JP2008195747A - 親水化された芳香族エーテル系高分子からなる樹脂成形品。 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性に優れた芳香族エーテル系高分子を用い、親水化された樹脂成形品を提供する。
【解決手段】芳香族エーテル系高分子と混和性の高いポリスチレンを疎水セグメントに、高い親水性を発現する親水性高分子を親水セグメントに有するブロック共重合体によって親水化されたことを特徴とする芳香族エーテル系高分子からなる樹脂成形品を得た。
【選択図】なし
【解決手段】芳香族エーテル系高分子と混和性の高いポリスチレンを疎水セグメントに、高い親水性を発現する親水性高分子を親水セグメントに有するブロック共重合体によって親水化されたことを特徴とする芳香族エーテル系高分子からなる樹脂成形品を得た。
【選択図】なし
Description
本発明は、ポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体によって親水化されたことを特徴とする芳香族エーテル系高分子からなる樹脂成形品に関するものである。
従来、芳香族エーテル系高分子は耐熱性および機械的性質・電気的性質が優れており、しかも寸法安定性に優れることから、様々な樹脂成形品として用いられてきた。その中でも、140℃以上の高温に耐える耐熱性を必要とする自動車のエンジン・外板用材料や小型化に伴い耐熱性の要求が高い家電・エレクトロニクス分野においても多く用いられている。(非特許文献1参照)
しかしながら芳香族エーテル系高分子は臨界表面張力が極めて小さく、他の樹脂と比較しても極めて疎水性が強い。そのため「樹脂表面が疎水性相互作用により汚染されやすい」「ホコリがつきやすい」「高温多湿な環境では材料表面に微小な水滴が生じる」など数多くの欠点があった。また医療・医薬分野におけるタンパク質等の生理活性物質と接触する場合、樹脂表面上へのタンパク等の吸着や変性が起こるなどの深刻な問題があった。
しかしながら芳香族エーテル系高分子は臨界表面張力が極めて小さく、他の樹脂と比較しても極めて疎水性が強い。そのため「樹脂表面が疎水性相互作用により汚染されやすい」「ホコリがつきやすい」「高温多湿な環境では材料表面に微小な水滴が生じる」など数多くの欠点があった。また医療・医薬分野におけるタンパク質等の生理活性物質と接触する場合、樹脂表面上へのタンパク等の吸着や変性が起こるなどの深刻な問題があった。
一般汎用樹脂からなる成形品は、上記の問題を解決するため、表面に親水性を付与(親水化)することにより検討がなされてきた。これは、表面の濡れ性向上により臨界表面張力を高め、不汚効果や防曇効果を向上することができるためである。また、親水性が高めることによりタンパク等の吸着性や変性も低下できることが一般的に知られている。
親水化する方法としては、化学的に変性を加える方法、親水性高分子などをコーティングする方法、親水性高分子などの親水化剤や親水性無機粒子などを添加する方法が挙げられる。化学的に変性を加える方法は、基材自体の物性に影響を及ぼすため、本来の物性が低下するという懸念がある。コーティング法や添加法については、剥離の問題があり長期安定性の高い樹脂成形品を製造するためには、添加する物質の選択が極めて重要である。芳香族エーテル系高分子においては、その混錬性、混和性の観点から親水性を付与するための最適な親水化剤や添加剤は無かった。
特性別にわかる実用高分子材料、工業調査会、著者:井出 文雄(2002年)pp.57−58
親水化する方法としては、化学的に変性を加える方法、親水性高分子などをコーティングする方法、親水性高分子などの親水化剤や親水性無機粒子などを添加する方法が挙げられる。化学的に変性を加える方法は、基材自体の物性に影響を及ぼすため、本来の物性が低下するという懸念がある。コーティング法や添加法については、剥離の問題があり長期安定性の高い樹脂成形品を製造するためには、添加する物質の選択が極めて重要である。芳香族エーテル系高分子においては、その混錬性、混和性の観点から親水性を付与するための最適な親水化剤や添加剤は無かった。
特性別にわかる実用高分子材料、工業調査会、著者:井出 文雄(2002年)pp.57−58
本発明の課題は、耐熱性に優れた芳香族エーテル系高分子を用い、親水化された樹脂成形品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し、芳香族エーテル系高分子と混和性の高いポリスチレンを疎水セグメントに、高い親水性を発現する親水性高分子を親水セグメントに有するブロック共重合体を用いることにより、耐熱性に優れた親水性樹脂成形品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の通りである。
[1]ポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体によって親水化されたことを特徴とする下記式(1)で表される芳香族エーテル系高分子からなる樹脂成形品。
即ち、本発明は、以下の通りである。
[1]ポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体によって親水化されたことを特徴とする下記式(1)で表される芳香族エーテル系高分子からなる樹脂成形品。
(R1、R2、R3、R4、R5、R6は水素、炭素数1以上6以下を含む有機官能基、または、酸素、窒素または珪素を含有する炭素数6以下の非プロトン性有機官能基であり、それぞれ同一であっても、異なっても構わない。mは繰り返し単位数である。異なる繰り返し単位を2成分以上含む共重合体でも構わない。)
[2]親水性高分子がポリエチレングリコール系高分子であることを特徴とする上記1の樹脂成形品。
[3]親水性高分子がビニル系高分子であることを特徴とする上記1の樹脂成形品。
[4]親水性高分子が(メタ)アクリレート系高分子であることを特徴とする上記1または3の樹脂成形品。
[5]親水性高分子が(メタ)アクリルアミド系高分子であることを特徴とする上記1または3の樹脂成形品。
[6]形態がフィルムであることを特徴とする上記1−5のいずれかに記載の樹脂成形品。
[7]溶液キャスティング法を用いることを特徴とする、上記6の樹脂成形品の製造方法。
[8]医療・医薬品の製造、分析用の構造材料の用途に用いられることを特徴とする上記1−6のいずれかに記載の樹脂成形品。
[2]親水性高分子がポリエチレングリコール系高分子であることを特徴とする上記1の樹脂成形品。
