JP2008118831A - 金属黒鉛質ブラシ - Google Patents
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Abstract
【課題】より一層の高温高湿環境特性が要求される分野において用いられるような金属黒鉛質ブラシにおいて、金属の酸化劣化により、モータ特性が低下することを防ぐと共に、同時に寿命向上を図る。
【解決手段】本発明の黒鉛に金属及び潤滑剤を添加した金属黒鉛質ブラシは、ビスマス又は酸化ビスマスを、1.0wt%〜3.0wt%の範囲で添加する。この金属は銅であり、潤滑剤は二硫化モリブデンである。
【選択図】図3
【解決手段】本発明の黒鉛に金属及び潤滑剤を添加した金属黒鉛質ブラシは、ビスマス又は酸化ビスマスを、1.0wt%〜3.0wt%の範囲で添加する。この金属は銅であり、潤滑剤は二硫化モリブデンである。
【選択図】図3
Description
本発明は、小型モータに用いられる、黒鉛に金属及び潤滑剤を添加した金属黒鉛質ブラシに関する。
従来より、金属黒鉛質ブラシ(カーボンブラシ)は小型モータに用いられている(特許文献1参照)。図13は、このような一般的な小型モータを例示する要部縦断面図(A)及びそのA−Aラインで切断した断面図(B)である。図示したように、有底中空筒状に形成された強磁性の金属材料により形成されたケースの内周面に、永久磁石を固着する。ケース内には,永久磁石に対向する電機子と整流子とからなる回転子を介装し得るように構成する。ケースの開口部には、ケースキャップが嵌着される。導電性材料によって形成されるブラシアームの先端部に、カーボンブラシが整流子と摺動係合され得るように設けると共に,このブラシアームと電気的に接続されてなる入力端子と共にケースキャップに設けられる。回転子のシャフトは、ケース及びケースキャップにそれぞれ設けられた軸受によって回転自在に支持されている。
このような小型モータに用いられる従来のカーボンブラシ(金属黒鉛質ブラシ)の組成は、黒鉛、金属(主に銅)、潤滑剤(主に二硫化モリブデン)であり、寿命及び経時性に優れていた。しかし、近年、自動車電装用途などの分野においてより一層の高温高湿環境特性が要求されるようになった。高温高湿環境においては、ブラシの酸化劣化によりモータ特性が低下することになる。ブラシの酸化劣化を防いでモータ特性の低下を防ぐと共に、同時に寿命向上を図ることが求められている。
特許文献2或いは特許文献3は、ビスマスを添加した銅カーボン質ブラシを開示する。しかし、特許文献2に記載のような微量のビスマス添加量(0.005〜0.05wt%程度)では、近年の高温高湿環境特性を満足できないことが分かった(後述する図3参照)。また、特許文献3は、ビスマスを添加することの記載があるのみで、その配合割合などの具体的なことを何ら開示しない。
特開平7−59299号公報
特開2001−327127号公報
特開2003−272795号公報
本発明は、係る問題点を解決して、より一層の高温高湿環境特性が要求される分野において用いられるような金属黒鉛質ブラシにおいて、金属の酸化劣化により、モータ特性が低下することを防ぐと共に、同時に寿命向上を図ることを目的としている。
本発明の黒鉛に金属及び潤滑剤を添加した金属黒鉛質ブラシは、ビスマス又は酸化ビスマスを、1.0wt%〜3.0wt%の範囲で添加したことを特徴としている。また、この金属は銅であり、潤滑剤は金属硫化物とすることができる。
本発明によれば、高温環境下で金属(銅)の酸化を低減できるために経時後の特性低下(始動電圧上昇)を抑え、かつ固有抵抗値を低くして、寿命の低下を防ぐことができるだけでなく、ブラシ摩耗及び整流子摩耗についても十分に良好な結果を示すことができる。
また、本発明によれば、カーボンブラシ製造工程中の配合工程で金属(銅)、黒鉛などと同時に適量のビスマス(Bi)又は酸化ビスマス(Bi2O3)を添加するだけで、その他の製法が大きく変わることも、カーボンブラシとして外形・特性が大きく変化することもないので、従来のモータ構成を変更すること無く、そのまま適用可能である。
