JP2008216092A - ポリペプチドのnmrスペクトル測定・解析法、その方法に用いる試料、装置およびプログラム - Google Patents

ポリペプチドのnmrスペクトル測定・解析法、その方法に用いる試料、装置およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】従来NMRスペクトルの測定およびNMR法による解析が困難であったポリペプチドに対しても使用可能な、NMR法によるポリペプチドの構造解析に関する技術を提供する。
【解決手段】目的ポリペプチドのNMRスペクトルの測定方法であって、目的ポリペプチドと目的ポリペプチドより分子量の大きなタグポリペプチドと両ポリペプチドの間に介在して両ポリペプチドを結合させるリンカーとを含む融合ポリペプチドのNMRスペクトルを測定するステップを含む、測定方法。および、スペクトル解析による目的ポリペプチドの構造決定の方法。
【選択図】 図7

Description

本発明は、ポリペプチドのNMRスペクトル測定・解析法、その方法に用いる試料、装置およびプログラムに関する。
近年、疾病に関係するタンパク質の立体構造を解析することは、疾病の原因や機構の解明においてますます重要性を増しつつあり、プロテオーム解析など蛋白質の構造や機能を迅速かつ網羅的に解析する試みが多く行われている。また、最近の薬剤開発においても、疾病に関係するタンパク質を見つけ、そのタンパク質の立体構造を解明することによって、標的タンパク質に結合する薬剤の構造を設計するという手法が取られつつある。このような手法を取ることにより、候補化合物を絞り込み、効果試験をする時間と経費を節約することが可能となる。
生体分子の立体構造決定法には、X線結晶解析法とNMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)法とが存在する。何れもÅ単位の原子座標を決定することができる。しかし、X線結晶解析法においては、基本的には結晶水を含む結晶中の構造としてタンパク質の立体構造が求められるため、動きのある部分は適切な回折像が得られにくく、構造を決定するのが困難である。一方、NMR法においては、溶液中で平均的な構造として解析することができるという利点が知られている。
X線結晶解析法においては、試料となるタンパク質の溶解性および結晶性が要求される。一方、NMR法による解析にはそのタンパク質の溶解性及び安定性が高いことが要求される。このような性質を達成するための方法としては、例えば、結晶構造解析においては、膜タンパク質の疎水面同士の会合を回避するために抗体を結合させたり脂質を混入する方法が知られている。一方、NMR法においては、界面活性剤や塩を含んだ溶媒を用いてタンパク質の凝集を防ぐ方法が知られている。また、特許文献1には、タンパク質の溶解度を向上させるための技術として、親水性の1−20残基程度の短いタグペプチドを付加する技術が公開されている。
特開2006−188507号公報
NMR測定用試料中のタンパク質の溶解度を向上させる技術としては、界面活性剤などを含む溶媒によるものが知られていた。しかし、疎水性等の目的タンパク質の性質によっては、溶媒のみでは溶解度を向上させることが困難なこともあり、また、溶媒の条件によっては、生理条件とは大きく異なることも多く、本来の高次構造を変性させてしまうため、さらなる改善の余地があった。また、個々のタンパク質によって溶解条件は大きく異なるため、大量の試行錯誤により条件検討する必要があり、簡便で適用範囲の広い手法の開発が望まれていた。
また、短い親水性タグポリペプチドを付加することでタンパク質全体としての親水性を向上させるという技術も知られていた。しかし、この手法では、短いポリペプチドでは親水性の向上の効果が小さく、また、目的ポリペプチドの電荷や塩基性・酸性に左右される場合も多く、目的ポリペプチドに応じたアミノ酸の選択が必要であるため、さらなる改善の余地があった。
一方、X線結晶構造解析法では稀に、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)のような大きな親水性タグポリペプチドを含む融合ポリペプチドとして解析している例は存在していた。しかし、NMR法においては、このように大きなタグポリペプチドは、目的タンパク質のシグナルを覆い隠してしまい、正常なNMRスペクトルの測定ができないであろうと考えられていた(〔特許文献1〕参照のこと)。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来NMRスペクトルの測定およびNMR法による解析が困難であったポリペプチドに対しても使用可能な、NMR法に関する技術を提供することを目的とするものである。
本発明によれば、目的ポリペプチドのNMRスペクトルの測定方法であって、目的ポリペプチドと目的ポリペプチドより分子量の大きなタグポリペプチドと両ポリペプチドの間に介在して両ポリペプチドを結合させるリンカーとを含む融合ポリペプチドのNMRスペクトルを測定するステップを含む、測定方法が提供される。
この測定方法は、直接NMRスペクトルを測定することが困難な目的ポリペプチドに対しても、タグポリペプチドとの融合ポリペプチドを用いることでその溶解性・安定性を向上させ、NMRスペクトルの測定を可能にする。また、タグポリペプチドが目的ポリペプチドより大きく、かつリンカーを介して付加していることにより、タグポリペプチド由来のNMRスペクトルはより低くブロードになるため、タグポリペプチド由来のブロードなピークと、目的ポリペプチド由来のよりシャープなピークとの区別が容易となり、間接的に目的ポリペプチドのNMRスペクトルを測定することを可能にする。
また、本発明によれば、NMRスペクトル測定のための試料であって、目的ポリペプチドと目的ポリペプチドより分子量の大きなタグポリペプチドと両ポリペプチドの間に介在して両ポリペプチドを結合させるリンカーとを含む融合ポリペプチドと、NMRスペクトル測定に許容可能な溶媒と、を含む、試料が提供される。
この試料を用いると、直接NMRスペクトルを測定することが困難な目的ポリペプチドのNMRスペクトルの測定においても、タグポリペプチドとの融合ポリペプチドを用いることでその溶解性・安定性を向上させ、NMRスペクトルの測定を可能にする。また、タグポリペプチドが目的ポリペプチドより大きく、かつリンカーを介して付加していることにより、タグポリペプチド由来のNMRスペクトルはより低くブロードになるため、この試料を用いると、タグポリペプチド由来のブロードなピークと、目的ポリペプチド由来のよりシャープなピークとの区別が容易となり、間接的に目的ポリペプチドのNMRスペクトルを取得・帰属することが可能になる。
また、本発明によれば、目的ポリペプチドのNMRスペクトルの解析方法であって、目的ポリペプチドと目的ポリペプチドより分子量の大きなタグポリペプチドと両ポリペプチドの間に介在して両ポリペプチドを結合させるリンカーとを含む融合ポリペプチドのNMRスペクトルを取得するステップと、融合ポリペプチドのNMRスペクトルから、目的ポリペプチド由来のピークを抽出するステップと、を含む、解析方法が提供される。
この解析方法は、NMR法による直接の立体構造解析が困難な目的ポリペプチドに対しても、タグポリペプチドとの融合ポリペプチドを用いることでその溶解性・安定性を向上させ、立体構造の解析を可能にする。また、タグポリペプチドが目的ポリペプチドより大きく、かつリンカーを介して付加していることにより、タグポリペプチド由来のNMRスペクトルはより低くブロードになるため、タグポリペプチド由来のブロードなピークと、目的ポリペプチド由来のよりシャープなピークとの区別が容易となり、間接的に目的ポリペプチドのNMRスペクトルを測定し、それを用いて目的ポリペプチドの構造を解析することが可能となる。
また、本発明によれば、目的ポリペプチドのNMRスペクトルの解析装置であって、目的ポリペプチドと前記目的ポリペプチドより分子量の大きなタグポリペプチドと前記両ポリペプチドの間に介在して前記両ポリペプチドを結合させるリンカーとを含む融合ポリペプチドのNMRスペクトルを取得するタグ付スペクトル取得部と、融合ポリペプチドのNMRスペクトルから、目的ポリペプチド由来のピークを抽出するシグナル抽出部と、を有する、解析装置が提供される。
この解析装置は、NMR法による直接の立体構造解析が困難な目的ポリペプチドに対しても、タグポリペプチドとの融合ポリペプチドを用いることでその溶解性・安定性を向上させ、立体構造の解析を可能にする。また、タグポリペプチドが目的ポリペプチドより大きく、かつリンカーを介して付加していることにより、タグポリペプチド由来のNMRスペクトルはより低くブロードになるため、タグポリペプチド由来のブロードなピークと、目的ポリペプチド由来のよりシャープなピークとの区別が容易となり、間接的に目的ポリペプチドのNMRスペクトルを測定し、それを用いて目的ポリペプチドの構造を解析することが可能となる。
