本発明は、照明装置及び照明システムに関し、特に、発光ダイオード(以下、「LED」と称する。)を備えた照明装置及び照明システムに関する。
近年、高輝度の白色LED(いわゆるパワーLED)は、照明分野に適用できる領域まで進歩してきた。近い将来、LEDのワットあたりの輝度が蛍光灯など普及型照明を超えることも容易に推定される。LED照明は、現行の照明に比べて寿命、消費電力、廃棄物処理などの点で幾つもの利点があり、普及により入手がよりし易くなれば、次世代の照明として大きく期待ができる。
しかし、蛍光灯などに代わってLED照明がマーケットに受け入れられるためには、これらの利点以外に解決しなければならない課題があり、その一つに、どのように均一照度面を実現するかがある。白熱灯などは照射面の照度分布が比較的なだらかに照射されるので、一つの光源でも、実生活上の一定面積を快適に照明できる。棒状蛍光灯などは、棒状方向にも極めて均一な照度が得られるので、部屋などの居住空間や決められたある面積を均一に照射できている。
一方、LEDは、半導体の小さな部分が光源となるため、蛍光灯などに比べてはるかに小さな光源である。このため、蛍光灯や白熱灯など従来の照明光源に比べて、光源が極めて小さな部分に集中する点光源といえる。したがって、LEDのワット当り発光量が現行照明と同等になっても、机上や床面のようなある一定の面積部分を均一に光らせるのは、照明機器として技術的な解決策が必要である。
図15は、従来のLED照明装置の照射状態を示す図である。図15において、9はレンズ付きLEDチップ、10は直線状に配列されたLEDチップ9を搭載する横長板状の基板、11は各LEDチップ9からの出射光が重なり合って形成される照射領域を示している。
しかし、従来のLED照明装置は、照射領域11の光均一性を担保するために、LEDチップを、できるだけ互いに接近させて直線状に並べることになる。LEDチップは、光量光量や発熱、価格の点で自由度が制限されるという問題がある。
例えば、採用するLEDチップの光量(ルーメン/W)が決まると、LEDの直線配列長(L)で、ある距離における照明領域の明るさ(ルックス)が決まってしまう。したがって、明るさを決めると採用LEDチップによって直線配列長が決まるので、これによって照明器の長さが決まってしまうことになる。
また、照度と機器の長さとを指定すると、必要なLEDチップの光量(ルーメン/W)は計算で定まるが、適当なLEDが商品として実在するか保証が無い。実際には、明るさや長さの組み合わせに対する市場の要求は多岐にわたるので、対応するLEDの入手は実際上困難である。
このように、従来の照明装置は、得られる照度がLEDチップの敷き詰めた長さに比例するので、照明機器としては極めて自由度がない。例えば60cmの長さの照明機器を作るのに小電力・小光量のLEDを2個/cmで敷き詰めると120個必要となり、0.08W/個とすると約10W/照明機器となり明るさが十分な照明機器とはならない。
一方、1W/個級のいわゆるパワーLEDを1個/cmで敷き詰めると60個必要となり一挙に60W/機器となるが、価格の点で高価になりさらにLED装置としての発熱の点でも問題がある。
そこで、本発明は、第一には、上記事情を考慮して、光均一性を有する照明装置を提供することを課題とする。
また、光均一性を有する照明装置が実現できると、例えば、街灯、商品又は美術品などのディスプレイに好適に用いることが可能となる。すなわち、街灯への適用利点を例に挙げると、端的には、街灯付近と街灯間との照度差の軽減が図れ、照明効率が向上することがある。ただし、光均一性を有する照明装置を街灯へ適用する場合には、街灯近隣への光害を排除する必要がある。
そこで、本発明は、第二には、光均一性を有する照明装置の利便性を向上させることを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の照明装置は、
発光ダイオードと、前記発光ダイオードからの出射光の一部を反射する反射面を有する反射体とを備え、
前記反射面の形状は、前記反射体の長手方向に対する直交断面が略アーチ型であって、
前記直交断面に対して前記発光ダイオードで区分けされる第一反射面と第二反射面とが相互に非対称である。
具体的には、前記直交断面の両端は、相互に、当該発光ダイオードまでの距離が異なる。なお、第一反射面と第二反射面とは一体形状であっても、別体であってもよい。
前記直交断面は、懸垂曲線、2次曲線、楕円曲線、放物線あるいは直線を含むとよい。
