JP2008164237A - ヒートポンプシステム - Google Patents

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正宏 林
Yoshihito Sakamoto
義仁 坂本
Toshio Shinohara
敏雄 篠原
Satoru Kimizuka
哲 君塚
Shinji Takasugi
真司 高杉
Masayuki Tateno
正之 舘野
Yutaka Takahashi
豊 高橋
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Abstract

【課題】エネルギー効率が高く、熱源が長期間安定しており、安価に構築できる冷暖房・給湯用ヒートポンプシステムを提供する。
【解決手段】一次側熱交換器9として水熱源熱交換器5と空気熱源熱交換器7を並列に配置し、水熱源熱交換器5または空気熱源熱交換器7のいずれか一方を選択的に使用して建築物の冷暖房または冷暖房と給湯に用いるヒートポンプシステムであって、水熱源熱交換器5を、熱源水を貯留するタンク21と、タンク21の中に配置した二重管23とで構成し、二重管23は、熱源水が通流する内管27と、冷媒が通流する外管25と、を備えて構成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、建築物の冷暖房・給湯に用いるヒートポンプシステムに関し、さらに詳しく言えば、空気熱源熱交換器と水熱源熱交換器を併設し、いずれか一方を用いて運転するヒートポンプシステムに関するものである。
電気を使用して建築物の冷暖房や給湯を行うシステムの多くは、大気(空気)を熱源とするヒートポンプシステム(以下、「空気熱源ヒートポンプシステム」という。)を採用している。このような空気熱源ヒートポンプシステムにおいては、冬季には大気から熱を吸熱して建築物内の空気を加温し、夏季には建築物内の空気から吸熱して大気中に排熱する。
しかしながら、冬季に冷たい大気から吸熱することも、夏季に暖かい大気に排熱することも、エネルギー利用面で効率が悪く、その分システムの運転に多くの電気エネルギーを消費するという問題がある。
また、空気熱源ヒートポンプシステムは、冬季暖房時に一次側熱交換器が冷えるため大気中の水分がその周りに着氷し、熱交換性能を低下させるという問題もある。これを防止するため、着氷した氷を溶かすための余分な電気エネルギーも必要となる。また、夏季暖房時には一次側熱交換器から熱風を屋外に吹き出すため、都市部のヒートアイランド現象を引き起こす要因にもなっている。
このように、空気熱源ヒートポンプシステムには種々の問題があるものの、その一方で、熱源とする大気が無限にあり、絶えず流動しているために、熱源として長期安定性が高いというメリットもある。
空気熱源ヒートポンプシステムが持つ前記の問題点を解決するシステムとして、地下水や河川水・湖沼水、あるいは地中の地盤の温度で温度調整された循環水(この循環水を熱源とする方法を以下「地中熱利用方法」という。)などの水を熱源とするヒートポンプシステム(以下、「水熱源ヒートポンプシステム」という。)がある。
地下水などの熱源水は、大気に比べて冬季は暖かく夏季は冷たいため、空気を熱源とするよりもエネルギー効率が高いという特徴がある。すなわち、水熱源ヒートポンプシステムの運転においては、少ない電気エネルギーで冷暖房に必要な熱を得ることができる。このため、二酸化炭素排出量削減技術のひとつとして最近注目されている技術であり、欧米では既に広く普及している。
なお、電気による入力エネルギーに対する冷暖房の出力エネルギーの割合を以下「エネルギー効率」という。
しかし、水熱源ヒートポンプシステムは、熱源水の種類によって内容は異なるが、熱源となる熱源水の長期安定性に劣るという大きな問題がある。例えば、地下水の場合、地下水流や地下水位の変動により井戸が枯渇する危険性があり、河川水・湖沼水ならば洪水や工場排水などによる汚濁の影響を受ける。
また他の問題として、地下水や河川水・湖沼水を熱源水として用い厳寒時の暖房をする場合、熱源水がヒートポンプ内で冷やされすぎて凍結し、運転不能に陥るという危険性もある。
