JP2008198522A - X線源 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の製品より小形でありながら、しかも高エネルギーでより小径なスポットのX線を発射することが可能なX線源を得る。
【解決手段】X線源は、電子線を発射する電子線源と、この電子線源から発射された電子線を高周波電場で加速する加速管と、この加速管で加速された高エネルギの電子を衝突させてX線を放出するターゲットとを有する。加速管はターゲットに向けて発射される電子線のスポット径を1mm以下とし、ターゲットはX線案内孔を有するコリメータを備え、このコリメータのX線案内孔の孔径を0.6mm以下としている。より具体的には、電子線源から加速管に向けて発射される電子線のスポット径を1mm以下とし、加速管でこの電子線を加速し、前記のターゲットに衝突させる。
【選択図】図1
【解決手段】X線源は、電子線を発射する電子線源と、この電子線源から発射された電子線を高周波電場で加速する加速管と、この加速管で加速された高エネルギの電子を衝突させてX線を放出するターゲットとを有する。加速管はターゲットに向けて発射される電子線のスポット径を1mm以下とし、ターゲットはX線案内孔を有するコリメータを備え、このコリメータのX線案内孔の孔径を0.6mm以下としている。より具体的には、電子線源から加速管に向けて発射される電子線のスポット径を1mm以下とし、加速管でこの電子線を加速し、前記のターゲットに衝突させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、非破壊検査等のため検査対象物に向けてビーム状のX線を発射するX線源に関し、電子線源側から初期エネルギーを与えて加速管に導入した電子を同加速管において高周波電界により加速し、この加速した電子をターゲットに衝突させ、この加速電子の衝突によりターゲットからX線を発射するX線源に関する。
非破壊検査は、工業産業分野や各種プラントなどに広く用いられている。その方法としては、超音波を使ったもの、電磁誘導や放射線を用いるものなどがある。特にX線を用いた非破壊検査は医療における生体内部診断で用いられるX線撮影と同様の原理を工業用製品の検査に適用したものである。エンジン等の構造体の内部検査や原子炉圧力容器の溶接部、各種プラントの配管劣化の検査等、各方面の非破壊検査に使用することが期待されている。
従来既に製品化されているX線非破壊検査装置の代表的な例としては、リニアック型電子線形加速器と制動放射X線を用いたものを挙げることが出来る。アメリカのヴァリアン社は電子線加速用にS−バンド(2.856GHz帯)の高周波電源を用いたX線非破壊検査装置(製品名「LINATRON」)を開発・製品化している。また、日本でも三菱重工業がかつて同様のものを製造・販売していた。さらに、アメリカン・サイエンス・アンド・エンジニアリング社(AS&E)では電子線加速用にX−バンド(9.5GHz帯)の高周波電源を用いたX線非破壊検査装置を設計、開発している
しかし、これら2例については出力が大きく、それに伴って大型となる高周波電源を用いているため装置が大きく、使用出来る場所や状況が極めて限られる。製品の内部検査をするような場合に、放射線管理された専用の工場に持ち込んで検査する必要があるという制約を伴う。
X線を使用した非破壊検査において、検査対象物へのX線透過能力を高めるためには、大きなエネルギを有するX線を発生し得るX線源が必要となる。ただ現在の放射線障害防止法では1MeV以上の出力の放射線を発生することが出来る装置を使用する場合は、放射線管理区域の設定が必要となり、同管理区域内での使用が前提となる。ただし、原子力施設や工業プラントの配管検査、航空機エンジン等の内部損傷検査、建築物の構造検査等、人的安全を確保するうえで重要な分野の検査においてX線を使用した非破壊検査の必要性が高まっている社会情勢の中で現在のこの規制は緩和される方向にある。
また、X線照射による検査対象物の非破壊検査において、その検査の分解能を高めるためには、より小さなスポット径のX線を発射することが出来るX線源が必要となる。さらに、前記のような配管検査、エンジン検査、建築物構造検査等において使用する状況下では、あらゆる場所に搬入して使用することを目的として、X線源のより小形化も必要となる。
このような要請に適ったX線源が得られれば、検査対象物の分解や放射線管理区域への持ち込み等を伴うことなく簡便に非破壊検査を行うことが出来る。例えばプラントにおける配管を当該現場において配管周囲の断熱材を剥離する等の分解作業を伴うことなく透視検査出来るため、プラントの定期検査が簡便且つ的確に行えるようになる。また、構造的に所要の実用強度が要請される航空機用エンジン等についても、それらを分解することなく現場において簡便且つ的確に検査することが可能になる。
