JP2008212591A - 創傷保護、被覆材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 フッ素樹脂フィルムで被覆することにより、結果として創の治癒を早める。なぜなら、本発明品では撥水性が強いことが、表面の細菌の繁殖を抑えることと、免疫細胞や創傷治癒に必須なサイトカインなどをより保持できることにより肉芽形成が活発となり、創傷治癒に効果のある被覆材として使用することができる。ただし、フッ素樹脂そのものを用いるのではなく、細かい穴を開けるなどの水分透過性を高める加工したものを用いる。
また、素材自体は、人体に何ら物質またはエネルギーを供給するものではなく、単に自然治癒力を保持することにより創部を良く保護するものにすぎないが、自然治癒力を最大限に引き出すところに特徴がある。
【選択図】なし
Description
また、医療用不織布や医療用脱脂綿と称する一般医療機器の中に、ポリエステルフィルム等を貼付した製品もある。これらは保護性、通気性に優れており、創を適度に保湿させるものである。
一方、皮膚欠損用創傷被覆材にはポリウレタンフィルム材、ハイドロコロイド材、ハイドロジェル材、キチン材、アルギン酸塩材、ハイドロファイバー材、ハイドロポリマー材などが存在し、目的から分ければ局所管理のものと2次治癒を目的としたものに分かれる。この中には管理医療機器のみならず高度管理医療機器に分類されるものも含まれる。
ポリエステルフィルム等を貼付した医療用不織布や医療用脱脂綿は、創傷保護材として概ね優れているが、素材そのものの性質やエンボス加工等によりやや摩擦が存在するためずり応力を創面に伝える。
ただ、台所用品を医療現場に使用するという抵抗感から、折角効果のあるものでも全国に浸透させるには限界があり、強い非難を加える医療者も多い。なぜなら、調理用ラップの場合は含まれる添加物は食品に付着して使用することを想定しているにしても医療用材としての安全性が認められているわけではなく、増して穴あきゴミ袋に至っては添加物の種類や量の安全性は担保できるものではない。また、滅菌されているわけではなく、院内感染対策上問題となりうる。
それゆえ、必ずしも高度管理医療機器に分類される被覆材が肉芽形成を促すサイトカインをより保持する結果とならず、上述のラップ療法の如き単に保護するだけの場合の方が結果的に治癒が早まるという逆転現象も多く見られる。
創傷治癒の本質は肉芽形成を促すサイトカインの保持すなわち自然治癒力の保持にあり、自然治癒力を最大限引き出すようなより良い保護材が必要とされている。
フッ素樹脂は溶媒で成分を全く抽出できず、耐薬品性が強く全く溶出されない。よって材質そのものはきわめて安全と言える。また、添加物が加えられておらず、成分そのものが溶出しない素材となっており長期間使用しても安全である。フッ素樹脂は、炭素数が6〜10程度であれば親油性を示し脂肪組織に取り込まれる場合もあるが、分子量が大きいものであれば撥水性撥油性を併せ持ち、人体組織に影響はない。
PIXE分析とは、Particle Induced X−ray Emission(粒子線励起X線)のことであるが、陽子、α粒子などの重荷電粒子を静電加速器又は、サイクロトロンなどの加速器で数MeVのエネルギーに加速して試料に照射し、その結果発生する元素固有のエネルギーを持つ特性X線(空席の生じた内郭軌道に、外郭電子が遷移する際に放出される)を測定して、元素分析する方法でCaイオンなどを測定した。原子は、K殻、L殻、M殻と呼ばれている原子核を中心にした殻(内殻)構造を持ち、この順番に内側から電子が配置されている。この殻の軌道半径は、原子番号が大きくなるほど小さく、その束縛エネルギーも大きくなる。内殻電子が飛び出すと、その軌道をそれより外側の軌道電子が埋める。このとき束縛エネルギー差の分のエネルギーを電子はX線(特性X線と呼ばれる)として放出するか又はそのエネルギーで他の外殻電子を飛び出させるかする(飛び出した電子はオージェ電子と呼ばれる)。内殻を電子がX線放出して埋める割合を蛍光収量と呼びωで表わす。K殻を埋めるときの特性X線はK−X線、L殻はL−X線と呼ばれ、これらの特性X線のエネルギーは原子番号が大きくなると大きくなる為、各元素の特性X線のピークが区別されて現れる。
