JP2008110889A - 酸化鉄粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】粒子形状および粒子サイズがよく揃い、磁気特性が優れた酸化鉄粒子を得ることのできる簡便な製造方法を提供すること。
【解決手段】マグネタイトを含んで成る酸化鉄粒子の製造方法であって、(i)鉄イオンとしては3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液と還元性の水溶性有機液体と塩基とを混合して混合液を得る工程、および(ii)混合液を加圧下で加熱し、混合液中で酸化鉄粒子を形成する工程を含んで成る製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】マグネタイトを含んで成る酸化鉄粒子の製造方法であって、(i)鉄イオンとしては3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液と還元性の水溶性有機液体と塩基とを混合して混合液を得る工程、および(ii)混合液を加圧下で加熱し、混合液中で酸化鉄粒子を形成する工程を含んで成る製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、マグネタイトを主成分とした微粒子などの酸化鉄粒子を製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、鉄イオンとして3価の鉄イオンのみを含んだ水溶液から酸化鉄粒子を製造する方法に関している。
マグネタイトを主成分とした微粒子などの酸化鉄粒子(以下では単に「酸化鉄粒子」とも呼ぶ)は、化学的に安定で比較的大きな磁性を有する微粒子であることから、これまで磁気記録媒体、磁性流体または磁性トナーなどの様々な用途に広く利用されてきた。近年では、例えば免疫測定における磁気濃縮・分離担体などの用途として、医療やバイオテクノロジーの分野に対して酸化鉄粒子を応用する展開が注目されている。
酸化鉄粒子の応用分野が拡大するのに伴って、従来の用途ではあまり重要視されていなかった様々な特性が酸化鉄粒子に要求されるようになってきた。例えば、従来に比べて粒子形状または粒子サイズがよく揃っていることや、水中によく分散しうることなどの特性が求められるようになってきた。
マグネタイト微粒子などの酸化鉄粒子に対しては、これまで様々な製造方法が開発され、実際に用いられてきた。大きく分類すると、原材料粉末を調合し焼成した後、粉砕して微粒子にする「焼成・粉砕法」と、水溶液中で粒子を生成させる「湿式法」との2種類の製造方法が存在している。「焼成・粉砕法」は生産性に優れる反面、得られる酸化鉄粒子の粒子形状や粒径分布などが不揃いとなる傾向がある。その一方、「湿式法」は、生産性では焼成・粉砕法に及ばないものの、焼成・粉砕法では得ることのできない良好な粒子形状または粒径分布を有した酸化鉄粒子を一般に製造できる。
湿式法によるマグネタイト微粒子やフェライト微粒子等の微粒子の製造方法に関しては、佐藤、杉原および斎藤による研究の結果が非特許文献1に記載されている。また、湿式法に関する技術展望が非特許文献2に記載されている。これらの湿式法では、2価の鉄イオンを含んだ水溶液、あるいは2価鉄イオンと3価鉄イオンとを含んだ水溶液をアルカリで沈殿させて懸濁液を得た後、この懸濁液を例えば50℃以上に保つことによって、沈殿物としての2価の鉄イオンを空気中の酸素で酸化させてマグネタイト微粒子を生成している。しかしながら近年では、そのような湿式法で得られるマグネタイト微粒子よりも、粒子形状または粒子サイズがよく揃っているものや、飽和磁化が大きい酸化鉄粒子が望まれるようになってきている。
例えば、「2価の鉄イオンおよび3価の鉄イオンを含んだ水溶液」とアルカリ溶液との混合液、または、「2価の鉄イオンおよびその2価の鉄イオンを酸化する酸化剤を含んだ水溶液」とアルカリ溶液との混合液を液温0℃〜15℃の条件下で形成し、それによって、マグネタイトのコロイド粒子を生成させた後、例えば80℃程度にまで混合液を昇温することによって、マグネタイト微粒子を製造する方法が開発されている(特許文献1参照)。この方法では飽和磁化または初磁化特性が比較的高いマグネタイト微粒子を得ることができるものの、結晶性や粒径分布においてバラツキが多く改善すべき課題が残されている。
中性領域にて常温の水溶液中からマグネタイトまたはフェライト等の酸化鉄の膜を形成する手法としてフェライトめっきがある。フェライトめっきでは、緩衝溶液において溶液のpHを一定に保ちながら、水溶液に含まれる2価の鉄イオンの一部を酸化することによって、磁性の優れたフェライト膜を形成している。このフェライトめっきを応用して開発された酸化鉄粒子を製造する湿式法が特許文献2に開示されている。かかる湿式法を用いると、pHが中性領域の水溶液中にて酸化鉄粒子を形成することができるものの、あくまでも「2価の鉄イオン」が用いられおり、2価の鉄イオンが空気に触れて3価の鉄イオンへと容易に酸化される可能性があるので、製造時の安定性の点で決して満足のいくものとなっていない。
特許文献3には、水溶液を脱酸素処理した上で、緩行性の酸化剤とともに原料を反応させる方法が開示されている。この方法では、粒子形状や粒子サイズが揃った粒子が得られるものの、脱酸素処理や反応に際して低酸素条件が必要となり、手法としては煩雑といえる。また、非特許文献3には、磁性細菌の大量培養による方法が開示されている。この方法では、微粒子の形状、性質および粒子サイズなどが揃い、バイオテクノロジーで用いるのに適したマグネタイト微粒子を得ることができるものの、磁性細菌の大量培養条件を満たすために細かい条件設定および制御が必要であり、簡便な手法となっていない。
