JP2008150537A - 水系防錆塗料 - Google Patents

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裕二 福池
Tomohide Takada
智英 高田
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Abstract

【課題】亜鉛の腐食速度を遅らせて白錆の発生を抑制するとともに、防食作用を長期にわたって持続できる水系防錆塗料を提供すること。
【解決手段】金属顔料と、該金属顔料を結合して塗膜を形成するバインダーとを含む水系防錆塗料において、前記金属顔料が、錫及び錫含有合金の少なくとも1種と亜鉛とからなり、好ましくは、前記金属顔料が、さらにアルミニウムを含み、前記錫及び錫含有合金の少なくとも1種の含有量が、錫量として、亜鉛の含有量に対して0.1〜15.0重量%である水系防錆塗料。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属顔料として亜鉛を含む水系防錆塗料に関し、特に、亜鉛の白錆の発生を抑制するとともに、防食効果を長期にわたって持続できる水系防錆塗料に関する。
従来から金属表面における水系防錆塗料として、亜鉛やアルミニウムの犠牲防食作用を利用して、これらを金属顔料として配合した水系防錆塗料が用いられてきた。
このような水系防錆塗料(防食被覆組成物)としては、金属顔料として亜鉛粉末または亜鉛粉末とアルミニウム粉末を用い、これら金属顔料を結合して塗膜を形成するためのバインダーとして、水溶性クロム化合物や水溶性クロム化合物とホウ酸とを用いるものがある(特許文献1参照)。
特公昭60−50228号公報
しかしながら、亜鉛は、犠牲防食作用により早期に腐食し、白錆となって多量に溶出するため基材性状を損なうとともに、防食効果を長期にわたって持続させることができないという問題があり、そのため、アルミニウムを併用して、亜鉛の腐食速度を遅らせて白錆の発生を抑制しているが、アルミニウムは、添加量が多すぎると、亜鉛の白錆よりも基材である鉄の赤錆が発生し、少なすぎると白錆の溶出を抑制できず、最適量を添加しても、白錆の発生を十分に制御することはできないという問題がある。
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、亜鉛の腐食速度を遅らせて白錆の発生を抑制するとともに、防食作用を長期にわたって持続できる水系防錆塗料を提供することにある。
本請求項1に係る発明は、金属顔料と、該金属顔料を結合して塗膜を形成するバインダーとを含む水系防錆塗料において、前記金属顔料が、錫及び錫含有合金の少なくとも1種と亜鉛とからなるとともに、前記バインダーが、水溶性もしくは加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤であることによって、前記課題を解決したものである。
また、本請求項2に係る水系防錆塗料は、請求項1に係る発明において、金属顔料が、アルミニウムを含むことによって、前記課題を解決したものである。
さらに、本請求項3に係る水系防錆塗料は、請求項1または請求項2に係る発明において、前記錫及び錫含有合金の少なくとも1種の含有量が、錫量として、亜鉛の含有量に対して0.1〜15.0重量%であることによって、前記課題を解決したものである。
ここで、上記請求項1において、「バインダーが、水溶性もしくは加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤である」とは、バインダーが、水溶性もしくは加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤のみの場合も含むものである。
本発明は、上述したような構成を備えていることによって、以下のような本発明に特有の効果を奏する。
まず、本請求項1に係る発明は、金属顔料が、錫及び錫含有合金の少なくとも1種と亜鉛とからなるので、亜鉛は被塗布物である鉄素地よりも先に腐食して、鉄素地の腐食を防止する。その際、錫及び/または錫含有合金中の錫は、亜鉛の腐食による白錆の発生を抑制するので、優れた防食効果を長期にわたって持続させることができる。
