JP2008103836A - 誘電体アンテナ - Google Patents

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雅紀 河西
Kiyoyasu Sakurada
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Abstract

【課題】誘電体アンテナにおいて、より多くのセラミック粉末を充填させてアンテナ特性を向上させると共に、耐熱性を向上させることである。
【解決手段】誘電体ブロック2と、該誘電体ブロック2に設けられた放射電極3a,3bと給電電極4と接地電極5とを備えた誘電体アンテナ1。前記誘電体ブロック2は、結晶性の熱可塑性樹脂と、セラミック粉と、非晶質ポリオレフィンとを含むことを特徴とする。これにより、誘電体アンテナのアンテナ特性を向上させることができると共に、耐熱性を向上させることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、誘電体アンテナ、より特定的には、誘電体ブロックに放射電極と給電電極と接地電極とが設けられた誘電体アンテナに関する。
近年、携帯電話では小型化・軽量化が進んでおり、これに伴い、携帯電話に搭載されるアンテナも小型化・軽量化の要求が高まっている。アンテナの共振波長は、アンテナの誘電体材料の誘電率の平方根に反比例し、アンテナの重量は、アンテナの誘電体材料の比重に比例する。そこで、アンテナの誘電体材料に、高誘電率の材料を用いて共振波長を短くしてアンテナを小型化すると共に、低比重の材料を用いてアンテナを軽量化している。
更に、携帯電話のアンテナは、筐体の中に内蔵される傾向にある。そのため、アンテナに用いられる誘電体ブロックの誘電体材料は、筐体と筐体内部の配線基板との隙間等の狭いスペースにも収納できるように、優れた加工性を有していると共に、変形に耐えることができ、割れが生じにくい性質を有していなければならない。すなわち、誘電体ブロックの誘電体材料は、優れた弾性を有している必要がある。
ここで、前記のような条件を満たすアンテナを提供するために、特許文献1に記載の誘電体アンテナが提案されている。該誘電体アンテナは、少なくとも、誘電体ブロックと、前記誘電体ブロックに設けられた放射電極と給電電極と接地電極とを備えた誘電体アンテナであって、前記誘電体ブロックは、結晶性の熱可塑性樹脂と、セラミック粉と、オレフィン系熱可塑性エラストマーとを含み、前記オレフィン系熱可塑性エラストマーが36〜48体積%、前記誘電体ブロックに含まれていることを特徴とする。
しかしながら、特許文献1に記載の誘電体アンテナでは、十分なアンテナ特性を得ることができないという問題が存在する。以下に、詳細に説明する。
特許文献1では、オレフィン系熱可塑性エラストマーとして、エチレンプロピレンゴム粒子をポリプロピレン樹脂マトリクス中に分散させた材料が用いられている。この材料を結晶性の熱可塑性樹脂(ポリプロピレン樹脂)に混合することにより、エチレンプロピレンゴム粒子を分散させて高い弾性を得ている。しかしながら、ポリプロピレン樹脂からなる熱可塑性樹脂と、エチレンプロピレンゴム粒子をポリプロピレン樹脂マトリクス中に分散させたオレフィン系熱可塑性エラストマーとを混合した場合、図2に示す誘電体材料の顕微鏡写真の模式図のように、ゴム粒子が粒子のままポリプロピレン樹脂中に分散してしまう。このように、ゴム粒子が粒子のまま分散してしまうと、セラミック粉末のポリプロピレン樹脂中への充填が阻害されてしまう。そのため、特許文献1に記載の誘電体アンテナでは、セラミック粉末を十分に充填させることができず高いアンテナ効率や安定した共振周波数などのアンテナ特性を十分に得ることができない。
更に、特許文献1に記載の誘電体アンテナでは、結晶性の熱可塑性樹脂であるポリプロピレン樹脂の結晶部と、エチレンプロピレンゴム粒子とが共重合してしまい、ポリプロピレン樹脂の結晶部が減少してしまう。その結果、誘電体アンテナの誘電体材料の融点が低下してしまい、160度以上の高温下において誘電体材料の成形体が変形してしまう。
特開2005−244438号公報
そこで、本発明の目的は、誘電体アンテナにおいて、より多くのセラミック粉末を充填させてアンテナ特性を向上させると共に、耐熱性を向上させることである。
