JP2008173693A - 鏡面加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】微細な切れ刃を平面や曲面を持つ工具材料に直接形成し、砥粒やスラリー(砥粒とベースオイルを懸濁したもの)を用いることなく高精度の鏡面を仕上げることができる鏡面加工方法を提供する。
【解決手段】鏡面被加工部材3の被加工部4よりも硬質であって周期ピッチが10μm以下である複数の凹凸部からなるグレーティング構造部2を鏡面加工用部材1に設ける。鏡面加工用部材1のグレーティング構造部2と鏡面被加工部材3の被加工部4とを、液体存在下で相対的に摺動させて鏡面被加工部材3の被加工部4を鏡面に仕上げる。
【選択図】図1
【解決手段】鏡面被加工部材3の被加工部4よりも硬質であって周期ピッチが10μm以下である複数の凹凸部からなるグレーティング構造部2を鏡面加工用部材1に設ける。鏡面加工用部材1のグレーティング構造部2と鏡面被加工部材3の被加工部4とを、液体存在下で相対的に摺動させて鏡面被加工部材3の被加工部4を鏡面に仕上げる。
【選択図】図1
Description
本発明は、鏡面加工方法に関するものである。
現在、表面加工仕上げ(鏡面加工)は砥粒加工が主流である。砥粒加工には、遊離砥粒による研磨加工と、固定砥粒による研磨加工とがある。遊離砥粒による研磨加工(遊離砥粒加工)とは、遊離砥粒(研磨剤)を含んだ状態で摺動運動(すりあわせ)を行い、加工物を微少切削しながら研磨する加工である。また、固定砥粒による研磨加工(固定砥粒加工)とは、砥石、研磨ベルト、サンドペーパなど砥粒を固着した工具を用いる加工である。
しかしながら、遊離砥粒加工では、被研磨部材を保持する研磨パッド(軟質研磨パッド)の変形に起因する形状精度の低下や廃液処理の高環境負荷が問題となっている。また、固定砥粒加工では、砥粒の形状や分布の不均一さに起因する精度低下の発生および脱落した砥粒によるスクラッチや被削材への埋め込み等が問題となっている。
このため、近年では新しい仕上げ加工法の開発が望まれている。そのため、ナノメータオーダの微細加工用に適したダイヤモンド工具が提案されている(特許文献1)。このダイヤモンド工具は、基体表面にCVD法で作製したダイヤモンドの小突起を複数配したものである。この場合、単結晶シリコンに酸化膜によるマスクパターンを施し、アルカリエッチングにより凹部を形成する。酸化膜を除去しシリコンモールドが作製される。次にこのモールドに対してCVD処理により多結晶ダイヤモンドを蒸着し、モールドをエッチングして四角錐形状の小突起を有するダイヤモンド工具が完成する。
特開2004−268236号公報
しかしながら、特許文献1に記載のようなダイヤモンド工具はリソグラフィー技術を用いてシリコンモールドを作成するため、平板上にしか切れ刃を形成することができない。さらに、リコンモールドにCVD法(Chemical Vapor Deposition)等を使用してダイヤモンド工具切れ刃を形成し、そのダイヤモンド工具切れ刃を基体に接着するという複雑な工程を要する。この特許文献1に掲げられているCVD法は、熱電子放射材料を用いてメタンと水素の混合ガスからダイヤモンドを析出する方法、あるいはマイクロ波プラズマ放電を利用してメタンと水素の混合ガスからダイヤモンドを析出する方法である。このため、処理温度が高く、コーティング後に熱処理を行うため、処理品に変形・変寸が発生するおそれがある。また、ダイヤモンド工具切れ刃の基体への接着工程において工具精度が低下する可能性がある。
本発明は、上記課題に鑑みて、微細な切れ刃を平面や曲面を持つ工具材料に直接形成し、砥粒やスラリー(砥粒とベースオイルを懸濁したもの)を用いることなく高精度の鏡面を仕上げることができる鏡面加工方法を提供する。
