JP2008116256A - 物質分析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】試料の小容量化あるいは微量化に対応でき、かつ溶質分子の分離(分画)精度を向上できる簡易な物質分析技術を提供すること。
【解決手段】等電点電気泳動に基づいて溶媒中の溶質分子を分離する一次元分離工程と、前記一次元分離工程から得られる一次元分離溶液が導入された微細路(112)に遠心力を加えることによって、該微細路(112)内に沈降平衡時の分子量に依存した濃度勾配を形成する沈降平衡工程と、を少なくとも行う物質分析方法を提供する。
【選択図】図2
【解決手段】等電点電気泳動に基づいて溶媒中の溶質分子を分離する一次元分離工程と、前記一次元分離工程から得られる一次元分離溶液が導入された微細路(112)に遠心力を加えることによって、該微細路(112)内に沈降平衡時の分子量に依存した濃度勾配を形成する沈降平衡工程と、を少なくとも行う物質分析方法を提供する。
【選択図】図2
Description
本発明は、物質分析方法に関する。より詳細には、試料溶液中に含まれる複数種の溶質分子を二次元で分離する物質分析方法に関する。
試料溶液中に含まれる複数種の溶質分子をその性質や分子量に基づいて分離(分画)する方法として、「二次元電気泳動法」が知られている。この二次元電気泳動法は、広義には、順番に二つの方向(次元)へ電気泳動を行って溶質分子の分離・解析を行う方法を指すが、狭義には、等電点電気泳動を行い、続く二次元目にSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以下略称、SDS-PAGE)を行う方法を意味し、現在この方法は、特に、多種類のタンパク質の分離・分析に広く利用されている。
なお、等電点電気泳動は、pH勾配の存在下で溶質分子(両性電解質)を電気泳動すると等電点(電荷が0となる点)まで移動して止まって、各溶質分子が等電点の順に並ぶという原理であり、SDS-PAGEは、アクリルアミドとN,N’-メチレンビスアクリルアミドの混合溶液中で重合形成した分子ふるい中を、溶質分子にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を結合して分子量に対応する負電荷を与え、これにより陽極側へ移動させて分画する原理である。
近年では、二次元電気泳動法を基板上で行う技術が提案されている。例えば、第1の電気泳動分離媒体と第2の電気泳動分離媒体が互いに間隔をおいて形成された基板を用いて、第1の電気泳動分離媒体に電場を形成した後、この第1の電気泳動分離媒体の長手方向に対して垂直方向に電場を与えることにより、第2の分離媒体に分離する技術が提案されている(特許文献1参照)。
また、マイクロチップの分離チャンネルに泳動電場を形成し、微量のタンパク質試料を、分子量と等電点による分離を同時に行う二次元電気泳動法も提案されている(特許文献2参照)。
加えて、試料の小容量化・微量化の流れに対応する技術として、タンパク質(あるいはタンパク質相互作用)の網羅的解析を目的に、センサーチップ上に固定された分子と特異的に相互作用した微量のタンパク質を質量分析(MS)で解析する方法(非特許文献1)や動物細胞などへ発現させたエピトープタグ融合タンパク質と複合体を形成しているタンパク質群をエピトープに対する抗体ビーズを用いて分離生成し、これを質量分析によって網羅的に解析する方法も提案されている(非特許文献2)。
特開2006−162405号公報。
特開2004−150899号公報。
「プロテオーム解析法」(磯辺俊明、高橋信弘編)、羊土社、P190〜198。
「注目のプロテオミクスの全貌を知る!」(磯辺俊明、高橋信弘編)、羊土社、P46〜53。
上掲したような従来の二次元電気泳動技術は、実験時間が長いという基本的な問題を抱えている。また、同従来技術では、スポット位置からの同定ではゲルを用いる電気泳動の性質に起因する画像の歪みを是正することが困難であるという問題も抱えており、一次元目の等電点電気泳動や二次元目の電気泳動をキャピラリ内で行うように工夫したとしても、隣接スポットの混合やスポット位置の歪みを解決することが難しかった。また、質量分析を用いる技術では、分析機器のコストが高く、装置システムの小型化も難しいという問題がある。
そこで、本発明は、試料の少容量化(あるいは微量化)に対応でき、かつ溶質分子の分離(分画)精度を向上できる簡易な物質分析技術を提供することを主な目的とする。