他方、水熱源ヒートポンプシステムの中でも地中熱利用方法(この方法の概念図を図14に示す)では、水熱源熱交換器に送られる熱源水は、閉鎖された配管の中だけを通流する循環水であるため枯渇や汚濁の危険性はない。また、熱源水として不凍液を使用できるため、凍結の心配もない。
しかし、地中熱利用方法においても、循環水から地盤への排熱(冷房時)や地盤から循環水への吸熱(暖房時)により、地中配管周囲の地盤温度が徐々に上昇または下降するため、地中配管の長さに比べて冷暖房負荷が大きい場合、長期間運転するとやがて循環水と大気との温度差が小さくなり、結局エネルギー効率が落ちてくるという熱源安定性の問題がある。
水熱源熱ヒートポンプシステムには、熱交換器の構造上の課題もある。現状用いられている水熱源熱交換器の多くは、図15の模式図に示す二重管式(図15(a))、多管式(図15(b))、プレート式(図15(c))に分類できる。なお、図15の各図は、熱交換器の断面図と平面図を模式的に示しており、着色部分は冷媒の通流する流路を示している。
図15に示したいずれの熱交換器も銅など熱伝導性に優れた金属材料で製作される。
二重管式の場合、内管あるいは外管のいずれか一方に冷媒を、他方に熱源水を通して冷媒と熱源水の間で熱交換させる。実際には長尺の二重管を螺旋状に加工して用いることが多い。この方式は製作費が安いというメリットがあるが、熱交換面積が小さいため熱交換性能が低いという問題がある。
多管式は、熱源水が入った容器の中に冷媒が通る数多くの直線状管を配置したものである。この方式は二重管式と同様に熱交換性能が低い。管の延長を大きくすれば熱交換能力は高まるが、その分製造コストが増える。
プレート式は、多数の金属板を狭い間隔で平行に配置し、その隙間に冷媒と熱源水を交互に通すものである。この方式は、熱交換面積が大きいため熱交換性能は高いが、隙間が狭いためにゴミや析出物が詰まって目詰まりしやすいとともに、冷媒が低温の時粘性が高くなり、流動抵抗が上昇して圧力損失を生じやすいという問題がある。また、精密な加工を要するため高価になるという問題がある。
また、水熱源ヒートポンプシステムは空気熱源ヒートポンプシステムに比べ未だ普及しておらず、生産台数が非常に少ないために、ヒートポンプの価格が空気熱源のものに比べて非常に高いとともに、温度センサーやインバーターを用いた運転制御技術がいまだ遅れているという課題もある。
以上のような空気熱源ヒートポンプシステムと水熱源ヒートポンプシステムのそれぞれの欠点を補う方法として、空気熱源と水熱源を併設する方法(以下「熱源併設システム」という。)がある(例えば、特許文献1参照)。
熱源併設システムの基本的な考え方は、平常時はエネルギー効率が高い水熱源を使用して運転し、熱源水に前記のような問題が生じた場合など異常発生時には、水熱源から空気熱源に切り替えて運転するというものである。この熱源併設方式によれば、高いエネルギー効率での運転と熱源の長期間安定性という両方の課題を解決することができる。
特開平11-101518号公報
しかし、熱源併設システムでは、一次側熱交換器が空気熱源用と水熱源熱用の二つになり、冷凍サイクル経路の容積が増えるため、これに充填するための冷媒(フロン系ガスなどの動作流体)の量が大幅に増える。冷媒は高価であるため、システム構築のコストが増加するという問題を生じる。
また、図16のように、空気熱源熱交換器と水熱源熱交換器を直列に配列すると冷凍サイクル経路が長くなるため、冷媒量が増えるだけでなく、流動抵抗が増加してエネルギー効率が低下する問題もある。
本発明は前述した従来技術の問題点を鑑みてなされたものであり、以下の課題を解決する冷暖房・給湯用ヒートポンプシステムを提供することを目的とする。
(1)エネルギー効率が高いこと。
(2)熱源が長期間安定していること。
(3)安価に構築できること。
