JP2008164325A - 免疫調節剤のスクリーニング方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】免疫調節剤のスクリーニング方法の提供。
【解決手段】本発明により、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質のスクリーニング方法が提供される。また、本発明によりCD26の二量体形成を阻害する物質のスクリーニング方法が提供される。これらの方法により得られる物質は、T細胞による免疫応答を調節することができるため、免疫賦活剤又は免疫抑制剤の有効成分として有用である。
【選択図】なし

Description

本発明は、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質のスクリーニング方法及びCD26の二量体形成を阻害する物質のスクリーニング方法並びにそれらの方法に用いるキットに関する。
生体に備わる免疫系機能は、生命現象を維持する上で最も重要な機能の1つである。免疫系は、元来自己と非自己とを識別することによって、異物からの生体防御を担当している。また、免疫系は臓器構造をとらず、1兆個にもおよぶ細胞が関与する複雑かつダイナミックなプロセスによって生体の維持を制御している。免疫系は最終的に炎症反応により、非自己から自己を守っている。そのため、例えば、感染症における炎症反応、自己免疫疾患における臓器破壊を伴う炎症反応、及び臓器置換による臓器機能の回復を目指して行われる移植治療における免疫反応やその最終局面である炎症反応を理解することは、目的の治療効果を最大限に発揮するためにも非常に重要である。
炎症の第一段階における細胞内への抗原の進入は、非特異的に、又は抗体や補体の受容体を介して生じる。細胞に取り込まれた抗原は、抗原提示細胞(APC, antigen presenting cell)内でプロセシングを受けてペプチド断片となり、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII分子との複合体としてT細胞に提示される。APCには、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、ランゲルハンス細胞、interdigitating細胞、末梢血の単球など(いわゆるプロフェッショナルAPC)がある。T細胞への抗原提示と同時に、補助シグナルである共刺激と呼ばれる受容体刺激が、T細胞の活性化を惹起し、増強する。T細胞を活性化するには、MHCペプチド複合体によってもたらされる抗原特異的な刺激と共刺激との両方の刺激が必要である。
APC上に発現する補助シグナル受容体分子CD80及びCD86の発現レベルの違い、又は産生するサイトカインの種類の違いによって、ヘルパーT細胞(TH細胞)のその後の分化に偏りが生じる。例えば、インターロイキン-12(IL-12)の影響下では細胞性免疫に関与するTH1タイプへの分化が優勢であるのに対し、IL-4の影響下では液性免疫に関与するTH2タイプへの分化が優勢となる。このように、一次エフェクター細胞が活性化されるか、又は抗体産生が誘導されるかして感作が確立される。同時に、メモリーT細胞やメモリーB細胞が生じる。一次エフェクター細胞としては、例えば、TH1細胞、細胞傷害性T細胞(CTL)、マスト細胞、単球、マクロファージ、好塩基球、好中球、NK細胞、血小板などがある。
次に、一次エフェクター細胞の活性化により生じたサイトカイン、ケモカイン、ケミカルメディエーターなどの働きにより、炎症局所の血管内皮細胞が活性化され、単球、マクロファージ、好中球、好酸球などの二次エフェクター細胞の活性化が惹起されて炎症が生じる。炎症反応は、炎症局所での起因物質の貪食、Fas/Fas-Lによるエフェクター細胞のアポトーシス、CTLA 4(cytotoxic T-lymphocyte-associated antigen 4)やFcγRIIBなどによる免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif)の抑制性シグナルの伝達により最終的に抑制される。
自己免疫疾患又は拒絶反応、移植片対宿主病(GVHD)などの免疫異常症は、臓器破壊を伴う炎症反応を示し、上記の多彩なエフェクター機構が関与していることが明らかにされている。それにもかからわず、上記疾患の詳しい免疫病態の理解は依然として十分でなく、こうした疾患を完全に制御することは未だ達成されていない。
自己免疫疾患や移植合併症の治療において、上述した炎症のエフェクター機構を制御するために、さまざまな免疫抑制療法が試みられている。免疫異常症を制御するためのポイントはエフェクターT細胞の抑制であると考えられている。実際に、主要な免疫抑制剤の多くは、T細胞をターゲットにしている。したがって、炎症のエフェクター細胞としてのT細胞を研究することは、免疫異常症の克服に向けて非常に重要であると言える。
このような経緯から、本発明者らは、エフェクターT細胞に関する研究を行い、特にT細胞活性化抗原であるCD26分子を発見し、その機能解析を行っている。CD26分子はCD4陽性T細胞がエフェクター機能を発揮するために重要な分子であり、T細胞の活性化に伴い、その発現が上昇し、CD3・TCR(T cell receptor complex)からの活性化刺激を増強する共刺激分子であることが、CD26の特異的抗体を用いた実験系により明らかにされている。さらに、CD26陽性T細胞は、炎症部位に極めて容易に移動するサブセットであるTH1型の細胞であり、関節リウマチなどの自己免疫疾患、及び拒絶やGVHDなどの免疫異常症に寄与し、また患部に蓄積することが知られている。したがって、CD26陽性T細胞に関する理解を深めることで、より病態特異的な治療法の確立が可能となると考えられる。
CD26分子は、Ta1と命名されたマウスモノクローナル抗体と反応するヒト末梢血T細胞表面抗原として報告され、その後、活性化T細胞に強く発現することから、T細胞活性化抗原として確立された。一方、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)は、肝臓、腸管粘膜細胞の表面に存在するペプチダーゼ酵素として知られていた。最近の遺伝子クローニングにより、DPPIVとCD26とが同一のものであることが示された。
つまり、CD26はリンパ球のみならず、腎臓、胆管、膵管、腸管、前立腺などの上皮の他、血管内皮細胞、子宮内膜などにも発現していることが明らかとなった。
ヒトCD26遺伝子は、766個のアミノ酸からなる110kDaの膜タンパク質をコードする遺伝子である。cDNAから推測されるCD26はII型膜糖タンパク質であり、その構造はN末端側が細胞質内に存在し、C末端側が細胞外に存在する。CD26の細胞内領域のアミノ酸は6残基のみであり、膜通過部分が22残基、細胞外部分が738残基であり、そのほとんどの部分が細胞外に存在しているといえる。細胞外領域には、C末端側に近い部分に630番目のセリン残基を活性中心としたセリンプロテアーゼの共通配列が含まれている。そのすぐN末端側にはシステインリッチドメインが存在し、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、フィブロネクチン、コラーゲンなどとの結合部位も存在する。また、ヒトCD26と、ラットDPPIV及びマウスCD26との相同性はそれぞれ85.5%及び89%である。
CD26分子は、末梢血リンパ球ではメモリーT細胞上に発現している。静止期T細胞上におけるCD26の発現をフローサイトメトリーで検討すると、その発現強度は3相性のパターンを示し、この中、CD26high集団が免疫系で重要な役割を果たしていることが知られている。CD26high集団は、CD45ROを発現するメモリーT細胞に属し、破傷風トキソイドのようなメモリー抗原に反応するほか、B細胞の抗体産生を誘導し、MHCクラスI特異的なキラーT細胞を誘導することもできる。
また、前述のように、このCD26陽性T細胞集団は、IL-2、IFN(インターフェロン)-γなどのサイトカインを分泌するTH1型の細胞である。さらに、この細胞集団は、血管内皮細胞間の遊走能を有し、炎症部位へ移動、集積し、炎症局所で重要な役割を果たしていると考えられる。
前述したように、CD26分子はいわゆる共刺激分子であり、TCRからの抗原特異的な一次シグナルと同時にCD26特異的抗体で刺激することによって、抗原非特異的な二次シグナルをT細胞に伝え、T細胞活性化を誘導する。
また、末梢血T細胞やCD26遺伝子導入Jurkat細胞を抗CD26抗体で単独刺激することにより、CD3ζ鎖、p56lck、p59fyn、ZAP-70、Mitogen activated protein kinase(MAP kinase)、c-Cbl、Phospholipase Cγなどのシグナル伝達タンパク質がチロシンリン酸化されること、さらに、CD3とCD26とのco-crosslinkingにより、CD3単独刺激で生じるチロシンリン酸化が増強し、延長することも示されている。
このように、CD26は、T細胞の活性化シグナル伝達機構に直接関与している。しかし、CD26分子は細胞内に6個のアミノ酸を有するのみであり、シグナル伝達のためには、他のシグナル伝達分子の関与が必要であるかは不明であった。本発明者は、破傷風トキソイド処理した単球上のcaveolin-1がCD26と結合することを見出している(特許文献1)。また、CD26によって刺激されたcaveolin-1がリン酸化を受けた後、NF-κBを活性化し、最終的にAPC上のCD86の発現を増強することを明らかにした。これらの研究により、CD26陽性T細胞が破傷風トキソイドなどのメモリー抗原に反応して活性化する機構の一面が明らかにされている。
国際公開第2005/063170号パンフレット
本発明者は、CD26を介したT細胞共刺激の内因性リガンドを同定するべく研究を行ったところ、caveolin-1がCD26を介したT細胞共刺激の内因性リガンドであることを明らかにした。しかし、caveolin-1によるCD26を介した共刺激シグナルの伝達機構については、明らかにされていなかった。
したがって、本発明は、CD26を介したT細胞共刺激シグナルの伝達機構を解明することを目的とする。詳しくは、前記シグナル伝達において必要なCD26の構造及びCD26と相互作用する因子を同定することを目的とする。
また、本発明の別の目的は、CD26と前記同定された因子との結合を変化させる物質のスクリーニング方法を提供することである。
また、本発明の別の目的は、CD26と前記同定された因子との結合を変化させる物質のスクリーニング用キットを提供することである。
また、本発明の別の目的は、CD26の二量体形成を阻害する物質のスクリーニング方法を提供することである。
また、本発明の別の目的は、CD26の二量体形成を阻害する物質のスクリーニング用キットを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究を行い、CD26を介したT細胞の共刺激シグナルの伝達には、二量体CD26の細胞質側末端が必要であることを明らかにした。さらに、本発明者は、CD26の細胞質側末端と直接相互作用する物質として、CARMA1を同定し、共刺激シグナルの結果として誘導されるT細胞増殖活性の上昇及びNF-κB活性の上昇には、CARMA1が必要であることも明らかにした。これらの知見により、本発明者は本発明を完成させた。
(1)被験物質存在下又は被験物質非存在下でCD26とCARMA1とを接触させることを特徴とする、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質のスクリーニング方法。
(2)被験物質存在下でCD26とCARMA1とを接触させた場合におけるCD26とCARMA1との結合量と、被験物質非存在下でCD26とCARMA1とを接触させた場合におけるCD26とCARMA1との結合量とを測定することを含む、(1)記載の方法。
(3)ヒト末梢血T細胞に発現するCD26とCARMA1とを接触させることを含む、(2)記載の方法。
(4)CARMA1と、細胞に発現させたCD26とを接触させることを含む、(2)記載の方法。
(5)細胞に発現させたCD26とCARMA1とを接触させることを含む、(2)記載の方法。
(6)細胞がヒトT細胞由来の細胞である、(4)又は(5)記載の方法。
(7)細胞が、293細胞又はJPM50.6細胞である、(5)記載の方法。
(8)T細胞由来の細胞がJurkat T細胞である、(6)記載の方法。
(9)CD26とCARMA1との結合量を、免疫沈降法により測定することを含む、(2)〜(8)のいずれか1項記載の方法。
(10)CD26が、CD26の細胞質側末端の少なくとも一部を含有する領域とFcγ1領域との融合タンパク質である、(2)記載の方法。
(11)被験物質存在下でCD26とCARMA1とを接触させた場合におけるT細胞増殖活性と、被験物質非存在下でCD26とCARMA1とを接触させた場合におけるT細胞増殖活性とを測定することを含む、(1)記載の方法。
(12)被験物質存在下でCD26とCARMA1とを接触させた場合におけるNF-κB活性と、被験物質非存在下でCD26とCARMA1とを接触させた場合におけるNF-κB活性とを測定することを含む、(1)記載の方法。
(13)ヒト末梢血T細胞に発現するCD26とCARMA1とを接触させることを含む、(11)又は(12)記載の方法。
(14)CARMA1と、T細胞由来の細胞に発現させたCD26とを接触させることを含む、(11)又は(12)記載の方法。
(15)T細胞由来の細胞がJurkat T細胞である、(14)記載の方法。
(16)T細胞由来の細胞に発現させたCD26とCARMA1とを接触させることを含む、(11)又は(12)記載の方法。
(17)T細胞由来の細胞がJPM50.6細胞である、(16)記載の方法。
(18)CD26とCARMA1との結合を変化させる物質が、免疫抑制剤の有効成分である、(1)〜(17)のいずれか1項記載の方法。
(19)CD26とCARMA1との結合を変化させる物質が、免疫賦活剤の有効成分である、(1)〜(17)のいずれか1項記載の方法。
(20)CD26とCARMA1とを含有する、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質のスクリーニング用キット。
(21)被験物質と、細胞に発現させたCD26とを接触させることを含む、CD26の二量体形成を阻害する物質のスクリーニング方法。
(22)CD26の二量体形成を阻害する物質を、前記細胞におけるSDS-PAGE解析結果、T細胞増殖活性又はNF-κB活性を指標としてスクリーニングすることを含む、(21)記載の方法。
(23)CD26の二量体形成を阻害する物質が、免疫抑制剤の有効成分である、(21)又は(22)記載の方法。
(24)CD26を含有する、CD26の二量体形成を阻害する物質のスクリーニング用キット。
本発明により、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質のスクリーニング方法が提供される。また、本発明により、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質のスクリーニング用キットが提供される。CD26とCARMA1との相互作用は、CD26を介したT細胞共刺激シグナルの伝達に必要であるため、上記結合を変化させる物質は、T細胞による免疫応答を調節することができる。したがって、上記結合を阻害する物質は、免疫抑制剤の有効成分として有用である。また、上記結合を促進する物質は、免疫賦活剤の有効成分として有用である。
また、本発明により、CD26の二量体形成を阻害する物質のスクリーニング方法が提供される。また、本発明により、CD26の二量体形成を阻害する物質のスクリーニング用キットが提供される。CD26の二量体形成は、CD26を介したT細胞共刺激シグナルに必要であるため、二量体形成を阻害する物質は、T細胞による免疫応答を抑制することができる。したがって、CD26の二量体形成を阻害する物質は、免疫抑制剤の有効成分として有用である。
1.概要
グレーヴズ病、関節リウマチ等の自己免疫疾患に罹患した患者では、CD26陽性T細胞の量が末梢血及び炎症組織(甲状腺、滑液、滑膜など)で増加している。また、これらの自己免疫疾患におけるCD26の発現亢進は、疾患の重篤度に相関する可能性がある。こうした知見は、CD26陽性T細胞が、炎症段階とそれに続く臓器の破壊において役割を担うことを意味している。
T細胞の活性化抗原として認識されたCD26は、CD4陽性メモリーT細胞サブセット上で発現し、T細胞の活性化後に発現が上昇する。数々の知見から、CD26は、活性化T細胞で発現亢進することに加えて、T細胞の活性化に関するT細胞シグナル伝達系に機能的に関連することが明らかにされてきた。
しかしながら、CD26を介したT細胞活性化に関わる詳細なメカニズムは、その共刺激リガンドの同定や近傍の関連シグナル分子の同定などを含め、明らかにされていなかった。
そこで、本発明者は、CD26を介したT細胞共刺激の内因性リガンドを同定するべく研究を行ったところ、caveolin-1がCD26を介したT細胞共刺激の内因性リガンドであることを明らかにした。
前述のように、CD26の近傍に位置するシグナル経路の詳細はこれまでに明らかにされておらず、特に、CD26の細胞質側末端が、既知のシグナルモチーフの構造を有していない6アミノ酸のみからなる点については認識されていなかった。さらに、この短い細胞質側末端が、CD26を介した共刺激に関連するシグナル伝達にとって必要であるかどうかについても明らかではなかった。
そこで、本発明者は、再構成させたCD26-CD10キメラ受容体を用いて、CD26の細胞質側末端が抗CD3モノクローナル抗体(mAb)とcaveolin-1とにより誘導されるT細胞共刺激において、実際に機能していることを明らかにした(図10)。
次に、本発明者は二量体CD26の細胞質側末端と相互作用する近傍のシグナル分子を検討するために、CD26の細胞質側のアミノ酸を含有するFc融合タンパク質を用いてプロテオーム解析を行い、CARMA1が二量体CD26の細胞質側末端に直接結合することを見出した(図11及び12)。さらに、本発明者は、CARMA1内のPDZ領域がCD26との結合に必要であることも明らかにした(図13)。CD26を介した共刺激におけるCARMA1の重要性は、CARMA1欠損Jurkat T細胞株JPM50.6を用いたレスキュー実験によっても確認された(図14)。