前記第一反射面は、照明装置に対して着脱可能とするとよい。反射体自体は、発光ダイオードによって区分けされる直交断面に対象性を持たせておき、オプション的に、多用途の照明装置を実現できるからである。
前記第一反射面は、前記第二反射面によって規定される前記発光ダイオードからの直接光の照射領域外に、前記発光ダイオードからの光が到達しないように構成されている。上記照射領域外とは、前記第二反射面の端部と当該発光ダイオードとを通る平面よりも外側の外側領域となる。この際、前記第一反射面における前記照射領域外に対応する領域は、光拡散領域、光吸収領域、又は、隣接する領域に対して所要の角度を有する領域とされている。
すなわち、本発明の照明装置は、複数のLED光源を基板上に構成し、LED光源の両側に相互に形状が異なる半筒形状の反射板が配置される。この半筒とは、たとえば、断面が成型された曲線で、一定の長さを有する樋状が該当する。半筒形状の反射板の長手方向に直交する断面の形状は、LED光源の近傍で懸垂曲線、あるいは放物線、またはそれらの一部で形成されてもよい。または、半筒形状の反射板の長手方向に直交する断面の形状は、径の比較的大きな円や楕円などの曲線の一部で形成されてもよい。または、半筒形状の反射板の長手方向に直交する断面の形状は、上記の各曲線を複合させてできる曲線で形成されてもよい。
また、本発明の照明システムは、上記照明装置と、前記照明装置を懸架する懸架装置とを備える。
発明を実施するための形態
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態の照明装置の原理説明図である。図1には、点光源と見なされるLEDチップ400と、曲面中央にLEDチップ400が設けられている略筒状の一部を構成する形状の反射体である反射板401と、LEDチップ400からの照射光402と、LEDチップ400からの直接光と反射板401からの反射光との合成光によって形成される長方形の照明領域403とを示している。なお、図1には、LEDチップ400は一つとしてあるが、本実施形態では、この照明装置は、複数のLEDチップを備えている。
一例としては、この照明装置は、長手方向の長さが12.5cm〜15.0cm、短手方向の長さが2.5cm〜3.5cm、厚さが2.0cm〜3.0cmとしている。もとも、このサイズに限定されるものではなく、LEDチップ400の個数、照度などに応じて、適宜選択すればよい。
図2は、図1の反射板401とLEDチップ400との関係を示す図である。LEDチップ400の位置をx−y座標のQ点(0,0)とし、反射板401の長手方向に対する直交断面の曲線を一般的式y=f(x)とする。この場合に、反射板401による反射光を解析する。
光源Q(0,0)から出た光は曲線上のR(r,s)で反射しU(u,v)を通る。この時R(r,s)での曲線の接線に対するQ点の対称点をC(c,d)とすると、U点は常にC点とR点を結ぶ線上にある。本実施形態では、このような光源Q(0,0)の周辺に位置する反射板401からの反射光を最適に制御して、照明領域403を目的の平面をできるだけ均一に照明する。
まず、図2の反射光の現れ方を解析する。反射板401からの反射光の解析は、反射板401の断曲面の数式を定めて、数学的手法を用いれば比較的容易に行うことができる。
例えば上記断曲線を懸垂曲線(糸を地上同じ高さの2点に緩く張って垂れ下げた時にできる曲線。曲線の底部が(0,0)をとおる場合、一般式はy=a*cosh(x/a)−aで表される)とし、曲線を図2のようにpだけy方向にずらしてy=a*cosh(x/a)−aとする。
さらに曲線に下記の条件を与えて、U(u,v)点のv=h上の挙動を解析する。懸垂曲線として、例えば、断曲面の端部間距離を10mm、端部間中央と曲線底部との間の距離(深さ)を9mmとすると、y=a*cosh(x/a)−aにおいてa=2.14となる。さらに、点光源の位置を曲線の底部より1mm(p=1)とする。さらに下記の(1)〜(4)の条件式が成り立つ。
(1)s=f(r)、
(2)d/2−s=m*(C/2−r) (QCの中点はこの接線上にあるから) ここで、mはRでの接線の勾配(m=df(r)/dx)、
(3)d/c=−1/m (QCは接線に垂直だから)、
(4)(r−c)/(u−c)=(s−d)/(v−d) (点C、R、Uは同一直線状にあるから)。
なお、ここでは、上記断曲線が懸垂曲線の場合を例示したが、これを成分として含むもの(一部に含むもの)、或いは、これに代えて又はこれと共に、2次曲線成分、楕円曲線成分あるいは放物線成分を含むものであってもよい。また、後述するように、LED列によって区分けされる第一反射面を例えば懸垂曲線とし、第二反射面を例えば2次曲線とすることも可能である。