[3]親水性高分子がビニル系高分子であることを特徴とする上記1の樹脂成形品。
[4]親水性高分子が(メタ)アクリレート系高分子であることを特徴とする上記1または3の樹脂成形品。
[5]親水性高分子が(メタ)アクリルアミド系高分子であることを特徴とする上記1または3の樹脂成形品。
[6]形態がフィルムであることを特徴とする上記1−5のいずれかに記載の樹脂成形品。
[7]溶液キャスティング法を用いることを特徴とする、上記6の樹脂成形品の製造方法。
[8]医療・医薬品の製造、分析用の構造材料の用途に用いられることを特徴とする上記1−6のいずれかに記載の樹脂成形品。
本発明によれば、芳香族エーテル系高分子と混和性の高いポリスチレンを疎水セグメントに、高い親水性を発現する親水性高分子を親水セグメントに有するブロック共重合体を用いることにより、耐熱性に優れた親水性樹脂成形品を提供することが可能となる。
本発明に関して具体的に説明する。
本発明における芳香族エーテル系高分子とは下記式(1)で表される。
本発明における芳香族エーテル系高分子とは下記式(1)で表される。
式(1)で表されるR1、R2、R3、R4、R5、R6は水素、炭素数1以上6以下を含む有機官能基、または、酸素、窒素または珪素を含有する炭素数6以下の非プロトン性有機官能基であり、それぞれ同一であっても、異なっても構わない。構造式中のmは繰り返し単位数である。式(1)に示す構造範囲内で異なる繰り返し単位を2成分以上含む共重合体でも構わない。本発明における芳香族エーテル系高分子の末端のフェノール性水酸基は必要に応じてエステル化、エーテル化、エポキシ化など各種変性を実施することができる。
本発明における芳香族エーテル系高分子の数平均分子量は、例えば、5,000以上、400,000以下である。この領域であれば成形性が高く、成形品として十分な物理強度が得られる。数平均分子量のより好ましい下限は8,000以上、特に好ましい下限は10,000以上、上限としてより好ましくは200,000以下、より好ましい上限は100,000以下である。
本発明における親水化とは、親水性を向上させること、もしくは付与することである。
本発明における親水化剤とは、基材である疎水性高分子に親水性を付与するものであり、臨界表面張力を高め、不汚効果や防曇効果を向上するためのものである。電気的な相互作用を低減させるために、荷電構造を含まないノニオン性であることが望ましい。
本発明におけるポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体は、ポリスチレン系高分子由来のセグメントと親水性高分子由来のセグメントからなるブロック共重合体である。
本発明における親水化とは、親水性を向上させること、もしくは付与することである。
本発明における親水化剤とは、基材である疎水性高分子に親水性を付与するものであり、臨界表面張力を高め、不汚効果や防曇効果を向上するためのものである。電気的な相互作用を低減させるために、荷電構造を含まないノニオン性であることが望ましい。
本発明におけるポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体は、ポリスチレン系高分子由来のセグメントと親水性高分子由来のセグメントからなるブロック共重合体である。
本発明におけるポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体は、親水性高分子をセグメントに有することから親水化剤として使用できる。
本発明において用いられるポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体の該ポリスチレン系高分子由来のセグメントを形成するポリスチレン系高分子としては、下記式(2)に示す繰り返し単位からなるポリスチレン系高分子が好ましい。下記式(2)で表されるR7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14は水素、フッ素を除くハロゲン原子、炭素数1以上6以下を含む有機官能基、または、酸素、窒素または珪素を含有する炭素数6以下の官能基であり、それぞれ同一であっても、異なっても構わない。構造式中のlは繰り返し単位数である。下記式(2)に示す構造範囲内で異なる繰り返し単位を2成分以上含む共重合体でも構わない。
本発明において用いられるポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体の該ポリスチレン系高分子由来のセグメントを形成するポリスチレン系高分子としては、下記式(2)に示す繰り返し単位からなるポリスチレン系高分子が好ましい。下記式(2)で表されるR7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14は水素、フッ素を除くハロゲン原子、炭素数1以上6以下を含む有機官能基、または、酸素、窒素または珪素を含有する炭素数6以下の官能基であり、それぞれ同一であっても、異なっても構わない。構造式中のlは繰り返し単位数である。下記式(2)に示す構造範囲内で異なる繰り返し単位を2成分以上含む共重合体でも構わない。
本発明において用いられるポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体の該ポリスチレン系高分子由来のセグメントの数平均分子量は、300以上、1,000,000以下であることが必要である。この領域であれば、芳香族エーテル系高分子に対して、高い混和性を有し、成形を可能とする。より好ましい下限は、500以上、特に好ましい下限は、700以上であり、上限としてより好ましくは500,000以下、特に好ましい上限は、300,000以下である。
本発明において用いられるポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体の該親水性高分子由来のセグメントを形成する親水性高分子しては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体などのポリエチレングリコール系高分子、ポリヒドロキシ(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコールなどの(メタ)アクリレート系高分子、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ポリイソプロピル(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの(メタ)アクリルアミド系高分子、カルボキシメチルセルロース、澱粉、コーンスターチ、ポリキトサン、ポリキチンなどが例示される。