内殻電子はクーロン力という電気の力で原子の核に束縛されている。糸で結ばれた球が円を描いて回っているようなものである。内殻電子はその束縛エネルギーより大きなエネルギーをもらうと糸が切れて原子から飛び出すことができる(内殻電離という)。陽子は電子に比べて約1800倍も重い、したがって入射粒子が陽子などの重荷電粒子の場合、内殻電子はいきおいよくぶつかると、跳ね飛ばされて電離される。これは、ある速さ以上でぶつからないと束縛エネルギーよりも大きなエネルギーを得られない。また、入射粒子の速度が低くなるにつれて、より速い速度で衝突しなければ電離されるエネルギーを得られない。PIXEで用いられる入射粒子のエネルギー領域では、ほとんどこのような衝突で電離が起こる。入射粒子のエネルギーを高くすると静止している電子もはじき飛ばされて電離されることが出来るようになるのである。
この分析法では、表面が濡れたままでも処理せずそのまま測定できるので素材に付着したNaより分子量の大きい元素を知ることができた。
よって、ここで用いたフッ素樹脂のFEPに関しては、表にあるようにCa以外の原子も吸着されている可能性もあるが、吸着量が相対的に少ないので、γ線によって攪乱され、具体的数値を測定できなくなっている。
評価は日本褥瘡学会DESIGN評価による。
d1:表面のみの損傷,d2;真皮までの損傷
D3;皮下組織までの損傷、D4;皮下組織を越える損傷、
D5;関節腔、体腔に至る損傷又は深さ判定不能
e1:滲出液少量、e2:中等量、E3:多量
i0:炎症兆候なし、i1:局所の炎症兆候、I2:局所の明らかな感染兆候、
I3:全身的影響
g1:良性肉芽が、創面の90%以上を占める、g2:50%以上90%未満、
G3:10%以上50%未満、G4:10%未満、G5:全く形成されていない
n0:壊死組織なし、N1:柔らかい壊死組織あり、N2:硬く密着した壊死組織あり
P1:ポケットの面積が、4cm2未満、P2:4〜16cm2、P3:16〜36cm2
P4:36cm2以上
被覆材はプラスチック試験管中ハサミで細切し、PBS(リン酸緩衝液)800μL添加し混和、一晩4℃放置後、遠心分離し、溶液部分を測定に用いた。浸出液は、試験管にPBS(リン酸緩衝液)300μL添加、希釈混和したものを測定試料とした。b−FGFは酵素免疫測定法で測定し、タンパク質量はBradford法で測定した。
例えばPTFEの場合には主鎖の配向は末端トリフルオロメチル基の表面露出数などが表面特性に大きく影響すると言われ、例えばFEPも、トリフルオロメチル基を持ち、薄い素材とすることが容易なので被覆素材としては理想的である。
また、当文献によれば、炭素数が大きくなるほど接触角が大きくなり撥水性が増し、細菌の付着も少なくなる。
具体的には、一般的な義歯床(入れ歯の土台部分)はポリメチルメタクリラート(PMMA)を主とするプラスチック製だが、口腔内細菌(C.albicansやS.mutansをはじめとする他種類の細菌)の付着から始まって、バイオフィルムの形成、デンチャープラークの生成に至る。
そこで、各種のフッ素樹脂表面への糖、対象となったタンパク質や唾液などの吸着を表面プラズモン共鳴、Quartz Crystal Microbalanceを用いて検討した結果、吸着はほとんど起こっていなかった。
もっとも、より詳しくは、一部のタンパク質の疎水領域と大きな相互作用があることが確認された。すなわち、フッ素樹脂を含む高フッ素化ポリマーの表面は、親水性水溶液に対しては撥水性が発揮されて吸着しにくくなる。これに対して、タンパクやその複合体は疎水性領域を持っているためその水溶液と含フッ素ポリマー表面は強力な疎水性相互作用のために強固な吸着を起こし、吸着後の表面は親水化される。
フッ素樹脂の強い撥水性の反動として、集まった水分子を避けようと疎水性領域が強力に表面に吸着を起こすのである。
もちろん細菌真菌ウイルスは疎水性領域を持たないので吸着されない。よってバイオフィルムも形成されない。
もっとも、力学的法則のみからは、分子量の大きなタンパクはフッ素樹脂との間の分子間力が大きく吸着するが、一方、質量の小さな物ほど加速度が生じやすく速く吸着されるのではとも考えられ、重力加速度と慣性加速度は結果的に一致し重いものと軽いものの吸着され易さに差は無いことになる。ただ、このような力学的一般則のみからの説明からではなく、タンパク質側鎖の立体的性質に因るところも大であり、どのようなタンパクがフッ素樹脂に吸着され易いかという一般則は今のところ存在しない。結果としては、前述のしたように創傷治癒に必須なサイトカインはあまり吸着されていない。
細菌に対しても、一般に好気性細菌が多いので、酸素透過性がより少ないことは有利であり、かつ、フッ素樹脂は表面のバイオフィルムの生成を抑える働きを持つので創環境を改善する。
