校正機能に優れたDNAポリメラーゼの至適温度は通常、あまり高温ではないため、10〜42℃であることが好ましい。
本発明における標的塩基配列とは、PCRにより増幅することを目的とする塩基配列を意味する。該標的塩基配列は、遺伝子上に存在する特定の領域の塩基配列であって、PCRが可能な程度に塩基配列が明らかになっているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、動物や植物の染色体や、細菌やウィルスの遺伝子に存在する塩基配列等がある。
本発明における鋳型核酸とは、塩基配列中に標的塩基配列を含有しており、かつ、PCRにおいて鋳型として機能する核酸であれば、特に限定されるものではない。天然由来のものであってもよく、合成されたものであってもよい。また、RNAから逆転写酵素を用いて合成されたcDNAであってもよい。
本発明のPCR法では、まず、工程(a)として、標的塩基配列を有する鋳型核酸と、該標的塩基配列をPCR増幅するために用いられるプライマーからなるプライマーセットと、PCRに供されるヌクレオチドを有するPCR反応溶液を調製する。本発明は、反応溶液量が微少容量であっても、高精度かつ簡便に標的塩基配列を増幅できるPCR法を提供することを目的とするため、工程(a)において調製されたPCR反応溶液の容量が5μL以下であることが好ましい。
該PCR反応溶液の組成やpH等、及び、は、鋳型核酸、各プライマー、及びヌクレオチドの濃度は、使用するDNAポリメラーゼの至適反応条件等を考慮して、適宜設定することができる。該ヌクレオチドは、通常PCRにおいて用いられるヌクレオチドであれば、特に限定されるものではない。
次に、工程(b)として、PCR反応溶液に、アルカリ変性液を添加して攪拌することにより、鋳型核酸を一本鎖に解離させる。攪拌時間は、PCR反応溶液の粘度や容量により、適宜設定することができる。確実に、鋳型核酸を一本鎖に解離させるために、該攪拌後、工程(c)に移行する前に、一定時間放置することが好ましい。放置時間は、鋳型核酸の長さ等を考慮して、適宜設定することができる。
該アルカリ変性液は、中和作用によってアルカリ性が失われるアルカリ性溶液であれば、特に限定されるものではないが、pHが10以上であることが好ましい。該アルカリ変性液として、例えば、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸水素2ナトリウム溶液、炭酸2水素ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、及び水酸化アンモニウム溶液等がある。
次に、工程(c)として、工程(b)により得られたPCR反応溶液に、中和液を添加して攪拌することにより、一本鎖の鋳型核酸とプライマーがアニーリング可能なpHに調整する。攪拌時間は、PCR反応溶液の粘度や容量により、適宜設定することができる。確実に、鋳型核酸とプライマーをアニーリングさせるために、該攪拌後、工程(d)に移行する前に、一定時間放置することが好ましい。放置時間は、プライマーのTm値等を考慮して、適宜設定することができる。
該中和液は、PCR反応溶液のpHを6.5〜8.0の中性付近にすることができる溶液であれば、特に限定されるものではないが、pHが3以下である高酸性溶液であることが好ましい。該中和液として、例えば、塩酸、酢酸、及びクエン酸等がある。
次に、工程(d)として、工程(c)により得られたPCR反応溶液に、DNAポリメラーゼ溶液を添加して攪拌することにより、前記標的塩基配列をPCR増幅する。攪拌時間は、PCR反応溶液の粘度や容量により、適宜設定することができる。確実に、DNAポリメラーゼによりDNA鎖を伸長させるために、該攪拌後、一定時間放置することが好ましい。放置時間は、DNAポリメラーゼの伸長活性や標的塩基配列の長さ等を考慮して、適宜設定することができる。
該DNAポリメラーゼは、伸長活性を有するDNAポリメラーゼであれば、特に限定されるものではなく、通常生化学的若しくは分子生物学的実験において使用される酵素を用いることができる。該DNAポリメラーゼとして、例えば、耐アルカリ性DNAポリメラーゼ、非耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性DNAポリメラーゼ、及びストランド置換型DNAポリメラーゼ等がある。PCR増幅の精度が良いため、校正機能を有するDNAポリメラーゼであることが好ましい。また、本発明のPCR法では、中和反応が繰り返されることにより、PCR反応溶液中の塩濃度が高くなるおそれがあるため、耐塩性のDNAポリメラーゼであることが好ましい。さらに、DNAポリメラーゼ溶液には通常グリセロールが含有されており、該DNAポリメラーゼ溶液を複数回添加することにより、PCR反応溶液中のグリセロール濃度が高くなるおそれがあるため、耐グリセロール性のDNAポリメラーゼであることが好ましい。
