JP2008124678A - エコー処理プロセッサおよび音声通信装置 - Google Patents

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敦仁 矢野
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Abstract

【課題】 ユーザーによる音量の調節に追従してエコー処理を行う音声通信装置とエコー処理プロセッサにおいて、ユーザーが音量を下げた時に生じるエコー消去効果の低下を低減する。
【解決手段】 受話入力信号が聴取空間に出力された出力音声のうち、送話入力信号に混入したエコーの参照信号として、上記受話入力信号または上記受話入力信号の信号レベルが上記出力音声の音量調節値に基づいて調整された可変アンプ出力信号のいずれかを上記出力音声の音量調節値に基づいて選択する参照信号選択手段と、上記参照信号選択手段で選択された上記受話入力信号または上記可変アンプ出力信号のいずれかと、エコー経路の伝達関数に基づいて、上記送話入力信号から上記エコーを消去するエコーキャンセル手段とを備える。
【選択図】 図1

Description

この発明は、受話入力信号が聴取空間に出力された出力音声のうち、送話入力信号に混入したエコーを消去するエコー処理プロセッサおよび当該エコー処理プロセッサを備えた音声通信装置に関するものである。
ハンズフリー電話機に用いられる一般的なエコーキャンセラは、受話入力信号とマイク入力信号から、適応フィルタ等を用いてエコー経路の伝達関数を推定し、さらに受話入力信号と上記推定した伝達関数を元に擬似エコー信号を生成する。そしてマイク入力信号から上記生成した擬似エコー信号を引き去ることによってエコーを消去する。
ところが、受話入力信号の再生音量がユーザーによって可変である場合、ユーザーが任意に音量を調節した瞬間にエコー経路の伝達関数が変化し、推定した伝達関数と実際の伝達関数との間に誤差が生じる。この推定誤差はそのまま擬似エコーと実際のエコーとの間の誤差となって現れ、エコー消去効果の一時的な低下を招く。
従来のエコーキャンセラには、このような問題に対応するものとして、ユーザーの音量調節によるスピーカ増幅値の変化量に応じて、推定した伝達関数を変化させるものがある。例えば、受信入力信号がスピーカから出力された出力音声のうち、マイクを介して入力された送信入力信号に混入したエコーを低減させるエコー処理に関し、マイクとスピーカ間の音響伝達特性より演算されるフィルタ係数と受信入力信号より擬似エコーを求め、この擬似エコーを用いて、送信入力信号よりエコーを消去する処理において、スピーカとマイク間の音響伝達特性より演算されるフィルタ係数にスピーカ増幅値の変化量に応じた乗数を乗ずることによって、フィルタ係数をスピーカ増幅値の変化量に応じて変化させる。また、スピーカ増幅値の変化量が予め定めた変化量よりも大きい場合には、フィルタ係数をゼロ乃至ゼロに近い値にする。そして、このようにフィルタ係数を変化させるとともに、このフィルタ係数と受信入力信号より擬似エコーを求め、この擬似エコーを用いて、送信入力信号よりエコーを消去する(特許文献1を参照)。
また別のものとして、伝達関数を推定するために、マイク入力信号のエコー源として適応フィルタに入力する信号(以下、参照信号とよぶ)の入力ゲインを、ユーザーの音量調節と連動させるものがある。例えば、マイク入力と携帯電話端末の受話入力とを受け、マイク入力に含まれる受話入力を相殺して携帯電話端末へ送話出力するエコーキャンセル回路の受話入力の利得を、携帯電話端末の受話入力を増幅してスピーカ出力とするスピーカ用ボリューム部のスピーカ出力の大きさに適応して可変制御する(特許文献2を参照)。このようなエコーキャンセラでは、ユーザーが音量を任意に調節しても、参照信号のゲインがこれと連動している為、エコー経路の伝達関数の変化は生じず、エコー消去効果は低下しない。
特許第3406590号公報(第5頁)
特開平10−294785号公報(第4頁)
以上で例示した従来のエコーキャンセラは、ユーザーの音量調節に対して、フィルタ係数を修正したり、受話入力信号のゲインを連動させたりする事によってエコー消去効果の低下を防いでいる。
しかしながら、固定小数点演算プロセッサを用いてエコーキャンセラの装置を構成する場合、従来の技術ではユーザーが音量を下げた時に演算精度の低下が生じ、エコー消去効果の低下を招くという問題がある。
固定小数点演算プロセッサ上で扱われる数値データは、値の範囲と精度が固定である。よって適応フィルタ係数を音量調節に応じて変化させる場合では、ユーザーが音量を下げた時に、それに応じて適応フィルタ係数の係数値を減少させる際に、固定小数点の数値データは下位の桁のデータが切り捨てられる。これはすなわち、推定され、適応フィルタ係数として保持されている、エコー経路の伝達関数の精度劣化を意味する。特にエコーキャンセラにおいて、適応フィルタの係数列は、通常、残響特性を反映して、高次の係数になるほど振幅が減衰する。そのため適応フィルタ係数値を音量調節に応じて減少させると、高次のフィルタ係数列で桁の切り捨てによる精度劣化が起こりやすくなる。
適応フィルタ係数の精度劣化によるエコー消去効果に対する影響は、ユーザーが音量を小さくしている間は、多少、適応フィルタ係数の精度が劣化していても、エコーの帰還ゲインも小さくなっているから、目立ったエコー消去効果の低下が起きる可能性は低い。しかし、ユーザーが音量を再び上げた時に、それに応じて単純に同じ比率で適応フィルタ係数を増大させるだけでは、劣化した精度は回復しないから、適応フィルタ係数の劣化分の残留エコーが一時的に現れ、エコー消去効果が低下する。
一方、エコーキャンセラへの参照信号のゲインをユーザーの音量調節に連動させる場合では、適応フィルタ係数をデータの切捨てにより変化させる必要がないため、上述のような問題は生じない。
