JP2008128835A - 物質分析方法及び物質分析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】二次元で行う物質分離技術において、一次元目分離路に複数の二次元目分離路を接続した構成で物質分離を行なう際に、各二次元目分離路での誤差が少なく、精度の高い物質定量技術を提供すること。
【解決手段】溶媒中の溶質分子を一次元目分離する工程と、一次元目分離路に連通された複数のキャピラリ内で二次元目分離する工程と、を行なう物質分析方法であって、二次元目分離を行なった際に各キャピラリ内に存在する同一物質の存在比率をあらかじめ求める工程と、前記存在比率に基づいて前記溶質分子の存在量を算出する工程と、を少なくとも行う物質分析方法を提供する。
【選択図】図5
【解決手段】溶媒中の溶質分子を一次元目分離する工程と、一次元目分離路に連通された複数のキャピラリ内で二次元目分離する工程と、を行なう物質分析方法であって、二次元目分離を行なった際に各キャピラリ内に存在する同一物質の存在比率をあらかじめ求める工程と、前記存在比率に基づいて前記溶質分子の存在量を算出する工程と、を少なくとも行う物質分析方法を提供する。
【選択図】図5
Description
本発明は、物質分析方法に関する。より詳細には、二次元分離により分離分析をする物質分析方法及び物質分析装置に関する。
試料溶液中に含まれる複数種の溶質分子をその性質や分子量に基づいて分離(分画)する方法として、例えば、「二次元電気泳動法」が挙げられる。この二次元電気泳動法は、広義には、順番に二つの方向(次元)へ電気泳動を行って溶質分子の分離・解析を行う方法を指すが、狭義には、等電点電気泳動を行い、続く二次元目にSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以下略称、SDS-PAGE)を行う方法を意味し、現在この方法は、特に、多種類のタンパク質の分離・分析に広く利用されている。
なお、等電点電気泳動は、pH勾配の存在下で溶質分子(両性電解質)を電気泳動すると等電点(電荷が0となる点)まで移動して止まって、各溶質分子が等電点の順に並ぶという原理であり、SDS-PAGEは、アクリルアミドとN,N’-メチレンビスアクリルアミドの混合溶液中で重合形成した分子ふるい中を、溶質分子にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を結合して分子量に対応する負電荷を与え、これにより陽極側へ移動させて分画する原理である。
近年では、二次元電気泳動法を基板上で行う技術が提案されている。例えば、第1の電気泳動分離媒体と第2の電気泳動分離媒体が互いに間隔をおいて形成された基板を用いて、第1の電気泳動分離媒体に電場を形成した後、この第1の電気泳動分離媒体の長手方向に対して垂直方向に電場を与えることにより、第2の分離媒体に分離する技術が提案されている(特許文献1参照)。
また、マイクロチップの分離チャンネルに泳動電場を形成し、微量のタンパク質試料を、分子量と等電点による分離を同時に行う二次元電気泳動法も提案されている(特許文献2参照)。そして、マイクロキャピラリーを有するディスク状記録媒体に関する技術も提供されている(特許文献3参照)。
加えて、試料の小容量化・微量化の流れに対応する技術として、タンパク質(あるいはタンパク質相互作用)の網羅的解析を目的に、センサーチップ上に固定された分子と特異的に相互作用した微量のタンパク質を質量分析(MS)で解析する方法(非特許文献1)や動物細胞等へ発現させたエピトープタグ融合タンパク質と複合体を形成しているタンパク質群をエピトープに対する抗体ビーズを用いて分離生成し、これを質量分析によって網羅的に解析する方法も提案されている(非特許文献2)。
特開2006−162405号公報。
特開2004−150899号公報。
特開2004−93548号公報。
「プロテオーム解析法」(磯辺俊明、高橋信弘編)、羊土社、P190〜198。
「注目のプロテオミクスの全貌を知る!」(磯辺俊明、高橋信弘編)、羊土社、P46〜53。
しかし、二次元分離による物質分離方法において、一次元目分離路に複数の二次元目分離路が連通されている場合には物質分離の解析精度について次のような問題がある。所定数の二次元目分離路を一次元目分離路に連通したとしても、前記二次元目分離路の数は有限(即ち、所定数)であるため、一次元目から二次元目へと移行する際に各二次元目分離路において誤差が発生する。それにより、物質分離に関する解析精度が低下するという問題がある。
