JP2008208403A - 真空浸炭の条件をシミュレーションにより決定する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】真空浸炭を行なうに当たり、適切な浸炭条件を見いだす手法を、予備的な浸炭を行なわずに、あらかじめ設定した浸炭条件によった場合に得られる結果を、コンピュータを用いたシミュレーションにより予測し、合否の判断をする方法を提供する。
【解決手段】図1に示すフローに従って、浸炭の対象となる部品の、浸炭特性が問題になる部分に関して、設定した浸炭パターンに応じてA)〜C)の「準備」をしたのち、「仮想操作」の手順1)〜6)を必要な回数繰り返して計算し、設定したパターンの浸炭が終了するまで計算を行なった後、任意の部分における浸炭の結果を「出力」して求め、それが所望の成績であるか否かを判定する。
【選択図】 図1
【解決手段】図1に示すフローに従って、浸炭の対象となる部品の、浸炭特性が問題になる部分に関して、設定した浸炭パターンに応じてA)〜C)の「準備」をしたのち、「仮想操作」の手順1)〜6)を必要な回数繰り返して計算し、設定したパターンの浸炭が終了するまで計算を行なった後、任意の部分における浸炭の結果を「出力」して求め、それが所望の成績であるか否かを判定する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、鋼の表面硬化処理の手段である真空浸炭を実施するに当たり、コンピュータを用いたシミュレーションにより、その適切な条件を決定する方法に関する。
鋼を機械部品、たとえば歯車の形状に成形し、浸炭して製品とする場合、浸炭方法としては、従来慣用されてきたガス浸炭法に代って、最近は、真空浸炭法が採用されるようになってきた。真空浸炭法には、ガス浸炭法に対して、つぎのような利点があるからである。1)真空中で処理を行なうため材料の酸化が起こらないから、ガス浸炭法では生じやすい粒界酸化が避けられ、強度の向上に寄与する。
2)浸炭装置の構造上、高温浸炭を行ないやすく、そのために迅速な浸炭が可能である。
3)使用する浸炭ガスが少量で済み、ランニングコストが安い。
2)浸炭装置の構造上、高温浸炭を行ないやすく、そのために迅速な浸炭が可能である。
3)使用する浸炭ガスが少量で済み、ランニングコストが安い。
ところが、真空浸炭法には、対象とする浸炭部品の表面における炭素濃度をコントロールする方法が確立されていない、という弱点がある。在来のガス浸炭であれば、カーボンポテンシャル制御、すなわち雰囲気中の炭素との平衡反応によって部品表面の炭素濃度を制御することができるが、真空浸炭では、この手法は採用できない。そのため、意図した炭素濃度分布を得るための浸炭条件を見いだすまでに、多数回の予備処理を行なう必要があった。また、真空浸炭には、部品の形状によって表面炭素濃度が顕著に左右され、平面形状の部分にくらべて、エッジ形状の部分の炭素濃度が高くなるという問題もある。このため、とくに突出した部分をもつ部品の場合、製品に関して定められた表面炭素濃度、表面硬さの規格を満たす浸炭条件はきわめて狭いものになり、適切な浸炭条件の決定は、ますます困難である。
浸炭による部品の表面処理に関して、コンピュータを用いた浸炭炉の制御方法が開発された(特許文献1)。その技術は、連続浸炭炉において被処理材が変化する場合に、それに伴って炉の各ゾーンの条件を変更しなければならないという問題に対処するため、連続浸炭炉を通過する各トレイ上の各浸炭部材が各浸炭位置において晒された温度や雰囲気を基にして、各浸炭位置における浸炭度の履歴を積算し、それに基づいて各ゾーンの操業条件を変更するというものである。しかし、真空浸炭に関する上述の問題に対する解答ではない。
特開平5−230527
本発明の目的は、真空浸炭を行なうに当たり、適切な浸炭条件を見いだす手法を、予備的な浸炭を多数繰り返すことを避け、あらかじめ設定したいくつかの浸炭条件によった場合にどのような結果になるかを、コンピュータを用いたシミュレーションにより予測し、その結果に基づいて、設定した浸炭条件が所望の結果を与えるか否かについて、合否の判断をする方法を提供することにある。