(1)本発明に係るヒートポンプシステムは、一次側熱交換器として水熱源熱交換器と空気熱源熱交換器を並列に配置し、前記水熱源熱交換器または前記空気熱源熱交換器のいずれか一方を選択的に使用して建築物の冷暖房または冷暖房と給湯に用いるヒートポンプシステムであって、前記水熱源熱交換器を、熱源水を貯留するタンクと、該タンクの中に配置した二重管とで構成し、該二重管は、熱源水が通流する内管と、冷媒が通流する外管と、を備えて構成されていることを特徴とするものである。
(2)また、一次側熱交換器として水熱源熱交換器と空気熱源熱交換器を並列に配置し、前記水熱源熱交換器または前記空気熱源熱交換器のいずれか一方を選択的に使用して建築物の冷暖房または冷暖房と給湯に用いるヒートポンプシステムであって、前記水熱源熱交換器および前記空気熱源熱交換器のそれぞれと前記ヒートポンプシステムにおける二次側熱交換器の下流側を連結する冷媒配管を設け、前記水熱源熱交換器または前記空気熱源熱交換器のうち使用していない熱交換器内の冷媒を、冷凍サイクル内の圧力差を利用して、使用している熱交換器を含んで構成される冷凍サイクルの冷媒経路内に吸い出すようにしたことを特徴とするものである。
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、水熱源熱交換器を、熱源水を貯留するタンクと、該タンクの中に配置した二重管とで構成し、該二重管は、熱源水が通流する内管と、冷媒が通流する外管と、を備えて構成されていることを特徴とするものである。
(4)また、上記(1)〜(3)に記載のヒートポンプシステムを、空気熱源ヒートポンプとして完成している市販のヒートポンプシステムに、水熱源熱交換器を加えることによって水熱源熱交換器または空気熱源熱交換器のいずれか一方を選択的に使用するヒートポンプシステムに改造してなることを特徴とするものである。
この場合、空気熱源ヒートポンプの運転制御装置を水熱源使用時にも使用して運転するようにするのが好ましい。
本発明においては、空気熱源熱交換器と水熱源熱交換器を併設したシステムを構成し、平常時は水熱源を使用し、水熱源に異常が発生した場合は空気熱源に切り替えて運転することにより、安定した熱源が得られるとともに、エネルギー効率が高いヒートポンプシステムにすることができる。
また、水熱源熱交換器を、熱源水を貯留するタンクと、該タンクの中に配置した二重管とで構成し、該二重管は、熱源水が通流する内管と、冷媒が通流する外管と、を備えて構成することにより、冷媒と熱源水との熱交換性能が高まりエネルギー効率が高まるとともに、熱源水の熱容量が大きいため凍結の危険性が低下して、安定性の高い水熱源熱交換器を得ることができる。
[実施の形態1]
図1は本発明の一実施の形態に係る冷暖房システムの基本構成を模式的に示した図である。図1に示されるように、本実施の形態に係る冷暖房システムは、室内に設置される二次側熱交換器1と、冷媒を圧縮する圧縮機3と、水熱源熱交換器5及び空気熱源熱交換器7からなる一次側熱交換器9と、膨張弁およびその周囲にある冷媒通流方向切り替えバルブを含んでなる膨張器11と、これらの各機器を連結して冷媒を通流させる冷媒配管13と、を備えている。
本実施の形態においては、冷凍サイクルの中に、一次側熱交換器9として水熱源熱交換器5と空気熱源熱交換器7とを並列に配置したものである。そして、冷媒配管13の途中に開閉弁15、16を設け、開閉弁15、16の開閉動作によって、水熱源熱交換器5と空気熱源熱交換器7はそれぞれいずれか一方が作動しているときは、他方への冷媒の通流を停止して機能させないようにしている。図中、「開」状態にある開閉弁を白抜きで示し、「閉」状態にある開閉弁を黒塗りで示している。
一次側熱交換器9は、圧縮機−凝縮器−膨張器−蒸発器からなる冷凍サイクルの中で、冷房時は凝縮器として、暖房時は蒸発器として機能する。
二次側熱交換器1については様々な形態が考えられるが、本発明ではその形態は問わない。
なお、暖房と給湯は冷凍サイクル内で同じ原理で行うとともに、二次側熱交換器1の形態の問題であるため、以下の説明においては給湯時の説明は省略する。
図1の模式図をより具体的に表した冷媒経路図を図2に示す。図2は、一次側熱交換器9として水熱源熱交換器5を使用して冷房運転をしている状態の冷媒経路を表したものである。
