JP2008121039A - 薄膜作製方法および薄膜作製装置 - Google Patents

薄膜作製方法および薄膜作製装置 Download PDF

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Abstract

【課題】鉄族金属切削のため、鉄族金属材料との反応を抑制し、切削抵抗を低減できるダイヤモンド部材で構成される鋭利刃先工具にコーディング可能な薄膜作製方法および薄膜作製装置を提供する。
【解決手段】アークプラズマ発生手段により金属若しくは炭素を蒸発させターゲットに蒸着させる所定の真空度に保持された第1の反応室と、原子ビーム照射手段により原子ビームを発生させる第2の反応室とを、オリフィスを介してカスケードに配置された構成とされ、第2の反応室からオリフィスを通して原子ビームを第1の反応室の前記ターゲットに照射させることにより、前記ターゲット表面に炭化物、窒化物、炭窒化物若しくは酸化物のいずれかの金属化合物薄膜を作製する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ダイヤモンド等で構成されるターゲット表面に炭化物、窒化物、若しくは炭窒化物のいずれかの金属化合物薄膜を作製する薄膜作製方法および薄膜作製装置に関するものである。
窒化チタン(TiN)等の金属化合物薄膜は高硬度で耐磨耗性に優れることから、摩耗面や工具表面のコーティングとして用いられている。これまで様々な方法で表面被覆が行われてきたがチャージアップなどの影響でいずれの方法も最適だとは言えず、またTiは非常に融点が高く、例えばTiClを用いた化学気相成長法(CVD)などで薄膜を得る方法もあるが、TiClはその有毒性から取扱いが難しいといった問題がある。
また一方、ターゲットとの密着性を向上させる薄膜作製方法として、レーザーなどの高エネルギービームによるアブレーション現象を利用する薄膜作製方法(レーザーアブレーション法)が知られている。アブレーション現象とは、レーザーなどの高エネルギー密度を有するビームを固体ターゲット表面に照射した際、ビームエネルギーを吸収した物質が大きなエネルギーもつフラグメントとして飛散する現象である。しかし、ターゲットのレーザー加熱にともなうミクロンあるいはサブミクロン程度の溶融再凝固粒子(ドロップレット)や固体ターゲットのかけらなどの粗大粒子の混入による膜質低下の問題があり、実用化にはいたっていないといった問題がある。
このような状況下、光通信用部品や小型デジタルカメラなどの光学製品分野を代表とする精密加工業界のニーズとして、微細加工を必要とされる金型が要求されている。このような金型材には強度や耐摩耗性の面で高硬度な鉄系材料が用いられることが多い。そして、このような鉄系材料で金型を作製するには、高精度の鏡面加工が必要とされる。非鉄系材料における鏡面加工などの高精度切削加工には、単結晶ダイヤモンドを刃先に用いた工具が利用されている(例えば、特許文献1)が、鉄系材料における鏡面加工などの高精度切削加工には、ダイヤモンドを刃先に用いた工具を利用できていない。
これは、ダイヤモンドは硬度や熱伝導率の点から切削工具材料として好適であるが、炭素原子から構成されており、金型の主原料である鉄系材料に炭素原子が容易に固溶するため工具の摩耗が大きくなり、鉄系材料の切削に使用することができないためである。このため、従来は超硬合金工具により鉄系金型素材の粗切削加工を行った後、この粗加工表面に非鉄系金属を用いてめっきを施し、このめっき面を鋭利な刃先の単結晶ダイヤモンド工具で仕上げていた。その結果、金型の作製にはコスト・時間が多くかかってしまっていた。このため直接的に鉄系材料を高精度に加工する技術が強く要望されているのである。
特開平10−43903号公報
