JP2008152015A - 金管楽器用マウスピース - Google Patents
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Abstract
【課題】金管楽器の演奏時の肉体的な負担を軽減する。
【解決手段】金管楽器のマウスピース100は、金管楽器の本体200に連結されるシャンク部10と、演奏者の唇に接触するリム部30とを含む。シャンク部10の中心軸の方向からみて、リム部30の内周31は、当該中心軸Aに垂直なX方向に長尺な形状である。例えば、リム部30の内周31は、長円形または楕円形とされる。また、リム部30の内周31は、シャンク部10の中心軸に直交する直線を挟んで非対称である。
【選択図】図1
【解決手段】金管楽器のマウスピース100は、金管楽器の本体200に連結されるシャンク部10と、演奏者の唇に接触するリム部30とを含む。シャンク部10の中心軸の方向からみて、リム部30の内周31は、当該中心軸Aに垂直なX方向に長尺な形状である。例えば、リム部30の内周31は、長円形または楕円形とされる。また、リム部30の内周31は、シャンク部10の中心軸に直交する直線を挟んで非対称である。
【選択図】図1
Description
本発明は、金管楽器の演奏に使用されるマウスピースに関する。
トランペットやトロンボーンなど各種の金管楽器の演奏にはマウスピースが使用される。特許文献1や特許文献2に開示されるように、マウスピースは、演奏者の唇に接触する円環状のリム部と金管楽器の本体に連結される管状のシャンク部とを含む。
特開2004−61573号公報
米国特許第5353673号
ところで、図16に示すように、特許文献1や特許文献2のマウスピースを中心軸の方向からみたリム部80の形状は真円形である。これに対し、リム部80に接触する演奏者の唇50は、図16に示すように水平方向に長尺な形状である。したがって、実際に吹奏に利用できるのは唇50のうちリム部80の内側の僅かな部分に過ぎない(すなわち唇50の両端部の近傍は発音に寄与しない)。また、唇50の狭い部分がマウスピースからの圧力によって集中的に圧迫される。したがって、金管楽器を充分な音量で長時間にわたって演奏する場合の演奏者の肉体的な負担は、例えば演奏者がマウスピースを口に銜えて吹奏するクラリネットやサクソフォンなどの木管楽器と比較して大きい。以上の事情を背景として、本発明は、金管楽器の演奏時の肉体的な負担を軽減するという課題の解決を目的としている。
以上の課題を解決するために、本発明のひとつの態様に係る金管楽器用マウスピースは、演奏者の唇に接触するリム部と金管楽器の本体に連結されるシャンク部とを含み、シャンク部の中心軸の方向からみて、リム部の内周は、当該中心軸に垂直な方向(例えば図1のX方向)に長尺な形状である。すなわち、リム部の内周のうち中心軸に垂直な方向の寸法は当該方向以外における寸法よりも大きい。例えば、リム部の内周の少なくとも一部は長円形または楕円形とされる。
以上の態様においてはリム部の内周が長尺状に成形されるから、リム部と唇とで長手の方向が合致するように唇をリム部に接触させれば、唇の広い範囲をリム部の内側にて振動させることが可能となる。したがって、リム部が真円形である場合と比較して演奏者の肉体的な負担が軽減される。なお、以上のようにリム部の内周が長尺状である構成に加えて(またはこの構成に代えて)、リム部の外周が中心軸に垂直な方向に長尺な形状とされた構成を採用することも可能である。
本発明の好適な態様において、リム部の内周は、中心軸に直交する第1直線(例えば図5から図10の直線Lx)を挟んで非対称である。本態様においてはリム部が第1直線を挟んで非対称に成形されるから、相互に非対称である上唇および下唇の各々を効率的に振動させることが可能となる。したがって、演奏者の肉体的な負担はいっそう軽減される。さらに、リム部の内周を、中心軸と第1直線とに直交する第2直線(例えば図6から図10の直線Ly)を挟んで非対称な形状とすれば、演奏者の唇が左右で非対称であっても、マウスピースから唇に作用する圧力は唇の左半分と右半分とで均等化されるから、やはり演奏者の肉体的な負担が軽減される。
本発明の好適な態様において、リム部とシャンク部とを連結するカップ部の内面は、当該金管楽器用マウスピースの内径が最小となるスロートの内面が中心軸の方向からみて真円形となるように、リム部の内周からスロートにかけて連続する曲面である。本態様によれば、空気がマウスピース内を円滑に流動するから、充分な音量の楽音を安定的に発生させることが可能となる。
