JP2008220196A - タンパク質の欠失変異体の作製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 簡便かつ効率的に所望の切断部位でのタンパク質の切断を低コストに実現でき、広範なタンパク種に対する欠失変異体を容易に作製できる技術の確立。
【解決手段】 タンパク質の欠失変異体の作製方法であって、
前記タンパク質の任意の切断部位にプロリン残基が繰り返して配位するように、前記タンパク質をコードする遺伝子を改変する工程と、
前記改変遺伝子を、大腸菌における使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを増加させた大腸菌内で発現させる工程とを含む方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、タンパク質の欠失変異体の作製方法、及びタンパク質の欠失変異体の作製用キットに関する。
生命活動の多様性や、生物が生み出す物質の特性や機能を解明する上で、タンパク質の構造及び機能の解析は不可欠なものである。近年の遺伝子組換え技術及びタンパク質工学技術のめざましい進展と普及によってタンパク質を人為的に操作して改変することが可能となった。かかるタンパク質の人為的操作、なかでも所望の切断点でタンパク質を切断できる技術は、タンパク質の構造・機能の解析の重要な研究手段だけでなく、機能改変タンパク質及び人工タンパク質の創製手段として応用範囲は広く、特に、分子生物学分野において注目されていた。
従来において、タンパク質の切断技術として、ニワトリリゾチームのシグナル配列の所望の切断点近傍に、プロリン残基を挿入するように遺伝子を改変し、該改変遺伝子を酵母に組み込むことで、所望の切断点で切断された組換えリゾチームを取得できることが報告されていた(非特許文献1、2を参照)。かかる技術は、プロリン残基の挿入により人為的にターン構造が誘起されることを利用するものであり、これによりリゾチームのシグナル配列の人為的制御が可能となった。
また、上記のような遺伝子工学的手法以外に酵素的にタンパク質を切断する技術が知られていた。特定の配列を認識できる酵素の利用性は高く、例えば、微生物から分離されたプロリン特異的ジペプチジルカルボキシペプチダーゼが、タンパク質のプロリン残基の繰り返し配列に対して分解能を有することが報告されていた(非特許文献3を参照)。プロリン残基の繰り返し配列は植物タンパク質等に存在し、また、所望の切断点にプロリン残基の繰り返し配列を挿入することにより、所望の切断点で切断された改変タンパク質の取得に利用することができるものであった。
しかしながら、非特許文献1、2で報告された方法は、タンパク質の発現システムとして真核生物である酵母を利用していることから、原核生物である細菌由来のタンパク質への応用は困難であることが予想された。更に、酵母の分泌系を利用するものであることから、分泌系タンパク質以外への応用に関しても疑問があった。そのため、その適用範囲は非常に限定されたものであることから、実用性に欠くものであった。更に、タンパク質の高発現量や取り扱いの簡便性の観点から大腸菌発現システムを利用したタンパク質の切断技術の確立が求められていた。
また、非特許文献3で報告された方法は、酵素学的にタンパク質を切断するものであることから、組換えタンパク質に適用する場合であっても、一旦、宿主細胞内で切断のないタンパク質として合成した後に切断するものであった。一般的にタンパク質分解酵素等、特に配列特異的分解酵素は高価であり、また切断効率が低い場合が多く、コスト面及び切断効率の点から実用性に欠くものであった。更に、酵素的切断後に所望のタンパク質産物から酵素の分離が困難であり、後の精製過程において煩雑な工程を要することが予想された。また、ここで報告された方法は、一種類の酵素による反応であることから、すべてのプロリン残基の繰り返し配列を認識することは困難であると考えられ、切断効率のみならず、信頼性の観点からも問題があった。
したがって、従来報告された方法は、何れも操作性、切断効率、及びコスト面の観点から市場の要求を十分に満たすものではなかった。また、広範なタンパク質に対して適用できる技術の確立が求められていた。
Thuchiya Y.他著、"Effect of chicken lysozyme signal peptide alterations on secretion of human lysozyme in Saccharomyces cerevisiae." Biochem Cell Biol、1993年、7〜8月;第71巻、第7〜8号、第401〜5頁 "分泌シグナル切断点の人為的制御とそのタンパク質工学への応用"、〔online〕、家畜衛生試験場 製剤研究部 製剤工学研究室、〔平成19年2月2日検索〕、インターネット<URL: http://www.affrc.go.jp/seika/data_niah/h06/niah94006.html> "丸山進グループ(酵素と生理活性ペプチド)" 〔online〕、独立行政法人 産業技術総合研究所 生物反応工学部、〔平成19年2月2日検索〕、インターネット<URL:http://www.aist.go.jp/NIBH/indexcontents/j2activity/j201maincontents/40_46seibutsuhannou/43maruyamas/43main.html>
そこで、本発明は、簡便かつ効率的に所望の切断部位でのタンパク質の切断を低コストに実現でき、広範なタンパク種に対する欠失変異体を容易に作製できる技術の確立を目的とする。
本発明者が鋭意検討を行った結果、塩基配列中にプロリン残基の繰り返し配列をコードする配列を有する核酸分子を宿主細胞内で発現させるにあたって、当該宿主細胞として用いる細胞が属する生物種において使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを増加させた細胞内で発現させることによって、組換えタンパク質の合成がプロリン残基の繰り返し配列で停止することを見出した。発明者は、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
上記目的を達成するため、下記の〔1〕〜〔6〕の構成からなる発明を提供する。
〔1〕タンパク質の欠失変異体の作製方法であって、
前記タンパク質の任意の切断部位にプロリン残基が繰り返して配位するように、前記タンパク質をコードする遺伝子を改変する工程と、
前記改変遺伝子を、大腸菌における使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを増加させた大腸菌内で発現させる工程とを含む方法。
〔2〕前記tRNAが、AUA、AGG、AGA、CUA、CCC、GGA、及びCGGから選択される少なくとも1つのコドンに対応する上記〔1〕の方法。
〔3〕前記tRNAが、CCCに対応する上記〔1〕又は〔2〕の方法。
〔4〕前記大腸菌が、Escherichia coli BL21株である上記〔1〕〜〔3〕のいずれかの方法。
上記〔1〕〜〔4〕の構成によれば、本発明のタンパク質の欠失変異体の作製方法は、プロリン残基の繰り返し配列を導入することにより、簡便かつ効率的に所望の標的部位でタンパク質の合成を停止し切断できる。そして、宿主細胞内で、組換えタンパク質の合成と切断を同時に行えることから、煩雑な工程を要せず、簡便、且つ効率的に低コストに作製できる。そして、本発明の方法は、広範なタンパク質に対して適用できることが判明している。以上の利点を有する本発明の欠失変異体の作製方法は、様々な産業分野、特には分子生物学の分野に利用可能な実用性の高い技術である。
〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかの方法を実施するための試薬を含む、タンパク質の欠失変異体の作製用キット。
〔6〕タンパク質の任意の切断部位にプロリン残基が繰り返して配位するように、前記タンパク質をコードする遺伝子を改変するための試薬と、大腸菌における使用頻度の低いコドンに対応するtRNAの量を増加させた大腸菌とが含まれる上記〔5〕のキット。
上記〔5〕〜〔6〕の構成によれば、このようにタンパク質の欠失変異体の作製に必要な成分をキットして構成することにより、簡便且つ迅速な欠失変異体の作製が可能となる
以下、具体的な本発明の実施の形態について説明するが、これはあくまでも本発明を例示するに留まり、本発明を限定するものではない。
本発明のタンパク質の欠失変異体の作製方法は、以下の工程を含んでなる。
(a)遺伝子改変工程
欠失変異体作製の対象となるタンパク質の任意の切断部位にプロリン残基が繰り返して配位するように、前記タンパク質をコードする遺伝子を改変する工程。
(b)タンパク質発現工程
前記改変遺伝子を、宿主細胞として用いる細胞が属する生物種において使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを増加させた細胞内で発現させる工程。
本発明の方法は、欠失変異体作製の対象となるタンパク質の任意の切断部位にプロリン残基が繰り返して配位するように改変した前記タンパク質をコードする遺伝子を、宿主細胞として用いる細胞が属する生物種において使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを増加させた特定の宿主細胞内で発現させるものである。言い換えれば、本発明の方法は、ターン誘起性アミノ酸であるプロリン残基の繰り返し配列と、使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを増加させた特定の宿主細胞での発現とを組み合わせたものである。つまり、本発明のタンパク質の欠失変異体の作製方法は、遺伝子組換え技術を利用するものであり、使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを増加させた特定の宿主細胞内でのタンパク質の合成がプロリン残基の繰り返し配列又はその近接部位で停止するとの事象に基づく。かかる事象を利用することで、任意の標的部位でタンパク質の合成を停止させることができ、所望の欠失変異体の取得を可能とするものである。
一方で、かかる事象は、このような使用頻度の低いコドンにつきtRNAを補充されていない一般的な細胞を宿主細胞として用いた場合には、生じないか、若しくは生じたとしてもごく僅かである。
核酸配列からのアミノ酸配列への情報変換では、64種類のコドンが20種類のアミノ酸に対応するため、必然的に遺伝暗号が縮重する。それらの同義コドンは一様に使用されてはおらず、各コドンの使用頻度は生物種によって偏りがあることが知られている。また、各生物種におけるtRNA量はコドンの使用頻度の偏りに密接に関連することが知られている。そのため、異種生物種由来の目的遺伝子が発現すると、コドン使用頻度の相違により対応するtRNAが十分に供給されず翻訳阻害等により目的遺伝子の発現が阻害される場合があることが知られている。今般、所望の標的切断部位において、プロリン残基の繰り返し配列をコードするように改変された核酸分子を、コドンの使用頻度の偏りに対応すべくtRNAを補充した宿主細胞内で発現させた。すると、プロリン残基の発現に際してターン構造の誘起等に影響を与え、この部位、若しくは近接領域でタンパク質の合成が停止したものと考えられる。特に、プロリンは、多くの生物種においてコドンの使用頻度に偏りがあることが知られている。そのため、このようなコドンの使用頻度の偏りに対応した細胞を宿主細胞として用いることによって、コドンの使用頻度の偏りに対応していない一般的な細胞を用いた場合には為し得ない特有の効果を奏し得るものと考えられる。
本発明の方法の対象となるタンパク質は、宿主細胞内で組換え的に発現し得るタンパク質であれば特に制限はない。細胞内タンパク質、膜タンパク質、分泌タンパク質等の別は問わない。タンパク質の起源についても特に制限はない。しかし、原核生物起源の遺伝子を真核細胞内で発現させても、翻訳後修飾が正確に行われない等の理由により、機能をもったタンパク質を取得できないことが知られている。そして、その逆も同様である。そのため、一般には、タンパク質の発現に際しては、タンパク質の起源と宿主細胞を適合させることが好ましい。したがって、本発明の方法では、大腸菌細胞を宿主細胞として用いることが特に好ましいことから、原核生物由来のタンパク質に対して特に好適に利用できる。
以下、上記(a)遺伝子改変工程、(b)タンパク質発現工程につき、詳細に説明する。
(a)遺伝子改変工程
欠失変異体作製の対象となるタンパク質の任意の切断部位にプロリン残基が繰り返して配位するように、前記タンパク質をコードする遺伝子を改変する。具体的には、欠失変異体作製の対象となるタンパク質をコードする遺伝子に対して、当該遺伝子がコードするタンパク質の所望の切断部位にプロリン残基が繰り返して配位するように改変を施す。改変は、適当なヌクレオチドの挿入、置換、欠失、付加からなる少なくとも1つからなり、これらの組み合わせであってもよい。
このとき、少なくとも3個のプロリン残基が繰り返して配位するように、遺伝子を改変することが好ましい。特には3〜4個のプロリン残基が連続することが好ましい。所望の切断部位において、プロリン残基が既に存在する場合には、隣接位置にプロリンをコードするコドンを挿入することによってプロリン残基の繰り返し配列が配位するように改変してもよい。また、所望の切断部位において、プロリン残基の繰り返し配列が既に存在する場合には、当該遺伝子改変工程を省略することもできる。また、所望の切断部位以外にプロリン残基の繰り返し配列が存在する場合には、プロリン残基が繰り返して配位しないように前記タンパク質をコードする遺伝子を改変することもでき、所望の欠失変異体を更に高い信頼性で取得することが可能となる。
切断部位については、特に制限はない。したがって、所望の切断部位にプロリン残基が繰り返して配位するように、対象タンパク質をコードする遺伝子を改変することにより、所望の切断部位でタンパク質の合成が停止することで切断された欠失変異体を作製することができる。
遺伝子を改変する方法としては、特に制限はなく、公知変異導入技術を利用することができる。例えば、部位特異的突然変異誘発法、PCR等を利用して変異を導入するPCR突然誘発法、あるいは、トランスポゾン挿入突然変異誘発法などの公知の変異導入技術を利用することができる。また、市販の変異導入用キット(例えば、QuikChange(登録商標) Site-directed Mutagenesis Kit(Stratagene社製))を利用してもよい。特には、タンパク質をコードする核酸分子を鋳型として、所望の改変を施した配列を含むオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行うことによって取得することが好ましい。このときプライマーの設計、合成は公知技術に基づいて行うことができる。