これらのことは、細胞質における二量体CD26の細胞質側末端とCARMA1との結合は、CD26を介したT細胞共刺激に必要であり、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質及びCD26の二量体形成を阻害する物質は、T細胞による免疫応答を変化させる可能性があることを示している。
したがって、本発明は、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質のスクリーニング方法を提供する。本スクリーニング方法により得られた物質は、CD26を介した共刺激によるT細胞の活性化を調節し得るため、免疫賦活剤又は免疫抑制剤として有効である。また、本発明は、CD26の二量体形成を阻害する物質のスクリーニング方法を提供する。本スクリーニング方法により得られた物質は、CD26を介した共刺激によるT細胞の活性化を抑制し得るため、免疫抑制剤として有効である。
以下、詳細に本発明を説明する。
2.CD26
本発明において、CD26は、哺乳動物の組織、細胞又は体液(血液、消化液、髄液など)に由来するタンパク質であってもよく、合成タンパク質であってもよい。哺乳動物には、例えば、ヒト、モルモット、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、サルなどが挙げられる。
本発明において使用されるCD26(以下、「本発明のCD26」とも称する)は、例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質であり、好ましくは、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。配列番号2は、ヒト由来のCD26のアミノ酸配列を表す。
配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質は、例えば、配列番号1で示される塩基配列を含むDNAによってコードされる。配列番号1で示される塩基配列は、GenBank accession number:NM_001935に記載されており、また、配列番号2で示されるアミノ酸配列は、GenBank accession number:NP_001926.2に記載されている。
本発明のCD26には、配列番号2で示されるアミノ酸配列に対して90%以上、好ましくは約95%以上、より好ましくは約98%以上の同一性(相同性)を有するアミノ酸配列からなり、かつ、CARMA1への結合活性を有するタンパク質も含まれる。ただし、配列番号2で示されるアミノ酸配列における第750番目のヒスチジンは、CD26の二量体形成に必須のアミノ酸であるため、ヒスチジンに保存される。
ここで、「CARMA1への結合活性」とは、CARMA1、好ましくはCARMA1のPDZ領域に結合する活性を意味する。タンパク質の有するCARMA1への結合活性の強さ(結合親和性)は、特に限定されないが、例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質の有する結合親和性の約10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であればよい。
タンパク質の有するCARMA1への結合活性は、公知の結合アッセイにより測定することができる。例えば、免疫沈降法、BIAcoreを用いた解析方法、プルダウンアッセイ、及びELISA(enzyme linked immuno solvent assay)、ウェスタンブロットなどの免疫化学的方法などを挙げることができる。
また、本発明のCD26には、配列番号2で示されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加され、又はそれらの組合せにより変異されたアミノ酸配列からなり、かつ、CARMA1への結合活性を有するタンパク質も含まれる。ただし、配列番号2で示されるアミノ酸配列における第750番目のヒスチジンは、保存される。
配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加され、又はそれらの組合せにより変異されたアミノ酸配列としては、例えば、(i) 配列番号2で示されるアミノ酸配列中の1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii) 配列番号2で示されるアミノ酸配列中の1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、(iii) 配列番号2で示されたアミノ酸配列に1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iv) 上記(i)〜(iii)の組合せにより変異されたアミノ酸配列などが挙げられる。
配列番号2で示されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が置換される場合、置換前のアミノ酸の性質に似た性質のアミノ酸に置換することが望ましい。
アミノ酸の性質は、例えば、酸性アミノ酸(Asp, Glu)、塩基性アミノ酸(Lys, Arg, His)、中性アミノ酸(Gly, Ala, Val, Leu, Ile, Ser, Thr, Cys, Met, Asn, Gln, Pro, Phe, Tyr, Trp)、脂肪族アミノ酸(Gly, Ala, Val, Leu, Ile, Ser, Thr, Cys, Met, Asn, Gln)、芳香族アミノ酸(Phe, Tyr, Trp)、分枝アミノ酸(Val, Leu, Ile)、含硫アミノ酸(Cys, Met)、酸アミドアミノ酸(Asn, Gln)等に分類することができる。
したがって、例えば、酸性アミノ酸同士、塩基性アミノ酸同士など、性質の似たアミノ酸間の置換は、タンパク質の性質を保持する置換として好ましい。置換されるアミノ酸の数及び部位は特に限定されない。
アミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸に欠失、置換又は付加などの変異の生じたアミノ酸配列をコードするDNAは、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Press(1989))、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons(1987-1997))、Kunkel(1985)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 488-92、Kunkel(1988)Method. Enzymol. 85: 2763-6等に記載の部位特異的変異誘発法等の方法に従って調製することができる。
本発明のCD26の部分ペプチド(以下、「本発明のCD26部分ペプチド」とも称する)は、本発明のCD26の一部であって、本発明のスクリーニング方法に用いることのできるペプチド又はポリペプチドであれば、特に限定されない。例えば、本発明のCD26のうち、細胞質側末端に位置するペプチドであって、CARMA1と結合し得るものを挙げることができる。
本発明のCD26部分ペプチドには、本発明のCD26の細胞質側末端の少なくとも一部の領域が含まれる。細胞質側末端領域は、CD26のN末端に存在する細胞内領域を含む領域であり、例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列のうち第1番目から第6番目の領域を挙げることができる。本発明のCD26部分ペプチドとしては、例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列のうち第1番目から第10番目のアミノ酸配列(以下、「配列番号2(1〜10)で示されるアミノ酸配列」とも称する)からなるポリペプチドを挙げることができる。
また、本発明のCD26部分ペプチドには、配列番号2(1〜10)で示されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加され、又はそれらの組合せにより変異されたアミノ酸配列からなり、かつ、CARMA1への結合活性を有するタンパク質も含まれる。アミノ酸配列における欠失、置換又は付加等の変異の態様は、前述のとおりである。また、本発明のCD26部分ペプチドにおいても、配列番号2で示されるアミノ酸配列における第750番目のアミノ酸が含まれる場合は、当該アミノ酸はヒスチジンに保存される。
配列番号2(1〜10)で示されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が置換される場合、置換前のアミノ酸の性質に似た性質のアミノ酸に置換することが望ましい。置換の態様は前述のとおりである。また、置換されるアミノ酸の数及び部位は特に限定されない。
さらに、本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドは、他のペプチド配列により付加された融合タンパク質であってもよい。付加されるペプチド配列としては、ヒトE-cadherinのシグナルペプチド(hu-ECDSP)、免疫グロブリン定常領域断片(Fcγ1:ヒンジ領域、CH2領域、CH3領域)、インフルエンザ凝集素(HA)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、多重ヒスチジンタグ(6×His、10×His等)、マルトース結合タンパク質(MBP)、V5タグ、c-myc断片、FLAG等のタンパク質の識別を容易にする配列等を選択することができる。本発明において、Fcγ1領域は、免疫グロブリン分子のヒンジ領域、CH2領域及びCH3領域からなる領域を意味する。
本発明のCD26部分ペプチドは、好ましくは、配列番号2(1〜10)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド領域とFcγ1領域との融合タンパク質である。
本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドは、前述した哺乳動物の組織又は細胞から標準的な精製方法によって製造することができる。また、本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドをコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。哺乳動物の組織又は細胞から製造する場合は、哺乳動物の組織又は細胞をホモジナイズした後、クロマトグラフィーなどの公知の方法により単離することができる。
また、本発明のCD26には、配列番号1で示される塩基配列を含むDNAにコードされるタンパク質が挙げられる。本発明のCD26をコードするDNAは、例えば、配列番号1で示される塩基配列を基にプライマー又はプローブを設計し、cDNAライブラリー及びゲノムライブラリーからPCR等の遺伝子増幅技術(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons(1987)Section 6.1-6.4)又はハイブリダイゼーション法により得ることができる。
また、本発明のCD26には、配列番号1で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、CARMA1への結合活性を有するタンパク質も含まれる。
このようなDNAは、配列番号1で示される塩基配列からなるDNA又はその断片をプローブとしてコロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、cDNAライブラリー及びゲノムライブラリーなどから得ることができる。ライブラリーの作製方法については、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Press(1989))等を参照することができる。また、市販のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーを用いてもよい。
本明細書において、ストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーション後の洗浄条件として、例えば、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」、よりストリンジェントな条件としては、例えば、「1×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、50℃」等の条件を挙げることができる。
ハイブリダイゼーションは、公知の方法によって行うことができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons(1987-1997))等を参照することができる。
また、本明細書において、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAには、例えば、配列番号1で示される塩基配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上の同一性(相同性)を有する塩基配列を含むDNAが含まれる。同一性を示す値は、BLASTなどの公知のプログラムを利用することにより算出することができる。
また、配列番号1で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAは、例えば、配列番号1で示される塩基配列において1又は数個の核酸に欠失、置換又は付加などの変異の生じた塩基配列を含むDNAが挙げられる。
ここで、配列番号1で示される塩基配列において1又は数個の核酸に欠失、置換又は付加などの変異の生じた塩基配列としては、例えば、(a) 配列番号1で示される塩基配列中の1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の核酸が欠失した塩基配列、(b) 配列番号1で示される塩基配列中の1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の核酸が他の核酸で置換された塩基配列、(c) 配列番号1で示される塩基配列に1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の核酸が付加した塩基配列、(d) 上記(a)〜(c)の組み合わせにより変異された塩基配列などが挙げられる。
また、本発明のCD26部分ペプチドには、例えば、配列番号1で示される塩基配列中の所定の配列(例えば、配列番号1で示される塩基配列の第1番目から第18番目まで又は第1番目から第30番目までの塩基配列)を含むDNAにコードされるタンパク質が挙げられる。また、本発明のCD26部分ペプチドには、配列番号1で示される塩基配列中の所定の配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、CARMA1への結合活性を有するタンパク質も含まれる。
本発明のCD26部分ペプチドをコードするDNAは前記と同様に取得することができる。また、「相補的な塩基配列からなるDNA」は前述と同様の意味であり、ストリンジェントな条件及びハイブリダイゼーションの方法は、前述の方法と同様に実施することができる。
塩基配列に変異を導入するには、Kunkel法やGapped duplex法等の部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuikChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。
本発明において、塩基配列の確認は、慣用の方法で配列決定することにより行うことができる。例えば、ジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーション法(Sanger et al.(1977)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463)等により行うことができる。また、適当なDNAシークエンサーを利用して配列を解析することも可能である。
本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドは、例えば、本発明のCD26又は本発明の部分ペプチドをコードするDNAを含む組換えベクターを用いて発現させることができる。このような発現ベクターは、例えば、本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドをコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、得られたDNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターへのDNAの挿入は、リガーゼ反応、トポイソメラーゼ反応等を利用することができる。例えば、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、得られた断片をベクター中の適当な制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入することでベクターに連結する方法などが採用される。
本発明で使用されるベクターは、本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドを発現し得る限り、その基本となるベクターの由来には限定されず、例えば、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルスもしくはバキュロウイルスなどの無毒化した動物又は昆虫ウイルスを使用することができる。また、例えば、pEB-CAGベクター、pCDNA4ベクター又はpEF6ベクターなどの市販のベクターを使用することもできる。
また、本発明で使用されるベクターは、本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドを発現させ得る限り、マルチクローニングサイト、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、シグナルペプチドカセット、選択マーカーカセットなどを含んでいてもよい。また、DNAを挿入する際に必要であれば、適宜リンカーを付加してもよい。
プロモーターは、本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドをコードするDNAの上流に組み込むことができる。プロモーターは、宿主において本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドを適切に発現できるものであれば、特に限定させないが、例えば、trpプロモーター、lacプロモーター、CMVプロモーター、EF1αプロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、CAGプロモーター等を使用することができる。
