JP2008164359A - イオンセンサおよびこれを用いた分析装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 バックゲートBとソースSとの間、およびバックゲートBとドレインDとの間に発生するバックゲート光電流Ibpを取り出すためのゲート電極Gを持つイオン感応性電界効果トタンジスタ(ISFET)10よりなるイオンセンサであって、バックゲート光電流Ibpを用いて、ソースSやドレインDにおいて発生する光電流Isp,Idpを補正することを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
(1)イオン感応部とゲート部を金属膜で接続し、ゲート部を遮光モールドすることにより影響を回避する方法が考えられている。具体的には、図6(A),(B)に示すように、MOSFETのゲート部104から導電性の電極105,106をゲート領域以外の基板101上に延設すると共に、この延設された導電性電極105,106の表面を、ゲート部104から離れたところにコンタクトホール106bが形成されるように、高絶縁膜107で被覆し、コンタクトホール106b上にイオン感応膜108を設けた構造を有している(例えば特許文献1参照)。
(2)測定用ISFETと比較用ISFETを用いてその差をとることにより、誘導電圧もしくは温度の変動を相殺することが考えられている。具体的には、図7に示すように、細管201内に検知部が細管先端部から露出するように測定用pH−ISFET205を装着すると共に、細管先端部に測定用pH−ISFET205と液絡可能にpH緩衝液を保持する保液部204を設け、この保液部に参照用pH−ISFET206及び擬似比較電極207を装着する。この擬似比較電極に対する測定用pH−ISFET205及び参照用pH−ISFET206の検知電圧の電圧差を検出させるように、測定用pH−ISFET205、参照用pH−ISFET206及び擬似比較電極207からリード線205a、206a、207aを細管201の外部へ導出する(例えば特許文献2参照)。
しかし、MOS構造の場合には必ずバックゲートが存在し、ISFETにおいてはその一端子を形成することから、現実にバックゲート光電流Ibpが発生した場合、バックゲート−ソース間の電位が変化する。その結果ISFETの本来の特性である(ゲート−ソース間の電位)〜(ソース−ドレイン間の電流)の関係に影響を及ぼすために、こうした影響分をも補正する必要がある。上記(b)の補正回路は、係る補正機能を果たすものである。
本発明は、こうした2つの機能を有する補正回路をイオンセンサ内部に組み込むことによって、外光による影響を受けずに、測定値に対する安定性と信頼性の確保することができるイオンセンサを提供することが可能となった。
図1は、本センサの構成例として、MOS構造を有するISFETの構造を例示する。高絶縁シリコンウエハ1内にn型領域2が形成され、その中にp型領域3が形成されてMOS内FETが構成される。さらに、p型領域3に、不純物拡散によってn+拡散層が2ヶ所形成され、一方がソースSとされ、他方がドレインDとされる。n型領域2はバックゲートB取り出しのバックゲート配線Baと接続され、ソース配線Saとドレイン配線Da、およびp型領域3の表面とともに、酸化皮膜(SiO2膜)4によって被覆される。さらに、SiO2膜4の表面にSi3N4膜Ga、Ta2O5膜Gbよりなるゲート電極Gが形成される。pHセンサの場合には、該ゲート電極G部分がpHに感応するpH感応膜を構成する。
次に、本センサにおいて、ISFETからの各出力を処理する電気回路の基本的動作について、図2に例示する電気回路を基に説明する。検出手段として、ISFET10とともに比較電極11を有し、溶液の電位をゲート電極Gにおいて生じる電位の変化として検出する場合を例示している。電気回路内には、(a)バックゲート光電流Ibpを検知し、ソース電流Isもしくはドレイン電流Idから光電流分Isp,Idpを補正する回路、および/または(b)バックゲート光電流Ibpとそれによるバックゲートとソース間電圧Vbsの光影響分を補正する回路、が含まれている。
(a−1)バックゲートBとソースSとの間に生じる光電流Ibspは、ISFETのチャネル電流となるので、その分だけソース電流Isを減らす必要がある。バックゲートBにはバックゲートBとドレインDとの間に生じる光電流Ibdpも流れてくるが、ドレインDとソースSの形状が同じであれば,バックゲート光電流Ibp合計の1/2が、光電流Ibspとなる。
(a−2)演算増幅器OP3によって変換されたバックゲートモニタ電位V3は、バックゲート光電流Ibpがゼロのとき0Vで、多くなるほどマイナス側に振れる。