しかし、ユーザーが音量を下げた時に、電気回路上の暗雑音と参照信号の信号レベル比、すなわちSN比(信号対雑音比)が低下する。この暗雑音と参照信号とのSN比の低下は、音量を下げるほど低下する。また、固定小数点演算プロセッサに信号を入力するために行われるAD変換により量子化誤差が生じる。この量子化誤差は、入力信号の振幅が小さくなるほど、すなわち、音量を下げるほど大きくなる。したがってこれら暗雑音と量子化誤差を伴った受話入力信号(参照信号)のSN比は、音量を下げるほど低下する。このようにSN比が低い参照信号を用いて適応フィルタの適応化処理を実行すると、適応フィルタ係数として保持されている、エコー経路の伝達関数と実際の伝達関数との誤差が大きくなり、これによってエコー消去効果の低下が引き起こされる。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ユーザーによる音量の調節に追従してエコー処理を行う音声通信装置とエコー処理プロセッサにおいて、ユーザーが音量を下げた時に生じるエコー消去効果の低下を低減することを目的とする。
この発明に係るエコー処理プロセッサ装置は、受話入力信号が聴取空間に出力された出力音声のうち、送話入力信号に混入したエコーの参照信号として、上記受話入力信号または上記受話入力信号の信号レベルが上記出力音声の音量調節値に基づいて調整された可変アンプ出力信号のいずれかを上記出力音声の音量調節値に基づいて選択する参照信号選択手段と、上記参照信号選択手段で選択された上記受話入力信号または上記可変アンプ出力信号のいずれかと、エコー経路の伝達関数の推定結果に基づいて、上記送話入力信号から上記エコーを消去するエコーキャンセル手段とを備えたものである。
この発明に係る音声通信装置は、スピーカから聴取空間に出力される出力音声の音量を調節する音量調節値に基づいて、受話入力信号の信号レベルを調整し、可変アンプ出力信号として出力する第1の受話音量調整手段と、上記受話入力信号が聴取空間に出力された出力音声のうち、マイクを介して入力された送話入力信号に混入したエコーを消去するエコー処理プロセッサとを備え、上記エコー処理プロセッサは、上記受話入力信号が聴取空間に出力された出力音声のうち、送話入力信号に混入したエコーの参照信号として、上記受話入力信号または上記受話入力信号の信号レベルが上記出力音声の音量調節値に基づいて調整された可変アンプ出力信号のいずれかを上記出力音声の音量調節値に基づいて選択する参照信号選択手段と、上記参照信号選択手段で選択された上記受話入力信号または上記可変アンプ出力信号のいずれかと、エコー経路の伝達関数に基づいて、上記送話入力信号から上記エコーを消去するエコーキャンセル手段とを備えたものである。
この発明によれば、出力音声の音量調節値に基づいて、エコーの参照信号として、受話入力信号または可変アンプ出力信号のいずれかを選択することにより、音量調節値の変動に応じたエコー消去効果の特性として、参照信号として受話入力信号を用いた場合における特性と、参照信号として可変アンプ出力信号を用いた場合における特性を有効にエコー消去処理に用いることができるので、エコー消去性能の低下を抑えることができる効果がある。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1におけるエコー処理プロセッサおよび当該エコー処理プロセッサを備えた音声通信装置の主要構成を示すブロック図である。
図1において、エコー処理プロセッサ101は、受話入力信号がスピーカから聴取空間に出力された出力音声のうち、マイクを介して入力された送話入力信号に混入したエコーを上記送話入力信号から消去する。ここでは、入力された受話入力信号Rin(n)を受話出力信号Rout(n)として出力するとともに、当該出力された受話出力信号Rout(n)がゲイン調整されたアンプ参照信号Ramp(n)と上記受話入力信号Rin(n)を用いて、入力された送話入力信号Sin(n)からエコーを消去し、当該エコーを消去した送話出力信号Sout(n)を出力する。
DAコンバータ102は、受話入力信号をデジタル信号からアナログ信号に変換する。ここでは、エコー処理プロセッサ101から受話出力信号Rout(n)として出力された上記受話入力信号Rin(n)をデジタル信号からアナログ信号に変換する。
第1の受話ゲイン調整器103は、第1の受話音量調整手段に対応するものであり、ユーザーの操作に応じて、上記受話入力信号の信号レベルを調整し、可変アンプ出力信号として出力する。ここでは、DAコンバータ102でデジタル信号からアナログ信号にDA変換されたアナログ受話出力信号Ro(t)をユーザーの操作に応じてゲイン調整し、アナログ受話出力信号Ro'(t)(可変アンプ出力信号)として出力する。
音量調節手段104は、ユーザーが操作可能に構成され、ユーザーの操作に応じて受話入力信号の音量を調節させる操作情報を出力する。
制御CPU105は、上記音量調節手段104から出力された操作情報に応じて、スピーカから聴取空間に出力される出力音声の音量を調節する音量調節値を出力する。ここでは、音量調節値としてアナログ受話出力信号Ro(t)の信号レベルを調節する音量調節ゲイン値V(n)を出力する。
スピーカ106は、受話入力信号の信号レベルが調整された可変アンプ出力信号を音声出力するものであり、ここでは、第1の受話ゲイン調整器103でゲイン調整されたアナログ受話出力信号Ro'(t)を音声として出力する。
第2の受話ゲイン調整器107は、第2の受話音量調整手段に対応するものであり、受話入力信号の信号レベルが調整された可変アンプ出力信号の信号レベルを所定の調整率で調整する。ここでは、第1の受話ゲイン調整器103でゲイン調整されたアナログ受話出力信号Ro'(t)を所定の調整率(減衰率)でゲイン調整し、アンプ出力信号Ra(t)として出力する。
第1のADコンバータ108は、受話入力信号の信号レベルが調整された可変アンプ出力信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。ここでは、第2の受話ゲイン調整器107でゲイン調整されたアンプ出力信号Ra(t)をアナログ信号からデジタル信号に変換し、アンプ参照信号Ramp(n)として出力する。
