JP2008138705A - グリース封入転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】120℃をこえる高温下で使用されても水素脆性に起因する軸受転走面での早期剥離を効果的に抑制できるグリース封入転がり軸受を提供する。
【解決手段】内輪2と、外輪3と、これら内外輪間に介在する転動体4とを備え、グリース7を封入してなる転がり軸受であって、内輪2、外輪3および転動体4から選ばれた少なくとも一つの軸受部材の表層部にオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番をこえる窒素富化層が形成され、200〜300℃の焼戻処理が施され表層部の残留オーステナイト量が 15 重量%以下であり、上記軸受部材の転走面に厚みが 0.1μm 以上で、表面粗さが最大高さRzで 1.1μm をこえない酸化被膜を形成し、上記グリースは、基油と増ちょう剤とからなるベースグリースにアルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤をベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部配合してなる。
【選択図】図1
【解決手段】内輪2と、外輪3と、これら内外輪間に介在する転動体4とを備え、グリース7を封入してなる転がり軸受であって、内輪2、外輪3および転動体4から選ばれた少なくとも一つの軸受部材の表層部にオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番をこえる窒素富化層が形成され、200〜300℃の焼戻処理が施され表層部の残留オーステナイト量が 15 重量%以下であり、上記軸受部材の転走面に厚みが 0.1μm 以上で、表面粗さが最大高さRzで 1.1μm をこえない酸化被膜を形成し、上記グリースは、基油と増ちょう剤とからなるベースグリースにアルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤をベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部配合してなる。
【選択図】図1
Description
本発明は特異性のある水素に起因する脆性剥離を防止したグリース封入転がり軸受に関し、特にオルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ等の自動車電装補機やモータ等に用いられるグリース封入転がり軸受に関する。
近年、自動車の高速化・コンパクト化が進みエンジン・電装補機用軸受は高速・高荷重・高振動といった過酷な条件下で使用されるようになっている。特にオルタネータで使用される軸受では高速・高荷重回転に伴う軸受自体の発熱と、オルタネータ内のコイルの発熱により一般的な軸受鋼の焼戻温度(約 180℃)をこえるような状況下で使用されている。こういった状況に伴い、オルタネータ用軸受などでは、図3に示すような損傷起点部に白層を伴った特異な剥離が散見されている。この白層の形態は、転動疲労によって生じるWEC( White Etching Constituent )や非金属介在物の周りに発生するバタフライとは違い、転動方向に対して方向性を持たないことが特徴である。この損傷が発生した軸受では明らかに鋼中水素量が増加しており、白層内に存在する亀裂が結晶粒界に沿って非常に内部まで進展していることから、損傷の発生には水素が関与していることは確実と考えられる。以後、この白層を伴う特異な剥離を水素脆性剥離と称することにする。
水素脆性剥離は転動時に発生した化学的に活性な金属新生面の触媒作用で潤滑剤が分解し、発生した水素が鋼中に侵入することにより生じると考えられる。そのため、水素脆性剥離の対策技術として、金属表面が露出しないように黒染処理のような表面処理を実施して軌道輪の転走面に厚さ 0.1〜2.5μm の酸化被膜を形成したグリース封入軸受(特許文献1参照)が有効とされている。また、材質面からの対策方法として、脆性剥離が発生し難いような熱処理を施す方法として転動体、内輪、外輪のうち少なくとも1つの部材に窒素富化層を有し、かつ表層部の球状化炭化物の面積率が 10%以上を占める転がり軸受が知られている(特許文献2参照)。
しかしながら、表面処理に関しては、使用条件の急速な過酷化に伴って金属表面の酸化被膜は摩耗による消失が懸念されるため、恒久的な対策とはいい難い状況が出てきている。また、材料についても水素脆性剥離に対し、多量のクロムを添加することは有効ではあるが材料コストアップに繋がるため採用し難く、コストアップ要素の少ない潤滑剤での対策が現在の主流となっているのが実状である。しかし潤滑剤での対策だけでは必ずしも十分であるとはいえない。
特開平2−190615号公報
特開2004−278781号公報
本発明はかかる問題に対処するためになされたものであり、120℃をこえる高温下で使用されても水素脆性に起因する軸受転走面での早期剥離を効果的に抑制できるグリース封入転がり軸受の提供を目的とする。
本発明のグリース封入転がり軸受は、内輪および外輪と、これら内外輪の転走面間に介在する複数の転動体とを備え、上記転動体の周囲にグリースを封入してなる転がり軸受であって、上記内輪、外輪および転動体から選ばれた少なくとも一つの軸受部材の表層部にオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番をこえる窒素富化層が形成され、さらに 200℃〜300℃の焼戻処理が施され表層部の残留オーステナイト量が 15 重量%以下であり、かつ、上記少なくとも一つの軸受部材の転走面に、厚みが 0.1μm 以上、表面粗さが最大高さRzで 1.1μm 未満の酸化被膜が形成されてなり、上記グリースは、基油と増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなり、上記添加剤はアルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤を含有し、該アルミニウム系添加剤の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05 重量部〜10 重量部であることを特徴とする。