また、本発明によれば、コンピューターに目的ポリペプチドのNMRスペクトルを生成させるためのプログラムであって、コンピューターに、目的ポリペプチドと目的ポリペプチドより分子量の大きなタグポリペプチドと両ポリペプチドの間に介在して両ポリペプチドを結合させるリンカーとを含む融合ポリペプチドのNMRスペクトルを取得するステップと、融合ポリペプチドのNMRスペクトルから、目的ポリペプチド由来のピークを抽出するステップと、を実行させる、プログラムが提供される。
このプログラムは、NMR法による直接の立体構造解析が困難な目的ポリペプチドに対しても、タグポリペプチドとの融合ポリペプチドを用いることでその溶解性・安定性を向上させ、立体構造の解析を可能にする。また、タグポリペプチドが目的ポリペプチドより大きく、かつリンカーを介して付加していることにより、タグポリペプチド由来のNMRスペクトルはより低くブロードになるため、タグポリペプチド由来のブロードなピークと、目的ポリペプチド由来のよりシャープなピークとの区別が容易となり、間接的に目的ポリペプチドのNMRスペクトルを測定し、それを用いて目的ポリペプチドの構造を解析することが可能となる。
本発明は、直接的にNMRスペクトルの測定および/またはNMRによる立体構造解析の困難なポリペプチドの、NMRスペクトルの測定および立体構造解析を可能にする。
〔用語の説明〕
本明細書における「NMR」(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)とは、外部磁場に置かれた原子核が固有の周波数の電磁波と相互作用する現象およびその現象を用いた物質の解析法をいい、特にここでは、通常、ポリペプチドの立体構造解析に用いられる溶液NMR法のことをいう。NMR法に用いることのできる測定機器は、日本電子(JEOL)、ブルカー、バリアンなどのメーカーから入手可能である。本実施形態にかかるNMRにおいては、本技術分野でポリペプチドの立体構造解析に通常用いられる各種NMRスペクトルを用いることが可能であり、限定されるものではないが、例えば、H−NMR、13C−NMR、15N−NMR、H−NMRなどの各核種のNMRを用いることができる。
また、NMRスペクトルを生成する際にはFT−NMR(フーリエ変換NMR)が用いられ、その際には、特定のパルスシークエンスを組み合わせて用いることができる。例えば、一または複数の核種間の、APT、INEPT、DEPT、COSY、DQF−COSY、TOCSY(HOHAHA)、NOESY、ROESY、HMQC、HSQC、HMBC、INADEQUATE、TROSY、HNCO、HNCA、HN(CO)CA、CBCANH、CBCA(CO)NH、HBHA(CBCACO)NH、C(CO)NH、H(CCO)NHなど、この技術分野の通常の知識を有する者によく知られた各種NMR法(スペクトル)を、単独または組合わせた一元NMR、二次元NMRあるいは三次元NMRを用いることができる。また、これらのNMRを組合わせることで、H、13C、15Nなどの相関関係およびその相関関係から得られる位置情報を取得することができる。
上記のNMRスペクトルのうち、ポリペプチドの立体構造解析においては、特に、HNCO、HNCA、CA(CO)NH、CBCANH、CBCA(CO)NH、HSQC−TOCSY、HCCH−TOCSY、HSQC−NOESY、15N−H−HSQC、13C−H−HSQCなどがよく用いられるが、これらに限られない。これらのスペクトル解析を行うことにより、各水素、炭素および窒素の相対的な位置関係を知ることができる。これら単独、あるいは、好ましくはポリペプチドの一次配列を用いた連鎖帰属や水素結合などの構造情報と組み合わせることにより、具体的な立体構造を解析することができる。
本明細書における「ポリペプチド」とは、複数のアミノ酸がアミド結合を介して連なったポリマーのことをいい、好ましくはタンパク質であるが、これに限られず、低分子のペプチドや、非天然のアミノ酸等を含む人工的なペプチドを測定・解析対象としてもよい。これらのタンパク質は、球状タンパク質、多ドメインタンパク質から分離された機能・構造ドメインタンパク質および膜タンパク質を含む。また、これらのタンパク質はタンパク質の複合体も含む。また、これらのポリペプチドは、直鎖であっても、分岐していてもよく、化学修飾されていてもよい。また、これらのポリペプチドは、測定するNMRスペクトルの種類に応じて、13Cや15NやHなどの安定同位体を含む同位体で標識されていてもよい。
本明細書における「目的ポリペプチド」とは、測定または解析対象となるポリペプチドのことをいう。その分子量は、好ましくは20000以下、より好ましくは15000以下、最も好ましくは10000以下のものが選ばれる。分子量20000以下ではNMRスペクトルがシャープになり、分子量15000以下ではブロードなシグナルが減少し、分子量10000以下ではタグポリペプチド由来のシグナルとの区別がより明確になる。
本明細書における「タグポリペプチド」とは、精製の際にアフィニティー精製のタグとして使用可能であるか、あるいは目的ポリペプチドに付加することでポリペプチド全体の親水性を向上させるタグとして使用可能な任意のポリペプチドをいう。GST、マルトース結合タンパク質(MBP)、SET、チオレドキシンなど、この技術分野の通常の知識を有する者に知られたタグポリペプチドを用いることができるが、抗体を作成することで任意のポリペプチドをタグとして使用することも可能である。また、大腸菌などの宿主で発現させる場合には、発現上昇をもたらすものであってもよい。また、好ましくは、親水性であるか、親水性のアミノ酸を多く含み、より好ましくは、密なポリペプチドあるいは球状ポリペプチドである。
タグポリペプチドの分子量(複合体を形成する時はその複合体の見かけの分子量)は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、更に好ましくは20000以上であるが、目的ポリペプチドより分子量が大きいことが望ましい。分子量5000以上では目的ポリペプチドと区別をつけることが容易に可能になり、分子量10000以上ではタグによる融合ポリペプチドの性質変化がより顕著になり、分子量20000以上ではシグナルがブロードなピークを有する傾向が高くなり、後述する抽出処理において非常に有利となる。
本明細書における「リンカー」とは、目的ポリペチドとタグポリペプチドの間に介在し、両者を共有結合的に結合させるものをいう。リンカーは、目的ポリペプチドおよびタグポリペプチドの立体構造を乱さなければ、目的ポリペプチドおよびタグポリペプチドのN末端、C末端あるいは側鎖の何れか一箇所または複数箇所に付与してもよい。リンカーとしては、通常ポリペプチドが用いられるが、各種置換アルキル、アルキレンまたはアリルなどの非ペプチド性のものでもよい。
ポリペプチド性のリンカーは、目的ポリペプチドとタグポリペプチドが相互に区別して扱えるくらいの長さで、かつ、それ自体が目的ポリペプチドあるいはタグポリペプチドと相互作用しないものから選ばれ、その長さは、5残基以上が望ましく、更に好ましくは5−30残基、より好ましくは5−25残基、より好ましくは5−20残基、より好ましくは5−15残基、最も好ましくは5−10残基である。5残基以上であれば目的ポリペプチドとタグポリペプチドを相互に区別して扱え、5−30残基では、タグポリペプチドによる親水性向上の効果が向上し、5−25残基ではより効果的に融合ポリペプチドの凝集を防ぐことができ、5−20残基では目的ポリペプチドの変性を防ぐ効果が増大し、5−15残基ではリンカー部分が相互作用する可能性が減少し、5−10残基ではより容易に融合ポリペチドを調整することができるようになる。非ペプチド性のリンカーに関しても、好ましくは上記ポリペプチドに相当する長さとなるものから選ばれる。また、ポリペプチド性のリンカーは、好ましくは、グリシンおよび/またはプロリンからなるか、それらを含む。
本明細書における「融合ポリペプチド」とは、目的ポリペプチドとタグポリペプチドと目的ポリペプチドとタグポリペプチドの間に介在して両ポリペプチドを結合させるリンカーとを含むポリペプチドをいう。リンカーを介して共有結合的に付加されるタグポリペプチドは、目的ポリペプチドの立体構造を乱さなければ、目的ポリペプチドのN末端、C末端あるいは側鎖の何れか一箇所または複数箇所に付与してもよい。
上記のタグポリペプチドまたは融合ポリペプチドを得る方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、タグポリペプチドまたは融合ポリペプチドを産生する遺伝子を用いた遺伝子組み換えにより、インビトロ合成、あるいは大腸菌、酵母、細胞などの宿主を形質転換し、得られた宿主を培養することによりこれを得る方法、化学合成機などを用いた化学的合成によりこれを得る方法などを挙げることができる。化学合成機を用いる場合、タグポリペプチドと目的ポリペプチドを、上記の方法等により個別に得た後、更にアミノ酸残基に対する化学修飾や、更なる化学合成によりそれらをリンカーで結合させることも可能である。以上の方法は、本技術分野でよく知られた手順(発現、精製等)に従って行うことができる。