上記問題点に鑑み、本発明は、鉄族金属切削のため、鉄族金属材料との反応を抑制し、切削抵抗を低減できるダイヤモンドで構成される鋭利刃先工具にコーディング可能な薄膜作製方法および薄膜作製装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の薄膜作製方法は、第1の真空度に保持された第1の反応室内で、原子ビーム照射手段により超熱原子ビームを発生させ、第2の真空度に保持された第2の反応室内で、アークプラズマ発生手段により金属若しくは炭素を蒸発させターゲットに蒸着させる工程と同時に、前記原子ビームを前記第1の反応室からオリフィス通路を通して前記第2の反応室の前記ターゲットに照射させる工程を備え、ターゲット表面に炭化物、窒化物、炭窒化物若しくは酸化物のいずれかの金属化合物薄膜を作製することを特徴としたものである。
上記工程により、特にダイヤモンドを上記ターゲットとし、ダイヤモンド表面に炭化物、窒化物、若しくは炭窒化物のいずれかの金属化合物薄膜を形成することができる。
ダイヤモンドで構成される鋭利刃先工具に、炭化物、窒化物、炭窒化物若しくは酸化物のいずれかの金属化合物薄膜を上記工程によりコーディングできることで、鉄族金属材料との反応を抑制し、鉄系材料の切削に使用した場合においても、工具の耐摩耗性、耐溶着性を改善し、工具寿命を延ばすことができる。
ここで、本発明の薄膜作製方法の原子ビーム照射手段は、レーザーデトネーション法を用いて、超熱窒素原子ビーム、超熱炭素原子ビーム、超熱酸素原子ビームの少なくとも1種を発生させるものであることを特徴とする。
レーザーデトネーション法は、所定の真空度に保持された真空槽内に薄膜の原料ガスを供給し、この原料ガスにレーザーを照射して電荷を持たない中性の原子ビームを生成する。そして、その中性の原子ビームをターゲットに照射する。
中性の原子ビームの照射により成膜を行なえば、ターゲット表面に均一に照射原子が結合され、極めて薄い薄膜を高精度に成膜できることになる。
例えば、炭酸ガスのパルスレーザーを薄膜の原料ガス(例えば、窒素ガスやメタンガス)に照射すると、原料ガスがプラズマ化され、その後プラズマは電気的に中和され、中性の原子ビームとなるものと考えられる。詳細は後述する実施例で述べる。
原料ガスの第1の反応室への導入は、間歇的に行なう。その際、ガス導入のタイミングとレーザーの照射タイミングとを合わせる。原料ガスが間歇的に導入されることで、真空度の低下を抑制し、容易に所定の真空度を得ることができる。さらに、レーザーの照射タイミングを、原料ガスの導入タイミングに合わせることで、より確実に原子ビームを発生させることができる。具体的には、原料ガスをノズルからパルス状に供給し、原料ガスの供給に同期するレーザーをノズルに照射して原子ビームを発生させる。
第1の反応室内に、例えば電磁パルスのパルスドバルブによってパルス状に原料ガスがノズルに導入され、そのパルスに同期して炭酸ガスレーザー光を集光し照射させることで、ガス分子を原子状に解離・加速させ、数eV程度の並進エネルギーを有する超熱原子ビームとしてターゲットの表面に照射させるのである。
また、本発明の薄膜作製方法のアークプラズマ発生手段は、アークプラズマガンを用いて、Ti、Zr、Hf、Ta、若しくはCの群から選択されたいずれかを蒸発させ、ビームをパルス状に発生させるものであることを特徴とする。
ここで、上記第1の真空度を10−3〜10−6Paとし、前記第2の真空度を10−6〜10−8Paの超真空とすることが好ましい。第1の真空度を10−3〜10−6Paとするのは、原子ビーム照射手段により生成された中性原子ビームは他の原子と衝突すると、元の分子に戻ったり、新しい化合物を生成したりするため、このような衝突を防止すべく原料ガスが原子化される真空槽内の空間を高い真空度に保持するものである。
また、第2の真空度を10−6〜10−8Paの超真空とするのは、作製する金属化合物薄膜やターゲットの表面清浄性が保たれることに加え、金属化合物薄膜中の不純物元素量を低減し、ターゲット表面と金属化合物薄膜の密着性を高めるためである。このため、ターゲット付近を最も真空度を高めるのである。