なお、表層部の残留オーステナイト量とは 50μm 深さにおける値を指す。また最大高さRzはJIS B 0601:2001にて定義される値をいう。
なお、表層部の残留オーステナイト量とは 50μm 深さにおける値を指す。また最大高さRzはJIS B 0601:2001にて定義される値をいう。
上記アルミニウム化合物は、炭酸アルミニウムおよび硝酸アルミニウムから選ばれた少なくとも一つの化合物であることを特徴とする。
また、上記増ちょう剤は、ウレア系増ちょう剤であることを特徴とする。
また、上記基油は、アルキルジフェニルエーテル油およびポリ-α-オレフィン油から選ばれた少なくとも一つの油であることを特徴とする。
また、上記増ちょう剤は、ウレア系増ちょう剤であることを特徴とする。
また、上記基油は、アルキルジフェニルエーテル油およびポリ-α-オレフィン油から選ばれた少なくとも一つの油であることを特徴とする。
本発明のグリース封入転がり軸受は、第一の効果として軸受鋼の表層部に窒素富化層を形成することで表面硬度が向上し、十分な耐摩耗性を確保できる。耐摩耗性の向上は金属新生面の発生を防ぐ効果がある。また、窒素富化層における鋼のオーステナイト粒度番号が10番をこえる範囲にあることにより、転動疲労に対する抵抗性が向上するとともに、割れ強度(静的破壊強度)や靭性が向上する。第二の効果として上記特徴を持つ鋼材に対し 200〜300℃高温焼戻を実施し表層部の残留オーステナイト量を 15 重量%以下に減少させることで、ミクロ的な塑性変形に伴うクラックの発生を抑止し、水素脆性剥離寿命の延長を図ることができる。さらに第三の効果として、上記少なくとも一つの軸受部材の転走面に、厚みが 0.1μm 以上、表面粗さが最大高さRzで 1.1μm 未満の酸化被膜が形成することで、接触面の摩耗による金属新生面の発生を防ぎ、潤滑剤からの水素発生を防止することができる。
加えて、第四の効果として、基油と増ちょう剤とからなるベースグリースにアルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤を配合したグリースを使用するので、軸受の摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面においてアルミニウム系添加剤が反応し、酸化鉄とともにアルミニウム被膜が軸受転走面に生成し、転走面での水素脆性による特異な剥離の発生を効果的に抑制することができる。
加えて、第四の効果として、基油と増ちょう剤とからなるベースグリースにアルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤を配合したグリースを使用するので、軸受の摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面においてアルミニウム系添加剤が反応し、酸化鉄とともにアルミニウム被膜が軸受転走面に生成し、転走面での水素脆性による特異な剥離の発生を効果的に抑制することができる。
本発明のグリース封入転がり軸受は、これら第一、第二、第三および第四の効果の結果、軸受の長寿命化について飛躍的な向上を図ることができる。このため、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ等の自動車電装部品、補機等の転がり軸受として好適に利用できる。
転がり軸受について、水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できる方法について鋭意検討を行なった。検討の結果、SUJ2等の軸受鋼からなる内輪、外輪および転動体から選ばれた少なくとも一つの部材表層部にオーステナイト粒度番号が10番をこえる範囲にある窒素富化層を形成し、さらに 200〜300℃の焼戻処理を施し表層部の残留オーステナイト量を 15 重量%以下とし、上記少なくとも一つの軸受部材の転走面に酸化被膜を形成し、その厚みが 0.1μm 以上で、表面粗さが最大高さRzで 1.1μm をこえないように設定した転がり軸受に、アルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤を配合したグリースを封入した転がり軸受を用いて、急加減速試験を行なったところ軸受寿命が飛躍的に延長することがわかった。
本発明のグリース封入転がり軸受は、軸受部材の表層部に窒素富化層を形成することで表面硬度が向上し金属新生面の発生を防ぐ第一の効果と、200〜300℃の焼戻処理を施し、表層部の残留オーステナイト量を 15 重量%以下とすることでミクロ的な内部クラックの発生を防止できる第二の効果と、上記少なくとも一つの軸受部材の転走面に、厚みが 0.1μm 以上、かつ表面粗さが最大高さRzで 1.1μm 未満の酸化被膜を形成することで、接触面の摩耗による金属新生面の発生を防ぎ、潤滑剤からの水素発生を防止することができる第三の効果と、アルミニウム系添加剤を配合したグリースを使用することで、軸受転走面が活性化、すなわち軸受転走面において、摩擦摩耗面または摩耗により金属新生面が露出したとしても、グリースに配合したアルミニウム系添加剤が反応し、酸化鉄とともにアルミニウム被膜が軸受転走面に生成され、水素脆性による特異な剥離の発生を抑制する第四の効果とを相乗的に発揮させることができ、その結果転がり軸受の寿命が大幅に延長するものと考えられる。本発明は、このような知見に基づくものである。
本発明のグリース封入転がり軸受の実施例について図面にしたがって説明する。図1は本発明の一実施例を示す深溝玉軸受の断面図である。
図1に示す転がり軸受1は、同心に配置された内輪2および外輪3と、内輪転走面2a、外輪転走面3a間に介在する転動体4と、この転動体4を保持する保持器5と、内、外輪の軸方向両端開口部をシールするシール部材6と、軸受空間に封入されたグリース7とからなる。軸受鋼からなる内輪2、外輪3および転動体4から選ばれた少なくとも一つの軸受部材表層部に窒素富化層を形成し、さらに 200〜300℃の焼戻処理を施し表層部の残留オーステナイト量を 15 重量%以下とし、加えて上記少なくとも一つの軸受部材の転走面に、厚みが 0.1μm 以上、表面粗さが最大高さRzで 1.1μm 未満の酸化被膜を形成した軸受部材を用い、グリース7は後述するアルミニウム系添加剤を含有したものを使用している。