ここで、改変の基礎となるタンパク質をコードする遺伝子は、公知の遺伝子クローニング技術を用いて取得することができる。例えば、GenBank等の公知のデータベースを検索することによって取得することができる遺伝子情報を基にしてプライマーを設計し、タンパク質を産生し得る生物体から抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCRを行うことにより取得することができる。さらに、公知の遺伝子情報に基づいて、常法のホスホルアミダイト(phosphoramidite)法等の核酸合成法により合成することによっても取得するができる。
また、目的とする欠失変異体のアミノ酸配列が定まれば、基礎なるタンパク質をコードする遺伝子の配列情報に基づいて任意の標的切断部位にプロリン残基をコードする配列を導入した核酸分子を設計できる。これにより、常法のホスホルアミダイト法等の核酸合成技術を利用して所望の切断部位にプロリン残基を導入したタンパク質をコードする核酸分子を合成することもできる。
(b)タンパク質発現工程
次いで、得られた改変遺伝子を特定の宿主細胞内で発現させる。ここで、宿主細胞としては、通常宿主細胞として利用できる細胞のうち、当該細胞が属する生物種において使用頻度の低いコドンに対応するtRNAの含有量が増加されている細胞である限り、組換えタンパク質の生産において使用できるものであれば特に制限はない。なお、使用頻度の低いコドンにつきtRNAを補充されていない一般的な細胞については、プロリン残基の繰り返し配列の発現部位を認識して、その部位でタンパク質の合成を停止することができず、本発明の方法への適用には好ましくない。具体的には、原核生物、真核生物細胞の別を問わないが、大腸菌、枯草菌等の原核生物が好ましい。なかでも、大腸菌が特に好ましく、例えば、E. coli BL21株等が挙げられる。
上記したように、核酸配列からのアミノ酸配列への情報変換では、64種類のコドンが20種類のアミノ酸に対応するため、必然的に遺伝暗号が縮重する。それらの同義コドンは一様に使用されてはおらず、各コドンの使用頻度は生物種によって偏りがあることが知られている。したがって、宿主細胞として用いる細胞が属する生物種において、使用頻度が低いコドンの少なくとも1つの対応するtRNAを増加させたものであることが必要である。特には、プロリンをコードするコドンのうち、宿主細胞として用いる細胞が属する生物種において使用頻度が低いコドンに対応するtRNAを増加させたものであることが好ましい。
大腸菌に関しては、多数の遺伝子の塩基配列につきコドンの使用頻度を解析した結果、コドンAUA(イソロイシン)、AGG(アルギニン)、AGA(アルギニン)、CUA(ロイシン)、CCC(プロリン)、GGA(グリシン)、CGG(アルギニン)の使用頻度が低いことが判明している。したがって、本発明の使用に適した大腸菌は、上記AUA、AGG、AGA、CUA、CCC、GGA、CGGのいずれか1以上のコドンに対応するtRNAの含有量が増加されている大腸菌である。特には、プロリンに対応するコドンCCCに対応するtRNAの含有量が増加されている大腸菌である。
このような大腸菌としては、市販品を利用することができる。例えば、Novagen社のRosetta(登録商標)、Rosetta(登録商標)2、RosettaBlue(登録商標)等が挙げられる。Rosetta(登録商標)は、大腸菌において使用頻度の低いコドン(AUA、AGG、AGA、CUA、CCC、GGA)に対応するtRNAをクロラムフェニコール耐性プラスミドであるpRAREに組み込み、E. coli Tuner(登録商標)株に導入した株である。また、Rosetta(登録商標)2は、AUA、AGG、AGA、CUA、CCC、GGAに対応するtRNAに加え、更にCGGに対応するtRNAを更に追加したプラスミドpRARE2を含んである。なお、E. coli Tuner(登録商標)株は、E. coli BL21株のlacZY欠失変異体である。
tRNAを増加する方法は、細胞におけるtRNAの含有量を増大させることができる限り、特に制限はなく公知の技術を利用することができる。言い換えれば、所与の細胞におけるtRNAをコードする遺伝子のコピー数を増加させることができればよい。例えば、使用頻度の低いコドンに対応するtRNAをコードする遺伝子を細胞のゲノム上に導入する方法、当該tRNAをコードする遺伝子を挿入したプラスミドを細胞に導入する方法等を利用することができる。
改変遺伝子の宿主細胞への形質転換は、公知の発現ベクターシステムを利用することができる。なお、発現ベクターは、改変遺伝子を挿入できる少なくとも1つの制限酵素サイトを有するマルチクローニングサイト等の配列を含み、かつ、上記宿主細胞で発現できるものであれば、何れの発現ベクターを用いることができる。また、遺伝子の機能の発現に必要な他の公知の塩基配列が含まれていてもよい。例えば、プロモータ配列、発現産物の安定性を付与する安定性リーダー配列、発現産物の分泌を付与するシグナル配列、並びにリボソーム結合配列等が挙げられる。好適なプロモータ配列としては、T7プロモータ、lacプロモータ、T7lacプロモータ、trpプロモータ等が好適に例示される。しかしながら、これに限定するものではなく公知のプロモータ配列を利用できる。
更に、本発明の組換えベクターには、宿主細胞において表現型選択を付与することが可能なマーキング配列等をも含ませることができる。このようなマーキング配列としては、薬剤耐性、栄養要求性などの遺伝子をコードする配列等が例示される。具体的には、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子等が例示される。
このような発現ベクターとして、市販の大腸菌用発現ベクターを用いることができる。例えば、pETベクター(Novagen社製)、pGEXベクター(GE Healthcare Bio-Sciences社製)を挙げることができる。さらに、これに適宜所望の配列を組み込んだものを使用することも可能である。なお、発現ベクターは、当該ベクターに対して最適な発現系を有する宿主細胞に導入される。したがって、例えば、pETベクターのように、組み込まれた目的遺伝子の発現がT7プロモータにより制御される場合には、宿主細胞としては、T7 RNA ポリメラーゼ発現系をもつ大腸菌を選択する必要がある。
宿主細胞に組換えベクターを移入する方法としては、コンピテントセル法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポソームフェクション法、マイクロインジェクション法等、公知の技術を利用することができる。大腸菌のコンピテントセルは、例えば、対数増殖期の細胞を塩化カルシウム溶液で処理することによって得ることができる。また、ファージベクターを用いて上記で調製した改変遺伝子を宿主細胞に導入することができる。例えば、前記改変遺伝子とファージベクターDNAとのライゲーションの後、in vitroパッケージングによりファージタンパク質と折りたたんで成熟ファージの頭部外殻に封入した後、ファージ感染系を利用して導入することができる。