しかしながら現在において、これらの要請に適った小形で、しかも高出力、小スポットのX線を発射出来るX線源は製品として実現されていないのが実情である。
特開2004−335419号公報
特開2002−270398号公報
特開2000−243599号公報
本発明は、前述したX線源における従来の課題に鑑み、従来の製品より小形でありながら、しかも高エネルギーでより小径なスポットのX線を発射することが可能なX線源を提供することを目的とする。
本発明では、前記の目的を達成するため、加速管内で高周波により加速した電子線でターゲットを衝突することでターゲットからX線を発射する方式のX線源において、電子線源、加速管、その加速用高周波電源、ターゲット等の各要素の方式、形状、特性等を全面的に見直すことで、それらの全体的な構成を改善し、小形化が可能で、高いエネルギーを有する小スポットのX線を発射出来るX線源を実現したものである。
より具体的に説明すると、本発明によるX線源は、電子線を発射する電子線源と、この電子線源から発射された電子線を高周波電界により加速する加速管と、この加速管で加速された高エネルギの電子を衝突させてX線を放出するターゲットとを有するものであって、加速管は、ターゲットに向けて発射する電子線のスポット径を1mm以下とし、ターゲットはX線案内孔を有するコリメータを備え、このコリメータのX線案内孔の孔径が0.6mm以下としている。より具体的には、電子線源から加速管に向けて発射される電子線のスポット径を1mm以下とし、加速管でこの電子線を加速し、前記のターゲットに衝突させる。
このようなX線源では、後述する如く、高エネルギーで小径のビームのX線が発射出来ることが確認されている。具体的には、X線エネルギーが950keV程度、X線ビームスポット径が1mm以下とすることが可能となった。これは、950keV程度に加速された電子線をスポット径を1mm以下としてターゲットの1個所に集中して衝突させること、及びこの衝突によりターゲットから発生したX線をコリメータのX線案内孔でビーム径を制限した状態で発射することにより高エネルギーで且つスポット径が小さなX線が発射出来るようにしたものである。
ターゲットについては、孔径が0.6mm以下のX線案内孔を有するコリメータの端面にターゲット本体を設けたものである。より具体的には、タングステン等の高融点材料からなるターゲット本体は、銅板等の熱伝導良好な放熱板を介してコリメータの端面に貼り付けられている。このターゲット本体の中心部分に加速された電子線を衝突させ、ターゲット本体から発射したX線をコリメータのX線案内孔を通して目的の検査対象物等に向けて発射する。
また、加速管としては、電子線源で発生させた電子を加速管内の加速空洞に通し、その加速空洞内に形成した高周波電場により加速する形式のものを使用する。この場合、電子が導入される電子線源側の低エネルギー部のセルをπモードとし、電子線が発射されるターゲット側の高エネルギー部のセルをπ/2モードとすることにより、高エネルギー、小スポットのX線の生成に効果的な電子線の加速が可能であることが確認されている。
以上説明した本発明によるX線源では、高エネルギーで且つビームスポット径が小さいX線を発射することが出来るので、検査対象物に対する透過性能が高く、なお且つ分解能の高い検査用のX線を得ることが出来る。しかも、電子線源からターゲットに至るまでの装置の長さを200〜300mm程度に収めることも可能であり、あらゆる場所、状況にて非破壊検査を可能とする可搬型のX線源として実用化を図ることが可能となる。
本発明では、前述したように、X線源における電子線源、加速管、その高周波加速電源、ターゲットの形式、形状等を全面的に見直し、それらの全体的な構成の改善により、小形でありながら高いエネルギーで小スポットのX線を発射出来るX線源を実現した。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、具体的且つ詳細に説明する。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、具体的且つ詳細に説明する。
図1に本発明の一実施形態であるX線源の基本構成を示す。このX線源は、基本的には電子線を発射する電子線源と、この電子線源から発射された電子線を高周波電場において加速する加速管と、この加速管で加速された高エネルギの電子を衝突させてX線を放出するターゲットとを有している。その他、電源、真空系、それらの制御系を備える。電源は、電子銃での熱電子発生用のフィラメント電源、電子銃での熱電子初期加速用のアノード電圧印加電源、加速管内の電子加速用高周波電場を形成するための高周波電源等である。