この中でも好ましい親水化剤としては、下記式(3)および/または(4)に示す繰り返し単位からなるポリエチレングリコール系高分子が挙げられる。下記式(4)で表されるR15は、炭素数3以上、30未満の有機官能基である。特に親水性が大きく低下させることがなければ、R15にエーテル基、エステル基、水酸基、ケトン基、カルボン酸基を含有しても構わない。nおよびoは、繰り返し単位数である。
この中でも好ましい親水化剤としては、下記式(3)および/または(4)に示す繰り返し単位からなるポリエチレングリコール系高分子が挙げられる。下記式(4)で表されるR15は、炭素数3以上、30未満の有機官能基である。特に親水性が大きく低下させることがなければ、R15にエーテル基、エステル基、水酸基、ケトン基、カルボン酸基を含有しても構わない。nおよびoは、繰り返し単位数である。
また、好ましい親水化剤として、下記式(5)および/または(6)に示す繰り返し単位からなるビニル系高分子も挙げられる。この場合、繰り返し単位を構成するモノマーが、20℃の100g純水に10g以上溶解可能であるもの、より好ましくは、水に混和可能なものである。下記式(5)および(6)で表されるR16、R17、R18、R20、R21、R22は水素、フッ素を除くハロゲン原子、炭素数1以上6以下を含む有機官能基、または、酸素、窒素または珪素を含有する炭素数6以下の官能基であり、それぞれ同一であっても、異なっても構わない。R19、R23、R24は、水素、または炭素数1以上30未満の有機官能基である。親水性が向上させるために、水酸基、エーテル基、エステル基、ケトン基、カルボン酸基を含有しても構わない。それぞれ同一であっても、異なっても構わない。pおよびqは、繰り返し単位数である。下記式(5)および/または(6)に示す構造範囲内で異なる繰り返し単位を2成分以上含む共重合体でも構わない。
本発明において用いられるポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体の該親水性高分子由来のセグメントの数平均分子量は、例えば300以上、100,000以下であることが必要である。この領域であれば、安定な成形性を保持したまま、十分な親水性が得られる。より好ましい下限は、400以上、特に好ましい下限は、500以上であり、上限としてより好ましくは70,000以下、特に好ましくは、50,000以下である。
本発明におけるポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体の該ポリスチレン系高分子由来のセグメントと該親水性高分子由来のセグメントの組成比としては、該ポリスチレン系高分子由来のセグメントが全ポリスチレン−親水性高分子ブロック共重合体の10重量%以上、99重量%以下であることが必要である。この組成比においては、十分な親水性を発現でき、かつ、溶出性が抑えられる。より好ましい下限値は、20重量%以上、特に好ましい下限値は、30重量%以上であり、より好ましい上限値は98重量%以下、特に好ましい上限値は、97重量%以下である。
本発明におけるポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体の該ポリスチレン系高分子由来のセグメントと該親水性高分子由来のセグメントの組成比としては、該ポリスチレン系高分子由来のセグメントが全ポリスチレン−親水性高分子ブロック共重合体の10重量%以上、99重量%以下であることが必要である。この組成比においては、十分な親水性を発現でき、かつ、溶出性が抑えられる。より好ましい下限値は、20重量%以上、特に好ましい下限値は、30重量%以上であり、より好ましい上限値は98重量%以下、特に好ましい上限値は、97重量%以下である。
本発明におけるポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体のブロック構造は、2つの該セグメントから構成されるジブロック共重合体、3つの該セグメントから構成されるトリブロック共重合体、4つ以上の該セグメントから構成されるマルチブロック共重合体であっても構わない。また、これら2種以上のブロック共重合体の混合物であっても構わない。構成される各該セグメントの数平均分子量は同一であっても異なっても構わない。
本発明におけるポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体の該ポリスチレン系高分子由来のセグメントと該親水性高分子由来のセグメント間は、高分子末端部分で直接化学的に結合される必要がある。製造するために、必要であれば、該ポリスチレン系高分子由来のセグメントと該親水性高分子由来のセグメントを接続するためのスペーサーとして低分子化合物および/または有機官能基を利用してもよい。低分子化合物および/または有機官能基の数平均分子量が500以下の場合、該ポリスチレン系高分子由来のセグメントと該親水性高分子由来のセグメントの効果を低下させること無く発現できる。
本発明におけるポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体の該ポリスチレン系高分子由来のセグメントと該親水性高分子由来のセグメント間は、高分子末端部分で直接化学的に結合される必要がある。製造するために、必要であれば、該ポリスチレン系高分子由来のセグメントと該親水性高分子由来のセグメントを接続するためのスペーサーとして低分子化合物および/または有機官能基を利用してもよい。低分子化合物および/または有機官能基の数平均分子量が500以下の場合、該ポリスチレン系高分子由来のセグメントと該親水性高分子由来のセグメントの効果を低下させること無く発現できる。
