JP2008121193A - ホイール式の建設機械 - Google Patents

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Hideo Sorada
英男 空田
Makoto Sugaya
誠 菅谷
Tsukasa Toyooka
司 豊岡
Tsutomu Udagawa
勉 宇田川
Tamimasa Kobayashi
民巨 小林
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Abstract

【課題】 高速走行中にフロント作業機の油圧アクチュエータを誤操作しても、同作業機が急激に動くのを抑止して操縦の安全性を高め得るホイール式の建設機械を提供する。
【解決手段】 フロント作業機の油圧アクチュエータ8,9,10を駆動するための油圧ポンプと走行モータ15を駆動するためのHSTポンプ13とを同一のエンジン14で駆動し、走行モータ15の駆動により車輪で走行するホイール式の建設機械において、油圧ポンプとして可変容量型の油圧ポンプ12を用いて、この油圧ポンプ12の傾転角を制御するための制御装置22等の制御手段を設け、本建設機械が一般車道を走行しようとするときに想定される速度領域としての高速走行領域に走行速度があると判定したときには、その速度領域よりも低い低速走行領域にあると判定したときよりも油圧ポンプ12の吐出容量を制御手段で減らすように構成した。
【選択図】図4

Description

この出願の発明は、フロント作業機をなす油圧アクチュエータと、エンジンにより駆動されて同油圧アクチュエータ駆動用の油圧を発生する油圧ポンプとを備え、前記のエンジンを動力源として車輪で走行するテレスコピックハンドラーやホイールローダ等のホイール式の建設機械に関し、特にテレスコピックハンドラーにとってきわめて有用なものである。
建設機械は、通常、油圧アクチュエータを駆動して種々の建設作業を行うフロント作業機と、エンジンにより駆動されて、その油圧アクチュエータを駆動するための油圧を発生する油圧ポンプと、これらのフロント作業機及び油圧ポンプや運転室等を設置して走行することが可能な車体とを備えている。こうした自走式の建設機械の中には、車体に前輪及び後輪を設けて構成され、前記のエンジンを動力源として車輪により作業現場や一般車道を走行することができるホイール式の建設機械がある。こうしたホイール式の建設機械の典型的な例として、テレスコピックハンドラー(リフトトラックとも称する。)やホイールローダを挙げることができる。
こうしたホイール式の建設機械にあっては、通常、同一のエンジンを動力源として走行装置とフロント作業機の油圧アクチュエータの双方を駆動するため、走行装置とフロント作業機とは、複合操作時すなわち同時操作時に、一方に加わる負荷の変動が他方の動作に影響を及ぼして、オペレータの意図しない動作を他方にもたらし、操作上問題が生じることがある。こうしたことから、従来、走行装置とフロント作業機の複合操作時に両者の動作に問題が生じないように制御するようにした技術が種々開発されている。この種の技術としては、例えば、テレスコピックハンドラーを代表例にして説明されている特許文献1に記載の走行式油圧作業機に係る技術を挙げることができる。
特開2005−54414号公報(第6−15頁、図1−14)
このように、ホイール式の建設機械では、通常、同一エンジンを動力源にして走行装置とフロント作業機の双方を駆動するという設計手法を採用しており、これに伴って、建設機械の操縦上種々の問題をもたらすが、すでに述べたように、従来は、こうしたホイール式の建設機械に特有の問題のうち、専ら、建設作業時に生じる操縦上の問題に着目して改良がなされてきた。しかしながら、こうしたホイール式の建設機械の前記の設計手法に起因する問題は、建設作業時だけに限らず、往来のために一般車道等を走行しているときにも生じる。以下、この点について言及する。
ホイール式の建設機械では、フロント作業機の油圧アクチュエータを駆動していないときでも、運転を完了させない限り、油圧ポンプで圧油を発生させ、この圧油を、リリーフバルブを通じて作動油タンクに逃がして、こうした過程の繰り返しにより、油圧アクチュエータに係る油圧回路に圧油を絶えず循環させるようにする仕組みを採用している。そのため、フロント作業機は、これの操作レバーを操作すれば、いつでも、油圧アクチュエータへ圧油を供給して作動させることができる状態にある。ホイール式の建設機械では、こうした仕組みを採用することにより、操作レバーを操作すれば、走行中でもフロント作業機を作動させることができるように設計している。そして、例えば、走行させることによりフロント作業機のバケットを土砂等に押し込みながら、バケットを上方に移動させて掘削作業を行う等、走行力を、単に走行のためだけではなくフロント作業機による作業のためにも有効に活用して、種々の建設作業が行えるようにしている。
前記特許文献1に記載の従来の技術では、こうした走行装置とフロント作業機の複合操作による建設作業時の操縦上の問題を解決するようにしているが、ホイール式の建設機械にあっては、走行中でもフロント作業機を作動させ得るようにしているため、建設作業時だけに限らず、往来のために一般車道を走行しているときにも操縦上の問題が生じる。すなわち、ホイール式の建設機械が一般車道を走行するときには、建設作業のために走行するときよりも高速で走行するため、エンジン回転数が増加し、これに伴って油圧ポンプの吐出流量が多量となり、しかも、フロント作業機は、無負荷状態であることから、オペレータが仮にフロント作業機の操作レバーを誤って操作すると、フロント作業機が急激に作動して種々の危険がもたらされる。例えば、高速走行中、フロント作業機が急激に作動して、アタッチメントとしての作業具におけるバケットの先端部やフォークの爪が地面に突き刺さると、車体がつんのめるような状態となってきわめて危険である。