特開平9−169525号公報
特開2002−128523号公報
特開2006−219353号公報
工業化学雑誌 65 (1962) 第1748頁
プロシーティングス・オブ・ザ・インターナショナルコンフェレンス・オブ・フェライト (Proc.ICF(1980)) 第3頁
微粒子工学大系第II巻 応用技術((株)フジ/テクノシステム刊)、第687頁(2002年刊)
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものである。つまり、本発明の課題は、粒子形状および粒子サイズがよく揃い、磁気特性の優れた酸化鉄粒子(マグネタイトを含んで成る酸化鉄粒子)を得ることのできる簡便な製造方法を提供することである。
本発明者らは、従来の各種の製造法の問題点を鋭意検討して研究を重ねた結果、以下の新しい製造法の発明を完成させた。
本発明は、マグネタイトを含んで成る酸化鉄粒子の製造方法であって、
(i)鉄イオンとしては3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液と還元性の水溶性有機液体と塩基とを混合して混合液を得る工程、および
(ii)混合液を加圧下で加熱し、混合液中で酸化鉄粒子を形成する工程
を含んで成る製造方法である。
(i)鉄イオンとしては3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液と還元性の水溶性有機液体と塩基とを混合して混合液を得る工程、および
(ii)混合液を加圧下で加熱し、混合液中で酸化鉄粒子を形成する工程
を含んで成る製造方法である。
本発明の製造方法は、「鉄イオンとしては3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液に含まれる水」および「還元性の水溶性有機液体」を媒体として酸化鉄粒子を高温・高圧下で合成するという点でソルボサーマル法に属するものといえる。本発明の製造方法は、工程(i)で用いる水溶液が鉄イオンとして3価の鉄イオンのみを含んでおり、2価の鉄イオンを含んでいないことを特徴としている。本発明の製造方法によって得られる酸化鉄粒子は、粒子形状および粒子サイズがよく揃っているだけでなく、磁気特性が優れている特徴を有する。
本発明の製造方法では、鉄イオンとして3価の鉄イオンのみを含んだ水溶液を用いているので、2価の鉄イオンを用いる場合よりも工程(i)の水溶液または工程(ii)の混合液の安定性が高く、ひいては製造時の安定性が高いといえる。より具体的に説明すると、2価の鉄イオンを用いる場合では空気に起因して2価の鉄イオンが3価の鉄イオンへと容易に酸化されるので、脱酸素処理または低酸素条件などが必要となり得るが、本発明の水溶液に含まれる鉄イオンは3価の鉄イオンのみであるために水溶液または混合液中で鉄イオンが安定して存在できる。従って、脱酸素処理または低酸素条件を必要としない点で本発明の製造方法は簡便な方法といえる。
本発明の製造方法で得られる酸化鉄粒子は、粒子形状および粒子サイズがよく揃っている。例えば、得られる粒子は球状または楕円状の同様の形状を各々有していると共に、粒子サイズ分布が狭く、粒子サイズ分布の変動係数が0.1〜0.4程度となっている。
本発明の製造方法で得られる酸化鉄粒子は、粒子形状および粒子サイズがよく揃っているだけでなく、酸化鉄粒子の磁気特性も優れている。例えば、飽和磁化量が20〜85A・m2/kgおよび保磁力が2〜16kA/mとなっている。
また、本発明の製造方法の工程(i)において、非水溶性有機液体を添加すると共に、その非水溶性有機液体に対して溶解性を有する界面活性剤を更に添加して混合液を得る場合には、混合液が水性相および油性相の2相から成る混合液となる。この場合、最終的に得られる酸化鉄粒子が油性相に分散し、不要物が水性相に存在することになるので、粒子に対して洗浄操作が不要となる。
以下にて、本発明の製造方法を詳細に説明する。併せて、本発明の製造方法で得られる本発明の酸化鉄粒子(即ち、「マグネタイトを含んで成る酸化鉄粒子」)も併せて説明すると共に、そのような酸化鉄粒子が油性相に分散して成る本発明の分散液についても併せて説明する。
図1に本発明の製造フローを示す。まず、工程(i)では、「鉄イオンとしては3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液」と「還元性の水溶性有機液体」と「塩基」とを混合することによって混合液を得る。この混合に伴って、水溶液中ではFe(OH)3が析出物または沈殿物として形成され得る。
工程(i)で用いる「鉄イオンとしては3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液」は、3価の鉄イオン以外の鉄イオンを含んでいない水溶液である。換言すれば、本明細書で用いる「鉄イオンとしては3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液」とは、3価の鉄イオンを含むが、2価の鉄イオンを含んでいない水溶液を実質的に意味している。鉄イオン以外の物質またはイオン(例えば、塩化物イオン、硫酸イオンまたは硝酸イオンなど)がこの水溶液に含まれていてもよい。尚、「鉄イオンとしては3価の鉄イオンのみを含む」とは、水溶液中に含まれる鉄イオンが3価の鉄イオンであるべきことを意図するものであり、水溶液の製造過程/調製過程などに起因して、不可避的または偶発的に2価の鉄イオンが混入された水溶液を排除する意図はないことに留意されたい。
