JP2008099122A - バーチャルサラウンドシステム及びクロストークキャンセル方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 音像の広がり感を得ることができる2人用バーチャルサラウンドシステムを提供する。
【解決手段】 2チャンネルのチャンネル信号L、Rを処理して左スピーカSPL、右スピーカSPR、中央スピーカSPCのスピーカから音声を再生するための音声信号処理装置100は、受聴者Aの右耳に左スピーカSPLから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を中央スピーカSPCより出力する第1クロストークキャンセル手段3と、受聴者Bの左耳に右スピーカSPRから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を中央スピーカSPCより出力する第2クロストークキャンセル手段4とを備え、それぞれのクロストークキャンセル手段には、チャンネル信号L、R毎に頭部伝達関数に基づいて音像を定位させるためのフィルタ係数h1〜h4が設定された一対のクロストークキャンセル用フィルタ11〜14を備えた。
【選択図】 図1

Description

本発明は、マルチチャンネル音声信号をスピーカにより再生する際のバーチャルサラウンドシステム及びクロストークキャンセル方法に関し、特に2人の受聴者を対象にしたバーチャルサラウンドシステム及びクロストークキャンセル方法に関する。
従来より、マルチチャネル音声信号の再生には、受聴者の前方に左スピーカ、右スピーカ及び中央スピーカを設置し、頭部伝達関数を用いて、受聴者の横方向や後方の任意の位置に音像を定位させる方法を使用したサラウンド処理システムが提供されている。
この種の従来技術として、下記の特許文献1に開示された2人の受聴者に対するバーチャルサラウンドシステムがある。この「サラウンド処理システム」において、サラウンド左チャネル信号SLとサラウンド右チャネル信号SRとを加算手段により混合した後、第1のモノラル信号と第2のモノラル信号として仮想定位処理手段に供給するように構成されている。この仮想定位処理手段の第1の仮想定位出力は、左スピーカ及び右スピーカに供給し、第2の仮想定位出力は、中央スピーカに供給する。これにより、2人の受聴者に対して、それぞれの左右に仮想音源を生成することができる構成になっている。
WO00/24226
しかしながら、上記の特許文献1において、加算手段でサラウンド左チャネル信号SLとサラウンド右チャネル信号SRとを一旦モノラル化した後に、非相関処理手段を設けて、モノラル信号のような相関の大きい信号を出力すると受聴者に不自然な感じを与えてしまうため、第1のモノラル信号と第2のモノラル信号との間の相関度を小さくするようにしている。このため、音像がぼやけた広がり感になり、特定の音源位置からの音を再現できず、明瞭な音像の広がり感を得ることができないという問題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題を解決することができるバーチャルサラウンドシステムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係るバーチャルサラウンドシステムは、所定の間隔で配置した左スピーカ及び中央スピーカと、前記中央スピーカに対して前記左スピーカと概ね左右対称な位置に配置した右スピーカと、前記左、右、中央の各スピーカから音声を再生する音声信号処理装置とを備えたバーチャルサラウンドシステムであって、前記音声信号処理装置は、前記左スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の右耳に前記左スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力して前記左スピーカの音像を前記左スピーカの左側に定位させ、前記右スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の左耳に前記右スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力して前記右スピーカの音像を前記右スピーカの右側に定位させるクロストークキャンセル手段を備えることを特徴としている。
また、本発明に係るバーチャルサラウンドシステムは、前記クロストークキャンセル手段が、前記左スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の右耳に前記左スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力する第1クロストークキャンセル手段と、前記右スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の左耳に前記右スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力する第2クロストークキャンセル手段とを備えた
ことを特徴としている。