こうした問題は、ホイール式の建設機械が広い作業現場を往来するときでも、建設作業時の走行よりは高速で走行するため、一般車道を走行するときと同様に生じ得る。ホイール式の建設機械では、こうした一般車道の走行時等の高速走行時には、通常、フロント作業機を操作するようなことは行わないが、オペレータがフロント作業機の操作レバーを不本意に誤操作する恐れはある。例えば、左右一方の手でステアリングを操作しながら他方の手で操作レバーをつかんだまま走行していて、走行中に急ブレーキをかけたときには、オペレータの意に反して操作レバーが誤操作される危険性がある。こうしてフロント作業機の操作レバーが誤って操作されると、前記したようにフロント作業機が急激に作動して種々の危険が生じる。従来は、専ら建設作業時の操縦上の問題に着目し、こうした往来のための走行時における操縦上の問題については、配慮がなされていなかった。
この出願の発明は、こうした問題を解決するために創作されたものであり、その技術的課題は、オペレータが高速走行中にフロント作業機の油圧アクチュエータを誤操作したときでも、フロント作業機が急激に動くのを抑止して操縦の安全性を高めることができるホイール式の建設機械を提供することにある。
請求項1に係るこの出願の第1番目の発明は、前記の技術的課題を達成するため、次の1)のように構成した。
1)フロント作業機をなす油圧アクチュエータと、エンジンにより駆動されてこの油圧アクチュエータを駆動するための油圧を発生する油圧ポンプとを備え、前記エンジンを動力源として車輪により走行するホイール式の建設機械において、
油圧ポンプとして可変容量型の油圧ポンプを用いて、この可変容量型の油圧ポンプの傾転角を制御するためのレギュレータと、このレギュレータを制御するための制御手段とを設けるとともに、ホイール式の建設機械が一般車道を走行しようとするときに想定される走行速度領域としての高速走行領域と同高速走行領域よりも低い走行速度領域である低速走行領域とを設定し、走行速度が高速走行領域にあると判定したときには、低速走行領域にあると判定したときよりも可変容量型の油圧ポンプの吐出容量を減らすように、制御手段でレギュレータを制御するように構成した。
この出願の第1番目の発明に係るホイール式の建設機械は、このように構成しているので、一般車道や広い作業現場を往来する場合のように高速で走行しようとするとき、換言するとハイギアで走行しているときには、走行速度が高速走行領域にあると判定され、その結果、制御手段は、レギュレータを制御することにより可変容量型の油圧ポンプの傾転角を制御して同油圧ポンプの吐出容量を自動的に減らすようにする。このように、本ホイール式の建設機械では、高速走行時に、フロント作業機の油圧アクチュエータ駆動用の油圧を発生するための油圧ポンプの吐出容量を減らすため、仮に、走行中にオペレータがフロント作業機の操作レバーを誤って操作しても、フロント作業機が急激に作動するようなことはない。
したがって、本ホイール式の建設機械によれば、オペレータが高速走行中にフロント作業機の油圧アクチュエータを誤操作したときでも、フロント作業機が急激に動くのを抑止して操縦の安全性を高めることができ、所期の課題を達成することができる。
請求項2に係るこの出願の第2番目の発明は、前記の技術的課題を達成するため、次の2)のように構成した。
2)前輪及び後輪が左右に配置された車体と、この車体の左右方向の中央部に前後方向に向けて配置され、基部側が車体の後方部に上下に揺動可能に取り付けられるとともに、先端側には車体よりも張り出した位置でアタッチメントが上下に揺動可能に取り付けられるテレスコ式の伸縮ブームと、この伸縮ブームを車体に対して上下に揺動させるための第1の油圧シリンダと、テレスコ式の伸縮ブームを伸縮させるための第2の油圧シリンダと、アタッチメントを伸縮ブームに対して上下に揺動させるための第3の油圧シリンダと、前輪及び後輪間でテレスコ式の伸縮ブームの左右の一方の側に位置するように車体に配置された運転室と、車体に配置されたエンジンと、同エンジンの駆動軸に接続され各油圧シリンダを駆動するための圧油を発生する油圧シリンダ駆動用油圧ポンプと、同じく同エンジンの駆動軸に接続され走行用モータ駆動するための圧油を発生する走行用モータ駆動用の可変容量型油圧ポンプと、左右の前輪の車軸及び左右の後輪の車軸との間に接続されたトランスミッションとを備え、運転室には、各油圧シリンダへ供給される圧油の流れや流量を制御するための弁装置を操作する作業機用操作装置と、走行用モータ駆動用の可変容量型油圧ポンプの吐出容量を制御するための手段を操作する走行用操作装置とを設けたホイール式の建設機械において、
油圧シリンダ駆動用油圧ポンプとして可変容量型の油圧ポンプを用いて、この可変容量型の油圧ポンプの傾転角を制御するためのレギュレータと、トランスミッションに取り付けられて車速を検出する車速検出手段と、この車速検出手段での車速の検出結果を入力してレギュレータを制御するための制御装置とを設けるとともに、ホイール式の建設機械が一般車道を走行しようとするときに想定される走行速度領域としての高速走行領域と、同高速走行領域よりも低い走行速度領域であって前記各油圧シリンダの少なくとも一つと走行用モータとの複合駆動を行う走行速度領域である低速走行領域とを設定して記憶手段に記憶させ、制御装置は、入力された車速検出手段での車速の検出結果に基づいて走行速度が高速走行領域にあるか低速走行領域にあるかを判定し、高速走行領域にあると判定したときに、油圧シリンダ駆動用油圧ポンプの最大押しのけ容積を低速走行領域で設定された可変容量型の油圧ポンプの最大押しのけ容積よりも小さい予め設定された値にするように制御信号を出力して、この制御信号によりレギュレータを通じて可変容量型の油圧ポンプの傾転角を制御するように構成した。