本発明は、カーボンブラシの中にビスマス(Bi)又は酸化ビスマス(Bi2O3)を1.0wt%〜3.0wt%の範囲で添加して、カーボンブラシ内の金属(銅)の酸化を著しく抑制する。これによって、モータ特性が従来より著しく改善、すなわち始動電圧の上昇を抑制することができる。またブラシ及び整流子摩耗による寿命悪化もない。ビスマス(Bi)又は酸化ビスマス(Bi2O3)以外の金属黒鉛質ブラシ(カーボンブラシ)の組成は、金属(主に銅粉を20〜80wt%)、潤滑剤(主に二硫化モリブデンを1〜6wt%)、残り黒鉛である。当該金属は銅のみとすることもできるし、或いは銅を主成分として、リン青銅などの銅合金とか銀などの他の金属を追加することができる。潤滑剤は金属硫化物であり例えば二硫化モリブデンMoS2、二硫化タングステンWS2が該当する。
図1は高温高湿放置試験結果を示すグラフである。温度85℃、湿度95%の高温高湿環境中に、500時間(H)放置前後のモータ始動電圧を測定した結果を、グラフで表示している。二硫化モリブデンを添加しない場合と(MoS2 0%)、二硫化モリブデンを4%添加した場合と(MoS2 4%)、参考として鉛を1%添加した場合(Pb 1%+MoS2 4%)について、それぞれ放置前と放置後の始動電圧を対比して示している。なお、本明細書中で示す試験結果は全て、少なくとも5個のサンプルについて試験を行い、その平均値を中央にして、その上下にそれぞれバラツキの最大値、最小値を示している。
カーボンブラシ内に二硫化モリブデンが含まれると、高温高湿環境放置後の始動電圧が放置前に比較して上昇し、性能劣化が発生する。この二硫化モリブデンは、後述する図2に示されるように、カーボンブラシ摩耗を大幅に低減して寿命向上に効果があるので、添加せざるを得ない。なお、二硫化モリブデンと同様に二硫化タングステンでも同じ効果を有する。鉛を添加すると、始動電圧の上昇を抑えることができるが、鉛は環境負荷物質のため、現在は使用できない。なお、始動電圧は、低いほど望ましく、図1の試験結果に見られるように、高温高湿環境放置前であれば0.5(V)程度で始動することができる。
図2は、摩耗試験結果を示す図である。モータには負荷(ファン)を連結して常温常湿の環境中で、3秒正転−5秒オフ−3秒逆転−5秒オフを1サイクルとして、15,000サイクル運転後に、ブラシ摩耗量を測定した。図中の+、−はそれぞれ、+電源側及び−電源側のブラシを示している。二硫化モリブデンを添加(MoS2 4%)することにより、カーボンブラシ摩耗が大幅に低減されることが分かる。
図3は、4wt%の二硫化モリブデンの添加に加えて、ビスマス(Bi)又は酸化ビスマス(Bi2O3)を添加したブラシを用いるモータについての高温高湿放置試験結果を示す図である。図3に示すグラフの横軸に、ビスマス(Bi)、酸化ビスマス(Bi2O3)、又は鉛Pb(参考)の添加量(wt%)を示し、縦軸に始動電圧を示している。図1と同様に、温度85℃、湿度95%の高温高湿環境中に、500時間(H)放置後、モータ始動電圧を測定した結果を示している。
図3において、最左側に、ビスマス(Bi)、酸化ビスマス(Bi2O3)、鉛Pbをいずれも添加していない場合(0wt%)の始動電圧を示し、その右側に、ビスマス(Bi)の添加量0.1〜10wt%の場合、さらに、酸化ビスマス(Bi2O3)の添加量0.1〜10wt%の場合、そして、最右側に、鉛Pbを1.0wt%添加した場合の始動電圧を示している。図から分かるように、ビスマス(Bi)又は酸化ビスマス(Bi2O3)を1.0wt%以上添加する事により、500時間(H)放置した経時後の特性を改善して、始動電圧の上昇を抑えることができる。即ち、ビスマス又は酸化ビスマスの添加量を1.0wt%以上にすることにより、始動電圧のバラツキの最大値を6v程度に抑えることができることに加えて、始動電圧のバラツキ幅(最小値〜最大値の幅)が(添加量1%未満と比べると)小さいため、安定した性能を有するモータを大量生産するのに適する。上述したように、グラフにおいては、平均値を中央にして、その上下にバラツキの最大値、最小値を示している。また、経時後のブラシ状態を顕微鏡写真で確認すると、ビスマス(Bi)又は酸化ビスマス(Bi2O3)の無添加品は経時後の銅が著しく酸化劣化した状態が観察されたが、添加品に顕著な劣化は見られなかった。