また、本発明に係るバーチャルサラウンドシステムは、前記第1クロストークキャンセル手段が、左チャンネル信号の信号源と前記左スピーカとの間に位置し前記左スピーカから音声を出力するためのフィルタ係数が頭部伝達関数に基づいて設定された第1クロストークキャンセル用フィルタと、前記左チャンネル信号の信号源と前記中央スピーカとの間に位置し前記左スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の右耳に前記左スピーカから届く音声をキャンセルするためのフィルタ係数が頭部伝達関数に基づいて設定された第2クロストークキャンセル用フィルタとを備え、前記第2クロストークキャンセル手段は、右チャンネル信号の信号源と前記右スピーカとの間に位置し前記右スピーカから音声を出力するためのフィルタ係数が頭部伝達関数に基づいて設定された第3クロストークキャンセル用フィルタと、
前記右チャンネル信号の信号源と前記中央スピーカとの間に位置し前記右スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の左耳に前記右スピーカから届く音声をキャンセルするためのフィルタ係数が頭部伝達関数に基づいて設定された第4クロストークキャンセル用フィルタとを備えたことを特徴としている。
また、本発明に係るバーチャルサラウンドシステムは、前記各フィルタ係数に、前記左スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の右耳に前記左スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力して前記左スピーカの音像を前記左スピーカの左側に定位させるための数値と、前記右スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の左耳に前記右スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力して前記右スピーカの音像を前記右スピーカの右側に定位させるための数値とが設定されたことを特徴としている。
また、本発明に係るバーチャルサラウンドシステムは、前記第1クロストークキャンセル用フィルタと前記第3クロストークキャンセル用フィルタのフィルタ係数が同一の数値に設定され、前記第2クロストークキャンセル用フィルタと前記第4クロストークキャンセル用フィルタのフィルタ係数が同一の数値に設定されたことを特徴としている。
また、本発明に係るクロストークキャンセル方法は、左、右、中央の各スピーカから音声を再生するバーチャルサラウンドシステムのクロストークキャンセル方法において、前記左スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の右耳に前記左スピーカから届く出力信号を前記中央スピーカでキャンセルし、前記右スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の左耳に前記右スピーカから届く出力信号を前記中央スピーカでキャンセルすることを特徴としている。
また、本発明に係るクロストークキャンセル方法は、前記左スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の右耳に前記左スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力する第1クロストークキャンセル工程と、前記右スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の左耳に前記右スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力する第2クロストークキャンセル工程とを有することを特徴としている。
また、本発明に係るクロストークキャンセル方法は、前記第1クロストークキャンセル工程が、左チャンネル信号の信号源と前記左スピーカとの間に位置し前記左スピーカから音声を出力するためのフィルタ係数を頭部伝達関数に基づいて第1クロストークキャンセル用フィルタに設定し、前記左チャンネル信号の信号源と前記中央スピーカとの間に位置し前記左スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の右耳に前記左スピーカから届く音声をキャンセルするためのフィルタ係数を頭部伝達関数に基づいて第2クロストークキャンセル用フィルタに設定することを含み、前記第2クロストークキャンセル工程が、右チャンネル信号の信号源と前記右スピーカとの間に位置し前記右スピーカから音声を出力するためのフィルタ係数を頭部伝達関数に基づいて第3クロストークキャンセル用フィルタに設定し、前記右チャンネル信号の信号源と前記中央スピーカとの間に位置し前記右スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の左耳に前記右スピーカから届く音声をキャンセルするためのフィルタ係数を頭部伝達関数に基づいて第4クロストークキャンセル用フィルタに設定する工程を含むことを特徴としている。