本発明は、誘電体ブロックと、該誘電体ブロックに設けられた放射電極と給電電極と接地電極とを備えた誘電体アンテナであって、前記誘電体ブロックは、結晶性の熱可塑性樹脂と、セラミック粉と、非晶質ポリオレフィンとを含むことを特徴とする。
本発明によれば、非晶質ポリオレフィンが結晶性の熱可塑性樹脂の非結晶部に分子溶解した結果、熱可塑性樹脂の結晶部が多く誘電体ブロック中に残存することになる。これにより、誘電体材料の融点が低下しなくなるので、誘電体アンテナの耐熱性が向上する。更に、本発明によれば、非晶質ポリオレフィンが結晶性の熱可塑性樹脂中に粒子のまま残存せず、セラミック粉末の充填を阻害しないので、セラミック粉末を多く充填することができるようになる。したがって、誘電体アンテナのアンテナ特性が向上する。
本発明において、前記非晶質ポリオレフィンは、プロピレン−1−ブテン共重合体であることが好ましい。また、本発明において、前記誘電体ブロックは、非晶質ポリオレフィンを20体積%以上含んでいることが好ましい。
本発明によれば、非晶質ポリオレフィンが結晶性の熱可塑性樹脂中に粒子のまま残存することなく、結晶性の熱可塑性樹脂の非結晶部に分子溶解するので、誘電体アンテナの耐熱性が向上すると共に、誘電体アンテナのアンテナ特性が向上する。
以下、本発明の実施形態に係る誘電体アンテナについて図面を参照しながら説明する。
図1は、誘電体アンテナ1の斜視図である。誘電体アンテナ1は、誘電体ブロック2、放射電極3(3a,3b)、給電電極4及び接地電極5を備える。
誘電体ブロック2は、射出成形によって、直方体の下面が開口されたケース状に形成されている。これは機能に不要な複合誘電体成形物の部分を削り、軽量化を図ったものである。但し、誘電体ブロック2の形状はこのような形状に限るものではない。誘電体ブロック2の形状としては、例えば、平板、あるいは円板等の形状が挙げられる。また、前記平板等を複数枚積み重ねた、積層体等であってもよい。
誘電体ブロック2の上面には放射電極3aが形成される。また、放射電極3bは、誘電体ブロック2の側面に2つ形成され、給電電極4と接地電極5とにそれぞれ接続される。
放射電極3、給電電極4及び接地電極5は、低コスト化、及び工程数を減らすため、インサート成形もしくはアウトサート成形されることが好ましい。この放射電極3の形状により、誘電体ブロック2との共振周波数が調整されるので、放射電極3、給電電極4及び接地電極5の形状及び配置は適宜、調整される。なお、放射電極3、給電電極4及び接地電極5として、Au、Ag、Cu及びそれらの合金等の材料を用いることができる。一般的に、コスト面を考慮して、Cu及びその合金が用いられる。また、経時安定性などの点から、複数層のめっき品を用いる場合もある。
以上のように構成された誘電体アンテナ1では、給電電極4から放射電極3に対して高周波電力が供給される。これにより、誘電体アンテナ1は、高周波電磁界を発生し、電波を送信する。また、放射電極3は、電波を受信したとき、高周波電流を誘起し、RF回路へと伝達する。
次に、本実施形態に係る誘電体アンテナ1の形成方法について説明する。
まず、あらかじめ準備した金属箔から所定の形状を打ち抜くことで、放射電極3、給電電極4及び接地電極5を形成する。次に、放射電極3、給電電極4及び接地電極5からなる金属部材を所定の金型内に配置した後、本実施形態に係る誘電体アンテナ1に用いられる複合材料を加熱溶融させた状態で、金型内に射出成形することで、誘電体ブロック2と放射電極3、給電電極4及び接地電極5を一体成形し、目的とする誘電体アンテナ1を得ることができる。
また、誘電体ブロック2、放射電極3、給電電極4及び接地電極5を形成する方法について、誘電体ブロック2を成形した後に、該誘電体ブロック2の形状に合わせた放射電極3、給電電極4及び接地電極5を形成し、一体化する方法を用いることもできる。また、放射電極3、給電電極4及び接地電極5は、めっき、スパッタ、蒸着などの方法を用いて形成してもよい。
以下、本実施形態における実験例及び比較例について説明する。
(1)実験例に係る誘電体材料の作製
実験例に係る誘電体材料は、結晶性の熱可塑性樹脂と、セラミック粉と、非晶質ポリオレフィンと、ガラス繊維とを含む。より詳細には、結晶性の熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン樹脂である。セラミック粉は、平均粒径1.8μmのチタン酸カルシウム粉末である。非晶質ポリオレフィンは、プロピレン−1−ブテン共重合体である。