上述した実施形態では、本発明のグリース封入転がり軸受を深溝玉軸受として説明したがアンギュラ軸受やころ軸受等の他形式の転がり軸受にも採用することができる。
図1に示す転がり軸受1は、同心に配置された内輪2および外輪3と、内輪転走面2a、外輪転走面3a間に介在する転動体4と、この転動体4を保持する保持器5と、内、外輪の軸方向両端開口部をシールするシール部材6と、軸受空間に封入されたグリース7とからなる。軸受鋼からなる内輪2、外輪3および転動体4から選ばれた少なくとも一つの軸受部材表層部に窒素富化層を形成し、さらに 200〜300℃の焼戻処理を施し表層部の残留オーステナイト量を 15 重量%以下とし、加えて上記少なくとも一つの軸受部材の転走面に、厚みが 0.1μm 以上、表面粗さが最大高さRzで 1.1μm 未満の酸化被膜を形成した軸受部材を用い、グリース7は後述するアルミニウム系添加剤を含有したものを使用している。
上述した実施形態では、本発明のグリース封入転がり軸受を深溝玉軸受として説明したがアンギュラ軸受やころ軸受等の他形式の転がり軸受にも採用することができる。
本発明のグリース封入転がり軸受は、表層改質処理として、軸受鋼からなる内輪、外輪および転動体から選ばれた少なくとも一つの部材表層部にオーステナイト粒度番号が10番をこえる範囲にある窒素富化層を形成し、さらに 200〜300℃の焼戻処理を施し表層部の残留オーステナイト量を 15 重量%以下とする一連の熱処理を施されている。軸受鋼としては、例えば標準軸受鋼(JIS-SUJ2(Cr:1.3〜1.6 重量%))が挙げられる。
上記軸受用部材を作成する熱処理工程の例を図2を用いて説明する。図2は本発明の実施形態における軸受部材の熱処理工程を示す図である。図2に示すように本発明の実施形態における軸受部材の熱処理工程は、1次焼入工程と2次焼入工程と焼戻工程とからなり、1次焼入工程は浸炭窒化工程Aと、第1の冷却工程Bとを含み、2次焼入工程は再加熱工程Cと、第2の冷却工程Dとを含んでいる。
まず、1次焼入工程において鋼製部材を約 730℃であるA1 変態点(以下、A1 点と記す)以上の温度で浸炭窒化する浸炭窒化工程Aが実施される。具体的には、成形工程において転動部材の概略形状に成形された鋼製部材はA1 点以上の温度である 800℃以上 1000℃以下の温度T1 、例えば 850℃に加熱され、60分間以上 300分間以下の時間、例えば 150分間保持される。このとき、鋼製部材はRXガスにアンモニア(NH3 )を添加した雰囲気において加熱されて、表層部の炭素濃度および窒素濃度が所望の濃度に調整される。これにより、浸炭窒化工程Aが完了する。その後、鋼製部材が、例えば油中に浸漬されることにより(油冷)、A1 点以上の温度からマルテンサイト変態点(以下、Ms 点と記す)以下の温度に冷却される第1の冷却工程Bが実施される。これにより1次焼入処理が完了する。
まず、1次焼入工程において鋼製部材を約 730℃であるA1 変態点(以下、A1 点と記す)以上の温度で浸炭窒化する浸炭窒化工程Aが実施される。具体的には、成形工程において転動部材の概略形状に成形された鋼製部材はA1 点以上の温度である 800℃以上 1000℃以下の温度T1 、例えば 850℃に加熱され、60分間以上 300分間以下の時間、例えば 150分間保持される。このとき、鋼製部材はRXガスにアンモニア(NH3 )を添加した雰囲気において加熱されて、表層部の炭素濃度および窒素濃度が所望の濃度に調整される。これにより、浸炭窒化工程Aが完了する。その後、鋼製部材が、例えば油中に浸漬されることにより(油冷)、A1 点以上の温度からマルテンサイト変態点(以下、Ms 点と記す)以下の温度に冷却される第1の冷却工程Bが実施される。これにより1次焼入処理が完了する。
次に、2次焼入工程に入る。1次焼入処理が施された鋼製部材はA1 点以上の温度である 730℃以上 830℃以下の温度T2 、例えば 810℃に再び加熱される再加熱工程Cが実施され、その後 30分間以上 120分間以下の時間、例えば 50分間保持される。このとき、浸炭窒化処理において調整された炭素濃度および窒素濃度が所望の濃度となるように、例えば脱炭を防止するため、例えばRXガスを含む雰囲気において加熱される。さらに、鋼製部材が、例えば油冷されることにより、A1 点以上の温度からMs 点以下の温度に急冷されて焼入硬化される第2の冷却工程Dが実施される。これにより2次焼入処理が完了する。
さらに2次焼入処理が完了した鋼製部材はA1 点以下の温度である 200℃以上 300℃以下の温度、例えば 260℃に加熱され、30分間以上 240分間以下の時間、例えば 120分間保持されて、その後冷却され焼戻工程Eが完了する。
以上の手順により、本発明の実施形態における軸受部材の熱処理工程は完了する。ここで、温度T2 は、オーステナイト結晶粒を小さくする観点から、790℃以上 830℃以下とすることが望ましい。また、同様の観点から、温度T2 はT1 よりも低い温度とすることが好ましい。さらに、再加熱工程における鋼製部材の表層部の昇温速度は、A1 点において 3℃/分以上であることが好ましい。これにより、旧オーステナイト結晶粒の大きさのバラツキが小さい整粒組織を有する鋼からなる軸受部材を製造することができる。
なお、上述の再加熱工程における鋼製部材の表層部の昇温速度は、例えば以下のように測定することができる。すなわち、鋼製部材の表層部に熱電対を接続し、再加熱工程における当該表層部の温度の推移を測定し、記録する。そして、当該表層部の温度が上昇してA1 点を通過する前後の 5℃の範囲における 1 分間あたりの温度上昇(昇温速度)を算出する。この昇温速度が 3℃/分以上であれば、上述の条件、すなわち再加熱工程における鋼製部材の表層部の昇温速度は、A1 点において 3℃/分以上であることを満たす。