本発明の方法は、真空浸炭を行なうに当たり、好適な浸炭条件を、コンピュータを用いたシミュレーションにより選択する方法であって、図1に示すフローからなる。すなわち、下記のA)〜C)の「準備」を行なってから、評価の対象とする浸炭パターンを設定し、そのパターンについて1)〜6)の「仮想操作」を、予定した浸炭が終了するに必要な回数繰り返し行ない、最後に「出力」を行なって、所望の結果と比較し、設定した浸炭条件を評価して合否を決定することからなる方法である。
[準備]
A)浸炭の対象とする部品の全体または一部について、その表層部を複数の、一辺の長さが0.1〜50μmの範囲内の立方体状のセルに分割し、各セルにおける固溶炭素量および炭化物量をあらわす変数を設定する。
B)各セルの固溶炭素量および炭化物量の初期値として、浸炭を行なう素材の含有炭素量およびゼロを選ぶ。
C)0.1秒間〜1分間の範囲内で一定の時間を、1ステップ時間として設定する。
[仮想操作]
1ステップ時間分、以下の操作を行なう。
1)設定した浸炭パターンと比較して、現在のステップの温度および浸炭ガスの有無を確認する。
2)下記の定数Xを、熱力学計算または実験により求める。
X=浸炭温度における(セメンタイト−黒鉛−鉄)三相平衡時の固溶炭素濃度
3)その浸炭温度における、炭素が鋼中を拡散する速度に従い、拡散定数を入力する。
4)雰囲気中に浸炭ガスがあるか否かを確認し、あれば、最表面のセルの固溶炭素濃度が Xであるとみなし、なければ、それまでに算出された最表面のセルの固溶炭素濃度を、 そのままの値で使用する。
5)下記の拡散方程式に従い、各セルの固溶炭素濃度の変化量を計算する。
固溶炭素濃度の変化量=拡散定数×{隣接するセルの炭素濃度の合計値−(隣接するセ ルの数×現在の炭素濃度)}×1ステップの時間÷(セルの一辺の長さ)2
6)熱力学計算により、各セルに存在する炭素を、固溶炭素と炭化物炭素とに分配する。
[出力]
任意のセルにおける炭素濃度を出力する。
[準備]
A)浸炭の対象とする部品の全体または一部について、その表層部を複数の、一辺の長さが0.1〜50μmの範囲内の立方体状のセルに分割し、各セルにおける固溶炭素量および炭化物量をあらわす変数を設定する。
B)各セルの固溶炭素量および炭化物量の初期値として、浸炭を行なう素材の含有炭素量およびゼロを選ぶ。
C)0.1秒間〜1分間の範囲内で一定の時間を、1ステップ時間として設定する。
[仮想操作]
1ステップ時間分、以下の操作を行なう。
1)設定した浸炭パターンと比較して、現在のステップの温度および浸炭ガスの有無を確認する。
2)下記の定数Xを、熱力学計算または実験により求める。
X=浸炭温度における(セメンタイト−黒鉛−鉄)三相平衡時の固溶炭素濃度
3)その浸炭温度における、炭素が鋼中を拡散する速度に従い、拡散定数を入力する。
4)雰囲気中に浸炭ガスがあるか否かを確認し、あれば、最表面のセルの固溶炭素濃度が Xであるとみなし、なければ、それまでに算出された最表面のセルの固溶炭素濃度を、 そのままの値で使用する。
5)下記の拡散方程式に従い、各セルの固溶炭素濃度の変化量を計算する。
固溶炭素濃度の変化量=拡散定数×{隣接するセルの炭素濃度の合計値−(隣接するセ ルの数×現在の炭素濃度)}×1ステップの時間÷(セルの一辺の長さ)2
6)熱力学計算により、各セルに存在する炭素を、固溶炭素と炭化物炭素とに分配する。
[出力]
任意のセルにおける炭素濃度を出力する。
本発明の方法によって、あらかじめ設定したいくつかの浸炭条件について結果の判定を行なえば、どの浸炭条件が所望の浸炭製品を与えることができるか、さらには、その合格した浸炭条件のうちで、どれが最良の結果をもたらすかを、実際の浸炭操作を行なうことなく予測することができるから、真空浸炭に先立ち予備浸炭を行なうことにより必要となる労力およびコストが節約でき、より短い時間で適切な浸炭条件を決定することができる。この利益は、真空浸炭の実施を妨げていたいくつかの問題を打開し、真空浸炭の利益を得ることを可能にする。本発明の方法は、市販の熱力学計算ソフトの助けを借りて実施することができ、とりたてて高速のコンピュータでない常用のパソコンを使用しても、十分に実際的な所要時間で結果を得ることができるから、設備的な問題で実施が制約されることはない。
本発明のシミュレーションは、下記の前提に立っている。
1.部品表面の境界条件をつぎのように仮定する
浸炭期:黒煙と平衡する炭化物量、固溶炭素濃度量となる。