このようにして得られた形質転換体を、炭素源、窒素源、その他の必須の栄養素を含む培地に接種し、常法に従って培養することにより、欠失変異体タンパク質を産生することができる。本発明の形質転換体の培養は、細胞の栄養生理学的性質を勘案して、培養条件を選択すればよい。使用される培地としては、細胞が資化し得る栄養素を含み、形質転換体におけるタンパク質の発現を効率的に行えるものであれば特に制限はない。したがって、形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源その他必須の栄養素を含む培地であることが好ましく、天然培地、合成培地の別を問わない。例えば、炭素源として、グルコース、デキストラン、デンプン等が、また、窒素源としては、アンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、ペプトン、カゼイン等が挙げられる。他の栄養素としては、所望により、無機塩類、ビタミン類、抗生物質等とを含ませることができる。形質転換体が大腸菌の場合には、LB培地、M9培地等が好適利用できる。また、培養形態についても特に制限はないが、大量培養の観点から液体培地が好適に利用できる。
このとき、目的遺伝子を保持する形質転換体の選別は、例えば、マーキング配列の発現の有無により行なうことができる。例えば、マーキング配列として薬剤耐性遺伝子を利用する場合には、薬剤耐性遺伝子に対応する薬剤含有培地で培養することによって行うことができる。
また、必要に応じて、上記形質転換体の培養物から欠失変異体タンパク質の採取、及び精製を行うことができる。欠失変異体タンパク質の採取、及び精製は、一般的なタンパク質の分離精製技術に基づいて行うことができる。簡潔に説明すると、タンパク質の欠失変異体が形質転換体の細胞内で産生される場合には、培養物を遠心分離、濾過等の手段により形質転換体を回収する。続いて、リゾチーム処理などの酵素的破砕方法、又は超音波処理、凍結融解、浸透圧ショック等の物理的破砕方法等により、細胞を破砕する。破砕後、遠心分離、濾過等の手段により可溶化画分を収集し、タンパク質の粗抽出液を得る。このとき、耐熱性タンパク質の場合には、熱処理に付して形質転換体由来のタンパク質を失活させてもよく、熱処理は65℃にて60分程度が好ましい。そして、得られた粗抽出液を、公知のタンパク質精製方法を適宜選択することにより、本発明の酵素を単離精製することができる。例えば、硫酸アンモニウム沈殿、透析、SDS−PAGE電気泳動、ゲル濾過、疎水、陰イオン、陽イオン、アフィニティークロマトグラフィ等の各種クロマトグラフィ等の公知の単離精製技術を単独、又は適宜組み合わせて適用することができる。本発明のタンパク質の欠失変異体が細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離、濾過等の手段により細胞を除去して培養上清を得る。続いて、培養上清を、上記の細胞内に生産するタンパク質の場合と同様に処理することにより単離精製することができる。
そして、精製されたタンパク質が、所望の位置で切断された欠失変異体であるか否かの確認は、公知のアミノ酸分析法によって行うことができる。例えば、エドマン分解法に基づく自動アミノ酸決定法が利用できる。また、所望の欠失変異体が、切断の基礎となったタンパク質より活性が向上する、安定性が向上する等、特定領域の欠失による機能改変が公知である場合には、活性や安定性等を測定することによっても確認することができる。
以上の通り、本発明のタンパク質の欠失変異体の作製方法は、プロリン残基の繰り返し配列を導入することにより、簡便かつ効率的に所望の標的部位でタンパク質の合成を停止することができる。そして、宿主細胞内で、組換えタンパク質の合成と切断を同時に行えることから、煩雑な工程を要せず、簡便、且つ効率的に低コスト作製できる。そして本発明の欠失変異体の作製方法は広範なタンパク種に対する欠失変異体を容易に作製できる実用性の高い技術である。
上記利点を有する本発明の方法は、タンパク質の機能、並びに構造解析、さらには有用性の高いタンパク質の設計、生産といったタンパク質工学の色々な局面で利用することができる。具体的には、既知のタンパク質の特定領域を欠損させることにより、機能や構造に与える変化を検討することでき、タンパク質の特定領域の機能解析を行うことができる。これにより、生理活性の発現に際して重要な役割を果たす領域の探索、同定を行うことができ、有用性の高い新規タンパク質の設計に際しての情報とすることができる。例えば、タンパク質の安定化と機能改変等に利用できる。特にタンパク質が酵素である場合には、触媒反応機構の解析を通して、触媒活性の向上、基質特異性の変換等を、更には熱安定性等の安定性の向上を図ることができる。また、このような有用タンパク質の生産においても本発明の方法を利用することができ、遺伝子組換え技術により合成と切断を行うことから、効率的かつ、大量に生産することができ工業的利用が可能となる。
また、新しい機能性タンパク質の探究、開発にのみならず、生命機能の改良やタンパク質を原因とする疾病の探求を通して、かかる疾病に対する治療法の確立につなげることもできる。
したがって、本発明のタンパク質の欠失変異体の作製方法は、様々な産業分野で利用可能である。特には、タンパク質の機能及び構造等を探究する分子生物学的分野をはじめ、有用性タンパク質の産生に係る医療分野、環境分野、及び食品分野等の広範な分野で利用することができる。
また、本発明はタンパク質の欠失変異体の作製用キットを提供する。本発明のタンパク質の欠失変異体の作製用キットは、上記タンパク質の欠失変異体の作製方法を実施するために必要な試薬を含んで構成される。例えば、タンパク質の任意の切断部位にプロリンが繰り返して配位するようにタンパク質をコードする遺伝子を改変するための試薬と、対応の生物種での使用頻度の低いコドンに対応するtRNAが増加させてある細胞を宿主細胞として含んで構成したもの挙げられる。そして、遺伝子を改変するための試薬としては、例えば、所望の改変用に設計した任意のPCRプライマー、DNAポリメラーゼ等を含んで構成される。更に、適当な緩衝液、マグネシウム塩、dNTP等のPCRに必要な成分を適宜含んで構成してもよい。このようにタンパク質の欠失変異体の作製のために必要な成分をキットして構成することにより、簡便且つ迅速な欠失変異体の作製が可能となる。
以下に実施例を示し、さらに本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
大腸菌由来のRecAタンパク質の欠失変異体の作製
本実施例において、大腸菌由来のRecAタンパク質の欠失変異体の作製について検討を行った。本実施例においては、2種類の欠失変異体の作製について検討を行った。以下、大腸菌由来のRecAタンパク質を、「EcoRecAタンパク質」と略する。
(方法)
(1)変異導入遺伝子の調製
EcoRecAタンパク質の欠失変異体を作製するため、EcoRecAタンパク質をコードする遺伝子を、標的切断部位に連続したプロリン残基が配位して発現するように改変した。ここで、EcoRecAタンパク質のアミノ酸配列を配列認識番号1に示すと共に、これをコードする遺伝子の塩基配列を配列認識番号2に示す。
2種類の欠失変異体の作製のため、まず、2種類の改変遺伝子を調製した。1つは、上記配列認識番号1で表されるEcoRecAタンパク質のアミノ酸配列中の332位のプロリン残基と333位のアスパラギン残基の間に、2つのプロリン残基を挿入するようにEcoRecAタンパク質をコードする遺伝子を改変した(以下、「EcoRecAタンパク質P332-PP-N333遺伝子」と称する場合があり、下線部は挿入アミノ酸残基を表す)。もう1つは、当該314位のプロリン残基と315位のグルタミン酸残基の間に、2つのプロリン残基を挿入するようにEcoRecAタンパク質をコードする遺伝子を改変した(以下、「EcoRecAタンパク質P314-PP-E315遺伝子」と称する場合があり、下線部は挿入アミノ酸残基を表す)。