本発明の別の態様に係る金管楽器用マウスピースは、演奏者の唇に接触するリム部と金管楽器の本体に連結されるシャンク部とを含み、リム部のうちシャンク部の中心軸の方向における端面(例えば図13の唇接触面34)は凹面である。例えば、リム部の端面は、例えば、中心軸に垂直な方向を中心軸とする円柱の内周面や球体の内周面、あるいは複数の平面を組み合わせた凹面とされる。
以上の態様によれば、所定の曲率をもった曲面である唇に対してリム部の端面が均等に密着するから、リム部の端面が平面である場合ほどにはマウスピースを唇に押し付けなくても、口腔とマウスピースとの機密性が確保される。したがって、演奏者の肉体的な負担が軽減される。
<A:第1実施形態>
<A−1:マウスピースの構造>
図1は、金管楽器のマウスピースの構造を示す正面図および断面図である。同図に示すように、マウスピース100は、シャンク部10とカップ部20とリム部30とが一体に成形された構造となっている。シャンク部10は、先端部が金管楽器の本体200に連結される管状(円筒状)の部分である。シャンク部10の中心軸Aの方向を以下ではZ方向と表記する。図1におけるX方向およびY方向はZ方向に垂直な方向である。X方向は、演奏者の唇の両端を結ぶ方向(すなわち水平方向)に相当し、Y方向は鉛直方向に相当する。
<A−1:マウスピースの構造>
図1は、金管楽器のマウスピースの構造を示す正面図および断面図である。同図に示すように、マウスピース100は、シャンク部10とカップ部20とリム部30とが一体に成形された構造となっている。シャンク部10は、先端部が金管楽器の本体200に連結される管状(円筒状)の部分である。シャンク部10の中心軸Aの方向を以下ではZ方向と表記する。図1におけるX方向およびY方向はZ方向に垂直な方向である。X方向は、演奏者の唇の両端を結ぶ方向(すなわち水平方向)に相当し、Y方向は鉛直方向に相当する。
カップ部20は、シャンク部10の基端部に連結された中空の部分である。カップ部20の内部の空間であるカップ22は、スロート24を介して、シャンク部10の内部の空間であるバックボア12に連通する。スロート24は、マウスピース100の内部の空間のうち直径(シャンク部10の中心軸Aと垂直な方向の寸法)が最小となる部位である。
リム部30は、カップ部20のうちシャンク部10とは反対側に連結された環状の部分である。演奏者は、リム部30のうちシャンク部10の中心軸Aの方向における端面(以下「唇接触面」という)34に自身の唇を接触させた状態で金管楽器を吹奏する。演奏者の口腔から放出された空気は、リム部30の内側からカップ部20に進入し、スロート24とバックボア12とを通過したうえで金管楽器の本体200に流入する。
図1の正面図に示すように、リム部30の形状は、Z方向からみたときのリム部30の内周31および外周32が、X方向に長尺な形状となるように選定されている。さらに詳述すると、本形態におけるリム部30の内周31および外周32は、X方向に沿う長軸とY方向に沿う短軸とで画定される楕円形である。したがって、図1に示すように、リム部30の内周31におけるX方向の寸法(長径)2DxはY方向の寸法(短径)2Dyと比較して大きい。
図2は、唇接触面34からスロート24までの区間におけるカップ部20の内面の形状を示す概念図である。同図においては、中心軸Aの方向に沿った位置が、唇接触面34を基準(ゼロ)として横軸に図示されている。また、図2の縦軸は、中心軸Aからカップ部20の内周31までの距離(カップ22の半径)である。
図2の曲線Qxは、中心軸Aを通過するX-Z平面内におけるカップ部20の内面の形状を示し、図2の曲線Qyは、中心軸Aを通過するY-Z平面内におけるカップ部20の内面の形状を示す。曲線QxおよびQyの各々を挟んで中心軸A側(下方)の領域がカップ22である。図2に示すように、リム部30の内周31はX方向の寸法2DxとY方向の寸法2Dyとが相違する楕円形であるのに対し、スロート24の内面は、X方向とY方向とで寸法が等しい真円形(半径=2mm)である。したがって、カップ部20の内面におけるX-Z平面内の外形(曲線Qx)とY-Z平面内の外形(曲線Qy)とは相違する。すなわち、カップ部20の内面は、スロート24における内径が真円形となるように、唇接触面34からスロート24にかけてカップ部20の内径が連続的に変化する曲面に成形される。