ターミネーターは、本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドをコードするDNAの下流に組み込むことができる。
シグナルペプチドとしては、例えば、ヒトE-cadherinのシグナルペプチド(huECDSP)を用いることができる。
選択マーカーとしては、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子などの薬剤耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、蛍光タンパク質、mycなどのタグタンパク質などを挙げることができる。
また、本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドの発現ベクターには、SD配列、Kozak配列を含有させることができる。これらの配列は、本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドをコードするDNAの5’末端に挿入してベクターに組み込んでもよいし、PCR法で前記DNAに付加してベクターに組み込んでもよい。
このように作製した本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドの発現ベクターを宿主に導入することで、形質転換体を作製することができる。このような形質転換体も本発明の範囲に含まれる。
本発明において使用される宿主は、本発明のベクターが導入された後、目的のタンパク質を発現することができる限り特に限定されるものではないが、例えば、大腸菌、枯草菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などが挙げられる。当業者であれば、本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドの発現ベクターに適した宿主を選択することができる。
本発明のスクリーニング方法には、宿主細胞として動物細胞を用いることが好ましい。
大腸菌としては、例えば、K12株、JM109株、XL1-Blue株などを挙げることができる。これら菌株は、例えば、アメリカン・タイプカルチャー・コレクション(ATCC)などから容易に入手することができる。枯草菌としては、例えば、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などが挙げられる。酵母としては、例えば、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)等が用いられる。動物細胞としては、COS-7、CHO細胞、Hela細胞、293細胞、HEK293FT細胞、Jurkat T細胞、JPM50.6細胞、300-19マウス前駆B細胞等が用いられる。昆虫細胞としては、Sf9細胞、Sf21細胞等が用いられる。
宿主へのベクターの導入方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAE デキストラン法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等の公知の方法が挙げられる。また、ベクターがウイルスベクターの場合は、宿主細胞を培養し、培養液にウイルスベクターを添加し、さらに培養することで遺伝子を導入することができる。
例えば、宿主細胞に動物細胞を用いる場合は、リポフェクション法で遺伝子を導入することが好ましい。
以上の方法により、本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドをコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
本発明の形質転換体は、一過性に形質転換されたものでもよいし、安定的に形質転換されたものでもよい。安定的な形質転換体は、薬剤マーカーの発現や、目的タンパク質の発現を指標に用いて、形質転換体から選択することができる。
本発明の形質転換体を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法にしたがって行うことができる。培養培地は、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地が望ましく、当業者であれば公知の培地から適宜選択することができる。
例えば、宿主が動物細胞の場合は、DMEM、MEM、RPMI、F12、AIM-V等の培地を用いて、必要であれば血清、アミノ酸、グルコース、抗生物質などを添加することができる。特に、動物細胞がHEK293FT細胞の場合は、培養培地としてFreeStyleTM293Expression Mediumを用いることが好ましい。
形質転換体の培養条件は、特に限定されないが、10℃〜45℃、好ましくは、10℃〜40℃の温度下で、5〜120時間、好ましくは5〜100時間程度行う。また、必要に応じて、培地の交換、通気、撹拌を行うこともできる。特に、浮遊動物細胞を培養する場合は、振盪培養を行ってもよい。
以上のようにして、形質転換体に本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドを生成させることができる。本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドは、本発明の形質転換体の培養物から取得することができる。
本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドを培養菌体又は細胞から抽出する場合は、培養後、公知の方法で菌体又は細胞を集め、適当な緩衝液に懸濁した後、超音波、凍結破砕などによって菌体又は細胞を破壊し、遠心分離、ろ過などの方法により膜画分を取得することができる。そして、得られた膜画分を適当な界面活性剤で処理することにより、本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドを可溶化することができる。あるいは、使用目的によっては、膜画分をそのまま使用することができる。
本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドをFcγ1との融合タンパク質として発現させる場合は、当該融合タンパク質は可溶性タンパク質として発現するため、培養物に由来する可溶性画分又は培養上清から取得することができる。
本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドを培養菌体又は細胞から抽出する場合は、培養後、公知の方法で菌体又は細胞を集め、適当な緩衝液に懸濁した後、超音波、凍結破砕などによって菌体又は細胞を破壊し、遠心分離、ろ過などの方法により可溶性画分を取得することができる。そして、得られた可溶性画分から、公知のタンパク質精製方法を適宜組み合わせて本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドを精製することができる。公知のタンパク質精製方法としては、例えば、透析法、硫酸アンモニア沈殿法、限外ろ過法、ゲルろ過法、SDS-PAGE、又はイオンクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー若しくは逆相クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを利用した方法などが挙げられる。
また、本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドを培養上清から取得する場合も、上記のタンパク質精製方法により精製することができる。
3.CARMA1
CARMA1は、caspase recruitment domain-containing membrane-associated guanylate kinase protein-1と称するタンパク質である。本発明のCARMA1の由来は、特に限定されることはなく、哺乳動物の組織、細胞又は体液(血液、消化液、髄液など)に由来することができる。
本発明で使用されるCARMA1(以下、「本発明のCARMA1」とも称する)は、例えば、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質であり、好ましくは、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。配列番号4は、ヒト由来CARMA1のアミノ酸配列を表す。
配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、例えば、配列番号3で示される塩基配列を含むDNAによってコードされる。配列番号3で示される塩基配列は、GenBank accession number:NM_032415に記載されており、また、配列番号4で示されるアミノ酸配列は、GenBank accession number:NP_115791.2に記載されている。
本発明のCARMA1には、配列番号4で示されるアミノ酸配列に対して90%、好ましくは約95%以上、より好ましくは約97%以上の同一性(相同性)を有するアミノ酸配列からなり、かつ、CD26への結合活性を有するタンパク質も含まれる。
ここで、「CD26への結合活性」とは、CD26、好ましくはCD26の細胞質側末端領域に結合する活性を意味する。タンパク質の有するCD26への結合活性の強さ(結合親和性)は、特に限定されないが、例えば、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質の有する結合親和性の約10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であればよい。
タンパク質の有するCD26への結合活性は、公知の結合アッセイにより測定することができる。例えば、免疫沈降法、BIAcoreを用いた解析方法、プルダウンアッセイ、及びELISA(enzyme linked immuno solvent assay)、ウェスタンブロットなどの免疫化学的方法などを挙げることができる。
また、本発明のCARMA1には、配列番号4で示されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加され、又はそれらの組合せにより変異されたアミノ酸配列からなり、かつ、CD26への結合活性を有するタンパク質も含まれる。
アミノ酸配列における欠失、置換、若しくは付加の変異の態様は、前述のとおりである。
なお、本発明者により、CARMA1におけるCD26との結合部位は、配列番号4に示されるアミノ酸配列において第660番から第742番のPDZ領域に位置することが示された。従って、本発明のスクリーニング方法において、CD26とCARMA1との結合量を測定する場合は、CARMA1として、PDZ領域を含むCARMA1の部分タンパク質、例えば、配列番号4に示されるアミノ酸配列において第1番目から第742番目のアミノ酸配列からなるタンパク質を使用することができる。
配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が置換される場合、置換前のアミノ酸の性質に似た性質のアミノ酸に置換することが望ましい。置換の態様は前述のとおりである。また、置換されるアミノ酸の数及び部位は特に限定されない。
配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸に欠失、置換又は付加などの変異の生じたアミノ酸配列をコードするDNAは、前述のように調製することができる。
さらに、本発明のCARMA1は、他のペプチド配列により付加された融合タンパク質であってもよい。付加されるペプチド配列としては、免疫グロブリン定常領域断片(Fcγ1:ヒンジ領域、CH2領域、CH3領域)、インフルエンザ凝集素(HA)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、多重ヒスチジンタグ(6×His、10×His等)、マルトース結合タンパク質(MBP)、V5タグ、c-myc断片、FLAG等のタンパク質の識別を容易にする配列等を選択することができる。
本発明のCARMA1は、前述した哺乳動物の組織又は細胞から標準的な精製方法によって製造することができる。また、本発明のCARMA1をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。哺乳動物の組織又は細胞から製造する場合は、哺乳動物の組織又は細胞をホモジナイズした後、クロマトグラフィーなどの公知の方法により単離することができる。
また、本発明のCARMA1には、配列番号3で示される塩基配列を含むDNAにコードされるタンパク質が挙げられる。また、本発明のCARMA1には、配列番号3で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、CD26への結合活性を有するタンパク質も含まれる。
本発明のCARMA1をコードするDNAは、前述のCD26をコードするDNAと同様に取得することができる。また、「相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」は前述と同様の意味であり、ストリンジェントな条件及びハイブリダイゼーションの方法は、前述の方法と同様に実施することができる。
本発明のCARMA1は、例えば、本発明のCARMA1をコードするDNAを含むベクターを用いて発現させることができる。このような発現ベクターは、例えば、本発明のCARMA1をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、得られたDNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。ベクターへのDNAの挿入方法は、上記のとおりである。
本発明で使用されるベクター並びにベクターに含有されるプロモーター及び選択マーカーなどは、上記のとおりである。
本発明のCARMA1の発現ベクターを宿主に導入することで、形質転換体を作製することができる。このような形質転換体も本発明の範囲に含まれる。
本発明において使用される宿主、宿主へのベクターの導入方法、形質転換体の培養方法等は、前述のとおりである。また、形質転換体からの本発明のCARMA1の生成方法及び取得、精製方法も前述のとおりである。
4.CD26とCARMA1との結合を変化させる物質のスクリーニング方法
本発明は、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質のスクリーニング方法(以下、「本発明のスクリーニング方法」とも称する)を提供する。
前述のように本発明のCD26は、caveolin-1によるT細胞共刺激シグナルをCARMA1との結合を介して細胞内に伝達する。したがって、本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドと、本発明のCARMA1との結合アッセイを用いることにより、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質をスクリーニングすることができる。
本発明のスクリーニング方法は、被験物質存在下又は非存在下において、本発明のCD26及び本発明のCARMA1を接触させることにより行われる。あるいは、本発明のCD26部分ペプチド及び本発明のCARMA1とを接触させることにより行われる。
具体的には、本発明のスクリーニング方法は、(i) 被験物質存在下でCD26とCARMA1とを接触させた場合と、(ii) 被験物質非存在下でCD26とCARMA1とを接触させた場合の、CD26とCARMA1との結合量、T細胞増殖活性又はNF-κB活性を測定し、比較することにより行う。
被験物質としては、例えば、ペプチド、タンパク質、抗体、低分子化合物、高分子化合物、発酵生産物、細胞抽出液、組織抽出液、体液などを挙げることができる。
本発明のスクリーニング方法で使用する本発明のCD26としては、末梢血T細胞に含有されるCD26を用いることが好ましい。あるいは、細胞にCD26をコードするDNAを導入することにより発現させたCD26を用いることが好ましい。
CD26を発現させた細胞は、前述のように調製することができる。
本発明のスクリーニング方法において、CD26は、細胞に発現された状態、当該細胞の膜画分の状態、又は精製された状態で使用することができる。膜画分は、細胞を破砕した後、細胞膜の多くが存在する画分である。細胞の破砕は、ホモジナイザーなどを用いた破砕、超音波破砕、浸透圧差による破砕などの方法を採用することができる。また、本発明のCD26を含有する細胞は、公知の方法で固定化してもよい。
本発明のスクリーニング方法で使用する本発明のCD26部分ペプチドとしては、本発明の形質転換体から採取されるものが好ましい。本発明の形質転換体からの本発明のCD26部分ペプチドの取得方法は前述のとおりである。
本発明のCARMA1は、T細胞などの細胞に含有されるCARMA1を使用してもよいし、細胞にCARMA1をコードするDNAを導入することにより発現させたCARMA1を使用してもよい。
本発明のCD26、本発明のCD26部分ペプチド及び本発明のCARMA1は、前述のとおり、タグタンパク質を含有させた融合タンパク質であってもよいが、タグタンパク質を含有することにより、CD26とCARMA1との結合が阻害されないことが好ましい。
CD26とCARMA1とは、両者を同一反応系に存在させることによって接触させることができる。
CD26とCARMA1とは、両者を同一の細胞に存在させることによって接触させることが好ましい。接触には、例えば、CD26とCARMA1とを内因性に発現する細胞、CARMA1を内因性に発現する細胞にCD26を遺伝子導入によって外因性に発現させた細胞、又はCD26及びCARMA1の両方を遺伝子導入によって外因性に発現させた細胞を用いることができる。CD26とCARMA1が同一の細胞に存在する場合、被験物質はこの細胞の培養液に添加すればよい。
CD26とCARMA1との結合量の測定には、当該細胞を回収及び溶解し、得られた溶解液を反応溶液として使用することができる。T細胞増殖活性の測定には、当該細胞を使用することができる。NF-κB活性の測定には、回収した細胞から核タンパク質を含む画分を抽出し、得られた画分を反応試料として使用することができる。