そこで、本発明は、二次元で行う物質分離技術において、一次元目分離路に複数の二次元目分離路を接続した構成で物質分離を行なう際に、各二次元目分離路での誤差等が少なく、精度の高い物質定量技術を提供することを主目的とする。
本願発明者は、一次元目から二次元目に移行する際に生じる量子化誤差等に着目し、この量子化誤差等を考慮した定量分析について鋭意研究した結果、以下の本発明を完成させた。
まず、本発明は、溶媒中の溶質分子を一次元目分離する工程と、一次元目分離路に連通された複数のキャピラリ内で二次元目分離する工程と、を行う物質分析方法であって、二次元分離を行った際に各キャピラリ内に存在する同一物質の存在比率をあらかじめ求める工程と、前記存在比率に基づいて前記溶質分子の存在量を算出する工程と、を少なくとも行う物質分析方法を提供する。
このように、あらかじめ同一物質の存在比率を求めておくことで、各キャピラリ内における量子誤差等の影響を補うことができる。その結果、より精度の高い解析を行なうことができる。
また、前記同一物質の存在比率は、物質に蛍光染料を結合させてから二次元目分離を行い、前記キャピラリ内に存在する前記物質の光学強度の測定に基づいて求めるように工夫できる。更に、基板上に前記一次元目分離路と前記キャピラリとを形成するように工夫できる。
更に、溶媒中の溶質分子を分離する一次元目分離路と、該一次元目分離路に複数連通された二次元目分離路と、により物質分離を行なう物質分析装置であって、二次元目分離を行なった際に各キャピラリ内に存在する同一物質の存在比率をあらかじめ求めておく前処理部と、前記存在比率に基づいて前記溶質分子の含有量を算出する分析部と、を少なくとも備えた物質分析装置を提供する。
本発明に係る物質分析方法によれば、精度の高い物質分析を行なうことができる。
以下、本発明に係る方法の実施形態例について、添付図面を参照にしながら説明する。なお、図面に示された実施形態等は、本発明の好適な実施形態を例示したものであり、これにより本発明が狭く解釈されることはない。
図1は、本発明に係る物質分析方法を行なう手順の一例を示したフロー図である。
まず、溶質分子を含む試料溶液を投入して分析を開始する(S1)。これにより、前記試料溶液を分離する工程が行なわれる(S2)。そして、分離された各溶質分子のスポットを読み取る工程を行なう(S3)。これによって、前記試料溶液に関する生データを取得する。続いて、該生データに基づいて試料溶液に含まれる溶質分子を同定する工程を行なう(S4)。そして、前記生データに基づいて測定対象の物質を特定するとともに、該物質の存在量の情報を得る。そして、その情報をリストとして出力する(S5)。以下、各工程に沿って詳細に説明する。
図2は、本発明における分離工程の一例を説明する図である。
図2の符号1は、試料の分離領域を示している。前記分離領域1は、一次元目分離路11と、該一次元目分離路11に連通した複数の二次元目分離路12を有している。溶液試料は一次元目分離路11に注入されて前記一元目分離路11上で一次元目分離する(矢印X方向参照)。続いて、二次元目分離路122へ移行されることで二次元目分離を行なう(矢印Y方向参照)。
一次元目分離は、例えば、等電点電気泳動により行なうことができる。等電点電気泳動では、溶液試料が等電点電気泳動路11に設けられた正極(図示せず)と負極(図示せず)に対して印加することで、等電点電気泳動路11内には、正極側を酸性、負極側を塩基性としたpH勾配が形成される。これにより、試料中の溶質分子群はそれぞれの溶質分子の等電点に相当する泳動位置へとフォーカシングされる。その結果、前記等電点電気泳動路11上で試料中の各成分が展開されることで一次元目分離される。
このようにして、等電点電気泳動路11上で一次元目分離された一次元目分離溶液は、二次元目分離路12へ導入される(図2の矢印Y参照)。二次元目分離工程は、二次元目分離路12において遠心力を利用して沈降平衡による遠心分離や沈降速度解析法等を用いて行なうことができる。
「遠心分離法」においては、被分離物質の分子量に基づいた分離を行なう。一例としては、ショ糖濃度勾配遠心法がある。このショ糖濃度勾配遠心法によれば、二次元目分離路12内に、濃度勾配を形成するようにショ糖溶液を充填することで、前記濃度勾配中において、被分離物質を各分子量に基づいて分離することができる。このようにして、二次元目分離が行なわれた溶質分子群は、必要に応じ、各二次元目分離路12から分取して、例えば質量分析計による同定等の後段の解析にも供することができる。