また、本発明の薄膜作製方法において、ターゲットが常温〜780℃の温度範囲内に制御されることが好適である。780℃よりも高い温度では、周辺の不純物となりうる金属がターゲット表面に蒸着する恐れがありターゲット表面が損傷する可能性がある。
ターゲットの所定温度は、より好ましくは300〜450℃である。この温度範囲であれば、工業的な制約条件が緩和されるからである。
次に、本発明の薄膜作製装置は、第1の真空度に保持された第1の反応室と;第2の真空度に保持された第2の反応室と;前記第1の反応室と前記第2の反応室を連通するオリフィス通路と;前記第2の反応室内に設置されたターゲットと;前記第1の反応室内に設置され、超熱原子ビームを発生させ前記オリフィス通路を通して前記ターゲットに照射する原子ビーム照射手段と;前記第2の反応室内に設置され、金属若しくは炭素を蒸発させ前記ターゲットに蒸着させるアークプラズマ発生手段と;を備え、前記ターゲット表面に炭化物、窒化物、炭窒化物若しくは酸化物のいずれかの金属化合物薄膜を作製することを特徴とする。
ここで、本発明の薄膜作製装置の原子ビーム照射手段におけるパルスドバルブは、原子ビームの照射軸と非共軸となるように配設されたことを特徴とする。
パルスドバルブは、ノズルと原料導入管の間に設けられ、開口部にテーパー状の先端部を有する栓がピエゾなどによってパルス状に間歇駆動し、原料導入管から原料ガスを導入し、ノズルによって照射方向を制御する。原料ガスが導入させるノズル口に、パルスドバルブのパルスに同期して炭酸ガスレーザー光を集光し照射させることで、原料ガスの分子を原子状に解離・加速させ、ノズルによって形成される照射軸に沿って、原子ビームを照射させる。
従来は、このパルスドバルブが原子ビームの照射軸と共軸となるように配設されていた。しかし、炭酸ガスレーザー光の照射により、テーパー状の先端部を有する栓が消耗しやすく、交換頻度が高く、運用面で問題となっていた。
パルスドバルブを原子ビームの照射軸と非共軸となるように配設することで、パルスドバルブの格段に耐久性を向上することができる。
本発明に係る薄膜作製方法および薄膜作製装置によれば、ターゲット表面に炭化物、窒化物、炭窒化物若しくは酸化物のいずれかの金属化合物薄膜を作製することができる。従って、鉄族金属切削のため、鉄族金属材料との反応を抑制し、切削抵抗を低減できるダイヤモンドで構成される鋭利刃先工具にコーディング可能といった効果を有する。
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明していく。
図1は、本発明の薄膜作製装置の概略図を示している。本発明の薄膜作製装置は、第1の真空度に保持された第1の反応室10と、第1の真空度よりも高い真空度の第2の真空度に保持された第2の反応室20と、第1の反応室10と第2の反応室20を連通するオリフィス通路30と、第2の反応室20内に設置されヒーター22により所定温度に制御されたターゲット基板21と、第1の反応室10内に設置され、超熱原子ビームをパルス状に発生させオリフィス31を通してターゲット基板21に照射する原子ビーム照射手段(11〜15)と、第2の反応室20内に設置され、金属若しくは炭素を蒸発させターゲット基板21に蒸着させるアークプラズマガン23を備えている。
第1の反応室10は、図示しない真空ポンプにより10−6 Pa程度の高真空に保たれ、原子ビーム照射手段(11〜15)によって、レーザーデトネーション法を用いて超熱原子ビームを生成し、生成した超熱原子ビームをオリフィス通路30を介して、ターゲット基板21に照射させる。
また、第2の反応室20は、10−8 Pa以下の超高真空を保つ反応室で、ターゲット基板21をクリーニングするためのスパッタイオンガン24と、Ti,Taなどの金属若しくは炭素(C)をターゲットに蒸着させるためのアークプラズマガン23で構成されている。ターゲット基板21は、ヒーターにより所定の温度にコントロールされ、マニュピュレータ25を用いて移送される。また、四重極質量分析計(QMS)25は、ターゲット基板21に原子ビームの照射量を求めるために用いる。