本発明におけるポリスチレンとポリエチレングリコール系高分子からなるブロック共重合体を製造する方法の一例としては、反応性官能基を有するラジカル重合開始剤を用いる方法がある。具体的には、カルボン酸基を有するアゾ系ラジカル重合開始剤を用い、カルボン酸基を酸塩化物基に化学的に変換した後、スチレンをラジカル重合することで末端に酸塩化物基を有するポリスチレンが得られる。次いで、ポリエチレングリコールと縮合することによってポリスチレン−ポリエチレングリコールブロック共重合体を得ることができる(高分子論文集、1976年、第33巻、P131)。ポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合開始剤を用いて、スチレンをラジカル重合することによってもポリスチレン−ポリエチレングリコールブロック共重合体を得ることができる。また、別の合成方法例として、リビング重合を利用する方法が挙げられる。具体的には、ニトロキシド系化合物によるリビングラジカル重合を用いてスチレンの重合を行い、高分子末端にニトロキシド化合物が結合した高分子を得られる。加水分解により高分子末端をヒドロキシル基に変換し、ポリエチレングリコールとのカップリング反応によりポリスチレン−ポリエチレングリコールブロック共重合体を得ることができる(Polymer、1998年、第39巻、第4号、P911)。
本発明におけるポリスチレンとビニル系高分子からなるブロック共重合体を製造する方法の一例としては、リビング重合法を用いて製造することが可能である。例えば、リビングアニオン重合法を用いてスチレンの重合を行った後、トリメチルシリル基を保護基として有する2−トリメチルシリルオキシエチルメタクリレートを追加添加して、ポリスチレンとポリ−2−トリメチルシリルオキシエチルメタクリレートからなるブロック共重合体を合成し、シリル基を脱保護することによって、ポリスチレンとポリ−2−ヒドロキシエチルメタアクリレートからなるブロック共重合体を製造することができる。(Macromolecules vol.19 No.5,pp.1294−1299,1986年)また、原子移動ラジカル重合(Atom transfer radical polymerization)によってもポリスチレンとポリジメチルアクリルアミドからなるブロック共重合体を製造することができる。(Polymer Journal Vol.37 No.2,pp.59−64,2005年)
本発明における樹脂の成形方法としては、一般的に芳香族エーテル系高分子からなる樹脂組成物と同等の成形方法を用いて成形品を製造することができる。具体的には、射出成形法、キャスト成形法、押出成形法、カレンダー成形法などが挙げられる。特に成形品の形態がフィルムの場合、溶液キャスティング法を用いることによって、強度の高いフィルムを製造することが可能である。
本発明における溶液キャスティング法とは、樹脂を溶媒に溶解させて得られた高分子溶液を基板上で流延・展開し、溶媒を蒸発乾燥させてフィルムを作成する方法である。
本発明のフィルムを製造するための溶液キャスティング法に用いられる溶媒としては、芳香族エーテル系高分子を安定に5重量%以上溶解するものであれば如何なる溶媒をも使用することができる。ただし、環境面およびコストの点から非ハロゲン系水溶性有機溶媒を用いることが好ましい。本発明における水溶性有機溶媒とは、20℃の100g純水に10g以上溶解可能である溶媒を示し、さらに好ましくは、水に混和可能なものである。具体的にはN−メチル−2−ピロリドンが挙げられる。また、他の溶媒と組み合わせて使用することも可能である。
本発明における溶液キャスティング法とは、樹脂を溶媒に溶解させて得られた高分子溶液を基板上で流延・展開し、溶媒を蒸発乾燥させてフィルムを作成する方法である。
本発明のフィルムを製造するための溶液キャスティング法に用いられる溶媒としては、芳香族エーテル系高分子を安定に5重量%以上溶解するものであれば如何なる溶媒をも使用することができる。ただし、環境面およびコストの点から非ハロゲン系水溶性有機溶媒を用いることが好ましい。本発明における水溶性有機溶媒とは、20℃の100g純水に10g以上溶解可能である溶媒を示し、さらに好ましくは、水に混和可能なものである。具体的にはN−メチル−2−ピロリドンが挙げられる。また、他の溶媒と組み合わせて使用することも可能である。
溶液キャスティング法において、溶液全体を100重量%とした場合、親水性を付与するために添加する親水化剤は、下限として0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、特に好ましくは1重量%以上、上限として45重量%以下、好ましくは35重量%以下、特に好ましくは25重量%以下で、均一に溶解した溶液が好適に使用される。
芳香族エーテル系高分子の使用範囲としては下限として1重量%以上、好ましくは3重量%以上、特に好ましくは5重量%以上である。また上限としては45重量%以下、好ましくは35重量%以下、特に好ましくは25重量%以下で均一に溶解した溶液が好適に使用される。
芳香族エーテル系高分子の使用範囲としては下限として1重量%以上、好ましくは3重量%以上、特に好ましくは5重量%以上である。また上限としては45重量%以下、好ましくは35重量%以下、特に好ましくは25重量%以下で均一に溶解した溶液が好適に使用される。
また、溶液の温度は、下限として25℃以上、好ましくは65℃以上、特に好ましくは80℃以上、上限として溶媒の沸点以下が好適に使用される。この温度条件下にすることにより、芳香族エーテル系高分子の溶解性を高めることができ、加工を行うのに好適な粘度を得ることができる。
本発明の溶液キャスティングにおける成形温度とは、形成をサポートする金属プレートやガラスなどの支持体の温度により決まる。成形温度の下限としては20℃以上、好ましくは25℃以上、特に好ましくは30℃以上である。上限としては溶媒の沸点以下、好ましくは各沸点から5℃以上低い温度、特に好ましくは沸点から10℃以上低い温度である。特に成形温度80℃以上、各沸点から10℃以上低い温度の範囲内で成形した場合において、特に高強度のフィルムを得ることできる。
本発明の溶液キャスティングにおける成形温度とは、形成をサポートする金属プレートやガラスなどの支持体の温度により決まる。成形温度の下限としては20℃以上、好ましくは25℃以上、特に好ましくは30℃以上である。上限としては溶媒の沸点以下、好ましくは各沸点から5℃以上低い温度、特に好ましくは沸点から10℃以上低い温度である。特に成形温度80℃以上、各沸点から10℃以上低い温度の範囲内で成形した場合において、特に高強度のフィルムを得ることできる。
本発明における親水性が付与された芳香族エーテル系高分子からなる樹脂成形品は、分野を問わず、あらゆる用途に供することができる。例えば、医療、医薬品の製造・分析に用いられる構造材料およびフィルム、家電製品や電子製品などの構造材料、部品およびフィルム、自動車、航空機、船舶などの構造材料、建築・土木で用いられる建築材料、農業・水産分野における機器材料およびフィルム、その他、事務用品、台所用品などに供することができる。その中でも特に高い耐オートクレーブ滅菌性と低い生体物質吸着性が要求される医療、医薬品の製造・分析に用いられる構造材料およびフィルムとしても用いることが有用である。具体的には、血液やタンパク溶液などの生体物質に接触する容器やハウジング、分析用マイクロプレート、ピペットチップ、シャーレ、遠沈管、硬質チューブなどが挙げられる。また耐熱性と不汚性が必要とされるディスプレイ用フィルムや電子部品材料にも好適に使用できる。