本発明の鏡面加工方法は、鏡面被加工部材の被加工部よりも硬質であって周期ピッチが10μm以下である複数の凹凸部からなるグレーティング構造部を鏡面加工用部材に設け、鏡面加工用部材のグレーティング構造部と鏡面被加工部材の被加工部とを、液体存在下で相対的に摺動させて鏡面被加工部材の被加工部を鏡面に仕上げるものである。
本発明の鏡面加工方法によれば、鏡面加工用部材のグレーティング構造部と鏡面被加工部材の被加工部とを摺動させて被加工部を鏡面に仕上げるものであるので、10μm以下である複数の凹凸部からなるグレーティング構造部が研磨加工用砥粒の切れ刃と同等サイズを構成することができる。また、1mm内に100本以上の凸部が形成されることになり、1刃当たり(1凸部当たり)の加工量が微量となる。さらに、砥粒やスラリー(砥粒とベースオイルを懸濁したもの)を使用する必要がない。また、加工は液体存在下で行うので、研磨粉が外部に飛散するおそれがない。
前記グレーティング構造部のグレーティング方向を摺動方向と略平行とすることができる。これによって、研磨粉のグレーティング構造部からの排出の容易化を図ることができる。
鏡面加工用部材に複数のグレーティング方向のグレーティング構造部を形成することもできる。これによって、グレーティング構造部と被加工部との相互の摺動による研磨効率の向上を図ることができる。
前記グレーティング構造部は、加工閾値近傍の照射強度で直線偏光のフェムト秒レーザを照射し、その照射部分をオーバラップさせながら走査して、自己組織的に形成することができる。この方法を用いると円筒面や複雑な形状にもグレーティング構造部を形成することができる。
本発明の鏡面加工方法では、グレーティング構造部が研磨加工用砥粒の切れ刃と同等サイズを構成することができるので、砥粒の代替工具として鏡面加工することができる。特に、1刃当たり(1凸部当たり)の加工量が微量となるので、非常に滑らかな加工面が得られる。また、砥粒やスラリー(砥粒とベースオイルを懸濁したもの)を使用する必要がない。このため、砥粒を使用した遊離砥粒や固定砥粒による研磨加工における問題点が生じることがない。すなわち、研磨パッドの変形に起因する形状精度の低下、砥粒の被削材(鏡面被加工部材)への埋め込みによる低精度化、砥粒形状の不均一による精度低下、及び廃液処理の高環境負荷等の問題を解決することができる。また、加工を液体存在下で行うので、研磨粉(加工屑)が外部に飛散するおそれがなく、特に環境負荷の低減を図ることができる。
グレーティング構造部のグレーティング方向を摺動方向と略平行とすることによって、研磨粉のグレーティング構造部からの排出の容易化を図ることができ、加工面を高精度かつ高効率で鏡面化することができる。また、所定量(例えば、100m)の摺動距離での鏡面化の面積率が、グレーティング方向が摺動方向と略直交する場合よりもグレーティング方向が摺動方向と略平行する場合の方が高い。これは、摺動方向が直交方向の場合、くさび効果により、平行方向よりも油膜が形成されやすく、加工に寄与する加工面圧が低下するため、加工効率が低下するからである。さらに、摺動方向が直交方向の場合、表面粗さが悪化する。これは、研磨粉(加工屑)がグレーティング構造部から排出されにくいからである。これに対して、摺動方向と略平行する場合、前記したように研磨粉がグレーティング構造部から排出され易いので、表面粗さの悪化を防止することができる。
鏡面加工用部材が複数のグレーティング方向を有することによって、グレーティング構造部と被加工部との相互の摺動による研磨効率の向上を図ることができ、鏡面仕上の加工時間の短縮を図ることができる。しかも、研磨粉(加工屑)の排出効果を高めることができる。