また、上記の接触態様に加えて、CD26とCARMA1とは、あらかじめ発現または合成したものを混合することによって接触させることができる。例えば、本発明の形質転換体から取得したCD26部分ペプチドと、CARMA1発現細胞の溶解液とを混合することにより、CD26とCARMA1とを接触させることができる。被験物質は、前記混合溶液に添加すればよい。CD26とCARMA1との結合量の測定には、この混合溶液を反応溶液として使用することができる。
CD26とCARMA1との結合量を測定する場合、CD26とCARMA1との接触時間は、特に限定されるわけではないが、例えば2〜30分、好ましくは5〜20分である。
本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドと、本発明のCARMA1との結合量は、免疫沈降法、プルダウンアッセイ、BIAcoreを用いたアッセイ、及びELISA(enzyme linked immuno solvent assay)、ウェスタンブロットなどの免疫化学的方法により測定することができる。
免疫沈降法は、具体的には、本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドと、本発明のCARMA1とを接触させた後、反応溶液から抗CD26抗体又は抗CD26部分ペプチド抗体を用いてCD26又はCD26部分ペプチドを含む複合体を免疫沈降させる。次に、免疫沈降複合体中のCARMA1を、抗CARMA1抗体を用いて検出する。
あるいは、免疫沈降と検出に用いる抗体を入れ替えてもよい。つまり、前記反応溶液から、抗CARMA1抗体を用いてCARMA1を含む複合体を免疫沈降させ、次に、免疫沈降複合体中のCD26又はCD26部分ペプチドを、抗CD26抗体又は抗CD26部分ペプチド抗体を用いて検出する。
本発明のCD26、本発明のCD26部分ペプチド又は本発明のCARMA1が、タグタンパク質を含有する場合は、抗CD26抗体、抗CD26部分ペプチド抗体又は抗CARMA1抗体のかわりに、タグタンパク質に対する抗体を使用してもよい。
免疫沈降複合体中の目的タンパク質を検出するには、免疫沈降複合体をSDS-PAGEで分離し、ウェスタンブロットすればよい。
プルダウンアッセイでは、本発明のCD26部分ペプチドとCARMA1との結合を検出することができる。
本発明のCD26部分ペプチドは、CARMA1と結合し得るため、CARMA1と接触させることにより、CARMA1と結合し、複合体を形成する。使用するCD26部分ペプチドには、Fcγ1との融合タンパク質を用いることが可溶性の点から好ましい。形成した複合体を、CD26部分ペプチドに対する抗体、Fcγ1に対する抗体又はプロテインA若しくはプロテインGを用いて回収する。回収した複合体をSDS-PAGEで分離し、CARMA1をウェスタンブロットにより検出する。
本発明のCD26部分ペプチドとしてFcγ1との融合タンパク質を用いる場合は、Fcγ1を含有しないCD26部分ペプチドを、CD26とCARMA1との結合を阻害する物質として使用することができる。
BIAcoreを用いたアッセイでは、チップ上のタンパク質とチップ上を流れる溶液中のタンパク質が接触し、両タンパク質が結合すると、BIAcore装置によりその結合量が測定される。したがって、BIAcoreを用いたアッセイでは、CD26とCARMA1との接触及び結合量の検出を同時に行うことができる。
BIAcoreを用いたアッセイは、BIAcoreセンサーチップ表面に本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドを固定化させた後、チップ表面に本発明のCARMA1を含有する溶液、又は被験物質及び本発明のCARMA1を含有する溶液を流すことにより行うことができる。あるいは、BIAcoreセンサーチップ表面に本発明のCARMA1を固定化させた後、チップ表面に本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドを含有する溶液、又は被験物質及び本発明のCD26又は本発明のCD26部分ペプチドを含有する溶液を流すことにより行うことができる。
T細胞増殖活性及びNF-κB活性を測定して、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質のスクリーニングを行うには、細胞がCD26を介したT細胞共刺激されることにより、T細胞増殖活性又はNF-κB活性が上昇する細胞を用いる必要がある。このような細胞としては、末梢血T細胞又はCD26及びCARMA1を内因性又は外因性に発現するT細胞に由来する細胞をあげることができる。T細胞は基本的にCARMA1を内因性に含有する。T細胞増殖活性及びNF-κB活性を測定する場合に使用する細胞としては、具体的には、末梢血T細胞、T細胞由来の細胞、CD26を発現させたT細胞由来の細胞、CARMA1を欠損したT細胞由来の細胞にCARMA1を発現させた細胞、又はCARMA1を欠損したT細胞由来の細胞にCD26及びCARMA1を発現させた細胞などがあげられる。
T細胞増殖活性及びNF-κB活性を測定するには、まず、細胞を抗CD3抗体及びcaveolin-1で24〜200時間、好ましくは36〜120時間、より好ましくは48〜96時間共刺激する。共刺激に用いる抗CD3抗体及びcaveolin-1は、プレートに固相化してもよいし、培養液中に添加してもよい。
共刺激に用いる抗CD3抗体は、例えば、OKT3などの抗CD3モノクローナル抗体(mAb)を使用することができる。
また、共刺激に用いるcaveolin-1は、caveolin-1の骨格領域(SCD)の全部又は一部を含有する領域と、Fcγ1領域との融合タンパク質を使用することができる。さらに、共刺激にはcaveolin-1のかわりに、抗CD26抗体を使用してもよい。抗CD26抗体としては、例えば、IF7などの抗CD26mAbを使用することができる。OKT3及びIF7は、Kung et al 1979、Morimoto et al., 1989に記載されている。
被験物質は、共刺激時の細胞培養液に含有させることができる。
T細胞増殖活性を測定する場合は、共刺激に続き、放射ラベルしたチミジン(例えば、[3H]-TdR)を培養液中に添加し、さらに5〜24時間、好ましくは8〜16時間培養する。培養後のチミジンの取り込み量をシンチレーションカウンターで測定することにより、T細胞増殖活性を確認することができる。被験物質は、チミジンの添加前、添加時又は添加後に培養液に加えればよいが、チミジンの添加前、つまり共刺激時に加えることが好ましい。
NF-κB活性を測定する場合は、共刺激した細胞を回収し、核タンパク質を含む画分を抽出する。そして、この画分を用いて、活性型のp65又はp50の量をELISAにより検出する。p65又はp50は、NF-κBの構成タンパク質である。
具体的には、活性型のp65又はp50に特異的に結合する二本鎖DNAを結合させたプレートに、共刺激した細胞由来の核タンパク質画分を添加する。この画分中の活性型のp65又はp50はプレート上のDNAと結合し、結合したp65又はp50を抗p65抗体又は抗p50抗体により検出する。NF-κB活性は、Mercury TransFactor Kits(BD Biosciences)などの市販のキットを用いて実施することもできる。
NF-κB活性を測定する場合は、被験物質は、共刺激時に培養液に添加することが好ましい。
末梢血T細胞は、例えば、ヘルパーT細胞を使用することができる。本発明のスクリーニング方法で使用される末梢血T細胞は、CD26の発現、CD4の発現、IFN-γの産生といった特徴を有する細胞である。したがって、末梢血T細胞は、末梢血から、CD26の発現、CD4の発現、IFN-γの発現等を指標にして、フローサイトメトリーにより取得することができる。また、末梢血T細胞は、末梢血単球細胞からMACS Pan T細胞単離キット(Miltenyi, Auburn, CA)を用いて精製することもできる。
本発明のCD26とCARMA1との結合を変化させる物質のスクリーニング方法のより具体的な態様を以下に例示する。
(1)本発明のCD26及び本発明のCARMA1の両方を内因的に発現している末梢血T細胞を用いて、被験物質の存在下及び被験物質の非存在下でのCD26とCARMA1との結合量を測定することを含む、スクリーニング方法。
本態様では、末梢血T細胞で内因的に発現するCD26とCARMA1とを接触させる。つまり、本態様では、末梢血T細胞に内因的に存在するCD26及びCARMA1を、本発明のCD26及び本発明のCARMA1として使用する。
例えば、被験物質を末梢血T細胞の培養液に添加する。細胞を所定の時間培養した後、細胞を回収し、当該細胞の溶解液におけるCD26とCARMA1との結合量を測定する。一方で、被験物質を添加しない場合の前記結合量を測定する。
結合量は、例えば、末梢血T細胞を回収して溶解し、得られる溶解液を抗CD26抗体を用いて免疫沈降する。続いて、免疫沈降複合体を電気泳動し、複合体中のCARMA1を抗CARMA1抗体を用いて検出することにより、測定することができる。被験物質を存在させた場合と存在させない場合の結合量を比較することで、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質を同定する。
(2)(i) 被験物質存在下で、細胞に発現させた本発明のCD26に、本発明のCARMA1を接触させた場合と、(ii) 被験物質非存在下で、細胞に発現させた本発明のCD26に、本発明のCARMA1を接触させた場合とにおける、CD26とCARMA1との結合量を測定することを含む、スクリーニング方法。
本態様では、CD26を発現していない細胞又はCD26の発現量の少ない細胞にCD26を強制発現させた細胞を用いて、スクリーニング方法を実施する。つまり、CARMA1と接触するCD26は、細胞に強制発現させたCD26である。
本発明のCD26を発現させる細胞としては、CD26を発現できる細胞であれば特に限定されないが、本発明のCARMA1を内因的に含有する細胞を使用することが好ましい。本発明のCARMA1を含有する細胞としては、例えば、T細胞由来の細胞を挙げることができ、好ましくは、Jurkat T細胞である。
また、本発明のCARMA1としては、Jurkat T細胞などのT細胞由来の細胞で内因的に発現するものを使用することができる。
例えば、CD26を発現させたT細胞由来の細胞の培養液に被験物質を添加する。細胞を所定の時間培養した後、細胞を回収し、本細胞の溶解液におけるCD26とCARMA1との結合量を測定する。一方で、被験物質を添加しない場合の前記結合量を測定する。
結合量は、例えば、当該T細胞を回収して溶解し、得られる溶解液を抗CD26抗体を用いて免疫沈降する。続いて、免疫沈降複合体を電気泳動し、複合体中のCARMA1を抗CARMA1抗体を用いて検出することにより、測定することができる。また、発現させたCD26がタグタンパク質を含有する場合は、タグタンパク質に対する抗体を用いて免疫沈降してもよい。被験物質を存在させた場合と存在させない場合の結合量を比較することで、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質を同定する。
(3)本発明のCD26及び本発明のCARMA1を発現させた細胞を用いて、被験物質存在下及び被験物質非存在下での、CD26とCARMA1との結合量を測定することを含む、スクリーニング方法。
本態様では、CD26及びCARMA1を強制発現させた細胞を用いて本発明のスクリーニング方法を実施する。
CD26及びCARMA1を発現させる細胞としては、内因的にCD26及びCARMA1を発現していない細胞、又はCD26及びCARMA1を発現しているものの、その発現量が本スクリーニング方法を実施するのに十分でない細胞が挙げられる。例えば、293細胞又はCARMA1を欠損したJurkat T細胞(JPM50.6細胞)を使用することができる。
例えば、被験物質をCD26及びCARMA1を発現させた細胞の培養液に添加する。細胞を所定の時間培養した後、細胞を回収し、当該細胞の溶解液におけるCD26とCARMA1との結合量を測定する。一方で、被験物質を添加しない場合の前記結合量を測定する。
結合量は、例えば、当該細胞を回収して溶解し、得られる溶解液を抗CD26抗体で免疫沈降する。続いて、免疫沈降複合体を電気泳動し、複合体中のCARMA1を抗CARMA1抗体で検出することにより、測定することができる。前述のように、発現させたCD26及び/又はCARMA1がタグタンパク質を含有する場合は、タグタンパク質に対する抗体を用いて免疫沈降、検出をしてもよい。被験物質を存在させた場合と存在させない場合の結合量を比較することで、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質を同定する。
また、発現させる本発明のCARMA1は、PDZ領域を含有するCARMA1の部分タンパク質でもよい。
(4)(i) 被験物質存在下で本発明のCARMA1を本発明のCD26部分ペプチドに接触させた場合と、(ii) 被験物質非存在下で本発明のCARMA1を本発明のCD26部分ペプチドに接触させた場合とにおける、CD26とCARMA1との結合量を測定することを含む、スクリーニング方法。
本態様では、本発明のCD26部分ペプチドを用いて、CD26とCARMA1との結合量をプルダウンアッセイやBIAcoreなどの方法を用いて測定する。
本態様で使用するCD26部分ペプチドとしてFcγ1との融合タンパク質を用いることが、操作の簡便性の点から好ましい。
また、本態様で使用するCARMA1は特に限定されず、細胞が内因性に発現するCARMA1、CARMA1をコードするDNAを導入して細胞に発現させたCARMA1、又は本発明の形質転換体から取得したCARMA1のいずれも使用することができる。
例えば、(i) CARMA1を含有する細胞の溶解液又はCARMA1を含有する溶液に、被験物質と本発明のCD26部分ペプチドを添加する。また一方で、(ii) CARMA1を含有する細胞の溶解液又はCARMA1を含有する溶液に、本発明のCD26部分ペプチドを添加する。(i)及び(ii)におけるCD26とCARMA1との結合量を、プルダウンアッセイ又はBIAcoreにより測定する。被験物質を存在させた場合と存在させない場合の結合量を比較することで、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質を同定する。
(5)本発明のCD26及び本発明のCARMA1の両方を内因的に発現している末梢血T細胞を用いて、被験物質の存在下及び被験物質の非存在下でのT細胞増殖活性又はNF-κB活性を測定することを含む、スクリーニング方法。
本態様では、CD26を介してT細胞を共刺激した場合のT細胞増殖活性又はNF-κB活性を測定する。また、本態様では、末梢血T細胞で内因的に発現するCD26とCARMA1とを接触させる。
例えば、末梢血T細胞を共刺激する際に、(i) 末梢血T細胞を、被験物質を添加した培養液中で培養する。また一方では、末梢血T細胞を共刺激する際に、(ii) 末梢血T細胞を、被験物質を添加しない培養液中で培養する。この(i)と(ii)の末梢血T細胞におけるT細胞増殖活性又はNF-κB活性を測定する。
被験物質を存在させた場合と存在させない場合のT細胞増殖活性又はNF-κB活性を比較することで、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質を同定する。
(6)(i) 被験物質存在下で、細胞に発現させた本発明のCD26に、本発明のCARMA1を接触させた場合と、(ii) 被験物質非存在下で、細胞に発現させた本発明のCD26に、本発明のCARMA1を接触させた場合とにおける、T細胞増殖活性又はNF-κB活性を測定することを含む、スクリーニング方法。
本態様では、CD26を介してT細胞を共刺激した場合のT細胞増殖活性又はNF-κB活性を測定する。また、本態様では、CARMA1と接触するCD26は、細胞に強制発現させたCD26である。
本発明のCD26を発現させる細胞としては、T細胞由来の細胞を使用する。T細胞由来の細胞としては、本発明のCARMA1を含有する細胞を挙げることができ、好ましくは、Jurkat T細胞又はCARMA1の遺伝子を導入したCARMA1欠損Jurkat T細胞(JPM50.6細胞)である。
また、本発明のCARMA1としては、Jurkat T細胞などのT細胞由来の細胞で発現するCARMA1を使用する。あるいは、CARMA1欠損Jurkat T細胞に発現させたCARMA1を使用する。
例えば、CD26を発現させたT細胞を共刺激する際に、(i) T細胞を、被験物質を添加した培養液中で培養する。また一方では、T細胞を共刺激する際に、(ii) T細胞を、被験物質を添加しない培養液中で培養する。この(i)と(ii)のT細胞におけるT細胞増殖活性又はNF-κB活性を測定する。
被験物質を存在させた場合と存在させない場合のT細胞増殖活性又はNF-κB活性を比較することで、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質を同定する。
本態様においては、CD26を発現させた細胞として、CD26及びCARMA1を発現させたJPM50.6細胞を使用してもよい。
また、本発明は、CD26とCARMA1とを含有する、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質のスクリーニング用キットを含有する。
本発明のスクリーニング用キットに含有されるCD26は、本発明のCD26、本発明のCD26部分ペプチド、本発明のCD26を発現する細胞又は本発明のCD26部分ペプチドを発現する細胞が含まれる。また、本発明のスクリーニング用キットに含有されるCARMA1は、本発明のCARMA1又は本発明のCARMA1を発現する細胞が含まれる。
本発明のスクリーニング用キットには、本発明のスクリーニング方法で用いる緩衝液、試薬若しくは容器、又は取扱説明書などをさらに含有させてもよい。
本発明のスクリーニング方法又はスクリーニング用キットを用いて選択される物質は、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質である。つまり、CD26とCARMA1との結合を促進又は阻害する物質である。このような物質はT細胞共刺激シグナルを制御することができるため、T細胞による免疫応答を調節することができる。CD26を発現するT細胞はTH1細胞に分化するため、本発明のスクリーニング方法又はスクリーニング用キットにより選択される物質は、TH1タイプのT細胞を介した免疫応答を調節することができる。