マイク109は、周囲の音声を取り込み、取り込んだ音声に対応した信号を出力する。ここでは、ユーザーが発生したユーザー音声、スピーカから出力された可変アンプ出力信号の出力音声、マイク周辺の環境音声等を取り込み、当該取り込んだ音声に対応したアナログ信号のアナログ送話入力信号Si(t)を出力する。
第2のADコンバータ110は、マイク109から出力された送話入力信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。ここでは、アナログ送話入力信号Si(t)をアナログ信号からデジタル信号に変換し、送話入力信号Sin(n)としてエコー処理プロセッサ101に入力する。
また、エコー処理プロセッサ101の内部において、遅延処理手段111は、受話入力信号と可変アンプ出力信号とが同期するように、上記受話入力信号を遅延させる。ここでは、受話入力信号Rin(n)とアンプ参照信号Ramp(n)とが同期するように、受話出力信号Rout(n)を遅延させ、受話参照信号Rtel(n)として出力する。
切替え制御手段112は、スピーカの音量調節値に基づいて、エコーの参照信号として、受話入力信号または上記受話入力信号の信号レベルが上記スピーカの音量調節値に基づいて調整された可変アンプ出力信号のいずれを用いるかを選択し、回線接続の切替えを制御する。ここでは、スピーカの音量調節ゲイン値V(n)に基づいて、回線接続の切替え制御フラグflg_refを出力する。
切替えスイッチ113は、切替え制御手段112から出力された切替え制御フラグflg_refに基づいて、回線接続を切替える。ここでは、切替え制御フラグflg_refに基づいて、回線接続を切替え、受話参照信号Rtel(n)またはアンプ参照信号Ramp(n)を参照信号Rref(n)として出力する。
なお、本実施の形態では、遅延処理手段111、切替え制御手段112および切替えスイッチ113によって、受話入力信号が聴取空間に出力された出力音声のうち、送話入力信号に混入したエコーの参照信号として、上記受話入力信号または上記受話入力信号の信号レベルが上記出力音声の音量調節値に基づいて調整された可変アンプ出力信号のいずれかを上記出力音声の音量調節値に基づいて選択する参照信号選択手段を構成している。
適応フィルタ114は、エコー経路の伝達関数を推定し、切替えスイッチ113から出力された参照信号Rref(n)に基づいて、擬似エコー信号を生成する。ここでは、送話入力信号から擬似エコーを減算して得られた残差信号Sres(n)に基づいて、エコー経路の伝達関数を推定し、適応フィルタ係数として保存し、更新するとともに、当該適応フィルタ係数と参照信号Rref(n)に基づいて、擬似エコー信号D(n)を生成し、出力する。
送話入力レベル制御手段115は、出力音声の音量調節値に基づいて、送話入力信号の信号レベルを制御する制御信号を出力する。ここでは、音量調節ゲイン値V(n)に基づいて、送話入力信号Sin(n)の信号レベルを制御する送話入力レベル制御ゲイン値G(n)と、送話入力信号から擬似エコーを減算して得られた残差信号Sres(n)の信号レベルを制御する相殺ゲイン値G'(n)を出力する。
送話入力信号ゲイン調整器116は、送話入力レベル制御手段115から出力された制御信号に基づいて、送話入力信号Sin(n)の信号レベルを調整する。ここでは、送話入力レベル制御ゲイン値G(n)に基づいて送話入力信号Sin(n)のゲインを調整し、送話入力信号Sin'(n)として出力する。
減算器117は、送話入力信号から擬似エコーを減算する。ここでは、送話入力信号Sin'(n)から擬似エコーD(n)を減算し、残差信号Sres(n)を出力する。
残差信号ゲイン調整器118は、送話入力レベル制御手段115から出力された制御信号に基づいて、送話入力信号から擬似エコーを減算して得られた残差信号Sres(n)の信号レベルを調整する。ここでは、相殺ゲイン値G'(n)に基づいて残差信号Sres(n)のゲインを調整し、送話出力信号Sout(n)として出力する。
なお、本実施の形態では、適応フィルタ114および減算器117によって、受話入力信号または可変アンプ出力信号のいずれかと、エコー経路の伝達関数に基づいて、送話入力信号からエコーを消去するエコーキャンセル手段を構成している。
また、送話入力レベル制御手段115、送話入力信号ゲイン調整器116および残差信号ゲイン調整器118によって、音量調節値に基づいて、送話入力信号の信号レベルを調整する送話入力信号レベル調整手段を構成している。
また、エコー処理プロセッサ101の内部において、受話入力信号Rin(n)、受話出力信号Rout(n)、受話参照信号Rtel(n)、アンプ参照信号Ramp(n)、参照信号Rref(n)、送話入力信号Sin(n)、Sin'(n)、擬似エコー信号D(n)、残差信号Sres(n)および送話出力信号Sout(n)は、有限bit長のPCM(Pulse Code Modulation)データで表現されたデジタル信号であるものとし、nは信号上の時系列を表すものとする。
また、エコー処置プロセッサ101の周辺において、アナログ受話出力信号Ro(t)、Ro'(t)、アンプ出力信号Ra(t)およびアナログ送話入力信号Si(t)は、アナログ信号であり、tは実時間を表すものとする。
次に、動作について説明する。
例えば、音声通信装置が通信相手の装置から音声信号を受信すると、当該音声信号に対応する受話入力信号Rin(n)はエコー処理プロセッサ101に入力される。受話入力信号Rin(n)が入力されると、エコー処理プロセッサ101は、上記受話入力信号Rin(n)を受話出力信号Rout(n)として出力する。このとき、受話入力信号Rin(n)とRout(n)は同一の信号であっても良いが、エコー処理プロセッサ101の内部において、何らかの信号処理を行って信号を変換しても良い。例えば受話入力信号Rin(n)にハイパスフィルタ処理を施し、低域成分を抑えた信号に変換して受話入力信号Rout(n)として出力すれば、信号上のバイアス成分やスピーカの低域ひずみの影響が抑えられ、エコーキャンセル処理に有利である。