グレーティング構造部は、加工閾値近傍の照射強度で直線偏光のレーザを照射し、その照射部分をオーバラップさせながら走査して、自己組織的に形成したものでは、機械加工では困難なサブミクロンの周期ピッチを持つグレーティング構造部をほとんど加工変質することなく平面、円筒面、その他複雑な曲面上にも形成できる。このため、このグレーティング構造部を用いれば、様々な形状の工具で効率的に鏡面加工を行うことができる。また、フェムト秒レーザを用いてグレーティング構造部を形成する場合、大気中での加工が可能であり、加工装置の簡略化を図ることができる。これに対して、電子ビーム加工であれば、ワークである被加工物を、例えば真空チャンバーなどに収容して、真空雰囲気下、もしくは所定のガス雰囲気下で加工する必要があり、装置のコスト高および大型化を招くことになる。
以下本発明の実施の形態を図1〜図9に基づいて説明する。
鏡面加工方法は、鏡面加工用部材1のグレーティング構造部2と鏡面被加工部材3の被加工部4とを、液体存在下で相対的に摺動させて鏡面被加工部材3の被加工部4を鏡面に仕上げる方法である。
この実施形態においては、鏡面加工用部材1を平板体1Aとし、鏡面被加工部材3を円柱体3Aとした。そして、鏡面加工用部材1の上面に図2に示すようなグレーティング構造部2を設けている。この場合、鏡面加工用部材1としては、例えば超硬合金を使用することができる。ここで、超硬合金(ちょうこうごうきん、Cemented Carbide)とは、硬質の金属炭化物の粉末を焼結して作られる合金で、単に超硬とも呼ばれる。一般的には炭化タングステン(WC、タングステン・カーバイド)と結合剤(バインダ)であるコバルト(Co)を混合して焼結したものである。また、材料特性を向上させるために炭化チタン(TiC)や炭化タンタル(TaC)などを加えたものであってもよい。
グレーティング構造部2は、図2に示すように微小の凹部(凹条)5と微小の凸部(凸条)6とが交互に所定ピッチでほぼ平行に配設される。グレーティング構造部2の凹凸ピッチを10μm以下とし、グレーティング構造部2の凹部5の深さを1μm以下とするのが好ましい。
グレーティング構造部2は、加工閾値近傍の照射強度で直線偏光のレーザを照射し、その照射部分をオーバラップさせながら走査して、自己組織的に形成している。具体的には、図3に示すフェムト秒レーザ表面加工装置を使用する。レーザ発生器11(チタンサファイアフェムト秒レーザ発生器)で発生したレーザ(例えば、パルス幅:120fs、中心波長800nm、繰り返し周波数:1kHz、パルスエネルギー:0.25〜400μJ/pulse)は、ミラー12により加工材料Wに向けて折り返され、メカニカルシャッタ13に導かれる。レーザ照射時はメカニカルシャッタ13を開放し、レーザ照射強度は1/2波長板14と偏光ビームスプリッタ16によって調整可能とし、1/2波長板15によって偏光方向を調整し、集光レンズ(焦点距離:150mm)17によって、XYθステージ19上の加工材料W表面に集光照射する。
アブレーション閾値近傍のフルエンスで直線偏光のレーザをワークに照射した場合、入射光とワークの表面に沿った散乱光またはプラズマ波の干渉により、波長オーダのピッチと溝深さを持つグレーティング状の周期構造が偏光方向に直交して自己組織的に形成される。このとき、フェムト秒レーザをオーバラップさせながら走査させることで、周期構造を広範囲に拡張することができる。
レーザの走査は、レーザを固定して加工材料Wを支持するXYθステージ19を移動させてもよいし、XYθステージ19を固定してレーザを移動させてもよい。あるいは、レーザとXYθステージ19を同時移動させてもよい。なお、前記図2は、前記フェムト秒レーザ表面加工装置にて形成したグレーティング構造部2を電子顕微鏡で撮像した図である。
また、鏡面被加工部材3には、例えば、SUJ2(高炭素クロム軸受鋼鋼材JIS G4805)を使用することができる。すなわち、鏡面被加工部材3は鏡面加工用部材1よりも硬度が低ければよい。この場合、鏡面加工用部材1のグレーティング構造部2よりも鏡面被加工部材3の被加工部4の硬度が低ければよい。
次に、この鏡面加工用部材1を使用して鏡面被加工部材3の被加工部4を鏡面加工する方法を説明する。図1に示すように、鏡面加工用部材1のグレーティング構造部2に鏡面被加工部材3の被加工部4を矢印Bのように所定の押圧力(例えば、30N)で押し当てる。