また、図3から見られるように、ビスマス(Bi)又は酸化ビスマス(Bi2O3)を0〜0.5wt%程度添加しただけでは、始動電圧のバラツキ最大値が6vを大きく超えてしまい、高温高湿環境放置後の始動電圧の改善は見られない。これに加えて、始動電圧のバラツキ幅(最小値〜最大値の幅)が大きくなってしまい、安定した性能のモータを生産するには適していない。即ち、特許文献2が開示するビスマスの添加量0.005〜0.05wt%程度では、近年の高温高湿環境特性を満足することができない。
図4は、4wt%の二硫化モリブデンの添加に加えて、ビスマス(Bi)又は酸化ビスマス(Bi2O3)を添加したブラシの固有抵抗測定結果を示す図である。図4において、ビスマス(Bi)を記号“◆”で、酸化ビスマス(Bi2O3)を記号“□”で、それぞれ添加量0.1〜10wt%の場合の固有抵抗を示し、そして、鉛Pbを1.0wt%添加した場合の固有抵抗を記号“△”で示している。また、グラフ中の最左側に、ビスマス(Bi)、酸化ビスマス(Bi2O3)、鉛Pbをいずれも添加していない場合(0wt%)の固有抵抗を記号“●”で示している。図から分かるように、ビスマス又は酸化ビスマスの添加量が3.0wt%を超えてしまうと、固有抵抗値が急激に上昇する。固有抵抗値が高いと、モータ動作時の通電電流でブラシの発熱によるロスが大きくなる。これに対して、ビスマス又は酸化ビスマスの添加量を3%以下に抑えることにより、固有抵抗値は低く、モータ動作時の発熱が大きくなるということが生じない。
図3に示すように、ビスマス又は酸化ビスマスの添加量を1%以上にすることにより、始動電圧の最大値、及び始動電圧のバラツキを抑えることができる一方、図4に示すように、添加量を3%以下にすることにより、固有抵抗値を低くして、モータ動作時の発熱を抑えることが可能となる。
このように、ビスマス又は酸化ビスマスの添加量を1.0wt%以上で、3.0wt%以下とすることにより、高温高湿放置後の始動電圧特性及び固有抵抗値を改善することができるが、さらに、ビスマス又は酸化ビスマスをこの数値範囲で添加することにより、ブラシ摩耗及び整流子摩耗についても十分に良好な結果を示すことを、図5〜図12を参照して以下に説明する。
図5及び図6は、上述した図2と同様な条件で行ったブラシ摩耗試験結果を示す図である。モータには負荷(ファン)を連結して常温常湿の環境中で、3秒正転−5秒オフ−3秒逆転−5秒オフを1サイクルとして、15000(図5)及び10000(図6)サイクル運転後に、ブラシ摩耗量を測定した。図5は、ビスマス(Bi)を0wt%〜3wt%の範囲で添加したブラシ摩耗量を示し、図6は、ビスマス(Bi)を0wt%〜10wt%の範囲で添加したブラシ摩耗量を示している。ビスマス(Bi)を1wt%〜3wt%添加しても(図5)、ブラシ摩耗には悪影響がないことが分かる。
図7及び図8は、同様な試験を、整流子摩耗について行った結果を示すグラフであり、図7は、ビスマス(Bi)を0wt%〜3wt%の範囲で添加した整流子最大摩耗深さを示し、図8は、ビスマス(Bi)を0wt%〜10wt%の範囲で添加した整流子最大摩耗深さを示している。ビスマス(Bi)を1wt%〜3wt%なら悪影響はないが(図7)、5〜10wt%添加するとスリット部の摩耗が増加する。
図9〜図12は、酸化ビスマス(Bi2O3)を添加したブラシについて、図5〜図8(Bi添加)と同様に摩耗確認をした結果を示すグラフである。ブラシ摩耗については、図9及び図10に示されるように、酸化ビスマス(Bi2O3)を1wt%〜3wt%添加してもブラシ摩耗には悪影響がないことが分かる。また、整流子摩耗については、図11及び図12に示すように、酸化ビスマス(Bi2O3)を1wt%〜3wt%なら悪影響はないが、5〜10wt%添加するとスリット部の摩耗が増加する。
Claims (3)
- 黒鉛に金属及び潤滑剤を添加した金属黒鉛質ブラシにおいて、
ビスマス又は酸化ビスマスを、1.0wt%〜3.0wt%の範囲で添加したことを特徴とする金属黒鉛質ブラシ。 - 前記金属は銅である請求項1に記載の金属黒鉛質ブラシ。
- 前記潤滑剤は金属硫化物である請求項1に記載の金属黒鉛質ブラシ。
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