この沈降平衡法で求められる分子量は、溶質の分子構造によらないのが特徴であり、高度に荷電している溶質であっても、精度よく分子量を計測できる。従って、沈降平衡法は、等電点電気泳動後の二次元目分離工程に好適に採用できる。従って、二次元目分離路12において行なう二次元目分離工程として好適である。沈降平衡法によって分子量を測定された溶質分子は、分子量に基づく物質同定解析等の後段の解析に供することができる。
また、一次元目分離路11から二次元目分離路12への一次元分離溶液の移行を促進させる工程を別途行なうこともでき、例えば、正圧押出や負圧吸引又は親媒性原理によって制御可能な領域等を利用することができる。また、これらの複数の方法を別途組み合わせてもよい。
このうち、親媒性原理を利用する制御方法は、一次元目分離路11と、二次元目分離路12との接続部13等に、試料の溶質分子の通過を親媒性原理によって制御可能な領域を設けて、一次元目分離路(等電点電気泳動路)11から二次元目分離路12への一次元分離溶液の移動を制御する方法である。
具体的には、前記接続部13等を疎水性領域としておき、親水性の溶質分子の通過を遮断しておく。そして、適切なタイミングで、前記疎水性領域を親水性へと変換することで、親水性の溶質分子を通貨させる。好適な一例として、前記疎水性領域を酸化チタンによって形成する方法があげられる。
酸化チタンは、通常は疎水性であるが、紫外線等を照射することで親水性へと変化する物質である。そのため、前記接続部を酸化チタンで形成すれば、一次元目分離工程を行なっている間に一次元分離溶液の二次元目分離路12への移動を遮断できる。そして、一次元目分離工程終了後に、前記接続部13を狙って紫外線を照射して疎水性を親水性へと変換する。これによって、一次元分離溶液を二次元目分離路12へ確実、かつ円滑に導入できる。
図3は、本発明における二次元目分離路内の試料のスポット位置を読み取る概念図である。
図3に示された符号2は、ピックアップ部を示している。該ピックアップ部2は、励起光を照射する照射部21と、発光強度を測定する測定部22とから構成されている。
図3は、二次元目分離が行なわれた二次元目分離路12に対して励起光を照射していき、その吸光度を測定する状態である。まず、試料を蛍光染料でマーカーする。そして、二次元目分離として遠心分離を行う。これにより二次元目分離として遠心力をかけることにより、測定対象物質は、自身の密度とその周辺領域のショ糖密度が同じとなる位置Pまで移動する。
このようにして蛍光染料でマーキングされた測定対象物質が二次元目分離路内で移動し、測定対象物質が持つ物性値に応じた位置P(スポット位置)で停止する。そして、この二次元目分離路12に対して照射部21から励起光を照射することで、前記スポット位置Pが励起され発光する。この発光強度を測定し、各二次元目分離路のそれぞれの測定生データを出力する。
なお、本発明において、蛍光染料でマーキングする方法等については特に限定されず、測定対象となる物質の種類や性質等を考慮して適宜選択できる。例えば、遠心分離を行なう二次元目分離路の接続部13等に測定対象物質(ターゲット)と結合可能な蛍光染料を充填しておくことができる。
更には、測定対象物質と非特異的に結合する蛍光染料や、物質の特性に応じて結合率が変化する蛍光染料等の複数種類の蛍光染料を併用することもできる。この場合、励起光周波数が異なる蛍光染料を併用することが好ましい。これにより正確に分離物質の同定を行なうことができる。
図4は、本発明における二次元目分離路内の物質位置を示すスポット分布の一例を示す図である。
図4では、一次元目分離路11にn本の二次元目分離路121〜12n(キャピラリ)が連通されている。一次元目分離路11で一次元目分離された試料が、各二次元目分離路内で二次元目分離された状態である。そして、各二次元目分離路内において、二次元目分離された試料中のマーキングされた測定対象物質のスポットが分散して表れている。
二次元目分離は、一次元目分離路11に複数の二次元目分離路12が連通された構成上で行なわれる。即ち、前記一次元目分離路11上で展開された試料が、その展開位置に基づいてそれぞれの二次元目分離路121〜12nへと移行して二次元目分離が行なわれる。
まず、各二次元目分離路に表れるスポットについて説明する。例えば、1本目の二次元目分離路121はスポット121pが表れている。2本目の二次元目分離路122はスポット122pが表れている。3本目の二次元目分離路123は2箇所に分散してスポット123p1,123p2が表れている。4本目の二次元目分離路124にはスポット124pが表れている。n本目の二次元目分離路12nにはスポットが表れていない。