このように構成したこの出願の第2番目の発明に係るホイール式の建設機械は、前記した第1番目の発明に係るホイール式の建設機械を具体化する場合の望ましい態様を表したものであり、当然、第1番目の発明に係るホイール式の建設機械と同様の作用を奏する。したがって、本ホイール式の建設機械によっても、「オペレータが高速走行中にフロント作業機の油圧アクチュエータを誤操作したときでも、フロント作業機が急激に動くのを抑止して操縦の安全性を高めることができる」とのこの出願の発明の技術的課題を達成することができる。
以下の説明から明らかなように、この出願の第1番目の発明及び第2番目の発明に係るホイール式の建設機械は、それぞれ、前記〔課題を解決するための手段〕の項の1)及び2)に示したように構成しているので、何れのホイール式の建設機械も、オペレータが高速走行中にフロント作業機の油圧アクチュエータを誤操作したときでも、フロント作業機が急激に動くのを抑止して操縦の安全性を高めることができる。
以下、この出願の発明が実際上どのように具体化されるのかを図1乃至図5を用いて説明することにより、本発明を実施するための望ましい形態を明らかにする。
この出願の発明は、フロント作業機をなす油圧アクチュエータと、エンジンにより駆動されてこの油圧アクチュエータを駆動するための油圧を発生する油圧ポンプとを備え、この油圧ポンプを駆動するための前記エンジンを動力源として車輪により走行するテレスコピックハンドラーやホイールローダのようなホイール式の建設機械に適用することができる。ここでは、この出願の発明をホイール式の建設機械としてのテレスコピックハンドラーに適用して具体化した例を説明する。
最初に、図1乃至図3に基づき、この出願の発明が適用されるテレスコピックハンドラーの基本的な構造やこれを用いて実施される建設作業について説明する。図1は、この出願の発明が適用可能なホイール式の建設機械の一例であるテレスコピックハンドラーの概要を示す側面図、図2は、図1のテレスコピックハンドラーを用いてフォーク作業を行うときの作業工程の説明図、図3は、図1のテレスコピックハンドラーを用いてバケット作業を行うときの作業工程の説明図である。
図1に基づき、この出願の発明が適用されるテレスコピックハンドラーの基本的な構造について概説する。なお、図1には、フロント作業機5のブーム6を上げたときの状態と下げたときの状態とが、便宜上、一台のテレスコピックハンドラーに同時に図示されている。
同図において、1はフロント作業機5や運転室4等を設置するための基台となり作業現場や一般車道を走行することが可能なホイール式の建設機械本体としてのテレスコピックハンドラーの車体、2は車体の前輪、3は車体の後輪、4はフロント作業機5や走行装置の操作等のテレスコピックハンドラーに関する種々の操縦を行うための運転室、5は次に述べるブーム6、フォーク7、ブームシリンダ8、テレスコシリンダ9及びアタッチメント駆動用シリンダ10を設けて構成され高所又は遠隔地点への運搬作業等のテレスコピックハンドラーによる種々の作業を行うためのフロント作業機である。
テレスコピックハンドラーは、「テレハンドラー」や「リフトトラック」とも称し、アタッチメントとしての作業具をフロント作業機5に着け換えて前記の運搬作業のほか種々の作業を行う。テレスコピックハンドラーの車体1は、前輪2及び後輪3をそれぞれ左右に設けて構成されて、運転室4及びフロント作業機5や後述するエンジン、油圧ポンプ、コントロールバル及び制御装置等を設置するための基台となり、エンジンにより後述する走行装置を駆動して一般車道や作業現場を車輪で走行することができる。次に、テレスコピックハンドラーのフロント作業機5の具体的な構造等について説明する。運転室4は、通常、前輪2と後輪3の間において、次に述べる多段式のブーム6の左右の一方の側に位置するように車体1に配置される。
6は基部を車体1の後部に上下方向に揺動可能に取り付けて先端側をブームの軸線方向に多段階に伸縮させることができるテレスコ式の伸縮ブームとしてのフロント作業機5の多段式のブーム、7はこのブーム6の先端部に車体1の前部よりも張り出した位置で上下方向に揺動可能に軸着されて運搬作業を行うための作業具となるアタッチメントとしてのフロント作業機5の断面略L字状のフォーク、8はブーム6の基部側と車体1とに軸着され伸縮することによりブーム6を上げ下げさせるように油圧で駆動する第1の油圧シリンダとしてのブームシリンダ、9は多段式のブーム6を伸縮させてフォーク7をブーム6の軸線方向に移動させるように駆動する第2の油圧シリンダとしてのテレスコシリンダ、10はブーム6とフォーク7とに軸着されフォーク7を上下方向に揺動させるように駆動する第3の油圧シリンダとしてのアタッチメント駆動用シリンダである。
多段式のブーム6は、このブーム6の基部側をなす中空の基部側ブーム部材6aと、この基部側ブーム部材6aの中空部に摺動可能に嵌入されてブーム6の先端側をなす先端側ブーム部材6bと、この先端側ブーム部材6bの先端部位に付設されてブーム6の先端部をなしフォーク7等の作業具が取り付けられる作業具取付部材6cとを設けて構成されている。フォーク7は、例えばレンガのような建築資材等の荷物を載せて高所へ運搬するための荷運び台としてのパレットを結合させて使用する。そのため、フォーク7には、爪を付設するとともに、パレットには、このフォーク7の爪を着脱可能に係合させることができる穴状の係合部を付設している。
テレスコシリンダ9は、ブーム伸縮シリンダとも称し、ブーム6の基部側ブーム部材6aの中空部に納められ、基端部及び先端部をそれぞれ基部側ブーム部材6a及び先端側ブーム部材6bに軸着している。したがって、テレスコシリンダ9を伸縮することにより、先端側ブーム部材6bをブーム6の軸線方向に移動してブーム6を伸縮させることができる。ブーム6の作業具取付部材6cには、既述のフォーク7のほかに、後述するバケット11、草を掴むためのグラップル、高所での作業時に作業者が乗るためのマンバスケット(乗りかご)等、アタッチメントとしての種々の作業具を交換可能に取り付けることができる。テレスコピックハンドラーは、以上のような構造を具備しているため、例えば、建築現場で種々の資材を積んで上方や遠隔地点に運搬したり、農場等で刈り取った草を運搬したりするというような作業、後述する掘削作業、特許文献1に記載の表土剥ぎ作業等、種々の作業を選択的に行うことができる。