「鉄イオンとしては3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液」は、3価の鉄塩(即ち、3価のイオン価数を有する鉄の塩)を水に溶解させることによって調製される。3価の鉄塩の種類は、特に限定されるものでない。好ましくは、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、酢酸鉄またはアセチルアセトナト鉄錯体を水に溶解させることによって「鉄イオンとしては3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液」を調製する。得られた酸化鉄粒子を水洗する際に不純物が粒子に残留しにくくなる点を考慮すると、塩化鉄を用いることが好ましい。尚、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄および酢酸鉄を用いて水溶液を調製した場合には水溶液が酸性領域となり、アセチルアセトナト鉄錯体を用いて水溶液を調製した場合には水溶液が略中性領域となる。水溶液の3価の鉄イオンの濃度は、好ましくは0.001〜5mol/l、より好ましくは0.02〜1mol/lである。鉄塩を溶解させる水は、特に限定されるわけではないが、イオン交換水、滅菌水または超純水等の水が好ましい。
工程(i)で用いる「塩基」は、特に限定されるわけではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水または尿素が好ましい。上記水溶液の場合と同様、得られた酸化鉄粒子を水洗する際に不純物が粒子に残留しにくくなる点を考慮すると、アンモニア水または尿素を塩基として用いることが特に好ましい。用いる塩基の濃度(より具体的には塩基の物質量)は特に限定されないが、好ましくは鉄イオン1モルに対して1〜50モル、より好ましくは3〜10モルである。
工程(i)で用いる「還元性の水溶性有機液体」は、水に対して可溶性を有すると共に、工程(ii)の加熱条件下で3価の鉄イオンまたはFe(OH)3を還元する作用を有する有機液体である。水に対して可溶性を有することに起因して、「還元性の水溶性有機液体」は、「3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液」および/または「塩基」に起因した水に対して溶解することになる。この結果、得られる混合液では、「3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液」および/または「塩基」に起因した水と「還元性の水溶性有機液体」とから成る水性成分が媒体(以下にて「水性媒体」ともいう)となる一方、「3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液に起因した3価の鉄イオン」および「塩基に起因したアルカリイオン」等が溶質成分となる(工程(i)で用いる原料に応じてその他の物質・イオンも溶質成分として含まれ得ることに留意されたい)。このように、工程(i)においては媒体が水性成分から成る混合液が形成されることから、得られる混合液を水系混合液と呼ぶことができる。工程(i)で用いる「鉄イオンとしては3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液」と「還元性の水溶性有機液体」との体積比は、特に限定されるわけではないが、好ましくは1:10〜10:1、より好ましくは1:5〜5:1である。
工程(i)で用いる「還元性の水溶性有機液体」はポリオールであることが好ましい。ポリオールは、特に限定されるものではないが、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールから成る群から選択される少なくとも1種のポリオールであることが好ましい。
工程(i)の混合操作の温度条件は、特に制限はなく、例えば常温(5〜35℃程度)であってよい。混合操作の圧力条件も特に制限はなく、大気圧下で行うことができる。例えば、アズワン製トルネードPM201を用いて「鉄イオンとしては3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液」および「還元性の水溶性有機液体」を攪拌させながら、それらの混合物に対して、東京理化器械製滴下ポンプMP−A等で「塩基」を滴下供給することによって工程(i)を実施してもよい。尚、工程(i)の後、得られた混合液を必要に応じて静置させてもよい。
工程(ii)では、工程(i)で得られた混合液を加圧下で加熱する。これにより、混合液中のFe(OH)3の還元反応が進行し、結晶成長することでFe(OH)3から酸化鉄粒子が形成される。具体的には、工程(i)で得られた混合液を耐圧容器に仕込んだ後、混合液を昇温させることによって、耐圧容器内を加圧状態にして混合液を加熱する。好ましくは、混合液を目的温度にまで昇温した後、その目的温度を略一定にして一定時間保持する。混合液の温度が低くなると還元性の水溶性有機液体の反応への寄与が低下し、目的生成物である酸化鉄粒子を形成できなくなる一方、混合液の温度が高くなりすぎると耐圧容器内の圧力がより高くなって爆発などの危険が生じ得る。また、混合液の温度を保持する時間が短すぎると磁気特性がより低下した酸化鉄粒子が形成される一方、逆にその時間が長すぎると粒子サイズ分布がより広くなって、粒子サイズのバラツキがより大きくなる。従って、混合液の温度が150℃〜300℃、好ましくは160〜250℃となるまで混合液を加熱し、その加熱により達成された混合液の温度を1分〜4時間、好ましくは30分〜2時間保持する態様が好ましい。尚、耐圧容器内の圧力は、好ましくは0.2〜10MPa、より好ましくは0.3〜7MPaである。