図3は、図2の反射光の軌跡の説明図である。ここでは、h=60mmの直線上における反射点(U(u,h))の現れ方と反射光の軌跡を上記の式を用いて求めた結果を示している。なお、図3では、縦軸を横軸に比して圧縮した形態で示している点に留意されたい。
懸垂曲線上のR点をx方向に0.5mmずつずらしていきながら、各位置(ar〜jr点)で各々反射する反射光を図示すると、図3のようになる。図3では、x=0.5mmのR点(ar)での反射光がaであり、x=1.0mmのR点(br)に対応する反射光がbである、というようにしてある。
ここで、対象LED光源を点光源とする場合、図3においてy=0またはyが負のR点からの反射光は実際には考慮しなくてよい。これは、製品化され市場で入手できるほとんどのLED光源は、発光チップの性質上光を前方のみに放出するように造られているからである。
図4は、製品化され市場で入手できるほとんどのLED光源の側面図である。例えば、図4において、404はLEDチップ400を搭載し配線等を施したパッケージ基板である。LEDチップ400からの光は、図4に示す点線よりも上部に発せられるように製品化されているのが通常である。
図5は、図3に示す反射光の軌跡を図4に示す出射角の制限を考慮した解析結果である。図5では、図3に示したyの値が0または負となるar、br、cr、drからの反射光を割愛してある。
図5に示すように、y=0および負の反射光をのぞいた光源Qからの実際の反射光は、曲線部分Aからy=60mmの線上に現れる反射光er〜jrであり、これらは直線部分A’に集中する。
このように、点光源Q点の前方で、一定の距離(yが一定:ここではy=60mm)にある直線上のある部分に反射光を集中させたい場合、反射板401の断曲面を示す数式とLED光源400の位置との関係を予め計算しておき、計算結果に基づいて底部近くの適当な位置にLED光源400を設置すれば実現できる。
ここでは、LED光源400の周辺の反射板401の断曲面を懸垂曲線として上記のようなパラメーターを与えたが、当該断曲線を放物線や楕円などとしてもパラメーターとLED光源400の位置とを最適に選べば、同様の数学的手法で、y=一定である線上の目標の部分に計画的に集中させることができる。
図6は、反射板401を設けていない場合の、点光源Qから出射される直接光の照射分布概略図である。図7は、y=60の線上での、図6に示す直接光(曲線d)と、反射板401からの反射光(曲線r)と、これらの合成光(曲線s)との相対照度分布図である。
直接光は、y=+の全方向に放出されるので、例えばy=60mmの線上でこの直接光の照度分布は、図7に示すx=0で中心値となる曲線dとなる。従って、この直接光と図5のような一部分に集中する反射光(曲線r)とを重畳合成することによって、例えばy=(一定値)の直線上(曲線s)で照度を均一となるように制御することが可能になる。
ここでは、合成光の照度分布sは、反射光中心値付近E点から中心向かっての照度は均一になる。
同様の方法で、反射光rの中心部が図7のx軸+側にも位置するように反射板401の条件を定めれば、図8に示す合成光Sのように、集中反射光の2つの中心点E,Fの間を均一な照度にすることができる。さらに、このE−F間均一な照度分布をそのままZ軸方向に形成できれば、一つの点光源からZ軸方向(反射板401の長手方向)に横に長い面積を、均一に照明できることになる。
図9は、上記Z軸方向に対する反射光の解析結果であり図5に示す解析結果に対応する図である。Z軸は(0,0)に垂直に図9の手前−奥方向に伸びているとする。換言すると、図9は、Z軸方向の反射光を示す三次元図を、xy平面に投影した図である。
断面が図5の懸垂曲線となる反射板401を、図5の曲線部分AにZ軸方向に平行して積み重ね、Z=zの平面上で同様の反射光を考える。例えば図5での反射点R(x,y,z)は、図9ではR(x,y,z)となる。図9において、光源Q(0,0,0)から放射された光は、例えばezで反射してy=60mmの線上でez’に到達する。ここで、ezは図5のerをZ軸方向にのみZ=zだけシフトした点である。
また、ez’は図5のerをZ軸方向にZ=z’だけシフトした点である。zとz’との関係は、反射幾何学的に決定される。同様に、fz〜jzからの反射は、fz’〜jz’に到達する。光学上の条件を考慮して、図3を求めたときと同様の手法で反射光の軌跡を数式的に求めると、Z=z平面での反射光ez〜jzがez’〜jz’に到達する軌跡は、Z=0のxy平面に投影してみると、図5の対応するxy平面(z=0)での軌跡と完全に一致することがわかっている。
