JP2008201685A - 吐出用液体及び吐出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 インスリン類の少なくとも1種を含有した溶液を、熱エネルギーを利用するインクジェット方式により安定に吐出できる吐出容液体、これを用いたインスリン類の少なくとも1種を含有する溶液の吐出方法を提供すること。
【解決手段】 インスリン類の少なくとも1種を含む溶液に、アミノ酸ではないポリカルボン酸(クエン酸を除く。)、アミノ酸ではない含窒素ポリカルボン酸、及びそれらの塩から選択された少なくとも1種を添加することで、熱エネルギーを利用するインクジェット方式での吐出に対する安定性を向上させる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、インスリン類の少なくとも1種を含む液体の吐出に適した液体組成物及びその吐出方法に関する。
現在、蛋白質溶液を液滴として利用する試みが多くなされている。例えば、薬物送達方法としての経粘膜投与や、極微量の蛋白質が必要とされるバイオチップやバイオセンサーへの蛋白質溶液の液滴形成技術の適用が挙げられる。また、蛋白質の結晶制御、生理活性物質のスクリーニングにおいても蛋白質の微小液滴を用いる方法が注目されている(特許文献1および非特許文献1、2参照)。
また近年、蛋白質、特に酵素や生理活性を持つ有用な蛋白質は、遺伝子組み換え技術により量産可能になりつつあり、蛋白質の液滴化は、新たな医薬としての探索や利用、および応用分野に対して有用な手段となり得る。中でも、微小液滴を用いて患者に多彩な薬剤を投与する手段はその重要性を増しつつある。特に、蛋白質やペプチドを始め、その他の生体物質を肺から投与する手段が重要となっている。肺は、その肺胞表面積が50〜140mと広大であり、吸収障壁である上皮は0.1μmと非常に薄く、加えて酵素活性も消化管と比して小さい。このため、経肺投与はインスリンに代表される高分子ペプチド系薬物の注射に代わる投与ルートとして注目されてきた。
肺を投与ルートとしうる高分子ペプチド系薬物で特に注目されているのが、インスリン類である。1型糖尿病の患者は体内でインスリンを作り出すことができず、食事前にインスリン類を投薬しなければならない。インスリン類の例としては、通常のインスリン、速効性のインスリンアスパルト、インスリンリスプロ、持効性のインスリングラルギン、インスリンデテミルが挙げられる。注射による毎食事前のインスリン類投薬は痛みや感染の懸念があり、それらの無い径肺投与によるインスリン類の投薬が注目されている。
一般に、薬物微小液滴の肺内沈着は、その空力学的粒子径に大きく依存することが知られている。中でも肺深部である肺胞への送達には、1〜5μmの粒径でかつ粒度分布の狭い液滴を、高い再現性で投与することが必要になる。
粒度分布が狭い液滴を作製する方法として、インクジェット印刷に使用される液体吐出の原理に基づいた液滴生成器を使用して、極めて微細な液滴を生成し、利用することが報告されている(特許文献2、3参照)。ここで、当該種のインクジェット方式による液体吐出では、吐出する液体を小さな室に導き、液体に物理的な力を与えて、オリフィスから液滴を吐出させる。吐出方法には、例えば、薄膜抵抗器等の電気熱変換素子を用いて、室上にあるオリフィス(吐出口)を通じて液滴を噴出する気泡を生成する方法(サーマルインクジェット方式)、ピエゾ振動子を用いて液体を直接室上にあるオリフィスから押出す方法(ピエゾインクジェット方式)、などが用いられる。
薬剤を肺から吸収させるにあたっては、特に、インスリン類では投与量の精密な制御が必要であり、吐出量を制御できるインクジェット方式の原理に基づく液滴化は非常に好ましい形態である。しかし、液が確実に吐出していることが求められるにもかかわらず、表面張力や粘度を調整しただけのインスリン類溶液の吐出は不安定であり、再現性と効率が高い吐出が困難な場合があった。
インスリン類溶液をインクジェット方式の原理に基づいて液滴化する際の問題点は、吐出時に加わる物理的な力(例えば圧力、剪断力)や微小液滴特有の高い表面エネルギーによって、インスリン類の構造が不安定になることである。サーマルインクジェット方式を用いる場合には、この他に熱エネルギーをも加えることになる。インスリン類の立体構造は脆弱で、構造が破壊されるとインスリン類の凝集及び分解を招き、正常な吐出に影響を与える場合がある。上記の物理的作用は、通常の攪拌や加熱処理などにより加わる剪断力や熱エネルギーより極端に大きい。(例えばサーマルインクジェット方式の場合、瞬間的に約300℃、90気圧の付加がかかると考えられている。)また同時に複数の物理的な力が加わるため、インスリン類の安定性は通常インスリン類を扱う状況よりも非常に低下し易い。この問題が生じると、液滴化の際にインスリン類が凝集し、ノズル詰まりを生じさせるため、液滴の吐出が困難となる。