図2に示すように、冷媒経路には、熱源を切り替える熱源切替弁17と冷房・暖房を切り替える冷暖房切替弁19の2つの経路切替弁が設けられている。
図2においては、冷媒が流れている冷媒通流経路は実線で、冷媒が流れていない非通流経路は点線で、それぞれ表示している。また、実線矢印は冷房時に冷媒が流れる方向を、点線矢印は暖房時に冷媒が流れる方向を、二重線矢印は冷房・暖房時に冷媒が流れる方向を、それぞれ示している。
図2に示すように熱源併設のヒートポンプシステムを構成すれば、2個の開閉弁と2個の経路切替弁を操作することにより、熱源の切り替えと冷・暖房の切り替えが容易にできる。実際には、平常時はエネルギー効率の高い水熱源熱交換器5を作動させて運転し、熱源水に問題が発生した場合は空気熱源熱交換器7に切り替えて運転する。
以上のような熱源併用システム構成することにより、空気熱源ヒートポンプシステムよりも高いエネルギー効率を得ることができるとともに、水熱源熱ヒートポンプシステムよりも長期間安定して運転することができる。
また、図16のように空気熱源熱交換器と水熱源熱交換器を直列に配置し、一方を機能させて他方は冷媒が通過するだけとするシステム構成に比べて、冷凍サイクル経路が短くなるため、冷媒の流動抵抗が小さく圧力損失によるエネルギーロスが少なくなる。
図3は、図1、図2に示した冷暖房システムにおける水熱源熱交換器5の概念図である。水熱源熱交換器5は、熱源水を貯留するタンク21と、タンク内に配置された二重管23とからなり、二重管23は、冷媒が通る外管25と熱源水が通る内管27から構成されている。
タンク21の中には熱源水が二重管23の上端付近まで入っている。
タンク21の上下対角位置には熱原水の出入口が設けられ、熱源水配管29が接続されている。熱源水の出入口を上記のように、上下対角位置にすることにより、タンク中央部に配置した二重管23を挟んで出入口が配置されるようになるので、熱源水が二重管23を横切ってタンク内を通流することになり、二重管23の冷却効果が高くなる。また、タンク内で熱源水が通流することで熱源水の攪拌効果もあり、タンク内の熱源水の温度分布を均一にする効果もある。
このように、タンク21における熱源水の出入口は、タンク内の熱源水に攪拌や対流を生じやすいような位置や形状を工夫するのが好ましい。
二重管23を構成する内管27は、二重管23の両端部付近から外方に引き出され、タンク内を通過してタンク外において熱源水配管29に接続されている。また、外管25の両端もタンク外において冷媒配管13に接続されている。
なお、図3は模式図であるため二重管23を直線状管で表示しているが、実際には螺旋状などに曲げ加工して二重管部の長さを長くし、冷媒と熱源水の熱交換面積を大きくする。
図4に二重管23の具体例を示す。図4(a)は螺旋状に加工した二重管である。立体的なので、その分熱交換面積を大きくとることができる。図4(b)はスネーク状に屈曲加工した二重管である。この場合は、平面的なので、タンクの幅が狭い場合などに好適である。
図4(a)、(b)のいずれも、径の大きな管の中に小さな径の管を挿入した後、所定の形状に曲げ加工したものである。管の素材は銅やアルミニウムなど軟らかい金属が使用されるため、曲げ加工が容易で安いコストで製作できる。
水熱源熱交換器5をこのように構成することにより、二重管23の外管25を通る冷媒はその内側、外側両方の熱源水と熱交換できるため、熱交換面積が大きくなり熱交換性能が高まって、結果的にエネルギー効率が高くなる。
また、タンク内の水量は冷媒量に比べて相当多いため、熱源水の熱容量は冷媒に比べて非常に大きい。このため、冷媒との熱交換による熱源水の急激な温度変化を抑えることができる。その結果、地下水などを用いた熱源水でも厳冬時に凍結することなく、安定性の高い熱源が得られる。
なお、図3においては、冷媒の流れの向きは、冷房時のものを示しているが、暖房時にはこの逆で図中下から上に流すようにする。熱源水は二重管内もタンク内も下から上へ流動する図になっているが、実際には熱源水の動きは、これと逆でもよいし、冷房と暖房で向きを変えてもよい。
[実施の形態2]