本願発明者は、一次元目と二次元目の両方で電気泳動行う構成の従来の二次元電気泳動法から発想を大きく転換し、電気泳動を一次元のみとし、二次元目において遠心力による沈降平衡を行うという新規着想に基づいて、以下の本発明を完成させた。
まず、本発明は、等電点電気泳動に基づいて溶媒中の溶質分子を分離する一次元分離工程と、前記一次元分離工程から得られる一次元分離溶液が導入された微細路に遠心力を加えることによって、該微細路内に沈降平衡時の分子量に依存した濃度勾配を形成する沈降平衡工程と、を少なくとも行う物質分析方法を提案する。
また、基板に形成された等電点電気泳動路で前記一次元分離工程を行い、続いて、前記等電点電気泳動路に連通するように同基板に形成された微細路において前記沈降平衡工程を行う物質分析方法を提案し、この方法では、前記等電点電気泳動路から前記微細路への一次元分離溶液の移行を促進する工程を行うように工夫することもできる。
更に、同基板の等電点電気泳動路と微細路との連結部位に、溶媒の通過を制御可能な領域を設けておくことによって、等電点電気泳動路から微細路への溶媒の移行タイミングを人為的に制御できるようにしてもよい。
本発明に係る物質分析方法によれば、分離精度の高い物質分析を行なうことができる。
以下、本発明に係る方法の実施形態例について、添付図面を参照にしながら説明する。なお、図面に示された実施形態は、本発明の好適な実施形態を例示したものであり、これにより本発明が狭く解釈されることはない。
図1は、本発明に係る物質分析法を行なう手順を示したフロー図である。
まず、溶質分子を含む試料溶液を等電点電気泳動路に注入する(S1)。これにより、等電点電気泳動に基づいて溶媒中の溶質分子を分離する一次元分離工程が行なわれる(S2)。そして、一次元分離された試料溶液である一次元分離溶液を微細路に導入する(S3)。そして、遠心力を微細路に加える(S4)。これによって、該微細路内に沈降平衡時の分子量に依存した濃度勾配を形成する沈降平衡工程が行なわれる。これらの手順によって試料分析を行うことができる(S5)。
なお、本発明に係る物質分析法により分析できる物質の種類については特に限定されず、一次元分離工程と沈降平衡工程とで分離可能な物質であればよい。例えば、核酸やタンパク質や代謝物質等の種々の物質を分離分析することができる。
図2は、本発明に係る物質分析法を説明するための概略図である。
図2中の符号1は、一次元分離工程と沈降平衡工程とを行なう分析領域を示している。分析領域1は、等電点電気泳動路111と、該等電点電気泳動路111に連設された微細路である二次元目分離路112と、該二次元目分離路112に連設された回収流路113と、を有している。そして、等電点電気泳動路111に沿って移動コントロール流路114が設けられている。
更に、等電点電気泳動路111と二次元目分離路112との間には疎水性領域115が設けられている。二次元目分離路112と回収流路113との間にも疎水性領域116が設けられている。更に、等電点電気泳動路111と移動コントロール流路114との間にも疎水性領域117が設けられている。
この分析領域1では、溶液試料は矢印X1方向(図2参照)から等電点電気泳動路111に注入し(S1、図1参照)、一次元分離工程を等電点電気泳動路111上で行う(S2、図1参照)。一次元分離溶液を二次元目分離路112に導入し(S3、図1参照)、二次元目分離路112に矢印X2方向(図2参照)に遠心力を加える(S4、図1参照)。このようにして沈降平衡工程を行なうことで、試料溶液の分析を行なう。これにより得られた分離溶液は回収流路113において矢印X2方向や矢印X3方向(図2参照)に送ることで分析したり採取したりすることができる。
まず、一次元目分離について説明する。注入された溶液試料が注入された等電点電気泳動路111の正極と負極(図示せず)に対して印加することで、等電点電気泳動路111内には、正極側を酸性、負極側を塩基性としたpH勾配が形成される。これにより、試料中の溶質分子群はそれぞれの溶質分子の等電点に相当する泳動位置へフォーカシングされる。その結果、前記該等電点電気泳動路111上で試料中の個々の成分が展開されることで一次元目分離される。
このようにして、等電点電気泳動路111で一次元目分離された一次元分離溶液は、二次元目分離路112へ導入される(図2の矢印X2参照)。そして、二次元目分離路112において遠心力を利用した遠心分離法及び沈降平衡法による二次元目分離工程に供される。