エコー処理プロセッサ101から受話出力信号Rout(n)が出力されると、当該受話出力信号Rout(n)は、DAコンバータ102に入力され、DAコンバータ102が上記受話出力信号Rout(n)をデジタル信号からアナログ信号のアナログ受話出力信号Ro(t)に変換して出力する。すると、当該出力されたアナログ受話出力信号Ro(t)は、第1の受話ゲイン調整器103に入力され、第1の受話ゲイン調整器103が予め設定されたゲイン値に基づいて、上記アナログ受話出力信号Ro(t)をゲイン調整し、可変アンプ出力信号のアナログ受話出力信号Ro'(t)として出力する。アナログ受話出力信号Ro'(t)は、第2の受話ゲイン調整器107に入力されるとともに、スピーカ106に入力される。すると、スピーカ106は、入力されたアナログ受話出力信号Ro'(t)を音波に変換し受話音として聴取空間に出力音声を出力する。これにより、ユーザーは、音声通信装置が受信した音声を聴取することができる。
ここで、この音声通信装置のユーザーが、スピーカ106から出力された出力音声の音量を調節するために、音量調節手段104を操作すると、音量調節手段104からユーザーの操作に応じて音量を調節させる操作情報が出力され、制御CPU105に入力される。制御CPU105は、入力された操作情報に応じて、スピーカ106から出力される音量を調節する音量調節値としてアナログ受話出力信号Ro(t)の信号レベルを調節する音量調節ゲイン値V(n)を出力する。出力された音量調節ゲイン値V(n)は、切替え制御手段112、送話入力レベル制御手段115および第1の受話ゲイン調整器103に入力される。
上記第1の受話ゲイン調整器103は、音量調節ゲイン値V(n)が入力されると、DAコンバータ102から出力されたアナログ受話出力信号Ro(t)を上記音量調節ゲイン値V(n)に基づいてゲイン調整し、可変アンプ出力信号のアナログ受話出力信号Ro'(t)として出力する。アナログ受話出力信号Ro'(t)は、第2の受話ゲイン調整器107に入力されるとともに、スピーカ106に入力され、スピーカ106は、入力されたアナログ受話出力信号Ro'(t)を音波に変換し受話音の出力音声として聴取空間に出力する。このように、ユーザーの操作に応じた出力音声の音量を調節させる操作情報に基づいて、アナログ受話出力信号Ro(t)がゲイン調整され、聴取空間に出力されるので、ユーザーは、スピーカ106から出力される音量を任意に調節することができる。
一方、可変アンプ出力信号であるアナログ受話出力信号Ro'(t)が入力された第2の受話ゲイン調整器107は、アナログ受話出力信号Ro'(t)を所定の調整率(減衰率)でゲイン調整し、アンプ出力信号Ra(t)として出力する。アンプ出力信号Ra(t)は、第1のADコンバータ108に入力され、第1のADコンバータ108が上記アンプ出力信号Ra(t)をアナログ信号からデジタル信号のアンプ参照信号Ramp(n)に変換して出力する。このアンプ参照信号Ramp(n)は、エコー処理プロセッサ101に入力される。
ここでは説明を簡易にするために、DAコンバータ102の出力レンジと、第1のADコンバータ108の入力レンジは等しいものとする。ただし、本発明の音声通信装置及びエコー処理プロセッサは、必ずしもこのような制約を必要とするものではない。
上述の仮定のもとで、第2のゲイン調整器の調整率(減衰率)は、スピーカからの出力音量が最大に調節されたとき、すなわち音量調節ゲイン値V(n)がその上限値Vmaxとなった時に、受話出力信号Rout(n)とアンプ参照信号Ramp(n)の信号レベルが、ほぼ等しくなるような調整率(減衰率)に定める。このようにすれば、ユーザーがどのように音量を調節しても、アンプ出力信号Ra(t)が第1のADコンバータ108の入力レンジを超える事はなくなる。
エコー処理プロセッサ101の内部において、遅延処理手段111は、受話参照信号Rtel(n)とアンプ参照信号Ramp(n)とが同期するように受話出力信号Rout(n)に所定の信号遅延を与え、受話参照信号Rtel(n)として出力する。
また、切替え制御手段112は、入力された音量調節ゲイン値V(n)に基づいて、適応フィルタ114に入力するエコーの参照信号として、受話入力信号または可変アンプ出力信号のいずれを用いるかを選択し、その選択結果に応じた回線接続の切替え制御フラグflg_refを出力する。ここでは、受話入力信号である受話参照信号Rtel(n)または可変アンプ出力信号であるアンプ参照信号Ramp(n)のいずれを用いるかを選択し、切替え制御フラグflg_refを出力する。
またここで、切替え制御手段112は、参照信号として、音量調節ゲイン値V(n)が所定の閾値Vthより大きいときには、アンプ参照信号Ramp(t)を選択し、切替え制御フラグflg_ref=0を出力する。そうでない場合は、参照信号として、受話参照信号Rtel(n)を選択し、切替え制御フラグflg_ref=1を出力する。
なお、ここで、音量調節ゲイン値V(n)の上限Vmax[dB]と閾値Vth[dB]との差αを、式(1)と定義する。
Figure 2008124678
なお、この差αは、V(n)=Vthであるときの、アンプ参照信号Ramp(n)に対する受話参照信号Rtel(n)の信号レベル比に等しい。
また、さらに閾値Vthと音量調節ゲイン値V(n)の下限Vminとの差βを、式(2)と定義する。
Figure 2008124678