また、前記バインダーが、水溶性もしくは加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤であることによって、塗料の焼き付け時に、塗料中のアミノ基含有シランカップリング剤が、基材と亜鉛または亜鉛とアルミニウム及び錫及び/または錫合金を化学的あるいは物理的に結合して空隙を有する塗膜を形成するため、これら金属同士の接触する機会が多くなり、亜鉛及びアルミニウムの犠牲防食作用を向上させるとともに、例えば、チェーン部品やボルト・ナット等のファスナー類のような鉄素地からなる基材に対して付着性を向上させて、長期の防食作用を発揮させることができる。
また、請求項2に係る水系防錆塗料は、請求項1に係る発明において、金属顔料が、さらにアルミニウムを含むので、アルミニウムは、亜鉛よりも先に腐食し、亜鉛の腐食速度を遅らせて白錆の発生を抑制するので、前述した錫の効果と相乗して請求項1に係る発明が奏する効果をさらに向上させることができる。
さらに、本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明において、前記錫及び錫含有合金の少なくとも1種の含有量を、錫量として、亜鉛の含有量に対して0.1〜15.0重量%とすることによって、前述した錫の効果を最大限に発揮させることができる。
本発明の水系防錆塗料は、亜鉛を主成分とする金属顔料と、該金属顔料を結合して塗膜を形成するバインダーとを含み、前記亜鉛を主成分とする金属顔料が、錫及び錫含有合金の少なくとも1種を含み、さらに、アルミニウムを含むものであって、犠牲防食作用による亜鉛の腐食を遅らせて白錆の発生を抑制するとともに、防食作用を長期にわたって持続できるものであれば、その具体的な態様はいずれのものであっても良い。
前記金属顔料である錫、錫含有合金、亜鉛及びアルミニウムの形態については特に制限はなく、例えば、粉状体や粒状体等の形態が取り得る。
粉状体や粒状体として用いる場合には、球状、フレーク状、棒状等の形状が取り得るが、特に、フレーク状のものを用いると、塗料に添加した場合に、優れた分散性を示すとともに、これらフレークが重なるように被塗物に付着するため被覆効果が高く、防食効果を高めることができる。
このフレーク状の粉状体や粒状体は、ボールミルやアトライタ等により展延処理して得られるものであり、その平均アスペクト比(平均長径/平均厚み)が10以上のものがより好ましい。
本発明の金属顔料である亜鉛は、犠牲防食作用を奏する主成分であり、さらに、アルミニウムを併用すると、アルミニウムは、犠牲防食作用を奏するとともに、亜鉛よりも先に腐食して亜鉛の腐食により生成する白錆の発生を抑制する。
そして、本発明では、これら錫及び錫含有合金の少なくとも1種、すなわち、錫または錫含有合金を単独で用いるか、あるいは、錫及び錫含有合金の中から2種以上を併用するものであり、水系防錆塗料中での含有量は、錫量として、亜鉛の含有量に対して、0.1〜15.0重量%とすることが好ましく、0.1重量%未満では、白錆の発生を十分に抑制することはできず、15.0重量%を越えると、亜鉛による犠牲防食効果を有効に発揮することができない。
なお、錫及び錫含有合金の中から2種以上を用いる場合には、前記水系防錆塗料中での錫量は、これらの錫量を合算したものである。
本発明のバインダーとして水溶性もしくは加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤を用いているため、形成された塗膜は基材に対する付着性が優れるとともに、空隙が多いため金属顔料同士の直接接触を図ることができ、亜鉛やアルミニウムの犠牲防食作用を効果的に発揮させることができる。
このような水溶性もしくは加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤としては、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルミチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1.3・ジメチル・ブチリテン)プロピルアミン、N−フェニール−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、これら化合物の1種または2種以上を用いてもよい。
本発明の水系防錆塗料は、常法にしたがって、金属顔料をバインダーとともに混合、攪拌することによって得られる。その際、水、アルコール系溶剤、セロソルブ系溶剤、グリコール系溶剤といった溶剤、顔料、染料、分散剤、消泡剤等の塗料用添加剤を添加しても良い。
また、金属顔料は、各成分を個別に、あるいは、一部または全部の成分を予め混合して添加しても良い。さらに、溶媒と混合してスラリー状として添加しても良い。