上記熱処理の中で高温焼戻を実施し、内部の残留オーステナイト量を減少させることで、ミクロ的な塑性変形に伴う局部的なクラックの発生を抑止することができる。外部から侵入してきた水素原子は鋼中の変位やクラックにトラップされて局部的に鋼材の強度を低下させるため、脆化を伴った剥離に到ると推測される。すなわち、高温焼戻の実施により、水素脆性剥離寿命の延長を図ることができる。ただし、高温焼戻による表層部の残留オーステナイト量の減少は表面硬度を低下させるため、疲労強度の低下に繋がる。しかし、微細な結晶粒で形成される窒化富化層は降伏点の低下を抑制する効果があるため、疲労強度の低下を少なく抑えることができる。
そして、高温部で使用される場合、水素脆性と共に残留オーステナイトがマルテンサイト変態する際に生じる膨張による寸法変化も問題となる。寸法変化による軸受内すきまの増加は、振動・衝撃荷重の原因となり早期剥離を誘発する。窒化処理を実施するとオーステナイトが安定化するため、表層部には 15 重量%をこえるオーステナイトが残留する。高温焼戻処理を実施し、予め残留オーステナイトを減少させることで、使用中の寸法変化を抑制することができる。
そして、高温部で使用される場合、水素脆性と共に残留オーステナイトがマルテンサイト変態する際に生じる膨張による寸法変化も問題となる。寸法変化による軸受内すきまの増加は、振動・衝撃荷重の原因となり早期剥離を誘発する。窒化処理を実施するとオーステナイトが安定化するため、表層部には 15 重量%をこえるオーステナイトが残留する。高温焼戻処理を実施し、予め残留オーステナイトを減少させることで、使用中の寸法変化を抑制することができる。
以上の表層改質が行なわれた内輪、外輪および転動体から選ばれた少なくとも一つの軸受部材の転走面、すなわち、転動体表面、内輪外径面、外輪内径面等に酸化被膜を形成する。
酸化被膜を形成する方法は黒染め処理法で行ない、高濃度の水酸化ナトリウム水溶液(塩基性処理液)を加熱し(130℃〜160℃)、あらかじめ脱脂・洗浄処理・調温しておいた、酸化被膜形成対象である転動体や内輪、外輪等の軸受部材を投入する。内輪の場合は内輪外径面以外の面に、外輪の場合は外輪内径面以外の面に、それぞれマスキングテープを貼り付けてから投入することによって、内輪外径面や外輪内径面に酸化被膜を形成することができる。酸化被膜の厚みの調整はあらかじめ試験金属片で黒染め処理を行ない、処理時間とそのときに形成された膜厚との関係を求めておき、膜厚に対応する処理時間を選択することによって所望の膜厚を得ることができる。所定の処理時間経過後、軸受部材を取り出し、中和処理および湯洗浄を行なう。
この処理により軸受部材表面に黒色の四酸化三鉄 Fe3O4 である酸化被膜が形成される。
酸化被膜を形成する方法は黒染め処理法で行ない、高濃度の水酸化ナトリウム水溶液(塩基性処理液)を加熱し(130℃〜160℃)、あらかじめ脱脂・洗浄処理・調温しておいた、酸化被膜形成対象である転動体や内輪、外輪等の軸受部材を投入する。内輪の場合は内輪外径面以外の面に、外輪の場合は外輪内径面以外の面に、それぞれマスキングテープを貼り付けてから投入することによって、内輪外径面や外輪内径面に酸化被膜を形成することができる。酸化被膜の厚みの調整はあらかじめ試験金属片で黒染め処理を行ない、処理時間とそのときに形成された膜厚との関係を求めておき、膜厚に対応する処理時間を選択することによって所望の膜厚を得ることができる。所定の処理時間経過後、軸受部材を取り出し、中和処理および湯洗浄を行なう。
この処理により軸受部材表面に黒色の四酸化三鉄 Fe3O4 である酸化被膜が形成される。
これらの軸受部材の転走面に形成される酸化被膜の厚みは 0.1μm 以上、かつ酸化被膜の表面粗さが最大高さRzで 1.1μm 未満であることを必須とする。酸化被膜の厚みが 0.1μm 未満のときは、耐脆性剥離性の発現が不十分であり、かつ酸化被膜の表面粗さが最大高さRzで 1.1μm 以上のときは、金属接触が大きくなり摩耗により酸化被膜が剥がれやすくなる。
本発明のグリース封入転がり軸受は、軌道輪等への上記表層改質および酸化被膜形成に加えて、アルミニウム系添加剤を配合したグリースを使用することを特徴としている。
本発明に用いるアルミニウム系添加剤は、アルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つである。アルミニウム化合物としては、炭酸アルミニウム、硫化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムおよびその水和物、硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、臭化アルミニウム、よう化アルミニウム、酸化アルミニウムおよびその水和物、水酸化アルミニウム、セレン化アルミニウム、テルル化アルミニウム、りん酸アルミニウム、りん化アルミニウム、アルミン酸リチウム、アルミン酸マグネシウム、セレン酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム、ジルコン酸アルミニウム等の無機アルミニウム、安息香酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム等の有機アルミニウムが挙げられる。これらアルミニウム系添加剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせてグリースに添加してもよい。
本発明において特に好ましいのは、耐熱耐久性に優れ、熱分解しにくいため、極圧性効果の高いアルミニウム粉末である。
本発明に用いるアルミニウム系添加剤は、アルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つである。アルミニウム化合物としては、炭酸アルミニウム、硫化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムおよびその水和物、硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、臭化アルミニウム、よう化アルミニウム、酸化アルミニウムおよびその水和物、水酸化アルミニウム、セレン化アルミニウム、テルル化アルミニウム、りん酸アルミニウム、りん化アルミニウム、アルミン酸リチウム、アルミン酸マグネシウム、セレン酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム、ジルコン酸アルミニウム等の無機アルミニウム、安息香酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム等の有機アルミニウムが挙げられる。これらアルミニウム系添加剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせてグリースに添加してもよい。