「遠心分離法」においては、被分離物質の分子量に基づいた分離を行なう。一例としては、ショ糖濃度勾配遠心法がある。このショ糖濃度勾配遠心法によれば、二次元目分離路112内に、ショ糖溶液を充填し、遠心してショ糖濃度勾配を形成することで、該濃度勾配中において、非分離物質をそれぞれの分子量に基づいて分離することができる。このようにして、二次元目分離が行なわれた溶質分子群は、二次元目分離路112から分取され、例えば質量分析計による同定等の後段の解析に供することができる。
また、「沈降平衡法」は、溶媒中に存在する物質(溶質)を遠心力の作用によって沈降させて、この沈降力とこれに逆らう溶質の拡散力とが平衡(沈降平衡)した時における溶質の濃度分布を、干渉光学計あるいは光電走査装置などにより測定し、溶質の分子量を求める方法である。
この沈降平衡法で求められる分子量は、溶質の分子構造によらないのが特徴であり、高度に荷電している溶質であっても、精度よく分子量を計測することができる。従って、沈降平衡法は、等電点電気泳動後の二次元目分離工程に好適に採用することができる。従って、二次元目分離路112において行なう二次元目分離工程として好適な方法ということができる。沈降平衡法により分子量を計測された溶質分子は、分子量に基づく物質同定解析等の後段の解析に供することができる。
更に、前記等電点電気泳動路111から二次元目分離路112への一次元分離溶液の移行を促進する工程を別途行うこともできる。一次元分離溶液の移行を促進させる方法については特に限定されず、例えば、正圧押出、負圧吸引、又は親媒性原理によって制御可能な領域などを用いることができる。また、これらの複数の方法を組み合わせてもよい。
このうち、親媒性原理を利用する制御方法は、等電点電気泳動路111(一次元目分離路)と二次元目分離路112との接続部などに、試料の溶質分子の通過を親媒性原理によって制御可能な領域を設けて、等電点電気泳動路111から二次元目分離路への一次元分離溶液の移動を制御する方法である。
具体的には、前記接続部等を疎水性領域(図2の115等参照)としておき、親水性の溶質分子の通過を遮断しておく。そして、適切なタイミングで、前記疎水性領域を親水性へ変換して親水性の溶質分子を通過させる。好適な一例としては、前記疎水性領域を酸化チタンによって形成する方法があげられる。
酸化チタンは、通常は疎水性であるが、紫外線を照射することなどにより親水性へと変化する物質である。そのため、前記接続部を酸化チタンで形成すれば、一次元目分離工程を行なっている間に一次元分離溶液の二次元目分離路112への移動を遮断できる。そして、一次元目分離工程終了後に、前記接続部を狙って紫外線を照射して疎水性を親水性へと変換する。これによって、一次元分離溶液を二次元目分離路112へ確実、かつ円滑に導入することができる。
また、二次元目分離路112の流路は微細路であればよいが、好適にはキャピラリを用いることが望ましい。キャピラリを用いることで、毛細管現象の原理によって溶液をさらに効率よく移行させることができる点で望ましい。そして、遠心力による沈降平衡に基づいて物質の分子量に依存した濃度勾配の形成(沈降平衡原理)を利用できる点でも好適である。
等電点電気泳動路111は、これに並行して設けられている移動コントロール流路114、及び略垂直に設けられている二次元目分離路112と、それぞれ疎水性領域115,116によって隔てられている。従って、等電点電気泳動中には、これらの疎水性領域に液体を充填しておくことにより、液体の移動を制限することができる。
そして、二次元目分離路112と回収流路113との間も疎水性領域116によって隔てられているため、二次元目分離路上に遠心分離された試料の内容物を保持したまま、回収流路内の液体の移動を制御することができる。
また、本発明に係る物質分析方法を行なった後に、分離・分析した試料を他の測定方法等を組み合わせてもよい。また、本発明に係る一次元分離工程や二次元分離工程中に他の分析操作等を行ってもよい。例えば、スポット読取り部等を設けておき、試料溶液中に含まれる溶質分子の光学的データを収集したりすることもできる。あるいは、適宜、指標物質等を用いて前記溶質分子にマーキングする工程等を行なうこともできる。
図3は、二次元目分離路にショ糖濃度勾配を形成する手順の一例を示すワークフロー図である。一次元分離溶液を微細路(例えば、二次元目分離路112)に導入する手順について、図2を適宜参照しながら説明する。