(a−3)その結果,電流V3/R2が流れ、演算増幅器OP2によって変換されたソースモニタ電位V2が上昇し,ソース電流Isが減少する。
(a−4)この減少分ΔIs=光電流Ibspとなるように、各抵抗値を選べば光電流分をキャンセルできる。
(a−5)ここで、下式1および下式2が成立することから、各抵抗値を算出することができる。Vrは、ソース電流Isを設定するための基準電圧である。
Is=[(Vr/R3)−(V3/R2)]×R4/R5・・(式1)
V2=−[(Vr/R3)−(V3/R2)]×R4・・(式2)
(b−l)バックゲート光電流Ibpの発生によって、バックゲートモニタ電位V3が持ち上がった場合、同じ電流を流すのに必要なゲート−ソース間の電圧Vgsが小さくなるので、この効果を打ち消す必要がある。
(b−2)補正は、バックゲート光電流Ibpが、バックゲートモニタ電位V3として電圧に変換されて出力されているのでこれを利用する。つまり、バックゲート持ち上がり電圧(光影響に伴う光起電力)Vpは、分布定数的に考える必要があるが、ここでは簡単のため集中定数として考えると、バックゲート持ち上がり電圧=光電流×Pウェル抵抗である。これとバックゲートモニタ電位V3が比例関係にあるとすると、バックゲートモニタ電位V3を抵抗R8,R9で抵抗分圧して演算増幅器OP4の非反転入力に接続すれば、原理的にキャンセル可能である。
(b−3)本補正回路における補正動作の誤差要因としては、
1つには、抵抗RlとPウェル抵抗が抵抗の種類が異なるために、特性のばらつきや温度特性が異なることによる誤差を挙げることができる。この誤差は、抵抗RlをISFETチップに内蔵すれば小さくなるが、端子数が増加する。
2つには、バックゲートBから見た相互コンダクタンスgmbと本来のゲートから見たgmの比のばらつきによる誤差を挙げることができる。この誤差は、2個のサンプル測定では、gmb/gm=270uS/330uSとなっている。
(b−4)なお、(a)と(b)の光影響は、正負反対の方向になっている。
次に、上記出力処理回路の解析を、図3に例示した電気回路に基づき行う。図3に例示した電気回路は、上記図2と基本的に同一であり、上記(a)と(b)の2つの補正回路を有している。また、検出手段として、図2同様ISFET10とともに比較電極11を有し、溶液のpHをゲート電極Gにおいて生じる電位の変化として検出する場合を例示している。
(1−1)補正回路からの出力をVoutとし、ゲート電位に対して基準となり比較電極に印加される基準電圧をVrとすると、図3の回路において、下式3が成立する。
Vout=V3×(1+R7/R6)×R9×(R8+R9)−Vr×R7/R6・・(式3)
ここで、抵抗R6=抵抗R7,抵抗R8=抵抗R9とすると、下式3は下式4となる。
Vout=V3−Vr・・(式4)
(1−2)次に、溶液中での電解質の電位をVpH、ISFET10のゲート−ソース間の電圧をVgsとし、外光の影響を解析する。
(1−3)外光の影響がない場合は、バックゲートモニタ電位V3=0として、下式5が成立する。
Vr=Vgs+VpH・・(式5)
(1−4)一方、外光の影響がある場合は、光影響に伴う光起電力をVpとすると、溶液測定をしていない状態のバックゲート−ソース間の電圧Vbsは、下式6のようになる。
Vbs=Vgs+Vp・・(式6)
つまり、外光の影響がある場合は、上式5のゲート−ソース間の電圧Vgsをバックゲート−ソース間の電圧Vbsに置き換えればよく、下式7に示すように、
Vr=Vgs+Vp+VpH・・(式7)
となる。すなわち上式4の値Voutは、光起電力Vpだけ減少する。
ここで、バックゲートモニタ電位V3は、バックゲート光電流Ibpに対し、下式8に示すように、
V3=−Ibp×R1・・(式8)
となる。
(1−5)従って、バックゲートモニタ電位V3=−Vpであるならば、上式4により光影響分がキャンセルされる。
(2−1)光影響がない場合は、ISFET10のドレイン電流Id=ソース電流Isであり、下式9が成立する。
Is=V2/R5・・(式9)
(2−2)ドレインDとソースSの構造が同じであれば、ソース電流Isに加わる光電流は、バックゲート光電流Ibpの1/2となる。従って、図3の回路で、バックゲート光電流Ibpの補正分を入れたソース電流Isは、下式10と上式8を上式9に代入することによって、下式11となる。
V2=−(R4/R2)×V3−(R4/R3)×Vr・・(式10)
=Ibp×R1×(R4/R2)−(R4/R3)×Vr
Is=V2/R5=(R4/R5)×(Ibp×R1/R2−Vr/R3)・・(式11)
(2−3)ここで、抵抗R3=抵抗R4とすると、ソース電流Isは、下式12となる。
Is=[R1×R4/(R2×R5)]×Ibp−Vr/R5・・(式12)