さらに、肺吸入に適した大きさである1〜5μmの液滴は、現在市販されているプリンターの一般的な液滴径約16μmと比較して非常に小さいため、液滴にはより大きな表面エネルギーや剪断力が加わる。そのため、インスリン類を肺吸入に適した微小な液滴として吐出することは非常に困難である。
また、本発明者らの検討によると、サーマルインクジェットヘッドの駆動周波数が上昇するにつれて、インスリン類溶液の吐出が不安定になる場合があるとの知見を得た。サーマルインクジェットヘッドのヒータによって吐出用液体が加熱されたときに、インスリン類の一部が水に不溶性となり、ヒータからのエネルギーが溶液に伝達するのを妨げるためと考えられる。駆動周波数が低い場合には一時的に不溶物が生じたとしても、次の駆動までの時間に再溶解するのに対し、駆動周波数が高くなると、溶解の回復が不十分であり、その結果として吐出の安定性が低下するものと考えられる。しかし、駆動周波数が低いと単位時間あたりの吐出可能な量が減少するため、実際に使用する場合には適度に高い周波数で吐出する必要がある。
従って、実際の使用に際しては、インスリン類を安定に吐出することが可能な吐出用液体の開発が必須となる。
一方、界面活性剤、グリセロール、種々の糖質、ポリエチレングリコールのような水溶性高分子、アルブミンなどを添加する方法が、インスリン類を安定化する方法として知られている。しかし、サーマルインクジェット方式に基づくインスリン類を吐出する場合における吐出安定性の向上には、ほとんど或いは全く効果がない。
また、インクジェット印刷に用いられるインクに適した添加物である、エチレングリコール、グリセリンなどのポリオール類、尿素などの保湿剤などの処方を行ってもインスリン類溶液を吐出する場合における吐出性能の向上にはほとんど効果がない。
サーマルインクジェット方式を用いて作成した液滴の肺吸入に用いるインスリン類の液体組成物については、表面張力を調節する化合物や保湿剤を添加したもの(特許文献4参照)が開示されている。ここでは、溶液の表面張力や粘度、保湿作用によって液滴化した溶液中のインスリンを例とする蛋白質及びペプチドの安定性が上昇するとして、界面活性剤やポリエチレングリコールなどの水溶性高分子を加えている。
特開2002−355025号公報 米国特許第5894841号明細書 特開2002−248171号公報 国際公開第WO02/094342号パンフレット Allain LR et.al.「Fresenius J.Anal.Chem.」2001年、371巻 p.146−150 Howard EI、Cachau RE 「Biotechniques」2002年 33巻 p.1302−1306
しかしながら、特許文献4には、吐出の安定性についての詳細な記載はなく、さらに、本発明者らの検討によれば、界面活性剤や水溶性高分子の添加は、インスリン類の濃度が高くなると効果が不十分であった。また、界面活性剤は効果が全く認められないものが多く、表面張力や粘度あるいは保湿作用がインスリン類溶液の吐出安定性を規定しているわけではなかった。言い換えれば、前記の方法はインスリン類をサーマルインクジェット方式で吐出する際、吐出安定化の一般的な方法ではなかった。
本発明は、従来の吐出用液体よりも吐出安定性が高い組成物を見出したことに基づくものである。すなわち本発明は、インスリン類の少なくとも1種を含有する溶液を、インクジェット方式で安定に吐出するための吐出用液体(液体組成物)、並びにこの吐出用液体の吐出に適した吐出方法を提供することを目的とする。
本発明の吐出用液体は、電気熱変換素子又は電気機械変換素子によりエネルギーを付与することにより吐出させるための吐出用液体であって、インスリン類から選択された少なくとも1種と、下記一般式(1)に示すアミノ酸ではないポリカルボン酸(クエン酸を除く。)及びその塩、アミノ酸ではない含窒素ポリカルボン酸及びその塩から選択された少なくとも1種と、液媒体と、を含有することを特徴とする。
Figure 2008201685
(式(1)中のXは分岐しても良い炭素数1以上12以下のアルキル基を示し、主鎖にヘテロ原子を有してもよい。また、主鎖及び分岐した側鎖はヒドロキシル基またはカルボキシル基を1つ以上有しても良い。)
本発明の液体吐出用カートリッジは、上記の吐出用液体が収納されるタンクと、前記吐出用液体に熱エネルギーを付与する電気熱変換素子又は機械エネルギーを付与する電気機械変換素子を有する吐出ヘッドと、を有することを特徴とする。
本発明の吸入装置は、上記カートリッジと、該カートリッジの有する吐出ヘッドの液体吐出部から吐出される液体を吸入するための吸入口と、を有することを特徴とする。
本発明の吐出方法は、インスリン類の少なくとも1種を含む液体を電気熱変換素子又は電気機械変換素子によりエネルギーを付与することにより前記液体を吐出させる方法であって、前記液体は上記一般式(1)に示すアミノ酸ではないポリカルボン酸(クエン酸を除く。)及びその塩、アミノ酸ではない含窒素ポリカルボン酸及びその塩から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする。