ここで、レーザーデトネーション法を用いて超熱原子ビームを生成し、生成した超熱原子ビームをターゲット基板21に照射させる方法について図1を参照しながら説明する。高真空を保つ第1の反応室10内において、電磁パルスのパルスドバルブ11によってパルス状に原料ガスが導入されるノズル12に、そのパルスに同期して炭酸ガスレーザー光をレーザー入射窓14から入れ、ミラー13で集光し照射させることで、原料ガス分子を原子状に解離・加速させ原子ビームを生成する。これにより、数eV程度の並進エネルギーを有する超熱原子ビームとしてターゲット基板21の表面に照射させるものである。
第1の反応室10は、図示しない真空ポンプに連結され、反応室内を10−6Pa程度の圧力にしている。これによって、ターゲット基板21への不純物の付着等を防止することができる。超熱原子ビームを直接的にターゲット基板21の表面に照射して成膜するため、キャリアガスを必要としない。これもターゲット基板21への不純物の付着が生じない理由である。
原料ガスは、形成する薄膜の種類に応じて適宜選択する。例えば、窒素ガス、二酸化炭素などが利用できる。また、原料ガスの真空容器への導入は、間歇的(パルス)に行なうことが望ましい。その際、ガス導入のタイミングとレーザーの照射タイミングとを合わせることがより好ましい。原料ガスが間歇的(パルス)に導入されることで、真空度の低下を抑制し、容易に所定の真空度を得ることができる。さらに、レーザーの照射タイミングを原料ガスの導入タイミングに合わせることで、より確実に原子ビームを発生させることができる。より具体的には、原料ガスをノズルからパルス状に供給し、原料ガスの供給に同期するレーザーをノズルに照射して原子ビームを発生させる。
以下の実施例では、上記装置を用いて、TiC,TiCN,TaN、Zr0など炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物をダイヤモンド表面にコーティングした結果を示すことで、本発明の効果を確認することにする。
実施例1では、ターゲット基板としてSi基板を用いて、窒化チタン(TiN)の金属化合物薄膜の作製を、下表1に示される1)〜6)の条件で行っている。
条件No1およびNo2では、窒素雰囲気中でチタン(Ti)・アークプラズマによりターゲットであるSi基板表面にTiN薄膜の作製を試みたものである。また、条件No3では、窒素分子ビームを照射しながらTiアークプラズマによりターゲットであるSi基板表面にTiN薄膜の作製を試みたものである。そして、条件No4とNo6では、窒素原子ビームを照射しながらTiアークプラズマによりターゲットであるSi基板表面にTiN薄膜の作製を試みたものである。条件No4とNo6の違いは、第1の反応室と第2の反応室の間を連結する通路パイプ内部のオリフィスの有無である。さらに、条件No5では、ターゲット周辺をメタン雰囲気にして、窒素原子ビームを照射しながらTiアークプラズマによりターゲットであるSi基板表面にTiCN薄膜の作製を試みたものである。
表1の条件No1〜2の条件で作製したTiNの薄膜に対して、XPS(X‐ray Photo-electron Spectroscopy)スペクトルを図2−1および図2−2に示す。また、表1の条件No3〜6の条件で作製したTiNの薄膜に対して、XPSスペクトルを図2−3に示す。なお、図2−3には参考データとして、TiN(市販品)とTiCN(市販品)のXPSスベクトルも示している。
図2−1のXPSスベクトルから、室温における窒素雰囲気中での成膜では、TiNを示す455(eV)のピークはほとんど見られず、Ti0を示す460(eV)付近のピークが見られることから大部分がTi0であった。
また、図2−2のXPSスベクトルから、市販品のTiNとほとんど同一のスベクトルとなっていることが確認される。しかし条件No2の場合、ピークが455(eV)とTiを示す454(eV)のピークがあることから、TiN薄膜中には窒化されていないTiが残っていることがわかる。このことは窒素雰囲気中では全てのチタンが完全に窒素と反応していないことを示している。