加熱手段としては、特に限定されず任意のものを用いることができる。例えば、オートクレーブ、恒温槽またはマイクロ波加熱器などを用いることができる。好ましくは、マイクロ波照射器が用いられ、混合液にマイクロ波を照射して混合液を加熱する。マイクロ波の照射は、混合溶液を速やかに昇温できる点で有利である。マイクロ波の照射は、混合液の温度が目標温度に達するまで継続するが、目標温度に達した後も、温度を一定に保つために出力を変化させつつ照射を続けることが好ましい。工程(ii)で照射するマイクロ波の周波数は、混合液を目標温度(即ち、好ましくは150〜300℃、より好ましくは160〜250℃の温度)にまで加熱できるものであれば、特に制限はないが、例えば2.45GHzのものが低価格であり経済的である。目標温度に達する時間の短縮化と温度制御との双方を適宜行うことができるので特に好ましい。マイクロ波の出力を可変制御できる装置としては、マイルストーンゼネラル社製の「MicroSYNTH(マイクロシンス)」を挙げることができる。
工程(ii)で形成された酸化鉄粒子は、洗浄、濾過および乾燥に付すことが好ましい。酸化鉄粒子を洗浄することによって、粒子表面から不純物・不要物を除去できる。洗浄は、水を用いた水洗が好ましいものの、水以外にもエタノールなどといったアルコールまたは、以下で説明する「水溶性界面活性剤」が混合液に含まれている場合では合成時に用いた「水溶性界面活性剤」を含む水等を用いて粒子を洗浄してもよい。濾過は、洗浄に際して行ってよく、洗浄液などを酸化鉄粒子から除去できる。酸化鉄粒子の乾燥は、好ましくは30〜150℃、より好ましくは40〜95℃の温度条件下で行う。乾燥機を用いて酸化鉄粒子を乾燥させてよいものの、自然乾燥により酸化鉄粒子を乾燥させてもかまわない。尚、以下で説明する「水溶性界面活性剤」が混合液に含まれている場合では、酸化鉄粒子同士が凝集しにくくなるので、洗浄が容易となる。また、酸化鉄粒子の用途(例えばバイオ用途)によっては、このような洗浄、濾過および乾燥に付すことなく、工程(ii)の後に得られる混合液(酸化鉄粒子が分散している混合液)の形態で酸化鉄粒子を製造後の用途に用いてもかまわない。
ある好適な実施態様では、工程(i)において水溶性界面活性剤を添加する。換言すれば、工程(i)において「鉄イオンとしては3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液」と「還元性の水溶性有機液体」と「塩基」と「水溶性界面活性剤」とを混合して混合液を得る。かかる水溶性界面活性剤は、水溶性であることに起因して、混合液の水性媒体に溶解または分散することになる。工程(i)で水溶性界面活性剤を添加すると、得られる酸化鉄粒子の粒子サイズを制御できるだけでなく、工程(ii)に付された後で得られる混合液中に存在する酸化鉄粒子の分散性を向上させることができる。水溶性界面活性剤としては、特に限定するわけではないが、ポリアクリル酸(商品名アクアリックHL−415、日本触媒社製)、Tween20(ナカライテスク社製)またはTritonX−100(ナカライテスク社製)などを挙げることができる。
ある好適な実施形態では、工程(i)において、非水溶性有機液体を添加する。換言すれば、工程(i)において、「鉄イオンとしては3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液」と「還元性の水溶性有機液体」と「塩基」と「非水溶性有機液体」とを混合して混合液を得る。添加する非水溶性有機液体が非水溶性であることに起因して、得られる混合液は、水性相および油性相の2相から成る混合液(以下、「2相系混合液」ともいう)となる。「油性相」は非水溶性有機液体から主として形成されるのに対して、「水性相」は、それ以外の原料成分から主として形成される。ここで、非水溶性有機液体を添加する場合、その非水溶性有機液体に対して溶解性を有する界面活性剤を更に添加することが好ましい。これによって、工程(ii)の後に得られる混合液において、酸化鉄粒子が油性相に分散すると共に、不純物または不要物(例えば、塩化物イオンまたはアンモニアイオンなど塩基)が水性相に存在することになる。この2相系混合液を静置させると、下側が水性相および上側が油性相となって相分離する形態が得られるが、その上側の油性相に酸化鉄粒子が分散して存在することになる。尚、「非水溶性有機液体に対して溶解性を有する界面活性剤」を添加する場合、それを非水溶性有機液体に予め溶解させた形態で用いてもよい。
酸化鉄粒子が油性相に分散する機構は次のように推測される。マグネタイト微粒子などの酸化鉄粒子は、一般に親水性であるので水性媒体中で結晶成長する。それゆえ、水性相および油性相の2相から成る混合液においては、酸化鉄粒子は水性相で結晶成長して形成されることになるが、工程(ii)では加熱に起因した対流等が生じているので、水性相で形成された酸化鉄粒子に対しては油性相へと移動できる推進力が生じることになる。ここで、油性相には「非水溶性有機液体に対して溶解性を有する界面活性剤」が存在していることから、水性相から油性相に移動してきた酸化鉄粒子の表面に界面活性剤が被着することになる。具体的には、「非水溶性有機液体に対して溶解性を有する界面活性剤」は、その親水基を内側(粒子側)にし、親油基または疎水基を外側にして、粒子表面に被着する。その結果、酸化鉄粒子が全体として疎水性を帯びることになり、油性相に安定して存在できるようになる。