本発明における医療、医薬品の製造・分析用の構造材料に用いられる樹脂成形品は、必要に応じて全ての滅菌方法を用い、滅菌をおこなうことが可能である。
本発明における医療、医薬品の製造・分析用の構造材料に用いられる樹脂成形品は、必要に応じて全ての滅菌方法を用い、滅菌をおこなうことが可能である。
以下に、実施例、比較例等によって本発明を更に具体的に説明する。
[製造例1]フィルムの製造方法(溶液キャスティング法)
8.0gのN−メチル−2−ピロリドン(和光純薬工業株式会社、1級、純度97%、以下、「NMP」と略す)に1.6gのポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−オキシド)(シグマアルドリッチジャパン株式会社、以下「PPE」と略す)および0.4gの親水化剤を加え、160℃で1時間加熱溶解させ、その後110℃の高分子溶液を得た。この高分子溶液を110℃に加熱されたガラス板上に静かに垂らし、アプリケーターを用いてむらなく広げ、そのまま110℃で0.083時間乾燥することによりフィルムを製造した。
[製造例1]フィルムの製造方法(溶液キャスティング法)
8.0gのN−メチル−2−ピロリドン(和光純薬工業株式会社、1級、純度97%、以下、「NMP」と略す)に1.6gのポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−オキシド)(シグマアルドリッチジャパン株式会社、以下「PPE」と略す)および0.4gの親水化剤を加え、160℃で1時間加熱溶解させ、その後110℃の高分子溶液を得た。この高分子溶液を110℃に加熱されたガラス板上に静かに垂らし、アプリケーターを用いてむらなく広げ、そのまま110℃で0.083時間乾燥することによりフィルムを製造した。
[製造例2]ポリスチレンとポリエチレングリコール系高分子からなるブロック共重合体
2400gのキシレン(和光純薬株工業式会社)が入った5000×10−6m3の反応容器に、480gのスチレン(和光純薬株工業式会社)および120gのポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合開始剤VPE−0201(和光純薬工業株式会社、ポリエチレングリコールセグメント部分の数平均分子量は約2000)を加え、乾燥窒素によるバブリングを30分間以上行い、反応系中を乾燥窒素雰囲気下にした。130℃で7時間加熱し、重合反応を行った。次いで、反応溶液を室温まで冷却した後、過剰のヘキサン(和光純薬工業株式会社、特級)中に反応溶液を徐々に注ぎ、高分子を析出させた。得られた高分子はヘキサンを用いて3回洗浄し、50℃、0.133KPa条件で減圧乾燥処理を24時間実施し、残存する溶媒、モノマー等を完全に除去した。白色粉末、409g、68重量%回収率。
また、異なる組成比を有するポリスチレンとポリエチレングリコール系高分子からなるブロック共重合体を製造する場合には、スチレンとポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合開始剤の添加量を変えることにより調整できる。
2400gのキシレン(和光純薬株工業式会社)が入った5000×10−6m3の反応容器に、480gのスチレン(和光純薬株工業式会社)および120gのポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合開始剤VPE−0201(和光純薬工業株式会社、ポリエチレングリコールセグメント部分の数平均分子量は約2000)を加え、乾燥窒素によるバブリングを30分間以上行い、反応系中を乾燥窒素雰囲気下にした。130℃で7時間加熱し、重合反応を行った。次いで、反応溶液を室温まで冷却した後、過剰のヘキサン(和光純薬工業株式会社、特級)中に反応溶液を徐々に注ぎ、高分子を析出させた。得られた高分子はヘキサンを用いて3回洗浄し、50℃、0.133KPa条件で減圧乾燥処理を24時間実施し、残存する溶媒、モノマー等を完全に除去した。白色粉末、409g、68重量%回収率。
また、異なる組成比を有するポリスチレンとポリエチレングリコール系高分子からなるブロック共重合体を製造する場合には、スチレンとポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合開始剤の添加量を変えることにより調整できる。
[製造例3]ポリスチレンと(メタ)アクリレート系高分子からなるブロック共重合体
文献(Macromolecules vol.19 No.5,pp.1294−1299,1986年)を参考にして、ポリスチレンとポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレートからなるブロック共重合体の製造を行った。モノマーは、水素化カルシウムを添加し2時間程度還流後、減圧蒸留によって精製したものを、また溶媒は脱水グレードの高純度品を用いた。また、異なる組成比を有するポリスチレンとポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレートからなるブロック共重合体を製造する場合には、各モノマーの添加量を変えることにより調整できる。分子量は重合開始剤およびモノマー添加量を変えることによって調整できる。
文献(Macromolecules vol.19 No.5,pp.1294−1299,1986年)を参考にして、ポリスチレンとポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレートからなるブロック共重合体の製造を行った。モノマーは、水素化カルシウムを添加し2時間程度還流後、減圧蒸留によって精製したものを、また溶媒は脱水グレードの高純度品を用いた。また、異なる組成比を有するポリスチレンとポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレートからなるブロック共重合体を製造する場合には、各モノマーの添加量を変えることにより調整できる。分子量は重合開始剤およびモノマー添加量を変えることによって調整できる。