すなわち、図9に表される反射光ez〜jzがez’〜jz’に到達する軌跡は、Zの値にかかわらずxy平面では図5の反射光er〜jrがer〜jrに到達する軌跡と同じである。従って、上記曲面上での反射点RをZ方向に変化させても、xy平面上では同じ軌跡で反射することになる。
換言すると、反射光の集中する帯は、Z軸すなわち反射板401の軸(長手)方向に並行して、反射光が届く限り続くことになる。しかし、点光源Q(0,0,0)から反射点までの光の距離はzの値によって変化するので、zの値によって決まるxy平面上でez’〜jz’の各点の照度は変化することになる。
図10は、反射光の集中する帯を示す図である。図10には、照明領域403の長手方向の両端に、それぞれ、反射光の集中帯状領域が形成されている状態を示している。なお、集中帯状領域間は照度が均一な領域を示している。
以上の説明から、LEDチップ400のような点光源の両側に、適切な曲面を持つ長い半筒状の反射板401を構成することによって、反射板401に沿って広がる照射領域403の照度を均一にすることができる。したがって、この構成を同一の半筒状反射を使って繋いでやれば、反射板に沿った長い領域を適当に離れた点光源で均一に照明ができることになる。
例えば、図11に示すような適当な距離だけ離れた2つのLED光源の近傍に、予め点光源の位置と最適な曲面を有する長い半筒状反射板を図のように構成することで、LEDの照射方向にある平面領域(図では点線で囲まれた下方の領域)を均一に照明できる。
図12(a),図12(b)は、図11に示す2つのLEDチップ400の距離と照射領域403のZ軸方向の照度との関係の説明図である。具体的には、現実的なパラメーターを一例として定めて、図10に示した反射光の集中帯状領域の照度が、2つのLEDチップ400間の距離によってどうなるかを計算によってシミュレートした結果を示している。
LEDチップ400が2つある場合、反射光の集中帯状領域内に存在する測定点の照度は、LEDチップ400間の間隔が所望であれば、各LEDチップ400からの出射光が重なり合った部分であるため、両方のLEDチップ400から達する反射光の合計となる。係る場合には、図12(a)に示すように、反射光の集中帯状領域のZ軸方向の照度は均一性がある。
一方、LEDチップ400間の間隔が離れすぎている場合には、上記重なり合った部分が形成されず、このため、図12(b)に示すように、反射光の集中帯状領域のZ軸方向の照度は均一性を有しなくなる。
以上の技術的検討から、複数のLEDチップ400の間隔を離して設置しても、最適な曲面を有する半筒形状の反射板401と組み合わせることによって、反射板401の長手方向に沿った長い照射領域403を均一に照明できることがわかる。
図13は、図11の照度を目的に合わせて調整するための適用例である。図13に示すように、LEDチップをグループ化するなどして、柔軟に照度を調整しても、照明領域403では均一な照度が得られる。
図14は、図13の変形例である。図14(a)は照明装置の断面図、図14(b)は図14(a)の側面図、図14(c)は図14(a)下面図である。この例では、反射板401に代えて、予め適切に計算された曲面(例えば断面が懸垂曲線の部分)を有する2枚の反射板910,913を備えている。反射板910,913とLEDチップ400とは、図示しない支持部材などを介して、相互に接続すればよい。この場合、反射板910,913に対するLEDチップ400の接続位置は、自由に変更できるとよい。
ここで、反射板910,913を備えることとしたのは、図4を用いて説明したように、実際のLEDチップ400は、後方に光りが照射されるものが少ないから、LEDチップ400を含むXZ平面よりも後方に含まれる部分を除く趣旨である。
このようなLEDチップ400を有した照明装置により、反射板910,913の長手方向に伸びる長方形の照射領域403を均一に照明することが可能になる。実際には、LEDチップ400は純粋な点電源ではなく照射面を有しているので、反射光の集中度はなまることをうまく活用したり、反射板910,913の鏡面を適度に梨地にしたりして、反射集中帯を広げる等、均一度をさらに改善することも可能になる。
LEDの輝度は、今後も進歩すると予想されるが、反射板401,910,913を備えることにより、輝度の大きなLEDの照明分野への適用を著しく進歩させることが可能になる。