本発明において特に好ましいのは、耐熱耐久性に優れ、熱分解しにくいため、極圧性効果の高いアルミニウム粉末である。
アルミニウム系添加剤の配合割合は、ベースグリース 100 重量部に対して 0.05重量部 〜10 重量部である。すなわち、(1)アルミニウム系添加剤がアルミニウム粉末のみである場合、ベースグリース 100 重量部に対してアルミニウム粉末を 0.05〜10 重量部、(2)アルミニウム系添加剤がアルミニウム化合物のみである場合、ベースグリース 100 重量部に対してアルミニウム化合物を 0.05〜10 重量部、(3)アルミニウム系添加剤がアルミニウム粉末とアルミニウム化合物とである場合、ベースグリース 100 重量部に対して、アルミニウム粉末とアルミニウム化合物とを合せて 0.05〜10 重量部配合する。
アルミニウム系添加剤の配合割合が 0.05 重量部未満であると水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できない。また 10 重量部をこえても剥離防止効果がそれ以上に向上しない。
アルミニウム系添加剤の配合割合が 0.05 重量部未満であると水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できない。また 10 重量部をこえても剥離防止効果がそれ以上に向上しない。
本発明に使用できる基油としては、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油等の鉱油、高度精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、フィッシャー・トロプシュ法により合成されたGTL油、ポリ-α-オレフィン油、アルキルナフタレン、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または、天然油脂、ポリオールエステル油、りん酸エステル油、ポリマーエステル油、芳香族エステル油、炭酸エステル油、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン油、フッ素化油等の非炭化水素系合成油等を使用できる。これら基油は単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中で、耐熱性と潤滑性に優れたアルキルジフェニルエーテル油、または、ポリ-α-オレフィン油を用いることが好ましい。
これらの中で、耐熱性と潤滑性に優れたアルキルジフェニルエーテル油、または、ポリ-α-オレフィン油を用いることが好ましい。
本発明に使用できる増ちょう剤としては、ベントン、シリカゲル、フッ素化合物、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、力ルシウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウム石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の石けん類、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられる。これら増ちょう剤は単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中で、耐熱性、コスト等を考慮するとウレア系化合物が望ましい。
これらの中で、耐熱性、コスト等を考慮するとウレア系化合物が望ましい。
ウレア系化合物は、イソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させることにより得られる。反応性のある遊離基を残さないため、イソシアネート化合物のイソシアネート基とアミン化合物のアミノ基とは略当量となるように配合することが好ましい。
ジウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンとの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、p-トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。ポリウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
基油にウレア系化合物等の増ちょう剤を配合して、上記アルミニウム系添加剤等を配合するためのベースグリースが得られる。ウレア系化合物を増ちょう剤とするベースグリースは、基油中でイソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させて作製する。
ベースグリース 100 重量部中に占める増ちょう剤の配合割合は、1 〜40 重量部、好ましくは 3〜25 重量部配合される。増ちょう剤の含有量が 1 重量部未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となり、40 重量部をこえると得られたベースグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られ難くなる。
ベースグリース 100 重量部中に占める増ちょう剤の配合割合は、1 〜40 重量部、好ましくは 3〜25 重量部配合される。増ちょう剤の含有量が 1 重量部未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となり、40 重量部をこえると得られたベースグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られ難くなる。