グレーティング構造部2には、例えばタービンオイル(VG32)等の液体を供給して、鏡面被加工部材3を図1に示す矢印Aのように往復摺動させる。この場合、摺動方向を周期構造の方向(グレーティング方向)と略平行とする。鏡面被加工部材3を矢印Aのように往復させる往復動手段としては、ボールねじ機構、シリンダ機構、リニアモータ機構等の種々の公知の往復動機構を使用することができる。
すなわち、鏡面加工用部材1のグレーティング構造部2と鏡面被加工部材3の被加工部4とを摺動させて被加工部4を鏡面に仕上げることになる。このため、10μm以下である複数の凹凸部からなるグレーティング構造部2が研磨加工用砥粒の切れ刃と同等サイズを構成することができ、砥粒の代替工具として鏡面加工することができる。特に、1mm内に100本以上の凸部が形成されることになり、1刃当たり(1凸部当たり)の加工量が微量となるので、非常に滑らかな加工面が得られる。また、砥粒やスラリー(砥粒とベースオイルを懸濁したもの)を使用する必要がない。このため、砥粒を使用した遊離砥粒や固定砥粒による研磨加工における問題点が生じることがない。すなわち、研磨パッドの変形に起因する形状精度の低下、砥粒の被削材(鏡面被加工部材)への埋め込みによる低精度化、砥粒形状の不均一による精度低下、及び廃液処理の高環境負荷等の問題を解決することができる。また、加工を液体存在下で行うので、研磨粉(加工屑)が外部に飛散するおそれがなく、特に環境負荷の低減を図ることができる。
グレーティング構造部2のグレーティング方向を摺動方向と略平行とすることによって、研磨粉のグレーティング構造部2からの排出の容易化を図ることができ、加工面を高精度かつ高効率で鏡面化することができる。また、所定量(例えば、100m)の摺動距離での鏡面化の面積率が、グレーティング方向が摺動方向と略直交する場合よりもグレーティング方向が摺動方向と略平行する場合の方が高い。これは、摺動方向が直交方向の場合、くさび効果により、平行方向よりも油膜が形成されやすく、加工に寄与する加工面圧が低下するため、加工効率が低下するからである。さらに、摺動方向が直交方向の場合、表面粗さが悪化する。これは、研磨粉がグレーティング構造部2から排出されにくいからである。これに対して、摺動方向と略平行する場合、前記したように研磨粉(加工屑)がグレーティング構造部2から排出され易いので、表面粗さの悪化を防止することができる。
グレーティング構造部2は、加工閾値近傍の照射強度で直線偏光のレーザを照射し、その照射部分をオーバラップさせながら走査して、自己組織的に形成したものでは、機械加工では困難なサブミクロンの周期ピッチを持つグレーティング構造部2をほとんど加工変質することなく形成できる。このため、このグレーティング構造部2を用いれば、効率的に鏡面加工を行うことができる。
ところで、前記実施形態では、鏡面加工用部材1のグレーティング構造部2は、相互に略平行な凹部5と凸部6とが交互に配置されたものであり、グレーティング方向が同じものを使用した。これに対して、複数のグレーティング方向のグレーティング構造部2であってもよい。
複数のグレーティング方向のグレーティング構造部2には、凹部5と凸部6がジグザグに配設されるものであっても、グレーティング構造部2を形成される範囲を所定の小区画に分割して、区画毎、又は適数の区画毎にグレーティング方向を相違させるようにしてもよい。また、2方向のグレーティング構造部2を重ね合わせて形成してもよい。