すなわち、反射板401,910,913と組み合わせることによって、高輝度のLEDチップ400を適度に分散したり、グループ化したりすることで、LEDチップ400をライン状に配置できることから、目的の照度を得るためのLEDの選択や照明機器の長さあるいは大きさに自由度を与えることができる。
なお、LEDチップ400は、基板404上に設け、反射板401,910,913の曲部の長手方向の任意の位置に着脱可能としてもよい。具体的には、たとえば、反射板401の曲部にレールを這わせるとともに、当該レールに電源線を設け、電源線上にLEDチップ400を着脱可能とすることで実現できる。
つぎに、本発明の実施例について説明する。本実施例では、図1等に示す照明装置を変形した照明装置200を備える、街灯用の照明システムについて説明する。ただし、本実施例の照明システムは、例えば、店頭での商品ディスプレイ用の照明システム、美術館の絵画等の照明システムにも好適に用いることができる。
図16は、本発明の実施例の照明システムによる照射領域403の説明図である。図16(a)〜図16(c)には、例えば4m幅の道路と、その道路の片側に設置された街灯の懸架装置100と、懸架装置100によって懸架される照明装置200と、照明装置200からの照明光402と、照明光402の照射領域403とを示している。
図示するように、懸架装置100は、様々な高さのものが存在している。ここでは、図16(a)に3.5m、図16(b)に4.0m、図16(c)に4.5mという、3パターンの高さを示している。
照明装置200の位置は、道路の中央よりも懸架装置100の設置側となることが多い。このような懸架装置100に対して、仮に、図1等に示すように、長手方向の直交断面に対象性がある反射板401を備える照明装置を懸架し、当該照明装置から光を照射すると、照射領域403の幅(図16の左右方向)の中心は、照明装置の直下となる。
図16(d)に示すように、係る場合には、道路の全幅に照射領域403を確保しようとすると、懸架装置100の設置側では、道路の脇を越えて光が照射される。この結果、懸架装置100の設置側では、街灯近隣への光害が生じかねない。そこで、本実施例では、照明装置200の反射板401の形状等を工夫して、光害が生じないようにしている。
具体的な反射板401の形状等の条件については後述するが、照明装置200から図16(a)〜図16(c)に示す照射角で光を照射すると、上記の光害の発生を防止できる。すなわち、
図16(a)に示すように、懸架装置100の高さが3.5mの場合には、照明装置200からの垂線に対する懸架装置100の設置側への照射角は15.9度、もう一方の照射角は40.6度、全体として56.5度とするとよい。
図16(b)に示すように、懸架装置100の高さが4.0mの場合には、照明装置200の垂線に対する懸架装置100の設置側への照射角は14度、もう一方の照射角は36.9度、全体として50.9度とするとよい。
図16(c)に示すように、懸架装置100の高さが4.5mの場合には、照明装置200の垂線に対する懸架装置100の設置側への照射角は12.5度、もう一方の照射角は33.7度、全体として46.2度とするとよい。
以下、照明装置200の具体的構成について、いくつかのパターンを例示して説明する。
(実施例1)
図17は、本発明の実施例1に係る照明装置200の長手方向に対する直交断面を示す模式図である。図17には、既述の基板404と、基板404の第一面に接続されているヒートシンク210と、基板404の第一面の裏面である第二面に設けられているLEDチップ400と、LEDチップ400に対応する開口部が形成されている反射板401と、ヒートシンク210,基板404,LEDチップ400及び反射板401が収容される断面が略コの字状の筐体220とを示している。
ヒートシンク210は、選択的に設けられるものであり、LEDチップ400の発熱量が少なければ必ずしも設けなくてもよい。その一方で、LEDチップ400の発熱量が多ければ、筐体220にヒートシンク機能を備えてもよい。具体的には、アルミニウム等のように、熱伝導性が高い物質を用いたり、筐体220自体に溝又は凹凸を形成して表面積を増したりすればよい。或いは、筐体220に外付けなどで、更に図示しないヒートシンクを接続させて、放熱効果を高めてもよい。