図3は、唇接触面34からスロート24にかけてカップ部20の内径が変化する様子を示す概念図である。同図に示すように、唇接触面34におけるカップ部20のY方向の内径Cyを中心軸Aに沿った位置に拘わらず固定値「1」に正規化すると、唇接触面34におけるカップ部20のX方向の内径Cx(リム部30の内周31における長径2Dx)は「1+α」と表記される。図2に示すようにスロート24の内面は真円形であるから、スロート24の位置においてカップ部20の内径CxとCyとは合致する。
図3の態様F1は、唇接触面34からスロート24にかけて内径Cxが内径Cyに対して線形に変化するようにカップ部20の内面を成形した態様である。一方、態様F2およびF3においては、内径Cxが内径Cyに対して非線形に変化する。すなわち、態様F2においては、スロート24の近傍にて内径Cxが内径Cyに接近するように(換言すると、スロート24の近傍に至るまで内径CxおよびCyが唇接触面34における内径CxおよびCyの比率と同等に相違するように)カップ部20の内面の形状が選定される。態様F3においては、唇接触面34の近傍にて内径Cxが内径Cyに接近するようにカップ部20の内面が成形される。金管楽器から発生する楽音の特性はカップ22の形状に影響される。したがって、実際のカップ部20の内面の形状は、例えば図3の態様F1からF3のなかから、所望の特性の楽音が得られるように適宜に選定される。
従来のマウスピースはリム部やカップ部を含めて完全な回転体であるから、通常は旋盤を利用した切削によって作成される。これに対し、本形態のマウスピース100はリム部30やカップ部20が非回転体であるから、CAM(Computer Aided Manufacturing)技術やNC(Numerical Control machining)加工機を使用して銀や真鍮などの素材を3次元的に加工することで作成される。また、金型を利用した鋳造技術や射出成形技術を利用してマウスピース100を作成してもよい。
図4は、Z方向からみたときのリム部30と演奏者の唇50との関係を示す概念図である。同図に示すように、本形態のリム部30は演奏者の唇50に沿ってX方向に長尺な形状に成形されるから、図16のようにリム部80が真円形である場合と比較して、唇50の広い範囲をリム部30の内側にて振動させることが可能である。したがって、演奏者の肉体的な負担を軽減しながら充分な音量の楽音を発生させることができる。また、唇50のうちリム部30に接触する面積が図16の構成と比較して拡大するから、マウスピース100による唇50の圧迫が軽減され、これによって唇50の疲労や充血が抑制されるという利点がある。
ところで、特許文献2には、カップの下面に突起を形成したマウスピースが開示されている。しかし、特許文献2の構成においては、突起とそれ以外の部分との境界にてカップの壁面が不連続となるから、マウスピース内における空気の円滑な流動が阻害され、金管楽器の発生する楽音が不安定になるという問題がある。これに対し、本形態におけるカップ部20の内面は、図2や図3に示したようにリム部30の内周31からスロート24にかけて連続的に変化する曲面であるから、マウスピース100内の空気は従来のマウスピースと同等に円滑に流動する。したがって、充分な音量の楽音を安定的に発生させることが可能となる。
<B:第2実施形態>
マウスピース100のリム部30やカップ部20の形状は第1実施形態の例示に限定されない。例えば以下の各態様も採用される。なお、以下の各態様において第1実施形態と同様の要素については以上と同じ符号を付して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
マウスピース100のリム部30やカップ部20の形状は第1実施形態の例示に限定されない。例えば以下の各態様も採用される。なお、以下の各態様において第1実施形態と同様の要素については以上と同じ符号を付して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
<B−1:第1の態様>