鏡面加工用部材1が複数のグレーティング方向を有することによって、グレーティング構造部2と被加工部4との相互の摺動による研磨効率の向上を図ることができ、鏡面仕上の加工時間の短縮を図ることができる。しかも、研磨粉(加工屑)の排出効果を高めることができる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、前記実施形態では、鏡面加工用部材1が平板体1Aであり、鏡面被加工部材3が円柱体3Aであるが、もちろんこれらに限るものではない。このため、鏡面加工用部材1が、円柱体、円筒体、又は球体等であって、鏡面被加工部材3が平板体、円筒体、又は球体等であってもよい。さらに摺動方式も往復動だけではなく、回転方式等であってもよい。また、各材質としても、鏡面加工用部材1のグレーティング構造部1が鏡面被加工部材3の被加工部4よりも硬度が大であればよく、種々の金属、さらには金属以外の樹脂やセラミックやグレーティング構造部2への薄膜コーティング等も用いることができる。このように、本発明の鏡面加工方法は、非常に滑らかな鏡面を必要とする種々の部材に適用することができる。
さらに、使用する液体としても、オイルに限るものではなく、水やアルコール等であってもよく、鏡面加工用部材1及び鏡面被加工部材3の材質に応じて、種々選択することができる。すなわち、腐食したり、摺動によって化学変化したり、発熱したりしないものを選択すればよい。また、本発明において、液体存在下としては、グレーティング構造部2のみに液体を供給するものであっても、鏡面加工用部材1及び鏡面被加工部材3を液体に浸漬するものであってもよい。
鏡面加工用部材1と鏡面被加工部材3との摺動としては、前記実施形態では、鏡面加工用部材1を固定して、鏡面被加工部材3を往復動させていたが、逆に鏡面被加工部材3を固定して鏡面加工用部材1を往復動させても、両者を往復動させてもよい。また、摺動時に往復動させることなく、往動又は復動のみにおいて摺動させるようにしてもよい。
また、摺動ストロークや摺動時における押圧荷重等は、グレーティング構造部2の周期ピッチや摺動速度等に応じて任意に設定することができる。
摺動方向としては、実施形態のように、グレーティング方向を略平行とするのが好ましいが、グレーティング方向と略直交するものであっても、グレーティング方向に対して所定角(例えば45度)に傾斜するものであってもよい。なお、実施形態のように、グレーティング方向を略平行である場合、形成される凹部5及び凸部6は僅かに蛇行している。すなわち、グレーティング方向と摺動方向とにわずかな角度差が生じ、しかも、周期ピッチが10μm以下であるので、鏡面加工が可能である。
グレーティング構造部2を形成する場合、フェムト秒レーザを使用することなく、電子ビーム加工機等の他の工具を使用してもよい。
周期構造(グレーティング構造部2)を形成した鏡面加工用部材1である超硬合金基板1Aに対し、鏡面被加工部材3である被削材(円柱体)3Aであるφ2.5mmのSUJ2(Ra 0.2 〜 0.3μm, Ry 2.0 〜 2.5μm )を押し当て、往復摺動させ超仕上げ加工を行った.周期構造(グレーティング構造部)の方向は摺動方向に対して直交および平行の2種類とした。摺動面には100mg のタービンオイル(VG32)を供給し,摺動ストロークは10mm、垂直荷重は30N で加工を行い、加工後の表面性状をレーザ顕微鏡にて測定した。ここで、Ra(算術平均粗さ)とは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値である。Ry(最大高さ)とは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から最も高い山頂までの高さと最も低い谷底までの深さとの和である。
摺動方向に直交および平行に周期構造を形成した超硬合金基板1Aを用いて,摺動速度1mm/sで加工した際の試験片の仕上げ面を図4および図5に示す。図4はグレーティング方向が摺動方向に対して直交(略直交)する場合であり(Perpendicular)、図4(a)は摺動前の加工面を示し、図4(b)は摺動距離が20mである加工面を示し、図4(c)は摺動距離が100mを加工面を示している。図5はグレーティング方向が摺動方向に対して平行(略平行)する場合であり(Parallel)、図5(a)は摺動前の加工面を示し、図5(b)は摺動距離(Sliding distance)が20mである加工面を示し、図5(c)は摺動距離(Sliding distance)が100mを加工面を示している。