図5、図6は本発明の実施の形態2に係る冷暖房システムの冷媒経路を示した図であり、図5が一次側熱交換器として水熱源熱交換器5を機能させて冷房運転をしている状態を示し、図6が一次側熱交換器として空気源熱交換器7を機能させて冷房運転をしている状態を示している。図5、図6において、図2と同一機器には同一の符号を付してある。
図5、図6に示すように、本実施の形態における冷暖房システムにおいては、実施の形態1と同様に、一次側熱交換器として水熱源熱交換器5と空気熱源熱交換器7とを切り換えて使用できるようにしたものである。また、冷媒経路には、熱源を切り替える熱源切替弁33と冷房・暖房を切り替える冷暖房切替弁35の2つの経路切替弁が設けられており、これらの経路切替弁は共に四方弁によって構成されている。
冷凍サイクルにおいては、圧縮から凝縮を経て膨張に至るまでの間は冷媒の圧力が高く、膨張から蒸発を経て圧縮に至るまでの間は冷媒の圧力が低い。したがって、図5、図6における冷媒回路において、圧縮機3から膨張器11までの冷媒が通流する区間は冷媒の圧力が高く、膨張器11から圧縮機3までの区間は圧力が低い。そこで、図5、図6においては、高圧部を太線で、低圧部を細線で表示している。また、使用していない一次側熱源の両側の経路(冷媒は入っているが、通流していない)は点線で表示している。また、矢印は冷媒の通流方向を示している。
上記のように構成された本実施の形態の動作を説明する。
冷房時において、水熱源熱交換器5を使用している場合、図5に示すように、圧縮機3で高圧に圧縮された冷媒は、高温高圧状態で水熱源熱交換器5まで流れ、水熱源熱交換器5で冷却されて高圧のまま液状になり、膨張器11に流れる。膨張器11で、冷媒は低温低圧になり、二次側熱交換器1で蒸発して圧縮機3に戻るという冷凍サイクルを繰り返す。
上記のような、水熱源熱交換器5を機能させた運転から空気熱源熱交換器7を機能させる運転に切り替える場合、図6に示すように、水熱源熱交換器5の出口側の開閉弁15を閉じ、空気熱源熱交換器7の出口側の開閉弁16を開くと共に、熱源切替弁33を切り替え、圧縮機3の出口側を空気熱源熱交換器7の入口側に連通するようにする。このとき、水熱源熱交換器5と熱源切替弁33をつないでいる経路(非通流経路)が熱源切替弁33を介して圧縮機3の入り側に連通する低圧側の経路とつながるようになっている。このため、高圧状態だった水熱源熱交換器内の冷媒は低圧の通流経路に吸い出されて低圧通流経路と同じ圧力まで低下するという現象が生じる。
以上の作用により、水熱源熱交換器5内、水熱源熱交換器5と開閉弁15をつなぐ経路内、および水熱源熱交換器5と熱源切替弁33をつなぐ経路内の冷媒の大部分は、空気熱源熱交換器使用時の経路内に吸い出されることになる。そのため、使用しない冷媒が少なくなり、結果として経路内に充填する冷媒の総量を少なくできる。
上記の説明は、水熱源熱交換器5を機能させている図5の状態から、空気熱源熱交換器7を機能させる図6の状態に切り替える場合であるが、逆に空気熱源熱交換器7を機能させている図6の状態から、水熱源熱交換器5を機能させる図5の状態に切り替える場合であっても、全く同様に、機能しなくなる空気熱源熱交換器側の経路が低圧側の経路につながるので、空気熱源熱交換器側の高圧の冷媒が水熱源熱交換器使用側の経路に吸い出される。
図5、図6は冷房時の冷媒回路を示したものであるが、図7、図8は暖房時の冷媒回路を示している。図7が水熱源熱交換器5を使用している状態であり、図8が空気熱源熱交換器7を使用している状態である。暖房時においては、使用していない一次側熱交換器内に高圧の冷媒が残存することがないので、使用していない冷媒が多量に回路内に残存することはない。
以上のように、本実施の形態においては、水熱源熱交換器5と空気熱源熱交換器7を並列に配置し、使用していない熱交換器の冷媒回路を、二次側熱交換器1の出口側の冷媒回路に連通させるようにしたので、使用していない一次側熱交換器内に残存する高圧の冷媒が使用している冷媒回路側に吸い出されて使用できるようになるので、使用しない冷媒が少なくなり、結果として経路内に充填する冷媒の総量を少なくでき、コスト低減を実現できる。