図2−1および図2−2のXPSスベクトルには、Ti0を示す460(eV)付近のピークが見られることから、多くのTi0が含まれている。これは真空槽に残留している0や0Hがチタンと反応して生成されたと推測される。多くのTi0が含まれている理由は、窒素に較べて、0や0Hの方が、より反応性が高いためである。従って、薄膜からTi0を減少させるには、窒素雰囲気でチタン(Ti)・プラズマアークによる反応だけでは不十分であり、0や0Hよりも反応性の高い活性化された窒素をターゲットに供給する必要がある。
そこで、表1の条件No3の条件では窒素分子ビームを、表1の条件No4〜6の条件では超熱窒素原子ビームをターゲット基板表面に照射することを試みた。図2−3に条件No3〜6のXPSスベクトルを示す。
図2−3から、条件No3では、窒素分子ビームを照射しながらTiアークプラズマを行っても、Si基板表面にTiN薄膜はできていないことが確認された。
また、条件No4とNo6では、窒素原子ビームを照射しながらTiアークプラズマによりターゲットであるSi基板表面にTiN薄膜の作製を試みたものであるが、オリフィスを有する場合に、TiNのピークが強く現れていることが確認でき、TiN薄膜が作製されていることが認められる。オリフィスを備えたことにより、第2の真空室20の機密性が向上し、超真空状態に保持でき、ターゲット基板表面への不純物の付着等を防止することができたからである。
また、条件No5では、ターゲット周辺をメタン雰囲気にして、窒素原子ビームを照射しながらTiアークプラズマによりターゲットであるSi基板表面にTiCN薄膜の作製を試みたものであるが、TiCN(市販品)と同様なスペクトルが得られているが確認でき、TiCN薄膜が作製されていることが認められる。
以上から、第1の真空度に保持された第1の反応室内で、原子ビーム照射手段により超熱原子ビームを発生させ、第2の真空度に保持された第2の反応室内で、アークプラズマ発生手段により金属若しくは炭素を蒸発させターゲットに蒸着させる工程と同時に、原子ビームを第1の反応室からオリフィスを通して第2の反応室のターゲットに照射させる工程により、ターゲット表面に、窒化物や炭窒化物の金属化合物薄膜を作製することが認められる。
実施例2では、ターゲット基板として、Si基板およびダイヤモンド基板を用いて、基板温度を下表2に示される条件に制御してTiN薄膜形成を試みた。
上記のNo1〜No7の条件にて作製したTiN薄膜のXPSスペクトルを、それぞれ図3−1〜図3−7に示す。いずれのXPSスペクトルにおいても、TiNを示す455(eV)のピークが確認できた。このことから常温〜780℃の広範囲において、特に基板種類に影響を受けることなく、TiN薄膜が形成できることがわかる。但し、Si基板の場合、ターゲット基板温度が常温や780℃になると、Si0を示す460(eV)のピークが相対的にTiNを示す455(eV)のピークよりも大きくなっている。このことから、ターゲット温度としては300〜450℃に制御することが好ましいと言える。
次に、本発明の薄膜作製装置のパルスドバルブの配置に関して、従来装置の配置との相違点について説明する。
図4は、ノズル対するパルスドバルブの従来配置(A)と本発明配置(B)を説明する図である。ここで、パルスドバルブの動作について説明する。パルスドバルブ41は、ポペット40がソレノイド42によりピストン開閉することで、原料ガス43を図示しない原料導入管から、ノズル44に送り出す。ノズル44はテーパー状に口が拡がっており、その中心軸方向である原子ビーム照射軸46に沿って原料ガスは照射される。