このように、感染例が他の素材に比べ少ないのは、外部のいかなる物質に対してもバリアとなることと、細菌が素材に付着しバイオフィルムを作りにくいという特質によると考えられる。感染とは細菌が集まり増殖することを意味し、細菌が素材に付着しないことが、通常では感染を予防することにつながるといえる。したがって、他の素材プラスチックや金属に比べ安全性は高く体内留置型の医療機器などの素材にも応用できる。
もっとも、細菌の数が一定以上であればサイトカインの場合と同様に創部に押し戻され、感染能力を助長するとも考えられ、未だに感染への安全性が確立されていない為、一般の創傷保護被覆材と同様に著しい感染創へは使用しないことと銘記すべきである。
なぜなら、細胞外液は毛細血管を自由に移動でき、通常血漿量の3倍の電解質が保有されている(〔非特許文献6〕oxford分子医科学事典)。そして、血小板の凝集は血液の粘度が増し血流のずれ応力に応じてCaイオンが血小板に取り込まれ、通常の10倍にも及ぶ(〔非特許文献7〕菅原基晃・前田信治著「血液のレオロジー」(コロナ社))。
また、同非特許文献p34、35、64、65では、血液の粘性は赤血球の流動状態と密接に関連するが、赤血球の変性による粘度上昇もCaイオンの増加、機械的ストレスによるCaイオンの侵入などに因る。特にずり応力(血管壁との間の抵抗)の負荷による赤血球内のCaの増量は重要である。赤血球膜に張力が加わると陽イオンに対する透過性を増す。また、ずり応力が血小板の粘着凝集を引き起こす伝達物質にCaイオンが関与している。ずり応力が加わると、血小板内のCaイオンが10倍に増加し、これに同調して血小板の凝集が起こるなど、Caイオンと血液の粘度及び血小板の凝集には不可分な関係があるからである。
従って、静電気を持ちやすいFEPで治癒が早い理由のひとつとして、電気的影響によるCaイオンの取り込み阻害により、血流が改善されると推認される。
ただし、今のところ閉塞性動脈硬化症や糖尿病性壊疽まで改善させることはできないと考えている。
このことは、(0026)における表面プラズモン共鳴、Quartz Crystal Microbalanceを用いた検討とも符号する。
ただ、フッ素原子が作り出す化学的性質による電場は、他の素材に比べ荷電を永久的に保持するので、Caイオン等陽イオンにとって影響が大きいと考えられ、素材に直接吸着された量以上に大きな影響を生体に与えうると考える。
他の素材にCaはじめ多くの元素が多量に付着しているのは、静電的な付着というよりも分子間力、すなわち、多層的に付着したたんぱく質を介してのものであると考えられる。
実験方法は、ふたつきガラス容器(直径6cm、深さ4cm)に溶液を1ml採り、蓋に、FEPフィルム(穴なし)と比較対照のサランラップ(登録商標)を噛ませて蓋を閉め逆さまにして遠心分離を3時間かけて、静電気的吸着のみを見るため素材をろ紙で水分を除いた後定量した。
結果は、FEPサランラップともに定量下限値の<0.02μg/cm2であった。細胞外液中で約5mEqのCaイオンが存在するので、1ml溶液では約200μgが含まれるが、すべてが試料と接するとは限らないとしても1%未満のCaイオンしか吸着されていないと言える。よって、水溶液中ではFEP素材が帯電してもそれによって直接Caイオンが素材に吸着されるのではないと言える。
尚、被覆による皮膚温度上昇や酸素透過性の減少と血流の因果関係があると推定していたが、レーザー血流計の測定テータに関する限り、被覆素材と密着しても時間的に血流が上昇することはなく、また、素材を二十重ねにして計測しても有意差は見られず、因果関係の判断をすることはできていない。
実験において、まず、体を固定したマウスの尻尾の静脈1本に傷をつけ当発明品を付着させ完全止血までの時間を測定したところ、3群とも1分前後で止血は完了した。開放3群においては平均2分ほどかかった。
以上より、FEPは特段止血を妨げる実験結果はなく、むしろFEP素材を付着させても止血を促進していると考えられる。
上述のように、FEPではCaイオンはほとんど直接素材に吸着されず、物理的に圧迫も加われば、一次止血の機序において止血機能は十分機能していると考えられる。尚一次止血とは、外傷などにより血管が破綻して出血が起こると血管内皮細胞の下にある膠原繊維が露出し、そこに速やかにCaイオンを介して血小板が粘着し、これをきっかけとして活性化した血小板から生理活性物質が放出され、これによりCaイオンを介して血小板同士が凝集して血小板血栓が形成される。ここまでの機構を一次止血という。
