JP2008212591A - 創傷保護、被覆材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 創傷、特に感染のない床ずれによる褥瘡部位に好適な創傷保護用材の提供にあり、既存保護材に比べ自然治癒力を高め、創傷部の血流促進、肉芽形成がより進む。全く副作用もなく安全で優れた被覆材を提供することを目的とする。
【解決手段】 フッ素樹脂フィルムで被覆することにより、結果として創の治癒を早める。なぜなら、本発明品では撥水性が強いことが、表面の細菌の繁殖を抑えることと、免疫細胞や創傷治癒に必須なサイトカインなどをより保持できることにより肉芽形成が活発となり、創傷治癒に効果のある被覆材として使用することができる。ただし、フッ素樹脂そのものを用いるのではなく、細かい穴を開けるなどの水分透過性を高める加工したものを用いる。
また、素材自体は、人体に何ら物質またはエネルギーを供給するものではなく、単に自然治癒力を保持することにより創部を良く保護するものにすぎないが、自然治癒力を最大限に引き出すところに特徴がある。
【選択図】なし

Description

本発明は、創傷保護、被覆材に関する。さらに詳しくは、感染のない創傷、褥瘡、熱傷、皮膚潰瘍等による皮膚創傷部位に適用され、かかる部位を保護し、肉芽形成・表皮再生や治癒を促進することのできる創傷被覆材に関する。また、治癒過程中に多量に創傷液を滲出する創面の場合でも、素材に細かい穴が開くなど水分透過性を高める工夫が施されていて不織布や脱脂綿に吸収するような形態なので、様々な創傷の治癒を促進する用途に適合する。本材は素材の安定性ゆえに、人体に物質やエネルギーを供給することなく滲出液のバリアとなるため、却って他の素材に比べ治癒が速く、また撥水性があることにより細菌感染が起き難い安全な素材である。
従来、一般医療機器の絆創膏は、粘着テープに殺菌ガーゼのパッドが設けられ、傷部分に殺菌ガーゼのパッドを当てて粘着テープ部を貼付するものである。
また、医療用不織布や医療用脱脂綿と称する一般医療機器の中に、ポリエステルフィルム等を貼付した製品もある。これらは保護性、通気性に優れており、創を適度に保湿させるものである。
一方、皮膚欠損用創傷被覆材にはポリウレタンフィルム材、ハイドロコロイド材、ハイドロジェル材、キチン材、アルギン酸塩材、ハイドロファイバー材、ハイドロポリマー材などが存在し、目的から分ければ局所管理のものと2次治癒を目的としたものに分かれる。この中には管理医療機器のみならず高度管理医療機器に分類されるものも含まれる。
これらの代替医療として登場したものに塩化ビニリデン、塩化ビニル又はポリエチレン製などの調理用ラップや台所用ポリエチレン又は塩化ビニル製穴あきゴミ袋で覆う通称ラップ療法もある。一般に被覆材は完全密閉なのに対しラップ療法は非完全な閉鎖(例えば一辺を絆創膏で止めない)により水分を排出するところに微妙な違いがある。これらは、通常処置の時に洗浄する場合も何の薬品も使用せず、一般的に創傷には乾燥させるのではなく保湿が重要であると近年認識され、特に感染を伴わない褥瘡に対しては長所を認められている(〔非特許文献1〕鳥谷部俊一著「これでわかった褥創のラップ療法」P79参照)。ただ、被覆材も含めそれぞれの素材の持つ物理化学的性質により効果が微妙に異なるということになるが、その辺の細胞・分子レベルでの研究はほとんど行なわれていない。結果的にラップ療法は既存の医療材料と同等かそれ以上の効果が認められ、何よりも費用対効果の点では最善と言える。
一般の絆創膏は、創傷部分の治癒を促進するものではなく、かえって傷口から出て来た浸出液を吸い取ってしまい、浸出液中にある傷口の治癒を促進する免疫細胞や治癒促進物質を除去してしまっていた。また、殺菌パッドの殺菌剤は創傷部分の細胞を殺してしまったりして、創傷部位にかえって悪影響を及ぼし、治癒の促進を妨げる場合があった。さらに、滲出液を吸収した後乾燥し、パット部が創部に強く付着して剥がす時に刺激を与える恐れも高い。
ポリエステルフィルム等を貼付した医療用不織布や医療用脱脂綿は、創傷保護材として概ね優れているが、素材そのものの性質やエンボス加工等によりやや摩擦が存在するためずり応力を創面に伝える。
皮膚欠損用創傷被覆材では、ポリウレタンフィルム材を除けば創傷面から滲み出るかなりの量の滲出液を吸収することができると同時に、創面の湿潤環境を形成し治癒促進作用を有するが、素材に吸着された免疫物質や治癒促進物質が創傷治癒に再利用されるのかという実証がなく、高価であり医療経済的にも問題がある。また、それ自体滲出液をあまり吸収しないが酸素透過性と透湿性に優れたポリウレタンフィルム材は、滲出液をより保持して閉塞性の湿潤環境によって治癒促進作用を持つ。しかし、多量の滲出液に対して剥がれやすく、使用場面が限られていた。一方、ハイドロコロイドシートタイプは、素材の緩衝作用により弱酸性を保って、細菌の繁殖しやすい弱アルカリを回避しようとしているが、感染力を抑える効果は弱く、数日間貼ったままにすることが却って創の観察をできなくさせるために禍し、感染創や壊死の恐れの高い創には禁忌である。