[製造例4]ポリスチレンと(メタ)アクリルアミド系高分子からなるブロック共重合体
文献(Polymer Journal Vol.37 No.2,pp.59−64,2005年)を参考にして、ポリスチレンとポリジメチルアクリルアミドからなるブロック共重合体の製造を行った。モノマーは、水素化カルシウムを添加し2時間程度還流後、減圧蒸留によって精製したものを、また溶媒は脱水グレードの高純度品を用いた。また、異なる組成比を有するポリスチレンとポリジメチルアクリルアミドからなるブロック共重合体を製造する場合には、各モノマーの添加量を変えることにより調整できる。分子量は重合開始剤およびモノマー添加量を変えることによって調整できる。
文献(Polymer Journal Vol.37 No.2,pp.59−64,2005年)を参考にして、ポリスチレンとポリジメチルアクリルアミドからなるブロック共重合体の製造を行った。モノマーは、水素化カルシウムを添加し2時間程度還流後、減圧蒸留によって精製したものを、また溶媒は脱水グレードの高純度品を用いた。また、異なる組成比を有するポリスチレンとポリジメチルアクリルアミドからなるブロック共重合体を製造する場合には、各モノマーの添加量を変えることにより調整できる。分子量は重合開始剤およびモノマー添加量を変えることによって調整できる。
[測定方法]
<フィルム厚測定方法>
フィルムの厚みdは、マイクロメータ(株式会社ミツトヨ製タイプIDF−130)を用いて測定を行った。
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定>
合成したポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体の数平均分子量および分子量分布は、GPCカラム(東ソー株式会社製TSKgelGMHHR−M、2本)を付したGPC装置(東ソー株式会社製HLC−8020)を用いて測定を行った。測定はクロロホルム移動相、カラム温度40℃の条件で行った。数平均分子量は標準ポリスチレンサンプル(Polymer Laboratories)の溶出時間を用いて作成した検量線から、ポリスチレン換算分子量として算出した。
<フィルム厚測定方法>
フィルムの厚みdは、マイクロメータ(株式会社ミツトヨ製タイプIDF−130)を用いて測定を行った。
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定>
合成したポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体の数平均分子量および分子量分布は、GPCカラム(東ソー株式会社製TSKgelGMHHR−M、2本)を付したGPC装置(東ソー株式会社製HLC−8020)を用いて測定を行った。測定はクロロホルム移動相、カラム温度40℃の条件で行った。数平均分子量は標準ポリスチレンサンプル(Polymer Laboratories)の溶出時間を用いて作成した検量線から、ポリスチレン換算分子量として算出した。
<核磁気共鳴(NMR)測定>
ポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体の組成比は、NMR測定により算出した。サンプルを重クロロホルム(MERCK社製、テトラメチルシラン0.03%含有)に溶解させ、NMR装置(日本電子社製JMM−LA400)を用いて、観測核1H、観測周波数400MHz、室温にて測定を行った。化学シフトは、テトラメチルシランに由来するシグナルを0ppmとした。
<接触角測定>
自動接触角計(協和界面科学株式会社製CA−V型)を用いて水の接触角を測定した。測定は、雰囲気温度25℃で、純水1x10−7m3を滴下し、0.05時間後の接触角を測定した。接触角の算出は、θ/2法を用いて行った。
また、フィルムからの親水化剤の剥離・溶出性を確認するため、エタノールに25℃、24時間浸漬後、風乾し、70℃の熱風乾燥機でさらに5時間乾燥したものを再度、接触角を同等の方法にて測定した。
ポリスチレンと親水性高分子からなるブロック共重合体の組成比は、NMR測定により算出した。サンプルを重クロロホルム(MERCK社製、テトラメチルシラン0.03%含有)に溶解させ、NMR装置(日本電子社製JMM−LA400)を用いて、観測核1H、観測周波数400MHz、室温にて測定を行った。化学シフトは、テトラメチルシランに由来するシグナルを0ppmとした。
<接触角測定>
自動接触角計(協和界面科学株式会社製CA−V型)を用いて水の接触角を測定した。測定は、雰囲気温度25℃で、純水1x10−7m3を滴下し、0.05時間後の接触角を測定した。接触角の算出は、θ/2法を用いて行った。
また、フィルムからの親水化剤の剥離・溶出性を確認するため、エタノールに25℃、24時間浸漬後、風乾し、70℃の熱風乾燥機でさらに5時間乾燥したものを再度、接触角を同等の方法にて測定した。
<タンパク吸着測定>
牛血清ガンマグロブリンG5%溶液(Invitrogen社製)を、プラノバ75N(旭化成メディカル社製)で不溶物を除去した後、生理食塩水(大塚製薬株式会社製)で40μg/gに希釈したものを、タンパク吸着特性評価用IgG溶液として用いた。
フィルムは、あらかじめエタノールで24時間浸漬洗浄後、純水で24時間浸漬洗浄し、フィルム面積が1.40×10−3m2になるようにサンプリングを行った。フィルムをタンパク低吸着マイクロチューブ(1.5x10−6m3用、株式会社ハイテック製)に投入し、上記評価用IgG溶液を1.4x10−6m3投入し、20時間25℃で静置し、吸着反応を行った。
上記吸着反応後の上澄み液を1.0x10−6m3採取し、MicroBCA Protein Assay Kit(PIERCE社製)を用いて上澄み液のガンマグロブリンG(以下IgGと略す)濃度C(μg/g)を測定した。フィルム面積、およびIgG溶液中のIgG濃度の変化より、下記式(7)を用いてフィルムに吸着した単位面積あたりのIgG吸着量を算出した。
IgG吸着量(μg/cm2)
={吸着前のIgG溶液濃度(μg/g)−吸着後のIgG溶液濃度(μg/g)}
×投入溶液量(g)/フィルム面積(cm2)
=(40−C)×1.4/14 (7)
<耐熱性評価>
0.1×0.1mの大きさに切り取ったフィルムを送風低温乾燥機(東京理化器械株式会社、WFO−1200)を用いて、120℃、24時間加熱し、加熱前後の寸法変化を測定した。
牛血清ガンマグロブリンG5%溶液(Invitrogen社製)を、プラノバ75N(旭化成メディカル社製)で不溶物を除去した後、生理食塩水(大塚製薬株式会社製)で40μg/gに希釈したものを、タンパク吸着特性評価用IgG溶液として用いた。