被験物質非存在下に比べてCD26とCARMA1との結合を促進する物質は、T細胞共刺激活性を上昇させ、免疫応答を活性化するため、免疫賦活剤の有効成分として有用である。具体的には、CD26とCARMA1との結合を促進する物質は、TH1を介した癌免疫療法における免疫賦活反応の誘導のために有用である。例えば、本発明のスクリーニング方法において、CD26とCARMA1との結合を促進する物質は、悪性腫瘍又は悪性中皮腫に対する治療剤として有用である。
一方、被験物質非存在下に比べてCD26とCARMA1との結合を阻害する物質は、T細胞共刺激シグナルをT細胞内に伝達せず、免疫応答を抑制するため、免疫抑制剤の有効成分として有用である。具体的には、CD26とCARMA1との結合を阻害する物質は、TH1を介した自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、グレーブス病及び多発性硬化症)、移植時の拒絶反応、急性若しくは慢性移植片対宿主病、又はアテローム性動脈硬化症、血管炎症候群、閉塞性動脈硬化症、心筋梗塞若しくは脳梗塞の治療に有用である。
5.CD26の二量体形成を阻害する物質のスクリーニング方法
本発明は、CD26の二量体形成を阻害する物質のスクリーニング方法(以下、「本発明の方法」とも称する)を提供する。
CD26がCARMAにT細胞共刺激シグナルを伝達するには、CD26の細胞質側領域が二量体を形成することが必要である。したがって、本発明の方法により選択される物質は、T細胞共刺激シグナルの伝達を阻害するため、免疫応答を抑制することができる。すなわち、被験物質非存在下に比べて、CD26の二量体形成を阻害する物質は、T細胞による免疫応答を抑制するために免疫抑制剤として有用である。
本発明の方法は、細胞に発現させたCD26に被験物質を接触させることにより行われる。具体的には、本発明の方法は、T細胞共刺激存在下において、(i) 細胞に発現させたCD26に被験物質を接触させた場合と、(ii) 細胞に発現させたCD26に被験物質を接触させない場合との、SDS-PAGE解析を行い、あるいはT細胞増殖活性又はNF-κB活性を測定し、その結果を比較することにより行う。
被験物質としては、例えば、ペプチド、タンパク質、抗体、低分子化合物、高分子化合物、発酵生産物、細胞抽出液、組織抽出液、体液などを挙げることができる。
SDS-PAGE解析は、2−メルカプトエタノールなどの還元剤の非存在下で細胞溶解液を調製し、調製した溶解液をSDS-PAGEで分離することにより行うことができる。細胞溶解液から、あらかじめ粗精製したCD26溶解液をSDS-PAGE解析してもよい。泳動時の二量体CD26の分子量は約160〜200kDaであり、単量体CD26の分子量は約100〜110kDaである。分子量により、二量体を形成したCD26を検出することができる。
また、T細胞増殖活性及びNF-κB活性の測定は、前述と同様に行うことができる。
本発明の方法の具体的な態様を以下に例示する。
(1)本発明のCD26及び本発明のCARMA1の両方を内因的に発現している末梢血T細胞を用いて、被験物質の存在下及び被験物質の非存在下でSDS-PAGE解析を行い、あるいはT細胞増殖活性又はNF-κB活性を測定することにより、CD26の二量体形成を阻害する物質をスクリーニングする。
本態様では、CD26を介してT細胞を共刺激した場合のSDS-PAGE解析を行い、または、T細胞増殖活性又はNF-κB活性を測定する。さらに、本態様は、末梢血T細胞が本来有しているT細胞共刺激シグナル伝達系を用いて、CD26の二量体形成を阻害する物質をスクリーニングするものである。
例えば、末梢血T細胞を共刺激する際に、(i) 末梢血T細胞を、被験物質を添加した培養液中で培養する。また一方では、末梢血T細胞を共刺激する際に、(ii) 末梢血T細胞を、被験物質を添加しない培養液中で培養する。この(i)と(ii)の末梢血T細胞に由来する細胞溶解液を用いてSDS-PAGE解析する。あるいは、この(i)と(ii)の末梢血T細胞におけるT細胞増殖活性又はNF-κB活性を測定する。
被験物質を存在させた場合と存在させない場合のSDS-PAGE解析結果、あるいはT細胞増殖活性又はNF-κB活性を比較することで、CD26の二量体形成を阻害する物質を同定する。
(2)(i) 細胞に発現させた本発明のCD26に被験物質を接触させた場合と、(ii) 細胞に発現させた本発明のCD26に被験物質を接触させない場合とにおける、SDS-PAGE解析を行い、あるいはT細胞増殖活性又はNF-κB活性を測定することにより、CD26の二量体形成を阻害する物質をスクリーニングすることができる。
本態様では、CD26を介してT細胞を共刺激した場合のSDS-PAGE解析を行い、あるいはT細胞増殖活性又はNF-κB活性を測定する。また、本態様では、細胞に強制発現させたCD26を本発明のCD26として用いる。
本発明のCD26を発現させる細胞としては、T細胞由来の細胞を使用する。T細胞由来の細胞としては、本発明のCARMA1を含有する細胞を挙げることができ、好ましくは、Jurkat T細胞又はCARMA1をコードするDNAを導入したCARMA1欠損Jurkat T細胞(JPM50.6細胞)である。
例えば、CD26を発現させたT細胞由来の細胞を共刺激する際に、(i) 細胞を、被験物質を添加した培養液中で培養する。また一方では、CD26を発現させたT細胞由来の細胞を共刺激する際に、(ii) 細胞を、被験物質を添加しない培養液中で培養する。この(i)と(ii)のT細胞に由来する細胞溶解液を用いてSDS-PAGE解析する。あるいは、この(i)と(ii)のT細胞におけるT細胞増殖活性又はNF-κB活性を測定する。
被験物質を存在させた場合と存在させない場合のSDS-PAGE解析結果、T細胞増殖活性又はNF-κB活性を比較することで、CD26の二量体形成を阻害する物質を同定する。
本態様においては、CD26を発現させた細胞として、CD26及びCARMA1を発現させたJPM50.6細胞を使用してもよい。
また、本発明は、CD26を含有する、CD26の二量体形成を阻害する物質のスクリーニング用キットを含有する。
本発明のCD26の二量体形成を阻害する物質のスクリーニング用キットに含有されるCD26は、本発明のCD26又は本発明のCD26を発現する細胞である。
本発明のスクリーニング用キットには、緩衝液、試薬若しくは容器、又は取扱説明書などをさらに含有させてもよい。
本発明の方法又は本スクリーニング用キットを用いて選択される物質は、CD26の二量体形成を阻害する物質である。つまり、CD26を介したT細胞共刺激シグナルをCARMA1を介して細胞内に伝達する過程を阻害する物質である。したがって、このような物質はT細胞共刺激シグナルをT細胞内に伝達しないため、免疫抑制剤の有効成分として有用である。さらに具体的には、前記物質は、TH1を介した自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、グレーブス病及び多発性硬化症)、移植時の拒絶反応、急性若しくは慢性移植片対宿主病、又はアテローム性動脈硬化症、血管炎症候群、閉塞性動脈硬化症、心筋梗塞若しくは脳梗塞の治療に有用である。
以下に、具体的な例により本発明を示すが、本発明はこれに限られるものではない。
1.使用した細胞、抗体及び試薬
(1)細胞
HEK293FT(human embryonal kidney)、Jurkat T細胞株(JKTwt)、及びヒトCD26で安定的にトランスフェクトしたJurkat T細胞(J.CD26wt)又は300-19マウス前駆B細胞(300-19-CD26wt)は、Ohnuma et al.,2004; Tanaka et al., 1992; Tanaka et al., 1993に記載された方法で培養した。
CARMA1欠損Jurkat T細胞株であるJPM50.6は、Wang et al., 2002などに記載されているものを使用した。
ヒト末梢血T細胞は、健常人のボランティアから回収し、培養した末梢血単球細胞(PBMC)からMACS Pan T細胞単離キットII(Miltenyi, Auburn, CA)を用いて精製したものである。インフォームドコンセントは健常人ボランティアから得た。
(2)抗体
抗CD26モノクローナル抗体(mAb)であるIF7及び抗CD3mAbであるOKT3はKung et al 1979、Morimoto et al., 1989に記載されたものを使用した。抗CD28mAbである4B10は、ATCCから入手した。APC結合抗CD3mAb、PE(phycoerythrin)結合抗CD26mAb、FITC(Fluorescein isothiocyanate)結合抗IFN-γmAb、PE結合IL-4mAb及びFITC結合ストレプトアビジンは、BDバイオサイエンス(San Jose, CA)から購入した。抗CARMA1ヤギポリクローナル抗体(pAb)及びHRP(horseradish peroxidase)結合抗ヤギIgGはAbcam(Cambridge, UK)から購入した。HRP結合抗ヒトIgGはアマシャムバイオサイエンス(Piscataway, NJ)から購入し、抗Xpress mAb、HRP結合抗Xpress mAb、抗V5 mAb、HRP結合抗V5 mAbは、Invitrogen(Carlsbad, CA)から購入した。抗Bcl10ウサギpAb、抗IKKβヤギpAb、抗PDK1 mAb及び抗caveolin-1ウサギpAb(N-20、ヒトcaveolin-1のN末端側アミノ酸を認識する)は、Santa Cruz(Santa Cruz, CA)から購入した。
(3)試薬
再構成したタンパク質又は抗体のビオチン化は、EZ-LinkTMSulfo-NHS-LC-Biotin試薬(PIERCE, Rockford, IL)を用いて、取扱い説明書にしたがって行った。
プロテアーゼインヒビターカクテル、フォスファターゼインヒビターカクテル、FLAGペプチド及びポリ-L-リジンは、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO)から購入した。水溶性ジギトニンは和光純薬(Osaka, Japan)から購入した。
2.フローサイトメトリー(FCM)
ビオチン化NT-Fc又はNTΔSCD-Fcに結合するJ. CD26wt又は300-19-CD26wtの解析では、1×106個の細胞を氷冷したPBS(phosphate buffered saline)で洗浄し、Fcγ1及びマウスIgアイソタイプ(1μg/ml)とインキュベートし、非特異的結合を阻害した。続いて、ビオチン化NT-Fc又はNTΔSCD-Fc(1μg/ml)と反応させ、FITC結合ストレプトアビジン(1:500)で染色した。
阻害実験においては、非標識マウスIgG(20μg/ml)又は非標識抗CD26mAb(20μg/ml)を細胞とインキュベートし、その後ビオチン化NT-Fc又はNTΔSCD-Fcと反応させた。
サイトカイン産生解析実験では、まず、プレートに結合させた抗CD3抗体(0.05μg/ml)とNT-Fc(5μg/ml)又はNTΔSCD-Fc(5μg/ml)との存在下又は非存在下において、精製したT細胞(1×106個/ウェル)をAIM-V培養液(GIBCO, Grand Island, NY)中で72時間刺激した。さらに、細胞をbrefeldin A(10μg/ml)で16時間インキュベートした後、細胞表面のCD26を染色した場合又は染色しない場合におけるFITC結合抗IFN-γ及びPE結合抗IL-4mAbで細胞内を染色した。FCMにおける細胞内染色は、BD FACSTM Lysing Solution及びFACSTM Permeabilizing Solution 2を用いて取扱説明書に従って行った。
10,000個の可視化細胞のフローサイトメトリー解析は、FACS caliburTM(Becton-Dickinson, La Jolla, CA)で行った。各々の実験は、少なくとも3回繰り返し、結果はヒストグラムの形式、又は代表的な実験例のドットプロットで表した。
3.T細胞の増殖アッセイ及びIL-2産生アッセイ
1×105個の精製したT細胞は、96ウェル平底プレート(COSTAR, Corning, NY)で200μLのAIM-V培地(GIBCO, Grand Island, NY)中で培養した。
固相刺激では、抗CD3mAb(OKT3, 0.05μg/ml)及び/又は抗CD26mAb(5μg/ml)、抗CD28mAb(4B10, 5μg/ml)又はFc融合タンパク質(5μg/ml)をプレートに結合した。
Caveolin-1をトランスフェクトしたCHO細胞を用いた刺激では、精製したT細胞(1×105個/ウェル)を、可溶性抗CD3mAb(OKT3, 0.05μg/ml)の存在下に、様々な量のCHO細胞形質転換体(T細胞:CHO細胞=800, 400, 200, 100, 50, 25:1、又はCHO細胞無し)と培養した。T細胞を共刺激する前に、CHO形質転換体は、0.05%グルタルアルデヒドにより室温で30秒間固定化し、その後PBSで3回洗浄した。
T細胞の増殖は、[3H]-TdR(ICN Radiochemical, Irvin, CA)の取り込みにより測定した。細胞は、96時間インキュベートし、1μCi/wellの[3H]-TdRを16時間パルスし、グラスファイバーフィルターでハーベストした。そして、取り込まれた放射活性を液体シンチレーションカウンターで定量した。
IL-2の産生アッセイには、5×105個のネイティブJurkat細胞(JKTwt)又はJ.CD26細胞をプレートに結合させた抗CD3mAb(1.0μg/ml)及び/又は抗CD26mAb(10μg/ml)、抗CD28mAb(10μg/ml)又はFc融合タンパク質(10μg/ml)の存在下で培養した。48時間のインキュベーション後、培養上清を3つのウェルから集め、IL-2の含有量をBiotrack ELISA Kit(Amersham Biosciences)を用いて、取扱説明書に従って測定した。
阻害実験では、細胞を可溶性の抗CD26mAb(IF7)、抗CD28mAb(4B10)又はコントロールであるマウスIg(各々20μg/ml)で処置し、刺激性の抗体及び/又はFcタンパク質でコートしたプレート中で培養した。
4.細胞溶解液又は脂質ラフト画分の調製、免疫沈降及びウェスタンブロット
刺激した細胞(1×108個の)をペレットにし、TBSDバッファー(50 mM Tris-HCl(pH7.6)、150 mM NaCl、2 mM EDTA、0.1 %ジギトニン、102倍希釈したプロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma)、102倍希釈したフォスファターゼインヒビターカクテル(Sigma))で溶解し、免疫沈降した。その後、SDS-PAGE及びウェスタンブロット解析した。
脂質ラフト画分は、非刺激又は抗CD3mAbとNT-Fcで10分間刺激したJ.CD26wt(5×107個)細胞を1 mlの氷冷したMNEバッファー(25 mM MES(pH6.5)(Sigma)、150 mM NaCl, 5mM EDTA)で溶解し、ショ糖勾配遠心により分画した(Ishii et al., 2001)。
脂質ラフト画分の免疫沈降では、分画した脂質ラフトを4℃で30分間1% N-octyl-β-D-glucoside(nakarai tesque Inc., Kyoto, JAPAN)で溶解し、免疫沈降実験を行った。続いて、SDS-PAGE及びウェスタンブロット解析を行った(Ishii et al., 2001; Ohnuma et al., 2005; Ohnuma et al., 2004)。
図12Aに示す免疫沈降の阻害実験において使用したCD26の細胞内領域のペプチドコンストラクトCD26 AA1-10(MKTPWKVLLGDYKDDDDK)(配列番号6)(Flagタグ配列にはアンダーラインを付した)を通常の手法で合成した。
5.核タンパク質の抽出及びDNA結合タンパク質アッセイ
核抽出物は、刺激し、精製したT細胞から調製した。NF-κB p65用のELISAを基にしたDNA結合タンパク質アッセイは、Mercury TransFactor Kits(BD Biosciences)を用いて実施した。
6.共焦点レーザー顕微鏡
T細胞ポリスチレンビーズを用いた結合アッセイでは、1.0×105個の精製T細胞を、37℃で10分間、抗CD3mAb及びNT-Fcを結合した1.0×105個のポリスチレンビーズと混合した。細胞−ビーズ混合液を、poly-L-リジン(Sigma)でコートしたマイクロスライドガラスに接触させ、PBS中で4%のパラフォルムアルデヒドで固定化した。細胞をマウスIgアイソタイプでブロッキングし、続いて、FITC結合抗CD26mAb(10μg/ml)とインキュベートし、次に、permeabilizationバッファー(PBS中、0.1% TritonX-100、3% bovine serum albumin)中に30分間4℃で洗浄し、インキュベートした。さらに、細胞をビオチン化抗CARMA1 pAb(10μg/ml)及びTexas red結合ストレプトアビジン(1:200)とインキュベートし、Antifade Prolong Kit(Molecular Probe, Eugene, OR)を用いてカバースリップに包埋した。
結合を、微分干渉コントラスト法で直接観察することにより確認し、次に、抗CD26mAbの緑色蛍光及び抗CARMA1 pAbの赤色蛍光を検出することにより確認した。T細胞−ビーズの結合に関する写真(図16A)は、5回の独立した実験のうち、カバースリップにおける500の異なる細胞の代表的な画像である。
7.統計
Studentのtテストを、対照及びサンプル間の差異の有意性検定に使用した。P<0.05を有意とした。
caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質の作製
本実施例は、caveolin-1の骨格領域を含む細胞外領域とFcγ1領域との可溶性融合タンパク質を作製することを目的とする。詳しくは、ヒトcaveolin-1のN末端領域とヒトIgG1のFcγ1とからなる可溶性の融合タンパク質(NT-Fc)、又はcaveolin-1の骨格領域(SCD)を除いたN末端領域とヒトIgG1のFcγ1とからなる可溶性の融合タンパク質(NTΔSCD-Fc)を作製することを目的とする(図1)。また、caveolin-1の骨格領域とFcγ1とからなる可溶性の融合タンパク質(SCD-Fc)を作製することを目的とする。