また、これらのポリペプチドの任意の原子または元素は同位体により標識されていてもよい。同位体による標識の方法は、本技術分野でよく知られた方法を用いて行われるが、例えば、標識アミノ酸を培地に加えて宿主で発現させる、または標識アミノ酸を用いて化学合成する方法や、培地に13C−グルコースや15N−塩化アンモニウムを加えて宿主で発現させる方法などを挙げることができる。
本明細書における「NMR測定に許容な溶媒」とは、目的のNMRスペクトルを測定することを阻害しない溶媒のことをいう。生理的条件下で測定する場合は、特に水が好ましく、通常は、アミド結合のプロトンも測定することが多いため、軽水が用いられる(通常はNMR測定の際のロック用に10%前後(2−20%、より好ましくは5−15%)の重水を含むが、これに限られず、他のロック用溶媒を用いてもよい。)。ただし、これに限られず、アミドのプロトンを測定する必要の無い場合、軽水のシグナルに重なったシグナルを測定したい場合など、測定対象のスペクトルによっては、重水や他の溶媒であってもよい。
試料の溶媒のpHは、測定対象のポリペプチドが測定したい構造(生理的条件での構造など)を保ち得る範囲内で選ばれる。タンパク質や多くのポリペプチドの場合、pHは、通常、2−10、より好ましくは3−9、さらに好ましくは4−8、最も好ましくは5−7の範囲から選ばれるが、これに限られない。また、測定するNMRスペクトルによっては、アミドプロトンなどの交換可能プロトンの交換速度を遅くするために、pHを下げることが望ましいこともある。緩衝剤としては、測定対象の元素を含まないものが好ましいがこれに限られず、測定目的、測定対象元素、および測定対象NMRスペクトルの種類に応じて、本技術分野でよく知られたものの中から選ばれる。通常、プロトンのNMRを測定する場合は、プロトンを含まない緩衝剤が最も頻繁に使われており、例えば、各種リン酸緩衝液(剤)や、重水素化酢酸緩衝液(剤)などを挙げることができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。また、この装置を含むプログラムについても説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
〔実施形態の概略〕
図1は、実施形態に係る測定装置の全体構成を示した概略図である。なお、図1においては、NMRスペクトル測定装置1000の概略のみを示した。NMRスペクトル測定装置1000は、NMRスペクトルの測定を担うNMRスペクトル測定部400と、NMRスペクトル測定装置1000の制御を行うワークステーション300を備え、NMRスペクトル測定部400は更に、分光計コンソール200と、NMR超伝導磁石100と、電磁波パルスの照射とシグナルの検出を行うプローブ102と、電磁波パルスの発生や照射のタイミングなどを制御する分光計202と、デジタル信号への変換を担うA/D変換器204とを備える。
ワークステーション300では、分光計202およびA/D変換器204により生成されたデジタル信号を取得して所定のフォーマットでハードディスクなどの記録媒体に格納する。なお、NMR装置は高価なので、測定したら直に次ぎの研究者が待っているため、交代しながら使用することが一般的である。例えば、NMR装置で測定するとき、1回1試料の測定に1週間かかる場合がある。この場合には、3次元の測定の場合、百MB(メガバイト)単位のFIDデータとなる。従って、データ処理(フーリエ変換を含む)は、ネットでつながった別のワークステーション(不図示)で行うことになる。多くの場合、各研究室に専用のソフトを搭載したワークステーションを持っている。
タンパク質の立体構造を解析するためには、3次元NMR測定を数種類おこなって、シグナルの帰属をすることが、第一関門である。一般的には、1測定に約1週間、各パルスシークエンスの測定を終えるには、NMRスペクトル測定装置1000を占有しても1カ月以上かかることが多い。他の試料も測定することになるので、一種類のタンパク質の立体構造の解析に必要なデータを取得するために何ヶ月もかかることになる。また、NMR測定は多数のパラメーターを試料に合わせて設定する必要がある。そのため、GSTタグ付きタンパク質の場合にも同じように注意深く条件を決めて測定を開始することになる。よって、一度測定を開始すると数日間は触ることが出来ない場合が多い。その結果、測定している間、既に測定済みのデータをワークステーション300とは別のワークステーションに移して解析を進めることが効率的である。
また、測定の結果得られたNMRスペクトルのピークの重なりが全く無い場合は、蛋白質の立体構造の全自動解析が可能かもしれないが、数種類の3次元NMR測定データを矛盾無く説明するには、相当な時間が必要である。そのため、将来は、使い易くなると想定されるが、その場合でもやはりNMRスペクトル測定装置1000付属のワークステーション300で解析するよりも他のワークステーションで解析することが有利である。NMRスペクトル測定装置1000は高価な装置であり、液体ヘリウムを使うため維持費も高い。そのため、NMRスペクトル測定装置1000は、常時測定している場合が多い。従って、研究機関のコストパフォーマンスを考慮すると、NMRスペクトルの測定以外の部分の機能を実行するのは、高性能で安い別のワークステーションを使うのが得策である。
このように、NMRスペクトル測定装置1000に付属のワークステーション300には、測定ソフトのみを搭載し、NMRスペクトル測定装置1000とは独立した別のワークステーションにスペクトルの解析ソフトとタンパク質の構造計算ソフトを別途搭載する形式が一般的である。このような形式が、将来も続くと思われるが、NMRスペクトル測定装置1000に付属のワークステーション300にスペクトルの解析ソフトとタンパク質の構造計算ソフトを併せて搭載することを除外する趣旨ではない。
図2は、実施形態に係るNMR測定用の試料の概略図である。試料110は、測定用チューブ(NMR試料管)118に収められ、キャップ106をした後、NMR測定装置に設置される。試料110中においては、目的ポリペプチド114aはリンカー116aを介してタグポリペプチド112aと共有結合している。本明細書においては、この112a−116a−114aを融合ポリペプチドと称する。ある実施形態では、タグポリペプチドは、例えばGSTであり、GSTは図2に示すように溶液中では二量体を形成しているため、見かけの分子量は約50kDaとなる。
タグにリンカーを付与するのは、タグ自体に柔軟性を持たせること、および目的ポリペプチドとタグである親水性アミノ酸残基との間に距離を置くことにより、それらの間における相互作用を防止することを目的とするためである。さらに、リンカー部分を自由に動きやすい構造にすることで、目的ポリペプチドとタグポリペプチドを相互に独立して扱うことが可能となる。したがって、本発明における融合ポリペプチドは、目的ポリペプチド本来の機能発現や立体構造に影響が及ばず、目的とするポリペプチドの機能や構造を損なうことなく溶解度の向上が可能であるという優れた効果を発揮する。
図3は、実施形態に係る融合ポリペプチドの取得法の概略図である。ここでは、GSTをタグポリペプチドとして使用し、融合ポリペプチドとして宿主に発現させる場合の実施形態を示す。大腸菌などの宿主に、「GST−目的ポリペプチド」という融合ポリペプチドの発現ベクターを組み込み、発現条件下で融合ポリペプチドを発現させる(図中(a))。次に、超音波破砕や界面活性剤などの本技術分野でよく知られた方法により、宿主を溶解する(図中(b))。この時、そのままの条件では所望の高次構造をとっていないと考えられる場合は、透析やシャペロンカラムなどを用いて、所望の構造へと遷移させる(図中(c))。次に、GSTタグ部分を介して、融合ポリペプチドをグルタチオン樹脂と結合させ(図中(d))、目的外のものを洗い流す(図中(f))。最後に、グルタチオンやpH変化などの本技術分野でよく知られた方法を用いて、グルタチオン樹脂と結合した融合ポリペプチドを溶出させ(図中(f))、所望の融合ポリペプチドを得る(図中(g))。
図4は、実施形態に係るNMRスペクトル測定方法の概略図である。ここでは、GSTをタグポリペプチドとして使用した場合の実施形態を示す。図3に示した方法等により得られた融合ポリペプチド(図中(a))は、本発明以前はGSTタグの部分が測定の障害になると考えられていたため、トロンビンなどのプロテアーゼによりリンカー部分で切断されGSTタグ部分を除去されていた(図中(b))。しかし、ポリペプチドによっては、GSTタグを取り除くことで、凝集(あるいは会合または分解)し、その後の測定の障害となってしまうという問題点を有していた。本発明においては、融合ポリペプチドをそのまま測定用の試料として用いることで、凝集や不安定性の問題を解決し、NMRスペクトルを測定することを可能にした(図中(d))。その後、融合タンパク質のNMRスペクトルのGSTタグ相当部分を除去することにより、目的タンパク質のNMRスペクトルを得ることができる。その際、参考のために、GSTのNMRスペクトルを別途測定することもできる(図中(e))