図5は、第1の態様に係るリム部30の形状を示す正面図である。同図の直線Lxは、中心軸Aに直交するX方向の直線である。図5に示すように、本態様に係るマウスピース100のリム部30(より厳密には内周31および外周32の各々)は直線Lxを挟んで非対称である。さらに詳述すると、リム部30のうち直線Lxを挟んで上側の部分30Uは、下側の部分30Bと比較して真円に近い(離心率が小さい)楕円形となっている。したがって、部分30Uの半短径(楕円形の短軸を2等分した半短軸の寸法)Dy1は部分30Bの半短径Dy2よりも大きい。
図5は、第1の態様に係るリム部30の形状を示す正面図である。同図の直線Lxは、中心軸Aに直交するX方向の直線である。図5に示すように、本態様に係るマウスピース100のリム部30(より厳密には内周31および外周32の各々)は直線Lxを挟んで非対称である。さらに詳述すると、リム部30のうち直線Lxを挟んで上側の部分30Uは、下側の部分30Bと比較して真円に近い(離心率が小さい)楕円形となっている。したがって、部分30Uの半短径(楕円形の短軸を2等分した半短軸の寸法)Dy1は部分30Bの半短径Dy2よりも大きい。
人間の上唇と下唇とは非対称である。本態様のリム部30は直線Lxを挟んで非対称であるから、演奏者の唇の形状と整合する形状に成形され得る。すなわち、リム部30の部分30Uは、演奏に際して上唇が効率的に振動するように上唇の外形に応じた形状および寸法に成形され、部分30Bは、下唇が効率的に振動するように下唇の外形に応じた形状および寸法に成形される。したがって、本態様によれば、演奏者の肉体的な負担を第1実施形態よりも軽減することが可能である。
<B−2:第2の態様>
図6は、第2の態様に係るリム部30の形状を示す正面図である。同図の直線Lyは、中心軸Aと直線Lxとに直交するY方向の直線である。人間の唇は口蓋の形状に応じて左右に非対称となる場合がある。そこで、本形態のリム部30(より厳密には内周31および外周32の各々)は、直線Lyを挟んで非対称となるように成形される。すなわち、リム部30のうち直線Lyを挟んで右側の部分30Rは演奏者の唇の右半分の外形に応じた形状および寸法に成形され、左側の部分30Lは唇の左半分の外形に応じた形状および寸法に成形される。なお、図6において、リム部30の部分30Uと部分30Bとが非対称とされる構造は第1の態様と同様である。
図6は、第2の態様に係るリム部30の形状を示す正面図である。同図の直線Lyは、中心軸Aと直線Lxとに直交するY方向の直線である。人間の唇は口蓋の形状に応じて左右に非対称となる場合がある。そこで、本形態のリム部30(より厳密には内周31および外周32の各々)は、直線Lyを挟んで非対称となるように成形される。すなわち、リム部30のうち直線Lyを挟んで右側の部分30Rは演奏者の唇の右半分の外形に応じた形状および寸法に成形され、左側の部分30Lは唇の左半分の外形に応じた形状および寸法に成形される。なお、図6において、リム部30の部分30Uと部分30Bとが非対称とされる構造は第1の態様と同様である。
以上に説明したように、本態様においてはリム部30が直線Lyを挟んで非対称に成形されるから、演奏者の唇が左右で非対称であっても、マウスピース100から唇に作用する圧力を唇の左半分と右半分とで均等化することができる。したがって、演奏者の肉体的な負担がいっそう軽減されるという利点がある。
<B−3:その他の態様>
リム部30の形状は楕円形に限定されない。例えば、リム部30の内周31や外周32を図7や図8の形状としてもよい。図7に例示するリム部30は、直線Lxや直線Lyに対して所定の角度をなす直線L上の曲率半径が他の部分と比較して小さい形状である。また、図8に例示するリム部30は、直線LxやLy上の曲率半径が他の部分と比較して小さい形状である。さらに、以上に例示した各形状を適宜に組み合わせてもよい。例えば、図9に示すように、図7の形状に成形された部分30Uと図8の形状に成形された部分30Bとを組み合わせたリム部30や、図10に示すように、図8の形状に成形された部分30Uと図7の形状に成形された部分30Bとを組み合わせたリム部30が採用される。以上に例示したように、本発明の好適な態様においては、リム部30の内周31がX方向に長尺な形状であれば足り、具体的な形状の如何(楕円形であるか否か)や対称性の有無は任意である。