反射板401は、LEDチップ400を含む図17の奥−手前方向に配列されるLEDチップ列(図示せず)を挟んで、相対的に急な曲面を有する第一反射面201と、相対的に緩やかな曲面を有する第二反射面202とに分けられる。このように、本実施例では、第一反射面201と第二反射面202とを、相互に非対称に構成する。ただし、反射板401自体の形状は、LEDチップ列の列方向に対する直交断面が略アーチ型であるという点は、既述の実施形態の場合と同様である。なお、略アーチ型に含まれる類型の直交断面については後述する各実施例で説明する。また、本実施例の照明装置が、LEDチップ400が複数備えることが必須ではない点に留意されたい。
ここで、反射板401は、第一反射面201と第二反射面201とを一体形状としたものであってもよいが、これらを別パーツとしたものであってもよい。いずれの場合であっても、金型等を用いて一意に作成するとよい。ただし、後者の場合には、第二反射面201を用途に応じて使用するということが可能となるので好ましい。つまり、後者の場合には、汎用用途に対しては、一対の第一反射面201によって反射板401を構成し、街灯等の特定用途に対しては、第一反射面201と第二反射面201とによって反射板401を構成するという、選択的な使用が可能となる。
LEDチップ列は、例えば3つのLEDチップ400によって構成することができる。各LEDチップ400は、その発光色を、全て同じにしてもよいし、異ならせてもよい。例えば、白色系統の発光色のLEDチップ400と、青色系統の発光色のLEDチップ400とを組み合わせたLEDチップ列を用いることも可能である。
ここで、青色は、人間に対して心理的に鎮静効果を与えることが知られている。このため、上記のように、照明装置200において青色系統の発光色のLEDチップ400を用いると、夜間の街灯で発生しうる犯罪件数の抑止にも貢献することができる。なお、本明細書で説明するような反射板を用いない場合には、上記のように数種類の発光色のLEDチップ400を用いても、照射光がうまく混合されず、青色が相対的に強い照射領域と白色が相対的に強い照射領域とが現れるという状態になる。換言すると、本明細書で説明する反射板を備える照明装置200の場合には、数種類の発光色の混合色の照射領域403を実現できるという利点がある。
第一反射面201及び第二反射面202は、共に、長手方向に対する直交断面を、懸垂曲線等としている。ただし、第一反射面201側の直交断面の懸垂曲線と、第二反射面202側の直交断面の懸垂曲線とは、一般式:[y=a*cosh(x/a)−a]における係数を異ならせている。もっとも、第一反射面201側の直交断面を例えば懸垂曲線とし、第二反射面202側の直交断面を例えば2次曲線とするとのように、互いに種別が相違する曲線を組み合わせてもよい。
図17には、LEDチップ400の発光点400aと、第一反射面201の端部201aと、第二反射面202の端部202aとをそれぞれ示している。発光点400aと端部201aとの距離は、発光点400aと端部202aの距離に比して短い。このような形状の反射板401を用いると、照射領域403は、LEDチップ列の直下に対して第二反射面202側に位置することになる。つまり、照射領域403が、照明装置200に対して正対しないようになる。
なお、例えば、図16(b)に示した条件の照明領域を実現しようとする場合には、反射板401の諸条件を以下のようにするとよい。すなわち、LEDチップ400の土台表面中央400bと発光点400aとの間の距離を約1.0mm、端部201aと端部202aとの間の距離を約19.5mm、各端部201a,202を結ぶ線と発光点400aからの垂線との交点400cと端部202aとの距離を約12.5mm、交点400cと端部201aとの距離を約7.0mmとする。
以上説明した照明装置200を、1台の懸架装置100に対して1〜3台程度取り付けると、光害が発生しない街灯を実現できる。
(実施例2)
図18は、本発明の実施例2に係る照明装置200の長手方向に対する直交断面を示す模式図である。実施例1に係る照明装置200は、第一反射面201と第二反射面202という、相互に異なる条件の曲面を有する反射板401を用いていた。このため、実施例1に係る照明装置200は、街灯等のように特定用途に対して合致するものである半面、汎用用途に不向きであるし、製造上の難点がある。これに対して、本実施例に係る照明装置200は、この種の反射板401を用いた場合よりも、用途の汎用性、製造の容易性を向上させるものである。
図18には、第一反射面を構成する反射部材230を示している。反射部材230は、照明装置200の筐体220等に対して、着脱可能な構成としている。反射板401自体は、実施形態で示したような、LEDチップ列を挟んで対象性を備えた構成としている。このような反射板401を用いた場合であっても、反射部材230を照明装置200に取り付けることによって、LEDチップ400から反射部材230の取り付け側への光照射角を狭められるので、実施例1と同様の効果が得られる。