図5は、実施形態に係るNMRスペクトルの抽出ステップの概略図である。GSTのように大きな分子量のタグポリペプチドを用いることで、タグポリペプチド由来のシグナルはブロードなピークを有する傾向を示す(図中(a))。そのため、タグポリペプチド由来のシグナルを簡便に除去するために、タグポリペプチド由来のピークの最大シグナル強度に基づく閾値(例えば、最大シグナル強度を超える閾値や、最大シグナル強度の50%の閾値)を用いて、その閾値以上のシグナル強度を有する目的ポリペプチド由来のピークを抽出する処理(図中(b))を行うことができる。ここで、タグポリペプチド由来のピークの最大シグナル強度は、別途測定したタグ部分のNMRスペクトルとそのポリペプチド濃度に基づき、算出することができる。
あるいは、実施形態に係るNMRスペクトルの抽出ステップでは、タグポリペプチド由来のシグナルを簡便に除去するために、融合ポリペプチドのNMRスペクトルとタグポリペプチドのNMRスペクトルとの差を求めてもよい。FT−NMRでは2通りの差の取り方がある。(1)フーリエ変換する前のFID(Free Induction Decay)のデータの差を取リ、差のFIDをフーリエ変換する。(2)フーリエ変換してNMRスペクトルにしたあと差をとる。
図6は、GSTとGST−Hex−C(HexのC末端)の15N−HSQCスペクトルの比較図である。GST単独のNMRスペクトルが左図(a)、GST−Hex−C(融合ポリペプチド)のNMRスペクトルが右図(b)となる。(a)のNMRスペクトルは低くブロードなピークを示し、(b)のNMRスペクトルは、そのようなピークを除くように抽出されているため、左に見られるGST由来のシグナルが見られない。
ただし、図6において、GST単独のスペクトル(a)はNMRスペクトルの最大シグナル強度の1%に相当する閾値(1)により、その閾値(1)を超えるピークを抽出したものである。また、GST−Hex−Cのスペクトル(b)は、閾値(1)よりも大きい値からなる閾値(2)(閾値(1)の150%に相当する)により、その閾値(1)を超えるピークを抽出したものである。すなわち、GST−Hex−Cのスペクトル(b)は上記のNMRスペクトル抽出処理後のものである。
図7は、上記のようにして得られたCBCANHおよびCBCA(CO)NHスペクトルを基にしたHex−Cのα炭素およびβ炭素のNMRスペクトルの帰属図である。縦軸が13C、横軸がH、Z軸が15Nのシグナルを表しており、各アミノ酸残基のα位とβ位の炭素を帰属している。
図8は、上記のようにして得られた様々なスペクトルを基にHex−Cの立体構造解析を行った結果を画像で示した図である。複数のスペクトルを基に、各原子の相対的な位置関係などを特定し、画像に変換すると、図8に示すような立体構造図が得られる。
以上のように、本発明によると、直接NMRスペクトルを測定することが困難な目的ポリペプチドに対しても、タグポリペプチドとの融合ポリペプチドを測定対象とすることでその溶解性・安定性を向上させ、測定された融合ポリペプチドのNMRスペクトルから、低くブロードであるタグポリペプチド由来のNMRスペクトルを除去する(すなわち、高くシャープである目的ポリペプチド由来のNMRスペクトルを抽出する)ことで、間接的にNMRスペクトルの測定およびそれを用いた立体構造解析を行うことが可能となる。
〔実施形態〕
図9は、実施形態に係る解析装置の全体構成を示した機能ブロック図である。なお、図9においては、解析装置2000の概略のみを示し、詳細な内部構成については、後述する他の図面を用いて説明する。
解析装置2000は、この解析装置は、直接NMRスペクトルを測定することが困難な目的ポリペプチドのNMRスペクトルの測定においても、タグポリペプチドとの融合ポリペプチドを対象として、測定された融合ポリペプチドのNMRスペクトルから、より低くブロードであるタグポリペプチド由来のNMRスペクトルを除いた目的ポリペプチド由来のピークを抽出することで、間接的に目的ポリペプチドのNMRスペクトルを測定することを可能にする。
また、解析装置2000は、NMRスペクトル測定装置1000により測定されたNMRスペクトルまたは記憶媒体に格納されているNMRスペクトルを取得するNMRスペクトル取得部1400およびスペクトルの処理を行うNMRスペクトル処理部1300を備える。NMRスペクトル取得部1400は更に、融合タンパク質のNMRスペクトルを取得するタグ付スペクトル取得部402およびタグポリペプチドのNMRシグナルを取得する対照スペクトル取得部404を有する。NMRスペクトル処理部1300は更に、目的ポリペプチド由来のピークを抽出する処理を行うシグナル抽出部302、得られた目的ポリペプチドのNMRスペクトルの確認を行う目的スペクトル確認部304、およびその目的ポリペプチドのNMRスペクトルを外部に出力する出力部306を有する。
本装置により取得された目的ポリペプチドのNMRスペクトルは、出力部を通じて外部に出力することができ、プリンタ602で印刷することも、サーバ604に格納することも、モニター612に表示することも、ネットワーク606を介して更に外部に送信することも、あるいは、別のワークステーションからなる立体構造解析装置500に出力してNMRスペクトルを解析し、立体構造を得ることも可能である。
図10は、実施形態に係る解析装置の、シグナル抽出部302の内部構成をさらに詳細に示した機能ブロック図である。
シグナル抽出部302は、入力されたNMRスペクトルおよびその測定条件を基に閾値を判定するシグナル強度判定部307と、その閾値に基づき実際に目的ポリペプチド由来のピークを抽出するフィルタリング部309とを備える。また、シグナル抽出部302は、閾値記憶部314および閾値参照部312も備えており、既に記憶済みの、それぞれのタグポリペプチドに対する閾値を参照し、その閾値を直接用いるか、もしくはシグナル強度判定部307を介して測定条件による修正を行った値を用いて抽出することも可能である。その場合は、タグポリペプチド単体を調製する必要も、測定する必要も無く、更に利便性が高まる。
図11は、実施形態に係る測定装置の、目的スペクトル確認部304の内部構成をさらに詳細に示した機能ブロック図である。
目的スペクトル確認部304は、シグナル抽出部302から入力されるNMRスペクトルを、対応する他のNMRスペクトル中にそれぞれのピークに対応するピークがあるかを確認する対応スペクトル確認部316、および一次配列と他の対応するNMRスペクトルを用いて、それぞれのピークが連鎖帰属可能かどうかを確認する連鎖帰属確認部320を備える。対応スペクトル確認部316は、同じように測定され、入力された他のNMRスペクトルを用いてもよいが、それらのNMRスペクトルを対応スペクトル記憶部318に格納しておくことも可能である。また、一次配列は、一次配列記憶部322に格納しておくことも可能である。
確認後の目的ポリペプチドのNMRスペクトルは、そのまま出力部306を通じて外部に出力することも可能であるが、内部に保存、あるいは画像データの形で内部に保存あるいは出力することも可能である。目的スペクトル確認部304は、そのための、目的スペクトル記憶部324および画像データ生成部326を更に備えてもよい。
〔実施形態の変形例〕
図12は、実施形態に係る解析装置2000の変形例の内部構成を詳細に示した機能ブロック図である。
解析装置2000は、図10で示したタグ付スペクトル取得部402と、タグポリペプチドのNMRスペクトルを取得するための対照スペクトル取得部404とを有し、それらを介して各NMRスペクトルを取得する。タグ付スペクトル取得部402では、NMRスペクトル測定装置1000からCD−ROM、MDなどの記録媒体を介して融合ポリペプチドのNMRスペクトルを取得してもよく、あるいはNMRスペクトル測定装置1000からLANなどのネットワークを介して融合ポリペプチドのNMRスペクトルを取得してもよく、またはあらかじめ解析装置2000内部の記憶装置に格納されている融合ポリペプチドのNMRスペクトルを読み出して取得してもよい。
対照スペクトル取得部404においては、NMRスペクトル測定装置1000で直接タグポリペプチドのNMRスペクトルを測定して、そのNMRスペクトルを取得するかわりに、外部のネットワーク610あるいはサーバ608、もしくは内部の対照スペクトル記憶部310から、既に記憶されたデータの形でNMRスペクトルを取得してもよい。