まず、二次元目分離路112に水を充填する(S301)。次に、移動コントロール流路114に注入するショ糖水溶液の濃度を調節する。まずは、ショ糖水溶液の濃度設定値を最大値に設定する(S302)。次に、移動コントロール流路114に所定量のショ糖水溶液を注入し、加圧する(S304)。これにより、回収流路113内に溶液(ショ糖水溶液、又は水)を移動させることができる。
続いて、回収流路113内に存在する液体(ショ糖水溶液又は水)を除去する(S305)。そして、この除去した液体がショ糖水溶液か水か、を判断する(S306)。
その結果、前記除去した液体がショ糖水溶液の場合には、回収流路113内に前記最大濃度のショ糖水溶液を充填して処理を終了する(S308)。
前記除去した液体が水の場合には、設定したショ糖水溶液の濃度設定値を微小値(Δd)だけ減じて(S307)、ショ糖水溶液の濃度を再設定する(S303)。この処理手順は、前記ショ糖水溶液の濃度を量子化するものである。その結果、回収流路113から除去する液体がショ糖水溶液となるまで、この手順を繰り返す。
このような手順で前記溶液を微細路に導入することで、充填する溶液(例えば、ショ糖水溶液)の濃度を量子化して、並列した各々の二次元目分離路112に対して均一に充填・押圧することで、充填対象となる各々の二次元分離路112に対して同じ濃度勾配を形成することができる。これによって、充填対象となる並列された二次元目分離路112において同じ濃度勾配を形成させることができる。その結果、精度の高い物質の分析を行なうことができる。
このように、二次元分離路112に充填する溶液濃度を量子化しながら充填していくことで、複数の二次元目分離路112に対してそれぞれ液体導入口を設けなくとも、二次元目分離路112に同じ濃度勾配を形成させることができる。そして、等電点電気泳動路111が長く、連設されている二次元分離路112の設置数が多い場合等であっても、各々の二次元分離路112に同じ濃度勾配を形成させることができる。その結果、精度の高い物質分析を行なうことができる。
更に、このように溶液を量子化して徐々に二次元分離路112に充填することで、あらかじめ濃度勾配が形成された溶液をそのまま注入した場合等のように当初設定した濃度勾配とは異なる濃度勾配となることもない。
なお、前記移動コントロール流路114に注入する溶液は、ショ糖水溶液に限定されず、分析条件や試料の内容等を考慮して、適宜好適な溶液を用いることができる。
図4は、二次元目分離路にショ糖濃度勾配を形成する手順の別の例を示すワークフロー図である。
ここにおいて、二次元目分離路112に水を充填(S301)〜回収流路113内の液体を除去(S305)までの処理手順は、図3の処理手順と共通する。しかし、ショ糖水溶液の濃度を設定し、これを移動コントロール流路114に注入・加圧し、回収流路113内の液体を除去する、という一連の処理を規定回数だけ繰り返し行う点(S306a)で異なっている。
そして、前記手順(S301〜S305)を規定回数だけ繰り返し行なう処理手順(S306a)は、充填するショ糖水溶液の濃度勾配を量子化する手段の一例であり、他の処理手順によって前記濃度勾配の量子化を行なうことを排除するものではない。
例えば、規定回数(S306a)を10回と設定した場合には、ショ糖の濃度設定値を最大値(例えば、飽和濃度等)に設定し、移動コントロール流路114に注入・加圧することで回収流路113内に存在する液体(ショ糖水溶液、又は水)を取り除く(S301〜S305)。次は、前記濃度設定値から微小値(Δd)だけ減じた濃度となるように設定して、再度同様の処置手順を行なう。この手順を10回繰り返せばよい。
そして、本発明において前記規定回数は限定されず、試料の容量や形成した濃度勾配等を考慮して、適宜好適な回数を決定することができる。例えば、精密に試料を分離・分析したい場合には、回数を多くすればよく、処理操作をより簡便にしたい場合などには回数を少なく設定することができる。
前記微小値(Δd)の数値設定については、本発明において特に限定されないが、好適には、設定したい濃度開始値とその終了値に基づいて設定することが望ましい。濃度開始値と終了値が決定されれば、導入路や回収流路の太さ(径の大きさ)から適切な微小値(Δd)を決定できる。
図5は、本発明に係る物質分析方法を基板上で実施した場合の一例である。
図5の符号2は、本発明に係る物質分析方法を実施する物質分析用基板(以下、単に「基板」と称する。)の一例を示している。基板2は、上方外観視、円盤状を呈す形態を備えている。この基板2の口径サイズや層構造は、目的に応じて適宜選定可能であり、基板上の形態構成についても本発明の目的に沿う範囲で設計又は変形可能である。