拡散期:試験片と雰囲気間の炭素流束はない。
2.圧力パルス浸炭においては、上記の「浸炭期」とは浸炭ガス導入時間を意味し、「拡 散期」とは浸炭ガス非導入時間を意味する。
ガスパルス浸炭では、炉内に残存している浸炭ガス分子数を、供給量・排気量・被浸 炭材料の炭素吸収量から計算し、炉内に浸炭ガスが残存していれば浸炭期とし、なけれ ば拡散期とする。炉内雰囲気は均一であるとし、バラツキは考慮しない。
3.試験片内に存在する炭素は、ただちに炭化物とマトリクスとに分配されるものとし、 析出に要する時間は考慮しない。
4.固溶した炭素のみが拡散するものとし、拡散はフィックの法則に従って起こる。
1.部品表面の境界条件をつぎのように仮定する
浸炭期:黒煙と平衡する炭化物量、固溶炭素濃度量となる。
拡散期:試験片と雰囲気間の炭素流束はない。
2.圧力パルス浸炭においては、上記の「浸炭期」とは浸炭ガス導入時間を意味し、「拡 散期」とは浸炭ガス非導入時間を意味する。
ガスパルス浸炭では、炉内に残存している浸炭ガス分子数を、供給量・排気量・被浸 炭材料の炭素吸収量から計算し、炉内に浸炭ガスが残存していれば浸炭期とし、なけれ ば拡散期とする。炉内雰囲気は均一であるとし、バラツキは考慮しない。
3.試験片内に存在する炭素は、ただちに炭化物とマトリクスとに分配されるものとし、 析出に要する時間は考慮しない。
4.固溶した炭素のみが拡散するものとし、拡散はフィックの法則に従って起こる。
「準備」について説明すれば、まず、浸炭の対象とする部品の種類や形状によって、浸炭の結果が重要である部分と、それほどではない部分とがある場合がある。その場合は、重要な部分についてだけ、本発明のシミュレーションを行なえば足りる。歯車について具体的な部分をいえば、浸炭の結果が重要なのは、歯面、エッジ(歯の角)部、歯元0.35%C深さの各部である。
浸炭する部品の表層部に考える立方体形状のセルは、一片の長さが0.1〜50μmの範囲の、十分に小さなものでなければならない。小さい方が精密な結果が得られるが、小さければ計算に要する時間が長くなるから、必要な限度で大きい方が有利である。通常は、10μm程度にえらぶのが適切である。同様に、1ステップの時間も、0.1秒間〜1分間の範囲内で、十分に短いものでなければならない。この場合も、短い方が精密な結果が得られるが、短ければそれに応じて所要時間が長くなるから、あまり短くすることは得策でない。通常、1秒間程度が適切である。
「仮想操作」における、「定数X=浸炭温度における(セメンタイト−黒鉛−鉄)三相平衡時の固溶炭素濃度」の値は、ある温度の平衡に関する実験データが知られていれば、それから直接、または近い温度のデータ間の内挿により求めることができるし、市販の熱力学計算ソフトを利用して求めることもできる。「鋼中における炭素の拡散定数」の値もまた、温度によって決定される値であって、種々の温度において実験的に得た値が知られているので、それを用いる。「雰囲気中に浸炭ガスがあるか否か」は、設定した浸炭パターンにおいて、浸炭ガスを存在させる場合と、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスを存在させたり、真空にしたりする場合があるため、確認するものである。
拡散方程式としては、下記の式が代表的であり、セルの形状として立方体を選んだ場合には、この式が妥当する。
固溶炭素濃度の変化量=拡散定数×{隣接するセルの炭素濃度の合計値−(隣接するセル の数×現在の炭素濃度)}×1ステップの時間÷(セルの一辺の長さ)2
ここで、セルが「隣接する」とは、セルの面を間にして隣り合っていることを意味する。また、あるセルの炭素濃度に影響を与えるのは、実質上は、もっぱら拡散方向すなわち、表面に対して垂直の方向に隣接したセルだけと考えてよい。
固溶炭素濃度の変化量=拡散定数×{隣接するセルの炭素濃度の合計値−(隣接するセル の数×現在の炭素濃度)}×1ステップの時間÷(セルの一辺の長さ)2
ここで、セルが「隣接する」とは、セルの面を間にして隣り合っていることを意味する。また、あるセルの炭素濃度に影響を与えるのは、実質上は、もっぱら拡散方向すなわち、表面に対して垂直の方向に隣接したセルだけと考えてよい。