また、アルミニウム系添加剤とともに、必要に応じて公知のグリース用添加剤を含有させることができる。この添加剤として、例えば、有機亜鉛化合物、アミン系、フェノール系化合物等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾールなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレン等の粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤、金属スルホネート、多価アルコールエステルなどの防錆剤、有機モリブデンなどの摩擦低減剤、エステル、アルコールなどの油性剤、りん系化合物などの摩耗防止剤等が挙げられる。これらを単独でまたは 2 種類以上組み合せて添加できる。
参考実施例1〜参考実施例5
まずSUJ2製の転がり軸受の表1に示す部位を、低温加熱(130〜160℃)の苛性ソーダ水溶液中に浸漬して四酸化三鉄被膜を形成した試験用転がり軸受を準備した。表1に示す酸化被膜の厚みは、あらかじめ試験金属片に黒染め処理を行ない、処理時間とそのときに形成された膜厚との関係から対応させたものである。
次に基油の半量に4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMT、以下、MDIと記す)を表1に示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの 2 倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1のとおりである。
MDIを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100〜120℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させた。これにアルミニウム系添加剤および酸化防止剤を表1に示す配合割合で加えてさらに 100〜120℃で 10 分間撹拌した。その後冷却し、三本ロールで均質化し、グリースを得た。
まずSUJ2製の転がり軸受の表1に示す部位を、低温加熱(130〜160℃)の苛性ソーダ水溶液中に浸漬して四酸化三鉄被膜を形成した試験用転がり軸受を準備した。表1に示す酸化被膜の厚みは、あらかじめ試験金属片に黒染め処理を行ない、処理時間とそのときに形成された膜厚との関係から対応させたものである。
次に基油の半量に4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMT、以下、MDIと記す)を表1に示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの 2 倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1のとおりである。
MDIを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100〜120℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させた。これにアルミニウム系添加剤および酸化防止剤を表1に示す配合割合で加えてさらに 100〜120℃で 10 分間撹拌した。その後冷却し、三本ロールで均質化し、グリースを得た。
表1において、基油として用いた合成炭化水素油は 40℃における動粘度 30 mm2/sec の新日鉄化学社製、シンフルード601を、アルキルジフェニルエーテル油は 40℃における動粘度 97 mm2/sec の松村石油社製、モレスコハイルーブLB100を、それぞれ用いた。また、酸化防止剤は住友化学社製、ヒンダードフェノールを用いた。
得られたグリースを上記試験用転がり軸受に封入し急加減速試験を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表1に併記する。
得られたグリースを上記試験用転がり軸受に封入し急加減速試験を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表1に併記する。
<急加減速試験>
電装補機の一例であるオルタネータの回転べルトを巻きかけたプーリを支持する回転軸を内輪で支持する転がり軸受の急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、回転軸先端に取り付けた試験用軸受に対する負荷荷重を 1960 N 、回転速度は 0 rpm〜18000 rpm で運転条件を設定し、さらに、試験軸受内に 0.1 A の電流が流れる状態で試験を実施した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって発電機が停止する時間(剥離発生寿命時間、h )を計測した。なお、試験は、750 時間で打ち切った。
電装補機の一例であるオルタネータの回転べルトを巻きかけたプーリを支持する回転軸を内輪で支持する転がり軸受の急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、回転軸先端に取り付けた試験用軸受に対する負荷荷重を 1960 N 、回転速度は 0 rpm〜18000 rpm で運転条件を設定し、さらに、試験軸受内に 0.1 A の電流が流れる状態で試験を実施した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって発電機が停止する時間(剥離発生寿命時間、h )を計測した。なお、試験は、750 時間で打ち切った。
参考比較例1
参考実施例1において、試験用転がり軸受に酸化被膜を形成せず、アルミニウム系添加剤を使用しなかったこと以外は参考実施例1と同様に処理して急加減速試験を行なった。結果を表1に併記する。
参考実施例1において、試験用転がり軸受に酸化被膜を形成せず、アルミニウム系添加剤を使用しなかったこと以外は参考実施例1と同様に処理して急加減速試験を行なった。結果を表1に併記する。
参考比較例2〜参考比較例3