遺伝子の改変は、大腸菌ゲノムDNAを鋳型としたPCRを利用して行った。PCRに先立って、上記2種類の遺伝子改変のためのプライマーを設計、合成した。また、比較例として、プロリン残基の挿入のないEcoRecAタンパク質をコードする遺伝子を増幅するためのプライマーをも設計、合成した。プライマーの配列情報を以下に示す。
また、ここで設計、合成されたプライマーペアでのPCR増幅により得られる増幅産物によってコードされるタンパク質の配列情報を図1に開示する。なお、本実施例においては、下記で詳細に説明するが発現ベクターとして、6 His Tagをコードする配列を含むpET22bを使用した。したがって、宿主細胞内では末端に6個のヒスチジン残基が付加されたHis Tag融合タンパク質として合成される。
1.EcoRecAタンパク質遺伝子増幅用プライマーペア
プライマー1
5'- gctcatatg-atggctatcgacgaaaacaa -3' (配列認識番号12)
プライマー2
5'- cgcaagctta-aaaatcttcgttagtttctg -3' (配列認識番号13)
上記プライマーペアでのPCR増幅により得られる増幅産物によってコードされるタンパク質の配列情報につき図1に示すと共に、アミノ酸配列の配列情報を配列表の配列認識番号3に、塩基配列の配列情報を配列表の配列認識番号4示す。
2.EcoRecAタンパク質P332-PP-N333遺伝子増幅用プライマーペア
プライマー1
5'- gctcatatg-atggctatcgacgaaaacaa -3' (配列認識番号12)
プライマー3
5'- cgcaagc-cggcggcgggttgctcagcagcaact -3' (配列認識番号14)
上記プライマーペアでのPCR増幅により得られる増幅産物によってコードされるタンパク質の配列情報につき、アミノ酸配列の配列情報を配列表の配列認識番号5、及び図1に示す。
3.EcoRecAタンパク質P314-PP-E315遺伝子増幅用プライマーペア
プライマー1
5'- gctcatatg-atggctatcgacgaaaacaa -3' (配列認識番号12)
プライマー4
5'- cgcaagc-cggcggcgggttatctttcagccagg -3' (配列認識番号15)
上記プライマーペアでのPCR増幅により得られる増幅産物によってコードされるタンパク質の配列情報につき、アミノ酸配列の配列情報を配列表の配列認識番号6、及び図1に示す。
PCR反応液(25 μl)は、鋳型DNA(大腸菌ゲノムDNA:E coli genomic DNA:大腸菌よりGenomic DNA Purification Kit(Promega社製)を使用して調製)を25 ng、プライマーを各0.3 μM(最終濃度)、DNAポリメラーゼ、dNTP混合液を、PCR反応緩衝液に混合することにより調製した。ここで、DNAポリメラーゼとしては、Prime Star DNA polymerase(Takara-Bio社製)を使用した。そして、DNAポリメラーゼに添付の緩衝液をPCR反応緩衝液として使用し、製造業者の指示に従いPCR反応液を調製した。
上記で調製したPCR反応液を、98℃にて10秒、55℃にて5秒、72℃にて60秒の反応を1サイクルとした35サイクルの増幅反応に供した。
得られた増幅産物を市販の精製キット(DNA Purification Kit:GE-Health care社製)を用いて精製した後、制限酵素Nde-IとHind-IIIで切断した。得られたDNA断片に電気泳動緩衝液を添加し、1.2%アガロースゲル電気泳動に供し、目的とする増幅断片を上記の市販の精製キットを用いてゲルから切り出した。
(2)タンパク質の発現
精製した増幅断片を、制限酵素Nde-IとHind-IIIで切断した発現ベクターpET22b(Novagen社製)に連結した。連結には、市販のライゲーションキット(DNA lagation kit:Takara-Bio社製)を用いた。ここで、使用したpET22bは、アンピシリン耐性、T7lacプロモータ制御の、6 His Tag配列及びトロンビン切断部位を有する発現ベクターである。
次いで、大腸菌Rosetta(登録商標)(DE3) コンピテントセルに形質転換し形質転換体を得た。具体的には、30μlのコンピテントセルを融解し、1μlの上記で調製した発現ベクター(pET22b)と混合し、直ちに0℃にて20分間保持した。続いて、エレクトロポレーションを行い、0℃にて2分間保持した後、300μlのSOC培地を加え、37℃で1時間振盪し、形質転換させた大腸菌の前培養を行った。形質転換体を、アンピシリンとクロラムフェニコールを添加したLB寒天培地上で37℃にて20時間培養した。続いて、目的遺伝子を担持する単一コロニーを、アンピシリンとクロラムフェニコールを添加したLB液体培地中で一晩(20時間)培養した。培養液の1/1000量を、新しいアンピシリンを添加したLB液体培地にアプライし、OD600=0.4に達するまで培養した。さらに、最終濃度1.0mMのIsopropyl β-D-Thiogalactoside(IPTG)を添加して4時間培養した。なお、培養の詳細は、大腸菌の一般的な培養方法に従って行なった。このとき、同様にして、インサートを含まない空の発現ベクターについても形質転換体を得た(ネガティブコントロール)。
培養後、培養液から菌体を回収し、回収した菌体に培養液の1/5量の可溶化液を添加し超音波破砕処理を行った。ここで、可溶化液として、2×SDS sample buffer(125mM Tris-HCl pH6.8、4% SDS、5% 2-メルカプトエタノール、20% グリセロール、0.01% ブロモフェノールブルー)を用いた。98℃で3分間保温後、その一部をポリアクリルアミドゲル(アトー社製)電気泳動に供した。電気泳動後のゲルをクーマシーブリリアントブルー(以下「CBB」と称する:Wako社製)で染色し、タンパク質のバンドを可視化した。
(結果)
結果を図2に示す。
図2中、レーン1は、EcoRecAタンパク質遺伝子増幅用プライマーペアである上記プライマー1、2でのPCR増幅による増幅断片を発現させて得られた発現産物の電気泳動結果を示す(比較例)。すなわち、改変を施していないEcoRecAタンパク質遺伝子の発現産物を示す。
図2中、レーン2は、EcoRecAタンパク質P314-PP-E315遺伝子増幅用プライマーペアである上記プライマー1、4でのPCR増幅によって改変を施した増幅断片を発現させて得られた発現産物の電気泳動結果を示す(実施例)。具体的には、EcoRecAタンパク質を表す配列認識番号1のアミノ酸配列中の314位のプロリン残基と315位のグルタミン酸残基の間に、2つのプロリン残基を挿入するよう改変した改変遺伝子による発現産物を示す。
図2中、レーン3は、EcoRecAタンパク質P332-PP-N333遺伝子増幅用プライマーペアである上記プライマー1、3でのPCR増幅によって改変を施した増幅断片を発現させて得られた発現産物の電気泳動結果を示す(実施例)。具体的には、EcoRecAタンパク質を表す配列認識番号1のアミノ酸配列中の332位のプロリン残基と333位のアスパラギン残基の間に、2つのプロリン残基を挿入するよう改変した改変遺伝子による発現産物を示す。