本発明によれば、インスリン類の少なくとも1種を含む溶液に、特定のポリカルボン酸を添加することでインクジェット方式に基づいた安定な吐出が可能である吐出用液体を得られる。この吐出用液体を、携帯型の吐出装置で吐出し、それを吸入することによってインスリン類の少なくとも1種が肺に到達して、体内に吸収され得る。また、上記の方法で基板上に吐出することによりバイオチップ、バイオセンサーの作製等に利用できる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるインスリン類とは、インスリン及びインスリンのアミノ酸配列を部分的に変えた水溶液中に溶解または分散する任意のポリペプチドを意味する。インスリン類は、化学的に合成しても天然源から精製して、天然物の組換えを行っても良い。インスリンのアミノ酸残基への共有結合によってインスリンを化学的に改質し、それによってインスリンの治療効果を長引かせるなど、効果の向上を図ることも可能である。
本発明を実施する際には、吐出することが望ましい各種インスリン類が使用される。本発明で使用されるインスリン類は、生体に対し生理活性を有するもの、生体内で活性を有するものであれば特に限定されない。最も典型的には、本発明によるインスリン類の液滴化は、治療上有用なインスリン類を肺に送達させるために好適に利用可能である。
インスリン類の例としては、インスリン及びインスリンアスパルト、インスリンリスプロ、インスリングラルギン、インスリンデテミルのようなアミノ酸配列変更類、等が含まれる。上記物質の主構造のすべてもしくは一部を有しており、且つインスリンの生物学的諸性質の少なくとも一部を有しているインスリン類のペプチド部分も使用される。PEG、PVAなどの水溶性高分子で修飾された上記物質を含むものも使用される。PEG、PVAなどで修飾された蛋白質及びペプチドが肺に送達できることは Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、12(2&3)(1995)で明らかにされている。
さらに、バイオチップ、バイオセンサーの作製などの利用には、4−Azidobenzoic acid N−hydroxysuccinimide ester等のインスリン類を固定化するための試薬で修飾された上記物質も使用され得る。
インスリン類から選択された少なくとも1種の吐出用液体中での含有量は、その目的や用途、種類に応じて選択されるが、好ましくは、1μg/ml〜200mg/ml、より好ましくは0.1mg/ml〜60mg/mlの範囲から選択される。
なお、本発明の吐出用液体に熱エネルギーを付与して吐出させる場合、特に電気熱変換素子により熱エネルギーを付与する方法、中でもサーマルインクジェット方式を適用した場合に、最も顕著に吐出性向上を示す。そこで、以下の説明においてはサーマルインクジェット方式の原理に基づいた構成を中心に述べる。しかし、本発明においては、吐出用液体に機械エネルギーを付与する電気機械変換素子(例えば、ピエゾ素子)の振動圧を利用してノズル内の液体を吐出させるピエゾインクジェット方式を用いることも可能であり、吐出方式については、吐出させる蛋白質やペプチドの種類に応じて選択可能である。本発明においては、プリンタ分野で通常用いられているようにインクジェット方式の中で、電気熱変換素子を用いて熱エネルギーを付与する形態を「サーマルインクジェット方式」、電気機械変換素子を用いて機械エネルギーを付与する形態を「ピエゾインクジェット方式」と表現している。インスリン類の溶液に対してこれら語を用いているが、これはあくまで「インクジェット方式」の原理に基づいて、溶液に吐出エネルギーを付与していることを表しているに過ぎない。
サーマルインクジェット方式を用いた場合、個々の液体吐出ユニットについて、吐出口の口径、吐出に利用される熱パルスの熱量、それに用いるマイクロ・ヒーターなどのサイズ精度、再現性を高くすることが可能である。このため、狭い液滴径分布を達成することが可能である。また、ヘッドの製作コストが低く、ヘッドを頻繁に交換する必要がある小型の装置への適用性も高い。従って、液体吐出装置に携帯性や利便性が求められる場合には、特に、サーマルインクジェット方式の吐出装置が好ましい。
インクジェット方式によるインクの吐出性の改善については、一般的に界面活性剤やエチレングリコールなどの溶剤を添加することが知られている。しかし、インスリン類の少なくとも1種を含む溶液を吐出する場合には、これらを添加するだけでは吐出性の向上は認められず、新たな添加剤が必要であった。
本発明者らの検討によると、インスリン類が有効な生理活性を示す濃度にて、添加物を加えずにサーマルインクジェット方式で吐出した場合、吐出周波数10kHz以上では、ほとんど吐出しなくなることが確認されている。
本発明者らは、鋭意研究を進めた結果、有効成分としてインスリン類の少なくとも1種を含む溶液にアミノ酸ではないポリカルボン酸(クエン酸を除く。)又はアミノ酸ではない含窒素ポリカルボン酸を添加すると、インクジェット方式の原理によって安定に吐出することを見出した。