参考実施例1において、アルミニウム系添加剤を使用しなかったこと以外は参考実施例1と同様に処理して急加減速試験を行なった。結果を表1に併記する。
参考実施例1において、アルミニウム系添加剤を使用しなかったこと以外は参考実施例1と同様に処理して急加減速試験を行なった。結果を表1に併記する。
参考比較例4〜参考比較例5
参考実施例1において、試験用転がり軸受に酸化被膜を形成せず、アルミニウム系添加剤の配合量を所定範囲外とした以外は参考実施例1と同様に処理して急加減速試験を行なった。結果を表1に併記する。
参考実施例1において、試験用転がり軸受に酸化被膜を形成せず、アルミニウム系添加剤の配合量を所定範囲外とした以外は参考実施例1と同様に処理して急加減速試験を行なった。結果を表1に併記する。
参考比較例6
参考実施例5において、試験用転がり軸受に酸化被膜を形成しなかったこと以外は参考実施例5と同様に処理して急加減速試験を行なった。結果を表1に併記する。
参考実施例5において、試験用転がり軸受に酸化被膜を形成しなかったこと以外は参考実施例5と同様に処理して急加減速試験を行なった。結果を表1に併記する。
表1に示すように、各参考実施例の急加減速試験は全て 750 時間以上の優れた結果を示した。これは転がり軸受に形成した酸化被膜と、アルミニウム系添加剤を所定割合で添加したグリースとの相乗作用により、転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を効果的に防止できたためであると考えられる。
実施例1
表2に示す鋼材からなる軸受の外輪に浸炭窒化処理(1次および2次焼入)を施した後、高温焼戻処理を施し、さらに参考実施例1と同様の酸化被膜処理を施して転がり軸受を得た。また、表1の参考比較例1にて得られたベースグリースに表2に示した添加剤を添加してグリースを得た。このグリースを浸炭処理、焼戻処理および酸化被膜処理済みの上記転がり軸受に封入して試験用軸受を得た。
得られた試験用軸受の急加減速試験( 0.5 A )を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。結果を表2に併記する。
表2に示す鋼材からなる軸受の外輪に浸炭窒化処理(1次および2次焼入)を施した後、高温焼戻処理を施し、さらに参考実施例1と同様の酸化被膜処理を施して転がり軸受を得た。また、表1の参考比較例1にて得られたベースグリースに表2に示した添加剤を添加してグリースを得た。このグリースを浸炭処理、焼戻処理および酸化被膜処理済みの上記転がり軸受に封入して試験用軸受を得た。
得られた試験用軸受の急加減速試験( 0.5 A )を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。結果を表2に併記する。
<急加減速試験( 0.5 A )>
電装補機の一例であるオルタネータの回転べルトを巻きかけたプーリを支持する回転軸を内輪で支持する転がり軸受の急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、回転軸先端に取り付けた試験用軸受に対する負荷荷重を 1960 N 、回転速度は 0 rpm〜18000 rpm で運転条件を設定し、浸炭窒化処理鋼を用いた軸受やアルミニウム粉末添加グリース封入軸受でも水素脆性剥離の発現を加速させるために、試験軸受内に流れる電流を 0.5 A に増やして急加減試験を実施した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって発電機が停止する時間(剥離発生寿命時間、h )を計測した。なお、試験は、750 時間で打ち切った。
電装補機の一例であるオルタネータの回転べルトを巻きかけたプーリを支持する回転軸を内輪で支持する転がり軸受の急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、回転軸先端に取り付けた試験用軸受に対する負荷荷重を 1960 N 、回転速度は 0 rpm〜18000 rpm で運転条件を設定し、浸炭窒化処理鋼を用いた軸受やアルミニウム粉末添加グリース封入軸受でも水素脆性剥離の発現を加速させるために、試験軸受内に流れる電流を 0.5 A に増やして急加減試験を実施した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって発電機が停止する時間(剥離発生寿命時間、h )を計測した。なお、試験は、750 時間で打ち切った。
比較例1および比較例4
実施例1において浸炭処理、高温焼戻処理および酸化被膜処理をしない転がり軸受を用いたこと以外は実施例1と同様に処理して得られた試験用軸受の急加減速試験( 0.5 A )を行なった。結果を表2に併記する。
実施例1において浸炭処理、高温焼戻処理および酸化被膜処理をしない転がり軸受を用いたこと以外は実施例1と同様に処理して得られた試験用軸受の急加減速試験( 0.5 A )を行なった。結果を表2に併記する。
比較例2および比較例6
実施例1において焼戻処理および酸化被膜処理をしない転がり軸受を用いたこと以外は実施例1と同様に処理して得られた試験用軸受の急加減速試験( 0.5 A )を行なった。結果を表2に併記する。
実施例1において焼戻処理および酸化被膜処理をしない転がり軸受を用いたこと以外は実施例1と同様に処理して得られた試験用軸受の急加減速試験( 0.5 A )を行なった。結果を表2に併記する。
比較例3および比較例7
実施例1において酸化被膜処理をしない転がり軸受を用いたこと以外は実施例1と同様に処理して得られた試験用軸受の急加減速試験( 0.5 A )を行なった。結果を表2に併記する。
実施例1において酸化被膜処理をしない転がり軸受を用いたこと以外は実施例1と同様に処理して得られた試験用軸受の急加減速試験( 0.5 A )を行なった。結果を表2に併記する。
比較例5
実施例1において浸炭処理、高温焼戻処理をしない転がり軸受を用いたこと以外は実施例1と同様に処理して得られた試験用軸受の急加減速試験( 0.5 A )を行なった。結果を表2に併記する。
実施例1において浸炭処理、高温焼戻処理をしない転がり軸受を用いたこと以外は実施例1と同様に処理して得られた試験用軸受の急加減速試験( 0.5 A )を行なった。結果を表2に併記する。