なお、図5〜図8に示した回路構成は一例であり、他の回路構成であってもよく、例えば2個の4方弁37、38を用いた例としては、図9〜図12に示す例がある。図9は水熱源熱交換器5を機能させた冷房時の状態、図10は空気熱源熱交換器7を機能させた冷房時の状態、図11は水熱源熱交換器5を機能させた暖房時の状態、図12は空気熱源熱交換器7を機能させた暖房時の状態、をそれぞれ示している。
また、4方弁を使用しなくても、水熱源熱交換器5と空気熱源熱交換器7とを並列に配置すると共に、両方の熱交換器のそれぞれと二次側熱交換器1の下流側とを連結する冷媒回路を構成して、これに開閉弁を適宜配置することによっても同様の機能を有する回路を構成できる。
本発明による熱源併用の冷暖房システムの実際の効果を確認するために行った実施例について説明する。図13はこの実施例の構成の説明図である。図13に示すように、建築物を模擬した仮設ハウス39を設け、ハウス内の温度一定に保つように冷房及び暖房を行い、各種の計測を実施した。
使用した装置は、空気を熱源とする市販の家庭用エアコンを入手し、これに水熱源熱交換器(タンク)41を加えるとともに、冷媒経路を図5に示すように改造して、冷暖房ヒートポンプシステムとしたものである。すなわち、室内器43は市販品をそのまま用いて二次側熱交換器とし、圧縮機と膨張器及び空気熱交換用ファン(一次側熱交換器)を内蔵した室外器45には、冷暖房切り替え用弁と熱源切替用弁を設けて、図5に示す冷媒経路を構成した。使用した家庭用エアコンは、最近の製品と同様に、室内外の温度や湿度、冷暖房負荷量に応じてインバーター制御など高度な運転制御機能を有する製品である。
熱源は空気熱源と水熱源の2種類とし、水熱源としては地中熱利用方法を用いた。地中熱で熱源水を温度調整する方法にはいくつかの方法があるが、ここでは、水を充填した直径191mm、長さ18mの鋼管47を地中に3本埋設し、この中にポリエチレン製の管49を挿入して、熱源水を、送水ポンプ(図示なし)を介して地中とタンクの間を循環させた。タンク41の中には、図4に示した螺旋状に加工した二重管が配置されている。
冷房時にタンク内で加温された熱源水は地中で冷やされてタンク41に戻り、暖房時にはタンク41内で冷やされた熱源水は地中で暖められてタンク41に戻ることで、空気(外気)よりもエネルギー効率の高い熱源となる。
上記の実施例により以下のような結果を得た。
(1)二つの経路切り替え弁の操作により、冷房と暖房の切り替え、および空気熱源と水熱源の切り替えをスムーズに行うことができた。
(2)タンクの出口・入口における熱源水の温度計測により、二重管の内外で冷媒と熱源水は効率良く熱交換していることを確認した。
(3)家庭用エアコン入手時に充填されていた当初の冷媒量に若干の冷媒を補充するだけで、空気熱源、水熱源とも正常に作動した。この結果、熱源切り替え時に使用しない熱源経路内の冷媒を作動する熱源経路に吸い出す機能が確認され、冷媒量を大幅に節約できた。
(4)運転に使用した電力と出力された冷暖房エネルギーの比較検討から、空気熱源運転に比べて水熱源運転は約3割エネルギー効率が高いことが確認できた。
(5)市販の空気熱源エアコンを水熱源との併設構造に改造することにより、安いコストで熱源併設ヒートポンプシステムを構築することができたとともに、当初から市販品に具備されているインバーター制御などの高度な運転制御技術を水熱源使用時にも有効に活用することができた。
以上のように冷暖房用ヒートポンプシステムを構築することにより、以下のような効果を得られる。
空気熱源熱交換器7と水熱源熱交換器5を併設したシステムを構成し、平常時は水熱源を使用し、水熱源に異常が発生した場合は空気熱源に切り替えて運転することにより、安定した熱源が得られるとともに、エネルギー効率が高いヒートポンプシステムにすることができる。
タンク21内に二重管23を内蔵した水熱源熱交換器5を構成することにより、冷媒と熱源水との熱交換性能が高まりエネルギー効率が高まるとともに、熱源水の熱容量が大きいため凍結の危険性が低下して、安定性の高い水熱源熱交換器を得ることができる。また、タンク21や二重管23を安いコストで製作することができるため、安価な水熱交換器を得ることができる。