(1)caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質の発現プラスミドの構築
caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質発現プラスミドを構築するにあたり、まず、caveolin-1を融合していないFcγ1部分だけを発現するFcγ1融合タンパク質発現用のカセットベクターの構築を行った(図2)。すなわち、pEB-CAGベクターのマルチクローニングサイトに、ヒトE-cadherinのシグナルペプチド(huECDSP)及びヒトIgG重鎖のヒンジ、CH2及びCH3部分(Fcγ1)の発現カセットを挿入した(pEB6-CAG-huECDSP-Fcγ1)。
次に、caveolin-1の細胞外部分をFcγ1タンパク質に融合させたcaveolin-1−Fcγ1融合タンパク質の発現プラスミドを以下のように作製した。
まず、作製したFcγ1タンパク質発現カセットベクター(pEB6-CAG-huECDSP-Fcγ1)のhuECDSP−Fcγ1間に、caveolin-1の細胞外領域をクローニングした。すなわち、caveolin-1のN末端側2〜101番目のアミノ酸をコードする遺伝子を遺伝子組換えによりpEB6-CAG-huECDSP-Fcγ1ベクターにクローニングした(Cav-1-NT-Fcγ1)。また、N末端側2〜80番目のアミノ酸をコードする遺伝子を組み込んだベクター(Cav-1-NT-ΔSCD-Fcγ1)も同様に作製した(図1)。また、骨格領域としてcaveolin-1の75〜101番目のアミノ酸をコードする遺伝子を組み込んだベクターも同様に作製した。
(2)caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質の発現
Caveolin-1-Fc融合タンパク質は、まず、HEK293Tにプラスミドを導入して発現させた。つまり、Lipofectamine 2000試薬 (Invitrogen)を用いて、6 wellプレートに播種した1.0×106 のHEK293Tに5μgのプラスミドコンストラクトを導入、48時間後に培養上清を回収した。
また、大量精製は、浮遊系293細胞FreeStyleTM293-F細胞に構築したベクターを遺伝子導入し、振盪培養を行って、培養上清に十分量のCaveolin-1-Fc融合タンパクが分泌されるか検討を行った。125ml容Erlenmyere flaskに30mlの無血清培地で1×107個の293-F細胞を振盪培養し、20μgのpEB6-CAG-hu ECDSP-Caveolin-1-Fcγ1ベクターを293fectinTM試薬にて導入した。48時間後に20mlの培地を添加して250ml容のErlenmyere flaskに移し替え、さらに24時間培養したのち、50mlの培養上清を回収した。以降、72時間毎に上清を回収し、同時に、細胞濃度が1.0×106 /mlになるように継代し、プラスミド導入から1ヶ月にわたり、上清を回収し、凍結保存した。
回収した上清からのCaveolin-1-Fc融合タンパクの精製は、Protein Aカラム(Pierce)を用いてアフィニティー精製を行った。
培養上清中のFcタンパク質濃度の定量は、ヒトIgGに対する酵素結合免疫吸着測定法(ELISA;enzyme-linked immunosorbent assay)(BETHYL LABORATORIES Inc.)で測定した。
ヒトELISAによるヒトIgG濃度を測定したところ、ベクターコントロール導入細胞の培養上清は検出感度以下であるのに対し、pEB6-CAG-hu ECDSP-Caveolin-1-Fcγ1ベクター導入細胞上清には、NT-Fcが約10μg/ml、NTΔSCD-Fcが約15μg/ml、SCD-Fc約20μg/mlのヒトIgG成分が含まれていることがわかった(図3A)。そこで、Protein Aカラムを用いて培養上清50mlからFc融合タンパクの精製を行ったところ、NT-Fcが500μg、NTΔSCD-Fcが900μg、SCD-Fcが500μgのFcタンパクが精製された。
精製したタンパク質をSDS-PAGE後、抗ヒトIgGでウェスタンブロットした結果を図3Bに示す。泳動サンプルは非還元条件下(-2ME:レーン1-5)と還元条件下(+2ME:レーン6-9)で調製した。また、精製したタンパク質をSDS-PAGE後、ゲルをCBB染色した結果を図3Cに示す。レーン1、6のIgGは精製したマウスIgGで、泳動サンプルは還元条件下(+2ME:レーン6-9)及び非還元条件下(-2ME:レーン6-10)で調製した。
CD26へのcaveolin-1-Fc融合タンパク質の結合活性
(1)本実施例では、CD26が実施例2で作製したNT-Fc融合タンパク質に結合するかどうかについて検討した。
検討には、全長ヒトCD26を安定発現させたJurkat T細胞株(J.CD26wt)及びマウス前駆B細胞株300-19(300-19-CD26wt)を用いた。
J.CD26wtの細胞溶解液を用いた場合、図4に示すように、CD26はNT-Fc(レーン2)と共沈殿したが、Fcγ1(レーン1)ともNTΔSCD-Fc(レーン3)とも共沈殿しなかった。
次に、細胞表面のCD26に対するNT-Fcの結合を、フローサイトメトリーを用いて検討した。
図5Aに示すように、細胞表面にCD26を発現するJ.CD26wtは、抗CD26-FITC mAbにより染色された(パネルbの(2))。この抗CD26-FITC mAbによる染色は、非標識抗CD26mAbにより阻害されたが(パネルbの(3))、コントロールIgGによっては阻害されなかった(パネルbの(4))。
また、J.CD26wtは、ビオチン化NT-Fcとそれに続くストレプトアビジン結合FITCによっても染色された(図5Aパネルcの(2))。このNT-Fcによる染色は、非標識抗CD26mAbにより阻害されたが(図5Aパネルcの(3))、コントロールIgGでは阻害されなかった(図5Aパネルcの(4))。一方、J.CD26wtは、NTΔSCD-Fcによっては染色されなかった(図5Aパネルd)。
細胞表面に発現するCD26とNT-Fcとの結合をさらに確認するために、300-19-CD26wtを用いてフローサイトメトリー解析を行った。
図5Bパネルbに示すように、CD26を細胞表面に発現する300-19-CD26wtは、抗CD26-FITCmAbにより染色された(パネルbの(2))。この、抗CD26-FITCmAbによる染色は、非標識抗CD26mAbにより阻害されたが(パネルbの(3))、コントロールIgGによっては阻害されなかった(パネルbの(4))。
また、300-19-CD26wtは、ビオチン化NT-Fcとそれに続くストレプトアビジン結合FITCによっても染色された(図5Bパネルcの(2))。このNT-Fcによる染色は、非標識抗CD26mAbにより阻害されたが(図5Bパネルcの(3))、コントロールIgGでは阻害されなかった(図5Bパネルcの(4))。一方、300-19-CD26wtは、NTΔSCD-Fcによっては染色されなかった(図5Bパネルd)。
なお、ネイティブな300-19細胞又はJurkat T細胞は、抗CD26mAbによっても、NT-Fcによっても染色されなかった。
以上により、caveolin-1の可溶性のN末端領域は、細胞表面に発現するCD26と結合することが示された。そして、caveolin-1の骨格領域(SCD)がCD26との結合に必要であることも示された。
(2)次に、NT-FcとCD26との結合特性を検討するために、BIAcoreを用いて結合親和性を測定した。
測定は、Biacore AB(Uppsala, Sweden)から入手したHBSバッファー(25mM HEPES(pH7.4)、150 mM NaCl、3.4 mM EDTA、0.005% surfactant P20)を用いてBIAcoreTMJ(Biacore JAPAN, Tokyo, Japan)で行った。
Fcγ1(図6(a))、NT-Fc(図6(b))又はNTΔSCD-Fc(図6(c))は10 mM酢酸ナトリウム(pH5.0)中、Amine Coupling Kit(Biacore AB)を用いて、5分間反応させることにより研究グレードのCM5センサーチップ(Biacore AB)に結合させた。これにより、約5,000から約6,000反応単位(RU)の固定化チップが得られた。
結合後、5mM NaOHによりチップ表面を洗浄した。なお、この5mM NaOHは、Fcγ1、NT-Fc又はNTΔSCD-Fc固定化チップを再生する際にも使用した。
再構成可溶性CD26(rsCD26)は、ヒトCD26の細胞外領域を含有している(ohnuma et al., 2001; Tanaka et al., 1994)。種々の濃度のrsCD26(50 nM、25 nM、12.5 nM、6.3 nM、3.2 nM又は1.6 nM)を、Fcγ1、NT-Fc又はNTΔSCD-Fc固定化チップ上に120秒間注入した。
平衡結合解析は、BIA evaluation software version 2.1(BIAcore AB)を用いて行った。
その結果、各濃度のrsCD26における平衡結合解析により、NT-FcとrsCD26とのKd値は〜2×10-5Mであった(図6(b))。
この結果は、caveolin-1のN末端領域はCD26に直接結合することを明確に示している。
(3)次に、CD26を介したT細胞共刺激において、NT-Fcは抗CD-26mAbと同様の共刺激効果を有するかについて検討した。
本発明者らは、これまでにJ.CD26wt細胞において、CD26に抗体を結合させると、TCR/CD3に依存的にT細胞を共刺激し、IL-2産生が増強することを示している(Tanaka et al., 1992)。
図7Aに示すように、J.CD26wt細胞において、IL-2産生はプレートに結合した抗CD3mAbとNT-Fcにより誘導された。そしてこの誘導は、抗CD3mAbと抗CD28mAb、又は抗CD3mAbと抗CD26mAbによる誘導と同レベルであった。CD28、CD26は、CD26と同じT細胞の共刺激分子である。
一方、IL-2の産生は、CD26を発現させていないJKTwt細胞を抗CD3mAbと抗CD26mAb、抗CD3mAbとNT-Fcで刺激しても観察されなかった。また、J.CD26wt又はJKTwt細胞におけるIL-2の産生は、コントロールであるFcγ1又はNTΔSCD-Fcを用いても観察されなかった。
さらに、NT-FcによるT細胞の共刺激活性がCD26を介したものであることを検討するために、NT-FcとCD26との結合を阻害するCD26に特異的なmAbを用いて、阻害実験を行った。
図7Bに示すように、プレートに結合した抗CD3mAbとNT-FcによるIL-2の産生は、可溶性の抗CD26mAbにより阻害されたが、可溶性の抗CD28mAbでは阻害されなかった。また、コンロトールであるFcγ1又はNTΔSCD-Fcは、T細胞共刺激活性を示さなかった。
実施例1及び実施例2の結果(図4〜7)から、caveolin-1はCD26に直接結合し、かつ、CD26を介したT細胞共刺激を誘導することが示された。
CD26を介した共刺激によるcaveolin-1によるT細胞の増殖
本実施例では、CD26を介したT細胞共刺激において抗CD26抗体が示す作用をNT-Fcが再現し得ることを確認することを目的とした。
(1)まず、健常人から提供された血液から単離した末梢血T細胞を用いて固相刺激を行った。
図8Aに示すように、T細胞の増殖は固相に固定化した抗CD3mAbとNT-Fcとにより誘導され、その誘導の程度は、抗CD3mAbと抗CD28mAbとによる誘導、又は抗CD3mAbと抗CD26mAbとによる誘導と同レベルであった。一方、コントロールであるFcγ1又はNTΔSCD-Fcを用いた場合は、T細胞の増殖は認められなかった。
また、図8Bに示すように、NT-Fcは、濃度依存的にT細胞の共刺激を誘導した。
J.CD26wtでは、末梢血T細胞の結果と同様に、抗CD3mAbとNT-Fcとによる刺激により増殖が誘導された。一方、CD26を発現させていないJurkat細胞では増殖は誘導されなかった。
以上のことは、NT-Fcは、CD26と機能的に結合し、CD26に対して特異的に結合するタンパク質であることを示している。
(2)さらに、caveolin-1の共刺激活性を調べるために、本発明者はヒトcaveolin-1を安定に発現するCHO細胞を作製した。
まず、全長ヒトcaveolin-1のGFP融合タンパク質を発現するベクター(Cav-wt+ CHO)、ヒトcaveolin-1からSCDを除いたものとのGFP融合タンパク質を発現するベクター(Cav-ΔSCD+CHO)又はインサートを挿入していないベクター(mock+CHO)をそれぞれ作製した。作製した各ベクターを用いて、CHO細胞をトランスフェクトした。
図8Cに示すように、Cav-wt+ CHO細胞は抗CD3mAbの存在下にT細胞共刺激活性を発現した。しかしながら、Cav-ΔSCD+CHO細胞又はmock+CHO細胞ではこのような共刺激活性は認められなかった。
以上より、caveolin-1はTCR/CD3経路を介するT細胞の共刺激活性を有し、T細胞を増殖させ得ることが示された。
caveolin-1によるT細胞共刺激の阻害
NT-FcのT細胞共刺激活性は、CD26を介したものであるのかをさらに調べるために、NT-FcとJ.CD26又は300-19-CD26wtとの結合を阻害するCD26特異的mAb(図5A及びBで使用した抗体)を用いた阻害実験を行った。
まず、図9Aに示すように、プレートに結合した抗CD3mAbと抗CD26mAbによるT細胞の増殖は、可溶性の抗CD26mAbにより阻害されたが、可溶性の抗CD28mAbによっては阻害されなかった。一方、プレートに結合した抗CD3mAbと抗CD28mAbによるT細胞の増殖は、可溶性の抗CD28mAbにより阻害されたが、可溶性の抗CD26mAbによっては阻害されなかった。
このような実験条件において、プレートに結合した抗CD3mAbとNT-FcによるT細胞の増殖は、可溶性の抗CD26mAbによって阻害されたが、可溶性の抗CD28mAbでは阻害されなかった(図9A)。
さらに、NT-Fcによる共刺激は、CD26特異的mAbにより濃度依存的に阻害された(図9B)。また、コントロールであるIgG又は抗CD28mAbは、0〜50μg/mlの濃度において、NT-Fcの共刺激活性を阻害しなかった。
図4〜9に示す結果から、caveolin-1はCD26に直接結合し、CD26を介するT細胞の共刺激を誘導することが明確に示された。
CD26の細胞質側末端とCARMA1との直接結合
本実施例は、caveolin-1によるCD26を介したT細胞共刺激のシグナル分子に関するものである。
(1)NT-FcによるCD26を介したT細胞共刺激におけるCD26細胞質側末端の役割について検討した。共刺激実験には、CD26-CD10キメラ受容体(CD26+CD10cyto)でトランスフェクトしたJurkat T細胞を用いた。CD26-CD10キメラ受容体は、CD26の細胞質側末端であるN末端側7アミノ酸を、CD10の細胞質側末端であるN末端25アミノ酸に置き換えたものである(図10)。
さらに、CD26は細胞表面においてホモダイマーを形成することが報告されている。そのため、CD26を介したT細胞刺激におけるCD26の二量体形成の必要性についても検討した。共刺激実験には、CD26でトランスフェクトしたJurkat T細胞を用いた。単量体のCD26として、750番目のヒスチジン残基をグルタミン酸に変異させたもの(CD26 H750E)を用いた(図10)。
まず、V5タグ結合ヒト全長CD26(CD26wt)、V5タグ結合CD26-CD10キメラ受容体(CD26+CD10 cyto)又はV5タグ結合単量体CD26(CD26 H750E)により、Jurkat T細胞を安定的にトランスフェクトした。
次に、これらのJurkat形質転換体を用いて、NT-Fcによる共刺激実験を行った。
図10(a)に示すように、CD26wtでトランスフェクトしたJurkat T細胞において、抗CD3mAbとNT-Fcによる刺激によりT細胞が増殖した。
しかし、CD26-CD10キメラ受容体又はCD26 H750EでトランスフェクトしたJurkat T細胞においては増殖は認められなかった(図10(a))。
さらに、NF-κBコンポーネントの一つであるp65は、CD26wtでトランスフェクトしたJurkat T細胞を抗CD3mAbとNT-Fcで刺激した場合に活性化されたが(図10(b))、CD26-CD10キメラ受容体又はCD26 H750Eでトランスフェクトした細胞では、活性化されなかった。
これらのデータは、単量体のCD26ではなく、二量体のCD26の細胞質側末端が、抗CD3mAb存在下でのNT-FcによるT細胞の共刺激に必要であることを示している。
(2)CD26の細胞質側末端は、CD26を介したT細胞共刺激に重要な役割を担うと考えられるため、二量体CD26の細胞質側末端に結合するシグナル分子を探索した。
まず、CD26のN末端側の10アミノ酸残基(MKTPWKVLLG(配列番号5))を含むFcγ1融合タンパク質(CD26 AA1-10-Fc)を調製した(図11A)。CD26 AA1-10-Fcは、メルカプトエタノール(2ME)の非存在下では、二量体を形成することを確認した(図11B)。
次に、Jurkat T細胞の溶解液を用いて、CD26 AA1-10-Fcによるプルダウンに続いて、CD26 AA1-10-Fcと相互作用する分子を2D SDS-PAGEにより解析した。
その結果、図11Cのパネル(c)に示すように、CD26 AA1-10-Fcによるプルダウンアッセイにより、6点のスポットが検出された。これらのスポットのうち、CD26と相互作用し、かつ、ハウスキーピングタンパク質でないものとして、CARMA1を同定した。
(3)さらに、CD26のN末端側1-10アミノ酸の合成ペプチド(CD26 AA1-10ペプチド)を用いて阻害アッセイを行った。
図12Aに示すように、CARMA1は、FLAGペプチドの存在下(レーン1)又はCD26 AA1-10ペプチドの非存在下(レーン2)においてCD26 AA1-10-Fcで共沈殿した溶解液由来の複合体中に検出された。さらに、検出されるCARMA1のレベルは、添加したCD26 AA1-10ペプチド量の増加に伴い減少した(図12Aレーン3〜5)。
以上より、Jurkat T細胞において、CD26の細胞質側末端はCARMA1に直接結合していることが示された。
(4)次に、Xpressタグをつけたヒト全長CARMA1(CARMA1wt)と、CD26wt、CD26+CD10cyto又はCD26 H750Eとでコトランスフェクトした293FT細胞を用いて、共免疫沈殿アッセイを行った。