また、本発明に係るクロストークキャンセル方法は、前記各フィルタ係数に、前記左スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の右耳に前記左スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力して前記左スピーカの音像を前記左スピーカの左側に定位させるための数値と、前記右スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の左耳に前記右スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力して前記右スピーカの音像を前記右スピーカの右側に定位させるための数値とを設定することを特徴としている。
また、本発明に係るクロストークキャンセル方法は、前記第1クロストークキャンセル用フィルタと前記第3クロストークキャンセル用フィルタのフィルタ係数を同一の数値に設定し、前記第2クロストークキャンセル用フィルタと前記第4クロストークキャンセル用フィルタのフィルタ係数を同一の数値に設定することを特徴としている。
本発明によれば、2人の受聴者は、クロストークキャンセル手段により明瞭な音像の広がり感を得ることができる。
第1の実施の形態
図1は、本発明の第1の実施の形態である2人用バーチャルサラウンドシステムの構成を示す概略図である。この例の2人用バーチャルサラウンドシステムは、受聴者Aに対して概ね左右対称に前方位置に配置した左スピーカSPL及び中央スピーカSPCと、受聴者Bに対して概ね左右対称に前方位置に配置した右スピーカSPR及び中央スピーカSPCと、信号源1から出力される左チャンネル信号Lと信号源2から出力される右チャンネル信号Rとを処理し、スピーカSPL、SPR及びSPCから音声を再生するための音声信号処理装置100とから概略構成されている。
また、受聴者Aの受聴位置は、左スピーカSPLと中央スピーカSPCの間であってこれらのスピーカの前方に位置し、受聴者Bの受聴位置は、中央スピーカSPCと右スピーカSPRとの間であってこれらのスピーカの前方に位置する。なお、本実施の形態における受聴者AとBの受聴位置は、必ずしも中央スピーカSPCを基準に左右対称な位置である必要はなく、例えば図2のようにスピーカに対して前後した任意の位置であってよい。
音声信号処理装置100は、第1クロストークキャンセル手段3と第2クロストークキャンセル手段4とから構成される。第1クロストークキャンセル手段3は、左スピーカSPLから受聴者Aの右耳に届く音声を中央スピーカSPCからの音声でキャンセルする手段である。また、第2クロストークキャンセル手段4は、右スピーカSPRから受聴者Bの左耳に届く音声を中央スピーカSPCからの音声でキャンセルする手段である。
また、第1クロストークキャンセル手段3は、左チャンネル信号Lについて、頭部伝達関数に基づいて音像を定位させるためのフィルタ係数が設定された一対の第1クロストークキャンセル用フィルタ11と第2クロストークキャンセル用フィルタ12とから構成される。第1クロストークキャンセル用フィルタ11は、左チャンネル信号Lの信号源1と左スピーカSPLとの間に位置し、第2クロストークキャンセル用フィルタ12は、左チャンネル信号Lの信号源1と中央スピーカSPCとの間に位置する。また、第1クロストークキャンセル用フィルタ11には、フィルタ係数h1が設定され、第2クロストークキャンセル用フィルタ12にはフィルタ係数h2が設定されている。
第2クロストークキャンセル手段4も同様に、右チャンネル信号Rについて、頭部伝達関数に基づいて、音像を定位させるためのフィルタ係数が設定された一対の第3クロストークキャンセル用フィルタ13と第4クロストークキャンセル用フィルタ14とから構成される。第3クロストークキャンセル用フィルタ13は、右チャンネル信号Rの信号源2と右スピーカSPRとの間に位置し、第4クロストークキャンセル用フィルタ14は、右チャンネル信号Rの信号源2と中央スピーカSPCとの間に位置する。また、第3クロストークキャンセル用フィルタ13には、フィルタ係数h3が設定され、第4クロストークキャンセル用フィルタ14にはフィルタ係数h4が設定されている。
図2は、図1の構成において、受聴者A、Bの受聴位置における音像定位の概略図であり、第1クロストークキャンセル用フィルタ11に設定されたフィルタ係数h1と第2クロストークキャンセル用フィルタ12に設定されたフィルタ係数h2により、受聴者Aの受聴位置では左スピーカSPLの音像を左バーチャルスピーカVLの位置に定位させ、受聴者Bの受聴位置では左スピーカSPLの音像を左スピーカSPLと中央スピーカSPCとの間(左バーチャルスピーカVL'の位置)に定位させる。
また、第3クロストークキャンセル用フィルタ13に設定されたフィルタ係数h3と第4クロストークキャンセル用フィルタ14に設定されたフィルタ係数h4により、受聴者Bの受聴位置では右スピーカSPRの音像を右バーチャルスピーカVRの位置に定位させ、受聴者Aの受聴位置では右スピーカSPRの音像を右スピーカSPRと中央スピーカSPCとの間(右バーチャルスピーカVR'の位置)に定位させるものである。
このことにより、左スピーカSPLと中央スピーカSPCとの間であってその前方の領域に受聴者Aに対するスイートスポット5(バーチャル効果のある領域)が得られ、右スピーカSPRと中央スピーカSPCとの間であってその前方の領域に受聴者Bに対するスイートスポット6が得られる。