非水溶性有機液体の具体例は、限定するわけではないが、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、デカンまたはベンゼン等を挙げることができる。これらの非水溶性有機液体は任意に組み合わせて用いてもよい。ここで、本明細書にいう「非水溶性」とは、水に溶けない性質を指しているものの、その意図するところは、混合液に対して相分離(即ち、「油性相および水性相の形成」)をもたらし得る性質を意味している。また、そのように相分離した場合であっても、油性相の成分の一部が水性相に含まれてもよく、あるいはその逆に、水性相の成分の一部が油性相に含まれてもよい。「非水溶性有機液体に対して溶解性を有する界面活性剤」の具体例は、限定するわけではないが、デカン酸、ミリスチン酸もしくはステアリン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸もしくはリノール酸などの不飽和脂肪酸、または、ミリスチルアミン、ステアリルアミンもしくはオレイルアミンなどの脂肪族アミンを挙げることができる。これらの界面活性剤は任意に組み合わせて用いてもよい。尚、「非水溶性有機液体に対して溶解性を有する界面活性剤」の効果としては、酸化鉄粒子を油性相に存在させる効果のみならず、酸化鉄粒子の粒子サイズを制御できる効果および酸化鉄粒子の分散性をより向上させる効果などもある。
このように、水性相および油性相から成る2相系混合液でもって酸化鉄粒子を形成させた場合では、酸化鉄粒子が油性相に分散して存在すると共に、不純物または不要物が水性相に存在することになるので、粒子に対して洗浄操作を行わずに、目的とする用途に酸化鉄粒子を用いることができるし、酸化鉄粒子自体を親油性表面に変更することができる。尚、このように2相系混合液でもって酸化鉄粒子を形成するか、あるいは、前述したような水系混合液でもって酸化鉄粒子を形成するかは、酸化鉄粒子の用途に応じて適宜選択できることを理解されよう。
以上のような本発明の製造方法によって、本発明のマグネタイトを含んで成る酸化鉄粒子を得ることができる。
本発明の製造方法で得られる酸化鉄粒子の平均粒子サイズは、好ましくは5nm〜100nm、より好ましくは5nm〜30nmとなり得る。「粒子サイズ」とは、粒子のあらゆる方向における長さのうち最大となる長さを実質的に意味している。そして、本明細書でいう「平均粒子サイズ」とは、粒子の電子顕微鏡写真に基づいて例えば300個の粒子のサイズを測定し、その数平均として算出した粒子サイズを実質的に意味している。
本発明の製造方法で得られる酸化鉄粒子は、粒子形状および粒子サイズがよく揃っている。本明細書にいう「粒子形状がよく揃っている」とは、得られる酸化鉄粒子の各々が同様の形状を有しており、酸化鉄粒子間の粒子形状のバラツキが、従来技術で製造される場合よりも小さいことを意味している。また、本明細書にいう「粒子サイズがよく揃っている」とは、得られる粒子の各々が同様の粒子サイズを有しており、酸化鉄粒子間の粒子サイズのバラツキが、従来技術で製造される場合よりも小さいことを意味している。
ある好適な態様では、得られる酸化鉄粒子の各々は、球状または楕円状の同様の形状を有している。また、酸化鉄粒子の粒子サイズ分布は狭く、粒子サイズ分布の変動係数は0.1〜0.4程度、場合によっては0.1〜0.3程度である。変動係数は、その値がより小さいほど粒子サイズ分布がより狭く、酸化鉄粒子間の粒子サイズのバラツキがより少ないことを意味している一方、その値がより大きいほど粒子サイズ分布がより広く粒子サイズのバラツキがより大きいことを意味している。例えば、変動係数が0.4よりも大きくなると粒子サイズのバラツキが大きいと考えられ、免疫測定における磁気濃縮・分離担体の用途には適さなくなる。本明細書にいう「変動係数」は、粒子サイズ測定により得られた全データを統計処理して算出される係数であって、次式(式1)により定義される。
本発明の製造方法によって得られる酸化鉄粒子は、粒子形状および粒子サイズがよく揃っているだけでなく、磁気特性が優れている。ある好適な態様では、酸化鉄粒子は、平均粒子サイズが5nm〜100nmにおいて、飽和磁化量が20〜85A・m2/kg(20〜85emu/g)、好ましくは30〜75A・m2/kg(30〜75emu/g)であって、保磁力が2〜16kA/m、好ましくは5〜12kA/mとなっている。本明細書にいう「飽和磁化量」および「保磁力」の値は、振動試料型磁力計(東英工業製、型式VSM−5)を用いて測定される値である。具体的には、「飽和磁化量」は、1270kA/m(16キロエルステッド)の磁界を印加した際の磁化量から求められる飽和磁化の値である。「保磁力」は、1270kA/mの磁界を印加した後、磁界をゼロに戻し、更に、磁界を逆方向に徐々に増加させた場合において、磁化量がゼロになる印加磁界の値である。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、種々の改変がなされ得ることを当業者は容易に理解されよう。
実施例1〜10および比較例1を実施することによって、本発明の製造方法と従来技術の製造方法とを比較した。
実施例1
本発明の製造方法を用いてマグネタイト微粒子(即ち「酸化鉄粒子」)を製造した。
本発明の製造方法を用いてマグネタイト微粒子(即ち「酸化鉄粒子」)を製造した。
まず、3価の塩化鉄1.3gを水10mlに溶解させた。この溶液にエチレングリコール30ml、28%アンモニア水3ml、Tween20の界面活性剤0.4gを加え、マグネティックスターラーで撹拌した。