図12Bに示すように、CARMA1は、CD26wt(レーン2)と共沈殿したが、CD26+CD10cyto又はCD26 H750Eとは沈殿しなかった(レーン3又は4)。
このデータは、CD26の細胞質側末端及び二量体化は、CD26とCARMA1との相互作用に必要であることを強く示している。
(5)次に、CARMA1のCD26との結合領域を検討した。
CARMA1のC末端側欠損変異体として、Xpressタグを付けたCARMA1から、SH3領域とGUK領域を除いた変異体(CARMA1 1-742)、及びPDZ領域、SH3領域とGUK領域を除いた変異体(CARMA1 1-660)を作製した(図13A)。
図13Bに示すように、CD26はCARMA1wt(レーン2)又はCARMA1 1-742(レーン3)とは共沈殿したが、CARMA1 1-660(レーン4)とは共沈殿しなかった。
このことは、CARMA1のPDZ領域が、CD26との結合に必要であることを示している。
(6)次に、CARMA1は、抗CD3mAb存在下におけるNT-FcによるT細胞共刺激及びNF-κB活性化に必要であるかを検討した。
CARMA1欠損Jurkat細胞株であるJPM50.6を用いてレスキュー実験を行った。
まず、CD26のみ(Xpress vec.+CD26wt)、CARMA1のみ(CARMA1wt+V5 vec.)、CD26とCARMA1(CARMA1wt+CD26wt)、又はCD26とPDZ、SH3及びGUK領域を除いたCARMA1(CARMA1(1-660)+CD26wt)で安定的にトランスフェクトしたJPM50.6細胞を作製した。
これらの形質転換体を用いて、細胞増殖アッセイ及びNF-κBの活性化アッセイを、抗CD3mAbのみ又は抗CD3mAbとNT-Fcの刺激下で行った。
図14(a)に示すように、抗CD3mAbとNT-Fcにより誘導される細胞増殖は、JPM50.6/CD26wt+CARMA1wtで明確に観察されたが、JPM50.6、JPM50.6/CD26wt、JPM50.6/CARMA1wt及びJPM50.6/CD26wt+CARMA1(1-660)では確認されなかった。
同様に、抗CD3mAbとNT-Fcにより誘導されるNF-κBの活性化も、CARMA1wt+CD26wtで明確に観察されたが、コントロールであるXpress vec.+V5 vec.、Xpress vec.+CD26wt、CARMA1wt+V5 vec.及びCARMA1(1-660)+CD26wtでは確認されなかった(図14(b))。
以上より、CARMA1は、CD26を介した共刺激によるT細胞の活性化に必要な分子であることが強く示された。
caveolin-1によるCD26の結合のCARMA1、Bcl10、IKKβ及びPDK1複合体の脂質ラフトへの動員
本発明者らは、これまでに、非活性化末梢血T細胞を抗CD26mAbである1F7で処置すると、CD26が脂質ラフトに動員されることを示している(Ishii et al., 2001)。また、その他にも、CD3共刺激を介したNF-κBの活性化段階において、CARMA1はBcl10、IKKβ及びPDK1と一緒に脂質ラフトに動員されることが報告されている(Lee et al., 2005, )。
そこで、ショ糖勾配分離法を用いて、抗CD3mAbとNT-Fc共刺激の存在下又は非存在下において、J.CD26細胞溶解液の脂質ラフト画分を調製した。
図15Aに示すように、抗CD3mAbとNT-Fcで共刺激した後は、CD26、CARMA1、Bcl10、IKKβ及びPDK1は脂質ラフト画分で検出された。
次に、脂質ラフトにおいて、CD26とCARMA1はBcl10、IKKβ及びPDK1と複合体を形成することを明らかにするために、抗CD3mAbとNT-Fc共刺激の存在下におけるJ.CD26細胞溶解液の脂質ラフト画分を用いて共沈殿アッセイを行った。
その結果、図15Bに示すように、脂質ラフトにおいてCARMA1、Bcl10、IKKβ及びPDK1はCD26と共沈殿した。
以上より、caveolin-1とCD26が結合すると、CARMA1、Bcl10、IKKβ及びPDK1の複合体が脂質ラフトに動員されることが示された。
また、本実施例により、caveolin-1によりCD26を介してT細胞が共刺激されると、CARMA1は脂質ラフトに動員されることが示された。このことは、CARMA1の脂質ラフトへの移行は、T細胞共刺激のシグナル伝達において必要なステップである可能性を示している。したがって、CARMA1の脂質ラフトへの移行を阻害する物質は、T細胞による免疫応答を阻害する可能性を有しているといえる。
したがって、本発明は、CARMA1の脂質ラフトへの移行を阻害する物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法により選択された物質は、CD26を介した共刺激によるT細胞の活性化を抑制するために、免疫抑制剤として有効である。
CARMA1の脂質ラフトへの移行を阻害する物質のスクリーニングは、例えば、以下のように実施することができる。末梢血T細胞を被験物質の存在下で一定時間共刺激し、細胞溶解液をショ糖勾配遠心により調製する。被験物質を存在させずに共刺激した細胞からも、同じように細胞溶解液を調製する。両細胞溶解液における脂質ラフト中のCARMA1の量をイムノブロットにより検出し、被験物質非存在下に比べて脂質ラフト中のCARMA1量が減少した被験物質を、CARMA1の脂質ラフトへの移行を阻害する物質として選択する。
上記方法において、末梢血T細胞の他、CD26を発現させたJurkat T細胞(J.CD26)、CARMA1を発現させたJPM50.6細胞などを使用してもよい。
caveolin-1による共刺激により誘導されるIFN-γ産生性末梢T細胞への分化
T細胞は、共刺激性のシグナルを受けた後、増殖し、エフェクター機能を獲得することが知られている。また、上記の実施例により、caveolin-1はCD26を介した共刺激の内因性リガンドであることが示されている。
本実施例では、休止期のT細胞を抗CD3mAbの存在下にcaveolin-1によりCD26を介して共刺激すると、T細胞はTH1エフェクター分化かTH2エフェクター分化のどちらを獲得するのかについて検討した。
また、CD26をトランスフェクトしたJurkat細胞において観察されたCD26の近傍におけるシグナルイベント(図15)が、末梢血T細胞において観察されるかについても検討した。
(1)まず、内因性のCARMA1が、caveolin-1の刺激によりCD26、Bcl10、IKKβ及びPDK1と複合体を形成するかを検討した。
細胞の接触表面を可視化するために、APC刺激を模倣するための抗CD3mAbとNT-Fcとを結合させたマイクロビーズを調製した。
図16Aに示すように、T細胞のCD26(緑色蛍光)とCARMA1(赤色蛍光)は、コントロールであるIgGの結合したマイクロビーズによる刺激には影響されなかった(パネルa)。それに対し、T細胞のCD26とCARMA1は、抗CD3mAbとNT-Fcの結合したマイクロビーズによる刺激では、ビーズとの接着表面に共存した(パネルb)。さらに、T細胞のCD26とCARMA1は、抗CD3mAbとFcγ1の結合したマイクロビーズで刺激しても影響されず、また、抗CD3mAbとNTΔSCD-Fcの結合したマイクロビーズで刺激しても影響されなかった。
以上より、CD26及びCARMA1は、抗CD3mAb及びcaveolin-1と共連結することにより、T細胞の接触領域に動員されることが示された。
(2)次に、抗CD3mAbとNT-Fcとの共刺激の存在下又は非存在下における末梢血T細胞の共沈殿アッセイを行った。
図16Bに示すように、CD26及びCARMA1は、抗CD3mAbとNT-Fc共刺激の存在下又は非存在下において共沈殿した。一方、休止期のT細胞では、CD26は少量のBcl10と結合したが、IKKβ又はPDK1とは結合しなかった。
しかしながら、CARMA1は、抗CD3mAbとNT-Fc共刺激により、CD26のみならずBcl10、IKKβ及びPDK1と共沈殿した(図16B)。
このことは、刺激を受けていない休止期のT細胞では、CD26は、Bcl10と部分的に結合したCARMA1と結合し、caveolin-1がCD26に連結すると、図15に示すJurkat形質転換体の結果と同様に、CARMA1、Bcl10、IKKβ及びPDK1からなる複合体が形成されることを示している。
(3)抗CD26mAbが末梢血T細胞から単離したT細胞クローンに連結することにより生じるCD26を介した共刺激は、IFN-γの産生を誘導することが報告されている(Plana et al., 1991)。さらに、T細胞におけるCD26の発現は、TH1に分化したT細胞としてのマーカーであることも報告されている(Willheim et al., 1997)。
そこで、TH1局在にシフトした末梢血T細胞が、CD3とcaveolin-1による共刺激に続いてIFN-γを産生するかを検討した。
細胞内のIFN-γ及びIL-4を染色するために、フローサイトメトリーを用いてサイトカインの産生を解析した。
図17Aに示すように、末梢血T細胞は、抗CD3mAbとNT-Fcによる共刺激の後、IL-4ではなくIFN-γを産生した(パネルc)。さらに、抗CD3mAbとNT-Fcで刺激したIFN-γを産生するT細胞は、CD26を強く発現していた(図17Bパネルa)。この染色パターンは、活性化T細胞のパターンとよく似ていた(Morimoto et al., 1989)。
一方、抗CD3mAbとNTΔSCD-Fcとを組み合わせて処理したT細胞は、IFN-γもIL-4も産生しなかった(図17Aパネルd)。そして、この染色パターンは、休止期のT細胞のパターンとよく似ていた(Morimoto et al., 1989)。
これらの結果は、末梢血T細胞は、その表面にCD26を多く発現しており、抗CD3mAbとcaveolin-1により活性化され、TH2サイトカインであるIL-4ではなく、TH1サイトカインであるIFN-γを産生することを示している。
ところで、CARMA1はCARD及びMAGUK領域を有しており、CD3-CD28又はCD28-PMA刺激により誘導されるNF-κBの活性化やIL-2の発現において必須な役割を担っている。CARMA1はリン酸化された後、PKCθの下流及びNF-κBの活性化を誘導するTCRシグナル伝達機構においてIKKの上流に位置する情報仲介物として機能する。一般的に、MAGUK領域を含有するタンパク質は、細胞質側の膜表面におけるタンパク質複合体の組織化に必要であると言われている。
そこで、本発明者は、CARMA1と結合する膜タンパク質について検討した結果、CARMA1は、CD26を介した共刺激シグナルを伝達するために、Bcl10、PDK1及びIKKと複合体を形成するという新しいCARMA1機能を見出した(図15及び16)。図11Cに示すとおり、これらの細胞骨格タンパク質は、CD26 AA1-10-Fcによるプルダウンアッセイにおける複合体中にも観察された。
また、MAGUK領域含有タンパク質は、一般的に細胞骨格においてタンパク質複合体を形成するのに必要であるため、CD26の下流シグナルはCARMA1を介して細胞骨格アセンブリーとも関連するのかもしれない。CD26、CARMA1及び細胞骨格の関連は、将来の研究において解明されるであろう。
以上の知見から、本発明ではCD26を介したT細胞共刺激からNF-κBの活性化に至る一連のイベントを説明するためのモデルを提案する(図18)。このモデルでは、caveolin-1が二量体CD26に連結すると、それに続いてCD26の細胞質側末端にCARMA1-Bcl10-IKKβ-PDK1複合体が結合する。そしてこの結合を介して、NF-κBの活性化が誘導される。
さらに別のモデルとして、本発明ではCD26-CD3共刺激からNFκB活性化までを誘導する一連のイベントを説明するためのモデルを提案する。CD3-CD26共刺激において、APCに提示したペプチドを付加したMHCクラスIIとTCRの結合により、TCRにおけるITAMs(immunoreceptor tyrosine-based activation motifs)のリン酸化を介してPI3Kが活性化される。そして、PI3Kの活性化により、PKCθ及びIKK複合体が、脂質ラフト中のPDK1へ動員される。同時に、APC上のcaveolin-1がCD26に連結することにより、CD26に結合したCARMA1が脂質ラフトに動員され、その結果、CARMA1-Bcl10-MALT1- PDK1-IKK複合体が形成する。次に、この膜に結合したBcl10複合体は、IKKに含まれるモチーフであるNEMOのユビキチン化を介してIKKを活性化する。
また、本発明者は、末梢血T細胞を用いた検討により、T細胞は抗CD3抗体及びcaveolin-1によるCD26を介した共刺激により、IFN-γの産生に関連するTH1タイプの細胞に分化し、かつ、当該細胞ではCD26発現の上昇が誘導されることも示した。
末梢血の休止状態において、CD26はヘルパー/メモリーT細胞集団上に優先的に発現する。CD26を多く細胞表面に発現することは、TH1様サイトカインの産生と関連し、また、CD26の発現はTH1応答の進展に有利に働く刺激により誘導される。CD3とcaveolin-1を介したCD26の共刺激は、結果としてヒト末梢血T細胞においてIL-4ではなくIFN-γの産生を引き起こし、同様にIFN-γ産生T細胞上では、細胞表面にCD26が多く発現していた。
PDK1は、CD28シグナルにおいて役割を担うことが報告されている。また、腎細胞腫瘍細胞においてCD26の下流のAkt経路の関与が示されている。しかしながら、TH1を介した免疫応答におけるIFN-γ産生を伴うCD26-CARMA1経路の関するメカニズム及びTH1を介した免疫反応におけるCD26を介したT細胞共刺激の役割を詳細に解明することが必要である。
上記のように、本発明者は、単量体のCD26ではなく、二量体のCD26がCARMA1に結合することを明らかにした。CD26/DPPIVはホモダイマーとして存在し、この構造をとることによりDPPIV触媒部位に基質が接近し得ることが報告されている。DPPIV活性は、CD26を介したT細部共刺激に必須であるが、共刺激におけるDPPIVの役割は明確ではなかった。これまでの研究により、DPPIV触媒部位の酵素ポケット構造は、CD26のcaveolin-1への結合とそれによるAPC上でのCD28の発現上昇を誘導するのに必要であることが示されている。
実施例では、酵素活性を300倍減少する単量体CD26であるH750Eは、CARMA1に結合せず、その結果、抗CD3抗体とcaveolin-1によるCD26を介したT細胞共刺激を引き起こさないことが示された。したがって、CD26の二量体化は、caveolin-1との結合に必要なだけでなく、細胞質シグナル分子であるCARMA1の足場構造としても必要であるといえる。
図18に示すモデルは、caveolin-1による二量体CD26の連結と、それに続くCARMA1-Bcl10-IKKβ-PDK1複合体との結合を介したNF-κBの活性化を示している。
CARMA1の下流の標的は、T細胞共刺激の他にCD26を介した細胞イベントの重要なメディエーターであるため、本実施例で示された結果から、CD26を介した細胞機能において観察されてきた他の機序を解明する手がかりが提供される。
以上の本実施例により、T細胞において二量体CD26の細胞質側末端がCARMA1と相互作用し、この相互作用によりT細胞の増殖及びNF-κBの活性化を誘導するシグナルが伝達されることが明らかになった。さらに、caveolin-1がCD26に連結することにより、CD26、CARMA1、Bcl10、IKKβ及びPDK1の複合体が脂質ラフトに動員されることも明らかになった。
また、末梢血T細胞を用いた検討により、T細胞が抗CD3mAbの存在下でcaveolin-1によるCD26を介した共刺激されると、IFN-γの産生に関連するTH1タイプの細胞に分化し、かつ、当該細胞ではCD26発現の上昇が誘導されることも示された。
したがって、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質のスクリーニング方法により得られる物質は、免疫調節剤として有用であることが示された。
つまり、本実施例の結果から、CD26とCARMA1との結合を阻害する物質又はCD26の二量体形成を阻害する物質は、TH1を介した自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、グレーブス病及び多発性硬化症)、移植時の拒絶反応、急性若しくは慢性移植片対宿主病、又はアテローム性動脈硬化症、血管炎症候群、閉塞性動脈硬化症、心筋梗塞若しくは脳梗塞の治療に有用であることが示された。また、CD26とCARMA1との結合を促進する物質は、TH1を介した癌(例えば、悪性腫瘍又は悪性中皮腫)免疫療法における免疫賦活反応の誘導のために有用であることが示された。