その他、耐アルカリ性と耐塩性の双方を有するDNAポリメラーゼを用いることにより、最初の工程(d)において、1度だけ該DNAポリメラーゼ溶液を添加することにより、その後繰り返される工程(d)において、該DNAポリメラーゼ溶液を添加しなくてもPCR増幅し得るため、操作の簡便性及び経済性の点から好ましい。
その他、耐アルカリ性と耐塩性の双方を有するDNAポリメラーゼを用いることにより、最初の工程(d)において、1度だけ該DNAポリメラーゼ溶液を添加することにより、その後繰り返される工程(d)において、該DNAポリメラーゼ溶液を添加しなくてもPCR増幅し得るため、操作の簡便性及び経済性の点から好ましい。
次に、工程(e)として、前記工程(b)〜(d)を1回以上繰り返すことにより、標的塩基配列をPCR増幅することができる。前記工程(b)〜(d)の繰り返しの回数は、所望の標的塩基配列の量を考慮して、適宜設定することができる。
前記工程(b)〜(d)における攪拌操作は、SAW処理、超音波処理、及びピペッティングからなる群より選ばれる1以上であることが好ましい。各工程において添加される各溶液をPCR反応溶液中に均一に拡散させることができるためである。該ピペッティングには、ピペットやピペットマン等を用いた操作に加え、分注機を用いて排出と吸引を繰り返す操作も含まれる。但し、ピペッティングにより攪拌する場合には、ピペッティングを行う度に、ピペットや先端のチップ等にPCR反応溶液が付着するため、コンタミネーションを避けるために使い捨てのチップ等を用いることが好ましい。
該攪拌は、SAW処理や超音波処理であることが、さらに好ましい。PCR反応溶液全体を攪拌するため、PCR反応溶液が微少容量である場合であっても、簡便かつ効果的に攪拌することが可能であるためである。また、PCR反応溶液に直接接する必要がないため、PCR反応溶液を損失するおそれが少ないためである。特に、SAW処理であることが好ましい。反応を阻害するおそれのある熱や、PCR反応溶液の相互汚染を引き起こすおそれのあるミストを発生させることなく攪拌することができるためである。なお、SAW処理とは、表面弾性波流動を利用して液体を能動的に混合或いは攪拌する処理である( 例えば、特開2005−254112号公報参照)。
前記工程(b)〜(d)において添加されるアルカリ変性液、中和液、及びDNAポリメラーゼ溶液の容量が多い場合には、各工程を繰り返す度にPCR反応溶液の容量が増大するため、PCRの反応条件が変動し、好ましくない。また、微少容量のPCR反応用容器を用いる場合には、該PCR反応用容器からPCR反応溶液が溢れるおそれがあり、好ましくない。水分の蒸発量とのバランスがとり易いため、各工程において添加される各溶液の容量が0.1〜1.0μLであることが好ましい。
また、各工程における、PCR反応溶液への各溶液の添加は、汎用されている8連又は12連のマルチチャンネルピペットを用いて行ってもよく、市販の分注機を用いて行ってもよい。
また、各工程における、PCR反応溶液への各溶液の添加は、汎用されている8連又は12連のマルチチャンネルピペットを用いて行ってもよく、市販の分注機を用いて行ってもよい。
本発明のPCR法においては、PCR反応溶液の容量を適切に維持するために、湿度調整下において行うことが好ましい。該湿度調整のための手段は、特に限定されるものではなく、例えば、乾燥手段や湿潤手段を用いることによって行うことができる。該乾燥手段として、例えば、送風や除湿剤の添加等がある。該湿潤手段として、例えば、水の添加や水蒸気の充填等がある。PCRの反応条件の変動等を防止するために、該湿度調整により、PCR反応溶液の容量を15μL以下に保つことが好ましい。乾燥がひどい場合には、PCR反応溶液の塩濃度が高くなりすぎる結果、PCRを阻害する可能性があるため、水の添加等により、PCR反応溶液を希釈することが好ましい。耐熱性DNAポリメラーゼを用いる場合には、温度が高いため、特に注意が必要である。
本発明において用いられるプライマーセットを構成するプライマーは、標的塩基配列をPCR増幅することができるように、標的塩基配列に応じて、常法により設計することができる。また、プライマーのTm値と、使用するDNAポリメラーゼの至適温度の兼ね合いの点から、本発明において用いられるプライマーセットは、鎖長が3〜60塩基であるプライマーを有するプライマーセットであることが好ましい。