この溶液を水熱反応用容器に仕込み、マイルストーンゼネラル社製マイクロ波水熱反応装置MicroSYNTHに供することによって、マイクロ波による水熱反応処理を実施した。即ち、マイクロ波を照射して溶液を加熱した。具体的には、マイクロ波の最大出力を1000Wとし、かかる出力を測定温度に応じて可変制御することによって10分かけて220℃まで溶液を昇温させた(容器内圧力は0.8MPaであった)。その後1時間ほど220℃にて温度を維持した後、マイクロ波照射を完全に停止し、溶液を放冷により室温まで冷却した。このような操作によって、溶液中でマグネタイト粒子を合成することができた。最終的には、得られた粒子を洗浄、濾過および乾燥に付した。
実施例1で得られた粒子は、粉末X線測定の結果、マグネタイト単相であることを確認した。また、かかるマグネタイト粒子は、平均粒子サイズが20nmの球状ないし楕円状であって、1270kA/m(16kOe)の磁界を印加して測定した保磁力は10.4kA/m(130エルステッド)、飽和磁化量は70.1A・m2/kg(70.1emu/g)であった。
実施例2
本発明の製造方法を用いてマグネタイト粒子を製造した。Tween20に変えポリアクリル酸(分子量10000)を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
本発明の製造方法を用いてマグネタイト粒子を製造した。Tween20に変えポリアクリル酸(分子量10000)を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例2で得られた粒子は、粉末X線測定の結果、マグネタイト単相であることを確認した。また、かかるマグネタイト粒子は、平均粒子サイズが7nmの球状ないし楕円状であって、1270kA/m(16kOe)の磁界を印加して測定した保磁力は1.20kA/m(15エルステッド)、飽和磁化量は61.1A・m2/kg(61.1emu/g)であった。
実施例3
本発明の製造方法を用いてマグネタイト粒子を製造した。界面活性剤を用いなかった以外は、実施例1と同様に実施した。
本発明の製造方法を用いてマグネタイト粒子を製造した。界面活性剤を用いなかった以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例3で得られた粒子は、粉末X線測定の結果、マグネタイト単相であることを確認した。かかるマグネタイト粒子は、平均粒子サイズが25nmの球状ないし楕円状であって、1270kA/m(16kOe)の磁界を印加して測定した保磁力は10.9kA/m(136エルステッド)、飽和磁化量は71.1A・m2/kg(71.1emu/g)であった。
実施例4
本発明の製造方法を用いてマグネタイト粒子を製造した。エチレングリコールに変えて1,4-ブタンジオールを用い、温度条件を250℃(容器内圧力1.2MPa)とした以外は実施例1と同様に実施した。
本発明の製造方法を用いてマグネタイト粒子を製造した。エチレングリコールに変えて1,4-ブタンジオールを用い、温度条件を250℃(容器内圧力1.2MPa)とした以外は実施例1と同様に実施した。
実施例4で得られた粒子は、粉末X線測定の結果、マグネタイト単相であることを確認した。かかるマグネタイト粒子は、平均粒子サイズが20nmの球状ないし楕円状であって、1270kA/m(16kOe)の磁界を印加して測定した保磁力は8.46kA/m(106エルステッド)、飽和磁化量は68.8A・m2/kg(68.8emu/g)であった。
実施例5
本発明の製造方法を用いてマグネタイト粒子を製造した。温度条件を160℃(容器内圧力0.6MPa)とした以外は、実施例1と同様に実施した。
本発明の製造方法を用いてマグネタイト粒子を製造した。温度条件を160℃(容器内圧力0.6MPa)とした以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例5で得られた粒子は、粉末X線測定の結果、マグネタイト単相であることを確認した。かかるマグネタイト粒子は、平均粒子サイズが20nmの球状ないし楕円状であって、1270kA/m(16kOe)の磁界を印加して測定した保磁力は6.1kA/m(76エルステッド)、飽和磁化量は53.4A・m2/kg(53.4emu/g)であった。
実施例6
本発明の製造方法を用いてマグネタイト粒子を製造した。加熱手段としてオートクレーブを用い、温度条件を280℃(容器内圧力2.3MPa)の4時間とした以外は、実施例1と同様に実施した。
本発明の製造方法を用いてマグネタイト粒子を製造した。加熱手段としてオートクレーブを用い、温度条件を280℃(容器内圧力2.3MPa)の4時間とした以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例6で得られた粒子は、粉末X線測定の結果、マグネタイト単相であることを確認した。かかるマグネタイト粒子は、平均粒子サイズが30nmの球状ないし楕円状であって、1270kA/m(16kOe)の磁界を印加して測定した保磁力は11.5kA/m(144エルステッド)、飽和磁化量は73.0A・m2/kg(73.0emu/g)であった。
実施例7
本発明の製造方法を用いてマグネタイト粒子を製造した。加熱手段にオートクレーブを用い、温度条件を180℃(容器内圧力0.3MPa)の4時間とした以外は、実施例1と同様に実施した。
