JP2008120918A - 耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料及びその製造方法 - Google Patents

耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料及びその製造方法 Download PDF

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大作 前田
Keijiro Shigeru
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Abstract

【課題】耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料及びその製造方法の提供。
【解決手段】基体表面上に、水ガラス硬化体被膜を形成し、この被膜に硫酸アルミニウム水溶液を接触させ、さらに熱処理を施して、水ガラス硬化体被膜の少なくとも表面層部分中に、珪酸アルミニウムを生成し、かつ固定する。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料及びその製造方法に関するものである。
水ガラスは、硬度に優れたガラス質被膜の形成原料として有用な材料であり、またその硬化体からなる被膜(本発明において、「水ガラス硬化体被膜」という)は高い親水性を有するために、防汚コート材、易洗浄コート材としても注目されている。
しかし、水ガラス硬化体被膜は耐水性が弱く、特に熱水環境下では、急速に溶解していくために、長期間の使用に適さないという問題点があった。
このような水ガラス硬化体被膜の耐水性を改善する技術としては、水ガラスに直接、樹脂成分を添加する方法(特開平7−34029)、リン酸塩を添加する方法(特開平9−328351)、及びアルコキシシランを添加する方法(特開平8−188442)が知られている。
しかし、これらの方法のように、直接水ガラスに耐水性を改善する添加剤を添加すると、これらの材料が水ガラスとのゲル化反応を進行させるために、水溶液として不安定になり長期間の保存に適さなくなり、その結果、産業上の実用に適さなくなるという問題点があり、また十分な耐水性を与える程度に、添加材料の添加比率を上げると、得られる水ガラス硬化体被膜の特質である親水性が大きく損なわれるという欠点があった。
特開平7−34029号公報 特開平9−328351号公報 特開平8−188442号公報
本発明は、少なくとも表面部分に珪酸アルミニウムを含有する水ガラス硬化体被膜により被覆され、耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料、及びその製造方法を提供しようとするものである。
本発明者は、上記従来の技術が有する問題点を解決するべく鋭意検討した結果、水ガラスの硬化体被膜に、硫酸アルミニウム水溶液を接触させ、熱処理することにより、前記水ガラス硬化体被膜の少なくとも表面層部分に珪酸アルミニウムを形成・含有させることにより、水ガラス硬化体被膜の耐水性を大幅に向上させ得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料は、基体と、その表面上に形成された水ガラス硬化体被膜を含み、前記水ガラス硬化体被膜の少なくとも表層部分に、珪酸アルミニウムが含有されていることを特徴とするものである。
本発明の耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料において、前記珪酸アルミニウム含有表層部分の厚さは、その表面から0.01〜2μmの範囲内にあることが好ましい。
本発明の耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料は、前記基体と表面と前記水ガラス硬化体被膜との間に形成され、かつ、シリカとジルコニアとを含む下塗層をさらに含んでいてもよい。
本発明の耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料の製造方法は、基体表面上に水ガラスの水溶液を塗布し、この水ガラス水溶液塗布層を第1熱処理を施して水ガラス硬化体被膜を形成し、この水ガラス硬化体被膜に、硫酸アルミニウム水溶液を接触させた後、これに第2熱処理を施して、珪酸アルミニウムを、前記水ガラス硬化体被膜の少なくとも表面層部中に生成し、固定することを特徴とするものである。