また、代替医療として行なわれているラップ療法では、調理用ラップの素材自身は滲出液を全く吸収しないので、最も免疫物質や治癒促進物質を保持する機能に優れていると考えられている反面、過剰な湿潤により治癒を遅らす恐れもある。そこで、近年では特に穴あきゴミ袋が広く医療現場で使われており、それなりの効果を挙げている。
ただ、台所用品を医療現場に使用するという抵抗感から、折角効果のあるものでも全国に浸透させるには限界があり、強い非難を加える医療者も多い。なぜなら、調理用ラップの場合は含まれる添加物は食品に付着して使用することを想定しているにしても医療用材としての安全性が認められているわけではなく、増して穴あきゴミ袋に至っては添加物の種類や量の安全性は担保できるものではない。また、滅菌されているわけではなく、院内感染対策上問題となりうる。
近年の創傷治癒においてスタンダードとなりつつあるのが湿潤環境を保つことを目的とする各種被覆材によるドレッシング療法である。創傷治癒の本質(0005)(0006)にあるように免疫細胞が細菌の繁殖を抑え、治癒促進を司るサイトカインをいかに創傷部位に保持するかによるといっても過言ではない。尚、本明細書で言うところのサイトカインとは、具体的には細胞活性の鍵のような役割を担う生体情報伝達物質(タンパク質)で、傷が治る過程でそれぞれの細胞が互いにその物質を手段としてメッセージを出し合って細胞膜にある受容体に作用する細胞間の伝達物質である。この刺激により細胞のDNAは活動を始め、mRNAを介し修復作業を営む.創傷治癒に関わるサイトカインは多数あるが繊維芽細胞の増殖にb−FGF,HGF,TGF−βが関わっているという報告がある(〔非特許文献2〕褥瘡会誌4(3):347〜352、2002鳥取大学医学部保険学科長前田教授)。
それゆえ、必ずしも高度管理医療機器に分類される被覆材が肉芽形成を促すサイトカインをより保持する結果とならず、上述のラップ療法の如き単に保護するだけの場合の方が結果的に治癒が早まるという逆転現象も多く見られる。
創傷治癒の本質は肉芽形成を促すサイトカインの保持すなわち自然治癒力の保持にあり、自然治癒力を最大限引き出すようなより良い保護材が必要とされている。
そして、褥瘡は容易に壊死組織となる。この時、壊死組織近傍の生体側の血管には血栓の形成がみられ、傷害部に再環流が起こらないため壊死に陥る(〔非特許文献3〕褥瘡会誌4(3):353〜357、2002岡山県立大学保健福祉学部)。よって、血栓を形成する機能を阻害する素材が求められるのである。
本発明品は一歩進んで、創の深さに関係なく、素材の特徴が、他の素材に比べ直接間接的に自然治癒力を最大限に引き出し、創の回復を図ろうとするものである。また、従来のものよりも皮膚に対し安全である。
フッ素樹脂は溶媒で成分を全く抽出できず、耐薬品性が強く全く溶出されない。よって材質そのものはきわめて安全と言える。また、添加物が加えられておらず、成分そのものが溶出しない素材となっており長期間使用しても安全である。フッ素樹脂は、炭素数が6〜10程度であれば親油性を示し脂肪組織に取り込まれる場合もあるが、分子量が大きいものであれば撥水性撥油性を併せ持ち、人体組織に影響はない。
具体的には、フッ素樹脂はフィルム状のものを用い、PTFE(4フッ化エチレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン)PFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFEとPFAとの複合材あるいはFEP(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体)などを用いることができるが、皮膚に装着感が良く、密着性がなければならないので、厚さはおおむね20μm以下で、かつ強度がなければならないので、おおむね10μm以上のものでなければならない。
そこで、フッ素樹脂の厚さと可塑性については、装着実験を行ったところ、FEP(以下クラボウ製)12.5μmがPTFE20μm,PFA20μmに比べ皮膚に密着し、弛みが全くなく装着感も良かった。
さらに、剥がす時に全く皮膚に付着せず、刺激を全く与えない。そして、摩擦係数が極めて小さいためズレによる刺激もほとんど起きない。摩擦係数の小ささは皮膚にずり応力をほとんど伝えず、予防においても最適である。
また、FEPは比熱が1.2と高く、一旦取り込んだ熱を容易に逃がさず、保温作用がある。特に慢性化した創傷では保温により細胞分裂が活性化する。