図4と図5とを比較すると、摺動方向に平行の周期構造を形成したもの(図5に示すもの)が、摺動方向に直交の周期構造を形成したもの(図4に示すもの)よりも鏡面化された面積が広くなっている。
図6は各条件で加工された試験片に対し,鏡面領域と非鏡面領域の反射率の違いを利用して鏡面化された面積率を計測した結果である。摺動方向に平行の周期構造で加工した場合,100m の摺動距離(Sliding distance)で全面積の82% が鏡面化されているが、直交の周期構造で加工した場合は65% であった。
各摺動距離における加工深さを図7に示す。周期構造の方向を問わず、摺動距離の増加にともない、鏡面化による加工面圧低下のため加工深さの増加率は低減している。特に摺動方向に直交方向の周期構造では,摺動距離が50m以降はほとんど加工深さに変化が見られない。一方、摺動方向に平行の周期構造は摺動距離が50m以降も加工深さの増加が見られ,摺動距離100mでは直交の周期構造の2倍程度の加工深さを示している。
2方向の周期構造で鏡面化された部分の表面粗さを図8に示す。摺動方向に直交方向の周期構造で鏡面化された表面には黒い変色が見られ、表面粗さも摺動距離の増加にともない悪化の傾向が見られる。一方、摺動方向に平行の周期構造で鏡面化した表面は摺動距離を増加させてもRaが0.006μmの鏡面が安定的に得られた。
このように、フェムト秒レーザによるナノスケールの微細周期構造を超仕上げ加工ツールとして利用し、Ra 0.006μmの鏡面が得られた。
ところで、摺動方向に平行の周期構造の方が加工深さや鏡面化の面積率が高い要因として、流体圧による負荷能力の差が挙げられる。摺動方向に直交方向の周期構造はくさび効果により、平行方向の周期構造より油膜が形成されやすく,加工に寄与する加工面圧が低下するため,加工効率が低減していると思われる.図示していないが、摺動方向に平行の周期構造でも摺動速度を10倍の10mm/sで加工を行うと,負荷能力が増加するため、加工効率が大きく低下することを確認している。また、摺動方向に直交方向の周期構造では,摺動距離50m以降で表面粗さの悪化傾向が見られるが、この要因は試験片の研磨粉が排出されにくいため,周期構造が埋まりやすいことに起因していると思われる。図9に摺動距離50mにおける周期構造の様子を示す。摺動方向に直交する周期構造では粒間まで目詰まりを起こしている。
1 鏡面加工用部材
2 グレーティング構造部
3 鏡面被加工部材
4 被加工部
5 凹部
6 凸部
2 グレーティング構造部
3 鏡面被加工部材
4 被加工部
5 凹部
6 凸部
Claims (4)
- 鏡面被加工部材の被加工部よりも硬質であって周期ピッチが10μm以下である複数の凹凸部からなるグレーティング構造部を鏡面加工用部材に設け、鏡面加工用部材のグレーティング構造部と鏡面被加工部材の被加工部とを、液体存在下で相対的に摺動させて鏡面被加工部材の被加工部を鏡面に仕上げることを特徴とする鏡面加工方法。
- 前記グレーティング構造部のグレーティング方向を摺動方向と略平行とすることを特徴とする請求項1の鏡面加工方法。
- 前記鏡面加工用部材に複数のグレーティング方向のグレーティング構造部を形成していることを特徴とする請求項1の鏡面加工方法。
- 前記グレーティング構造部は、加工閾値近傍の照射強度で直線偏光のフェムト秒レーザを照射し、その照射部分をオーバラップさせながら走査して、自己組織的に形成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの鏡面加工方法。
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