次に、二次元目分離路内におけるスポット位置について説明する。まず、二次元目分離路12のキャピラリ長を「1」とする(図4参照)。そして、本発明では、前記キャピラリのどの位置でスポットが表れているかをキャピラリ長に対する割合で表現する。例えば、スポット位置が「1」の場合は、キャピラリの出口先端まで物質が移動したことを意味する。スポット位置が「0」の場合は、キャピラリの入口から物質が全く移動しなかったことを意味する。
従って、1本目の二次元目分離路121のスポット121pの位置は「0.6」である。2本目の二次元目分離路122のスポット122pの位置は「0.2」である。3本目の二次元目分離路123のスポットは2つであり、スポット123p1の位置は「0.2」であり、スポット123p2の位置は「0.8」である。
ここで、二次元目分離は遠心力を利用した遠心分離法及び沈降平衡法によって行なわれるため、理論上、同一物質であれば各二次元目分離路において同じスポット位置となるはずである。しかし、各二次元目分離路121〜12nにおいて、同一物質のスポットでありながらそのスポット位置はばらつきが生じる。
その理由の一つとして、量子化誤差が挙げられる。一次元目分離路11に連通されている二次元目分離路はn本であり、その数は有限である。従って、一次元目分離溶液を前記二次元目分離路121〜12nにそれぞれ移行させて二次元目分離を行った場合には、その分離結果(二次元目分離路ごとのスポット位置)に量子化誤差が生じてしまう。
従って、各二次元目分離路同士のスポットのばらつきをいかに修正・反映させて測定物質の同定を行なうかは、特に定量測定をはじめとする分析精度の向上には重要である。
図5は、本発明における試料の同定方法を説明する概念図であり、図6は、前記同定方法において作成される変換テーブルの一例を示す図である。
本発明では、試料中の物質の測定生データ(図3参照)をデータベースに基づいて処理することで、精度の高い同定を行なうことができる。以下、この同定方法について説明する。
まず、変換テーブルを作成する手順について説明する。二次元目分離によって試料中の物質を分離する(S41)。次に、これを回収して質量分析器等により測定することで溶液中の物質の種類とその含有量について同定を行なう(S42)。そして、この物質の種類と、その観測位置とその存在量の情報の変換テーブルを作成する(S43)。即ち、当該物質の分析を行なった場合の、各二次元目分離路の各スポット位置と、該スポット位置の物質存在量が明らかとなる。このようにして種々の物質の変換テーブルを作成する(図6等参照)。
図6の変換テーブルについて、図4を併用して説明する。
物質名Aについて、図4の2本目の二次元目分離路122のスポット位置0.2は存在率0.3(物質Aの全存在量の30%)であり、3本目の二次元目分離路123のスポット位置0.2は存在率0.7(物質Aの全存在量の70%)であることを示している。そして、物質名Bについては、3本目の二次元目分離路123のスポット位置0.8は存在率1.0(物質Bの全存在量である100%)であることを示している。スポット位置の光学強度と、そのスポットの物質存在量の一般化された相関関係等については後述する。
物質名Aについて、図4の2本目の二次元目分離路122のスポット位置0.2は存在率0.3(物質Aの全存在量の30%)であり、3本目の二次元目分離路123のスポット位置0.2は存在率0.7(物質Aの全存在量の70%)であることを示している。そして、物質名Bについては、3本目の二次元目分離路123のスポット位置0.8は存在率1.0(物質Bの全存在量である100%)であることを示している。スポット位置の光学強度と、そのスポットの物質存在量の一般化された相関関係等については後述する。
続いて、実際に試料を分析する際の手順について説明する(図5参照)。まず、前述のように試料を二次元分離し、蛍光強度等を測定することで計測生データを得る(S3、図1参照)。そして、該計測生データから発現プロファイルイメージを構成する(S45)。続いて、前記変換テーブルを用いて試料内に存在する物質種類とその存在量のリストを生成する(S5)。
なお、本発明において、発現プロファイルイメージを構成する工程(S45)は必ずしも必要ではないが、例えば、DNAやRNA等の解析を行なう場合にはより有益な情報を得ることができる点等の観点から望ましい。
本発明では、あらかじめ分離工程(S2、図1参照)で二次元分離された物質に関する変換テーブルを作成し、これをデータベース化しておく。分離された物質の種類に応じたデータベースを作成することで、同一物質が複数の二次元目分離路内に分散して、複数のスポットとして存在する場合であっても、各スポットに散らばった当該物質の存在確率を考慮して同定できる。つまり、二次元目分離を行なう際の量子化誤差をより効果的に修正できる。