本発明の耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料の製造方法において、前記水ガラス水溶液中の水ガラスの濃度が、前記水ガラス中にその構成成分として含まれる金属の酸化物の合計量に換算して、1〜50質量%の範囲内にあることが好ましい。
本発明の耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料の製造方法において、前記硫酸アルミニウム水溶液中の硫酸アルミニウムの濃度が0.5〜10質量%の範囲内にあることが好ましい。
本発明の耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料の製造方法は、前記基体表面上に前記水ガラス硬化体被膜を形成する前に、オルガノシロキサンと、ジルコニウムアルコキシドと、酸とを含む溶液を前記基体表面上に塗布し、この溶液塗布層を乾燥熱処理して、シリカとジルコニアを含む下塗層を形成する工程をさらに含んでいてもよい。
本発明の水ガラス硬化体被覆材料において、その耐水性、及び膜強度が大幅に改善されており、そのため、膜は長期間の熱水環境下においても水ガラスの特質である親水性を保持することができる。
また、本発明の耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料の製造方法は、比較的低い熱処理温度において、耐水性、親水性に優れた被膜を形成することができるので、耐熱性が充分でない基材表面上にも上記の特性を備えた親水性被膜を容易に形成することが可能になる。また本発明方法に用いる塗布液には、水ガラス溶液には、その耐水性を改善する添加剤が添加されていないので、塗布用水ガラス溶液の貯蔵性を損なうことがなく、上記の耐水性に優れた親水性被膜を廉価に形成することができる。
「親水性被膜」
本項以降において用いられる用語「耐水・親水性被膜」は、下記に詳述する「耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料の製造方法」において、成膜された被膜を意味し、基本的には、基板表面上に形成された水ガラス硬化体被膜の少なくとも表面層部分に、珪酸アルミニウムが含有されていて、それによって優れた耐水性及び親水性を発揮するものである。
本発明において、「耐水・親水性被膜」は、例えば、一般式:M2O・nSiO2(但し、Mはアルカリ金属原子を表し、nは2.0〜4.1の範囲内の正数を表す)で示される珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム又はこれらの混合物を含む塗布液層を熱処理して硬化させた被膜の少なくとも表層部に珪酸アルミニウムを含有させたものであり、この水ガラス硬化体被膜中の、この珪酸アルミニウム分布濃度は、その表面から遠くなる程低下する。
前記珪酸アルミニウムは、前記水ガラス硬化体被膜中の水ガラスと硫酸アルミニウムとの反応により生成したものであり、この珪酸アルミニウムが水ガラス硬化体の少なくとも表面層部に含まれていることにより、水ガラス硬化体被膜の耐水性が大幅に改善され、この耐水・親水性被膜は長期間の熱水環境下でも水ガラス硬化体被膜の特質である親水性を保持することができる。
水ガラス硬化体被膜の耐水性が改善され、かつその親水性が保持される理由は、必ずしも明確ではないが、下記のように考えられる。
即ち、珪酸アルミニウムは、水ガラス硬化体と比較して、水への溶出性が低く、珪酸アルミニウムが水ガラス硬化体被膜の少なくとも表層部中に含まれ、かつ表層部表面に最も高い濃度で分布していることにより、水ガラス硬化体の水中溶出を制御するものと思われる。硫酸アルミニウムによる処理を施した直後は、水ガラス硬化体被膜の親水性が一時的に低下した状態となることがあるが、水に接触する環境下では、例えば、下記式:
3SiO2・Al23+nH2O→3SiO2・Al23・nH2
で示される水和反応が進行することにより、水ガラス硬化体被膜の親水性が次第に回復増加する。