原理上、適応フィルタ114に入力するエコーの参照信号として、受話参照信号Rtel(n)、アンプ参照信号Ramp(n)のどちらを用いてもエコーを消去する事は可能である。ただし受話参照信号Rtel(n)を用いる場合は、ユーザーによる音量調節操作の有無によらず受話参照信号Rtel(n)の信号レベルが一定であるため、適応フィルタ114に入力される信号のSN比(信号対雑音比)は一定であるというメリットがあるが、適応フィルタ114の適応化の対象となるエコー経路は第1の受話ゲイン調整器103を含むため、ユーザーが音量調節操作を行った時、すなわちアナログ受話出力信号Ro'(t)の信号レベルが変化した時にエコー経路の伝達関数が変化するので、再度、変化した伝達関数に対して適応フィルタ114の適応化が必要となり、適応化による伝達関数の再推定が十分収束するまでの間、一時的なエコー消去効果の低下を生じるというデメリットがある。
一方、アンプ参照信号Ramp(n)を用いる場合は、適応フィルタ114の適応化の対象となるエコー経路は第1の受話ゲイン調整器103を含まない為、ユーザーによる音量調節操作に対して、適応フィルタ114の再学習(再適応化)は不要であり、一時的なエコー消去効果の低下は生じないというメリットがある。しかし一方でユーザーによる音量調節操作によってアンプ参照信号Ramp(n)のSN比、すなわち適応フィルタ114に入力される信号のSN比が変化し、ユーザーが音量を小さくするほどSN比が低下するというデメリットがある。ここでのアンプ参照信号Ramp(n)のSN比におけるノイズ成分とは、第2の受話ゲイン調整器107の出力信号に対して付加された電気的な暗雑音と、第1のDAコンバータ108の変換処理における量子化誤差である。
適応フィルタ114において、SN比の低い入力信号で適応化処理を行った場合、ノイズの影響により伝達関数に対する推定精度が低くなるから、音量を小さくするほど、適応フィルタ114の特性(推定した伝達関数)と、実際のエコー経路の伝達関数の特性との間の誤差が大きくなることになる。
したがって、ユーザーが音量を大から小へと調節した場合、音量小の状態で学習(適応化)を継続することにより、誤差が拡大してしまうこととなる。さらにこの状態から、ユーザーが再び音量を大へと戻した時、一旦拡大した誤差を再学習(再適応化)によって修正するまでの間、エコーの消去効果が一時的に低下してしまう。
以上のことから、所定の閾値Vthに基づいて、音量調節ゲインV(n)が所定の閾値Vthより大きいときには、アンプ参照信号Ramp(t)のSN比が十分高い事を期待できるため、これを適応フィルタ114への入力信号、すなわち参照信号として選択することにより、エコー消去効果の低下を低減することができる。また、音量調節ゲインV(n)が所定の閾値Vth以下の場合は、アンプ参照信号Ramp(n)のSN比が低下する一方、多少、適応フィルタ114による伝達関数の推定精度が劣化していてもエコー消去効果の低下は少ないため、受話参照信号Rtel(n)を適応フィルタ114への入力信号、すなわち参照信号として選択することにより、エコー消去効果の低下を低減することができる。
その後、切替え制御手段112から出力された切替え制御フラグflg_refに基づいて、切替えスイッチ113は、回線接続を切替え、切替え制御フラグflg_refが0であるときはアンプ参照信号Ramp(n)を参照信号Ref(n)として出力し、flg_refが1であるときは受話参照信号Rtel(n)を参照信号Rref(n)として出力する。
なお、適応フィルタ114において、伝達関数の推定および適応フィルタ係数の更新(適応フィルタ処理)は、現時点の参照信号のデータだけではなく、所定のフィルタ長分の、過去の参照信号のデータが必要である。ここでは、適応フィルタ114は、少なくとも所定のフィルタ長分の参照信号のデータを保存可能に構成されているとともに、エコー処理プロセッサ101内またはエコー処理プロセッサ101がアクセス可能な記憶部(図示せず)に少なくとも上記所定のフィルタ長分のアンプ参照信号Ramp(n)および受話参照信号Rtel(n)のデータ列が保存されているものとする。
このような構成により、上記切替えスイッチ113が回線接続を切替えると、参照信号Rref(n)のデータ列として、少なくとも上記所定のフィルタ長分のアンプ参照信号Ramp(n)または受話参照信号Rtel(n)のデータ列が適応フィルタ114に入力される。適応フィルタ114は、保存されていた少なくとも所定のフィルタ長分の参照信号のデータを、入力されたデータ列に書き換える。
具体的には、例えば、適応フィルタ114の所定のフィルタ長をLとしたとき、n=aの時点で切替えを行ったとすると、適応フィルタ114のデータバッファ(図示せず)内の参照信号Rref(a-L+1)からRref(a)までのデータを、入力されたアンプ参照信号のデータ列Ramp(a-L+1)からRamp(a)または受話参照信号のデータ列Rtel(a-L+1)からRtel(a)のに書き換える。
適応フィルタ114は、適応フィルタ係数とデータバッファ(図示せず)内の参照信号Rref(a-L+1)からRref(a)までのデータに基づいて、擬似エコー信号D(n)を生成し、出力する。
また、スピーカ106から音声出力された受話音(アナログ受話出力信号Ro'(t))は、マイク109に取り込まれる。マイク109は、取り込んだ音声に対応したアナログ信号のアナログ送話入力信号Si(t)を出力する。第2のADコンバータ110は、マイク109から出力されたアナログ送話入力信号Si(t)をアナログ信号からデジタル信号の送話入力信号Sin(n)に変換し、エコー処理プロセッサ101に入力する。
図2は、アンプ参照信号と受話参照信号との切替え制御を説明する説明図である。
図2に示すように、送話入力信号Sin(n)と参照信号Rref(n)は、切替えスイッチ113による切替え処理の前後で、両者の信号レベル比が変化する。これに対し、送話入力レベル制御手段115は、このレベル比の変化をなくす為に、送話入力信号のレベルの制御を行う。具体的には、音量調節ゲイン値V(n)に基づいて、送話入力信号Sin(n)の信号レベルを制御する送話入力レベル制御ゲイン値G(n)と、送話入力信号から擬似エコーを減算して得られた残差信号Sres(n)の信号レベルを制御する相殺ゲイン値G'(n)を出力する。