反射部材230は、LEDチップ400からの光を反射する平面状の第一面230aと、第一面230aに対して直交して延びる第二面230bと、第二面230bとともに筐体220に対して取り付けられる第三面230cという3つの面からなる。反射部材230の形状は、図示するように、断面が略コの字形状とすることができる。ただし、例えば、第一面230aを、図17に示した第一反射面201と同じような曲面としてもよい。
反射部材230の第一面230aと第二面230bとの交線の位置は、図17の端部201aの位置に対応する。したがって、図18に示すような、反射部材230が取り付けられた照明装置200は、図17に示す照明装置200と同様に、街灯に好適に用いることができる。
(実施例3)
図19は、図18の変形例を示す図である。本実施例では、反射部材230の第一面230aに、光拡散又は光吸収領域230dを設けている点が、実施例2の場合と異なる。この領域230dは、反射部材230の製造段階で設けてもよいし、反射部材230本体の製造後に光拡散シート又は光吸収シートなどを貼付することによって設けてもよい。
ここで、実施例2に係る照明装置200の場合には、第二反射面202によって規定されるLEDチップ400からの直接光の照射領域外に、領域230dに対応する領域からの反射光が到達してしまう。この反射光自体の照度は低いため、道路周辺に対して光害が発生するということはないが、所望の照射領域403を実現するためには、領域230dを設けることが好ましい。
光拡散領域230dを設けた場合には、LEDチップ400からの光を無駄なく照射領域403に照射させることができる。一方、光吸収領域230dを設けた場合には、LEDチップ400からの光が、上記照射領域外に到達することを防止できる。このように、光拡散領域230d、光吸収領域230dのいずれを設けた照明装置200は、実施例2に係る照明装置200よりも利点がある。
図20は、図19に示す照明装置200を備える照明システムによる照射領域の照度分布図である。図19に示す照明装置200を、床から高さ3.5mの位置に懸架し、その周辺を遮光カーテンにより暗くした状態で照射計測実験を行った。LEDチップ400の数は3つとし、約25mm間隔で配列した。そして、いずれのLEDチップ400も、3Wの電力駆動とした。
実験結果によると、5ルクスの照度が、床の照明装置200の直下から反射板401の長手方向約2mの地点、短手方向のうち反射部材230を取り付けていない側に対応する約1.5mの地点、及び、短手方向のうち反射部材230を取り付けている側に対応する約0.5mの地点で得られた。
また、3ルクスの照度が、上記直下から同長手方向約3mの地点、同短手方向のうち反射部材230を取り付けていない側に対応する約2mの地点、及び、同短手方向のうち反射部材230を取り付けていない側に対応する約0.7mの地点で得られた。
さらに、1ルクスの照度が、上記直下から同長手方向約5mの地点、同短手方向のうち反射部材230を取り付けていない側に対応する約3mの地点、及び、同短手方向のうち反射部材230を取り付けている側に対応する約1mの地点で得られた。
ここで、一般的には、1ルクスの明るさがあれば、新聞の活字程度の文字が可読可能な明るさであるといわれている。このため、1ルクス程度の明るさは、街灯としての明るさとしては十分であると考えられる。換言すると、1ルクス程度の明るさで4mの幅の道路を照らそうとする場合には、懸架装置100の間隔は約10mとすればよいことがわかる。
(実施例4)
図21は、本発明の実施例4に係る照明装置200の長手方向に対する直交断面を示す図である。
図21(a)に示す反射板401は、上記直交断面において、第一反射面201を、第二反射面202に比して相対的に長くしている。この長い部分201bは、実施例2で説明したように、着脱可能な反射部材230としてもよいし、実施例1で説明したように一体的なものであってもよい。図21(a)に示す反射板401を備える照明装置200の場合にも、実施例1,2で説明した照明装置200と同様の効果が得られる。
図21(b)には、図21(a)に示す反射板401の変形例を示している。この反射板401は、第一反射面201の長い部分201bを、光拡散領域又は光吸収領域201b’としている。図21(b)に示す反射板401を備える照明装置200の場合にも、実施例3で説明した照明装置200と同様の効果が得られる。