水ガラス硬化体被膜の厚さは0.1〜2μmの範囲内にあることが好ましく、0.2〜1μmであることがより好ましい。前記水ガラス硬化体被膜の厚さが0.1μmを下回ると膜強度が不足し、一方、それが2μmを上回ると基材と水ガラス硬化体被膜との密着性が低下し、水ガラス硬化体被膜にクラックが入りやすくなるので好ましくない。
前記珪酸アルミニウムを含む表面層部分の、前記耐水・親水性被膜表面からの厚さは0.01〜0.2μmの範囲内にあることが好ましく、0.05〜0.2μmであることがより好ましい。前記の珪酸アルミニウムを含む表面層部分の厚さが0.01μmを下回ると得られる耐水・親水性被膜の耐水性改善効果、親水性保持効果が十分に達成されないことがあり、一方、それが0.2μmを超えて厚くなっても耐水性改善効果及び親水性保持効果は飽和して向上せず却って経済的に不利になることがある。
前記の珪酸アルミニウムを含む表面層部分の、その表面からの厚さは、例えば、GDMS法(グロー放電質量分析法)によりアルミニウム含有量(Al)を測定することにより、定めることができる。
また、前記水ガラス硬化体被膜と前記基体との密着性をさらに向上させるためには、例えば、前記基体がプラスティック等の有機材料からなる場合には、前記水ガラス硬化体被膜と密着しやすい下塗層を、前記の基材表面と前記の親水性被膜との間に設けてもよく、このようにすることが好ましい。
前記下塗層としては、例えば、シリカとジルコニアとを含む被膜を用いることが好ましい。
前記のシリカとジルコニアとを含む被膜としては、例えば、下記の(1)〜(4)のような被膜形成物質またはその混合物質を包含するものであることが好ましい。
(1)珪素(Si)原子とジルコニウム(Zr)原子が酸素(O)原子を介して結合して形成され、かつ下記(式1)で示される構造を含み、例えば下記(式2)で示される化学結合構造を分子骨格中に有する珪素−ジルコニウム酸化物から構成され、かつこの珪素−ジルコニウム酸化物が、三次元網目構造を形成してなる被膜形成物質。
Figure 2008120918
(2)珪素(Si)原子同士が酸素(O)原子を介して結合して、下記(式3)で示される化学結合構造を分子骨格中に有する珪素酸化物から構成され、この珪素酸化物が三次元網目構造を形成し、この三次元網目構造中に遊離ジルコニウム酸化物の微粒子が分散し閉じ込められている被膜形成物質。
Figure 2008120918
(3)ジルコニウム(Zr)原子同士が酸素(O)原子を介して結合して、下記(式4)で示される化学結合構造を分子骨格中に有するジルコニウム酸化物から構成され、このジルコニウム酸化物が三次元網目構造を形成し、この三次元網目構造中に遊離珪素酸化物の微粒子が分散し閉じ込められている被膜形成物質。
Figure 2008120918
(4)珪素酸化物微粒子とジルコニウム酸化物微粒子が互いに分散混合している被膜形成物質。
前記下塗層の厚さは0.05μm〜1μmの範囲内にあることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。前記下塗層の厚さが0.05μmを下回ると基体と水ガラス硬化体被覆との間の密着性が十分に改善されないことがあり、一方、それが1μmを上回るとクラックが入りやすくなることがあるので好ましくない。
「本発明方法」
本発明の耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料の製造方法は、基体表面上に水ガラス溶液を塗布し、この水ガラス水溶液塗布層に熱処理(以下これを「第1熱処理」と表す)して水ガラス硬化体からなる被膜を形成する工程と、この被膜上に硫酸アルミニウム水溶液を接触させた後、これに、熱処理(以下、これを「第2熱処理」と表す)して前記水ガラス硬化体被膜の少なくとも表層部中に、珪酸アルミニウムを生成し、固定する工程とを含むものである。
本発明の製造方法に用いる水ガラスには、格別の制限はなく、例えば、一般式M2O・nSiO2(Mはアルカリ金属原子を表し、nは2.0〜4.1の範囲内の正数)で示される珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム又はこれらの混合物を好適に使用することができる。このような組成を有する水ガラスの塗布膜を熱処理して硬化させると、例えば、シリカ(SiO2)成分を60〜95質量%含み、かつ水(H2O)を、結晶水として0.5〜30質量%含み、残余分がアルカリ金属酸化物から構成された硬化体被膜が形成される。