電子線源、すなわち電子銃はカソードから放出された熱電子をアノードで加速すると共に収束し、ビーム状の電子線(電子ビーム)として加速管へ送る。例えば熱陰極ダイオード型の電子銃を用い、初期加速エネルギーとして20keV前後に加速された電流密度4A/cm2、最小ビーム径0.8mmφ程度の電子線を発生させる。
加速管は、直管状の管の長手方向に交互に対として複数組のディスク状電極を配置し、前記電子銃によりその一端から入射された電子線を前記ディスク状電極の中心に設けた穴に通し、RF窓から導入した高周波で前記電子線を真っ直ぐに加速する。いわゆる線形加速型(リニアック型)のものが使用される。この加速管内には前記RF窓から導入された高周波電界による進行波が形成され、この高周波電界の進行波により電子線が管の中心軸に沿って加速され、この加速された電子線が後述するターゲットに衝突する。
前記電子銃から後述するターゲットに至るまでの加速管の内部は、真空ポンプ等を含む真空系により排気、減圧され、真空雰囲気とされる。RF窓から加速管に導入される高周波としては、Xバンド(9.3GHz帯)を使用し、高圧パルサーにより発生した高圧パルスをマグネトロンに印加することにより高周波を発生する。自動周波数コントローラ(AFC)を取り付けることで、周波数のずれをフィードバックし、周波数の安定化を図る。この高周波は、高周波系を通して前記RF窓から加速管内に導入される。
前記自動周波数コントローラ(AFC)は、医療用X線源の加速器では一般的に使用されているものであるが、参考までにこの動作原理を概念的に図3に示す。マグネトロンで出力した高周波RFと加速管内に形成されているの高周波電場REFLとをAFCのローパスフィルター及び位相変換器(Phase Shifter)を介してハイブリッドのAとBにそれぞれ入力する。このときAとBの高周波に位相差があるとき、ハイブリッドのCとDに電位差が検出される。この電位差をチューナ(Tuner)にフィードバックし、この電位差が0になるようにチューナの共振周波数を変え、マグネトロンの周波数を調整する。
このような加速管において、本件発明者らは当初π/2モード(1/4波長モード)のセルのみで電子加速を行うことを検討した。しかし、加速用高周波を印加してもほとんど加速されないという結果となった。この原因としては、第一に電子銃から電子線を導入する側の低エネルギー側で加速できていない、第二に電子がすぐに発散する等が考えられる。第一の原因については、電子銃から導入される電子の初期エネルギーに対し、電子が加速位相に乗り切れていないと考えられた。第二の原因に関しては、低エネルギー部では電場が強い部分が軸上ではなく発散方向(軸と垂直な方向)であるため、電子が高周波の影響を強く受けるためと考えられた。
そこで電子銃から電子線を導入する低エネルギー部の加速効率を上げるために、低エネルギー部にpモード(1/2波長モード)のセルを加えることとした。pモードのセルはシャントインピーダンスが大きくなり、加速効率を上げられるが、群速度が0のため安定性が悪くなる。そこで加速管の電子銃側の最初の2.5セルをπモードとし、それに続いてπモードからπ/2モードへ変換するセルを一つ挿入し、それ以降のターゲット側の後半部である高エネルギー部をπ/2モードとした。この結果、小形の加速官により所望の加速性能が得られ、エネルギーが950keV、ビーム径が1mm以下の電子線が得られた。
この加速管で加速された電子線は、この加速管の出口からターゲットに衝突させる。このターゲットの形状の模式図を図2に示す。このターゲットは、円板状のタングステンからなるターゲット本体を円板状の銅板を介してコリメータの端面に貼り付けた構造となっている。コリメータは、その中心軸上にX線案内孔を有するタングステン製の中空円柱状のものであり、そのX線案内孔の径は0.5mm前後とする。また、タングステン板からなるターゲット本体の厚さは0.1mm前後、銅板はターゲット本体の数倍程度の厚さとする。タングステン板からなるターゲット本体は、電子線の衝突によりX線を発生する素子であり、銅板はターゲット本体とコリメータの端面とを接着すると共に、電子線の熱によりターゲット本体に生じる熱を放熱する放熱板としての機能を持つ素子である。
前記加速管で加速され、発射された電子線はターゲット本体の中心に衝突させる。この衝突により、ターゲット本体から電子線のエネルギーに応じた出力を有するX線が発射される。このX線は銅板を通してコリメータの中心軸上に設けた前記案内孔を通り、そのビームの広がりが制限されながらコリメータの案内孔の開放端から例えばX線非破壊検査をする検査対象物に向けて発射される。本発明においては、ターゲット本体に衝突させた前記電子線のエネルギーに対応した950keVの出力を有し、ビーム径が1mm以下のX線を発射することが確認されている。