本発明品が素材が浸出液を保持するのみならず、撥水性により白血球やマクロファージなどの免疫物質や治癒過程に必須のサイトカインを創部に押し戻し保持されるので、特に、サイトカインカスケードの形成に有利となると推定される。サイトカインカスケードとは、サイトカインが他のサイトカインを調節する機能を持つが、その時の連鎖的反応を言う。一方でサイトカインバランスに破綻が来したケースなどでは、炎症を助長することになるので、慎重な観察が必要なことは言うまでもない。以上のことは、滲出液を吸収しない素材であれば大同小異でありフッ素樹脂に限定したことではないが、特にフッ素樹脂には卓越した撥水性が認められる。例えば水の接触角はポリエチレンの88度に対し、例えばFEPでは115度である。このように撥水性が良すぎる為、適度な排出穴を作るなどの加工が必要となるのである。
FEP(以下12.5μm)に多くの穴(穴約0.2mm,約30個/1cm)を開けた場合でも、針を通した側を皮膚に当て、貫通側に不織布を貼れば、装着感で試した限り、穴の開けてない素材に比べ違和感は全く無い。
引張強度の測定を行った。10×4cmのFEPにより多くの穴(穴約0.2mm,約30個/1cm)を開け、短い一辺を固定、反対の辺をばねばかりに固定し引っ張る試験を行なった。3回行い、いずれも約平均800gの力で引っ張ったときフィルムが破れた。よって、不織布に付着しているので通常の取り扱い、使用方法でも破れることはないと言える。
比較実施例1
フッ素樹脂FEPと先行技術として用いられた調理用ラップなどの各素材と管理医療機器のテガダーム(登録商標スリーエムヘルスケア株式会社)を、同じ褥瘡患者へ毎日交換して使用した使用済み素材の表面分析をPIXEで行なった。
PIXE分析とは、Particle Induced X−ray Emission(粒子線励起X線)のことであるが、陽子、α粒子などの重荷電粒子を静電加速器又は、サイクロトロンなどの加速器で数MeVのエネルギーに加速して試料に照射し、その結果発生する元素固有のエネルギーを持つ特性X線(空席の生じた内郭軌道に、外郭電子が遷移する際に放出される)を測定して、元素分析する方法でCaイオンなどを測定した。原子は、K殻、L殻、M殻と呼ばれている原子核を中心にした殻(内殻)構造を持ち、この順番に内側から電子が配置されている。この殻の軌道半径は、原子番号が大きくなるほど小さく、その束縛エネルギーも大きくなる。内殻電子が飛び出すと、その軌道をそれより外側の軌道電子が埋める。このとき束縛エネルギー差の分のエネルギーを電子はX線(特性X線と呼ばれる)として放出するか又はそのエネルギーで他の外殻電子を飛び出させるかする(飛び出した電子はオージェ電子と呼ばれる)。内殻を電子がX線放出して埋める割合を蛍光収量と呼びωで表わす。K殻を埋めるときの特性X線はK−X線、L殻はL−X線と呼ばれ、これらの特性X線のエネルギーは原子番号が大きくなると大きくなる為、各元素の特性X線のピークが区別されて現れる。
内殻電子はクーロン力という電気の力で原子の核に束縛されている。糸で結ばれた球が円を描いて回っているようなものである。内殻電子はその束縛エネルギーより大きなエネルギーをもらうと糸が切れて原子から飛び出すことができる(内殻電離という)。陽子は電子に比べて約1800倍も重い、したがって入射粒子が陽子などの重荷電粒子の場合、内殻電子はいきおいよくぶつかると、跳ね飛ばされて電離される。これは、ある速さ以上でぶつからないと束縛エネルギーよりも大きなエネルギーを得られない。また、入射粒子の速度が低くなるにつれて、より速い速度で衝突しなければ電離されるエネルギーを得られない。PIXEで用いられる入射粒子のエネルギー領域では、ほとんどこのような衝突で電離が起こる。入射粒子のエネルギーを高くすると静止している電子もはじき飛ばされて電離されることが出来るようになるのである。
この分析法では、表面が濡れたままでも処理せずそのまま測定できるので素材に付着したNaより分子量の大きい元素を知ることができた。
Figure 2008212591
ただし、フッ素樹脂の場合、陽子を照射させると、フッ素の核反応のチャンネルが多数開きガンマ線が多く発生しコンプトンバックグランドか増加し特性X線の検出感度が下がり正確ではない。フッ素がガンマ線を出す理由は、PIXEに用いるビームはエネルギーが低く、重い元素ではクーロン力の反発力に勝てなくて入射粒子は原子核の中に入ることも出来ない。原子番号15以下程度であれば、核に入ることは出来るが、PIXEで用いるエネルギー(約3MeV)以下に励起状態を持つ核種でないと、原子核の状態を基底状態から変えることは出来ない。フッ素やナトリウムは、そのような低エネルギーに励起状態を持つため、低い入射エネルギーでも励起状態に移ることが出来、基底状態に戻るときにγ線を放出する。従って酸素、炭素などNaより小さな元素の測定は不可能となる。
よって、ここで用いたフッ素樹脂のFEPに関しては、表にあるようにCa以外の原子も吸着されている可能性もあるが、吸着量が相対的に少ないので、γ線によって攪乱され、具体的数値を測定できなくなっている。