また、本実施形態では、結晶性の熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂以外に、ポリエチレン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及びポリアセタール樹脂等を用いても、同様の効果が得られる。
次に、ポリプロピレン樹脂と、チタン酸カルシウム粉末と、プロピレン−1−ブテン共重合体と、ガラス繊維とを表1に示す割合で混合し、ロッキングミキサーを用いて30分間、混合した。次に、混合により得られた混合物を、連続式の2軸押出し機に投入し、190〜210℃に温度を制御しながら、溶融混練した後、適宜、オーブンにて乾燥させ、乾燥済みの溶融混合物を得た。更に、乾燥済みの溶融混合物を、粉砕機を用いてペレット状に粉砕し、再度、ロッキングミキサーを用いて30分間、混合することによって、目的とする試料番号1〜3の誘電体材料を得た。
Figure 2008103836
ここで、混合について、本実施形態において、連続式の2軸押出し機を用いる以外に、バッチ式ニーダーなどの混合装置を用いても、同様の効果が得られる。また、本実施形態において、乾燥済みの溶融混合物を、粉砕機を用いてペレット状に粉砕する以外に、ペレタイザーやホットカット等の装置を用いてペレット化してもよい。
(2)比較例に係る誘電体材料の作製
比較例に係る誘電体材料は、結晶性の熱可塑性樹脂と、セラミック粉と、ゴム粒子を含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)と、酸変性SEBSと、ガラス繊維とを含む。より詳細には、結晶性の熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン樹脂である。セラミック粉は、平均粒径1.8μmのチタン酸カルシウム粉末である。ゴム粒子を含むオレフィン系熱可塑性エラストマーは、エチレンプロピレンゴム粒子をポリプロピレン樹脂マトリクス中に分散させた樹脂である。酸変性SEBSは、マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブタジエンブロック共重合体である。
ポリプロピレン樹脂と、チタン酸カルシウム粉末と、エチレンプロピレンゴム粒子をポリプロピレン樹脂マトリクス中に分散させた樹脂と、酸変性SEBSと、ガラス繊維とを表1に示す割合で混合し、実験例と同様の工程を経て試料番号4,5の誘電体材料を得た。
(3)特性評価用試験片の作製
試料番号1〜5の誘電体材料を加熱溶融しながら、金型内に射出成形し、厚み膨張率及び比誘電率の変化率の測定に供する直径55mm×厚み1.3mmの円板状の試験片を得た。
(4)円板状の試験片における厚み膨張率と比誘電率の変化率の測定
測定前後の処理として、前記(3)で得られた円板状の試験片を熱衝撃試験機内で、まず、−40℃に保たれた試験槽に30分間静置した後、85℃に保たれた別の試験槽に前記円板状の試験片を移動させて30分間静置するという操作を1サイクルとして、50サイクル行った。
厚み膨張率(%)の測定については、まず、熱衝撃試験機内に静置する前に、円板状の試験片について、中央部周辺の厚みをマイクロメーターを用いて5箇所測定し、その平均値を静置前の厚み(μm)とした。次に、50サイクルの熱衝撃試験後に、静置前に測定した中央部周辺の厚みを再度5箇所測定し、その平均値を50サイクル後の厚み(μm)とした。さらに、静置前の厚みと50サイクル後の厚みから、以下に示す式(1)を用いて厚み膨張率(%)を算出した。更に、試験片の変形の有無を確認するために、24時間、150℃の高温状態下に試験片を置いた後の試験片の変形の有無を確認した。
厚み膨張率(%)={(50サイクル後の厚み−静置前の厚み)/静置前の厚み}×100 ・・・(1)
比誘電率の変化率(%)は、熱衝撃試験機内に静置する前と、50サイクル経過後に試験機内から取り出した直後とにおける円板状の試験片の比誘電率(εr)について、それぞれネットワークアナライザー(装置名:HP8510/アジレントテクノロジー製)を用いて測定し、以下に示す式(2)を用いて算出した。