図2及び図3に基づき、テレスコピックハンドラーで行う代表的な作業であるフォーク作業(高所運搬作業)及びバケット作業(掘削作業)に関する作業工程や同作業工程を実施するためのフロント操作(フロント作業機5の操作)について説明する。まず、図2に基づき、フォーク作業について説明する。
図2には、フォーク作業の工程のうちの前段の工程におけるフォーク7の概略的な移動経路や動きが矢印を付した折線や弧線で模式的に図示されており、これらの折線や弧線の脇には、フォーク作業の工程を表す多数の数字が付記されている。これらの数字のうち、1,1−1,1−2,1−3,1−4,2,3が前段の工程を表す数字であり、折線中の矢印は、この前段の工程におけるフォーク7に進行方向を表す。また、前段の工程の数字の傍らに括弧付きで付記した(4)〜(6)は、4〜6の後段の工程を表す数字であり、4〜6の後段の工程は、これに対応する3〜1の前段の工程とはフォーク7の進行方向が逆方向である。
フォーク作業の工程のうちの前段の工程から説明する。最初の1の工程を実施するに際し、フォーク7にパレットが結合され、このパレットに荷物が載せられて地面に置かれているものとする。1の工程における工程1ー1「垂直方向上げの準備」において、ブーム上げ(ブーム6を上方に揺動させる操作)とフォーク上げ(フォーク7を上方に揺動させる操作)とを行う。すなわち、地面に置かれたパレット上の荷物を地面から浮かすためにブーム6を若干上方に揺動させるとともに、フォーク7を手前に起こして荷物を抱え込むようにする。これらの操作は、単独操作により個別的に行ってもよいし、複合操作により同時に行ってもよい。次いで、1の工程における工程1ー2「垂直方向上げ」に移行し、ブーム6を上方に揺動させる操作とテレスコ伸ばし(テレスコシリンダ9を伸ばす操作)の複合操作を適切に行ってフォーク7を略垂直方向に上昇させる。
こうしてフォーク7を荷物運搬エリアaよりも若干上方に運んだ後、1の工程における工程1ー3「水平方向搬入」において、ブーム下げ(ブーム6を下方に揺動させる操作)とテレスコシリンダ9を伸ばす操作の複合操作を適切に行ってフォーク7を略水平方向に前方に移動させる。次いで、1の工程における工程1ー4「パレット下げ」に移行し、荷物を抱え込むように起こされていたフォーク7についてフォーク下げ(フォーク7を下方に揺動させる操作)を行うとともに、ブーム6を下方に揺動させる操作を行って、フォーク7に結合されたパレットを若干下げて荷物運搬エリアa上に置く。これらの操作は、単独操作により個別的に行ってもよいし、複合操作により同時に行ってもよい。
こうしてパレットを荷物運搬エリアa上に置いた後は、2の工程「フォーク引抜き」において、ブーム6を上方に揺動させる操作とテレスコ縮め(テレスコシリンダ9を縮める操作)の複合操作を適切に行って、フォーク7の爪をパレットの係合部から引き抜きながら、フォーク7を略水平方向に後方に移動させる。次いで、3の工程「垂直下げ」に移行し、ブーム6を下方に揺動させる操作とテレスコシリンダ9を縮める操作の複合操作を適切に行って、フォーク7を略垂直方向に地面間近まで下降させる。以上により、フォーク作業の工程のうちの前段の工程が終了する。
この前段の工程の終了後は、荷物運搬エリアaに置き去りにしたパレットを回収するための4の工程「垂直上げ」以降の後段の工程を実施する。4の工程において、ブーム6を上方に揺動させる操作とテレスコシリンダ9を伸ばす操作の複合操作を適切に行ってフォーク7を略垂直方向に上昇させる。こうしてフォーク7を荷物運搬エリアaと略等しい高さ位置に運んだ後、5の工程「フォーク差込み」において、ブーム6を下方に揺動させる操作とテレスコシリンダ9を伸ばす操作の複合操作を適切に行って、フォーク7を略水平方向に前方に移動させながら、フォーク7の爪をパレットの係合部に差し込む。
次いで、6の工程における工程6ー1「パレット上げ」に移行し、ブーム6を上方に揺動させる操作を行うとともにフォーク7を上方に揺動させる操作を行って起こし、これらの操作により、パレットを結合させたフォーク7を荷物運搬エリアaよりも若干上方に持ち上げる。これらの操作は、既述の工程1ー4「パレット下げ」とは逆の操作であり、単独操作により個別的に行ってもよいし、複合操作により同時に行ってもよい。次いで、6の工程における工程6ー2「水平方向搬出」において、ブーム6を上方に揺動させる操作とテレスコシリンダ9を縮める操作の複合操作、すなわち既述の工程1ー3「水平方向搬入」とは逆の複合操作を適切に行ってフォーク7を略水平方向に後方に移動させる。
こうして既述の工程1ー2「垂直方向上げ」が実施された水平位置まで後方に移動させた後は、工程6−3「垂直方向下げ」に移行し、ブーム6を下方に揺動させる操作とテレスコシリンダ9を縮める操作の複合操作、すなわち既述の工程1ー2とは逆の複合操作を適切に行って、フォーク7を略垂直方向に地面間近まで下降させる。次いで、工程6−4「原状態への復帰」において、フォーク7を下方に揺動させる操作とブーム6を下方に揺動させる操作とを行って、フォーク7を既述の工程1ー1が実施される前の状態に戻す。これらの操作は、既述の工程1ー1とは逆の操作であり、単独操作により個別的に行ってもよいし、複合操作により同時に行ってもよい。
以上により、フォーク作業の後段の工程も終了して、かくして、フォーク作業の工程のワンサイクルが終了する。以後、以上述べた1−1の工程乃至6−4の工程を必要なだけ反復し、例えば建設資材としてのレンガ等、必要な荷物を高所へ運搬する。このフォーク作業は、油圧アクチュエータとしてのテレスコシリンダ9を駆動して実施するテレスコピックハンドラーに特有の作業であり、このテレスコシリンダ9を駆動することにより、荷物を遠隔の水平位置に移送する場合にも実施される。