以下、図2に示した受聴者A、Bに対する2箇所のスイートスポット5、6を得るための処理について説明する。
図3は、受聴者Aに対して左スピーカSPLの音像を左スピーカSPLより外側(左スピーカSPLの更に左側)に定位させる場合をより詳しく示した説明図であり、各スピーカから受聴者Aの左右の耳までの頭部伝達関数は、それぞれ図3に示すようになっている。すなわち、左スピーカSPLから受聴者Aの左耳までの頭部伝達関数はhLL、左スピーカSPLから受聴者Aの右耳までの頭部伝達関数はhLR、中央スピーカSPCから受聴者Aの左耳までの頭部伝達関数はhCL、中央スピーカSPCから受聴者Aの右耳までの頭部伝達関数はhCRである。
VL、VL'は、左チャンネルLの信号をクロストークキャンセル用フィルタ11、12を通して左スピーカSPL、中央スピーカSPCから音声として再生することにより実現されるバーチャルスピーカであり、受聴者Aに対する左バーチャルスピーカVL、受聴者Bに対する左バーチャルスピーカVL'である。
左バーチャルスピーカVLから受聴者Aの左右の耳までの頭部伝達関数は、左耳まではhVLL、右耳まではhVLRである。
受聴者Aに対して左スピーカSPLの音像を左バーチャルスピーカVLの位置に定位させるには、下記の(1)式、(2)式の関係を満足させるように第1、第2クロストークキャンセル用フィルタ11、12のフィルタ係数h1、h2を決定する。
hVLL*L=(hLL*h1+hCL*h2)*L ・・・ (1)式
hVLR*L=(hLR*h1+hCR*h2)*L ・・・ (2)式
頭部伝達関数hLL、hLR、hCL、hCR、hVLL、hVLRは、実測により求めることができる。
但し、ここで求められたフィルタ係数h1、h2は、図2に示されるように、受聴者Aがスイートスポット5内に位置したときのクロストークキャンセル効果を奏するものであるが、受聴者Bの受聴位置においては、スイートスポット5の領域外となっているためクロストークキャンセル効果を奏しない。このときの受聴者Bに対する左スピーカSPLの音像は、左バーチャルスピーカVLの位置ではなく、左スピーカSPLと中央スピーカSPCとの間(図3の左バーチャルスピーカVL'の位置)に定位する。
図4は、受聴者Bに対して右スピーカSPRの音像を右スピーカSPRより外側(右スピーカSPRの更に右側)に定位させる場合をより詳しく示した説明図であり、各スピーカから受聴者Bの左右の耳までの頭部伝達関数は、それぞれ図4に示すようになっている。すなわち、右スピーカSPRから受聴者Bの左耳までの頭部伝達関数はhRL、右スピーカSPRから受聴者Bの右耳までの頭部伝達関数はhRR、中央スピーカSPCから受聴者Bの左耳までの頭部伝達関数はhCL4、中央スピーカSPCから受聴者Bの右耳までの頭部伝達関数はhCR4である。
VR、VR'は、右チャンネルRの信号をクロストークキャンセル用フィルタ13、14を通して右スピーカSPR、中央スピーカSPCから音声として再生することにより実現されるバーチャルスピーカであり、受聴者Bに対する右バーチャルスピーカVR、受聴者Aに対する左バーチャルスピーカVR'である。
右バーチャルスピーカVRから受聴者Bの左右の耳までの頭部伝達関数は、左耳まではhVRL、右耳まではhVRRである。
受聴者Bに対して右スピーカSPRの音像を右バーチャルスピーカVRの位置に定位させるには、下記の(3)式、(4)式の関係を満足させるように第3、第4クロストークキャンセル用フィルタ13、14のフィルタ係数h3、h4を決定する。
hVRL*R=(hRL*h3+hCL4*h4)*R ・・・ (3)式
hVRR*R=(hRR*h3+hCR4*h4)*R ・・・ (4)式
頭部伝達関数hRL、hRR、hCL4、hCR4、hVRL、hVRRは、実測により求めることができる。
但し、ここで求められたフィルタ係数h3、h4は、図2に示されるように、受聴者Bがスイートスポット6内に位置したときクロストークキャンセル効果を奏するものであるが、受聴者Aの受聴位置においては、スイートスポット6の領域外となっているためクロストークキャンセル効果を奏しない。このとき受聴者Aに対する右スピーカSPRの音像は、右バーチャルスピーカVRの位置ではなく、右スピーカSPRと中央スピーカSPCとの間(図4の右バーチャルスピーカVR'の位置)に定位する。
図5は、受聴者Aの左スピーカSPLの音像と受聴者Bの右スピーカSPRの音像とを同時に外側に定位させる場合の説明図であり、図3と図4とを合成した図である。
このように、本発明の第1の実施の形態によれば、受聴者の正面から遠いスピーカよりも、正面に近いスピーカの音像を外側に広げることにより、広がり感を向上させることができる。すなわち、図5に示すように、受講者Aの受聴位置においては、第1クロストークキャンセル手段3により、受聴者Aの正面に近い左スピーカSPLの左バーチャルスピーカVLを左スピーカSPLよりも更に左側に定位させ、受講者Bの受聴位置においては、第2クロストークキャンセル手段4により、受聴者Bの正面に近い右スピーカSPRの右バーチャルスピーカVRを右スピーカSPRよりも更に右側に定位させることにより、広がり感を向上させることができる。