アミノ酸ではないポリカルボン酸、またはアミノ酸ではない含窒素ポリカルボン酸は、塩の状態で添加することも可能で、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、などを用いても良い。
上記のようなポリカルボン酸等を添加することで、インスリン類溶液の吐出の安定性に大きく寄与する原因は明らかになっていないが、以下のように考えられる。上記のようなポリカルボン酸は、等電点に近いpHのインスリン類溶液においてもインスリン類を高濃度で溶解させる。その溶解度向上には、カルボキシル基が寄与していると考えられる。よって、上記のようなポリカルボン酸は、インスリン類に対する吐出時の負荷によって不溶化したインスリン類をその高い溶解力によって素早く再溶解させると考えられる。吐出時の負荷とは、サーマルインクジェット方式の場合は主に熱、ピエゾインクジェット方式の場合は主に圧力を指す。どちらの方式においても、吐出時に瞬間的に大きな負荷かかる。つまり、上記のようなポリカルボン酸が、多少生じてしまうインスリン類の不溶物をすばやく水に再溶解させるために熱エネルギーの溶液への伝達が安定し、吐出も安定するものと考えられる。
特に熱エネルギーを用いて液体を吐出させるヘッドにおいて、高周波数で駆動させた場合に、本発明の吐出用液体による吐出性向上の効果はより顕著になる。
本発明で使用されるアミノ酸ではないポリカルボン酸、またはアミノ酸ではない含窒素ポリカルボン酸としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
Figure 2008201685
上記式(1)中、Xは分岐しても良い炭素数1以上12以下のアルキル基を示し、主鎖にヘテロ原子を有してもよい。また、主鎖及び分岐した側鎖はヒドロキシル基またはカルボキシル基を1つ以上有しても良い。Xにおけるアルキルの水素原子は、1個所以上ハロゲン原子、ヒドロキシル基で置換されても良い。更に、これらの化合物の塩を用いても良い。また、これらの化合物を1単位とする重合体でも良く、これらの化合物を構造内に含む界面活性剤でも良い。
アミノ酸ではないポリカルボン酸、またはアミノ酸ではない含窒素ポリカルボン酸の分子量は、好ましくは104〜2000であり、より好ましくは、104〜500である。また、中性領域(pH5.5〜8.5)において水への溶解度が0.1重量%より大きい化合物が好ましい。
本発明においてインスリン類溶液に添加するポリカルボン酸は、グルタミン酸のようなアミノ酸であり、かつポリカルボン酸である化合物は含まない。
本発明における「含窒素ポリカルボン酸」とは、上記Xの主鎖中にN原子を含むポリカルボン酸を指す。
前記一般式(1)に示すアミノ酸ではないポリカルボン酸、またはアミノ酸ではない含窒素ポリカルボン酸の中で、アルキル基Xの主鎖部の炭素数及びヘテロ原子数の合計をm、カルボキシル基の数をnとして、n/mが0.4以上の化合物好ましく、0.5以上であることがより好ましい。n/mは、添加剤分子中に存在するカルボキシル基の占める割合のパラメーターとなる。カルボキシル基はインスリン類の溶解度向上に寄与すると考えられており、このパラメーターが大きいほどカルボキシル基がインスリン類に作用する確率が高くなり、インスリン類の溶解度を向上し、溶液の吐出を安定化すると考えられる。
本発明において好ましいポリカルボン酸を例示すると、マロン酸、こはく酸、グルタリック酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、アジピン酸、りんご酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)およびこれらの塩である。
インスリン類1重量部に対して、アミノ酸ではないポリカルボン酸、またはアミノ酸ではない含窒素ポリカルボン酸を0.1〜50重量部添加することが好ましい。さらに、インスリン類1重量部に対して0.25〜25重量部添加することがより好ましい。さらに、インスリン類1重量部に対して0.5〜10重量部添加することが最も好ましい。
また、アミノ酸ではないポリカルボン酸、またはアミノ酸ではない含窒素ポリカルボン酸の吐出用液体中での含有量は、インスリン類の種類、含有量に応じて選択されるが、好ましくは、1μg/ml〜2.0g/ml、より好ましくは10μg/ml〜200mg/mlの範囲から選択される。
液媒体の構成としては、水または水を主体とし水溶性有機溶媒を含む混合液媒体が用いられることが好ましい。具体的な水溶性有機溶剤の例としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
上記水溶性有機溶剤の含有量は、一般には吐出液の全重量に対して0.1重量%〜40重量%が好ましく、1重量%〜30重量%がより好ましい。又、液媒体中の水の含有量は、30〜95重量%の範囲で使用される。30重量%より少ないとタンパク質の溶解性等が悪くなり、吐出液の粘度も高くなる為好ましくない。一方、95重量%より多いと蒸発成分が多すぎて、十分な固着特性を満足することが出来ない。