パルスドバルブの従来配置は、パルスドバルブの中心軸を、ノズルの中心軸(原子ビーム照射軸)46に同軸となるようにしていた。これに対して、本発明配置は、パルスドバルブの中心軸から、ノズルの中心軸(原子ビーム照射軸)46をずらすことにより、直接レーザーからの照射を防ぐことができ、ポペット40の消耗を防ぐことができた。
次に、図5−1および図5−2のレーザーデトネーションの模式図を用いて説明する。
図5−1に示されるように、従来配置では、パルスドバルブ41からノズル44に原料ガスが送り出されるタイミングで(図5−1(b))、炭酸ガスレーザー47をレーザー入射窓から入れ、ミラーで集光し照射させることで、原料ガス分子を原子状に解離・加速させ原子ビームを生成する。しかし、このときパルスドバルブ41のポペット40にも、炭酸ガスレーザー47が照射されることにより、ポペット40の先端部が損傷されていく。ポペット40は、その先端部の損傷が進むと、パルスドバルブ41の機能が維持できないため、消耗品として頻繁に交換しているのが実情である。
一方、図5−2に示されるように、本発明配置では、炭酸ガスレーザー47を照射させた場合においても、非共軸配置としていることから、パルスドバルブ41のポペット40には炭酸ガスレーザー47が照射されることはなく、ポペット40の先端部が損傷され難い。このためにパルスドバルブ41の交換寿命は長くなる。
図6に、パルスドバルブの栓先端の使用後の外観写真(従来配置と本発明配置)を示す。図6(a)に参考用としてパルスドバルブの栓先端の使用前の写真を、図6(b)に従来配置のパルスドバルブの栓先端を約3千回開閉動作後の写真を、図6(c)に本発明配置のパルスドバルブの栓先端を約5万回開閉動作後の写真を示す。本発明配置のパルスドバルブの栓先端の場合、従来配置と比べて、先端部の形状の消耗が少ないことが認められる。開閉動作回数を交換寿命に該当すると考えると、本発明配置のパルスドバルブの栓先端の場合、従来配置と比べて、10倍以上(5万回÷3千回)寿命が長くなり、長時間真空状態をシーリングできるのである。
尚、この本発明配置は、通常のレーザーデトネーション法を用いる装置にも勿論適用でき、パルスドバルブのポペットの交換寿命を長くする効果があるのは言うまでもない。
本発明の薄膜作製方法および薄膜作製装置によれば、例えば、鉄族金属切削のための鋭利刃先工具の作製に利用することができる。鉄族金属切削のための鋭利刃先工具は様々な工業分野に利用でき、従来の金型加工の効率を飛躍的に向上することが期待できると考える。
本発明の薄膜作製装置の概略構成図 実施例1で作製した各種TiN薄膜のXPSスペクトル図(表1の条件No1) 実施例1で作製した各種TiN薄膜のXPSスペクトル図(表1の条件No2) 実施例1で作製した各種TiN薄膜のXPSスペクトル図(表1の条件No3〜6) 実施例2の作製TiN薄膜のXPSスペクトル図(表2のNo1) 実施例2の作製TiN薄膜のXPSスペクトル図(表2のNo2) 実施例2の作製TiN薄膜のXPSスペクトル図(表2のNo3) 実施例2の作製TiN薄膜のXPSスペクトル図(表2のNo4) 実施例2の作製TiN薄膜のXPSスペクトル図(表2のNo5) 実施例2の作製TiN薄膜のXPSスペクトル図(表2のNo6) 実施例2の作製TiN薄膜のXPSスペクトル図(表2のNo7) ノズル対するパルスドバルブの概略配置図((A)は従来配置,(B)は本発明配置) 従来配置のバルブにおけるレーザーデトネーションの模式図 本発明配置のバルブにおけるレーザーデトネーションの模式図 バルブの栓先端部の外観写真
符号の説明
1 本発明の薄膜作製装置
10 第1の反応室
11 パルスドバルブ
12 ノズル
13 ミラー
14 レーザー入射窓
15 原料ガス導入管
20 第2の反応室
21 ターゲット基板
22 ヒーター
23 アークプラズマガン
24 スパッタイオンガン
25 マニュピュレータ
26 四重極質量分析計(Quadrupole Mass Spectrometer;QMS)
30 オリフィス通路
31 オリフィス
32 バリアプブルリークバルブ
40 ポペット
41 パルスドバルブ
42 ソレノイド