結果は、2群とも2分以内で完了した。一方、同じ固体から採血した自然放置2群については、13分以上かかった。
参考までに、止血作用を持つアルギン酸製剤カルトスタット(ブリストルマイヤースクイブ登録商標)1cm四方(嵩あり)1群については、10秒程度でほぼ完了し、医療用不織布FC滅菌パッド(白十字登録商標)の素材ポリエステル1.5cm四方1群では当発明品とほぼ同様の結果であった。
試験管内においては、Caイオンを放出するアルギン酸はもとより、絶縁性物質を置くことによっても血液内のCaイオンの血小板への取り込みが促進されていると言える。
この実験においてもFEPにより止血は促進されていると言える。
これらのマウスは新生児マウスを使用した。
そして、装着前にムチンの水溶液で吸着処理したり、抗菌性タンパク質水溶液で処理すると、防汚効果や表面抗菌性を発現させることが可能である。
以下に穴を開けたときと開けないとき、穴の大きさによる治療効果の比較を示す。穴が小さければ滲出液の排出が困難になる恐れがあるが、穴の割合を増やすと重要なサイトカインも漏出するので、小さな穴を多く開けることにより最大公約数的な素材とすることができた。本発明品は下記に示すもののみならず、小さくてもっと多くの穴(例えば0.05mm、100個/1cm2程度)の開いたフッ素樹脂も包括する。
また、穴を開ける代わりに、繊維状のフッ素樹脂を適度な水分透過性を持たせるように編み合わせて製材化することも可能である。
管理医療機器に該当するテガダームでは、承認時臨床試験〔非特許文献10〕(平成2年12月20日発行、基礎と臨床第24巻第15号別刷、テガダームによるトランスペアドレッシング、裕文社)によれば、3例に実施されているが、いずれも滲出液を吸収しきれず密着不良となり感染増悪の恐れもあり中途で断念している。一般的にもテガダームは滲出液の多い褥瘡には不向きであり、ごく軽度の場合以外使用されない。
一方高度管理医療機器に該当するデユオアクティブは承認時臨床試験〔非特許文献11〕(コンバテック事業部社内資料国内文献集)によれば、改善率は90%近くに上るが、深さD3,4の場合では改善が認められるものの完治事例は12例中1例(他は全て改善)に過ぎなかった。
フッ素樹脂に直接接着剤を塗布することは困難であるので、例えば剥離紙を用いて不織布に接着剤を付着させたものにFEPを接着させることができる。
不織布が厚すぎれば、圧迫の原因となるので、厚さは3mm程度が望ましい。
Claims (2)
- 傷に接する部分の使用材料がフッ素樹脂であり、皮膚表面から組織に至る創傷に用いる創傷保護、被覆材
- 請求項1 記載のフッ素樹脂に水分透過性を高める加工を施したものに、不織布や脱脂綿等を貼った創傷保護、被覆材
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WO2010021367A1 (ja) | 2008-08-21 | 2010-02-25 | 旭硝子株式会社 | 発光装置 |
WO2010150830A1 (ja) | 2009-06-23 | 2010-12-29 | 旭硝子株式会社 | 発光装置 |
Citations (1)
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JPS62275456A (ja) * | 1986-05-22 | 1987-11-30 | 帝三製薬株式会社 | 創傷保護材 |
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2007
- 2007-02-28 JP JP2007082838A patent/JP2008212591A/ja active Pending
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JPS62275456A (ja) * | 1986-05-22 | 1987-11-30 | 帝三製薬株式会社 | 創傷保護材 |
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WO2010021367A1 (ja) | 2008-08-21 | 2010-02-25 | 旭硝子株式会社 | 発光装置 |
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