比誘電率の変化率(%)={(50サイクル後の比誘電率−静置前の比誘電率)/静置前の比誘電率}×100 ・・・(2)
測定の結果、非晶質ポリオレフィンを含む試料番号1〜3の試験片は、厚み膨張率が0.2%以下であり、更に高温状態下に長時間置かれたとしても試験片に変形が生じず、誘電体アンテナ1に用いる誘電体材料として適するものであった。これは、試料番号1〜3の試験片では、非晶質ポリオレフィンが結晶性の熱可塑性樹脂の非結晶部に分子溶解した結果、熱可塑性樹脂の結晶部が多く残存し、融点が低下しないためである。
一方、ゴム粒子を含むオレフィン系熱可塑性エラストマーを含む試料番号4の試験片は、脆く崩れやすいため、厚み膨張率を計測することができず、誘電体アンテナ1に用いる誘電体材料として適さないものであった。これは、セラミック粉末及びガラス繊維に加えて、ゴム粒子がフィラーの役割を果たすため、フィラーの含有量が増大し、樹脂成分の割合が減少したためである。また、ゴム粒子を含むオレフィン系熱可塑性エラストマーを含む試料番号5の試験片については、厚み膨張率が0.5%以上であり、更に、試験片に変形が生じ、誘電体アンテナ1に用いる誘電体材料として適さないものであった。これは、結晶性の熱可塑性樹脂の結晶部と、ゴム粒子とが共重合してしまい、熱可塑性樹脂の結晶部が減少し、誘電体材料の融点が低下したためである。
以上のように、誘電体アンテナ1の誘電体材料に、ゴム粒子を含むオレフィン系熱可塑性エラストマーの代わりに非晶質ポリオレフィンを用いることにより、誘電体アンテナ1の耐熱性を向上させることができた。
また、非晶質ポリオレフィンを含む試料番号1〜3の試験片では、比誘電率の変化率が±0.5%以内であり、誘電体アンテナ1に用いる誘電体材料として適するものであった。これは、非晶質ポリオレフィンが、結晶性の熱可塑性樹脂中に粒子のまま残存することなく、結晶性の熱可塑性樹脂の非結晶部に分子溶解した結果、セラミック粉末をより多く充填することができたためである。
一方、ゴム粒子を含むオレフィン系熱可塑性エラストマーを含む試料番号4の試験片は、脆く崩れやすいため、比誘電率の変化率を計測することができず、誘電体アンテナ1に用いる誘電体材料として適さないものであった。ゴム粒子を含むオレフィン系熱可塑性エラストマーを含む試料番号5の試験片については、比誘電率の変化率の絶対値も0.5より大きくなり、誘電体アンテナ1に用いる誘電体材料には適さないものであった。これは、ゴム粒子を含むオレフィン系熱可塑性エラストマーの充填率が高いため、セラミック粉末の充填率が低下したためである。
なお、誘電体ブロック2は、表1に示すように、非晶質ポリオレフィンを20体積%以上含んでいることが好ましい。これにより、誘電体アンテナ1の耐熱性及びアンテナ特性をより向上させることが可能となる。
なお、非晶質ポリオレフィンを含む誘電体ブロック用複合材料については、比誘電率の変化率に影響を与えない程度であれば、ガラス繊維やカーボン繊維等の無機繊維を添加することで、誘電体ブロック用複合材料としての機械的強度を向上させることができる。
更には、誘電体材料に、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤等の添加剤を、比誘電率の変化率に影響を与えない程度であれば、適宜、添加することができる。
本発明の実施形態に係る誘電体アンテナの斜視図である。 従来の誘電体材料の顕微鏡写真の模式図である。
符号の説明
1 誘電体アンテナ
2 誘電体ブロック
3(3a,3b) 放射電極
4 給電電極
5 接地電極

Claims (3)

  1. 誘電体ブロックと、該誘電体ブロックに設けられた放射電極と給電電極と接地電極とを備えた誘電体アンテナであって、
    前記誘電体ブロックは、結晶性の熱可塑性樹脂と、セラミック粉と、非晶質ポリオレフィンとを含むことを特徴とする誘電体アンテナ。
  2. 前記非晶質ポリオレフィンは、プロピレン−1−ブテン共重合体であること、
    を特徴とする請求項1に記載の誘電体アンテナ。
  3. 前記誘電体ブロックは、非晶質ポリオレフィンを20体積%以上含んでいること、
    を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の誘電体アンテナ。
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