43 原料ガス
44 ノズル
45 反応室壁
46 原子ビーム照射軸
47 炭酸ガスレーザー
48 超熱原子ビーム

Claims (12)

  1. 第1の真空度に保持された第1の反応室内で、原子ビーム照射手段により超熱原子ビームを発生させ、
    第2の真空度に保持された第2の反応室内で、アークプラズマ発生手段により金属若しくは炭素を蒸発させターゲットに蒸着させる工程と同時に、
    前記原子ビームを前記第1の反応室からオリフィス通路を通して前記第2の反応室の前記ターゲットに照射させる工程を備え、
    前記ターゲット表面に炭化物、窒化物、炭窒化物若しくは酸化物のいずれかの金属化合物薄膜を作製する薄膜作製方法。
  2. 前記原子ビーム照射手段は、レーザーデトネーション法を用いて、超熱窒素原子ビーム、超熱炭素原子ビーム、超熱酸素原子ビームの少なくとも1種を発生させるものであることを特徴とする請求項1に記載の薄膜作製方法。
  3. 前記アークプラズマ発生手段が、アークプラズマガンを用いて、アークプラズマをパルス状に発生させ、Ti、Zr、Hf、Ta、若しくはCの群から選択されたものを蒸発させるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜作製方法。
  4. 前記第1の真空度を10−3〜10−6Paとし、前記第2の真空度を10−6〜10−8Paとすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜作製方法。
  5. 前記ターゲットが、300〜450℃の温度範囲内に制御されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薄膜作製方法。
  6. 前記ターゲットがダイヤモンドからなる鋭利刃先であり、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の薄膜作製方法を用いて、ダイヤモンド表面に薄膜が形成された鋭利刃先工具。
  7. 第1の真空度に保持された第1の反応室と;第2の真空度に保持された第2の反応室と;前記第1の反応室と前記第2の反応室を連通するオリフィス通路と;前記第2の反応室内に設置されたターゲットと;前記第1の反応室内に設置され、超熱原子ビームを発生させ前記オリフィス通路を通して前記ターゲットに照射する原子ビーム照射手段と;前記第2の反応室内に設置され、金属若しくは炭素を蒸発させ前記ターゲットに蒸着させるアークプラズマ発生手段と;を備え、前記ターゲット表面に炭化物、窒化物、炭窒化物若しくは酸化物のいずれかの金属化合物薄膜を作製する薄膜作製装置。
  8. 前記原子ビーム照射手段は、レーザーデトネーション法を用いて、超熱窒素原子ビーム、超熱炭素原子ビーム、超熱酸素原子ビームの少なくとも1種を発生させるものであることを特徴とする請求項7に記載の薄膜作製装置。
  9. 前記アークプラズマ発生手段が、アークプラズマガンを用いて、アークプラズマをパルス状に発生させ、Ti、Zr、Hf、Ta、若しくはCの群から選択されたものを蒸発させるものであることを特徴とする請求項7又は8に記載の薄膜作製装置。
  10. 前記第1の真空度を10−3〜10−6Paとし、前記第2の真空度を10−6〜10−8Paとすることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の薄膜作製装置。
  11. 前記ターゲットが、300〜450℃の温度範囲内に制御されることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の薄膜作製装置。
  12. 前記原子ビーム照射手段におけるパルスドバルブが、原子ビームの照射軸と非共軸となるように配設されたことを特徴とする請求項8に記載の薄膜作製装置。
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