図2中、レーン4は、インサートを含まない空の発現ベクターでの結果を示す(ネガティブコントロール)。
図2中、レーン5は、タンパク質サイズマーカーを示す。
図2の結果より、改変を施していないEcoRecAタンパク質遺伝子を発現させた場合には、予想配列情報に合致し、何らの変異も生じていないタンパク質(以下、「EcoRecA-WT」と称する。)が宿主細胞内で合成されたことが確認された(図2中、レーン1)。それに対し、プロリン残基をコードするコドンを挿入するよう改変した場合にも、予想配列情報に合致し、何らの変異も生じていないEcoRecAタンパク質(EcoRecA-WT)の合成が確認された(図2中、レーン2、3)。しかしながら、その合成量は改変を施していないEcoRecAタンパク質遺伝子を発現させた場合に比べて少ないことが確認された(図2中、レーン1と2の比較)。その一方で、タンパク質の合成途中において、合成が停止したEcoRecAタンパク質の欠失変異体の合成が観察された(図2中、レーン2、3の*印を付したバンド)。そして、電気泳動の移動度により、図2中、レーン2の*印を付したバンドは、314位のプロリン残基と315位のグルタミン酸残基の間にプロリン残基を挿入することで形成されたプロリン残基の繰り返し配列の部位でタンパク質の合成が停止することで切断されたEcoRecAタンパク質の欠失変異体であることが推定された。以下、当該欠失変異体を「EcoRecA-DM2」と称する。また、図2中、レーン3の*印を付したバンドは、の332位のプロリン残基と333位のアスパラギン残基の間にプロリン残基を挿入することで形成されたプロリン残基の繰り返し配列の部位でタンパク質の合成が停止することで切断されたEcoRecAタンパク質の欠失変異体であることが推定された。以下、当該欠失変異体を「EcoRecA-DM1」と称する。
以上の結果から、プロリンが繰り返して配位するように改変した前記タンパク質をコードする遺伝子を、宿主細胞として用いる細胞が属する生物種において使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを増加させた特定の細胞を宿主細胞として用いると、タンパク質の合成がプロリン残基の繰り返し配列又はその近接部位で停止することが判明した。そして、かかる知見を利用して、所望の標的切断部位へのプロリン残基の挿入によるプロリンの繰り返し配列の形成、並びに特定の宿主細胞での発現を組み合わせることにより、かかる標的部位においてタンパク質の合成を停止することができることが判明した。これにより、所望の欠失変異体を得ることができる。また、本実施例においては、異なる部位での切断を試みた結果、検討した何れの位置においても特異的なタンパク質の合成の停止が確認された。このことから、本発明の方法は、切断部位に何らの拘束のない有用な技術であることも同時に判明した。
〔実施例2〕
実施例2では、欠失変異体の作製において、形質転換の際に用いる宿主細胞の特性について検討した。詳細には、宿主細胞として用いる生物種において使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを増加させるよう処理が施された細胞を宿主として用いた場合と、上記のようにコドンの使用頻度に対する処理が施されていない一般的な細胞を宿主として用いた場合とを比較した。
(方法)
(1)変異導入遺伝子の調製
まず、EcoRecAタンパク質を改変し、実施例1にて検討したEcoRecAタンパク質P332-PP-N333遺伝子を調製した。詳細には、大腸菌ゲノムDNAを鋳型として、EcoRecAタンパク質P332-PP-N333遺伝子増幅用プライマーペアを用いてPCRを行うことで遺伝子を改変した。なお、PCR反応液の調製、並びに詳細な手順は実施例1に記載の通りである。
(2)タンパク質の発現
上記(1)にて得られた増幅断片を、実施例1に記載の手順に従って、大腸菌に導入して形質転換体を得、続いて電気泳動により発現タンパク質を確認した。このとき、宿主細胞として、大腸菌において使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを増加させるよう処理されたRosetta(登録商標)を使用した場合(実施例)と、Rosetta構築の基礎となった一般的な大腸菌株であるE.coli BL21株を使用した場合(比較例)とで発現タンパク質を比較した。また、インサートを含まない空の発現ベクター(pET22b)をRosetta(登録商標)に導入した実験系についても同様に処理し発現タンパク質を確認した(ネガティブコントロール)。
(結果)
結果を図3に示す。
図3中、レーン1は、宿主細胞としてRosetta(登録商標)を使用した場合の発現産物の電気泳動結果を示す(実施例)。すなわち、使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを増加させるよう処理が施された細胞を宿主細胞として用いた結果を示し、図2中、レーン3に対応する。
図3中、レーン2は、宿主細胞として、一般的なE.coli BL21株を使用した場合の発現産物の電気泳動結果を示す(比較例)。すなわち、使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを増加させるよう処理が施されていない細胞を宿主細胞として用いた結果を示す。
図3中、レーン3は、インサートを含まない空の発現ベクターでの結果を示す(ネガティブコントロール)。図2中、レーン4に対応する。
図3の結果より、コドンの使用頻度に対する処理がされていない一般的な細胞を宿主細胞として用いた場合には、何らの変異も生じていないタンパク質(EcoRecA-WT)が優勢に合成されることが確認された(図3中、レーン2)。一方で、EcoRecAタンパク質の欠失変異体(EcoRecA-DM)の産生については、形質転換体由来の夾雑タンパク質との判別が困難であり、目視による検出限界に近く有意な生産物としては確認できなかった(図3中、レーン2の*印を付したバンド)。そして、コドンの使用頻度に対応するよう処理された細胞を宿主細胞として用いた場合と比べると、有意に確認できない程度まで欠失変異体の合成量が著しく低減するか、産生できないことが確認された(図3中、レーン1とレーン2*印を付したバンドの比較)。
以上の結果より、コドンの使用頻度に対する処理が施されていない一般的な細胞を宿主細胞としてタンパク質を発現させた場合には、プロリンの繰り返し配列を認識してタンパク質の合成を停止するという事象をほとんど確認できなかった。したがって、実施例1で得られた事象は、宿主細胞として用いる細胞が属する生物種において使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを増加させた特定の細胞によってのみ奏されるものであることが判明した。
〔実施例3〕
サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来のRecAタンパク質の欠失変異体の作製
本実施例において、サーマス・サーモフィラス由来のRecAタンパク質の欠失変異体の作製について検討を行った。以下、サーマス・サーモフィラス由来のRecAタンパク質を、「TthRecAタンパク質」と略する。