(実施例5)
図22は、本発明の実施例5に係る照明装置200の長手方向に対する直交断面を示す図である。図21に示した照明装置200の場合には、スペースファクタの点で改善課題がある。これに対して、図22に示す照明装置200は、スペースファクタが優れているという利点がある。
図22(a)に示す反射板401は、上記直交断面において、先端領域201cが第二反射面202側に向き、略レの字状とした第一反射面201を備える。この場合にも、図21(a)に示した照明装置200と同様の効果が得られる。
図22(b)には、図22(a)に示す反射板401の変形例を示している。この反射板401は、先端領域201cを、光拡散領域又は光吸収領域201c’としている。図22(b)に示す反射板401を備える照明装置200の場合にも、実施例3で説明した照明装置200と同様の効果が得られる。
(実施例6)
図23は、本発明の実施例6に係る照明装置200の長手方向に対する直交断面を示す図である。図23(a),図23(b)に示す反射板401は、実施例3に係る反射板401の変形例である。
実施例3の場合には、領域203dを設けたが、これに代えて、又はこれとともに、領域203dを第一面230aに対して所要角度としている。こうすると、LEDチップ400からの光が、領域203dに照射されにくくなるので、実施例3の場合と同様の効果が得られる。
(実施例7)
図24は、本発明の実施例7に係る照明装置200の長手方向に対する直交断面を示す図である。図24(a),図24(b)に示す反射板401は、実施例3に係る反射板401の別の変形例である。
図24(a)に示すように、実施例3で領域203dを設けたことに代えて、領域203dに相当する領域を割愛した。この場合には、領域203dによって光が反射されるという現象が生じ得ないので、実施例3の場合と同様の効果が得られる。
図24(b)には、図24(a)の変形例を示している。第一反射面201の第一面230aと第二面230bと第三面230cによって囲まれた領域の一部に、LEDチップ400からの光が到達することになる。この場合、当該領域から第二反射面202に向けて進行する光があるので、照射領域203の光の均一性を担保するために、第一面230aに光吸収又は光拡散領域230dを設けている。
したがって、この種の反射板401を用いた照明装置200を備える照明システムを街灯に用いると、図16に示すような照射領域を実現することが可能となる。
産業上の利用分野
本発明は、照明業の利用することが可能である。
本発明の実施形態の照明装置の原理説明図である。
図1の反射板401とLEDチップ400との関係を示す図である。
図2の反射光の軌跡の説明図である。
製品化され市場で入手できるほとんどのLED光源の側面図である。
図3に示す反射光の軌跡を図4に示す出射角の制限を考慮した解析結果である。
反射板401を設けていない場合の、点光源Qから出射される直接光の照射分布概略図である。
y=60の線上での、図6に示す直接光(曲線d)と、反射板401からの反射光(曲線r)と、これらの合成光(曲線s)との相対照度分布図である。
図7の変形例を示す図である。
Z軸方向に対する反射光の解析結果を示す図である。
反射光の集中する帯を示す図である。
図1の変形例である。
図11に示す2つのLEDチップ400の距離と照射領域403のZ軸方向の照度との関係の説明図である。
図11の照度を目的に合わせて調整するための適用例である。
図13の変形例である。
従来のLED照明装置の照射状態を示す図である。
本発明の実施例の照明システムによる照射領域403の説明図である。
本発明の実施例1に係る照明装置200の長手方向に対する直交断面を示す模式図である。
本発明の実施例2に係る照明装置200の長手方向に対する直交断面を示す模式図である。
図18の変形例を示す図である。
図19に示す照明装置200を備える照明システムによる照射領域の照度分布図である。
本発明の実施例4に係る照明装置200の長手方向に対する直交断面を示す図である。
本発明の実施例5に係る照明装置200の長手方向に対する直交断面を示す図である。
本発明の実施例6に係る照明装置200の長手方向に対する直交断面を示す図である。
本発明の実施例7に係る照明装置200の長手方向に対する直交断面を示す図である。
符号の説明
100 懸架装置
200 照明装置
201 第一反射面
202 第二反射面
210 ヒートシンク
220 筐体
400 LEDチップ
401 反射板
402 照射光
403 照明領域