PCR増幅した標的塩基配列を有する核酸の検出及び解析の点から、該プライマーセットは、標識されたプライマーを有するプライマーセットであることが好ましい。プライマーの標識に用いられる物質は、核酸の標識に用いることができ、かつ、本発明のPCR法を阻害しない物質であれば、特に限定されるものではない。該標識に用いられる物質として、例えば、フルオレセイン等の蛍光物質やジゴキシゲニン(digoxigenin)等がある。該標識は、プライマーの5’末端にあってもよく、プライマーの塩基鎖の途中にあってもよい。
本発明のPCR法は、疎水性領域に囲まれた微小親水性領域を有する反応基板を用いて行ってもよい。該反応基板を用いることにより、PCR反応溶液は表面張力により一定の形状に保たれるため、溢れる等により、反応基板上の他のPCR反応溶液と交じり合うおそれが低くなるためである。該反応基板の材質は、剛性を維持できるものであれば、特に限定されるものではなく、プラスチック、ガラス、金属等であってもよい。該反応基板は、例えば、ガラス基板に疎水性塗料等の疎水性固着物質を用いて、円形の線を描いたものでも良い。その他、PCR反応用容器となり得る凹穴を反応基板上に設けたものであってもよい。
図1は、該反応基板の一態様を表したものである。図中の1は反応基板を、2は微小親水性領域を、3は疎水性領域をそれぞれ示している。反応基板1は微小親水性領域2を1以上有するものであればよいが、多種類のPCRを同時に行うことができるため、該微小親水性領域2は複数あることが好ましい。該微小親水性領域2の形状は、特に限定されないが、面積は、PCR反応溶液の容量に影響するため、所望の容量に適した面積にすることが好ましい。また、該微小親水性領域2は、グリッド状や千鳥格子状に配置することが好ましい。マルチチャンネルピペットや分注機の使用に適しているため、及び、視認性に優れているためである。
本発明のPCR装置は、本発明のPCR法に供されるPCR装置であって、反応基板設置部、液吐出手段、攪拌手段、湿度調整手段、湿度検出手段、及び恒温維持手段を有することを特徴とする。該攪拌手段はSAW発生器を用いる手段であることが好ましく、該湿度調整手段は乾燥手段や湿潤手段であることが好ましい。該恒温維持手段は市販されている恒温装置等を用いることができる。また、該湿度検出手段は、汎用されている湿度計等を用いることができる。
該液吐出手段は、0.1〜1.0μLの液量を吐出することができる手段であれば、特に限定されるものではなく、市販の分注機等を用いることができる。液の吐出方法として、例えば、PCR反応溶液に触れずにジェット状に噴出する方法や、チップ等を用いて、PCR反応溶液に直接注入する方法等がある。チップ等を用いる場合には、PCR反応溶液の相互混合を防止するために、使い捨てのチップ等を用いることが好ましい。
図2は、該PCR装置の一態様を表したものである。図2−(a)が該一態様の平面図であり、図2−(b)が側面図である。図中の4は湿度調整器を、5は反応基板の設置部位を、6は反応基板を、7は分注機を、8は分注ノズル群を、9はSAW発生装置を、10は装置恒温保湿維持カバーをそれぞれ示している。装置内の温度を等温に保ち、かつ湿度を効果的に調製するために、該PCR装置の全体を、装置恒温保湿維持カバーで覆うことが好ましい。また、反応基板6は、複数個設置されていてもよい。
本発明のPCR用キットは、PCRに供されるヌクレオチド、DNAポリメラーゼ溶液、DNAポリメラーゼ用のバッファー、アルカリ変性液、及び中和液を有することを特徴とするPCR用キットである。該アルカリ変性液は、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸水素2ナトリウム溶液、炭酸2水素ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、及び水酸化アンモニウム溶液からなる群より選ばれる1以上の溶液であることが好ましく、該中和液は、塩酸、酢酸、及びクエン酸からなる群より選ばれる1以上の溶液であることが好ましい。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