本発明においては、インスリン類とポリカルボン酸等は、予め混合されていても良いし、吐出直前に混合されても良いが、吐出前には均一に混合されていることが好ましい。
本発明の実施形態において、インスリン類の肺吸収効率を向上させるために界面活性剤を使用しても良い。使用され得る界面活性剤に制限はないが、例えばソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート等のソルビタン脂肪酸エステル;N−ヤシ油脂肪酸グリシン、N−ヤシ油脂肪酸グルタミン酸、N−ラウロイルグルタミン酸等のアミノ酸を親水基に持つ界面活性剤である、N−アシルアミノ酸;アミノ酸の脂肪酸塩;グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノミリテート、グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;デカグリセリルモノステアレート、デカグリセリルジステアレート、デカグリセリルモノリノレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビットテトラステアレート、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチエレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン水素ヒマシ油)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンソルビットミツロウ等のポリオキシエチレンミツロウ誘導体;ポリオキシエチレンラノリン等のポリオキシエチレンラノリン誘導体;ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレン脂肪酸アミド等のHLB6〜18を有するもの;陰イオン界面活性剤、例えばセチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等の炭素原子数8〜18のアルキル基を有するアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等の、エチレンオキシドの平均付加モル数が2〜4でアルキル基の炭素原子数が8〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキル基の炭素原子数が8〜18であるアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリルスルホコハク酸エステルナトリウム等の、アルキル基の炭素原子数が8〜18のアルキルスルホコハク酸エステル塩;天然系の界面活性剤、例えばレシチン、グリセロリン脂質;スフィンゴミエリン等のフィンゴリン脂質;炭素原子数8〜18の脂肪酸のショ糖脂肪酸エステル等を典型的例として挙げることができる。本発明の吐出用液体(液体組成物)には、これらの界面活性剤の1種または2種以上を組み合わせて添加することができる。
本発明の実施形態において、微生物の影響を除去するために抗菌剤、殺菌剤、防腐剤を添加しても良い。例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンザトニウムのような4級アンモニウム塩類、フェノール、クレゾール、アニソール等のフェノール誘導体、安息香酸、パラオキシ安息香酸エステルのような安息香酸類、ソルビン酸などが挙げられる。
本発明の実施形態において、吐出液体の保存時の物理的安定性を増加させるためにオイル、グリセリン、エタノール、尿素、セルロース、ポリエチレングリコール、アルギン酸塩を添加してもよい。また、化学的安定性を増加させるために、アスコルビン酸、シクロデキストリン、トコフェロールまたは他の抗酸化剤を添加しても良い。
吐出用液体のpHを調整するために、pH調整剤や緩衝剤を添加しても良い。例えば、アスコルビン酸、希塩酸、希水酸化ナトリウムなどの他、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、PBS、HEPES、Trisなどの緩衝液を用いても良い。
液体の等張化剤として、アミノエチルスルホン酸、塩化カリウム、塩化ナトリウム、グリセリン、炭酸水素ナトリウムを添加しても良い。
噴霧液として本発明にかかる吐出用液体を用いる場合は、矯味・矯臭剤としてグルコースやソルビトールといった糖類やアステルパームのような甘味剤、メントールや各種香料を添加しても良い。また、親水性のものだけでなく、疎水性の化合物、例えばオイル状のものを用いても良い。