この変形例では、シグナル抽出部302において、融合ポリペプチドのNMRスペクトルとタグポリペプチドのNMRスペクトルとの差を取ることにより、目的ポリペプチド由来のピークを抽出する。この抽出処理を経て得られた目的ポリペプチドのNMRスペクトルは、目的スペクトル確認部304において、前述のように確認処理を経た後、立体構造解析部308で目的ポリペプチドの立体構造の解析に用いられる。この構成により、目的ポリペプチドの立体構造を直接解析することが困難な場合でも、融合ポリペプチドとタグポリペプチドのNMRスペクトルを基に、目的ポリペプチドの立体構造解析が可能となる。
解析結果は、出力部306を通じて外部に出力することができ、プリンタ602で印刷することも、サーバ604に格納することも、モニター612に表示することも、ネットワーク606を介して更に外部に送信することも可能である。
図13は、この変形例における各スペクトル取得部をさらに詳細に示した機能ブロック図である。
融合ポリペプチドのNMRシグナルを取得するタグ付スペクトル取得部402は、NMRスペクトル測定装置1000のワークステーション300と研究所内LANからなるネットワーク101と接続しており、このネットワーク101を介して融合ポリペプチドのNMRスペクトルを取得する。タグポリペプチドのNMRスペクトルを取得する対照スペクトル取得部は、対照スペクトル読出部406を有し、外部の対照スペクトル記憶部310からタグポリペプチドのNMRスペクトルデータである対照スペクトルデータ408を取得することができる。この場合、タグポリペプチド単体の調製およびNMRスペクトルの測定が必要なくなり、より簡便な測定が可能となる。このようにして得られた融合ポリペプチドおよびタグポリペプチドのNMRスペクトルは、上述のシグナル抽出部302、目的スペクトル確認部304等を介して処理される。
図14は、この変形例における立体構造解析装置の目的スペクトル確認部304および立体構造解析部308をさらに詳細に示した機能ブロック図である。
目的スペクトル確認部304は、シグナル抽出部302から入力されるNMRスペクトルを、対応する他のNMRスペクトル中にそれぞれのピークに対応するピークがあるかを確認する対応スペクトル確認部316、および一次配列と他の対応するNMRスペクトルを用いて、それぞれのピークが連鎖帰属可能かどうかを確認する連鎖帰属確認部320を備える。対応スペクトル確認部316は、同じように測定され、入力された他のNMRスペクトルを用いてもよいが、それらのNMRスペクトルを対応スペクトル記憶部318に格納しておくことも可能である。また、一次配列は、一次配列記憶部322に格納しておくことも可能である。また、得られた目的ポリペプチドのNMRスペクトルはそのまま立体構造解析部308に入力されてもよいが、目的スペクトル記憶部324に格納し、後に解析処理を行うことも可能である。
立体構造解析部308は、例えば、連鎖帰属判定部340、NOESY計算部328、TOCSY計算部330、HSQC計算部332、総合計算部334を備え、得られた複数のNMRスペクトルを個別に計算し、各ピーク(シグナル)の帰属を行い、またそれらを総合的に構造計算することで立体構造を解析する。具体的には、立体構造解析部308では、構造計算をするために、これらの各種計算部・判例部によって、数種類の3次元スペクトルを用いて、スペクトルの解釈(帰属:assignment)をしながら、構造情報を確定するという手順を実行することになる。ここで用い得られた立体構造は立体構造画像データ生成部338で画像に変換してもよく、また、画像データ、座標データ共に、立体構造記憶部336に記憶し、後に参照することも可能である。また得られた画像データあるいは解析データは、出力部306を通じて外部に出力することも可能である。
〔実施形態の動作の説明〕
図15は、実施形態に係る測定・解析装置(変形例を除く)の動作を説明するためのフローチャートである。
NMRスペクトル測定装置1000での測定では、まず融合ポリペプチドの調製が行われ(S102)、次いで、その融合ポリペプチドのNMRスペクトルが測定され(S104)、融合ポリペプチドのNMRスペクトルが得られる。
それと並行して、解析装置2000では、タグポリペプチドのNMRスペクトルの取得も行われるが、最初に、タグポリペプチドの測定しようとするNMRスペクトルに関する閾値データが既知であるかどうかの判定が行われ(S200)、既知であった場合、閾値記憶部314から閾値参照部312により読み出され(S214)、抽出処理に用いられる。S200の判定において閾値データが既知でなかった場合、タグポリペプチドの測定しようとするNMRスペクトル自身が既知であるかどうかの判定が行われ(S202)、既知であった場合、対照スペクトル読出部406によりタグポリペプチドのNMRスペクトルが読み出され(S210)、抽出処理に用いられる。
また、S202の判定において、タグポリペプチドのNMRスペクトルが既知でなかった場合は、融合ポリペプチドのNMRスペクトル取得と同様に、まずタグポリペプチドが調製され(S204)、NMRスペクトル測定装置1000においてタグポリペプチドのNMRスペクトルが測定され(S206)、抽出処理に用いられる。
そして、解析装置2000では、シグナル強度判定部307において、融合ポリペプチドのNMRスペクトルの測定条件に応じた閾値は、タグポリペプチドのNMRスペクトルおよび両ポリペプチドの測定条件の違いを考慮して算出される。または、この閾値は、閾値参照部312を通じて取得されてもよい。その後、フィルタリング部309において、融合ポリペプチドのNMRスペクトルからその閾値以上のシグナル強度を持つピークが抽出される(S106)。
目的スペクトル確認部304において、S106の結果得られたNMRスペクトルが、他のNMRスペクトルおよび/または連鎖帰属可能性から確認され(S108)、目的ポリペプチドのNMRスペクトルが得られる。そして、この目的ポリペプチドのNMRスペクトルが出力がされる(S112)。
あるいは、引き続いて、立体構造解析部308において、得られたNMRスペクトルによる立体構造解析がなされ(S110)、解析結果が出力される(S112)。
次に、実施形態に係る測定・解析方法と、その方法および上記の装置に用いる試料の作用効果について説明する。
〔実施形態の作用効果の説明〕
上記の実施形態の目的ポリペプチドのNMRスペクトルの解析方法は、タグ付スペクトル取得部402がその目的ポリペプチドとその目的ポリペプチドより分子量の大きなタグポリペプチドとその両ポリペプチドの間に介在してその両ポリペプチドを結合させるリンカーとを含む融合ポリペプチドのNMRスペクトルを取得するステップと、シグナル抽出部302がその融合ポリペプチドのNMRスペクトルから、そのタグポリペプチド由来のピークの最大シグナル強度に基づく閾値を用いて、その閾値以上のシグナル強度を有する目的ポリペプチド由来のピークを抽出するステップとを含む解析方法である。(以下、装置の説明に関しては、特に示さない限り図9を参照のこと)
そのため、この方法では、(タグ切断後などに)凝集や分解してしまうなど、直接NMRスペクトルを測定することが困難な目的ポリペプチドに対しても、タグポリペプチドとの融合ポリペプチドを用いることでその溶解性・安定性を向上させ、NMRスペクトルの測定を可能にする。また、タグポリペプチドが目的ポリペプチドより大きく、かつリンカーを介して付加していることにより、タグポリペプチド由来のNMRスペクトルはより低くブロードになるため、それらの最大シグナル強度に基づく閾値以上のピークを抽出することで、間接的に目的ポリペプチドのNMRスペクトルを測定することを可能にする。またその手順も他の方法に比べ簡便である。
また、上記の実施形態の解析方法は、対照スペクトル取得部404がそのタグポリペプチドのNMRスペクトルを取得するステップを更に含み、その目的ポリペプチド由来のピークを抽出するステップが、そのタグポリペプチドのNMRスペクトルの最大シグナル強度をその融合ポリペプチドのNMRスペクトルでのシグナル強度に換算することにより、その閾値を算出するステップを含む解析方法である。そのため、タグポリペプチドのNMRスペクトルを実際に取得し、閾値算出に用いることで、より精確にタグポリペプチド由来のシグナルを除くことができる。
また、上記の実施形態の解析方法では、プローブ102、分光計202、A/D変換器204などを有するNMRスペクトル測定装置1000によって測定されたタグポリペプチドのNMRスペクトルを取得して解析に用いるため、融合ポリペプチドのNMRスペクトルの測定条件と近い条件下で測定された精確なタグポリペプチドのNMRスペクトルを用いることができる。その結果、両者のNMRスペクトルを対比して、より精確に目的ポリペプチドのNMRスペクトルを測定することが可能となる。
また、上記の実施形態の解析方法では、立体構造を解析するステップが、核種または測定条件の異なる複数種の目的ポリペプチド由来のNMRスペクトルを用いて、目的ポリペプチドの立体構造を解析するステップを含んでいる。このように、複数の核種または複数種のNMRスペクトルを総合的に解析することで、精確な立体構造の解析が可能となる。