「各セルに存在する炭素を固溶炭素と炭化物炭素とに分配する」熱力学計算は、市販の計算ソフトを利用して行なうことができる。上記のようにして1ステップごとの計算を行ない、それを設定した浸炭パターンが完了するまで繰り返す。完了したならば、その部品の中の浸炭状況が問題になる部分において、どのような浸炭の結果が生じるであろうかを、出力することによって評価する。問題の部分すべてにおいて、所望の浸炭が実現するようであれば、その浸炭パターンは実際に行なったときに良好な結果をもたらすと期待することができる。
浸炭部品の素材として、SCM420鋼をえらび、歯車形状の部品を製作した。浸炭ガスとしてアセチレンを使用し、非浸炭時にはN2ガスを流通させ、温度950℃において、パルス浸炭を行なった。下記の比較例1〜5の試験的な浸炭操作を、実際に行なった。
比較例1
模索的に表1Aの条件を設定した。浸炭品を分析して、表1Bの結果を得た(○は合格、×は不合格)。表1Bにみるように、エッジ部表面炭素濃度が高すぎたので、この浸炭パターンは不合格となった。
模索的に表1Aの条件を設定した。浸炭品を分析して、表1Bの結果を得た(○は合格、×は不合格)。表1Bにみるように、エッジ部表面炭素濃度が高すぎたので、この浸炭パターンは不合格となった。
比較例2
比較例1の結果にかんがみ、表2Aの条件をえらぶことにより、最終段階の拡散工程の時間を延長して、全体として炭素濃度が低下するようにはかった。
結果は表2Bのとおりであって、依然としてエッジ部表面炭素濃度が高すぎ、この浸炭パターンもまた不合格となった。
比較例1の結果にかんがみ、表2Aの条件をえらぶことにより、最終段階の拡散工程の時間を延長して、全体として炭素濃度が低下するようにはかった。
結果は表2Bのとおりであって、依然としてエッジ部表面炭素濃度が高すぎ、この浸炭パターンもまた不合格となった。
比較例3
比較例2の結果にかんがみ、表3Aの条件をえらぶことにより、最終段階の拡散工程の時間をさらに延長して、全体としていっそうの炭素濃度の低下が生じるようにはかった。その結果は表3Bのとおりであって、歯元部0.35%C深さが深くなり過ぎ、この浸炭パターンもなお不合格であった。
比較例2の結果にかんがみ、表3Aの条件をえらぶことにより、最終段階の拡散工程の時間をさらに延長して、全体としていっそうの炭素濃度の低下が生じるようにはかった。その結果は表3Bのとおりであって、歯元部0.35%C深さが深くなり過ぎ、この浸炭パターンもなお不合格であった。
比較例4
そこでさらに、浸炭の条件を表4Aのように変更し、パルスの一つを除き、浸炭深さを浅くしてみた。これは、全体の炭素濃度の低下を招くものであり、その結果は表4Bのとおりであって、今度は歯元の表面炭素濃度が低くなってしまい、なお合格する浸炭パターンには至らなかった。
そこでさらに、浸炭の条件を表4Aのように変更し、パルスの一つを除き、浸炭深さを浅くしてみた。これは、全体の炭素濃度の低下を招くものであり、その結果は表4Bのとおりであって、今度は歯元の表面炭素濃度が低くなってしまい、なお合格する浸炭パターンには至らなかった。
比較例5
比較例4の浸炭パターンにおいて、最後の拡散工程の時間を短縮して、表5Aに示す浸炭の条件を試みた。その結果、全体として炭素濃度が高まり、表5Bに示す成績が得られ、ようやく所望の製品を与える浸炭パターンに到達することができた。
比較例4の浸炭パターンにおいて、最後の拡散工程の時間を短縮して、表5Aに示す浸炭の条件を試みた。その結果、全体として炭素濃度が高まり、表5Bに示す成績が得られ、ようやく所望の製品を与える浸炭パターンに到達することができた。
シミュレーション1〜3
従来技術では、比較例1〜5にみたように、試行錯誤的に浸炭パターンをさぐるため、5回の浸炭実験を行なってはじめて、所望の結果を与える浸炭パターンに到達できた。もちろん、これより少ない実験回数で適切な条件が見つかる場合もあるが、それは僥倖によるものであって、常に期待できるわけではない。そこで、本発明にしたがって、表6A〜8Aに掲げるような、下記3種のシミュレーション、すなわち、シミュレーション1〜シミュレーション3を実施した。ここでは、セルとして一片の長さ10μmの立方体を考え、浸炭温度950℃における(セメンタイト−黒鉛−鉄)三相平衡時の固溶炭素濃度Xとして、1.251%、また、拡散定数として25.2μm2/sの値を採用した。