配列番号1の塩基配列を有するSDプライマーと、配列番号2の塩基配列を有するrEDプライマーとからなるプライマーセットと、配列番号3の塩基配列を有する標的塩基配列からなる鋳型核酸を用いて、室温にてPCRを行った。該鋳型核酸は、5’末端にSDプライマーの塩基配列を、3’末端にrEDプライマーと相補的な塩基配列を、それぞれ有するように合成した、69bpの核酸である。PCRに供されるヌクレオチドとしてdNTP mix(Amersham Biosciences社製)を、アルカリ変性液として0.1N水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬社製)を、中和液として0.1N塩酸(ナカライテスク社製)を、DNAポリメラーゼ溶液としてKlenow fragment(TaKaRa社製)を、それぞれ用いた。PCR反応溶液の調製には、10×Buffer(70mM 塩化マグネシウム、1mM Dithiothreitol)を用いた。また、疎水性領域に囲まれた微小親水性領域を有する反応基板としてアンプリグリッド(Advalytix社製)を、SAW発生器としてプレートブースター(Advalytix社製)を、それぞれ用いた。
具体的には、まず、工程(a)として、0.5μLの10×Bufferに、鋳型核酸とdNTP mixが、最終濃度が0.2mMとなるようにそれぞれ添加し、SDプライマーとrEDプライマーが、最終濃度が0.2mMとなるようにそれぞれ添加し、最終的に5μLとなるように、PCR反応溶液を調製した。
次に、工程(b)として、調製したPCR反応溶液に、0.7μLの0.1N水酸化ナトリウム水溶液を添加し、プレートブースターを用いて、82MHzで35dBmのパワーで15秒間SAW処理をした後、工程(c)として、該PCR反応溶液に、0.5μLの0.1N塩酸を添加し、82MHzで35dBmのパワーで15秒間SAW処理をした。さらに、工程(d)として、該PCR反応溶液に、0.1U/μLのKlenow fragmentを0.5μL添加し、82MHzで35dBmのパワーで15秒間SAW処理をした。
次に、工程(b)として、該PCR反応溶液に、0.5μLの0.1N水酸化ナトリウム水溶液を添加する以外は、全て前記と同様にして、工程(b)〜(d)を16回繰り返すことにより、PCR増幅を行った。
PCR増幅後のPCR反応溶液をBIOANALYZER(Agilent Technology社製)を用いてバンドパターンを確認した。該バンドパターンを図3に示す。レーン1は塩基対長マーカーを、レーン2は0.1pmolの鋳型核酸を、レーン3は1pmolの鋳型核酸を、レーン4はPCR増幅前のPCR反応溶液を、レーン5は工程(b)〜(d)を1サイクルとした場合の1サイクル増幅後のPCR反応溶液を、レーン6は15サイクル増幅後のPCR反応溶液を、それぞれ泳動したものである。矢印アが、69bpの標的塩基配列を有する核酸のバンドを示している。矢印イ及びウは、マーカーのバンドを示している。1サイクル増幅後のPCR反応溶液では、PCR増幅された鋳型核酸はBIOANALYZERでは検出できなかったが、15サイクル増幅後のPCR反応溶液では、約0.2pmolのPCR増幅された鋳型核酸が検出された。
図3の結果から明らかであるように、本発明のPCR法を用いることにより、煩雑かつ困難な温度制御をすることなく、PCR反応溶液が5μLという微少容量であっても、簡便にPCR増幅を行うことができる。
本発明のPCR法、PCR装置、又はPCR用キットを用いることにより、PCR反応溶液量が微少容量である場合であっても、高精度かつ簡便にPCR増幅することができるため、被分析サンプルが微量である遺伝子解析等の分野で利用が可能である。特に、PCR装置又はPCR用キットを用いることにより、多種類の微量サンプルを迅速かつ簡便にPCR増幅することができるため、SNPタイピングや遺伝子発現量の比較等の分野で利用が可能である。
1…反応基板、2…微小親水性領域、3…疎水性領域、4…湿度調整器、5…反応基板の設置部位、6…反応基板、7…分注機、8…分注ノズル群、9…SAW発生装置、10…装置恒温保湿維持カバー
Claims (18)
- 各工程を等温条件下において行うPCR(Polymerase Chain Reaction)法であって、
(a) 標的塩基配列を有する鋳型核酸と、前記標的塩基配列をPCR増幅するために用いられるプライマーからなるプライマーセットと、PCRに供されるヌクレオチドを有するPCR反応溶液を調製する工程と、
(b) PCR反応溶液に、アルカリ変性液を添加して攪拌することにより、鋳型核酸を一本鎖に解離させる変性工程と、
(c) 工程(b)により得られたPCR反応溶液に、中和液を添加して攪拌することにより、一本鎖の鋳型核酸とプライマーがアニーリング可能なpHに調整する中和工程と、
(d) 工程(c)により得られたPCR反応溶液に、DNAポリメラーゼ溶液を添加して攪拌することにより、前記標的塩基配列をPCR増幅する増幅工程と、
(e) 前記工程(b)〜(d)を1回以上繰り返す工程と、
を有し、かつ、