また、上記の実施形態の解析方法では、タグポリペプチドのNMRスペクトルを取得するステップが、対照スペクトル取得部404によって、外部のサーバ608、ネットワーク610、対照スペクトル記憶部310などに格納されている、あらかじめ測定されたタグポリペプチドのNMRスペクトルを取得するステップを含んでいる。そのため、あらかじめ測定されているデータを用いることができるので、タグポリペプチドの調製や測定の手間を省き、より迅速で簡便な解析を行うことが可能となる。
また、上記の実施形態の解析方法では、タグポリペプチドのNMRスペクトルおよび融合ポリペプチドのNMRスペクトルがいずれも所定のNMR測定条件でNMR測定されている。さらに、閾値を算出するステップが、シグナル強度判定部307によって、そのNMR測定条件におけるポリペプチド濃度および最大シグナル強度の対応関係に基づいて、そのNMR測定におけるそのタグポリペプチドおよびその融合ポリペプチドの双方の濃度を比較することにより、そのタグポリペプチドのNMRスペクトルの最大シグナル強度を、その融合ポリペプチドのNMRスペクトルでのシグナル強度に換算するステップを含んでいる。そのため、ポリペプチド濃度とシグナル強度が相関または比例することを利用して、簡便かつ精確に、異なる測定条件のポリペプチド濃度からも、最大シグナル強度を算出し、閾値を設定することが可能となる。
また、上記の実施形態の解析方法では、目的ポリペプチド由来のピークを抽出するステップが、閾値参照部312によって閾値記憶部314からあらかじめ算出されている閾値を取得するステップを含んでいる。このように、あらかじめ算出されている閾値を用いることで、より迅速な測定が可能となる。
また、上記の実施形態の解析方法では、対応スペクトル確認部316によって、抽出された目的ポリペプチド由来のピークが融合ポリペプチドのCBCANHスペクトルおよびCBCA(CO)NHスペクトルなどの他種類のNMRスペクトルの中に対応するピークを有することを確認するステップをさらに含んでいる。この確認作業により、抽出後のNMRスペクトル内に、タグポリペプチド由来の物がないことが確認され、より精確で確実な測定結果を得ることができる。
〔実施形態の変形例の作用効果の説明〕
上記の目的ポリペプチドの立体構造のNMRによる解析方法は、目的ポリペプチドとその目的ポリペプチドより分子量の大きなタグポリペプチドとその両ポリペプチドの間に介在してその両ポリペプチドを結合させるリンカーとを含む融合ポリペプチドのNMRスペクトルをタグ付きスペクトル取得部402により取得するステップと、シグナル抽出部302を用いて、その融合ポリペプチドのNMRスペクトルとそのタグポリペプチドのNMRスペクトルとの差を取ることによって、目的ポリペプチド由来のピークを抽出することにより、その目的ポリペプチド由来のNMRスペクトルを生成するステップと、その目的ポリペプチド由来のNMRスペクトルに基づいて、前記目的ポリペプチドの立体構造を立体構造解析部308により解析するステップとを含む解析方法である(以下、解析装置の説明に関しては、特に示さない限り図12を参照のこと)。
そのため、この方法では、(タグ切断後などに)凝集や分解してしまうなど、NMRによる直接の立体構造解析が困難な目的ポリペプチドに対しても、タグポリペプチドとの融合ポリペプチドを用いることでその溶解性・安定性を向上させ、立体構造の解析を可能にする。また、タグポリペプチドが目的ポリペプチドより大きく、かつリンカーを介して付加していることにより、タグポリペプチドの由来のNMRスペクトルは独立したスペクトルを示しやすくなると同時に、タグポリペプチド由来のNMRスペクトルはより低くブロードになるため、両者のNMRスペクトルの差を求めることによって目的ポリペプチド由来のピークを抽出することで、間接的に目的ポリペプチドのNMRスペクトルを解析し、それを用いて目的ポリペプチドの構造を解析することが可能となる。
〔実施形態に用いる試料の作用効果の説明〕
上記の実施形態の測定方法は、NMRスペクトル測定のための試料であって、目的ポリペプチドとその目的ポリペプチドより分子量の大きなタグポリペプチドとその両ポリペプチドの間に介在してその両ポリペプチドを結合させるリンカーとを含む融合ポリペプチドと、NMRスペクトル測定に許容可能な溶媒とを含む試料を用いる。そのため、直接NMRスペクトルを測定することが困難な目的ポリペプチドのNMRスペクトルの測定においても、タグポリペプチドとの融合ポリペプチドを用いることでその溶解性・安定性を向上させ、NMRスペクトルの測定を可能にする。また、タグポリペプチドが目的ポリペプチドより大きく、かつリンカーを介して付加していることにより、タグポリペプチド由来のNMRスペクトルはピークがよりブロードになるため、この試料を用いると、タグポリペプチド由来のブロードなピークのNMRスペクトルと、目的ポリペプチド由来のよりシャープなピークのNMRスペクトルとの区別が容易となり、間接的に目的ポリペプチドのNMRスペクトルを取得・帰属することが可能になる。
また、この試料は、タグポリペプチドが親水性のポリペプチドである試料である。そのため、この試料を用いると、タグポリペプチドが親水性であることにより、融合ポリペプチド同士の凝集を防がれ、NMRスペクトルの測定がさらに容易となる。また、親水性のタグポリペプチドとの融合ポリペプチドとすることにより、その調製の過程においても、(遺伝子工学的な手法を用いた場合)発現の上昇や、安定性などの点でも効果を奏することができる。親水性のポリペプチドとしては、GST、MBP、SETなどを用いることができるが、タグとして使用可能なポリペプチドであれば、これらに限られず、任意の親水性ポリペプチドを用いることが可能である。
また、この試料は、タグポリペプチドがグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)である試料である。GSTは、親水性でNMRスペクトルもよく知られ、また二量体を形成するために見かけの分子量が約50000と大きく、密になっていることで、そのNMRスペクトルはブロードで低いピークを示すため、明確に目的ポリペプチド由来のピークとの区別がつき、また、抽出処理も確実に行え、より精確な目的ポリペプチドのNMRスペクトル測定が可能となる。また、精製の過程においても、精製法のよく知られたGSTを用いることで迅速、簡便かつ安価な精製を行うことができる。
また、この試料は、タグポリペプチドが分子量20000以上である試料である。タグポリペプチドの分子量が大きいことで、タグポリペプチドのNMRスペクトルピークがよりブロードとなるため、より簡便かつ確実に抽出作業を行うことが可能となる。
また、この試料は、目的ポリペプチドがHex−Cなどの分子量10000以下である試料である。目的ポリペプチドの分子量が小さいことにより、目的ポリペプチド由来のNMRシグナルのピークがよりシャープとなり、タグポリペプチド由来のシグナルとの区別もつきやすく、また、抽出の際も目的ポリペプチド由来のNMRシグナルのピークが失われる危険性を回避できる。
また、この試料は、リンカーが5残基以上のアミノ酸残基からなるポリペプチドである試料である。リンカーが長いことにより、目的ポリペプチドとタグポリペプチドが独立した別々のポリペプチドとして扱えるようになり、そのNMRスペクトルもより独立したものになり、目的ポリペプチド由来のNMRシグナルのピークがブロードになるのを防ぐことができる。また、タグポリペプチドにより本来の目的ポリペプチドの立体構造が乱されることも防ぎ、他方、目的ポリペプチドによりタグポリペプチドのNMRスペクトルが影響を受け、除去(抽出処理)が困難になるのを防ぐこともできる。
また、この試料は、グリシン残基またはプロリン残基を含むポリペプチドである試料である。リンカーが他と相互作用しにくいグリシンおよび/またはプロリンを含むことにより、リンカー自身の構造もより柔軟になると共に、リンカーが目的ポリペプチドおよびタグポリペプチドと相互作用しにくくなり、より精確なNMRスペクトルを得ることができる。
以上全ての実施形態のうち、融合ポリペプチドとして宿主に発現させた場合に関しては、通常、宿主を用いて遺伝子工学的に合成された融合ポリペプチドから目的ポリペプチドを分離精製するステップは煩雑であるが、本発明においてはタグポリペプチドの切断・除去の必要が無くなり、手順の煩雑さを減少させ、迅速な測定を可能にすると共に、収率向上等の面でも寄与するという更なる効果も奏する。
なお、上記の実施形態により説明される測定・解析装置は、本願発明を限定するものではなく、例示することを意図して開示されているものである。本願発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載により定められるものであり、当業者は、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲において種々の設計的変更が可能である。