この時の制御ゲイン値G(n)は、音量調節ゲイン値V(n)が所定の閾値Vthより大きいときは、信号レベルの調整量を固定する。例えば、下記式(3)に従って設定される。
Figure 2008124678
また、音量調節ゲイン値V(n)が所定の閾値Vth以下であるときは、信号レベルの調整量を増加させる。例えば、下記式(4)に従って設定される。
Figure 2008124678
また、相殺ゲイン値G'(n)は、制御ゲイン値G(n)打ち消すゲインとして、下記式(5)に従って設定される。
Figure 2008124678
送話入力信号ゲイン調整器116は、送話入力信号Sin(n)に送話入力レベル制御ゲイン値G(n)を付与して、送話入力信号Sin(n)のゲインを調整し、送話入力信号Sin'(n)として出力する。
図3は、送話入力信号のゲイン調整による送話入力信号Sin'(n)と参照信号Ref(n)のレベル比の変動を説明する説明図である。
このように送話入力信号Sin(n)のゲインを調整することにより、送話入力信号Sin'(n)と参照信号Ref(n)のレベル比は、切替え処理の影響を受けることなく一定する。
減算器117は、送話入力信号Sin'(n)から擬似エコーD(n)を減算し、残差信号Sres(n)を出力する。残差信号Sres(n)は適応フィルタ114にフィードバックされ、適応フィルタ114は残差信号Sres(n)に基づいてフィルタ係数の更新を行う。係数更新処理には、例えばフィルタ係数更新幅が入力信号の信号レベルに依存しないNLMS(Normalized Least Mean Square)アルゴリズムが好適であるが、その他の一般的なアルゴリズムを利用してもよい。
また、残差信号Sres(n)は残差信号ゲイン調整器118に入力され、残差信号ゲイン調整器118は、残差信号Sres(n)と相殺ゲイン値G'(n)を受け、残差信号Sres(n)に相殺ゲイン値G'(n)を付与して、残差信号Sres(n)のゲインを調整し、送話出力信号Sout(n)として出力する。
なお、この送話出力信号Sout(n)に対して、NLP(Non Liner Process)のような後処理を加えても良い。例えば、「ITU-T Reccomandation G.164 (17頁、23頁、図C.1/G.165)
」に記載された後処理を加えても良い。
以上のように、この発明の実施の形態1の音声通信装置およびエコー処理プロセッサによれば、ユーザーによる音量調節の操作に応じたスピーカの音量調節値(音量調節ゲイン値)に基づいて、エコーの参照信号として、受話参照信号またはアンプ参照信号のいずれかを選択することにより、スピーカの音量調節値の変動に応じたエコー消去効果の特性として、参照信号として受話参照信号を用いた場合における特性と、参照信号としてアンプ参照信号を用いた場合における特性を有効にエコー消去処理に用いることができるので、エコー消去性能の低下を抑えることができる。
また特に、スピーカの音量調節値である音量調節ゲイン値V(n)が所定の閾値Vthより大きい場合は、参照信号として可変アンプ出力信号であるアンプ参照信号Ramp(n)を選択し、上記スピーカの音量調節値である音量調節ゲイン値V(n)が所定の閾値Vth以下の場合は、上記参照信号として受話入力信号である受話参照信号Rtel(n)を選択するようにしたことにより、音量調節ゲインV(n)が所定の閾値Vthより大きいときには、アンプ参照信号Ramp(t)のSN比が十分高い事を期待できるため、これを適応フィルタ114への入力信号、すなわち参照信号として選択することにより、エコー消去効果の低下を低減することができる。また、音量調節ゲインV(n)が所定の閾値Vth以下の場合は、アンプ参照信号Ramp(n)のSN比が低下する一方、多少、適応フィルタによる伝達関数の推定精度が劣化していてもエコー消去効果の低下は少ないため、受話参照信号Rtel(n)を適応フィルタへの入力信号、すなわち参照信号として選択することにより、エコー消去効果の低下を低減することができる。
また、ユーザーによる音量調節の操作に応じたスピーカの音量調節値(音量調節ゲイン値)に基づいて、送話入力信号Sin(n)の信号レベルを調整することにより、送話入力信号Sin'(n)と参照信号Ref(n)のレベル比は、参照信号の切替え処理の影響を受けることなく一定するので、切替え時の参照信号と送話入力信号とのレベル比の急な変化を防ぎ、切替えの瞬間の、エコー消去性能の一時的な低下を抑えることができる。
また特に、スピーカの音量調節値である音量調節ゲイン値V(n)が所定の閾値Vthより大きい場合は、送話入力信号Sin(n)の信号レベルの調整量を所定値に固定し、上記スピーカの音量調節値である音量調節ゲイン値V(n)が所定値以下の場合は、上記音量調節値である音量調節ゲイン値V(n)に応じて上記送話入力信号Sin(n)の信号レベルが増加するように調整することにより、信号レベルが調整された後の送話入力信号Sin'(n)と参照信号Ref(n)のレベル比をより一定にすることができる。
また特に、送話入力信号Sin(n)の信号レベルを増加させた場合は、信号レベルを増加された送信入力信号Sin'(n)からエコーが消去された後に、当該エコーが消去された送信入力信号Sres(n)の信号レベルを音量調節値である音量調節ゲイン値V(n)に応じて減少させることにより、エコー消去後の処理、例えば、NLP等における信号レベルの影響を回避することができる。
また、受話入力信号である受話参照信号Rtel(n)と可変アンプ出力信号であるアンプ参照信号Ramp(n)とが同期するように、上記受話入力信号を遅延させる遅延処理手段を備えたことにより、参照信号として受話参照信号Rtel(n)とアンプ参照信号Ramp(n)のいずれを選択したとしても信号のタイミングが同じであるので、適応フィルタの処理が簡単化できる。
実施の形態2.