以下、本発明の実施例について具体的数値を挙げて説明する。但し、本願発明はの実施例に限定されるものではない。例えば、電子線及びX線のエネルギーについては、現行法において放射線管理区域外での使用が認められている1MeV以下のエネルギーを想定しているが、法規制の緩和により今後より出力の大きな電子線及びX線の使用が放射線管理区域外で認められる場合においては、それに応じて高周波加速電源の出力を大きくすることにより、より高い出力のX線を発射するようにし得ることはもちろん可能である。
既に述べたように、図1により模式的に示したようなX線源を使用し、その電子銃のカソードで発生した熱電子をアノードで加速すると共に収束し、電子線を加速管へ送る。電子銃としてはカソード半径1.8mmの熱陰極ダイオード型を用い、電圧20kV、電流400mAで動作させる。このとき、図3に示すように、カソードからの距離16.4mm付近での電子線の最小ビーム径は0.816mmφであり、電流密度は4A/cm2である。この電子線の加速管入口での初期エネルギーは20keV(β=v/c=0.27)である。
前記電子銃から後述するターゲットに至るまでの加速管の内部は、真空ポンプ等を含む真空系により排気、減圧され、真空雰囲気とする。また高圧パルサーにより発生した高圧パルスをマグネトロンに印加することにより発生した加速用高周波をRF窓から加速管内に導入する。これにより、電子銃から加速管に導入した電子線を加速する。使用したマグネトロンの動作性能は、200kW(最大250kW)で、周波数帯が9.3GHz〜9.5GHz、パルス幅3μmsである。自動周波数コントローラ(AFC)を取り付けることで、周波数のずれをフィードバックさせ、その安定化を図ることは前述した通りである。この加速管により加速された電子線はビーム径0.6mmφ以下、エネルギー950keV、120mAでパルス幅1.6μmsとなる。
この加速管で加速された電子線は、この加速管の出口から前述したターゲットに衝突させる。このターゲットにおいて、円板状のタングステンからなるターゲット本体の厚さは0.1mmであり、銅板の厚さは0.25mmである。また、コリメータの長さ(中心軸方向の寸法)は10mm、のX線案内孔の径は0.6mmである。ターゲット本体、銅板及びコリメータの外径は6mmφである。
コリメータのX線案内孔の開放端から発射されたX線のエネルギーは950keVである。さらに、このコリメータを通過して飛来したX線の空間分布ヒストリグラムを図4と図5に示す。これらのヒストリグラムは、コリメータのX線案内孔の開放端から1m離れた個所でのX線のフォトン数をカウントした分布を示しており、コリメータの中心軸の延長線に対して直交する平面上におけるX−Y座標のx方向の分布を図4に、y方向の分布を図5にそれぞれ示している。これにより、X線のビーム径は1mm以下であることが確認される。
本発明によるX線源は、小形でありながら、高エネルギーでより小径なスポットのX線を発射することが可能であるため、各種の非破壊検査等において可搬型で、且つ高透過性と高分解能を発揮するものとして使用することが出来る。これにより、検査対象物の分解や放射線管理区域への持ち込み等を伴うことなく簡便に非破壊検査を行うことが出来る。
Claims (5)
- 電子線を発射する電子線源と、この電子線源から発射された電子線を高周波電界により加速する加速管と、この加速管で加速された電子を衝突させてX線を放出するターゲットとを有するX線源において、加速管は、ターゲットに向けて発射する電子線のスポット径を1mm以下とし、ターゲットはX線案内孔を有するコリメータを備え、このコリメータのX線案内孔の孔径が0.6mm以下であることを特徴とするX線源。
- 電子線源から加速管に向けて発射される電子線のスポット径が1mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のX線源。
- ターゲットは、孔径が0.6mm以下のX線案内孔を有するコリメータの端面にターゲット本体を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のX線源。
- ターゲット本体は、放熱板を介してコリメータの端面に貼り付けられていることを特徴とする請求項3に記載のX線源。
- 加速管は電子線源側の低エネルギー部のセルをπモードとし、 ターゲット側の高エネルギー部のセルをπ/2モードとしたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のX線源。
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