例えば、対照スペクトルを取得する場合は、閾値参照部312および閾値記憶部314を設ける必要は無く、逆に閾値参照部312を用いる場合は、対照スペクトル取得部404を設ける必要は無い。また、スペクトルの確認ステップを省略する場合は、目的スペクトル確認部304を有さなくてもよい。また、各記憶部の代わりに、ネットワーク等につながり、外部から情報を得るように設計を変更することも可能である。更に、測定されたデータを、各記憶部に格納可能なように設計することも可能である。更に、立体構造解析部308においては、立体構造解析の一例を示したに過ぎず、本技術分野で確立された任意のNMRスペクトルを用いて立体構造解析を行うような設計変更も可能である。また、必要に応じて、フーリエ変換部などを更に付加する設計変更も当然のことながら可能であり、これらのような態様の測定・解析装置が本願発明の技術的範囲に含まれることはいうまでもない。
また、上記の実施形態において、あらかじめ測定されたタグポリペプチドのNMRスペクトルの測定データは、融合ポリペプチドと同じ測定条件下での測定データであることが望ましいが、これに限られず、類似あるいは異なる測定条件下での測定データを換算することにより、本実施形態に用いることも可能である。簡易的には、両ポリペプチド濃度を比較して、ポリペプチド濃度とシグナル強度が比例すると仮定することにより、異なる測定条件下での最大シグナル強度を求めることができるが、これに限られず、本技術分野の通常の知識を有する者であれば、過度の検討の必要なく、タグポリペプチド由来のピークを除去できるように、閾値を設定することが可能である。
また、測定データや閾値は、ローカルの記憶媒体(対照スペクトル記憶部310など)に直接記録されていても、オンライン上の記録媒体に記録されていてデータベースなどで使用可能な状態(サーバ608、ネットワーク610など)になっていてもよく、特に後者の場合、より迅速な測定を可能にすると共に、データの蓄積や多数によるフィードバックを経ることから、より精確な測定も可能となる。
また、上記の実施形態において、抽出されたNMRスペクトルの確認ステップにおいて、CBCANHスペクトルおよびCBCA(CO)NHスペクトル以外のNMRスペクトルなどからなる別の他種類のNMRスペクトルを用いて、抽出後の目的ポリペプチドのNMRスペクトル中のピークに対応するピークが存在することを確認してもよい。
また、上記の実施形態における試料中のポリペプチドの濃度は、ポリペプチドの分子量や性質によるところが大きいが、凝集せず、測定したい構造(生理的条件での構造など)を保ち得る範囲内で選ばれる。タンパク質や多くのポリペプチドの場合、ポリペプチドの濃度は、通常、0.05〜20mM、好ましくは0.1〜10mM、より好ましくは0.4〜5mM、最も好ましくは0.4〜2mMの範囲から選ばれるが、これに限られない。
また、上記の実施形態における試料の温度は、高い方が粘度が下がり、良好なスペクトルが得られるが、測定対象のポリペプチドが測定したい構造(生理的条件での構造など)を保ち得る範囲内で選ばれる。タンパク質や多くのポリペプチドの場合、温度は、通常、10℃−50℃、より好ましくは15℃−45℃、さらに好ましくは20℃−40℃、最も好ましくは25℃−30℃の範囲から選ばれるが、これに限られない。
また、上記の実施形態における試料内に溶存酸素が残っていた場合、感度の低下や、NOEの測定の障害となることもあるため、更に、脱気処理を行ってもよい。脱気は、減圧による脱気法などの、本技術分野でよく知られた方法で行うことができる。
また、上記の実施形態における試料は更に、pHの緩衝剤(緩衝液)、界面活性剤、ポリオール、各種金属塩、酸化防止剤などの安定化剤を含んでもよい。更に、プロテアーゼ阻害剤やアジドなどの防腐剤を含んでもよく、また、目的タンパク質に対するリガンドや基質などを含んでもよい。これらは、例えば、測定しようとする核種を含まないものが好ましいが、測定するNMRの条件や測定の目的などに基づいて、本技術分野の通常の知識の範囲内で、適切に選択される。
なお、上記の実施形態により説明される測定・解析方法、測定・解析装置、測定・解析プログラム、または試料の何れかを用い、各種疾病の治療薬をスクリーニングする方法や病態を解析する方法なども、本発明の範囲内に含まれる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これは一例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例で言及されている市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用し、実験手法に関しても、特に示さない限り、通常用いられる手法を用いて行った。
〔ポリペプチドの調製〕
タグポリペプチドとしてGST、目的ポリペプチドとして転写因子HexのC末端(Hex−C)を用いて実験を行った。GSTをコードするpGEX2T (GE Healthcare Bioscience)ベクターを用い、制限酵素BamHIを用いてHex−CのcDNAを導入したプラスミド(6残基のリンカーを有する)を作成し、大腸菌に形質転換して培養した。温度25℃で振蕩培養し、波長600nmの吸光度が0.5に達した時点で、0.2mMの濃度となるようにisopropyl β-D-thiogalactopyranoside(IPTG)を培養液に加え、GST−Hex−Cの合成を誘導した。 誘導から16時間培養後、大腸菌を超音波破砕し、可溶性画分をグルタチオンを用いたアフィニティクロマトグラフ法により粗精製した。次に、AKTAprime装置(GE Healthcare Bioscience)を用いHiLoad 16/60 Superdex 75pgカラム(GE Healthcare Bioscience)でゲルろ過クロマトグラフ法により精製した。精製の度合いは、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって確認した。得られた精製Hex−C溶液は、アミコンYM10 (Millipore)を用いて濃縮した。
〔NMRスペクトルの測定〕
NMRスペクトル測定は Unity Inova 500 NMR 装置(Varian Technologies )で行った。測定に用いたパルスシーケンスなどの諸条件はすでに確立された方法によって行った。すなわち、15N−HSQC、及び13C−HSQCを基本スペクトルとして、15N、および13Cを含む3核3次元測定を以下のように組み合わせて、シグナルの帰属を行った。ただし、各シグナルの帰属前に、GSTのNMRスペクトルの最大強度シグナル以上の値を有するGST−Hex−CのNMRスペクトルを抽出する処理を行った。その際のスペクトルの代表的な例として、図6に、GST(a)およびGST−Hex−C(b)の15N−HSQCスペクトルを示した。
〔NMRスペクトルの解析〕
NMRシグナルの帰属に関しては、CBCANHとCBCA(CO)NHを組み合わせて、α炭素とβ炭素を連鎖帰属した。図7に、その際のスペクトルの帰属図を示した。さらに、HNCOとHNCACOを組み合わせて連鎖を確認し、カルボニル炭素を連鎖帰属した。同時に、アミドのNと、NHを帰属した。次に、TOCSY−15N−HSQCおよびHC(CO)NHにより、αプロトンと対応する側鎖のプロトンを帰属した。さらに、 HCCH−TOCSYおよびDQF−COSYで残りの側鎖のプロトンを全て帰属した。また、側鎖の炭素は、CCH-TOCSYを用いて帰属した。以上のとおり、可能な限りの原子の帰属を決定した。次に、構造を計算する距離情報は、プロトンの帰属をもとに、NOESY−15N−HSQC、NOESY−13C−HSQC、H−H NOESYを用いて求めた。NMRから求められる距離情報、二面角情報、及び水素結合等の構造情報から、構造計算ソフト(Cyana1.2;L.A.Systems Inc.)を用いて計算し、Hex−Cの立体構造を得た。上記の結果得られたHex−Cの立体構造を画像表示した図を、図8に示した。
本実施例では、タグの付加しない単独の状態では会合・凝集してしまい、NMRスペクトルの測定および構造解析が困難であったHex−C(転写因子HexのC末端)に関して、適切なタグポリペプチド(GST)およびリンカー(6アミノ酸残基)を含む融合ポリペプチドを用いることで、正常の高次構造を保ったHex−Cの調製に成功した。また、この融合ポリペプチドGST−Hex−CのNMRスペクトルを測定し、それからGST単独のNMRスペクトルを減算することで、本発明以前は困難であったHex−CのNMRスペクトルの(間接的な)測定、および構造解析を可能にした。会合・凝集・不安定性などの問題からNMR測定の困難なポリペプチドに対する本発明の有用性が明らかとなった。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