更には、必要に応じて、吐出用液体の使用目的に適合する種々の添加剤、例えば、表面調整剤、粘度調整剤、溶剤、保湿剤を適正量添加することができる。具体的には、配合可能な添加剤として、親水性バインダー、疎水性バインダー、親水性増粘剤、疎水性増粘剤、グリコール誘導体類、アルコール類、電解質を例示でき、これらのうち単一でもよく、また混合物でもよい。なお、上記に例示した添加剤として利用する各種の物質に関しては、治療用の液剤の調製に際し、添加可能な副次成分として各国の薬局方などに記載されている医薬用途のもの、あるいは、食品、化粧品において利用が許容されているものを用いることがより好ましい。
上記の添加剤として、配合される各種の物質の添加比率は、対象となるインスリン類の種類に依って異なるが、一般に、0.001重量%〜40重量%の範囲に選択することが好ましく、0.01重量%〜20重量%の範囲内とすることがより好ましい。また、上記の添加剤の添加量は種類や量および組合せによって異なるが、吐出性の観点から、前記のインスリン類1重量部に対して、0.01重量部〜100重量部であることが好ましい。
また、インスリン類溶液をサーマルインクジェット方式で吐出する際には、ヘッドの駆動周波数はより低いほうが好ましい。本発明において「駆動周波数」とは、サーマルインクジェット方式の場合、一つの電気熱変換素子に対して1秒あたりに加えられる吐出パルスをいう。駆動周波数によって吐出の安定性が異なる理由は、サーマルインクジェットヘッドの電気熱変換素子によって吐出用液体が加熱されたときに、インスリン類の一部が水に不溶性となり、電気熱変換素子からのエネルギーが溶液に伝達するのを妨げるためと考えられる。駆動周波数が低い場合には一時的に不溶物が生じたとしても、次の駆動までの時間に再溶解するのに対し、駆動周波数が高くなると、溶解の回復が不十分であり、その結果として吐出の安定性が低下するものと考えられる。しかし、効率的に多くの溶液を吐出させるためには、ある程度以上の高周波数で吐出しなければならない。添加物を加えずにサーマルインクジェット方式で吐出した場合、吐出周波数10kHz以上では、ほとんど吐出しなくなるのに対して、本発明においては10kHz以上の吐出周波数でも安定して吐出が可能である。本発明の吐出用液体に適した駆動周波数は、0.1kHz以上100kHz以下であり、より好ましくは、1kHz以上30kHz以下である。
本発明にかかる吐出用液体をバイオチップやバイオセンサーの製造に用いる場合には、現在市販されているインクジェットプリンターとほとんど同様のシステムを利用することができる。
一方、本発明にかかる液体吐出装置は、サーマルインクジェット方式によって吐出用液体の微小液滴を吐出させることが可能な、サーマルインクジェットヘッドを有し、ヘッド部を構成する多数の吐出ユニットを独立駆動可能な構成とすることが好ましい。その際、各吐出ユニットの独立駆動に要する複数の制御信号等の接続に供する電気接続部と各吐出ユニットとの間を繋ぐ配線とを一体化する。加えて、吐出用液体を収納するタンクと、前記吐出用液体に熱エネルギーを付与する電気熱変換素子を有する吐出ヘッドとが一体的に構成された液体吐出用カートリッジの形態とすることが好ましい。
次に、本発明にかかる吐出用液体を噴霧用に用いる場合、特に、吸入装置に適用する場合について述べる。吸入装置としては、吐出用液体(液剤)を細かな液滴に変換する部分と、噴霧された微細な液滴をその搬送用の気流中に混入する部分と、を独立して有する構成の吸入装置を用いることが好ましい。このように、微細液滴への変換部分と微細液体を含む気流を形成する部分とを分離することで、吐出量をより均一に調整できる。つまり、投与対象者に気流を吸入させる際に気流中に、有効成分としての蛋白質やペプチドの量、すなわち各単回投与当たりの所定用量をより均一に調整可能となる。また、上記のように、吐出ヘッド部分を、それぞれが多数の吐出口を有する複数の吐出ユニット毎に異なる有効成分を吐出する構成とすることで複数の有効成分の吐出量を制御することもできる。
また、噴霧機構としての吐出ヘッドとして、吐出口を単位面積当たり高密度に配置し得るサーマルインクジェット方式の原理に基づいた吐出用ヘッドを利用することで、使用者が携帯所持できるような吸入装置の小型化が容易となる。
肺吸入用の吸入装置においては、気流中に含まれる液滴の粒径が1〜5μmで且つ狭い粒度範囲を示していることが重要となる。更に、携帯用として利用される場合には、コンパクトな構成を有する必要がある。
そのような吸入装置の有する液体吐出用カートリッジの一例の概要を図1に示す。この液体吐出用カートリッジは、筐体1内に、ヘッド部4と、吐出用液体を貯留するタンク2と、タンク2から液体をヘッド部4に供給するための液路3と、ヘッド部4の各液剤吐出ユニットの駆動を制御するコントローラ(駆動制御部)と駆動信号、制御信号などのやり取りを行うための電気的接続部6と、ヘッド部4と電気的接続部6との内部配線5とが一体形成されたヘッドカートリッジユニットとしての構造を有する。このヘッドカートリッジユニットは、必要に応じて吸入装置から着脱自在な構成とされる。ヘッド部4としては、特開2003−154665号公報に記載された液滴吐出ヘッドの構成を有するものが好適である。