以上のように、2人の受聴者の受聴位置では、それぞれ、図2に示すように、2箇所のスイートスポット5、6(バーチャル効果のある領域)が確保される。すなわち、受聴者Aに対してスイートスポット5が左スピーカSPLと中央スピーカSPCの間であってこれらのスピーカの前方における受聴者Aを含む領域に確保され、受聴者Bに対してスイートスポット6が右スピーカSPRと中央スピーカSPCの間であってこれらのスピーカの前方における受聴者Bを含む領域に確保される。この2箇所のスイートスポット5、6が確保されることにより、2人の受聴者A、Bは、それぞれの位置において、明瞭な音像の広がり感を得ることができる。
第2の実施の形態
図6は、本発明の2人用バーチャルサラウンドシステムにおいて、第2の実施の形態である受聴者Aの左スピーカSPLの音像と受聴者Dの右スピーカSPRの音像とを同時に外側に広げさせる場合の説明図であり、受聴者A、Dの受聴位置が中央スピーカSPCの位置を通る一点鎖線で示された対称軸Cを基準に左右対称な位置関係である場合を例に示す。
受聴者Aに対して左スピーカSPLの音像を左スピーカSPLより外側(左スピーカSPLの更に左側)に定位させる場合の処理は、第1の実施の形態と同様なので省略し、受聴者Dに対して右スピーカSPRの音像を右スピーカSPRより外側(右スピーカSPRの更に右側)に定位させる場合の処理を説明する。
各スピーカから受講者Dの左右の耳までの頭部伝達関数は、それぞれ図6に示すようになっている。すなわち、右スピーカSPRから受聴者Dの左耳までの頭部伝達関数はhRL6、右スピーカSPRから受聴者Dの右耳までの頭部伝達関数はhRR6、中央スピーカSPCから受聴者Dの左耳までの頭部伝達関数はhCL6、中央スピーカSPCから受聴者Cの右耳までの頭部伝達関数はhCR6である。
VR2、VR'は、右チャンネルRの信号をクロストークキャンセル用フィルタ13、14を通して右スピーカSPR、中央スピーカSPCから音声として再生することにより実現されるバーチャルスピーカであり、受聴者Dに対する右バーチャルスピーカVR2、受聴者Aに対する右バーチャルスピーカVR'である。
右バーチャルスピーカVRから受聴者Dの左右の耳までの頭部伝達関数は、左耳まではhVRL6、右耳まではhVRR6である。
受聴者A、Dの受聴位置の対称性を考慮すると、以下に示すように、受聴者Dの頭部伝達関数は、それぞれ、受聴者Aの頭部伝達関数と同一の頭部伝達関数であると考えることができる。すなわち下記の関係が成立する。
hRL6=hLR、hRR6=hLL、hCL6=hCR、hCR6=hCL、
hVRL6=hVLR、hVRR6=hVLL
したがって、第3、第4クロストークキャンセル用フィルタ13、14のフィルタ係数h5、h6の値は、以下に示すように、それぞれ、第1、第2クロストークキャンセル用フィルタ11、12のフィルタ係数h1、h2の値と同一の値を設定することができる。
h6=h2、h5=h1
このときの右バーチャルスピーカVR2の位置は、受聴者A、Dの受聴位置が中央スピーカSPCの位置を通る一点鎖線で示された対称軸Cを基準に左バーチャルスピーカVLと左右対称な位置に定位する。
但し、ここでのフィルタ係数h5、h6は、図7に示されるように、受聴者Dがスイートスポット7内に位置したときのクロストークキャンセル効果を奏するものであるが、受聴者Aの受聴位置においては、スイートスポット7の領域外となっているためクロストークキャンセル効果を奏しない。このとき右スピーカSPRの音像は、右バーチャルスピーカVR2の位置ではなく、右スピーカSPRと中央スピーカSPCとの間(図6の右バーチャルスピーカVR'の位置)に定位する。
このように、本発明の第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に受聴者の正面に近いスピーカの音像を外側に広げることにより、広がり感を向上させることができる。図7は、受聴者A、Dの受聴位置における音像定位の概略図である。すなわち、図7に示すように、受講者Aの受聴位置においては、第1クロストークキャンセル手段3により、受聴者Aの正面に近い左スピーカSPLの左バーチャルスピーカVLを左スピーカSPLよりも外側(左スピーカSPLの更に左側)に定位させ、受講者Dの受聴位置においては、第2クロストークキャンセル手段4により、受聴者Dの正面に近い右スピーカSPRの右バーチャルスピーカVR2を右スピーカSPRよりも外側(右スピーカSPRの更に右側)に定位させることにより、広がり感を向上させることができる。このことにより、2人の受聴者A、Dに対して、それぞれ、スイートスポットが確保される。
また、受聴者Dの受聴位置を中央スピーカSPCの位置を基準に左右対称な位置関係にすることにより、第3、第4クロストークキャンセル用フィルタ13、14のフィルタ係数h5、h6の値を、それぞれ、第1、第2クロストークキャンセル用フィルタ11、12のフィルタ係数h1、h2の値と同一の価を設定することができ、フィルタ係数の設定が容易になるという効果がある。
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用することができる。