次に、図3に基づき、バケット作業について説明する。テレスコピックハンドラーでバケット作業を行うときには、アタッチメントとしてのバケット11をフォーク7と交換してブーム6の作業具取付部材6cに取り付ける。図3には、バケット作業の工程でのバケット11の概略的な動き等が矢印を付した直線や弧線で模式的に図示されており、これらの線の脇には、バケット作業の工程を表す数字が付記されている。
テレスコピックハンドラーでバケット作業すなわち掘削作業を行うときには、1の工程「移動」において、掘削対象となる土砂に向かって作業現場を走行前進する。このときの走行前進は、通常の作業現場での走行であるので、低速走行すなわちローギアで行う。次いで、2の工程「掘削」に移行し、走行前進してバケット11を土砂等に押し込みながらブーム上げ(ブーム6を上方に揺動させる操作)とバケットクラウド(バケット11に掘削土砂を入れ得るようにバケット11を上方に揺動させる操作)の両操作を行って、土砂を掘削してバケット11に入れながら、数字2を付記した弧線で示すように同バケット11を上方に持ち上げる。これらの両操作は、オペレータの判断により、単独操作で個別的に行ってもよいし、複合操作で同時に行ってもよい。また、このときの走行前進は、走行力を掘削に活用するためのものであるから、当然低速走行で行う。
こうして掘削土砂を入れて上方に持ち上げたバケット11は、3の工程「運搬」において、ブーム下げ(ブーム6を下方に揺動させる操作)と走行後進の操作を同時に行って、テレスコピックハンドラーの状態を、1の工程を実施する前の図示の状態に復帰させる。次いで、テレスコピックハンドラーを例えばターンさせる等して放土個所に向けてから、4の工程「運搬」に移行し、ブーム6を上方に揺動させる操作と走行前進の操作を同時に行って掘削土砂を放土個所に運搬する。これら3の工程や4の工程で行う走行後進や走行前進も、通常の作業現場での走行であるので、当然低速走行で行う。
前記の4の工程においてテレスコピックハンドラーで掘削土砂をトラックの荷台等の放土個所に運搬した後は、5の工程「放土(ダンプ積込み)」において、バケットダンプの操作(バケット11内の掘削土砂を放出させるようにバケット11を下方に揺動させる操作)を行って掘削土砂を放土個所に放出する。次いで、6の工程「バケット水平合わせ」において、前工程で下方に揺動させたバケット11を上方に揺動させる操作を行ってバケット11を水平状態にする。最後に、7の工程「移動」において、ブーム6を下方に揺動させる操作と走行後進の操作を同時に行って、テレスコピックハンドラーを1の工程実施前の図3に図示の状態及び位置に戻す。
以上により、バケット作業の工程のワンサイクルが終了し、以後、以上述べた1の工程乃至7の工程を必要なだけ反復する。このバケット作業では、フォーク作業とは異なり、フロント作業機5の油圧アクチュエータのうちのテレスコシリンダ9は駆動しない。このテレスコピックハンドラーによるバケット作業は、ホイールローダによる掘削作業と実質的に変わらないので、この出願の発明は、テレスコピックハンドラーだけに限らず、ホイールローダのようなホイール式の建設機械にも適用することができる。フォーク作業の説明では、図2で荷物を高所に運搬する荷積み作業の例について述べたが、図2で述べたフォーク作業は、荷物を高所から低所に運搬する荷下し作業にも適用することができる。また、バケット作業では、掘削作業の例について述べたが、図3で述べたバケット作業は、特許文献1に記載の表土剥ぎ作業にも適用することができる。
図4及び図5に基づき、この出願の発明に係るテレスコピックハンドラーの特徴的な技術内容について説明する。図4は、この出願の発明を図1のテレスコピックハンドラーに具体化したときの油圧制御系統の概要を示すブロック図、図5は、図4の油圧制御系統を設けてこの出願の発明を具体化したテレスコピックハンドラーにおける制御装置を説明するための車速と油圧ポンプの流量との関係を示す図である。なお、これらの図において図1と同一の符号を付けた部分は、同図と同等の部分を表すので、詳述しない。
図4において、12はフロント作業機5の油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ8、テレスコシリンダ9及びアタッチメント駆動用シリンダ10を駆動するための油圧を発生する油圧シリンダ駆動用油圧ポンプとしての可変容量型の油圧ポンプ、13は走行用モータ15を駆動するための油圧を発生する走行用モータ駆動用の可変容量型油圧ポンプとしてのHSTポンプ、14は駆動軸に可変容量型の油圧ポンプ12及びHSTポンプ13の双方が接続されて車体1に配置されたエンジン、15は前輪2及び後輪3を回転駆動するための走行用モータ、16は左右の前輪2の車軸及び左右の後輪3の車軸との間に接続され走行用モータ15の回転を駆動車軸に伝える変速機としてのトランスミッション、17は前輪2を取り付けた車軸としてのフロントアクスル、18は後輪3を取り付けた車軸としてのリヤアクスルである。
ここに示す例では、走行装置は、HSTポンプ13と走行用モータ15とを設けて構成され、HSTポンプ13の傾転角を制御してこれの吐出容量を調節することにより走行用モータ15の回転を制御できるようになっている。テレスコピックハンドラーの高速走行時には、エンジン回転数は増加しているが、フロント作業機5の油圧アクチュエータを駆動するための油圧ポンプ12と、走行用モータ15を駆動するためのHSTポンプ13とは、同一のエンジン14で駆動しているため、テレスコピックハンドラーの高速走行時には、エンジン回転数の増加に伴って、フロント作業機5の使用の有無に係りなく、油圧ポンプ12の回転数も必然的に増加することとなる。