(方法)
(1)変異導入遺伝子の調製
TthRecAタンパク質の欠失変異体を作製するため、TthRecAタンパク質をコードする遺伝子を、標的切断部位に連続したプロリン残基が配位して発現するように改変した。ここで、TthRecAタンパク質のアミノ酸配列を配列認識番号7に示すと共に、これをコードする遺伝子の塩基配列を配列認識番号8に示す。
具体的には、上記配列認識番号7で表されるTthRecAタンパク質のアミノ酸配列中の205位のプロリン残基と206位のグルタミン酸の間に、2つのプロリン残基を挿入するようにTthRecAタンパク質をコードする遺伝子を改変した(以下、「TthRecAタンパク質P205-PP-N206遺伝子」と称する場合があり、下線部は挿入アミノ酸残基を表す)。
遺伝子の改変は、サーマス・サーモフィラスのゲノムDNAを鋳型としたPCRを利用して行った。PCRに先立って、上記遺伝子改変のためのプライマーを設計、合成した。また、比較例として、プロリン残基の挿入のないTthRecAタンパク質をコードする遺伝子を増幅するためプライマーを設計、合成した。プライマーの配列情報を以下に示す。
また、ここで設計、合成されたプライマーペアでのPCR増幅により得られる増幅産物によってコードされるタンパク質の配列情報を図4に開示する。なお、本実施例においても実施例1と同様に、発現ベクターとしてpET22bを使用したことから、His Tag融合タンパク質として宿主細胞内で合成される。
1.TthRecAタンパク質増幅用プライマーペア
プライマー5
5'- gctcatatg-gacgagagcaagcgcaa -3' (配列認識番号16)
プライマー6
5'- cgcaagc-ctccccctcgtcctcgcccg -3' (配列認識番号17)
上記プライマーペアでのPCR増幅により得られる増幅産物によってコードされるタンパク質の配列情報につき図4に示すと共に、アミノ酸配列の配列情報を配列表の配列認識番号10に、塩基配列の配列情報を配列表の配列認識番号9示す。
2.TthRecAタンパク質P205-PP-N206遺伝子増幅用プライマーペア
プライマー5
5'- gctcatatg-gacgagagcaagcgcaa -3' (配列認識番号16)
プライマー7
5'- cgcaagc-cggcggcgggttgccgtacgtgacc -3' (配列認識番号18)
上記プライマーペアでのPCR増幅により得られる増幅産物によってコードされるタンパク質の配列情報につき、アミノ酸配列の配列情報を配列表の配列認識番号11、及び図4に示す。
上記で調製したプライマーを用いて、サーマス・サーモフィラスのゲノムDNA(Thermus thermophilus genomic DNA:Takara-Bio社製)を鋳型としてPCRを行った。このとき、実施例1と同様にして、PCR反応に供し、増幅産物を大腸菌Rosseta(登録商標)に形質転換した後、発現産物を電気泳動に供した。
(結果)
結果を図5に示す。
図5中、レーン1は、TthRecAタンパク質遺伝子増幅用プライマーペアである上記プライマー5、6でのPCR増幅による増幅断片を発現させて得られた発現産物の電気泳動結果を示す(比較例)。すなわち、改変を施していないTthRecAタンパク質遺伝子の発現産物を示す。
図5中、レーン2は、TthRecAタンパク質P205-PP-E206遺伝子増幅用プライマーペアである上記プライマー5、7でのPCR増幅によって改変を施した増幅断片を発現させて得られた発現産物の電気泳動結果を示す(実施例)。具体的には、TthRecAタンパク質を表す配列認識番号7のアミノ酸配列中の205位のプロリン残基と206位のグルタミン酸残基の間に、2つのプロリン残基を挿入するよう改変した改変遺伝子による発現産物を示す。
図5中、レーン3は、インサートを含まない空の発現ベクターでの結果を示す(ネガティブコントロール)。
図5中、レーン4は、タンパク質サイズマーカーを示す。
図5の結果より、改変を施していないTthRecAタンパク質遺伝子を発現させた場合には、予想配列情報に合致し、何らの変異も生じていないタンパク質(以下、「TthRecA-WT」と称する場合がある。)が宿主細胞内で合成されたことが確認された(図5中、レーン1)。それに対し、プロリン残基をコードするコドンを挿入するよう改変した場合にも、予想配列情報に合致し、何らの変異も生じていないTthRecAタンパク質(TthRecA-WT)の合成が確認された(図5中、レーン2)。しかしながら、その合成量は改変を施していないTthRecAタンパク質遺伝子を発現させた場合に比べて少ないことが確認された(図5中、レーン1と2の比較)。一方で、タンパク質の合成途中において、合成が停止したTthRecAタンパク質の欠失変異体が観察された(図5中、レーン2の*印を付したバンド)。そして、電気泳動の移動度により、*印を付したバンドは、205位のプロリン残基と206位のグルタミン酸残基の間にプロリン残基を挿入することで形成されたプロリン残基の繰り返し配列の部位でタンパク質の合成が停止することで切断されたTthRecAタンパク質の欠失変異体であることが推定された。以下、当該欠失変異体を「TthRecA-DM」と称する。
以上の結果から、実施例1と同様、プロリンが繰り返して配位するように改変した前記タンパク質をコードする遺伝子を、宿主細胞として用いる細胞が属する生物種において使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを増加させた特定の細胞を宿主細胞として用いると、タンパク質の合成がプロリン残基の繰り返し配列又はその近接部位で停止することが判明した。そして、かかる知見を利用して、所望の標的切断部位へのプロリン残基の挿入によるプロリン残基の繰り返し配列の形成と、特定の宿主細胞での発現を組み合わせることにより、かかる標的部位においてタンパク質の合成が停止し、切断することができる。これによって、所望の欠失変異体を得ることができることが判明した。
さらに、実施例1、3の結果を併せて鑑みると異なる由来及び配列を有するタンパク質につき同様の結果が得られたことが理解される。また、ここでは実施例をもって具体的に示さないがRecAタンパク質以外のタンパク質についても同様の結果が得られた。してみると、かかる事象が、切断の対象となるタンパク質の種類、由来、配列等に依存するものではなく、本発明の方法は広範なタンパク質に適用できることが導かれる。
〔実施例4〕アフィニティ精製による発現タンパク質の精製
実施例1、3における大腸菌での発現タンパク質のうち、タンパク質の合成が停止することで切断されていないタンパク質を精製することで、欠失変異体の発現について考察した。
実施例1、3において末端にHis Tagが連結した融合タンパク質として発現させたため、タンパク質の合成が停止することで切断されていないタンパク質(EcoRecA-WT、TthRecA-WT)はHis Tagに対する親和性を利用して精製することができる。
(1)サンプルの調製
実施例1、3の形質転換体の培養物から遠心分離により菌体を回収した。次に、培養液1ml当たり50μlの氷冷Phosphate Buffer(20mM Na2HPO4、0.5M NaCl、pH 7.4、10mM イミダゾール)に菌体を懸濁し、超音波破砕処理により菌体を破砕した。超音波破砕処理は、超音波処理20秒及び氷冷40秒を1セットとした30セットにより行った。次いで、4℃にて10,000rpmで10分間遠心分離を行った後、上清を回収し、濾過精度0.45 micronのメンブランで濾過し、濾液をサンプルとした。