もっとも、FEPでは、他の素材に比べ、すべての原子の吸着量が少ないということは断定できるので、例えば硫黄の吸着が少なく、創傷治癒に必要なサイトカインはあまり吸着されていないと導ける。なぜなら、前述した創傷治癒に関わる代表的な繊維芽細胞の増殖に関わるサイトカインb−FGF,HGF,TGF−βや、上皮成長因子のEGFにはいずれもSH基が存在するからである。
また、上記分析の結果、特にミネラルの中でも亜鉛が創傷治癒と因果関係があると言われているが、FEPにおいては亜鉛もほとんど吸着していないので、創部に保持することで治癒促進に寄与できることを意味している。
比較実施例2
当該PIXE分析の対象となった本発明品使用中の患者から、実際に滲出液を採取し、b−FGFのたんぱく量当たりの含量を定量した〔表2〕。実験方法は滲出液を採取した試験管にPBS(リン酸緩衝液)350μL添加し、希釈混和したものを測定試料とした。b−FGFは酵素免疫測定法で測定し、タンパク質量はBradford法で測定した。実験結果は、本発明品がb−FGFを保持する傾向にあり、創も改善している。
Figure 2008212591
尚、途中より回復が進んだので、滲出液も減少し、採取困難となった。12月5日に完治となった。
評価は日本褥瘡学会DESIGN評価による。
d1:表面のみの損傷,d2;真皮までの損傷
D3;皮下組織までの損傷、D4;皮下組織を越える損傷、
D5;関節腔、体腔に至る損傷又は深さ判定不能
e1:滲出液少量、e2:中等量、E3:多量
i0:炎症兆候なし、i1:局所の炎症兆候、I2:局所の明らかな感染兆候、
I3:全身的影響
g1:良性肉芽が、創面の90%以上を占める、g2:50%以上90%未満、
G3:10%以上50%未満、G4:10%未満、G5:全く形成されていない
n0:壊死組織なし、N1:柔らかい壊死組織あり、N2:硬く密着した壊死組織あり
P1:ポケットの面積が、4cm未満、P2:4〜16cm、P3:16〜36cm
P4:36cm以上
この結果からだけでは、必ずしもFEPがサランラップよりも創部にサイトカインを残すとまでは断言できない。確かにサランラップ使用2回のb−FGFの平均93.7(pg/mg protein)よりもFEP使用3回の平均107.6(pg/mg protein)が上回っているが、b−FGFの分泌が回復を促すものの、肉芽が形成されはじめると減少する傾向にあること、そして滲出液そのものの採取が困難になり、採取時に血液や肉芽組織など異物のコンタミなども、より起き易くなる。よって、b−FGFの保持を比較するのであれば同じ時期で比較し、同時に被覆材に付着した分も定量しなければならないと思われる。なぜなら、一旦被覆材に付着したサイトカインは、素材との分子間力等による物理化学的結合により、有効に利用されない可能性が高いと考えられるので、素材に付着する分、創部に残存する有効なサイトカインが減少していると考えることができるからである。そこで、上記同一患者で、9月7日にサランラップを使用し翌8日に採取したサンプルと、8日にFEPを使用し、翌9日に採取したサンプルの、それぞれ被覆材と滲出液中のb−FGFを比較してみた。
被覆材はプラスチック試験管中ハサミで細切し、PBS(リン酸緩衝液)800μL添加し混和、一晩4℃放置後、遠心分離し、溶液部分を測定に用いた。浸出液は、試験管にPBS(リン酸緩衝液)300μL添加、希釈混和したものを測定試料とした。b−FGFは酵素免疫測定法で測定し、タンパク質量はBradford法で測定した。
比較実施例3
Figure 2008212591
これによれば、傾向としては、サランラップに多くb−FGFが付着する反面、創部に残存する分は少ない。つまり、素材としては、そのものに付着せず創部に押し戻すFEPがより望ましいと言える。
撥水性の大きさと細菌の付着しにくさには相関関係があるが、フッ素樹脂の表面特性の多くは、フッ素原子の特性を直接反映していると言うよりも、末端のトリフルオロメチル基の特性に起因している場合が多い(〔非特許文献4〕Application of Fluorinated Alkyl Acrylate to Denture Base Resin Influence of Carbon Chain Length of Fluorinated Alkyl Acrylate on Bacterial Adherence、IJOMS Volume4 Number3 March2006,International Journal of Oral−Medical Sciences Research Institute of Oral Science、by Masato Kobayashi,Toshio Kubota,Junichi Mega)。