実施の形態1のエコー処理プロセッサは、入力された音量調節値に基づいて処理を行う場合について説明したが、例えば、エコー処理プロセッサと第1の受話音量調節手段が別々の機器で構成されていて、エコー処理プロセッサに音量調節値が入力されないような場合には使用できない。しかし、音量調節値が直接入力されない場合でも、受話参照信号とアンプ参照信号とのレベル比から音量調節値を算出する事は可能である。
次に、受話参照信号とアンプ参照信号とのレベル比から音量調節値を算出し、当該算出した音量調節値に基づいて処理を行う場合の実施の形態を説明する。
図4は、この発明の実施の形態2におけるエコー処理プロセッサおよび当該エコー処理プロセッサを備えた音声通信装置の主要構成を示すブロック図である。図1と比較して、制御CPUが無く、音量調節値である音量調節ゲインV(n)は、音量調節手段104から第1の受話音量調整手段である第1の受話ゲイン調整器103に直接入力される。また、エコー処理プロセッサ101の内部において、音量調節値推定手段119が備えられている。音量調節値推定手段119は、受話入力信号と可変アンプ出力信号に基づいて、音量調節値を推定する。その他、図1と同一または相当部分に同一符号を付し、説明を省略する。
ただし、切替え制御手段112は、音量調節値推定手段119で推定された音量調節値に基づいて、エコーの参照信号として、受話入力信号または上記受話入力信号の信号レベルが上記スピーカの音量調節値に基づいて調整された可変アンプ出力信号のいずれを用いるかを選択し、回線接続の切替えを制御するように構成されている。
また、送話入力レベル制御手段115は、音量調節値推定手段119で推定された音量調節値に基づいて、送話入力信号の信号レベルを制御する制御信号を出力するように構成されている。
次に、動作について説明する。
本実施の形態では、前述の実施の形態1とほぼ同様に動作するが、音量調節値は、エコー処理プロセッサ101に入力されず、音量調節値推定手段119が、受話入力信号と可変アンプ出力信号に基づいて、音量調節値を推定する。
まず、例えば、前述の実施の形態1と同様に、音声通信装置が通信相手の装置から音声信号を受信すると、当該音声信号に対応する受話入力信号Rin(n)はエコー処理プロセッサ101に入力される。受話入力信号Rin(n)が入力されると、エコー処理プロセッサ101は、上記受話入力信号Rin(n)を受話出力信号Rout(n)として出力する。すると、DAコンバータ102が上記受話出力信号Rout(n)をデジタル信号からアナログ信号のアナログ受話出力信号Ro(t)に変換し、第1の受話ゲイン調整器103が予め設定されたゲイン値または音量調節手段104から出力された音量調節値である音量調節ゲイン値V(n)に基づいて、上記アナログ受話出力信号Ro(t)をゲイン調整し、可変アンプ出力信号のアナログ受話出力信号Ro'(t)として出力する。アナログ受話出力信号Ro'(t)は、第2の受話ゲイン調整器107に入力されるとともに、スピーカ106に入力される。
第2の受話ゲイン調整器107は、アナログ受話出力信号Ro'(t)を所定の調整率(減衰率)でゲイン調整し、当該ゲイン調整されたアンプ出力信号Ra(t)は、第1のADコンバータ108に入力される。すると、本実施の形態では、第1のADコンバータ108が上記アンプ出力信号Ra(t)をアナログ信号からデジタル信号のアンプ参照信号Ramp(n)に変換して出力し、このアンプ参照信号Ramp(n)は、エコー処理プロセッサ101内の切替えスイッチ113および音量調節値推定手段119に入力される。
また、エコー処理プロセッサ101の内部において、音声通信装置が通信相手の装置から音声信号に対応する受話入力信号Rin(n)は、遅延処理手段111に入力される。遅延処理手段111は、受話参照信号Rtel(n)とアンプ参照信号Ramp(n)とが同期するように受話出力信号Rout(n)に所定の信号遅延を与え、受話参照信号Rtel(n)として出力する。ここで、本実施の形態では、当該受話参照信号Rtel(n)は、切替えスイッチ113に入力されるとともに、音量調節値推定手段119に入力される。
音量調節値推定手段119は、受話入力信号である受話参照信号Rtel(n)と可変アンプ出力信号であるアンプ参照信号Ramp(n)を受け、当該受話参照信号Rtel(n)とアンプ参照信号Ramp(n)に基づいて、音量調節手段104から出力された音量調節値である音量調節ゲイン値V(n)を推定し、推定音量調節値として推定音量調節ゲイン値V'(n)を出力する。この時の推定音量調節ゲイン値V'(n)は、受話参照信号Rtel(n)とアンプ参照信号Ramp(n)の信号レベル比から求める。例えば、推定音量調節ゲイン値V'(n)は、式(6)に従って求める。ただし、E[・]は平均操作を表すものとする。
Figure 2008124678
音量調節値推定手段119から出力された推定音量調節ゲイン値V'(n)は、切替え制御手段112および送話入力レベル制御手段115に入力され、切替え制御手段112および送話入力レベル制御手段115は、入力された推定音量調節ゲイン値V'(n)に基づいて、それぞれの処理を行う。これ以降は実施の形態1と同様に動作する。
以上のように、この発明の実施の形態2の音声通信装置およびエコー処理プロセッサによれば、受話入力信号と可変アンプ出力信号に基づいて、音量調節値を推定する音量調節値推定手段を備えたことにより、例えば、エコー処理プロセッサと第1の受話音量調節手段が別々の機器で構成されていて、エコー処理プロセッサに音量調節値が入力されないような構成であっても、音量調節値を推定した推定音量調節値に基づいて、エコーの参照信号として、上記受話入力信号または上記可変アンプ出力信号のいずれかを選択することにより、スピーカの音量調節値の変動に応じたエコー消去効果の特性として、参照信号として受話参照信号を用いた場合における特性と、参照信号としてアンプ参照信号を用いた場合における特性を有効にエコー消去処理に用いることができるので、エコー消去性能の低下を抑えることができる。