前記の水ガラス溶液中の水ガラスの濃度は、前記水ガラスを構成する金属の酸化物の合計量に換算して、1〜50質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
前記水ガラス濃度が1質量%を下回ると、得られる水ガラス硬化体被膜の強度が不十分になることがあり、一方、それが50質量%を上回ると耐水性水ガラス硬化体被膜の膜厚が過大となり、クラックが生じやすくなることがあるので好ましくない。
前記の基体にも格別の制限はなく、例えば、ガラス、陶磁器、琺瑯、コンクリート、石材等の無機材料からなる基材、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅等の金属材料からなる基材、並びにプラスチック、繊維等の有機材料からなる基材等からなるものを包含する。
前記水ガラス溶液の基材表面上への塗布方法にも、格別の制限はなく、ディップ法、スプレー法、刷毛塗り法などの公知の方法を採用することができる。
前記第1熱処理における熱処理温度、熱処理時間は、基材に悪影響を与えない範囲内で、可能な限り高温でかつ長時間熱処理することが、水ガラス硬化体被膜の膜強度及び耐水性を高くするために好適であるが、乾燥程度の熱処理温度で、短時間の熱処理でもあってもよい。
具体的な第1熱処理温度は、通常、基体がガラス等の無機製品のときは、室温〜500℃であることが好ましく、より好ましくは80℃〜500℃であり、基体がプラスチックのときは、室温〜150℃であることが好ましく、より好ましくは80℃〜120℃であり、基体が金属のときは、室温〜300℃であることが好ましく、より好ましくは80℃〜300℃である。
第1熱処理時の雰囲気には特に限定はなく、通常、大気雰囲気中で施される。
前記硫酸アルミニウム水溶液中の硫酸アルミニウム濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。
前記硫酸アルミニウム水溶液中の硫酸アルミニウム濃度が0.5質量%を下回ると、第2熱処理に要する時間を長くする必要を生ずることがあり、また、十分な量のアルミニウムを水ガラス硬化体表面層部分中に固定できなくなることがある。一方、前記硫酸アルミニウム水溶液中の硫酸アルミニウム濃度が10質量%を上回っても、耐水性向上効果は飽和してより一層の向上はなく、却って経済的に不利になることがある。
前記硫酸アルミニウム水溶液と基体との接触方法には、特に制限はなく、例えば、ディップ法、スプレー法、刷毛塗り法などの公知の方法を採用できるが、ディップ法は水ガラス硬化体被膜の表面全体に最も均一に珪酸アルミニウムを形成するために有効である。
前記硫酸アルミニウム水溶液と、前記水ガラス硬化体被覆表面との接触との後、かつ第2熱処理の前に、前記接触を3〜10分間程度保持することが好ましく、このようにすると、水ガラス硬化体被膜表面層部分中に珪酸アルミニウムの形成・固定を促進することができる。このような効果を生ずる機構は、必ずしも明確ではないが、上記接触保持時間中に、硫酸アルミニウム水溶液は水ガラス硬化体被膜の表面層部中の水ガラスと接触し、反応して、珪酸アルミニウムを生成し、この珪酸アルミニウム生成反応は、接触温度、一般には常温においても、効率よく進歩するものと考えられる。
前記第2熱処理における熱処理温度及び熱処理時間は、基材に悪影響を与えない範囲内で可能な限り高温で、長時間熱処理することにより高い耐水性及び親水性を有する珪酸アルミニウム含有水ガラス硬化体被覆を形成するために好適である。
具体的な熱処理温度は、通常、基体がガラス等の無機製品のときは、室温〜500℃であることが好ましく、より好ましくは80℃〜500℃であり、基体がプラスティックのときは、室温〜150℃であることが好ましく、より好ましくは80℃〜120℃であり、基体が金属のときは、室温〜300℃であることが好ましく、より好ましくは80℃〜300℃である。
第2熱処理の雰囲気は特に限定されず、通常、大気雰囲気中で行う。