具体的に基板2上の形態構成について説明する。まず、基板1の中央には、基板1を保持して回転させることが可能な回転軸(図示せず。)が導入され得る中心孔Hが設けられている。なお、前記回転軸を電圧供給手段とし、前記中心孔Hの内周壁面に露出させた導体層へ通電してもよい。
前記中心孔Hの近傍には、所定容量の試料を導入できる試料導入部21が設けられており、この試料導入部21は、一次元目分離を行なう等電点電気泳動路22に連通している。この等電点電気泳動路22は、例えば、キャピラリをなすように形成されており、このキャピラリ内で等電点電気泳動によって前記試料中の溶質分子群(例えば、両性電解質であるタンパク質群)を分離可能な構成となっている。そして、前記一次元目分離が終了した後に、二次元目分離路23で二次元目分離を行なうことができる。
まず、一次元目分離について説明する。等電点電気泳動路21は、円周状に配置されているが、絶縁部221が設けられており、その両端には電極として正極222と負極223とが設置されている。まず、試料を試料導入口21に投入し、一次元目の解析を行なう等電点電気泳動路22に試料を送り込む。そして、正極222と負極223とを印加する。これにより前記該等電点電気泳動路22上で試料中の個々の成分が展開されることで一次元目分離される。
二次元目分離については、まず、遠心分離時に試料が漏れないように二次元目分離路23内に設定したショ糖水溶液濃度のうち、最も高濃度の溶液を充填する。続いて、基板2を回転させることで遠心力を発生させて、沈降平衡による分析を行なう。即ち、この二次元目分離路23は、試料中の溶質分子を含む溶媒に遠心力を加えることによって、沈降平衡時の分子量に依存した濃度勾配を形成可能な微細路である。このようにして二次元分離された試料は、回収流路24で必要に応じ回収することができる。
このように、図2に示された構造を、基板2の領域A(図5参照)の部位などに応用することで、基板上に複数併設された二次元分離路23に濃度勾配を持つ溶液を充填することができる。その結果、基板2上で精度の高い物質分析を行なうことが可能となる。
そして、本発明において、二次元目分離路23を基板2上のどこに設置するか等の設置位置については、特に限定されないが、二次元目分離路23は基板2の半径方向外側へ向けて延設されていることが望ましい(図5参照)。かかる構造とすることで、より均一に遠心力をかけることができるため、より高い精度の分析を行なうことができる点で望ましい。
また、等電点電気泳動路22と二次元目分離路23との連結部位などに、溶媒の通過を制御可能な領域を設けることができる。例えば、試料溶液等を二次元目分離路23へ移動させたくない場合には二次元目分離路23へ流れ難くさせ、二次元目分離路23へ移動させたい場合には、二次元目分離路23へ流れ易くさせるように制御可能とすることで、より効率的に分離することができる点で望ましい。
このように、本発明に係る物質分析方法は、試料の小容量化あるいは微量化に対応でき、かつ溶質分子の分離(分画)精度を向上できる簡易な物質分析技術であるので、ディスク状である基板2の上でも物質分析を行なうことができる。なお、この基板2は本発明に係る物質分析方法を応用した一例であって、本発明は基板上で実施することに限定されない。例えば、本発明は、核酸やタンパク質や代謝物質などの試料を分離分析するキャピラリ分析装置などにも幅広く応用できる。
1 分析領域
111 等電点電気泳動路
112 二次元分離路
2 物質測定用基板
111 等電点電気泳動路
112 二次元分離路
2 物質測定用基板
Claims (3)
- 等電点電気泳動に基づいて溶媒中の溶質分子を分離する一次元分離工程と、
前記一次元分離工程から得られる一次元分離溶液が導入された微細路に遠心力を加えることによって、該微細路内に沈降平衡時の分子量に依存した濃度勾配を形成する沈降平衡工程と、
を少なくとも行う物質分析方法。 - 基板に形成された等電点電気泳動路で前記一次元分離工程を行い、
続いて、等電点電気泳動路に連通するように同基板に形成された微細路において前記沈降平衡工程を行うことを特徴とする請求項1記載の物質分析方法。 - 前記等電点電気泳動路から前記微細路への一次元分離溶液の移行を促進する工程を行うことを特徴とする請求項2記載の物質分析方法。
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