経路切替弁を用いて、使用しない熱源側の冷媒を使用する熱源経路内に吸い出すように冷媒回路を形成することにより、少ない冷媒量で運転することができ、安いコストで熱源併用システムを構築することができる。
市販の完成した空気熱源ヒートポンプシステムに、二重管を内蔵したタンクを付加して水熱源熱交換器とする熱源併設のヒートポンプシステムを構成することにより、安いコストで熱源併設のヒートポンプシステムを構築することができる。また、市販の空気熱源システムが具備する高い運転制御技術を水熱源使用時にも活用することができる。
本発明の一実施の形態に係る冷暖房システムの基本構成を模式的に示した図である。 図1に示した冷暖房システムの冷媒経路の説明図である。 本発明の一実施の形態に係る水熱源熱交換器の説明図である。 本発明の一実施の形態に係る水熱交換器に用いる二重管の説明図である。 本発明の実施の形態2に係る冷暖房システムの冷媒経路の説明図である。 本発明の実施の形態2に係る冷暖房システムの冷媒経路の説明図である。 本発明の実施の形態2に係る冷暖房システムの冷媒経路の説明図である。 本発明の実施の形態2に係る冷暖房システムの冷媒経路の説明図である。 本発明の実施の形態2に係る冷暖房システムの冷媒経路の他の態様の説明図である。 本発明の実施の形態2に係る冷暖房システムの冷媒経路の他の態様の説明図である。 本発明の実施の形態2に係る冷暖房システムの冷媒経路の他の態様の説明図である。 本発明の実施の形態2に係る冷暖房システムの冷媒経路の他の態様の説明図である。 本発明の実施例の説明図である。 背景技術の説明図である。 背景技術の説明図である。 背景技術の説明図である。
符号の説明
1 二次側熱交換器
3 圧縮機
5 水熱源熱交換器
7 空気熱源熱交換器
9 一次側熱交換器
11 膨張器
13 冷媒配管
15、16 開閉弁
17 熱源切替弁
19 冷暖房切替弁
21 タンク
23 二重管
25 外管
27 内管
29 熱源水配管
33 熱源切替弁
35 冷暖房切替弁

Claims (4)

  1. 一次側熱交換器として水熱源熱交換器と空気熱源熱交換器を並列に配置し、前記水熱源熱交換器または前記空気熱源熱交換器のいずれか一方を選択的に使用して建築物の冷暖房または冷暖房と給湯に用いるヒートポンプシステムであって、
    前記水熱源熱交換器を、熱源水を貯留するタンクと、該タンクの中に配置した二重管とで構成し、該二重管は、熱源水が通流する内管と、冷媒が通流する外管と、を備えて構成されていることを特徴とするヒートポンプシステム。
  2. 一次側熱交換器として水熱源熱交換器と空気熱源熱交換器を並列に配置し、前記水熱源熱交換器または前記空気熱源熱交換器のいずれか一方を選択的に使用して建築物の冷暖房または冷暖房と給湯に用いるヒートポンプシステムであって、
    前記水熱源熱交換器および前記空気熱源熱交換器のそれぞれと前記ヒートポンプシステムにおける二次側熱交換器の下流側を連結する冷媒配管を設け、前記水熱源熱交換器または前記空気熱源熱交換器のうち使用していない熱交換器内の冷媒を、冷凍サイクル内の圧力差を利用して、使用している熱交換器を含んで構成される冷凍サイクルの冷媒経路内に吸い出すようにしたことを特徴とするヒートポンプシステム。
  3. 水熱源熱交換器を、熱源水を貯留するタンクと、該タンクの中に配置した二重管とで構成し、該二重管は、熱源水が通流する内管と、冷媒が通流する外管と、を備えて構成されていることを特徴とする請求項2に記載のヒートポンプシステム。
  4. 空気熱源ヒートポンプとして完成している市販のヒートポンプシステムに、水熱源熱交換器を加えることによって水熱源熱交換器または空気熱源熱交換器のいずれか一方を選択的に使用するヒートポンプシステムに改造してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒートポンプシステム。
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