前記第2熱処理の作用機構については、必ずしも明確ではないが、この第2熱処理により、前記珪酸アルミニウムの生成反応が完結し、生成した珪酸アルミニウムが、水ガラス硬化体被膜中に浸透・拡散し、少なくとも表面層部分中に固定される。
尚、硫酸アルミニウム水溶液と、前記水ガラス硬化体被膜との接触工程の後、前記第2熱処理とまたその間に、前記水ガラス硬化体被膜上の硫酸アルミニウム水溶液の過剰分を、拭き取り、又は絞りにより除去してもよく、或は水洗除去してもよく、また第2熱処理後に、前記珪酸アルミニウム含有表面層部分の表面上の残渣を、水洗除去してもよい。
また、前記の水ガラス硬化体被膜と、前記基体との密着性をさらに向上させるためには、例えば、前記基体がプラスティック等の有機材料からなる場合には、オルガノシロキサンと、ジルコニウムアルコキシドと、さらに硝酸等の酸を含む塗布液を基材表面上に塗布し、好ましくは室温〜150℃、より好ましくは80℃〜120℃の温度下で熱処理(以下第3熱処理と表す)し、その熱処理生成物として、シリカとジルコニアを含む被膜からなる下塗層を形成してもよい。熱処理条件(温度、時間)及び塗布液組成に応じて、上記(1)〜(4)のいずれかの被膜形成物質からなる下塗層が形成される。第3熱処理の雰囲気には、限定はなく、通常、大気雰囲気中で施される。
本発明において、下塗層の形成に用いられるオルガノシロキサンは、例えば、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランなどのシリコンアルコキシド、その縮合体、オルガノシラン及びその縮合体を包含する。またジルコニウムアルコキシドは、例えは、ジルコニウムテトラプロポキシド及びジルコニウムテトラブトキシドなどを包含する。
本発明を、下記実施例により更に説明する。
実施例1
寸法50mm×100mm×0.8mmのステンレス304鋼板(ヘアライン研磨板)の表面を、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、更にイソプロピルアルコールで洗浄し、十分乾燥させて基体を準備した。
JIS3号珪酸ナトリウムを、蒸留水で20質量%濃度(前記水ガラス中に構成元素として含まれる金属の合計量の酸化物換算量)に希釈して得た水ガラス水溶液中に、前記のステンレス基体を2分間浸漬させた後、引き上げ、室温で10分間乾燥させた後、設定温度150℃の乾燥器(大気雰囲気)内で10分間第1熱処理を施して、水ガラス硬化体被膜(厚さ0.3μm)付き基板を作製した。
別に、硫酸アルミニウム9水和物を50℃の蒸留水に添加し、この温度を維持しながら攪拌して、1.5質量%の硫酸アルミニウム水溶液を調製した。
この硫酸アルミニウム水溶液中に、前記の水ガラス硬化体被膜付き基板を5分間浸漬し、再び引き上げて、設定温度150℃の乾燥器(大気雰囲気)内で60分間の第2熱処理を施して、前記水ガラス硬化体被膜と前記硫酸アルミニウムとを反応させて前記水ガラス硬化体被膜の表面層部分に珪酸アルミニウムを生成・固定して、珪酸アルミニウムを表面層部分中に含む水ガラス硬化体被膜を形成した。
この被膜の表面を電子線マイクロアナライザー法で分析したところ、珪素とアルミニウム元素が検出された。また、別途、この被膜付き基板の被膜表面をGDMS法で分析したところ、表面から0.05μmの深さまで、珪素とアルミニウム元素が検出された。
比較例1
実施例1に記載のものと同じ鋼板からなる基板を、実施例1で用いたものと同一の水ガラス水溶液中に2分間浸漬させた後、引き上げ、室温で10分間乾燥させた後、設定温度150℃の乾燥器(大気雰囲気)内で70分間の第1熱処理を施して、水ガラス硬化体被膜(厚さ0.3μm、硫酸アルミニウム処理なし)付き鋼板を作製した。
実施例2
73.5gのイソプロピルアルコールに、10gのテトラエトキシシランを溶解した。この溶液をよく攪拌しながら、30質量%濃度の硝酸水溶液2.5gを10分間かけて滴下し、その後室温で6時間攪拌した。
得られた混合液をビーカーに入れ、これを水浴(温度25℃)に浸し、前記混合液中にジルコニウムテトラブトキシド9gを2分かけて滴下し、さらに、60質量%の硝酸水溶液5gを20分かけて滴下した。
得られた混合液を室温で6時間攪拌した後、この溶液25gに、さらにイソプロピルアルコール65gとブチルセロソルブ10gとを加えて下塗液を調製した。