19はトランスミッション16に取り付けられてテレスコピックハンドラーの車速を検出するための車速検出手段、20は可変容量型の油圧ポンプ12の傾転角を制御するための流量制御レギュレータ、21は制御装置22により制御され可変容量型の油圧ポンプ12の傾転角を流量制御レギュレータ20を通じて設定値に調節する流量制御電磁弁、22は車速検出手段19での車速の検出結果が入力され、その車速の検出結果に応じて流量制御電磁弁21及び流量制御レギュレータ20を通じて可変容量型の油圧ポンプ12の傾転角を制御する制御装置、23は作動油タンク、30はオペレータの操作により油圧ポンプ12から油圧アクチュエータ8,9,10へ供給される圧油の流れや流量が切り換えられて油圧アクチュエータの駆動を制御する方向切換弁としてのコントロールバルブのユニット、31は同ユニット30中のブームシリンダ操作用のコントロールバルブ、32は同じくテレスコシリンダ操作用のコントロールバルブ、33は同じくアタッチメント駆動用シリンダ操作用のコントロールバルブである。
ここに示す例では、ブームシリンダ操作用のコントロールバルブ31、テレスコシリンダ操作用のコントロールバルブ32及びアタッチメント駆動用シリンダ操作用のコントロールバルブ33がコントロールバルブのユニット30としてユニット化されて一体の弁ブロックをなすように形成されており、コントロールバルブのユニット30は、これらのコントロールバルブ31,32,33の集合体をなして方向切換弁に関する弁装置をなしいる。各コントロールバルブ31,32,33やその周辺の油圧回路は、この出願の発明の本質に直接的には関係しないので、説明の便宜上、ここでは簡略化して図示している。図示はしていないが、運転室4には、コントロールバルブのユニット30を操作するための操作手段としての作業機用操作装置と、HSTポンプ13の吐出容量を制御するための手段を操作する走行用操作装置とを設けている。
そこで念のため、各コントロールバルブ31,32,33の機能について概説すると、各コントロールバルブ31,32,33は、操作手段の操作方向により中立位置から左右何れかの位置に切り換えることができる。そして、左右一方の位置に切り換えられたときには、油圧ポンプ12の圧油を各シリンダ8,9,10のボトム側に供給するとともに、これのロッド側の圧油を作動油タンク23に排出し、これにより、各シリンダ8,9,10を伸長させることができる。また、左右他方の位置に切り換えられたときには、油圧ポンプ12の圧油を各シリンダ8,9,10のロッド側に供給するとともに、これのボトム側の圧油を作動油タンク23に排出し、これにより、各シリンダ8,9,10を縮小させることができる。その場合に、操作手段の操作量に応じて開口量を調節して、各シリンダ8,9,10の伸縮する速度を制御することができる。
次に、この出願の発明の技術内容に関連を有する可変容量型の油圧ポンプ12の吐出容量の制御の仕組みについて説明すると、流量制御レギュレータ20は、油圧ポンプ12の斜板を傾動させるための油圧シリンダを備え、流量制御電磁弁21の切換によりこの油圧シリンダを駆動して斜板を傾転させ、油圧ポンプ20の吐出容量を変えることができる。この出願の発明に係るテレスコピックハンドラーでは、走行速度の領域(範囲)別に可変容量型の油圧ポンプ12の吐出容量を予め設定しており、この走行速度領域別の吐出容量の設定値を制御装置22の流量記憶手段に記憶させている。そして、制御装置22では、車速検出手段19での車速の検出結果に基づいて、車体1が当該時点において何れの走行速度領域で走行しているのかを判定し、その判定結果に基づいて、流量制御電磁弁21へ指令信号を出力して、可変容量型の油圧ポンプ12の吐出容量を、制御装置22の流量記憶手段に記憶させている設定値にするように制御している。
すでに述べたように、ホイール式の建設機械が往来のために一般車道を走行しているときには、エンジン回転数が増加して油圧ポンプの吐出流量が多量となり、しかも、フロント作業機が無負荷状態であることから、オペレータがフロント作業機の操作レバーを不本意に誤操作すると、フロント作業機が急激に作動して種々の危険がもたらされる。本テレスコピックハンドラーでは、こうした問題を解消するため、フロント作業機の油圧アクチュエータ駆動用の油圧ポンプに可変容量型の油圧ポンプ12を用いて、この油圧ポンプ12の傾転角を制御するための流量制御レギュレータ20、流量制御電磁弁21及び前記の制御装置22とを設けている。
そして、車体1が往来のために一般車道を走行しようとするときに想定される走行速度領域としての高速走行領域と、同高速走行領域よりも低い走行速度領域である低速走行領域と、これらの走行速度領域別の吐出容量とを設定して、これらの設定値を制御装置22の流量記憶手段に記憶させておき、車体1の走行速度が高速走行領域にあると判定したときには、低速走行領域にあると判定したときよりも可変容量型の油圧ポンプ12の吐出容量を減らすように、流量制御電磁弁21及び流量制御レギュレータ20を通じて制御装置22により制御するようにしており、この点に本テレスコピックハンドラーの最大の特徴がある。以下、この点に関連する制御装置22の制御内容を図5に基づいて説明する。
図5において、横軸Vは、車速すなわち車体1の走行速度を表し、縦軸Qは、ポンプ流量すなわち可変容量型の油圧ポンプ12の吐出容量を表している。まず、横軸Vについて説明すると、車速0からV2までの走行速度の領域がこの出願の発明にいう低速走行領域であり、車速V2を超える走行速度の領域がこの出願の発明にいう高速走行領域である。この出願の発明にいう高速走行領域は、ホイール式の建設機械が一般車道を走行しようとするときに想定される走行速度領域のことであり、建設機械の走行性能等を考慮しながら経験則により設定することができる。この出願の発明にいう低速走行領域は、高速走行領域よりも低い走行速度領域のことであり、高速走行領域を設定すれば、自ずから定まる走行速度領域である。この低速走行領域は、各シリンダ8,9,10のうちの少なくとも一つと走行用モータ15との複合駆動を行うための車速の設定を主眼として定められた走行速度領域であり、後述するように、走行用モータ15とシリンダとの複合駆動により行う作業の種類に応じて複数領域設定することが望ましい。