リム部30の形状は楕円形に限定されない。例えば、リム部30の内周31や外周32を図7や図8の形状としてもよい。図7に例示するリム部30は、直線Lxや直線Lyに対して所定の角度をなす直線L上の曲率半径が他の部分と比較して小さい形状である。また、図8に例示するリム部30は、直線LxやLy上の曲率半径が他の部分と比較して小さい形状である。さらに、以上に例示した各形状を適宜に組み合わせてもよい。例えば、図9に示すように、図7の形状に成形された部分30Uと図8の形状に成形された部分30Bとを組み合わせたリム部30や、図10に示すように、図8の形状に成形された部分30Uと図7の形状に成形された部分30Bとを組み合わせたリム部30が採用される。以上に例示したように、本発明の好適な態様においては、リム部30の内周31がX方向に長尺な形状であれば足り、具体的な形状の如何(楕円形であるか否か)や対称性の有無は任意である。
<B−4:リム部30の形状を設定する方法>
リム部30の形状は例えば以下のように設定される。なお、以下では、リム部30の内周31のうちX-Y平面内の第1象限に属する部分の形状を選定する方法について説明するが、リム部30の内周31の他の部分の形状やリム部30の外周32の形状の選定にも同様の方法が採用される。
リム部30の形状は例えば以下のように設定される。なお、以下では、リム部30の内周31のうちX-Y平面内の第1象限に属する部分の形状を選定する方法について説明するが、リム部30の内周31の他の部分の形状やリム部30の外周32の形状の選定にも同様の方法が採用される。
図11(a)に示すようにX軸とY軸とZ軸とが直交する座標系を想定する。X-Z平面内に配置された半径aの真円形の円盤61を図11(a)および(b)のようにX軸を中心として回転させると、当該円盤61をX-Z平面に投影した図形は長径2a(短径2b)の楕円63となる。楕円63は次式で表現される。
(X2/a2)+(Z2/b2)=1
したがって、式(1)が導出される。
Z=±b{1−(X2/a2)}1/2 ……(1)
(X2/a2)+(Z2/b2)=1
したがって、式(1)が導出される。
Z=±b{1−(X2/a2)}1/2 ……(1)
図11(b)に示すように、X軸に平行な軸線65を中心とした真円67の円周に沿うように円盤61を変形させた場合を想定する。軸線65((Z,Y)=(Z0,Y0))を中心とした半径Rの真円67は式(2)で表現される。
(Z−Z0)2+(Y−Y0)2=R2 ……(2)
式(2)は式(2a)に変形される。
Y=Y0±{R2−(Z−Z0)2}1/2 ……(2a)
(Z−Z0)2+(Y−Y0)2=R2 ……(2)
式(2)は式(2a)に変形される。
Y=Y0±{R2−(Z−Z0)2}1/2 ……(2a)
式(1)の変数Zを式(2a)に代入することで変数Xと変数Yとの関係が導出される。図12は、半径Rを変化させた各ケースについて変数Xと変数Yとの関係を示すグラフである。同図においては楕円が併記されている。図1に示したように唇接触面34がX-Y平面内に位置するようにリム部30を配置した場合を想定すると、リム部30の内周31のうち第1象限に相当する部分は、以上の手順で算定された変数XおよびYの関係を満たす曲線(すなわち図12のように所望の半径Rに応じた曲線)となるように成形される。
なお、式(2a)におけるY0およびZ0は以下の手順で算定される。
図11(b)に示すように、式(2)の真円67は(Z,Y)=(0,0),(b,γ)を通過する。したがって、以下の式(3)および式(4)が成立する。
Z02+Y02=R2 ……(3)
(b−Z0)2+(γ−Y0)2=R2 ……(4)
γ2=a2−b2という関係を考慮すると、式(4)は以下の式(4a)に変形される。
a2−2(bZ0+γY0)+Z02+Y02=R2 ……(4a)
図11(b)に示すように、式(2)の真円67は(Z,Y)=(0,0),(b,γ)を通過する。したがって、以下の式(3)および式(4)が成立する。
Z02+Y02=R2 ……(3)
(b−Z0)2+(γ−Y0)2=R2 ……(4)
γ2=a2−b2という関係を考慮すると、式(4)は以下の式(4a)に変形される。
a2−2(bZ0+γY0)+Z02+Y02=R2 ……(4a)
式(3)を式(4a)に代入すると以下の式(5)が導出される。
Y0=(a2−2bZ0)/(2γ) ……(5)
式(5)を式(3)に代入すると以下の式(6)が導出される。
Z0={ab±(a2b2−a4+4γ2R2)1/2}/(2a) ……(6)
さらに、式(6)を式(5)に代入することでY0が導出される。