例えばPTFEの場合には主鎖の配向は末端トリフルオロメチル基の表面露出数などが表面特性に大きく影響すると言われ、例えばFEPも、トリフルオロメチル基を持ち、薄い素材とすることが容易なので被覆素材としては理想的である。
また、当文献によれば、炭素数が大きくなるほど接触角が大きくなり撥水性が増し、細菌の付着も少なくなる。
フッ素樹脂に細菌が付着しないメカニズムについての裏づけは、例えば入れ歯の土台部分では、(フッ素樹脂以外の)プラスチックを用いた場合に口腔内環境の維持が困難であるという一般的事実に基づく。これは、細菌表面が陰性荷電しているので、−電荷を持ちやすいプラスチック表面に+電荷のイオン等を介して吸着したり、表面張力によって吸着するのである。
具体的には、一般的な義歯床(入れ歯の土台部分)はポリメチルメタクリラート(PMMA)を主とするプラスチック製だが、口腔内細菌(C.albicansやS.mutansをはじめとする他種類の細菌)の付着から始まって、バイオフィルムの形成、デンチャープラークの生成に至る。
そこで、各種のフッ素樹脂表面への糖、対象となったタンパク質や唾液などの吸着を表面プラズモン共鳴、Quartz Crystal Microbalanceを用いて検討した結果、吸着はほとんど起こっていなかった。
もっとも、より詳しくは、一部のタンパク質の疎水領域と大きな相互作用があることが確認された。すなわち、フッ素樹脂を含む高フッ素化ポリマーの表面は、親水性水溶液に対しては撥水性が発揮されて吸着しにくくなる。これに対して、タンパクやその複合体は疎水性領域を持っているためその水溶液と含フッ素ポリマー表面は強力な疎水性相互作用のために強固な吸着を起こし、吸着後の表面は親水化される。
フッ素樹脂の強い撥水性の反動として、集まった水分子を避けようと疎水性領域が強力に表面に吸着を起こすのである。
もちろん細菌真菌ウイルスは疎水性領域を持たないので吸着されない。よってバイオフィルムも形成されない。
それでは、どのようなタンパクがフッ素樹脂に吸着されるのであろうか。歯科領域ではより分子量の大きいムチン類のタンパクが吸着されていると報告されている。
もっとも、力学的法則のみからは、分子量の大きなタンパクはフッ素樹脂との間の分子間力が大きく吸着するが、一方、質量の小さな物ほど加速度が生じやすく速く吸着されるのではとも考えられ、重力加速度と慣性加速度は結果的に一致し重いものと軽いものの吸着され易さに差は無いことになる。ただ、このような力学的一般則のみからの説明からではなく、タンパク質側鎖の立体的性質に因るところも大であり、どのようなタンパクがフッ素樹脂に吸着され易いかという一般則は今のところ存在しない。結果としては、前述のしたように創傷治癒に必須なサイトカインはあまり吸着されていない。
酸素透過性については、FEPの酸素透過性は約100ml/m 24hで、酸素透過性の少なさと血管新生には因果関係が認められているため(〔非特許文献5〕An Environment for Healing:The Role of Occlusion,T.J.Ryan,International Congress and Symposium Series No.88,Royal Society of Medicine)延伸多孔質PTFEフィルム等を用いることよりも、FEP素材が良い。
細菌に対しても、一般に好気性細菌が多いので、酸素透過性がより少ないことは有利であり、かつ、フッ素樹脂は表面のバイオフィルムの生成を抑える働きを持つので創環境を改善する。
このように、感染例が他の素材に比べ少ないのは、外部のいかなる物質に対してもバリアとなることと、細菌が素材に付着しバイオフィルムを作りにくいという特質によると考えられる。感染とは細菌が集まり増殖することを意味し、細菌が素材に付着しないことが、通常では感染を予防することにつながるといえる。したがって、他の素材プラスチックや金属に比べ安全性は高く体内留置型の医療機器などの素材にも応用できる。
もっとも、細菌の数が一定以上であればサイトカインの場合と同様に創部に押し戻され、感染能力を助長するとも考えられ、未だに感染への安全性が確立されていない為、一般の創傷保護被覆材と同様に著しい感染創へは使用しないことと銘記すべきである。
一方、本来電気陰性度が最も強いフッ素を持つ樹脂の素材は空気や皮膚粘膜と接触することにより他のプラスチックよりも多くの−電荷を持つのであるが、撥水性も持つことにより実際には、通常Caイオンなどの陽イオン自身は吸着されずたんぱく質を介しても吸着が起きにくい。だが、結果的には素材の持つ陰性の電荷はCaイオンに強い電気的影響を与え、血小板凝集が抑制され、血管の壊死が起こりにくくなり血流が改善すると考えられる。
なぜなら、細胞外液は毛細血管を自由に移動でき、通常血漿量の3倍の電解質が保有されている(〔非特許文献6〕oxford分子医科学事典)。そして、血小板の凝集は血液の粘度が増し血流のずれ応力に応じてCaイオンが血小板に取り込まれ、通常の10倍にも及ぶ(〔非特許文献7〕菅原基晃・前田信治著「血液のレオロジー」(コロナ社))。