前記下塗液を、市販アクリル板(住友化学工業(株)製、スミペックスE)表面にスプレーで塗布し、大気雰囲気下、80℃で60分間の第3熱処理を施して下塗層(厚さ0.2μm)付き基板を作製した。
JIS3号珪酸ナトリウムを蒸留水で10質量%濃度(前記水ガラスに含まれる金属の合計量の酸化物量)に希釈し調製した水ガラス水溶液を、前記の基板上の下塗層表面に刷毛塗り法により塗布した後、大気雰囲気下、80℃の温度下で10分間の第1熱処理を施こし、基板上に、水ガラス硬化体被膜(厚さ0.3μm)を形成した。
この水ガラス硬化体被膜付き基板を、実施例1と同一の硫酸アルミニウム水溶液中に5分間浸漬し、引き上げ、設定温度80℃の乾燥器(大気雰囲気)内で60分間の第2熱処理を施して、前記水ガラス硬化体被膜と前記硫酸アルミニウムとを反応させて、前記水ガラス硬化体被膜の表面層部分に珪酸アルミニウムが生成・固定されている被膜を形成した。
この被膜付き基板の被膜表面を電子線マイクロアナライザー法で分析したところ、珪素とアルミニウム元素が検出された。また、別途、この被膜付き基板の被膜表面をGDMS法で分析したところ、表面から0.05μmの深さまで、珪素とアルミニウム元素が検出された。
比較例2
実施例2と同様にして、水ガラス硬化体被膜(厚さ0.3μm、硫酸アルミニウム処理なし)付き基板を作製した。
「評価」
実施例1の表面層部分に珪酸アルミニウムを含む、水ガラス硬化体被膜付き基板及び比較例1の水ガラス硬化体被膜付き基板は、これらを、80℃の水道水中に浸漬し、浸漬前、24時間浸漬後及び3日浸漬後に、下記評価項目(1)〜(4)について評価した。
また、実施例2の表面層部分に珪酸アルミニウムを含む、水ガラス硬化体被膜付き基板及び比較例2の水ガラス硬化体被膜付き基板を、80℃の水道水に浸漬して、浸漬前、1週間浸漬後、及び3週間浸漬後に、下記評価項目(1),(2),(4),(5)について評価した。
「評価項目、評価方法」
評価項目は、(1)被膜の外観観察、(2)水の接触角測定、(3)マカデミアンナッツオイルの洗浄試験、(4)メラミンフォームの摩耗試験、(5)人工石鹸カスの洗浄試験であり、試験方法は下記のとおりであった。
(1)被膜の外観観察
80℃温水に浸漬して、被膜外観を目視観察して評価した。
(2)水の接触角測定
80℃温水に浸漬した後、純水を使用して被膜表面の静的接触角を測定した。
協和界面科学社製ドロップマスターを使用し、JISR352に準拠して、供試被膜表面の、水の静的接触角を測定した。
(3)マカデミアンナッツオイルの洗浄試験
マカデミアンナッツオイル0.5ccを供試被膜表面に滴下し、これを流水を1分間流して洗浄できるか否かを判定した。
(4)メラミンフォームの摩耗試験
500gf/cm2の圧力下で供試被膜表面をメラミンスポンジで500回摩耗して被膜の外観の変化を目視により判定した。
(5)人工石鹸カスの洗浄試験
水道水1リットルにラウリン酸ナトリウム20gを分散させ、この石鹸液に、塩化カルシウム8gを溶かして作製した液体に試験片を浸漬して引き上げ、12時間自然乾燥した後に、被膜表面を流水で洗浄して、被膜表面の石鹸カスが除去できるか目視により判定した。
評価結果を表1及び表2に示す。
表1に示されているように、実施例1の表面層部分に珪酸アルミニウムを含む水ガラス硬化体被膜付き基板は、浸漬前、浸漬24時間後、及び浸漬3日後の外観において、変化は認められず、水の接触角は初期が40°であった比較例1の測定値20°より大きかったが、浸漬後1週間で30°に低下し、3週間後もそれを保持した。
マカデミアンナッツオイルの洗浄試験とメラミンフォームによる摩耗試験において、実施例1の被覆は、浸漬前、1週間後、3週間後ともに良好(被膜の摩滅なし)であった。
一方、表1に示されているように、比較例1の水ガラス硬化体被膜付き基板は、80℃温水浸漬試験において、被膜の外観が、24時間後には薄くなり、3日後には温水中溶解してしまって残存していなかった。また、その初期の純水接触角は20°で、実施例1より小さかったが、浸漬後24時間で40°に増大し、3日後に60°に増大して実施例1の被膜より大きくなり、親水性が低下した。またマカデミアンナッツオイルの洗浄試験においては、初期では洗浄可能であったが、温水浸漬後24時間後には洗浄不可になった。また、温水浸漬24時間後、3日後にはメラミンフォームによる摩耗試験により、外観の変化(被膜の摩滅)が認められるようになった。