図7は、本発明における測定対象物質の蛍光強度とその存在量との関係の一例を示す図である。
図7は、各スポットにおいて測定された蛍光強度を横軸とし、そのスポット位置の物質存在量を縦軸としたグラフを示している。即ち、各スポットの蛍光強度とその物質存在量には相関関係が成立している。従って、あらかじめ変換テーブルのデータから前記相関関係を見出し、この相関関係を関数化(fp)する前処理を行なう。そして、実際に試料を分析した際に得られた生データ(各スポット位置の光学強度等)から各スポットの物質の存在確率を求めることができ、これにより物質存在量を高い精度で定量できる。
このようにして、複数のキャピラリ領域に存在する同一物質の比率等に基づいて、物質存在量等を算出することができる。即ち、キャピラリ上の二次元展開による物質分離を行なう場合において、複数のキャピラリにわたって分散する同一物質の存在比率を考慮することで、量子化誤差を効果的に補うことができ、精度の高い分析結果を得ることができる。
図8は、本発明における蛍光強度から物質存在量の算出方法の一例を示す図である。
図8は、2本の二次元分離路12a,12bにそれぞれスポットSa,Sbが表れている状態を示している。これらのスポットデータについて、スポットSaには、存在率0.3の物質Aと、存在率0.4の物質Bとが存在している。スポットSbには、存在率0.7の物質Aと、存在率0.6の物質Bとが存在している。これを踏まえて、光学強度と物質存在量との相関関係を求める。
まず、物質の全存在量をpとする。これによると、物質A,Bの全存在量はそれぞれp1,p2である。そして、前記物質の光学強度phと全存在量pとの関係式をfp(ph)とする。これによると、物質Aの光学強度phaから物質Aの存在量はfp(pha)で求めることができる。これを踏まえて、物質A,Bの存在確率を成分とした2行・2列の行列を構成させる。これらの関係は図8の式(1)で表現できる。
そこで、光学強度phから物質の全存在量pを求める関係式を導くには、物質A,Bの存在確率の行列の逆行列を前記式(1)に乗じる。即ち、図8の式(2)の行列式となる。この行列式に、実際に試料を測定した際に得られた蛍光強度(測定生データ)を前記式(2)に代入することで、測定対象物質の全存在量を算出できる。式(2)は、実際の同一物質の存在比率に基づいて導出された関係式であり、二次元分離において生じる量子化誤差等を補うことができる。
本発明では、前記行列式の行数・列数については2行・2列に限定されず、一次元目分離路に連通されている二次元目分離路の本数や、測定対象物質の種類等を考慮して適宜決定できるが、より高い分析精度を得たい場合には、各行列式の行数・列数を多くすればよい。また、前記相関関係を導出する方法についてもこれら行列式に限定されず、適宜、好適なシミュレーションや統計演算方法を用いた一般化によってもよい。
図9は、本発明における蛍光強度と物質存在量の相関関係を一般式化した一例を示す図である。
図9は、n本の二次元分離路におけるn種類の測定対象物質の光学強度に基づいて、各測定対象物質の全存在量を求める行列式である(nは自然数を示す。以下同じ。)。このように、一次元目分離路に連通された複数の二次元分離路において、あらかじめ同一物質の存在比率について変化テーブルデータを作成して、測定により得られた蛍光強度を前記変換テーブルデータに基づいて処理することで、より誤差の少ない物質存在量を算出できる。
このように、複数の二次元目分離路において、それぞれ同じ位置にスポットがある物質(例えば、図8の符号Sa,Sb)、あるいは近い位置にスポットがある物質等について、各物質の存在確率に基づいた逆行列を、各物質の光学強度を示す行列に乗ずることで、分析目的とする物質の全存在量(例えば、図9のp1〜pn)を算出することもできる。
図10は、本発明に係る物質分析方法を基板上で実施した場合の一例である。
図10の符号3は、本発明に係る物質分析方法を実施する物質分析用基板(以下、単に「基板」と称する。)の一例を示している。基板3は、上方外観視、円盤状を呈す形態を備えている。この基板3の口径サイズや層構造は、目的に応じて適宜選定可能であり、基板上の形態構成についても本発明の目的に沿う範囲で設計又は変形可能である。
具体的に基板3上の形態構成について説明する。まず、基板3の中央には、基板3を保持して回転させることが可能な回転軸(図示せず。)が導入され得る中心孔Hが設けられている。なお、前記回転軸を電圧供給手段とし、前記中心孔Hの内周壁面に露出させた導体層へ通電してもよい。