また、同非特許文献p34、35、64、65では、血液の粘性は赤血球の流動状態と密接に関連するが、赤血球の変性による粘度上昇もCaイオンの増加、機械的ストレスによるCaイオンの侵入などに因る。特にずり応力(血管壁との間の抵抗)の負荷による赤血球内のCaの増量は重要である。赤血球膜に張力が加わると陽イオンに対する透過性を増す。また、ずり応力が血小板の粘着凝集を引き起こす伝達物質にCaイオンが関与している。ずり応力が加わると、血小板内のCaイオンが10倍に増加し、これに同調して血小板の凝集が起こるなど、Caイオンと血液の粘度及び血小板の凝集には不可分な関係があるからである。
従って、静電気を持ちやすいFEPで治癒が早い理由のひとつとして、電気的影響によるCaイオンの取り込み阻害により、血流が改善されると推認される。
ただし、今のところ閉塞性動脈硬化症や糖尿病性壊疽まで改善させることはできないと考えている。
比較実施例4
静電気によるCaイオンへの影響が血流改善の原因とすれば、各素材の絶縁性を、各素材に通電したときに持つ帯電量と半減期をシシド静電気株式会社製STATIC HONESTMETER帯電電荷減衰度観測計で測定した。
Figure 2008212591
FEP以外のどの素材も一時的には帯電することがわかるが、数分で消失する。このことが、FEPと他の素材の明らかな違いとなって現れていると考えられる。実際の医療現場では、創部に触れることにより、人体に対していずれも−に荷電しやすい性質から電子が素材に移動して陰性荷電を帯びる。この状態はーの電荷を通電したときに、いずれも一旦は荷電することから証明できる。他の素材では荷電が一時的であることから、Caイオンへの影響もわずかであり、血流への影響も小さいと推測できる。一方FEPは電荷をほぼ永久的に保持できるので、Caイオンに影響を与え、血流に影響を与えていることは明らかである。尚他の素材は空気に触れるだけでは陰性荷電が稼げないものもあると考えられる。
次に、PIXEの結果FEPに若干のCaイオンが付着した点について考えると、前述したように、フッ素樹脂の場合の測定誤差も考慮に入れて、FEP素材に直接吸着されているCaイオンは、突出した感度があったとしても塩素樹脂などに比べても極めて微量である。この実施例でもフッ素樹脂の持つ撥水性の強さが、フッ素原子の持つ強い電気陰性度による陽イオンの吸着という性質よりもより表面に現れているといえる。このことは、Caイオンを介して細菌が表面に吸着し集合してバイオフィルムを作ったり、同様にサイトカインが吸着されて不活性化することが他の素材に比べて少ないことを物語ると考えられる。
このことは、(0026)における表面プラズモン共鳴、Quartz Crystal Microbalanceを用いた検討とも符号する。
ただ、フッ素原子が作り出す化学的性質による電場は、他の素材に比べ荷電を永久的に保持するので、Caイオン等陽イオンにとって影響が大きいと考えられ、素材に直接吸着された量以上に大きな影響を生体に与えうると考える。
他の素材にCaはじめ多くの元素が多量に付着しているのは、静電的な付着というよりも分子間力、すなわち、多層的に付着したたんぱく質を介してのものであると考えられる。
比較実施例5
念のため、たんぱく質が存在しない状態において、細胞外液と同じ濃度のCa(5mEq)、Na,K,Mgイオンを含む溶液を作り、FEPを一定時間接着させた後、試料から溶出するCaイオンを定量した。定量方法は、試料を純水に浸漬し、抽出液をイオンクロマトグラフ法(イオン交換モード)により測定した。なお分析値は、抽出液中のCaイオン濃度(μg/mL)に抽出液量(mL)を乗じ、絶対量(μg)を求め、試料面積(cm)で除することにより、単位面積あたりのCaイオン濃度を求めた。
実験方法は、ふたつきガラス容器(直径6cm、深さ4cm)に溶液を1ml採り、蓋に、FEPフィルム(穴なし)と比較対照のサランラップ(登録商標)を噛ませて蓋を閉め逆さまにして遠心分離を3時間かけて、静電気的吸着のみを見るため素材をろ紙で水分を除いた後定量した。
結果は、FEPサランラップともに定量下限値の<0.02μg/cmであった。細胞外液中で約5mEqのCaイオンが存在するので、1ml溶液では約200μgが含まれるが、すべてが試料と接するとは限らないとしても1%未満のCaイオンしか吸着されていないと言える。よって、水溶液中ではFEP素材が帯電してもそれによって直接Caイオンが素材に吸着されるのではないと言える。
被覆時の創部の血流改善の度合いは、ドップラー効果を利用したレーザー血流計(FLO−C1オメガウェーブ株式会社製)を用いて創部の血流を計測したところ、被覆しない場合よりも被覆材を用いた場合の方が血流は改善し、FEPにおいてかなり改善があったが、正確な評価はできない。なぜなら測定値の個人間の差が大きく,同一皮膚部位内での測定においても大きく変動するとの報告があり、測定上、素材内部の光の屈折散乱も影響を与えうるので、素材上からの正確な計測は困難であり臨床成績で長期的な評価をせざるを得ない。