Figure 2008120918
表2に示されているように、実施例2の表面層部分に珪酸アルミニウムを含む水ガラス硬化体被膜付き基板は、80℃温水浸漬前と浸漬1週間後、3週間後の外観の変化は認められず、水の接触角は初期が40°で、比較例2より大きかったが、浸漬後1週間で30°に低下し、3週間後もそれを保持した。人工石鹸カスの洗浄試験とメラミンフォームによる摩耗試験は、浸漬前、1週間後、3週間後ともに良好であった。
一方、表2に示されているように、比較例2の水ガラス硬化体被膜付き基板は、80℃温水浸漬後の被膜の外観は、温水浸漬1週間後には薄くなった。初期の水接触角は20°で、実施例2より小さかったが、浸漬後1週間後で40°、3週間後に60°と実施例2より大きくなり、親水性の低下が認められた。また人工石鹸カスの洗浄試験において、初期では洗浄が可能であったが、温水浸漬後1週間後には洗浄不可になった。また、温水浸漬1週間後、3週間後にはメラミンフォームによる摩耗試験により、外観の変化が認められるようになった。
Figure 2008120918
表1及び表2に示されているように、本発明に係る実施例1及び2の表面層部分に珪酸アルミニウムを含む水ガラス硬化体被膜は、比較例の水ガラス硬化体被膜に比較して、耐水性、膜強度が大幅に改善されており、この親水性被膜は長期間の熱水環境下においても水ガラスの特質である親水性を保持している。また、用いる塗布液(水ガラス溶液)には、耐水性を改善する添加剤が添加されていないので、水ガラス溶液の貯蔵性を損なうことがない。

Claims (7)

  1. 基体と、その表面上に形成された水ガラス硬化体被膜を含み、前記水ガラス硬化体被膜の少なくとも表面層部分に、珪酸アルミニウムが含有されていることを特徴とする耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料。
  2. 前記珪酸アルミニウム含有表面層部分の厚さは、その表面から0.01〜2μmの範囲内にある、請求項1に記載の耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料。
  3. 前記基体の表面と前記水ガラス硬化体被膜との間に形成され、かつ、シリカとジルコニアとを含む下塗層をさらに含む、請求項1または2に記載の耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料。
  4. 基体表面上に水ガラスの水溶液を塗布し、この水ガラス水溶液塗布層を第1熱処理を施して水ガラス硬化体被膜を形成し、この水ガラス硬化体被膜に、硫酸アルミニウム水溶液を接触させた後、これに第2熱処理を施して、珪酸アルミニウムを、前記水ガラス硬化体被膜の少なくとも表面層部中に生成し、固定することを特徴とする、耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料の製造方法。
  5. 前記水ガラス水溶液中の水ガラスの濃度が、前記水ガラス中にその構成成分として含まれる金属の酸化物の合計量に換算して、1〜50質量%の範囲内にある、請求項4に記載の耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料の製造方法。
  6. 前記硫酸アルミニウム水溶液中の硫酸アルミニウムの濃度が0.5〜10質量%の範囲内にある、請求項4または5に記載の耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料の製造方法。
  7. 前記基体表面上に前記水ガラス硬化体被膜を形成する前に、オルガノシロキサンと、ジルコニウムアルコキシドと、酸とを含む溶液を前記基体表面上に塗布し、この溶液塗布層を乾燥熱処理して、シリカとジルコニアを含む下塗層を形成する工程をさらに含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載の耐水性及び親水性に優れた水ガラス硬化体被覆材料の製造方法。
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