以上のように複数の定数(R,a,b)を適宜に選定して式(5)および式(6)から式(2a)におけるY0とZ0とを算定することで、リム部30の内周31の形状を定義する変数Xと変数Yとの関係が確定する。
Y0=(a2−2bZ0)/(2γ) ……(5)
式(5)を式(3)に代入すると以下の式(6)が導出される。
Z0={ab±(a2b2−a4+4γ2R2)1/2}/(2a) ……(6)
さらに、式(6)を式(5)に代入することでY0が導出される。
以上のように複数の定数(R,a,b)を適宜に選定して式(5)および式(6)から式(2a)におけるY0とZ0とを算定することで、リム部30の内周31の形状を定義する変数Xと変数Yとの関係が確定する。
以上がリム部30の形状を決定する方法である。もっとも、以上の手順はひとつの例示に過ぎない。すなわち、例えば設計者がマウスなどの入力装置を適宜に操作することでリム部30の内周31を自由曲線として定義する方法も採用される。
<C:第3実施形態>
図13は、本発明の第3実施形態に係るマウスピース100の構造を示す正面図および断面図である。同図に示すように、本形態におけるリム部30は、唇接触面34が凹曲面となるように成形されている。さらに詳述すると、唇接触面34は、唇接触面34から離間した位置で中心軸Aに直交するY方向(鉛直方向)の直線を軸線とする円柱69の内周面に相当する。したがって、図13のようにY方向からみたときの唇接触面34の外形は、中心軸Aに近い位置ほど演奏者から離間する曲線となる。
図13は、本発明の第3実施形態に係るマウスピース100の構造を示す正面図および断面図である。同図に示すように、本形態におけるリム部30は、唇接触面34が凹曲面となるように成形されている。さらに詳述すると、唇接触面34は、唇接触面34から離間した位置で中心軸Aに直交するY方向(鉛直方向)の直線を軸線とする円柱69の内周面に相当する。したがって、図13のようにY方向からみたときの唇接触面34の外形は、中心軸Aに近い位置ほど演奏者から離間する曲線となる。
図14は、Y方向からみたときの人間の歯列52とマウスピース100との関係を示す概念図である。同図に示すように複数の歯53は曲線上に配列する。本形態におけるマウスピース100の唇接触面34の形状は演奏者の歯列52の形状に応じて決定される。さらに詳述すると、唇接触面34の曲率半径は、歯列52の曲率半径Rと合致するように例えば40mmから80mm程度の寸法に選定される。
金管楽器の演奏時には口腔とマウスピース100内の空間との機密性が維持される必要がある。唇接触面34が平面である場合には、唇の両端における機密性が確保されるようにマウスピース100を唇に押し付けると、唇の中央部は必要以上の圧力をもって圧迫される。したがって、特に長時間にわたる演奏時には唇の疲労や充血が発生し易いという問題がある。これに対し、本形態のマウスピース100においては演奏者の歯列52に沿った唇接触面34が唇の全体にわたって均等に密着するから、唇接触面34が平面である場合ほどにはマウスピース100を唇に押し付けなくても、口腔とマウスピース100内の空間との機密性が確保される。したがって、演奏者の疲労を軽減できるという利点がある。幼児や小児は歯列52の曲率半径Rが小さい場合が多く、唇接触面34を平面とした場合に疲労し易いから、唇接触面34が唇に密着する本形態のマウスピース100は特に好適である。
なお、図13においてはZ方向からみたリム部30の形状が真円形である構成を例示したが、リム部30がX方向に長尺な形状とされた構成は、本形態においても第1実施形態や第2実施形態と同様に適用される。また、図13においては唇接触面34の全体にわたって曲率半径が共通する構成(唇接触面34がひとつの曲率半径で確定される凹曲面とされた構成)を例示したが、唇接触面34の各部の曲率半径が相違する構成も採用される。唇接触面34の具体的な形状は、実際にマウスピース100を使用する演奏者の唇に密着するように、演奏者の唇や歯列52の形状を計測した結果に基づいて演奏者ごとに設定されることが望ましい。
<D:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