前記攪拌が、表面弾性波(Surface Acoustic Wave、SAW)処理、超音波処理、及びピペッティングからなる群より選ばれる1以上であることを特徴とするPCR法。 - 前記工程(a)において調製されたPCR反応溶液の容量が5μL以下であることを特徴とする請求項1記載のPCR法。
- 前記アルカリ変性液、前記中和液、及び前記DNAポリメラーゼ溶液の容量が0.1〜1.0μLであることを特徴とする請求項1又は2記載のPCR法。
- 湿度調整下において行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のPCR法。
- 前記湿度調整により、PCR反応溶液の容量を15μL以下に保つことを特徴とする請求項4記載のPCR法。
- 前記湿度調整を、乾燥手段及び/又は湿潤手段を用いることによって行うことを特徴とする請求項4又は5記載のPCR法。
- 前記アルカリ変性液のpHが10以上であり、かつ、前記中和液のpHが3以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のPCR法。
- 前記アルカリ変性液が、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸水素2ナトリウム溶液、炭酸2水素ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、及び水酸化アンモニウム溶液からなる群より選ばれる1以上の溶液であり、かつ、前記中和液が、塩酸、酢酸、及びクエン酸からなる群より選ばれる1以上の溶液であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載のPCR法。
- 前記DNAポリメラーゼが、耐アルカリ性DNAポリメラーゼ、非耐熱性DNAポリメラーゼ、耐熱性DNAポリメラーゼ、及びストランド置換型DNAポリメラーゼからなる群より選ばれるDNAポリメラーゼであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載のPCR法。
- 前記等温が、10〜42℃であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載のPCR法。
- 前記プライマーセットが、標識されたプライマーを有するプライマーセットであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載のPCR法。
- 前記プライマーセットが、鎖長が3〜60塩基であるプライマーを有するプライマーセットであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載のPCR法。
- 請求項1〜12のいずれか記載のPCR法に供されるPCR装置であって、反応基板設置部、液吐出手段、攪拌手段、湿度調整手段、湿度検出手段、及び恒温維持手段を有することを特徴とするPCR装置。
- 前記攪拌手段が、SAW発生器を用いる手段であることを特徴とする請求項13記載のPCR装置。
- 前記湿度調整手段が、乾燥手段及び/又は湿潤手段であることを特徴とする請求項13又は14記載のPCR装置。
- 前記湿度調整手段が、PCR反応溶液の容量を15μL以下に保つ手段であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか記載のPCR装置。
- PCRに供されるヌクレオチド、DNAポリメラーゼ溶液、DNAポリメラーゼ用のバッファー、アルカリ変性液、及び中和液を有することを特徴とするPCR用キット。
- 前記アルカリ変性液が、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸水素2ナトリウム溶液、炭酸2水素ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、及び水酸化アンモニウム溶液からなる群より選ばれる1以上の溶液であり、かつ、前記中和液が、塩酸、酢酸、及びクエン酸からなる群より選ばれる1以上の溶液であることを特徴とする請求項17記載のPCR用キット。
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WO2014198209A1 (zh) * | 2013-06-09 | 2014-12-18 | 中国科学院上海应用物理研究所 | 基于控制反应溶液pH值变化的扩增DNA片段的方法和设备 |
CN113215230A (zh) * | 2021-06-22 | 2021-08-06 | 艾康健(武汉)基因技术有限公司 | 一种snp核酸质谱分型检测方法 |
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