本発明の第1の実施の形態に係る2人用バーチャルサラウンドシステムの構成を示す概略図である。 本発明の同システムにおける視聴者A、Bの受聴位置における音像定位の概略図である。 本発明の同システムにおける受聴者Aに対して左スピーカSPLの音像を左スピーカSPLより外側に定位させる場合の説明図である。 本発明の同システムにおける受聴者Bに対して右スピーカSPRの音像を右スピーカSPRより外側に定位させる場合の説明図である。 本発明の同システムにおける受聴者Aの左スピーカSPLの音像と受聴者Bの右スピーカSPRの音像とを同時に外側に定位させる場合の説明図である。 本発明の第2の実施の形態に係る受聴者Aの左スピーカSPLの音像と受聴者Dの右スピーカSPRの音像とを同時に外側に定位させる場合の説明図である。 本発明の同システムにおける受聴者A、Dの受聴位置における音像定位の概略図である。
符号の説明
1 左チャンネル信号Lの信号源
2 右チャンネル信号Rの信号源
3 第1クロストークキャンセル手段
4 第2クロストークキャンセル手段
5〜7 スイートスポット
SPL 左スピーカ
SPR 右スピーカ
SPC 中央スピーカ
100 音声信号処理装置
VL、VL'、VL2 左バーチャルスピーカ
VR、VR'、VR2 右バーチャルスピーカ
A、B、D 受聴者
C 対称軸
11 第1クロストークキャンセル用フィルタ
12 第2クロストークキャンセル用フィルタ
13 第3クロストークキャンセル用フィルタ
14 第4クロストークキャンセル用フィルタ
h1 第1クロストークキャンセル用フィルタのフィルタ係数
h2 第2クロストークキャンセル用フィルタのフィルタ係数
h3、h5 第3クロストークキャンセル用フィルタのフィルタ係数
h4、h6 第4クロストークキャンセル用フィルタのフィルタ係数
hVLL、hVLR、hLL、hLR、hCL、hCR、hVRL、hVRR、hCL4、hCR4、
hRL、hRR、hVRL6、hVRR6、hCL6、hCR6、hRL6、hRR6 頭部伝達関数

Claims (10)

  1. 所定の間隔で配置した左スピーカ及び中央スピーカと、
    前記中央スピーカに対して前記左スピーカと概ね左右対称な位置に配置した右スピーカと、
    前記左、右、中央の各スピーカから音声を再生する音声信号処理装置とを備えたバーチャルサラウンドシステムであって、
    前記音声信号処理装置は、
    前記左スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の右耳に前記左スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力して前記左スピーカの音像を前記左スピーカの左側に定位させ、
    前記右スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の左耳に前記右スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力して前記右スピーカの音像を前記右スピーカの右側に定位させるクロストークキャンセル手段を備えることを特徴とするバーチャルサラウンドシステム。
  2. 前記クロストークキャンセル手段は、
    前記左スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の右耳に前記左スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力する第1クロストークキャンセル手段と、
    前記右スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の左耳に前記右スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力する第2クロストークキャンセル手段とを備えた
    ことを特徴とする請求項1記載のバーチャルサラウンドシステム。
  3. 前記第1クロストークキャンセル手段は、
    左チャンネル信号の信号源と前記左スピーカとの間に位置し前記左スピーカから音声を出力するためのフィルタ係数が頭部伝達関数に基づいて設定された第1クロストークキャンセル用フィルタと、
    前記左チャンネル信号の信号源と前記中央スピーカとの間に位置し前記左スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の右耳に前記左スピーカから届く音声をキャンセルするためのフィルタ係数が頭部伝達関数に基づいて設定された第2クロストークキャンセル用フィルタとを備え、
    前記第2クロストークキャンセル手段は、
    右チャンネル信号の信号源と前記右スピーカとの間に位置し前記右スピーカから音声を出力するためのフィルタ係数が頭部伝達関数に基づいて設定された第3クロストークキャンセル用フィルタと、
    前記右チャンネル信号の信号源と前記中央スピーカとの間に位置し前記右スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の左耳に前記右スピーカから届く音声をキャンセルするためのフィルタ係数が頭部伝達関数に基づいて設定された第4クロストークキャンセル用フィルタとを備えた
    ことを特徴とする請求項1又は2記載のバーチャルサラウンドシステム。