(2)アフィニティ精製
2.5mlの0.1M NiSO4を、25mlの純水で洗浄したカラムにシリンジを用いてゆっくりと注入した後、25mlの純水で洗浄して、His Tag融合タンパク質親和性カラムを調製した。このとき、カラムは青色に着色する。次いで、調製したHis Tag融合タンパク質親和性カラムを開始Bufferで平衡化し、上記(1)で調製したサンプル(約3ml)をアプライした。続いて、50mlの開始Bufferで洗浄した後、30mlの溶出Buffer1によりタンパク質を溶出させ全ピークを回収した。更に、10mlの溶出Buffer2によりカラム内のタンパク質を完全に溶出させた。回収した画分をセントリコン(Millipore社)により濃縮した。
各Bufferの組成は以下の通り。
開始Buffer・・・10mM イミダゾールを添加したPhosphate Buffer
溶出Buffer1・・・100mM イミダゾールを添加したPhosphate Buffer
溶出Buffer2・・・500mM イミダゾールを添加したPhosphate Buffer
なお、Phosphate Bufferは、20mM Na2HPO4、0.5M NaClでpH7.4に調製したものを使用した。
(3)タンパク質の確認
アフィニティ精製後のタンパク質溶液に2倍量の可溶化液を添加して、98℃で3分間保温した。ここで、可溶化液として、2×SDS sample buffer(125mM Tris-HCl pH6.8、4% SDS、5% 2−メルカプトエタノール、20% グリセロール、0.01% ブロモフェノールブルー)を用いた。その一部をポリアクリルアミドゲル(アトー社製)電気泳動に供した後、CBB(Wako社製)で染色してタンパク質のバンドを可視化した。詳細な実施手順については、実施例1に準じて行った。
(結果)
結果を図6に示す。
図6は、レーン1は、改変を施していないEcoRecAタンパク質遺伝子の発現産物からのアフィニティ精製物の電気泳動結果を示す。図2中のレーン1のサンプルに対応する。
図6中、レーン2は、EcoRecAタンパク質を表す配列認識番号1のアミノ酸配列中の314位のプロリン残基と315位のグルタミン酸残基の間に、2つのプロリン残基を挿入するよう改変した改変遺伝子による発現産物からのアフィニティ精製物の電気泳動結果を示す。図2中、レーン2のサンプルに対応する。
図6中、レーン3は、EcoRecAタンパク質を表す配列認識番号1のアミノ酸配列中の332位のプロリン残基と333位のアスパラギン残基の間に、2つのプロリン残基を挿入するよう改変した改変遺伝子による発現産物からのアフィニティ精製物の電気泳動結果を示す。図2中、レーン3のサンプルに対応する。
図6中、レーン4は、実施例1でのネガティブコントロールであり、インサートを含まない空の発現ベクターでの形質転換体の発現産物からのアフィニティ精製物の電気泳動結果を示す。図2中、レーン4のサンプルに対応する。
図6中、レーン5は、改変を施していないTthRecAタンパク質遺伝子の発現産物からのアフィニティ精製物の電気泳動結果を示す。図5中、レーン1のサンプルに対応する。
図6中、レーン6は、TthRecAタンパク質を表す配列認識番号7のアミノ酸配列中の205位のプロリン残基と206位のアスパラギン残基の間に、2つのプロリン残基を挿入するよう改変した改変遺伝子による発現産物からのアフィニティ精製物の電気泳動結果を示す。図5中、レーン2のサンプルに対応する。
図6中、レーン7は、実施例3でのネガティブコントロールであり、インサートを含まない空の発現ベクターでの形質転換体の発現産物からのアフィニティ精製物の電気泳動結果を示す。図5中、レーン3のサンプルに対応する。
図6中、レーンMは、タンパク質サイズマーカーを示す。
図6の結果より、プロリン残基をコードするコドンを挿入するように改変した場合には、改変を施さなかった場合と比べて、回収されるタンパク質量が減少することが確認された(図6中、レーン1と、レーン2及び3の比較、レーン5とレーン6の比較)。ここで、回収されるタンパク質は末端にHis Tag配列を持つ途中でタンパク質の合成が停止することで切断されていない全長のタンパク質(EcoRecA-WT、TthRecA-WT)である。一方でタンパク質の発現過程においてタンパク質の合成が停止することで切断したような欠失変異体タンパク質は、末端にHis Tag配列を持たず回収されない。ここで、実施例1、3において欠失変異体として同定されたEcoRecA-DM1、EcoRecA-DM2、及びTthRecA-DMは、いずれも回収されなかった。してみると、プロリン残基の繰り返し配列に基づく本発明の方法では、形質転換体内でのタンパク質の合成の中断により欠失変異体が生じたため、回収されるタンパク質が減少したものと理解される。
以上の結果により、実施例1〜3で得られた所望の標的部位にプロリン残基の繰り返し配列の挿入し、特定の宿主細胞で発現させることにより、かかる標的部位においてタンパク質の合成を停止することで切断できるとの知見を、異なる視点からも追認できた。
分子生物学的分野をはじめ、医療分野、環境分野、食品分野等の広範な分野で利用可能な、タンパク質の欠失変異体の作製方法を提供する。
EcoRecAタンパク質の欠失変異体の作製のためのプロリン残基の挿入位置を示す図 EcoRecAタンパク質の欠失変異体の作製を検討した実施例1の結果を示す図 欠失変異体の作製において、形質転換の際に用いる宿主細胞の特性について検討した実施例2の結果を示す図 TthRecAタンパク質の欠失変異体の作製のためのプロリン残基の挿入位置を示す図 TthRecAタンパク質の欠失変異体の作製を検討した実施例3の結果を示す図 実施例1、3における大腸菌での発現タンパク質のうち切断されていないタンパク質を精製することで、欠失変異体の発現について考察した実施例4の結果を示す図。

Claims (6)

  1. タンパク質の欠失変異体の作製方法であって、
    前記タンパク質の任意の切断部位にプロリン残基が繰り返して配位するように、前記タンパク質をコードする遺伝子を改変する工程と、
    前記改変遺伝子を、大腸菌における使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを増加させた大腸菌内で発現させる工程とを含む方法。
  2. 前記tRNAが、AUA、AGG、AGA、CUA、CCC、GGA、及びCGGから選択される少なくとも1つのコドンに対応する請求項1に記載の方法。
  3. 前記tRNAが、CCCに対応する請求項2に記載の方法。
  4. 前記大腸菌が、Escherichia coli BL21株である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法を実施するための試薬を含む、タンパク質の欠失変異体の作製用キット。
  6. タンパク質の任意の切断部位にプロリン残基が繰り返して配位するように、前記タンパク質をコードする遺伝子を改変するための試薬と、大腸菌における使用頻度の低いコドンに対応するtRNAを増加させた大腸菌とが含まれる請求項5に記載のキット。
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