従来技術では、比較例1〜5にみたように、試行錯誤的に浸炭パターンをさぐるため、5回の浸炭実験を行なってはじめて、所望の結果を与える浸炭パターンに到達できた。もちろん、これより少ない実験回数で適切な条件が見つかる場合もあるが、それは僥倖によるものであって、常に期待できるわけではない。そこで、本発明にしたがって、表6A〜8Aに掲げるような、下記3種のシミュレーション、すなわち、シミュレーション1〜シミュレーション3を実施した。ここでは、セルとして一片の長さ10μmの立方体を考え、浸炭温度950℃における(セメンタイト−黒鉛−鉄)三相平衡時の固溶炭素濃度Xとして、1.251%、また、拡散定数として25.2μm2/sの値を採用した。
各シミュレーションの結果は、表6B〜表8Bに示すとおりであって、シミュレーション1はエッジ部の炭素濃度が過大であり、シミュレーション2はエッジ部の炭素濃度が過大である上に歯元部0.35%C深さが浅すぎて、ともに不合格であったが、シミュレーション3は問題の浸炭データがいずれも適正であって、この浸炭パターンであれば、良好な浸炭製品を得られるという予測であった。
確認例
表8Aに示した浸炭パターンが、果たして実際の浸炭においても好結果を与えるか否かを確認するため、同じ浸炭条件で、実際の浸炭を行なった。浸炭製品について特性を調べ、表9に掲げる成績を得た。各項目とも合格点であり、本発明のシミュレーションが信頼できることが実証された。
表8Aに示した浸炭パターンが、果たして実際の浸炭においても好結果を与えるか否かを確認するため、同じ浸炭条件で、実際の浸炭を行なった。浸炭製品について特性を調べ、表9に掲げる成績を得た。各項目とも合格点であり、本発明のシミュレーションが信頼できることが実証された。
Claims (2)
- 真空浸炭を行なうに当たり、好適な浸炭条件を、コンピュータを用いたシミュレーションにより選択する方法であって、下記のA)〜C)の「準備」を行なってから、評価の対象とする浸炭パターンを設定し、そのパターンについて1)〜6)の「仮想操作」を、予定した浸炭が終了するに必要な回数繰り返し行ない、最後に「出力」を行なって、所望の結果と比較し、設定した浸炭条件を評価して合否を決定することからなる方法:
[準備]
A)浸炭の対象とする部品の全体または一部について、その表層部を複数の、一辺の長さが0.1〜50μmの範囲内の立方体状のセルに分割し、各セルにおける固溶炭素量および炭化物量をあらわす変数を設定する。
B)各セルの固溶炭素量および炭化物量の初期値として、浸炭を行なう素材の含有炭素量およびゼロを選ぶ。
C)0.1秒間〜1分間の範囲内で一定の時間を、1ステップ時間として設定する。
[仮想操作]
1ステップ時間分、以下の操作を行なう。
1)設定した浸炭パターンと比較して、現在のステップの温度および浸炭ガスの有無を確認する。
2)下記の定数Xを、熱力学計算または実験により求める。
X=浸炭温度における(セメンタイト−黒鉛−鉄)三相平衡時の固溶炭素濃度
3)その浸炭温度における、炭素が鋼中を拡散する速度に従い、拡散定数を入力する。
4)雰囲気中に浸炭ガスがあるか否かを確認し、あれば、最表面のセルの固溶炭素濃度が Xであるとみなし、なければ、それまでに算出された最表面のセルの固溶炭素濃度を、 そのままの値で使用する。
5)下記の拡散方程式に従い、各セルの固溶炭素濃度の変化量を計算する。
固溶炭素濃度の変化量=拡散定数×{隣接するセルの炭素濃度の合計値−(隣接するセ ルの数×現在の炭素濃度)}×1ステップの時間÷(セルの一辺の長さ)2
6)熱力学計算により、各セルに存在する炭素を、固溶炭素と炭化物炭素とに分配する。
[出力]
任意のセルにおける炭素濃度を出力する。 - 立方体形状のセルの一辺の長さを10μmとし、1ステップの時間として1秒間を選び、X=1.251%、かつ、拡散定数=25.2μm2/sの値を用いて実施する請求項1の方法。
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2007
- 2007-02-23 JP JP2007044757A patent/JP2008208403A/ja active Pending
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