本発明の製造方法を用いてマグネタイト粒子を製造した。加熱手段にオートクレーブを用い、温度条件を180℃(容器内圧力0.3MPa)の4時間とした以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例7で得られた粒子は、粉末X線測定の結果、マグネタイト単相であることを確認した。かかるマグネタイト粒子は、平均粒子サイズが25nmの球状ないし楕円状であって、1270kA/m(16kOe)の磁界を印加して測定した保磁力は10.3kA/m(129エルステッド)、飽和磁化量は71.0A・m2/kg(71.0emu/g)であった。
実施例8
本発明の製造方法を用いてマグネタイト粒子を製造した。この実施例8は、2相系混合液でもって酸化鉄粒子を製造した実施例である。
本発明の製造方法を用いてマグネタイト粒子を製造した。この実施例8は、2相系混合液でもって酸化鉄粒子を製造した実施例である。
まず、3価の塩化鉄1.3gを水5mlに溶解させた。この溶液にエチレングリコール15ml、28%アンモニア水3mlを加え、マグネティックスターラーで撹拌した。この溶液に、ミリスチン酸0.4gを溶解させたトルエン20mlを加え、さらに撹拌した。それ以降のマイクロ波による加熱は実施例1と同様に実施した。合成後の溶液においてはマグネタイト微粒子がトルエン相(=油性相)に存在し、水性相が無色透明であった。
実施例8で得られた粒子は、粉末X線測定の結果、マグネタイト単相であることを確認した。かかるマグネタイト粒子は、平均粒子サイズが20nmの球状ないし楕円状であって、1270kA/m(16kOe)の磁界を印加して測定した保磁力は9.97kA/m(125エルステッド)、飽和磁化量は70.8A・m2/kg(70.8emu/g)であった。
実施例9
本発明の製造方法を用いてマグネタイト粒子を製造した。実施例9は、実施例8と同様、2相系混合液でもって酸化鉄粒子を製造した実施例であるが、ミリスチン酸に変えてオレイン酸1.0gおよびオレイルアミン1.0gを用いた。それ以外は実施例8と同様に実施した。合成後の溶液においてはマグネタイト微粒子がトルエン相(=油性相)に存在し、水性相が無色透明であった。
本発明の製造方法を用いてマグネタイト粒子を製造した。実施例9は、実施例8と同様、2相系混合液でもって酸化鉄粒子を製造した実施例であるが、ミリスチン酸に変えてオレイン酸1.0gおよびオレイルアミン1.0gを用いた。それ以外は実施例8と同様に実施した。合成後の溶液においてはマグネタイト微粒子がトルエン相(=油性相)に存在し、水性相が無色透明であった。
実施例9で得られた粒子は、粉末X線測定の結果、マグネタイト単相であることを確認した。得られた粒子の透過型電子顕微鏡写真を図2に示す。かかるマグネタイト粒子は、平均粒子サイズが10nmの球状ないし楕円状であって、変動係数は0.28であった。1270kA/m(16kOe)の磁界を印加して測定した保磁力は7.10kA/m(89エルステッド)、飽和磁化量は68.1A・m2/kg(68.1emu/g)であった。
実施例10
従来技術の製造方法でマグネタイト粒子を製造した。
従来技術の製造方法でマグネタイト粒子を製造した。
かかる実施例10は、温度条件を140℃とした以外は実施例1と同様にして実施した。
実施例10で得られた粒子は、粉末X線測定の結果、主相がマグネタイトであるが、副相としてヘマタイトが存在していることを確認した。かかる粒子は、平均粒子サイズが20nmの球状ないし楕円状であって、1270kA/m(16kOe)の磁界を印加して測定した保磁力は4.39kA/m(55エルステッド)、飽和磁化量は40.5A・m2/kg(18.3emu/g)であった。
比較例1
従来技術の製造方法でマグネタイト粒子を製造した。
従来技術の製造方法でマグネタイト粒子を製造した。
かかる比較例1は、還元性有機溶液と界面活性剤を用いず水量を40mlとしたこと以外は実施例1と同様にして実施した。
比較例1で得られた粒子は、粉末X線測定の結果、ヘマタイト単相であることを確認した。得られた粒子の透過型電子顕微鏡写真を図3に示す。かかるヘマタイト粒子は、平均粒子サイズが150nmの四角形ないし六角形であって、変動係数は0.45であった。1270kA/m(16kOe)の磁界を印加して測定した保磁力は0.8kA/m(10エルステッド)、飽和磁化量は1.0A・m2/kg(1.0emu/g)であった。
以上の実施例1〜10および比較例1の結果を表1にまとめた。
実施例1〜10および比較例1から、以下の(イ)〜(ニ)の結論を導くことができる。
(イ)実施例9の電顕写真(図2)と比較例1の電顕写真(図3)とを比べると分かるように、本発明の製造方法で得られた酸化鉄粒子は、従来技術の製造方法で得られた酸化鉄粒子よりも、粒子形状および粒子サイズが揃っていると共に、分散状態も良好である。粒子サイズが揃っていることは、実施例9の粒子サイズ分布の変動係数が0.28であるのに対して、比較例1の粒子サイズの変動係数が0.45であることからも理解できる。
(ロ)実施例1〜10と比較例1とを比べると分かるように、本発明の製造方法で得られた酸化鉄粒子は、従来技術の製造方法で得られた酸化鉄粒子よりも「飽和磁化量」および「保磁力」がそれぞれ数倍〜数十倍以上大きいことから、本発明の製造方法で得られる酸化鉄粒子は磁気特性の点で優れている。
(ハ)実施例1〜5および実施例6,7を参照すると分かるように、本発明の製造方法は、加熱手段としてマイクロ波のみならず、オートクレーブを用いても磁気特性の良好な粒子を得ることができる。
(ニ)実施例1〜7および実施例8,9を参照すると分かるように、混合液として「水系混合液」または「2相系混合液」のいずれを用いても、本発明の製造方法によって酸化鉄粒子を製造することができる。特に、実施例8,9の2相系混合液の場合では、粒子がトルエン相に存在し、水性相が無色透明であったことから、本発明の製造方法によって酸化鉄粒子が油性相に分散した分散液を得ることができることを理解できる。