前記中心孔Hの近傍には、所定容量の試料を導入できる試料導入部31が設けられており、この試料導入部31は、一次元目分離を行なう等電点電気泳動路32に連通している。この等電点電気泳動路32は、例えば、キャピラリをなすように形成されており、このキャピラリ内で等電点電気泳動によって前記試料中の溶質分子群(例えば、両性電解質であるタンパク質群)を分離可能な構成となっている。そして、前記一次元目分離が終了した後に、複数設けられた二次元目分離路33で二次元目分離を行なうことができる。
まず、一次元目分離について説明する。等電点電気泳動路32は、円周状に配置されているが、絶縁部321が設けられており、その両端には電極として正極322と負極323とが設置されている。まず、試料を試料導入口31に投入し、一次元目の解析を行なう等電点電気泳動路32に試料を送り込む。そして、正極322と負極323とを印加する。これにより前記等電点電気泳動路32上で試料中の個々の成分が展開されることで一次元目分離される。
二次元目分離については、まず、遠心分離時に試料が漏れないように二次元目分離路33内に設定したショ糖水溶液濃度のうち、最も高濃度の溶液を充填する。続いて、基板3を回転させることで遠心力を発生させて、沈降平衡による分析を行なう。即ち、この二次元目分離路33は、試料中の溶質分子を含む溶媒に遠心力を加えることによって、沈降平衡時の分子量に依存した濃度勾配を形成可能なキャピラリである。その結果、基板3上でより精度の高い物質分析を行なうことが可能となる。
また、本発明において、二次元目分離路33を基板3上のどこに設置するか等の設置位置については、特に限定されないが、二次元目分離路33は基板3の半径方向外側へ向けて延設されていることが望ましい(図10参照)。かかる構造とすることで、より均一に遠心力をかけることができるため、より高い精度の分析を行なうことができる点で好適である。
このディスク状の基板3の上には、等電点電気泳動路32に複数の二次元目分離路33が設けられており、本発明に係る物質分析方法によれば、各次元目分離路33における量子化誤差等も補った定量分析を行なうことができる。
このように、本発明に係る物質分析方法は、試料の小容量化あるいは微量化にも対応でき、かつ溶質分子の分析・定量精度を向上できる簡易な物質分析技術であるので、ディスク状である基板3の上でも精度の高い物質分析を行なうことができる。なお、この基板3は本発明に係る物質分析方法を応用した一例であって、本発明は基板上で実施することに限定されない。例えば、本発明は、核酸やタンパク質や代謝物質などの試料を分離分析するキャピラリ分析装置などにも幅広く応用できる。
1 分離領域
2 ピックアップ部
3 物質測定用基板
11 一次元目分離路
12 二次元目分離路
21 照射部
22 測定部
2 ピックアップ部
3 物質測定用基板
11 一次元目分離路
12 二次元目分離路
21 照射部
22 測定部
Claims (4)
- 溶媒中の溶質分子を一次元目分離する工程と、一次元目分離路に連通された複数のキャピラリ内で二次元目分離する工程と、を行う物質分析方法であって、
二次元目分離を行った際に各キャピラリ内に存在する同一物質の存在比率をあらかじめ求める工程と、
前記存在比率に基づいて前記溶質分子の存在量を算出する工程と、
を少なくとも行う物質分析方法。 - 前記同一物質の存在比率は、物質に蛍光染料を結合させてから二次元目分離を行い、前記キャピラリ内に存在する前記物質の光学強度の測定に基づいて求められることを特徴とする請求項1記載の物質分析方法。
- 前記一次元目分離路と前記キャピラリとは、基板上に形成されていることを特徴とする請求項1記載の物質分析方法。
- 溶媒中の溶質分子を分離する一次元目分離路と、該一次元目分離路に複数連通された二次元目分離路と、により物質分離を行なう物質分析装置であって、
二次元目分離を行なった際に各キャピラリ内に存在する同一物質の存在比率をあらかじめ求めておく前処理部と、
前記存在比率に基づいて前記溶質分子の含有量を算出する分析部と、
を少なくとも備えた物質分析装置。
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JP2013544362A (ja) * | 2010-11-23 | 2013-12-12 | ザ リージェンツ オブ ユニバーシティ オブ カリフォルニア | 汎捕捉性の結合領域を備えている多方向マイクロ流体デバイス、及びその使用方法 |
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