低速走行領域及び高速走行領域は、それぞれ、ローギア(一速)及びハイギア(二速)のでの走行速度領域に通常設定する。ここに示す例では、車速V2を時速10Km前後の走行速度として低速走行領域を時速0Km〜10Km前後の走行速度の領域とし、高速走行領域を、この走行速度を超える走行速度の領域しているが、車速V2は、時速5Km〜15Kmの走行速度の範囲で適宜選定することとする。低速走行領域は、車体1を停止させ又は通常の作業現場を走行させながら前述のフォーク作業やバケット作業等の建設作業を行う走行速度帯であり、高速走行領域は、こうした建設作業を行うことなく、車体1が一般車道、更には広い作業現場を往来のために走行するときの走行速度帯である。
図に示す例では、車速0からV2までの低速走行領域を、車速0からV1までの第1の低速走行領域と車速V1からV2までの第2の低速走行領域とに区分して、低速走行領域中に二つの領域を設定している。これは、テレスコピックハンドラーがフォーク作業という特殊な作業を行うことにより特別に設定したものであり、車速0からV1までの第1の低速走行領域は、フォーク作業を行う走行速度の領域であり、車速V1からV2までの第2の低速走行領域は、バケット作業を行う走行速度の領域である。したがって、ホイール式の建設機械が、専ら掘削作業や積み込み作業を行うホイールローダである場合には、低速走行領域中にこうした区分を設けない。図2での説明からも明らかなように、フォーク作業は、通常は概ね停止して行うので、フォーク作業を行う第1の低速走行領域を画定するための車速V1は、時速5Km以下の走行速度の範囲で適宜選定することとする。
次に、以上述べた横軸Vの車速との関連において、縦軸Qのポンプ流量について説明する。Q1は、第1の低速走行領域に設定されたポンプ流量である。このポンプ流量Q1を得ることができるように、油圧ポンプ12の最大押しのけ容積q1(換言すると、第1の低速走行領域における吐出容量の最大値)を設定して、可変容量型の油圧ポンプ12から全流量が得られるように設定している。第1の低速走行領域で行うフォーク作業では、図2に示すように多くの工程でテレスコシリンダ9を駆動し、このテレスコシリンダ9の容量はきわめて大きい。そして、テレスコシリンダ9は、特に、シリンダ側(ボトム側)に圧油を供給する伸長時に多大な流量の圧油を必要とすることから、テレスコピックハンドラーでは、テレスコシリンダ9を使用する第1の低速走行領域で全流量が得られるように設定している。したがって、ポンプ流量Q1の値は、ブームシリンダ8及びアタッチメント駆動用のシリンダでの各種作業時に必要とする圧油の流量のほか、テレスコシリンダ9の容量を考慮して適宜設定する。
Q2は、第2の低速走行領域に設定されたポンプ流量である。このポンプ流量Q2を得ることができるように油圧ポンプ12の最大押しのけ容積q2(<q1)(換言すると、第2の低速走行領域における吐出容量の最大値)を設定して、ポンプ流量Q1からテレスコシリンダ9の容量分だけポンプ流量を落すように設定している。この第2の低速走行領域で行うバケット作業では、図3に示すようにテレスコシリンダ9を使用しないので、このようにテレスコシリンダ9の容量分だけポンプ流量を落すように設定している。これまで設計では、バケット作業時もフォーク作業時と同じポンプ流量が得られるようにしていたが、このようにバケット作業時にテレスコシリンダ9の容量分だけポンプ流量を落すようにすることにより、コントロールバルブ31,32,33の中立位置への操作時における油圧の圧力損失を必要最小限にすることができる。
Q3は、高速走行領域に設定されたポンプ流量である。このポンプ流量Q3を得ることができるように油圧ポンプ12の最大押しのけ容積q3(<q3)(換言すると、高速走行領域における吐出容量の最大値)を設定して、ブーム6の作動速度を低下させたい分だけポンプ流量Q2からポンプ流量を落すように設定し、これにより、一般車道等の往来のための走行時である高速走行領域での走行時にブーム6が誤操作により急動するのを防ぐようにしている。このポンプ流量Q3の設定値は、ポンプ流量Q2の70%以下の数値の中から適宜の値を選択する。本テレスコピックハンドラーの最大の特徴は、このように高速走行領域でのポンプ流量Q3を低速走行領域でのポンプ流量Q1,Q2よりも減少させるようにした点にある。
制御装置22には、以上述べた、第1の低速走行領域、第2の低速走行領域及び高速走行領域に係る車速の速度範囲の設定値と、これらの各走行速度領域別に設定された各ポンプ流量Q1,Q2,Q3が得られるようにそれぞれ設定された油圧ポンプ12の最大押しのけ容積q1,q2,q3とを記憶させておく。そして、制御装置22は、入力された車速検出手段19での車速の検出結果に基づいて、走行速度が第1の低速走行領域、第2の低速走行領域及び高速走行領域のうちの何れの走行速度領域にあるかを判定し、その判定結果に基づいて、油圧ポンプ12の最大押しのけ容積を当該走行速度領域で設定された値にするように制御信号を流量制御電磁弁21へ出力してこれを駆動し、これにより、レギュレータ20を通じて可変容量型の油圧ポンプ12の傾転角を制御する。
したがって、車速検出手段19での車速の検出結果に基づいて、走行速度が高速走行領域にあると判定されたときには、油圧ポンプ12の最大押しのけ容積を、第1及び第2の低速走行領域で設定された油圧ポンプ12の最大押しのけ容積q1,q2よりも小さい予め設定された値q3にするように制御信号を出力して、この制御信号によりレギュレータ20を通じて可変容量型の油圧ポンプ12の傾転角を制御する。そして、走行速度が高速走行領域にある限り、この油圧ポンプ12の傾転角は、同走行領域に設定された最大押しのけ容積q3に見合った角度になるように固定されており、そのため、オペレータが作業機用操作装置により誤ってブーム6を操作しても、ブーム6が急動するのを高速走行中は常に防ぐことができる。