このような溶媒としては、前記した溶媒と同様のプロピレングリコールやエチレングリコール等のグリコール系溶媒、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒等が挙げられる。
以下に本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に示す成分と配合の組み合わせにのみ限定されるものではない。
実施例1
表1の配合にしたがって、所定の成分を所定の配合量で混合・攪拌して本発明の水系防錆塗料を製造した。
Figure 2008150537
得られた水系防錆塗料を用い、チェーン部品(ピンリンクプレート、ローラリンクプレート、ブシュ、ローラ、ピン)を被塗布物としてディプスピン法を用いて被覆し、180℃で60分間焼き付け、厚さ10μmの塗膜が形成されたチェーン部品(ピンリンクプレート、ローラリンクプレート、ブシュ、ローラ、ピン)を得た。
このチェーン部品(ピンリンクプレート、ローラリンクプレート、ブシュ、ローラ、ピン)に対して、「JISーZ 2371」に準拠して500時間及び1000時間の塩水噴霧試験を行って、目視により発生した白錆の量及び赤錆の発生状況を観察した。その結果を表1に記号で示した。各記号の意味については、表1の下に注記している。
比較例
表2の配合に従って、所定の成分を所定の配合量で混合・攪拌して水系防錆塗料を得た。得られた塗料について、実施例と同様の試験を行い、その結果を表2に示す。各記号の意味については、表2の下に注記している。
Figure 2008150537
なお、表1及び表2において、※1〜※10は以下のとおりである。
※1 亜鉛フレークをプロピレングリコールでスラリーとしたもの。
※2 旭化成社製アルミペースト「AW−620」。
※3 70重量%亜鉛ー30重量%錫合金。
※4 信越シリコーン社製シランカップリング剤。
※5 信越シリコーン社製シランカップリング剤。
※6 ROHM AND HAAS社製増粘剤「PRIMAL RM2020NPR」(ポリウレタン系)。
※7 サンノプコ社製消泡剤(シリコン系またはアクリル系)。
※8 塩水噴霧試験(SST)。
※9 塩水噴霧試験後の発生した白錆の状態。○白錆が少ない、×白錆が多い。
※10 塩水噴霧試験後の赤錆の状態。○赤錆の発生無し、×赤錆が発生。
また、表1〜表2中の配合量は重量部である。
表1に示した実施例1〜12、表2に示した比較例1、4にみられるように、亜鉛と錫または錫含有合金を含む実施例1〜12では、1000時間の塩水噴霧試験において、発生した白錆の量は少なく、また、赤錆の発生も認められなかった。
一方、錫または錫含有合金を含まない比較例1、4では、赤錆の発生は認められないものの、犠牲防食作用による亜鉛の腐食速度が早いため、発生した白錆の量は多かった。
比較例2、3、5、6は錫または錫含有合金を15.0重量%を超えて含有するため赤錆が発生した。
これらの結果から明らかなように、錫または錫含有合金の含有量は0.1〜15.0重量%の場合は、亜鉛による犠牲防食作用を維持しながら、犠牲防食作用による亜鉛の腐食速度を遅らせて、白錆の発生を抑制するとともに、亜鉛の犠牲防食作用を長期にわたって持続させるものである。
以上、詳述したように、本発明の水系防錆塗料は、金属顔料として亜鉛と錫及び錫含有合金の少なくとも1種とを併用することによって、白錆の発生が大幅に抑制されるとともに、その犠牲防食作用が長期にわたって持続できるものであって、その効果は甚大である。

Claims (3)

  1. 金属顔料と、該金属顔料を結合して塗膜を形成するバインダーとを含む水系防錆塗料において、
    前記金属顔料が、錫及び錫含有合金の少なくとも1種と亜鉛とからなるとともに、
    前記バインダーが、水溶性もしくは加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤であることを特徴とする水系防錆塗料。
  2. 前記金属顔料が、アルミニウムを含むことを特徴とする請求項1記載の水系防錆塗料。
  3. 前記錫及び錫含有合金の少なくとも1種の含有量が、錫量として、亜鉛の含有量に対して0.1〜15.0重量%であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の水系防錆塗料。
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