はじめに急加減速試験条件を 0.1 A から 0.5 A に増加させたことによる水素脆性剥離の加速性については、使用したグリースと鋼材とが同一である表1の参考比較例1と、表2の比較例1とにおいて検証した。参考比較例1は 0.1 A の通電では 200 時間剥離しなかったにもかかわらず、比較例1は 0.5 A の通電では 80 時間で水素脆性剥離が発生していることから、剥離の発現に対する試験条件の加速性が立証されている。
比較例6の結果より、アルミニウム粉末添加グリースと浸炭窒化2度焼入を組合せることで水素脆性に対し優れた性能を有していることがわかる。比較例7では高温焼戻を、実施例1ではさらに酸化被膜処理を組合せた結果、比較例6よりもそれぞれ軸受寿命が向上している。特に実施例1ではアルミニウム系添加剤グリースの配合、浸炭窒化2度焼入、高温焼戻( 260℃×2 h )および酸化被膜処理の4つの処理を組合せた相乗効果により、水素脆性剥離に対し格段に優れた性能を確認できた。そしてこの試験結果は、標準的な軸受鋼SUJ2材に対しコストアップ要素の少ないグリース、熱処理および表面処理で対策することにより、極めて高い耐水素脆性を付与できることを示している。すなわち特殊な鋼材で対策するより安価な対策方法を提示することが可能となる。
本発明のグリース封入転がり軸受は、内輪、外輪および転動体から選ばれた少なくとも一つの軸受部材の表層部にオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番をこえる窒素富化層が形成され、さらに高温焼戻処理を施し、かつ上記少なくとも一つの軸受部材の転走面に酸化被膜を形成し、その厚みが 0.1μm 以上で、表面粗さが最大高さRzで 1.1μm をこえないように設定され、アルミニウム系添加剤を配合したグリースを封入してなるので、転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を効果的に防止し、飛躍的に長寿命化することができる。このため高速回転と高荷重をともに受ける各種産業機械に用いられる軸受、特にオルタネータ等、自動車電装・補機に用いられる軸受として好適に利用できる。
1 転がり軸受
2 内輪
2a 内輪転走面
3 外輪
3a 外輪転走面
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース
2 内輪
2a 内輪転走面
3 外輪
3a 外輪転走面
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース
Claims (4)
- 内輪と、外輪と、これら内外輪の転走面間に介在する複数の転動体とを備え、前記転動体の周囲にグリースを封入してなる転がり軸受であって、
前記内輪、外輪および転動体から選ばれた少なくとも一つの軸受部材の表層部にオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番をこえる窒素富化層が形成され、さらに 200〜300℃の焼戻処理が施され表層部の残留オーステナイト量が 15 重量%以下であり、かつ、前記少なくとも一つの軸受部材の転走面に、厚みが 0.1μm 以上、表面粗さが最大高さRzで 1.1μm 未満の酸化被膜が形成されてなり、
前記グリースは、基油と増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなり、前記添加剤はアルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤を含有し、該アルミニウム系添加剤の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部であることを特徴とするグリース封入転がり軸受。 - 前記アルミニウム化合物は、炭酸アルミニウムおよび硝酸アルミニウムから選ばれた少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1記載のグリース封入転がり軸受。
- 前記増ちょう剤は、ウレア系増ちょう剤であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のグリース封入転がり軸受。
- 前記基油は、アルキルジフェニルエーテル油およびポリ-α-オレフィン油から選ばれた少なくとも一つの油であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のグリース封入転がり軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006323196A JP2008138705A (ja) | 2006-11-30 | 2006-11-30 | グリース封入転がり軸受 |
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JP2006323196A JP2008138705A (ja) | 2006-11-30 | 2006-11-30 | グリース封入転がり軸受 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101099909B1 (ko) | 2009-11-10 | 2011-12-28 | 셰플러코리아(유) | 베어링용 전동체 열처리 방법 및 그 전동체 |
JP2012517872A (ja) * | 2009-02-18 | 2012-08-09 | アシュ.エー.エフ | 調理器具用部品の処理法 |
WO2019044665A1 (ja) * | 2017-08-28 | 2019-03-07 | Ntn株式会社 | 転動部品、転がり軸受、自動車電装補機用転がり軸受及び増減速機用転がり軸受 |
-
2006
- 2006-11-30 JP JP2006323196A patent/JP2008138705A/ja active Pending
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