尚、被覆による皮膚温度上昇や酸素透過性の減少と血流の因果関係があると推定していたが、レーザー血流計の測定テータに関する限り、被覆素材と密着しても時間的に血流が上昇することはなく、また、素材を二十重ねにして計測しても有意差は見られず、因果関係の判断をすることはできていない。
もちろん、タンパク質やミネラルは褥瘡の治癒において新生組織の基本となる肉芽組織の形成に必要なばかりでなく,細胞性免疫や体液性免疫においても重要な役割を果たしていると考えられている(〔非特許文献8〕豊永敏宏:褥瘡(創)とは一見方と治療.24,臨床栄養.Vol.99.No.1.東京.2001)。そして,2価イオンに代表されるカルシウム,鉄,マグネシウム,亜鉛は,細胞の反応性や免疫機能そして酵素反応において重要な役割を果たしていることが報告されている(〔非特許文献9〕渡辺明治:栄養免疫学一病態・疾患と治療−.92,医歯薬株式会社.東京.1996.)。だとしても、そのことと、本発明の原理は矛盾するものではない。なぜなら、細胞内で起こる化学反応は静電気的影響により促進される。つまり、電場により遷移状態の自由エネルギーが下がった状態となるので、もし、酵素を司る陽イオンが静電気的影響により活性が低下しても、すぐには反応性が低下するとは言えない。また、酵素に結合する陽イオンは最初からタンパク質に結合し電気的に影響は受けにくい。
通常皮膚は細菌感染に対して強力なバリアであり、多くの細菌が皮膚に常在していても、これらの常在菌が感染症を引き起こすことはない。皮膚感染を起こすリスクとして免疫系(HIV感染症など)、末端の血流低下(糖尿病など)、皮膚刺激や損傷などがあげられるので、当発明品による血流促進作用は細菌感染を起こりにくくする重要な要素である。
当発明品の血流改善という特徴から、止血の完結していない創に対しての使用の是非が問題となる。
実験において、まず、体を固定したマウスの尻尾の静脈1本に傷をつけ当発明品を付着させ完全止血までの時間を測定したところ、3群とも1分前後で止血は完了した。開放3群においては平均2分ほどかかった。
次に、ジエチルエーテルによる吸気麻酔を実施し、背部全面を剃毛し、その中央部の静脈を傷つけたマウス1群に対する同様の実験では、3分で止血が完了した。
以上より、FEPは特段止血を妨げる実験結果はなく、むしろFEP素材を付着させても止血を促進していると考えられる。
上述のように、FEPではCaイオンはほとんど直接素材に吸着されず、物理的に圧迫も加われば、一次止血の機序において止血機能は十分機能していると考えられる。尚一次止血とは、外傷などにより血管が破綻して出血が起こると血管内皮細胞の下にある膠原繊維が露出し、そこに速やかにCaイオンを介して血小板が粘着し、これをきっかけとして活性化した血小板から生理活性物質が放出され、これによりCaイオンを介して血小板同士が凝集して血小板血栓が形成される。ここまでの機構を一次止血という。
比較実施例6
試験管内にマウスから採血した血液0.3mlを採り、当発明品1.5cm四方を試験管底に沈めて凝固するまでのおおよその時間を測定した。尚、この場合の凝固とは試験管を逆さまにしても血液が落下しないこととした。
結果は、2群とも2分以内で完了した。一方、同じ固体から採血した自然放置2群については、13分以上かかった。
参考までに、止血作用を持つアルギン酸製剤カルトスタット(ブリストルマイヤースクイブ登録商標)1cm四方(嵩あり)1群については、10秒程度でほぼ完了し、医療用不織布FC滅菌パッド(白十字登録商標)の素材ポリエステル1.5cm四方1群では当発明品とほぼ同様の結果であった。
試験管内においては、Caイオンを放出するアルギン酸はもとより、絶縁性物質を置くことによっても血液内のCaイオンの血小板への取り込みが促進されていると言える。
この実験においてもFEPにより止血は促進されていると言える。
これらのマウスは新生児マウスを使用した。
また、前述PIXEで測定した当発明品のFEPの素材自体に含まれる金属等不純物はいずれも検出感度以下であった。
本発明品の更なる加工としては、表面の平滑性や凸凹・エンボスも大きなファクターとなり得、表面張力をより持たせることにより効果が上がる。
そして、装着前にムチンの水溶液で吸着処理したり、抗菌性タンパク質水溶液で処理すると、防汚効果や表面抗菌性を発現させることが可能である。
フッ素樹脂に穴を開けなければ、強い撥水性により、滲出液による過剰の湿潤を起こし、皮下組織が壊れたり、内部のポケットを広げてしまう恐れがあり、実際悪化例も存在した。よって水抜き穴を必ず作らなければ使用することはできない。孔の大きさは大きすぎず、水分を漏らすことができればよい。