このような構成のヘッドカートリッジユニットを有する携帯用の吸入装置(吸入器)の一例を、図2及び図3を参照にして説明する。図2及び図3に示す吸入器は、医療目的で利用される吸入器として使用者が携帯所持できるように小型化した一例の構成を有するものである。
図2は、吸入器の外観を示す斜視図である。この吸入器では、吸入器本体10及びアクセスカバー7によりハウジングが形成されている。ハウジング内には更にコントローラ、電源(電池)など(不図示)が収納されている。図3は、アクセスカバー7が開いた状態を図示したもので、アクセスカバー7が開くと、ヘッドカートリッジユニット12とマウスピース8(吸入口)との接続部が見えてくる。利用者の吸入動作によって、空気取り入れ口11から空気が吸入器内に吸引されマウスピース8内へ誘導されてそこに入り込み、ヘッドカートリッジユニット12のヘッド部4に設けた吐出口から吐出された液滴と混合されて混合気流となる。この混合気流は、人が咥える形状をなしているマウスピース出口へと向かう。マウスピース8の先端を利用者が口内に挿入して歯で保持し咥え、息を吸込むことで、液体吐出部から吐出された液滴がマウスピース8へと誘導され、効果的に吸入することができる。
なお、ヘッドカートリッジユニット12は、必要に応じて吸入器から着脱自在な構成とすることができる。
図2及び図3に示す構成を採用することで、形成された微小液滴は、吸気とともに投与対象者の咽喉、気管内部へと自然到達可能となる。従って、噴霧される液体の量(有効成分の投与量)は、吸気される空気の容量の大小には依存せず、独立にコントロール可能である。
(実施例1〜11及び比較例1〜8)
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの具体例に何ら限定されるものではない。なお、「%」は重量%を示す。
インスリン溶液の作製手順を以下に示す。予め適切な濃度のインスリン(シグマアルドリッチ社製)を0.01M HCl水溶液に溶解させ、さらに攪拌しながら、2M NaOHでpH7に調整した50mg/mlの特定ポリカルボン酸水溶液を所定の濃度となるように添加した。その後、0.1M NaOHでpH7に調製した後、水を加え所定のインスリン濃度となるように定容した。
インスリンアスパルト、インスリンリスプロ溶液は、ノボラピッド(ノボノルディスク社製)、ヒューマログ(イーライリリィ社製)に攪拌しながら、2M NaOHでpH7.4に調整した50mg/mlの特定ポリカルボン酸水溶液を所定の濃度となるように添加した。その後、水を加え所定のインスリンアスパルト、インスリンリスプロ濃度となるように定溶した。
上記の手順で調製した吐出用液体についてインクジェットプリンター(商品名PIXUS950i;キヤノン(株)社製)に用いられているのと同じ構成のヘッドに充填し、吐出コントローラによって吐出ヘッドを駆動して、周波数24kHzにて吐出性の評価を行った。10分間吐出されたものを○、吐出が途中で途切れたものを×として評価した。比較例として、特定ポリカルボン酸水溶液以外の化合物をインスリン類溶液に添加した吐出用液体を調製し、実施例と同様に吐出実験を行った。実施例、比較例で検討した処方と吐出評価を下記表1に示す。なお、表1中に用いられているインスリン類濃度の「単位」とは、インスリン類に対して国際的に常用されている投与量としての単位である。
Figure 2008201685
実施例1〜11の吐出用液体に対して吐出前後でHPLC分析(測定条件:装置;日本分光、カラム;YMC−Pack Diol−200 500×8.0mmID、溶離液;0.1MKHPO−KHPO(pH7.0)containing 0.2M NaCl、流量;0.7mL/min、温度;25℃、検出;UV at 215nm)を行い吐出用液体の組成の変化を確認した。
HPLC分析の結果、実施例1〜11において吐出前後でピーク位置の変化やピーク面積の変化はなく、液組成の変化も認められなかった。
実施例1〜11において用いたポリカルボン酸について、アルキル基Xの主鎖部の炭素数及びヘテロ原子数の合計をm、カルボキシル基の数をnとした場合の、n/mの値を表2に示す。
Figure 2008201685
(実施例12〜実施例19)
上記の実施例で用いたポリカルボン酸のうち酒石酸及びEDTAについて、吐出周波数を変えて吐出させた。吐出周波数以外の実験条件、実験方法は実施例1及び実施例5と同様である。駆動周波数と吐出評価を下記表3に示す。
Figure 2008201685
上記のように、吐出周波数を種々変化させても吐出安定性は保たれた。また、HPLC分析の結果、これらの実施例においても吐出前後でピーク位置の変化やピーク面積の変化はなく、液組成の変化も認められなかった。
(実施例20〜30及び比較例9〜16)
一方、3μmのノズル径を持つサーマルインクジェット方式による液体吐出ヘッドを用意し、これに接続したタンク内に30%エタノール水溶液を充填した。液体吐出ヘッドに電気的に接続したコントローラにより吐出ヘッドを駆動して液体を吐出口から吐出させ、得られた液滴(噴霧)の粒径及び粒度分布を、レーザー回折式粒度分布測定装置(スプレーテック、マルバーン社製)により測定し、確認した。その結果、約3μmにシャープな粒度分布を持つ液滴として検出された。