以上のように、本発明に係る測定方法、試料、測定装置、解析方法、解析装置およびプログラムは、NMRスペクトル測定の困難なポリペプチドの、NMRスペクトルの測定または立体構造解析を行う上で有用である。
図1は、実施形態に係る測定装置の全体構成の概略を示す。 図2は、NMR測定用の試料の概略を示す。 図3は、実施形態に係る融合ポリペプチドの取得法の概略を示す。 図4は、実施形態に係るNMRスペクトル測定方法の概略を示す。 図5は、実施形態に係るNMRスペクトルの抽出ステップの概略を示す。 図6は、GSTとGST−Hex−C(HexのC末端)との15N−HSQCスペクトルの比較を示す。 図7は、CBCANHおよびCBCA(CO)NHスペクトルを基にしたHex−Cのα炭素およびβ炭素のNMRスペクトルの帰属を示す。 図8は、Hex−Cの立体構造解析結果の画像を示す。 図9は、実施形態に係る解析装置の全体構成を示した機能ブロック図を示す。 図10は、実施形態に係る解析装置の内部構成をさらに詳細に示した機能ブロック図を示す。 図11は、実施形態に係る解析装置の目的スペクトル確認部の内部構成をさらに詳細に示した機能ブロック図を示す。 図12は、実施形態に係る解析装置の内部構成をさらに詳細に示した機能ブロック図を示す。 図13は、各スペクトル取得部をさらに詳細に示した機能ブロック図を示す。 図14は、実施形態に係る立体構造解析装置の目的スペクトル確認部および立体構造解析部をさらに詳細に示した機能ブロック図を示す。 図15は、実施形態に係る測定・解析装置の動作を説明するためのフローチャートを示す。
符号の説明
100 NMR超伝導磁石
101 ネットワーク
102 プローブ
106 キャップ
110 試料
112a、112b GSTタグポリペプチド
114a、114b 目的ポリペプチド
116a、116b リンカー
118 測定用チューブ(NMR試料管)
200 分光計コンソール
202 分光計
204 A/D変換器
300 ワークステーション
302 シグナル抽出部
304 目的スペクトル確認部
306 出力部
307 シグナル強度判定部
308 立体構造解析部
309 フィルタリング部
310 対照スペクトル記憶部
312 閾値参照部
314 閾値記憶部
316 対応スペクトル確認部
318 対応スペクトル記憶部
320 連鎖帰属確認部
322 一次配列記憶部
324 目的スペクトル記憶部
326 画像データ生成部
328 NOESY計算部
330 TOCSY計算部
332 HSQC計算部
334 総合計算部
336 立体構造記憶部
338 立体構造画像データ生成部
340 連鎖帰属判定部
400 NMRスペクトル測定部
402 タグ付スペクトル取得部
404 対照スペクトル取得部
406 対照スペクトル読出部
408 対照スペクトルデータ
500 立体構造解析装置
602 プリンタ
604 サーバ
606 ネットワーク
608 サーバ
610 ネットワーク
612 モニター
1000 NMRスペクトル測定装置
1300 NMRスペクトル処理部
1400 NMRスペクトル取得部
2000 解析装置

Claims (15)

  1. 目的ポリペプチドのNMRスペクトルの測定方法であって、
    前記目的ポリペプチドと前記目的ポリペプチドより分子量の大きなタグポリペプチドと前記両ポリペプチドの間に介在して前記両ポリペプチドを結合させるリンカーとを含む融合ポリペプチドのNMRスペクトルを測定するステップ
    を含む、測定方法。
  2. NMRスペクトル測定のための試料であって、
    目的ポリペプチドと前記目的ポリペプチドより分子量の大きなタグポリペプチドと前記両ポリペプチドの間に介在して前記両ポリペプチドを結合させるリンカーとを含む融合ポリペプチドと、
    NMRスペクトル測定に許容可能な溶媒と、緩衝剤と、安定化剤と、
    を含む、試料。
  3. 請求項2記載の試料において、
    前記タグポリペプチドは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼである、試料。
  4. 請求項2または3記載の試料において、
    前記リンカーは、5残基以上のアミノ酸残基からなるポリペプチドである、試料。
  5. 目的ポリペプチドのNMRスペクトルの解析方法であって、
    前記目的ポリペプチドと前記目的ポリペプチドより分子量の大きなタグポリペプチドと前記両ポリペプチドの間に介在して前記両ポリペプチドを結合させるリンカーとを含む融合ポリペプチドのNMRスペクトルを取得するステップと、
    前記融合ポリペプチドのNMRスペクトルから、前記目的ポリペプチド由来のピークを抽出するステップと、
    を含む、解析方法。
  6. 請求項5記載の解析方法において、
    前記目的ポリペプチド由来のピークを抽出するステップは、
    前記タグポリペプチドのNMRスペクトルのピークの最大シグナル強度に基づいた閾値を取得するステップと、
    前記融合ポリペプチドのNMRスペクトルから、前記タグポリペプチドのNMRスペクトルの最大シグナル強度に基づいた閾値を用いて、前記閾値以上のシグナル強度を有する目的ポリペプチド由来のピークを抽出するステップと、
    を含む、解析方法。
  7. 請求項6記載の解析方法において、
    前記閾値を取得するステップは、前記タグポリペプチドのNMRスペクトルの最大シグナル強度を、前記融合ポリペプチドのNMRスペクトルでのシグナル強度に換算することにより、前記閾値を算出するステップを含む、解析方法。
  8. 請求項7記載の解析方法において、
    前記タグポリペプチドのNMRスペクトルおよび前記融合ポリペプチドのNMRスペクトルは、いずれも所定のNMR測定条件でNMR測定されており、
    前記閾値を算出するステップは、前記NMR測定条件におけるポリペプチド濃度および最大シグナル強度の対応関係に基づいて、前記NMR測定における前記タグポリペプチドおよび前記融合ポリペプチドの双方の濃度を比較することにより、前記タグポリペプチドのNMRスペクトルの最大シグナル強度を、前記融合ポリペプチドのNMRスペクトルでのシグナル強度に換算するステップを含む、解析方法。
  9. 請求項5記載の解析方法において、
    前記目的ポリペプチド由来のピークを抽出するステップは、
    前記タグポリペプチドのNMRスペクトルを取得するステップと、
    前記融合ポリペプチドのNMRスペクトルおよび前記タグポリペプチドのNMRスペクトルの差を取ることにより、前記目的ポリペプチド由来のピークを抽出するステップと、
    を含む、解析方法。
  10. 請求項5乃至9いずれかに記載の解析方法において、
    前記抽出された目的ポリペプチド由来のピークが、前記融合ポリペプチドの前記抽出処理を経ていない他種類のNMRスペクトルの中に対応するピークを有することを確認するステップをさらに含む、解析方法。
  11. 請求項5乃至10いずれかに記載の解析方法において、
    前記抽出された目的ポリペプチド由来のピークは、連鎖帰属可能であることを確認するステップをさらに含む、解析方法。
  12. 請求項5乃至11いずれかに記載の解析方法において、
    前記目的ポリペプチド由来のNMRスペクトルに基づいて、前記目的ポリペプチドの立体構造を解析するステップをさらに含む、解析方法。
  13. 請求項12記載の解析方法において、
    前記立体構造を解析するステップは、核種または測定条件の異なる複数種の前記目的ポリペプチド由来のNMRスペクトルを用いて、前記目的ポリペプチドの立体構造を解析するステップを含む、解析方法。
  14. 目的ポリペプチドのNMRスペクトルの解析装置であって、
    前記目的ポリペプチドと前記目的ポリペプチドより分子量の大きなタグポリペプチドと前記両ポリペプチドの間に介在して前記両ポリペプチドを結合させるリンカーとを含む融合ポリペプチドのNMRスペクトルを取得するタグ付スペクトル取得部と、
    前記融合ポリペプチドのNMRスペクトルから、前記目的ポリペプチド由来のピークを抽出するシグナル抽出部と、
    を有する、解析装置。
  15. コンピューターに目的ポリペプチドのNMRスペクトルを生成させるためのプログラムであって、
    前記コンピューターに、
    前記目的ポリペプチドと前記目的ポリペプチドより分子量の大きなタグポリペプチドと前記両ポリペプチドの間に介在して前記両ポリペプチドを結合させるリンカーとを含む融合ポリペプチドのNMRスペクトルを取得するステップと、
    前記融合ポリペプチドのNMRスペクトルから、前記目的ポリペプチド由来のピークを抽出するステップと、
    を実行させる、プログラム。
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