  4. 前記各フィルタ係数には、
    前記左スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の右耳に前記左スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力して前記左スピーカの音像を前記左スピーカの左側に定位させるための数値と、
    前記右スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の左耳に前記右スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力して前記右スピーカの音像を前記右スピーカの右側に定位させるための数値とが設定されたことを特徴とする請求項3記載のバーチャルサラウンドシステム。
  5. 前記第1クロストークキャンセル用フィルタと前記第3クロストークキャンセル用フィルタのフィルタ係数が同一の数値に設定され、前記第2クロストークキャンセル用フィルタと前記第4クロストークキャンセル用フィルタのフィルタ係数が同一の数値に設定されたことを特徴とする請求項3又は4記載のバーチャルサラウンドシステム。
  6. 左、右、中央の各スピーカから音声を再生するバーチャルサラウンドシステムのクロストークキャンセル方法において、
    前記左スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の右耳に前記左スピーカから届く出力信号を前記中央スピーカでキャンセルし、前記右スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の左耳に前記右スピーカから届く出力信号を前記中央スピーカでキャンセルすることを特徴とするクロストークキャンセル方法。
  7. 前記左スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の右耳に前記左スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力する第1クロストークキャンセル工程と、
    前記右スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の左耳に前記右スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力する第2クロストークキャンセル工程とを有する
    ことを特徴とする請求項6記載のクロストークキャンセル方法。
  8. 前記第1クロストークキャンセル工程は、
    左チャンネル信号の信号源と前記左スピーカとの間に位置し前記左スピーカから音声を出力するためのフィルタ係数を頭部伝達関数に基づいて第1クロストークキャンセル用フィルタに設定し、
    前記左チャンネル信号の信号源と前記中央スピーカとの間に位置し前記左スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の右耳に前記左スピーカから届く音声をキャンセルするためのフィルタ係数を頭部伝達関数に基づいて第2クロストークキャンセル用フィルタに設定する工程を含み、
    前記第2クロストークキャンセル工程は、
    右チャンネル信号の信号源と前記右スピーカとの間に位置し前記右スピーカから音声を出力するためのフィルタ係数を頭部伝達関数に基づいて第3クロストークキャンセル用フィルタに設定し、
    前記右チャンネル信号の信号源と前記中央スピーカとの間に位置し前記右スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の左耳に前記右スピーカから届く音声をキャンセルするためのフィルタ係数を頭部伝達関数に基づいて第4クロストークキャンセル用フィルタに設定するする工程を含む
    ことを特徴とする請求項6又は7記載のクロストークキャンセル方法。
  9. 前記各フィルタ係数には、
    前記左スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の右耳に前記左スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力して前記左スピーカの音像を前記左スピーカの左側に定位させるための数値と、
    前記右スピーカと前記中央スピーカの間であってその前方に位置する受聴者に対し該受聴者の左耳に前記右スピーカから届く出力信号をキャンセルするキャンセル信号を前記中央スピーカより出力して前記右スピーカの音像を前記右スピーカの右側に定位させるための数値とを設定することを特徴とする請求項8記載のクロストークキャンセル方法。
  10. 前記第1クロストークキャンセル用フィルタと前記第3クロストークキャンセル用フィルタのフィルタ係数を同一の数値に設定し、前記第2クロストークキャンセル用フィルタと前記第4クロストークキャンセル用フィルタのフィルタ係数を同一の数値に設定することを特徴とする請求項8又は9記載のクロストークキャンセル方法。
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