以上の説明から明らかなように、本テレスコピックハンドラーは、車速検出手段19での車速の検出結果に基づいて走行速度が高速走行領域にあると制御装置22で判定されたときには、可変容量型の油圧ポンプ12の吐出容量を高速走行領域での吐出容量の設定値(ポンプ流量Q3)にするよう制御装置22で制御して、低速走行領域での吐出容量(ポンプ流量Q1,Q2)よりも減少させるように構成されている。そのため、一般車道や広い作業現場を往来する場合のように高速で走行しようとするとき、換言するとハイギアで走行しているときには、制御装置22は、油圧ポンプ12の傾転角を制御して同油圧ポンプ12の吐出容量を自動的に減らすことができる。
このように、本テレスコピックハンドラーでは、高速走行時に、フロント作業機5の油圧アクチュエータ駆動用の油圧を発生するための可変容量型の油圧ポンプ12の吐出容量を減らすため、仮に、走行中にオペレータがフロント作業機5の操作レバーを誤って操作しても、フロント作業機5、特にブーム6が急動するようなことはない。本テレスコピックハンドラーの最大の特徴は、ホイール式の建設機械で従来着目されていなかった通常の走行時の操縦上の問題に着目してこれを解決した点にあるが、本テレスコピックハンドラーによれば、オペレータが通常の走行時である高速走行中にフロント作業機5の油圧アクチュエータ8,9,10を誤操作したときでも、フロント作業機5が急激に動くのを抑止して操縦の安全性を高めることができて、従来着目されていなかった前記の操縦上の問題を解決することができる。
この出願の発明が適用可能なホイール式の建設機械の一例であるテレスコピックハンドラーの概要を示す側面図である。 図1のテレスコピックハンドラーを用いてフォーク作業を行うときの作業工程の説明図である。 図1のテレスコピックハンドラーを用いてバケット作業を行うときの作業工程の説明図である。 この出願の発明を図1のテレスコピックハンドラーに具体化したときの油圧制御系統の概要を示すブロック図である。 図4の油圧制御系統を設けてこの出願の発明を具体化したテレスコピックハンドラーにおける制御装置を説明するための車速と油圧ポンプの流量との関係を示す図である。
符号の説明
1 車体
2 前輪
3 後輪
4 運転室
5 フロント作業機
6 ブーム
7 フォーク
8 ブームシリンダ
9 テレスコシリンダ
10 フォークシリンダ
11 バケット
12 可変容量型の油圧ポンプ
13 HSTポンプ
14 エンジン
15 走行モータ
16 トランスミッション
17 フロントアクスル
18 リヤアクスル
19 車速検出手段
20 流量制御レギュレータ
21 流量制御電磁弁
22 制御装置

Claims (2)

  1. フロント作業機をなす油圧アクチュエータと、エンジンにより駆動されてこの油圧アクチュエータを駆動するための油圧を発生する油圧ポンプとを備え、前記エンジンを動力源として車輪により走行するホイール式の建設機械において、油圧ポンプとして可変容量型の油圧ポンプを用いて、この可変容量型の油圧ポンプの傾転角を制御するためのレギュレータと、このレギュレータを制御するための制御手段とを設けるとともに、ホイール式の建設機械が一般車道を走行しようとするときに想定される走行速度領域としての高速走行領域と同高速走行領域よりも低い走行速度領域である低速走行領域とを設定し、走行速度が高速走行領域にあると判定したときには、低速走行領域にあると判定したときよりも可変容量型の油圧ポンプの吐出容量を減らすように、制御手段でレギュレータを制御するように構成したことを特徴とするホイール式の建設機械。
  2. 前輪及び後輪が左右に配置された車体と、この車体の左右方向の中央部に前後方向に向けて配置され、基部側が車体の後方部に上下に揺動可能に取り付けられるとともに、先端側には車体よりも張り出した位置でアタッチメントが上下に揺動可能に取り付けられるテレスコ式の伸縮ブームと、この伸縮ブームを車体に対して上下に揺動させるための第1の油圧シリンダと、テレスコ式の伸縮ブームを伸縮させるための第2の油圧シリンダと、アタッチメントを伸縮ブームに対して上下に揺動させるための第3の油圧シリンダと、前輪及び後輪間でテレスコ式の伸縮ブームの左右の一方の側に位置するように車体に配置された運転室と、車体に配置されたエンジンと、同エンジンの駆動軸に接続され各油圧シリンダを駆動するための圧油を発生する油圧シリンダ駆動用油圧ポンプと、同じく同エンジンの駆動軸に接続され走行用モータ駆動するための圧油を発生する走行用モータ駆動用の可変容量型油圧ポンプと、左右の前輪の車軸及び左右の後輪の車軸との間に接続されたトランスミッションとを備え、運転室には、各油圧シリンダへ供給される圧油の流れや流量を制御するための弁装置を操作する作業機用操作装置と、走行用モータ駆動用の可変容量型油圧ポンプの吐出容量を制御するための手段を操作する走行用操作装置とを設けたホイール式の建設機械において、油圧シリンダ駆動用油圧ポンプとして可変容量型の油圧ポンプを用いて、この可変容量型の油圧ポンプの傾転角を制御するためのレギュレータと、トランスミッションに取り付けられて車速を検出する車速検出手段と、この車速検出手段での車速の検出結果を入力してレギュレータを制御するための制御装置とを設けるとともに、ホイール式の建設機械が一般車道を走行しようとするときに想定される走行速度領域としての高速走行領域と、同高速走行領域よりも低い走行速度領域であって前記各油圧シリンダの少なくとも一つと走行用モータとの複合駆動を行う走行速度領域である低速走行領域とを設定して記憶手段に記憶させ、制御装置は、入力された車速検出手段での車速の検出結果に基づいて走行速度が高速走行領域にあるか低速走行領域にあるかを判定し、高速走行領域にあると判定したときに、油圧シリンダ駆動用油圧ポンプの最大押しのけ容積を低速走行領域で設定された可変容量型の油圧ポンプの最大押しのけ容積よりも小さい予め設定された値にするように制御信号を出力して、この制御信号によりレギュレータを通じて可変容量型の油圧ポンプの傾転角を制御するように構成したことを特徴とするホイール式の建設機械。
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