(イ)実施例9の電顕写真(図2)と比較例1の電顕写真(図3)とを比べると分かるように、本発明の製造方法で得られた酸化鉄粒子は、従来技術の製造方法で得られた酸化鉄粒子よりも、粒子形状および粒子サイズが揃っていると共に、分散状態も良好である。粒子サイズが揃っていることは、実施例9の粒子サイズ分布の変動係数が0.28であるのに対して、比較例1の粒子サイズの変動係数が0.45であることからも理解できる。
(ロ)実施例1〜10と比較例1とを比べると分かるように、本発明の製造方法で得られた酸化鉄粒子は、従来技術の製造方法で得られた酸化鉄粒子よりも「飽和磁化量」および「保磁力」がそれぞれ数倍〜数十倍以上大きいことから、本発明の製造方法で得られる酸化鉄粒子は磁気特性の点で優れている。
(ハ)実施例1〜5および実施例6,7を参照すると分かるように、本発明の製造方法は、加熱手段としてマイクロ波のみならず、オートクレーブを用いても磁気特性の良好な粒子を得ることができる。
(ニ)実施例1〜7および実施例8,9を参照すると分かるように、混合液として「水系混合液」または「2相系混合液」のいずれを用いても、本発明の製造方法によって酸化鉄粒子を製造することができる。特に、実施例8,9の2相系混合液の場合では、粒子がトルエン相に存在し、水性相が無色透明であったことから、本発明の製造方法によって酸化鉄粒子が油性相に分散した分散液を得ることができることを理解できる。
本発明の製造方法で得られる酸化鉄粒子は、磁気記録媒体、磁性流体または磁性トナーなどの用途に用いることができるだけでなく、免疫測定における磁気濃縮・分離担体などの用途として医療またはバイオテクノロジー分野でも用いることができる。
Claims (16)
- マグネタイトを含んで成る酸化鉄粒子の製造方法であって、
(i)鉄イオンとしては3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液と還元性の水溶性有機液体と塩基とを混合して混合液を得る工程、および
(ii)前記混合液を加圧下で加熱する工程
を含んで成る製造方法。 - 工程(i)において、水溶性界面活性剤を添加して前記混合液を得ることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
- 工程(ii)において、前記混合液にマイクロ波を照射して前記混合液を加熱することを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
- 工程(ii)において、前記混合液の加熱手段として、オートクレーブまたは恒温槽を用いることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
- 前記3価の鉄イオンのみを含んで成る水溶液が、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、酢酸鉄またはアセチルアセトナト鉄錯体を水に溶解させることによって調製されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 前記還元性の水溶性有機液体がポリオールであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 前記ポリオールが、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
- 前記塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水または尿素であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
- 工程(i)において、非水溶性有機液体を添加することによって、前記混合液を水性相および油性相の2相から成る混合液とすることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
- 工程(i)において、前記非水溶性有機液体に対して溶解性を有する界面活性剤を更に添加することを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
- 工程(ii)において、前記混合液の温度が150℃〜300℃となるまで前記混合液を加熱し、その加熱により達成された前記混合液の温度を1分〜4時間保持することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
- 工程(ii)において、耐圧容器に供した前記混合液を加熱することによって前記耐圧容器内を加圧状態にしており、前記耐圧容器内の圧力を0.2〜10MPaとすることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項10に記載の製造方法の工程(ii)に付された後で得られる混合液であって、前記酸化鉄粒子が前記油性相に分散していることを特徴とする混合液。
- 請求項1〜12のいずれかに記載の方法によって得られるマグネタイトを含んで成る酸化鉄粒子。
- 平均粒子サイズが5nm〜100nmであり、飽和磁化量が20〜85A・m2/kg、保磁力が2〜16kA/mであることを特徴とする、請求項14に記載の酸化鉄粒子。
- 前記酸化鉄粒子の粒子サイズ分布の変動係数が0.1〜0.4であることを特徴とする、請求項14または15に記載の酸化鉄粒子。
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