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caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質を示す図である。 pEB6-CAG-hu ECDSP-Fcγ1ベクターの概略図である。 caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質を発現させた細胞を用いたSDS-PAGE及びウェスタンブロットの結果を示す図である。 NT-FcのCD26への結合を免疫沈降実験により示す図である。 500μgのJ.CDwt細胞溶解液をFcγ1とプロテインAセファロースビーズで前もって吸収し、2μgのFcγ1(レーン1)、NT-Fc(レーン2)又はNTΔSCD(レーン3)で免疫沈降(IP)した。次に、免疫沈降複合体を5-20%のSDS-PAGEを用いて分離し、ウェスタンブロットを行い、抗CD26mAbでイムノブロットした(上パネル)。用いた50μgの細胞溶解液についても解析した(レーン4)。メンブレンから抗CD26mAbをはがし、HRP結合抗ヒトIgGを結合させた(下パネル)。図4に示す結果と同様の結果が、独立した3回の実験で得られた。 NT-FcのCD26への結合をフローサイトメトリーにより示す図である。 (A):J.CD26wt細胞を、Fc融合タンパク質の結合活性に使用した。パネル(a):解析した細胞の前方及び横散乱図を示す。黒丸は解析されたゲート領域を示す。パネル(b):細胞をFITC結合コントロールマウスIgG(1)、又はFITC結合抗CD26mAb(2)で染色した。阻害アッセイでは、細胞をまず非標識抗CD26mAb(3)又は非標識コントロールマウスIgG(4)と反応させ、次に、(2)のように染色した。パネル(c):細胞をビオチン化Fcγ1(コントロール)(1)又はビオチン化NT-Fc(2)で染色し、FITC結合ストレプトアビジンと反応させた。阻害アッセイでは、細胞をまず、非標識抗CD26mAb(3)又は非標識コントロールIgG(4)と反応させ、次に、(2)のように染色した。パネル(d):細胞をビオチン化Fcγ1(コントロール)(1)又はビオチン化NTΔSCD-Fc(2)で染色し、FITC結合ストレプトアビジンと反応させた。阻害アッセイでは、細胞をまず、非標識抗CD26mAb(3)又は非標識コントロールIgG(4)と反応させ、次に、(2)のように染色した。パネル(d)に示す4つのグラフは、全て同じ位置に重なった。 (B):300-19-CD26wt細胞を用いて、(A)と同様のFc融合タンパク質の結合アッセイを行った。 NT-FcのCD26への結合をBiacoreを用いた実験により示す図である。 可溶性CD26(rsCD26)に対するFc融合タンパク質の親和性を、平衡状態の結合により測定した。rsCD26は、25℃において、50 nMから2倍希釈(50 nM、25 nM、12.5 nM、6.3 nM、3.2 nM及び1.6 nM)で、Fcγ1上(a)、NT-Fc上(b)又はNTΔSCD-Fc上(c)に流した。これらのタンパク質は、それぞれ6032 RU(response unit)、4996 RU又は4852 RUで固定化されている。図5に示す曲線は、コントロール細胞で観察されたバックグラウンド反応を差し引いた後の特異的結合を表す。 NT-FcのIL-2の産生活性を示す図である。 (A):ネイティブなJurkat(JKTwt)又はJ.CD26wt(5×105/well)を96ウェル平底プレートで培養し、グラフ下に示された抗体及び/又はFc融合タンパク質(抗CD3抗体、10μg/ml; 抗CD28抗体、抗CD26抗体、Fcγ1、NT-Fc、NTΔSCD-Fc、各10μg/ml)で固定化した。48時間培養した後、培養上清を3つのウェルから集め、IL-2含有量を測定した。グラフの値は、3回の独立した実験の3培養から求めた平均値±S.E.を示す。「*」及び「***」は有意な増加(p<0.05)を示し、また、「**」及び「#」は、対照と比べて有意な変化の無いことを示す。 (B):抗CD26抗体、抗CD28抗体又はコントロールマウスIgGで阻害した後、J.CD26wt細胞を(A)で記載したように刺激し、IL2を測定した。グラフの値は、3回の独立した実験の3培養から求めた平均値±S.E.を示す。「*」及び「**」は、抗CD26mAbでの阻害により得られた有意な阻害結果を示す(p<0.05)。また、「#」及び「##」は、抗CD28mAbでの阻害により得られた有意な阻害結果を示す(p<0.05)。 NT-Fc及び抗CD3mAbの共刺激により、末梢血T細胞が増殖することを示す図である。 (A):1×105/wellのT細胞を、グラフ下に記載された抗体及び/又はFc融合タンパク質(抗CD3抗体、0.05μg/ml;抗CD28抗体、抗CD26抗体、Fcγ1、NT-Fc、NTΔSCD-Fc、各5μg/ml)を固定化した96ウェル平底プレートで培養した。96時間培養した後、16時間の[3H]-チミジン(TdR)の取り込みにより、増殖を測定した。グラフの値は、5人のドナーの3培養から求めた平均値±S.E.を示す。「*」は有意な増加を示し(p<0.05)、また、「**」は対照に比べて有意な変化の無いことを示す。 (B):1×105/wellのT細胞を、抗CD3抗体の存在下(0.05μg/ml)、グラフ下に記載された濃度のFc融合タンパク質を固定化した96ウェル平底プレートで培養した。増殖は、(A)に示すように測定した。グラフの値は、5人のドナーの3培養から求めた平均値±S.E.を示す。「*」は、対照と比べて有意な増加を示す(p<0.05)。 (C):1×105/wellのT細胞を、抗CD3抗体の存在下(0.05μg/ml)、0.05%グルタルアルデヒドで固定化した様々な量のCHO形質転換体と溶液中で培養した。「Cav-wt+CHO」、「Cav-ΔSCD+CHO」又は「mock+CHO」は、それぞれ、GFP-全長caveolin-1、GFP-骨格領域を除いたcaveolin-1又はGFP発現ベクターでトランスフェクトしたCHO細胞を意味する。増殖は、(A)に示すように測定した。グラフの値は、5人のドナーの3培養から求めた平均値±S.E.を示す。「*」は、対照と比べて有意な増加を示す(p<0.05)。 NT-Fcにより誘導されるT細胞の増殖が、抗CD26mAbにより阻害されることを示す図である。 (A):可溶性の抗CD26抗体、抗CD28抗体又はコントロールマウスIgGでT細胞をブロックした後、図8Aと同様の方法でT細胞を刺激し、増殖を測定した。グラフの値は、5人のドナーの3培養から求めた平均値±S.E.を示す。「*」又は「***」は、抗CD26mAb又はNT-Fcでの阻害により得られた有意な阻害結果を示す(p<0.05)。また、「**」は、抗CD28mAbでの阻害により得られた有意な阻害結果を示す(p<0.05)。 (B):可溶性の抗CD26mAb、抗CD28mAb又はコントロールマウスIgG(0, 0.5, 5.0, 10.0, 20.0及び50μg/ml)とT細胞をインキュベーションすることでブロックした後、図8Aと同様の方法でT細胞をプレートに結合した抗CD3抗体(0.05μg/ml)及びNT-Fc(5μg/ml)で刺激し、図8Aと同様の方法で増殖を測定した。グラフの値は、5人のドナーの3培養から求めた平均値±S.E.を示す。「*」は、対照に比べて有意な増加を示す(p<0.05)。 全長のCD26(CD26wt)、CD26-CD10キメラ受容体(CD26+CD10 cyto)、又は750番目のヒスチジン残基をグルタミン酸に変異させたCD26(CD26H750E)で安定的にトランスフェクトしたJurkat形質転換体(1×104/well)を用いた。これらの細胞をプレートに結合した抗CD3抗体(1.0μg/ml)でプレートに結合したNT-Fc(10μg/ml)の存在下又は非存在下で刺激した。パネル(a):72時間培養した後、8時間の[3H]-チミジン(TdR)の取り込みにより、増殖を測定した。グラフの値は、3培養から求めた平均値±S.E.を示す。「*」は対照と比較して有意な増加を示す(p<0.05)。パネル(b):Jurkat形質転換体をパネル(a)のように刺激し、核タンパク質(NE)の抽出物を回収した。NE各5μgを用いてELISAを基にしたDNA結合タンパク質アッセイを行った。p65 NF-κBコンポーネントへの結合活性は、450 nmのOD値で表した。グラフの値は、3培養から求めた平均値±S.E.を示す。「*」は有意な増加を示す(p<0.05)。 二量体のCD26の細胞質側領域が、抗CD3とcaveolin-1の共刺激に必要であり、CARMA1と結合することを示す図である。 (A)及び(B):CD26 AA1-10 Fcの模式図及びCD26 AA1-10 FcのSDS-PAGEの結果を示す。 (C):Jurkat T細胞上清において、Fcγ1(b)又はCD26 AA1-10 Fc(c)を用いたプルダウンアッセイ行い、2次元電気泳動で展開した結果を示す。(a)には、用いたJurkat T細胞上清の二次元電気泳動図を示す。 二量体のCD26の細胞質側領域が、CARMA1と結合することを示す図である。 (A):Jurkat細胞を50μgのFLAGペプチド(F)(DYKDDDDK)(配列番号7)又は図上部に示された量のCD26細胞質側領域の合成ペプチド(MKTPWKVLLGDYKDDDDK)(配列番号6)で処理し、CD26の細胞質側末端とFcγ1を含有するFc融合タンパク質(CD26 AA1-10Fc)で免疫沈降した結果を示す(各1 mg)。 (B):1×105/wellの293FT形質転換体は、Xpressタグ−全長CARMA1(CARMA1wt)と共に、V5タグ−全長CD26(CD26wt)、CD26-CD10キメラ受容体(CD26-CD10)又は750番目のヒスチジン残基をグルタミン酸に変異させたCD26(CD26H750E)で一過性にトランスフェクトした。細胞をTBSDバッファーで溶解し、抗V5mAbで免疫沈降した。免疫沈降複合体を5-20% SDS-PAGEで分離し、抗Xpress mAbでイムノブロットした(上パネル)。その後、メンブレンから抗Xpress mAbをはがし、抗V5mAbを結合させた(下パネル)。図12Bに示す結果と同様の結果が、独立した3回の実験で得られた。 二量体のCD26の細胞質側領域が、CARMA1と結合することを示す図である。 (A):CARMA1の各コンストラクト、全長のCARMA1(CARMA1wt)、SH3及びGUK領域を除いたCARMA1(CARMA1(1-742))、及びPDZ、SH3及びGUK領域を除いたCARMA1(CARMA1(1-660))を示す図である。 (B):1×107/サンプルの293FT細胞を、V5タグ-CD26wtと共にXpressタグ-CARMA1wt、CARMA1(1-742)又はCARMA1(1-660)で一過性にトランスフェクトした。細胞をTBSDバッファーで溶解し、抗Xpress mAbで免疫沈降した。免疫沈降複合体を5-20% SDS-PAGEで分離し、抗V5 mAbでイムノブロットした(上パネル)。その後、メンブレンから抗V5 mAbをはがし、抗Xpress mAbを結合させた(下パネル)。図13Aに示す結果と同様の結果が、独立した3回の実験で得られた。 JPM50.6形質転換体を、図10に示すように、プレートに結合した抗CD3抗体でプレートに結合させたNT-Fcの存在下又は非存在下で刺激した。パネル(a):72時間培養した後、8時間の[3H]-チミジン(TdR)の取り込みにより、増殖を測定した。グラフの値は、3培養から求めた平均値±S.E.を示す。「*」は対照と比較して有意な増加を示す(p<0.05)。パネル(b):JPM50.6形質転換体をパネル(a)のように刺激し、NEを回収した。NE各5μgを用いてELISAを基にしたDNA結合タンパク質アッセイを行った。p65 NF-κBコンポーネントへの結合活性は、450 nmのOD値で表した。グラフの値は、3回の実験から求めた平均値±S.E.を示す。「*」は有意な増加を示す(p<0.05)。「Xpress vec.」又は「V5 vec.」は、それぞれmockであるpcDNA4/HisMax又はpEF6/V5ベクターを表す。 抗CD3抗体及びNT-Fcの共刺激にによるCD26、CARMA1、Bcl10、IKKβ及びPDK1からなる複合体の脂質ラフトへの動員を示す図である。 (A):5×107/サンプルのJ.CD26細胞を抗CD3抗体及びNT-Fcで刺激し、細胞溶解液をショ糖勾配遠心により調製した。CD26、CARMA1、Bcl10、IKKβ及びPDK1の分布を特異抗体によるイムノブロットにより明らかにした。同様の結果が独立した3回の実験で得られた。 (B):5×107/サンプルのJ.CD26細胞を抗CD3抗体及びNT-Fcで刺激し、(A)のように脂質ラフト画分を調製した。脂質ラフトをコントロールIgG(レーン1)又は抗CD26mAb(レーン2)で免疫沈降した。免疫沈降複合体、及び用いた脂質ラフト画分の20%量(レーン3)をSDS-PAGE中で分離させ、図15Bに記載した各抗体でイムノブロットした。黒矢頭は、PDK1の位置を示し、星印は免疫グロブリン重鎖の位置を示す。同様の結果が、独立した3回の実験で得られた。 抗CD3及びcaveolin-1がCD26複合体形成を誘導することを示す図である。 (A):単離した新鮮なT細胞を、コントロールIgG及びFcγ1が結合したポリスチレンラテックスビーズ(パネルa)又は抗CD3抗体及びNT-Fcが結合したポリスチレンラテックスビーズ(パネルb)で刺激した。細胞をポリ-L-リジン被覆カバースリップに付着させた後、細胞を固定し、透過処理し、染色して共焦点レーザー顕微鏡により可視化した。(A)は、異なる干渉コントラストを有するFITCチャネル(CD26)及びテキサスレッドチャネル(CARMA1)のウィンドウを重ね合わせて得られたものである。5回の独立した実験のそれぞれにおいて50細胞について観察を行った。顕微鏡像は、観察した細胞の75%を超える代表例である。バーは10μmスケールを示す。 (B):5×107/サンプルのT細胞を抗CD3抗体及びNT-Fcで10分間刺激し、その細胞溶解液をTBSDバッファーを用いて調製した。抗CD26 mAbを用いて免疫沈降を行った。免疫沈降複合物をSDS-PAGE中で分離し、特異抗体でイムノブロットした。黒矢頭は、PDK1の位置を示し、星印は免疫グロブリン重鎖の位置を示す。同様の結果が、独立した5回の実験で得られた。 (A):ドットブロットは、AIM-V培地(a)中の末梢血T細胞、又は抗CD3抗体及びFcγ1での刺激(b)、抗CD3抗体及びNT-Fc(c)もしくは抗CD3抗体及びNTΔSCD-Fcにより刺激された末梢血T細胞のIFN-γ(FITC)及びIL-4(PE)の細胞内染色を示す。同様の結果が、5人のドナーの実験により得られた。 (B):ドットブロットは、抗CD3抗体及びNT-Fc(a)又は抗CD3及びNTΔSCD-Fcで刺激された末梢血T細胞における、IFN-γ(FITC)の細胞内染色及びCD26(PE)の細胞表面染色を示す。各集団の陽性のパーセンテージ及び平均蛍光強度(MFI)を示す。同様の結果が5人のドナーの実験により得られた。 TCR及びCD26共刺激によるシグナル伝達のモデルを示す図である。 このモデルでは、ペプチドを提示したMHCクラスIIとTCR複合体の連結を介して細胞が刺激されると、細胞質のITAMのリン酸化が誘導され、PI3K及びPKCθの活性化を介してIKKと共にPDK1が動員され活性化される。一方、caveolin-1は、そのN末端細胞外領域が抗原提示細胞上に存在しており、caveolin-1は細胞表面上に二量体として存在するCD26と連結する。そして、CD26はCARMA1と相互作用して脂質ラフトに動員される。CD26とCARMA1の脂質ラフトへの動員により、CARMA1-Bcl10-PDK1-IKK複合体も動員され、IKK複合体の活性化を誘導する。そして、最終的にNF-κBを活性化する。
配列番号1:配列番号2で示されるヒトCD26をコードするDNAの塩基配列を示す。
配列番号2:ヒトCD26のアミノ酸配列を示す。
配列番号3:配列番号4で示されるヒトCARMA1をコードするDNAの塩基配列を示す。
配列番号4:ヒトCARMA1のアミノ酸配列を示す。
配列番号5:融合タンパク質CD26 AA1-10-Fcに含まれるCD26の細胞質側末端10アミノ酸残基の配列を示す。
配列番号6:実施例で用いた合成ペプチド、CD26 AA1-10のアミノ酸配列を示す。
配列番号7:図12で用いたFLAGペプチドのアミノ酸配列を示す。

Claims (24)

  1. 被験物質存在下又は被験物質非存在下でCD26とCARMA1とを接触させることを特徴とする、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質のスクリーニング方法。
  2. 被験物質存在下でCD26とCARMA1とを接触させた場合におけるCD26とCARMA1との結合量と、被験物質非存在下でCD26とCARMA1とを接触させた場合におけるCD26とCARMA1との結合量とを測定することを含む、請求項1記載の方法。
  3. ヒト末梢血T細胞に発現するCD26とCARMA1とを接触させることを含む、請求項2記載の方法。
  4. CARMA1と、細胞に発現させたCD26とを接触させることを含む、請求項2記載の方法。
  5. 細胞に発現させたCD26とCARMA1とを接触させることを含む、請求項2記載の方法。
  6. 細胞がヒトT細胞由来の細胞である、請求項4又は5記載の方法。
  7. 細胞が、293細胞又はJPM50.6細胞である、請求項5記載の方法。
  8. T細胞由来の細胞がJurkat T細胞である、請求項6記載の方法。
  9. CD26とCARMA1との結合量を、免疫沈降法により測定することを含む、請求項2〜8のいずれか1項記載の方法。
  10. CD26が、CD26の細胞質側末端の少なくとも一部を含有する領域とFcγ1領域との融合タンパク質である、請求項2記載の方法。
  11. 被験物質存在下でCD26とCARMA1とを接触させた場合におけるT細胞増殖活性と、被験物質非存在下でCD26とCARMA1とを接触させた場合におけるT細胞増殖活性とを測定することを含む、請求項1記載の方法。
  12. 被験物質存在下でCD26とCARMA1とを接触させた場合におけるNF-κB活性と、被験物質非存在下でCD26とCARMA1とを接触させた場合におけるNF-κB活性とを測定することを含む、請求項1記載の方法。
  13. ヒト末梢血T細胞に発現するCD26とCARMA1とを接触させることを含む、請求項11又は12記載の方法。
  14. CARMA1と、T細胞由来の細胞に発現させたCD26とを接触させることを含む、請求項11又は12記載の方法。
  15. T細胞由来の細胞がJurkat T細胞である、請求項14記載の方法。
  16. T細胞由来の細胞に発現させたCD26とCARMA1とを接触させることを含む、請求項11又は12記載の方法。
  17. T細胞由来の細胞がJPM50.6細胞である、請求項16記載の方法。
  18. CD26とCARMA1との結合を変化させる物質が、免疫抑制剤の有効成分である、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
  19. CD26とCARMA1との結合を変化させる物質が、免疫賦活剤の有効成分である、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
  20. CD26とCARMA1とを含有する、CD26とCARMA1との結合を変化させる物質のスクリーニング用キット。
  21. 被験物質と、細胞に発現させたCD26とを接触させることを含む、CD26の二量体形成を阻害する物質のスクリーニング方法。
  22. CD26の二量体形成を阻害する物質を、前記細胞におけるSDS-PAGE解析結果、T細胞増殖活性又はNF-κB活性を指標としてスクリーニングすることを含む、請求項21記載の方法。
  23. CD26の二量体形成を阻害する物質が、免疫抑制剤の有効成分である、請求項21又は22記載の方法。
  24. CD26を含有する、CD26の二量体形成を阻害する物質のスクリーニング用キット。
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