従って、ソース電流Isに加わる光電流Ispは、上式12の前項分に相当し、バックゲート光電流Ibpの1/2に相当することから、下式13が成立する。
[R1×R4/(R2×R5)]×Ibp=Ibp/2・・(式13)
つまり、下式14が成立する。
R1×R4/(R2×R5)=1/2
→ 2×R1×R4=R2×R5・・(式14)
この中で、抵抗R1,R4,R5は以前の式で決まってくるので、結局、下式15が成立する。
R2=2×R1×R4/R5・・(式15)
で決められる。このとき、
Is=−Vr/R5+Ibp/2・・(式16)
となる。
(2−4)よって、光影響のキャンセルのための設計は、式8より抵抗R1を求め、次に式15より抵抗R2を求める。ただし、光影響のない場合の設計にて、抵抗R4,R5は決定されており、光影響の補正回路を形成することができる。
(2−5)また、バックゲート光電流Ibpと光起電力Vpとの間にはリニアな関係があって、ISFET10の温度ドリフトは、別途キャンセルすることができる。
図4は、バックゲート光電流Ibpを電圧に変換してADC20にてデジタル信号化し、CPU21に取り込み、別途取り込んだISFET10の出力信号(pH信号)とCPU21内で演算補正する場合の回路例を示す。図3と共通する事項については、説明を省略する。
上記イオンセンサを用いた本発明に係る分析装置(以下「本装置」という)を、図5に例示する。ISFETセンシング部31,比較電極32および信号変換部33を有するISFET電極部30と、ISFET電極部30からの出力信号を処理する演算表示部40から構成される。演算表示部40では、さらに、分析結果などの出力情報を外部と交信する演算処理部(図示せず)、出力情報などを表示するモニタ部41、外部から処理入力が可能な入力部42から構成される。信号変換部33において、ISFET出力電圧が被測定溶液の電位に変換されるとともに、外光の影響が補正される。また、ISFET電極部30と演算表示部40は、無線で出力信号等のやり取りを行うことができる。本装置は、分析作業において、ISFETセンシング部31に対して色々な角度から直射日光を受けながら操作を行っても、外光による影響を受けずに、分析することができる。従前の分析装置では、ISFETからなるセンシング部に対して外光の遮蔽等を行うことが難しく、試料水を採取して分析することから、河川水や海水の変化に追従するような分析はできなかったが、本装置は、こうした分析が可能な屋外型の分析装置としても有用である。
2 n型領域
3 p型領域
4 酸化皮膜(SiO2膜)
10 ISFET
11 比較電極
B バックゲート
Ba バックゲート配線
D ドレイン
Da ドレイン配線
G ゲート電極
Ga Si3N4膜
Gb Ta2O5膜
Ibp バックゲート光電流
Ibdp バックゲートBとドレインDとの間に生じる光電流
Ibsp バックゲートBとソースSとの間に生じる光電流
Id ドレイン電流
Idp ドレインからの光電流
Is ソース電流
Isp ソースからの光電流
OP1〜4 演算増幅器
R1〜R10 抵抗
S ソース
Sa ソース配線
V2 ソースモニタ電位
V3 バックゲートモニタ電位
Vbs バックゲートとソース間電圧
Vr 基準電圧
Claims (4)
- バックゲートとソースとの間、およびバックゲートとドレインとの間に発生するバックゲート光電流Ibpを取り出すためのゲート電極を持つイオン感応性電界効果トタンジスタよりなるイオンセンサであって、前記バックゲート光電流Ibpを用いて、前記ソースやドレインにおいて発生する光電流Isp,Idpを補正することを特徴とするイオンセンサ。
- 電気回路が組み込まれたイオンセンサであって、該電気回路内に(a)前記バックゲート光電流Ibpを検知し、ソース電流Isもしくはドレイン電流Idから光電流分Isp,Idpを補正する回路、および/または(b)前記バックゲート光電流Ibpとそれによるバックゲートとソース間電圧の光影響分を補正する回路、が形成されたことを特徴とする請求項1記載のイオンセンサ。
- センシング部に生じる電位の変化を、デジタル信号として演算処理装置に取り込む機能を有するイオンセンサであって、前記バックゲート光電流Ibpを、センシング部の出力信号と比較演算して光影響分を補正する機能を有することを特徴とする請求項1または2記載のイオンセンサ。
- 請求項1〜3のいずれかのイオンセンサを用いた分析装置であって、自然水や工業用水などの溶液を測定対象とし、これらのpHや所定のイオン濃度を測定項目として、屋外で測定することを特徴とするイオンセンサを用いた分析装置。
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