また、受話入力信号と可変アンプ出力信号に基づいて、音量調節値を推定する音量調節値推定手段を備えたことにより、エコー処理プロセッサに音量調節値が入力されないような構成であっても、音量調節値を推定した推定音量調節値に基づいて、送話入力信号の信号レベルを調整することにより、送話入力信号Sin'(n)と参照信号Ref(n)のレベル比は、参照信号の切替え処理の影響を受けることなく一定するので、切替え時の参照信号と送話入力信号とのレベル比の急な変化を防ぎ、切替えの瞬間の、エコー消去性能の一時的な低下を抑えることができる。
また、受話入力信号と可変アンプ出力信号に基づいて、音量調節値を推定する音量調節値推定手段を備えたことにより、前述の実施の形態1と比較して、エコー処理プロセッサと第1の受話音量調節手段に音量調節値を伝える制御CPUが不要となることにより、音声通信機のコストを低減させることができる。
この発明の実施の形態1による音声通信装置およびエコー処理プロセッサを示す構成図である。 この発明の実施の形態1によるアンプ参照信号と受話参照信号との切替え制御を説明する説明図である。 この発明の実施の形態1による送話入力信号のゲイン調整による送話入力信号と参照信号のレベル比の変動を説明する説明図である。 この発明の実施の形態2による音声通信装置およびエコー処理プロセッサを示す構成図である。
符号の説明
101 エコー処理プロセッサ、102 DAコンバータ、103 第1の受話ゲイン調整器、104 音量調節手段、105 制御CPU、106 スピーカ、107 第2の受話ゲイン調整器、108 第1のADコンバータ、109 マイク、110 第2のADコンバータ、111 遅延処理手段、112 切替え制御手段、113 切替えスイッチ、114 適応フィルタ、115 送話入力レベル制御手段、116 送話入力信号ゲイン調整器、117 減算器、118 残差信号ゲイン調整器、119 音量調節値推定手段。

Claims (9)

  1. 受話入力信号が聴取空間に出力された出力音声のうち、送話入力信号に混入したエコーの参照信号として、上記受話入力信号または上記受話入力信号の信号レベルが上記出力音声の音量調節値に基づいて調整された可変アンプ出力信号のいずれかを上記出力音声の音量調節値に基づいて選択する参照信号選択手段と、
    上記参照信号選択手段で選択された上記受話入力信号または上記可変アンプ出力信号のいずれかと、エコー経路の伝達関数に基づいて、上記送話入力信号から上記エコーを消去するエコーキャンセル手段と
    を備えたことを特徴とするエコー処理プロセッサ。
  2. 上記音量調節値に基づいて、送話入力信号の信号レベルを調整する送話入力信号レベル調整手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のエコー処理プロセッサ。
  3. 上記受話入力信号と上記可変アンプ出力信号に基づいて、上記音量調節値を推定する音量調節値推定手段を備え、
    上記参照信号選択手段は、上記音量調節値推定手段で推定された音量調節値に基づいて、上記参照信号として、上記受話入力信号または上記可変アンプ出力信号のいずれかを選択することを特徴とする請求項1に記載のエコー処理プロセッサ。
  4. 上記受話入力信号と上記可変アンプ出力信号に基づいて、上記音量調節値を推定する音量調節値推定手段を備え、
    上記送話入力信号レベル調整手段は、上記音量調節値推定手段で推定された音量調節値に基づいて、送話入力信号の信号レベルを調整することを特徴とする請求項2に記載のエコー処理プロセッサ。
  5. 上記参照信号選択手段は、上記受話入力信号と上記可変アンプ出力信号とが同期するように、上記受話入力信号を遅延させる遅延処理手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のエコー処理プロセッサ。
  6. 上記参照信号選択手段は、上記出力音声の音量調節値が所定値より大きい場合は、上記参照信号として上記可変アンプ出力信号を選択し、上記出力音声の音量調節値が所定値以下の場合は、上記参照信号として上記受話入力信号を選択することを特徴とする請求項1に記載のエコー処理プロセッサ。
  7. 上記送話入力信号レベル調整手段は、上記出力音声の音量調節値が所定値より大きい場合は、上記送話入力信号の信号レベルの調整量を所定値に固定し、上記出力音声の音量調節値が所定値以下の場合は、上記音量調節値に応じて上記送話入力信号の信号レベルが増加するように調整することを特徴とする請求項2に記載のエコー処理プロセッサ。
  8. 上記送話入力信号レベル調整手段は、上記送話入力信号の信号レベルを増加させた場合は、上記送信入力信号から上記エコーが消去された後に、当該エコーが消去された送信入力信号の信号レベルを上記音量調節値に応じて減少させることを特徴とする請求項7に記載のエコー処理プロセッサ。
  9. スピーカから聴取空間に出力される出力音声の音量を調節する音量調節値に基づいて、受話入力信号の信号レベルを調整し、可変アンプ出力信号として出力する第1の受話音量調整手段と、
    上記受話入力信号が聴取空間に出力された出力音声のうち、マイクを介して入力された送話入力信号に混入したエコーを消去するエコー処理プロセッサとを備え、
    上記エコー処理プロセッサは、
    上記受話入力信号が聴取空間に出力された出力音声のうち、送話入力信号に混入したエコーの参照信号として、上記受話入力信号または上記受話入力信号の信号レベルが上記出力音声の音量調節値に基づいて調整された可変アンプ出力信号のいずれかを上記出力音声の音量調節値に基づいて選択する参照信号選択手段と、
    上記参照信号選択手段で選択された上記受話入力信号または上記可変アンプ出力信号のいずれかと、エコー経路の伝達関数に基づいて、上記送話入力信号から上記エコーを消去するエコーキャンセル手段と
    を備えたことを特徴とする音声通信装置。
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