以下に穴を開けたときと開けないとき、穴の大きさによる治療効果の比較を示す。穴が小さければ滲出液の排出が困難になる恐れがあるが、穴の割合を増やすと重要なサイトカインも漏出するので、小さな穴を多く開けることにより最大公約数的な素材とすることができた。本発明品は下記に示すもののみならず、小さくてもっと多くの穴(例えば0.05mm、100個/1cm程度)の開いたフッ素樹脂も包括する。
また、穴を開ける代わりに、繊維状のフッ素樹脂を適度な水分透過性を持たせるように編み合わせて製材化することも可能である。
Figure 2008212591
本発明品の治癒率が高い原因は、自然治癒力を最大限に引き出す性質により、当発明品では、深さD3,4からの完治症例が53%(8/15)存在し、それ以外の多くも数ヶ月で完治が見込まれる。(一部乳剤性PVP−Iシュガー、壊死組織除去術併用)。しかもこれら15の症例のうちの9例は他の被覆材を既に用いたがあまり改善がみられないものであった。
比較実施例7
参考までに、ポリウレタンフィルム材のテガダーム(登録商標)とハイドロコロイド材のデュオアクティブ(登録商標)の臨床効果を以下に示す。
管理医療機器に該当するテガダームでは、承認時臨床試験〔非特許文献10〕(平成2年12月20日発行、基礎と臨床第24巻第15号別刷、テガダームによるトランスペアドレッシング、裕文社)によれば、3例に実施されているが、いずれも滲出液を吸収しきれず密着不良となり感染増悪の恐れもあり中途で断念している。一般的にもテガダームは滲出液の多い褥瘡には不向きであり、ごく軽度の場合以外使用されない。
一方高度管理医療機器に該当するデユオアクティブは承認時臨床試験〔非特許文献11〕(コンバテック事業部社内資料国内文献集)によれば、改善率は90%近くに上るが、深さD3,4の場合では改善が認められるものの完治事例は12例中1例(他は全て改善)に過ぎなかった。
比較実施例8
また、背景技術である、サランラップ(旭化成商標名)の治療成績を示す。以下の臨床例は医療法人社団宏和会エビハラ病院においてのものである。
Figure 2008212591
Figure 2008212591
FEPにおける完治症例を以下に示す
Figure 2008212591
この実施例では主にサランラップで改善のない創部に使用しているので軽症例での実施例はない。重症例では塩化ビニリデン樹脂のサランラップに比べFEPがより、創の改善に寄与していることを表している。
完治症例のひとつに、便が混入する仙骨部の場合があったが、このケースは他の被覆材では改善が見られなかったが、当発明品を2ヶ月使用後創の深さD3から完治に至った。経過は次第に黄色の肉芽が白色の表皮を形成し、ポケットの深さもほとんどなくなり、滲出液も減少した。大腸菌が多量に直接混入する場面でも感染をおこさず、創を治癒させた例である。
臨床の実施例において実際には常在細菌が存在するにもかかわらず、悪化例は穴あきFEPにおいては全く無い。また、感染が著しく肉眼で認められるケースには壊死組織を除去した後もしくは殺菌効果のある薬剤の使用後でなければ使用していないが、悪化例は無い。もちろん創部を処置前にきれいに洗い流す操作が重要である。
アトピー性皮膚炎掻き壊し事例の使用12例では、サイトカインバランスの崩れたケースであっても、FEPで治癒を特段妨げる事情はなく、穴が開いているので表皮形成後も炎症物質を皮膚内部から除くことができ、また、+に荷電し易いヒスタミンを吸着するなどにより痒みを抑える効果は認められるため、無意識に掻いて悪化させることを防止できるなどのメリットも存在する。ただ、1例では、遮断による保温作用による発汗などによって痒みを助長したので、未だにアトピー性皮膚炎等に対する安全性有効性は確立できていないと言える。
本発明の創傷被覆材の形状については特に制限はなく、フィルム状、シート状、塊状、などの形態が可能である。しかし、院内感染対策上個別滅菌包装になっているものが望ましい。
不織布は、羊毛やコットンなどの天然繊維、レーヨンやアセテートなどの化学繊維、ガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維などやポリプロピレン、ポリエステルなどの合成繊維などのいずれも使用できるが吸水性の高いレーヨンが望ましい。
フッ素樹脂に直接接着剤を塗布することは困難であるので、例えば剥離紙を用いて不織布に接着剤を付着させたものにFEPを接着させることができる。
不織布が厚すぎれば、圧迫の原因となるので、厚さは3mm程度が望ましい。

Claims (2)

  1. 傷に接する部分の使用材料がフッ素樹脂であり、皮膚表面から組織に至る創傷に用いる創傷保護、被覆材
  2. 請求項1 記載のフッ素樹脂に水分透過性を高める加工を施したものに、不織布や脱脂綿等を貼った創傷保護、被覆材
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