(1)第1実施形態や第2実施形態においては、リム部30の内周31および外周32の双方をX方向に長尺な形状とした構成を例示したが、図15に示すようにリム部30の外周32は真円形であってもよい。以上の構成によれば、旋盤を利用した切削など回転体を加工する廉価な方法を利用してマウスピース100の外形を成形できるという利点がある。
(2)第1実施形態や第2実施形態におけるリム部30の形状は適宜に変更される。例えば、リム部30の内周31や外周32は多角形(例えばX方向に長尺な菱形)であってもよい。また、リム部30の内周31や外周32が部分的に長円形や楕円形とされた構成(それ以外の部分は真円形である構成)も採用される。すなわち、第1実施形態や第2実施形態においては、リム部30の内周31や外周32がX方向に長尺な形状であればよい。
(3)第3実施形態においてはリム部30の唇接触面34が円柱69の内周面である構成を例示したが、唇接触面34は、例えば球体の内周面に相当する凹曲面であってもよい。また、第3実施形態における唇接触面34が曲面である必要は必ずしもない。例えば、唇接触面34を、複数の平面を連ねた凹面としてもよい。
100……マウスピース、200……金管楽器の本体、10……シャンク部、20……カップ部、24……スロート、30……リム部、31……内周、32……外周、34……唇接触面、50……唇。
Claims (8)
- 演奏者の唇に接触するリム部と金管楽器の本体に連結されるシャンク部とを含み、
前記シャンク部の中心軸の方向からみて、前記リム部の内周は、当該中心軸に垂直な方向に長尺な形状である
ことを特徴とする金管楽器用マウスピース。 - 前記シャンク部の中心軸の方向からみて、前記リム部の内周の少なくとも一部は長円形または楕円形である
ことを特徴とする請求項1に記載の金管楽器用マウスピース。 - 前記リム部の内周は、前記中心軸に直交する第1直線を挟んで非対称である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金管楽器用マウスピース。 - 前記リム部の内周は、前記中心軸と前記第1直線とに直交する第2直線を挟んで非対称である
ことを特徴とする請求項3に記載の金管楽器用マウスピース。 - 前記リム部と前記シャンク部とを連結するカップ部の内面は、当該金管楽器用マウスピースの内径が最小となるスロートの内面が前記中心軸の方向からみて真円形となるように、前記リム部の内周から前記スロートにかけて連続する曲面である
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の金管楽器用マウスピース。 - 前記リム部のうち前記中心軸の方向における端面は凹面である
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の金管楽器用マウスピース。 - 演奏者の唇に接触するリム部と金管楽器の本体に連結されるシャンク部とを含み、
前記リム部のうち前記シャンク部の中心軸の方向における端面は凹面である
ことを特徴とする金管楽器用マウスピース。 - 前記リム部の端面は、前記中心軸に垂直な方向を中心軸とする円柱の内周面である
ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の金管楽器用マウスピース。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006339895A JP2008152015A (ja) | 2006-12-18 | 2006-12-18 | 金管楽器用マウスピース |
Applications Claiming Priority (1)
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Family
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Family Applications (1)
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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-
2006
- 2006-12-18 JP JP2006339895A patent/JP2008152015A/ja active Pending
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