調製した吐出用液体を3μmのノズル径を持つ上記液体吐出ヘッドに接続するタンク内に充填し、吐出コントローラによって吐出ヘッドを駆動して、周波数20kHz、電圧12Vにて1秒間吐出(第1回吐出)を行った。更に、3秒間インターバルを置いてから次の1秒間吐出(第2回吐出)を行った。この操作を50回繰り返し、吐出の継続性を目視にて確認した。50回以上でも液滴が吐出されたものを○、15回から50回の範囲で液滴吐出が途切れた場合を△、15回未満で液滴吐出が途切れた場合を×として評価した。また、吐出用液体に対して吐出前後でHPLC分析を行い、吐出用液体の組成の変化を確認した。
比較例として、特定ポリカルボン酸以外の化合物をインスリン類溶液に添加した吐出用液体を調製し、実施例と同様に液体吐出実験を行った。実施例、比較例で検討した処方と吐出評価を下記表4に示す。
Figure 2008201685
ノズル径が3μmであるサーマルインクジェットヘッドにおいて、比較例9〜16は吐出しなかった。一方で実施例においては、安定に吐出することが確認され、本発明における化合物の添加効果が確認された。HPLC分析の結果、実施例において吐出前後でピーク位置の変化やピーク面積の変化はなく、液組成の変化も認められなかった。
これにより、ノズル径が3μmという微小液体吐出条件下でも、高周波数で安定的にインスリン類溶液の吐出が可能であることがわかった。
吸入器用の液体吐出カートリッジユニットの概略説明図である。 本発明にかかる吸入器斜視図である。 図2においてアクセスカバーが開いた状態の斜視図である。
符号の説明
1 カートリッジ筐体
2 タンク
3 液流路
4 ヘッド部
5 配線
6 電気接続部
7 アクセスカバー
8 マウスピース
9 電源ボタン
10 吸入器本体
11 空気取り入れ口
12 ヘッドカートリッジユニット

Claims (9)

  1. インスリン類から選択された少なくとも1種と、
    一般式(1)に示すアミノ酸ではないポリカルボン酸(クエン酸を除く。)及びその塩、アミノ酸ではない含窒素ポリカルボン酸及びその塩から選択された少なくとも1種と、
    液媒体と、
    を含有することを特徴とし、電気熱変換素子又は電気機械変換素子によりエネルギーを付与することにより吐出させるための吐出用液体。
    Figure 2008201685
    (式(1)中のXは分岐しても良い炭素数1以上12以下のアルキル基を示し、主鎖にヘテロ原子を有してもよい。また、主鎖及び分岐した側鎖はヒドロキシル基またはカルボキシル基を1つ以上有しても良い。)
  2. 前記一般式(1)に示すアミノ酸ではないポリカルボン酸、アミノ酸ではない含窒素ポリカルボン酸が、アルキル基Xの主鎖部の炭素数及びヘテロ原子数の合計をm、カルボキシル基の数をnとして、n/mが0.4以上の化合物である請求項1に記載の吐出用液体。
  3. 前記一般式(1)に示すアミノ酸ではないポリカルボン酸、アミノ酸ではない含窒素ポリカルボン酸が、こはく酸、グルタリック酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)及びこれらの塩からなる群より選択される化合物である請求項1又は2に記載の吐出用液体。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の吐出用液体が収納されるタンクと、前記吐出用液体に熱エネルギーを付与する電気熱変換素子又は機械エネルギーを付与する電気機械変換素子を有する吐出ヘッド、を有することを特徴とする液体吐出用カートリッジ。
  5. 請求項4に記載の前記カートリッジと、該カートリッジの有する液体吐出部から吐出される液体を吸入するための吸入口と、を有することを特徴とする吸入装置。
  6. 前記吐出ヘッドの駆動周波数を0.1kHz以上100kHz以下に制御することが可能な吐出ヘッド駆動制御部を有することを特徴とする請求項5に記載の吸入装置。
  7. インスリン類を少なくとも1種含む液体を吐出ヘッドの電気熱変換素子又は電気機械変換素子によりエネルギーを付与することにより吐出させる方法であって、前記液体は一般式(1)に示すアミノ酸ではないポリカルボン酸(クエン酸を除く。)及びその塩、アミノ酸ではない含窒素ポリカルボン酸及びその塩から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする吐出方法。
  8. 前記吐出方法は、電気熱変換素子により熱エネルギーを付与することにより吐出させることを特徴とする請求項7に記載の吐出方法。
  9. 前記吐出ヘッドの駆動周波数を0.1kHz以上100kHz以下に制御し前記液体を吐出させることを特徴とする請求項7又は8に記載の吐出方法。
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