フィルムは、あらかじめエタノールで24時間浸漬洗浄後、純水で24時間浸漬洗浄し、フィルム面積が1.40×10−3m2になるようにサンプリングを行った。フィルムをタンパク低吸着マイクロチューブ(1.5x10−6m3用、株式会社ハイテック製)に投入し、上記評価用IgG溶液を1.4x10−6m3投入し、20時間25℃で静置し、吸着反応を行った。
上記吸着反応後の上澄み液を1.0x10−6m3採取し、MicroBCA Protein Assay Kit(PIERCE社製)を用いて上澄み液のガンマグロブリンG(以下IgGと略す)濃度C(μg/g)を測定した。フィルム面積、およびIgG溶液中のIgG濃度の変化より、下記式(7)を用いてフィルムに吸着した単位面積あたりのIgG吸着量を算出した。
IgG吸着量(μg/cm2)
={吸着前のIgG溶液濃度(μg/g)−吸着後のIgG溶液濃度(μg/g)}
×投入溶液量(g)/フィルム面積(cm2)
=(40−C)×1.4/14 (7)
<耐熱性評価>
0.1×0.1mの大きさに切り取ったフィルムを送風低温乾燥機(東京理化器械株式会社、WFO−1200)を用いて、120℃、24時間加熱し、加熱前後の寸法変化を測定した。
[実施例1]
製造例2に従い、ポリスチレン−ポリエチレングリコールブロック共重合体を製造した。ポリスチレンとポリエチレングリコールの組成比62/38(重量%)、数平均分子量20,100、分子量分布1.7であった。フィルムの製造法に従い、PPEとポリスチレン−ポリエチレングリコールブロック共重合体からなる透明性の高いフィルムを作成した。
フィルムの厚みは41μm、水との接触角は76°とPPEのみと比べて親水性が向上していた。エタノールに浸漬・乾燥させたフィルムにおいても77°と親水性を保持しており、剥離・溶出がなかった。また、タンパク吸着量は1.5μg/cm2とPPEのみのそれと比較して低減されていた。耐熱性評価実施前後の寸法変化はなかった。
製造例2に従い、ポリスチレン−ポリエチレングリコールブロック共重合体を製造した。ポリスチレンとポリエチレングリコールの組成比62/38(重量%)、数平均分子量20,100、分子量分布1.7であった。フィルムの製造法に従い、PPEとポリスチレン−ポリエチレングリコールブロック共重合体からなる透明性の高いフィルムを作成した。
フィルムの厚みは41μm、水との接触角は76°とPPEのみと比べて親水性が向上していた。エタノールに浸漬・乾燥させたフィルムにおいても77°と親水性を保持しており、剥離・溶出がなかった。また、タンパク吸着量は1.5μg/cm2とPPEのみのそれと比較して低減されていた。耐熱性評価実施前後の寸法変化はなかった。
[実施例2]
製造例3に従い、ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレート−ポリスチレン−ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレートのトリブロック共重合体(以下、「PHEMA−PSt−PHEMA」と略す)を製造した。収率89%。共重合体の組成比としては、ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレート/ポリスチレン/ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレート、9/82/9(重量%)、数平均分子量13,100、分子量分布1.3であった。次いで、フィルムの製造例に従い、PPEおよびPHEMA−PSt−PHEMAからなる透明性の高いフィルムを作成した。
フィルム厚みは40μm、水との接触角は80°とPPEのみと比べて親水性が向上していた。エタノールに浸漬・乾燥させたフィルムにおいても81°と親水性を保持しており、剥離・溶出がなかった。また、タンパク吸着量は1.8μg/cm2とPPEのみのそれと比較して低減されていた。耐熱性評価実施前後の寸法変化はなかった。
製造例3に従い、ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレート−ポリスチレン−ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレートのトリブロック共重合体(以下、「PHEMA−PSt−PHEMA」と略す)を製造した。収率89%。共重合体の組成比としては、ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレート/ポリスチレン/ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレート、9/82/9(重量%)、数平均分子量13,100、分子量分布1.3であった。次いで、フィルムの製造例に従い、PPEおよびPHEMA−PSt−PHEMAからなる透明性の高いフィルムを作成した。
フィルム厚みは40μm、水との接触角は80°とPPEのみと比べて親水性が向上していた。エタノールに浸漬・乾燥させたフィルムにおいても81°と親水性を保持しており、剥離・溶出がなかった。また、タンパク吸着量は1.8μg/cm2とPPEのみのそれと比較して低減されていた。耐熱性評価実施前後の寸法変化はなかった。
[実施例3]
製造例4に従い、ポリスチレン−ポリジメチルアクリルアミドのジブロック共重合体(以下、「PSt−PDMAA」と略す)の製造を行った。75%収率。共重合体の組成比は、ポリスチレン/ポリジメチルアクリルアミド、85/15(重量%)、数平均分子量10,100、分子量分布1.8であった。次いで、フィルムの製造例に従い、PPEおよびPSt−PDMAAからなる透明性の高いフィルムを作成した。
フィルム厚みは42μm、水との接触角は79°とPPEのみと比べて親水性が向上していた。エタノールに浸漬・乾燥させたフィルムにおいても79°と親水性を保持しており、剥離・溶出がなかった。また、タンパク吸着量は1.7μg/cm2とPPEのみのそれと比較して低減されていた。耐熱性評価実施前後の寸法変化はなかった。
製造例4に従い、ポリスチレン−ポリジメチルアクリルアミドのジブロック共重合体(以下、「PSt−PDMAA」と略す)の製造を行った。75%収率。共重合体の組成比は、ポリスチレン/ポリジメチルアクリルアミド、85/15(重量%)、数平均分子量10,100、分子量分布1.8であった。次いで、フィルムの製造例に従い、PPEおよびPSt−PDMAAからなる透明性の高いフィルムを作成した。
フィルム厚みは42μm、水との接触角は79°とPPEのみと比べて親水性が向上していた。エタノールに浸漬・乾燥させたフィルムにおいても79°と親水性を保持しており、剥離・溶出がなかった。また、タンパク吸着量は1.7μg/cm2とPPEのみのそれと比較して低減されていた。耐熱性評価実施前後の寸法変化はなかった。
[比較例1]
親水化剤を添加せず、2gのPPEと8gのNMPからなる溶液を用いたこと以外は、フィルム製造例に従い、PPEのみからなるフィルムを作成した。
フィルム厚みは40μm、水との接触角は97°であった。また、タンパク吸着量は、3.8μg/cm2と高い値を示した。耐熱性評価実施前後の寸法変化はなかった。
親水化剤を添加せず、2gのPPEと8gのNMPからなる溶液を用いたこと以外は、フィルム製造例に従い、PPEのみからなるフィルムを作成した。
フィルム厚みは40μm、水との接触角は97°であった。また、タンパク吸着量は、3.8μg/cm2と高い値を示した。耐熱性評価実施前後の寸法変化はなかった。
[比較例2]
親水化剤の代わりにポリスチレン(和光純薬工業株式会社、以下PStと略す)を用いたこと以外は、フィルム製造例に従い、PPEとポリスチレンからなるフィルムを作成した。
フィルム厚は42μm、水との接触角は94°であった。また、タンパク吸着量は、3.8μg/cm2と高い値を示した。耐熱性評価実施前後の寸法変化はなかった。
親水化剤の代わりにポリスチレン(和光純薬工業株式会社、以下PStと略す)を用いたこと以外は、フィルム製造例に従い、PPEとポリスチレンからなるフィルムを作成した。
フィルム厚は42μm、水との接触角は94°であった。また、タンパク吸着量は、3.8μg/cm2と高い値を示した。耐熱性評価実施前後の寸法変化はなかった。
[比較例3]
親水化剤を添加せず、2gのPStと8gのNMPからなる溶液を用いたこと以外は、フィルム製造例に従い、PStのみからなるフィルムを作成した。フィルムは脆いものであった。
フィルム厚みは40μm、水との接触角は91°であった。また、タンパク吸着量は、3.8μg/cm2と高い値を示した。耐熱性試験中、フィルムの形状が変化した。
親水化剤を添加せず、2gのPStと8gのNMPからなる溶液を用いたこと以外は、フィルム製造例に従い、PStのみからなるフィルムを作成した。フィルムは脆いものであった。
フィルム厚みは40μm、水との接触角は91°であった。また、タンパク吸着量は、3.8μg/cm2と高い値を示した。耐熱性試験中、フィルムの形状が変化した。
[比較例4]
親水化剤としてポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社、分子量4000、以下PEGと略す)を用いたこと以外はフィルム製造例に従い、PPEとPEGからなるフィルムを作成した。フィルムは完全に白色化し、混和性が低く脆いものであった。フィルム厚みは43μm。水との接触角は78°とPPEのみと比べて親水性が向上していたが、エタノールに浸漬・乾燥させたフィルムは91°と親水性が低下しており、剥離・溶出していると考えられる。
親水化剤としてポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社、分子量4000、以下PEGと略す)を用いたこと以外はフィルム製造例に従い、PPEとPEGからなるフィルムを作成した。フィルムは完全に白色化し、混和性が低く脆いものであった。フィルム厚みは43μm。水との接触角は78°とPPEのみと比べて親水性が向上していたが、エタノールに浸漬・乾燥させたフィルムは91°と親水性が低下しており、剥離・溶出していると考えられる。
Claims (8)
- 親水性高分子がポリエチレングリコール系高分子であることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品。
- 親水性高分子がビニル系高分子であることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品。
- 親水性高分子が(メタ)アクリレート系高分子であることを特徴とする請求項1または3記載の樹脂成形品。
- 親水性高分子が(メタ)アクリルアミド系高分子であることを特徴とする請求項1または3記載の樹脂成形品。
- 形態がフィルムであることを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載の樹脂成形品。
- 溶液キャスティング法を用いることを特徴とする、請求項6記載の樹脂成形品の製造方法。
- 医療・医薬品の製造、分析用の構造材料の用途に用いられることを特徴とする請求項1−6のいずれかに記載の樹脂成形品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007029164A JP2008195747A (ja) | 2007-02-08 | 2007-02-08 | 親水化された芳香族エーテル系高分子からなる樹脂成形品。 |
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JP2007029164A Withdrawn JP2008195747A (ja) | 2007-02-08 | 2007-02-08 | 親水化された芳香族エーテル系高分子からなる樹脂成形品。 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPWO2014098025A1 (ja) * | 2012-12-18 | 2017-01-12 | 日産化学工業株式会社 | スチレン構造を含む自己組織化膜の下層膜形成組成物 |
JP2017214450A (ja) * | 2016-05-30 | 2017-12-07 | Dic株式会社 | ポリマー複合体 |
-
2007
- 2007-02-08 JP JP2007029164A patent/JP2008195747A/ja not_active Withdrawn
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JP2017214450A (ja) * | 2016-05-30 | 2017-12-07 | Dic株式会社 | ポリマー複合体 |
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