JP2008081798A - 高周波誘導焼戻し方法および高周波誘導焼戻しプログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本高周波誘導焼戻し方法は、高周波誘導加熱コイル11を用いてワークWの焼戻し処理を行う方法であって、高周波誘導加熱コイル11によってワークWの熱処理部Waを加熱しながら、熱処理部Waにおける表面と内部との温度を測定し、予め設定された表面温度の上限値・下限値に応じて、表面と内部の温度が均一になるまで高周波誘導加熱コイル11のON/OFF制御を行う。このような焼戻し処理を、複数の焼戻し条件によって実施した後、これらの条件を記憶するとともに、所定の条件に基づいて最適な焼戻し条件の選定を行う。
【選択図】図5
Description
例えば、特許文献1には、ワークを高周波誘導加熱して連続的に焼入れ処理を行った後、炉内にワークをセットしてバッチ式で焼戻し処理を行う高周波処理方法が開示されている。
すなわち、上記公報に開示された高周波誘導焼戻し方法では、ワークへの焼入れ処理を高周波加熱によって行った後、炉によるバッチ処理で焼戻し処理を行っていることが開示されているだけであり、最適な焼戻し条件の選定については何ら考慮されていない。
通常、このような焼戻し処理の最適条件を探る際には、被加熱体の表面および内部の温度をセンシングしながら、手動で高周波誘導加熱コイルのON/OFF制御を行い、表面および内部の温度が均一になるまでの複数のデータを取得する。しかし、このような従来の焼戻し方法では、高周波誘導加熱コイルのON/OFF制御を手動で行っているため、データを採取する際には常に人がついている必要があり面倒であった。
これにより、最適な焼戻し条件を探るためのデータ採取作業を自動化することができるため、複数の焼戻し条件によるデータの採取作業を、無人で行うことが可能になる。この結果、焼戻し処理を行う部品が複数種類ある場合でも、部品ごとの最適な焼戻し条件の選定までの作業を、従来よりも大幅に効率化することができる。
ここでは、上記第5のステップにおいては、焼戻しパラメータの差を基準にして最適なテストパターンの選定を行う。なお、焼戻しパラメータ(P)は、温度(T)と時間(t)と定数(C)とを用いて、以下の関係式(1)によって算出される。
P=T×(logt+C) ・・・・・(1)
これにより、最適な焼戻し条件を容易に選択することができる。この結果、焼戻しパラメータに対応する焼戻し処理後の被加熱体の表面硬度を所定値以上に維持して、所定の製品規格を満たすことができる。
これにより、最も効率よく焼戻し処理を行うことが可能な条件を選定することができるため、焼戻し処理の効率化が図れる。また、選定条件として、上述した焼戻しパラメータの差が小さいものという条件も併せて選定を行うことで、最適な焼戻し条件を効率よく実施することが可能になる。
ここでは、最適な焼戻し条件を選定するための被加熱体の表面および内部の温度のセンシングについて、2つ以上の温度センサを用いて行う。
これにより、基本的に表面用の温度センサと内部用の温度センサの2つを用いる一方、被加熱体の形状によっては表面用の温度センサ1つと内部用の温度センサ2つ以上を用いてセンシングを行うことができる。この結果、複数の温度センサにおけるセンシング結果に基づいて、より最適な焼戻し条件を選定することが可能になる。
ここでは、最適条件として選定された焼戻し条件によって処理された被加熱体の性能検査を行う。
ここでは、被加熱体の検査の具体例として、被加熱体の表面硬度と残留応力とを示す。
これにより、表面硬度および残留応力の少なくとも一方が、所定の性能に達していない被加熱体の焼戻し条件については、最適な条件ではないと判断することができる。この結果、より確実に所定の製品性能を満たす焼戻し条件を選定することができる。
ここでは、一旦最適な焼戻し条件として選定された条件によって処理された被加熱体の性能を検査した結果に応じて、その条件を最終的な最適条件とするか否かを決定する。
これにより、実際の製品の性能まで確認して、万一、その被加熱体の性能が低い場合には、優先順位が次の条件を選定することで、より確実に最適な焼戻し条件を選定することができる。
ここでは、上述した各ステップを経て最適な焼戻し条件として選定された条件を最終的な焼戻し条件として用いて、複数の被加熱体をバッチ式等で連続的に焼戻し処理して、製品の量産化を行う。
通常、このような焼戻し処理の最適条件を探る際には、被加熱体の表面および内部の温度をセンシングしながら、手動で高周波誘導加熱コイルのON/OFF制御を行い、表面および内部の温度が均一になるまでの複数のデータを取得する。しかし、このような従来の焼戻し方法では、高周波誘導加熱コイルのON/OFF制御を手動で行っているため、データを採取する際には常に人がついている必要があるため面倒であった。
これにより、最適な焼戻し条件を探るためのデータ採取作業を自動化することができるため、複数の焼戻し条件によるデータの採取作業を、無人で行うことが可能になる。この結果、焼戻し処理を行う部品が複数種類ある場合でも、部品ごとの最適な焼戻し条件の選定までの作業を、従来よりも大幅に効率化することができる。
[高周波誘導焼戻し装置10の構成]
本実施形態に係る高周波誘導焼戻し方法を実行する高周波誘導焼戻し装置10は、図1に示すように、ワーク(被加熱体)Wの円筒部分の内周面側に配置された高周波誘導加熱コイル11と、この高周波誘導加熱コイル11のON/OFF制御を行う制御部12と、ワークWに含まれる熱処理部Waの表面温度を検知する温度センサS1と、熱処理部Waの内部の温度を検知する温度センサS2と、を備えている。
そして、制御部12によって高周波誘導加熱コイル11のON/OFF制御を行いながら、温度センサS1,S2によって検知される所望の熱処理部Waの表面および内部の温度を均一化させる。
P=T×(logt+C) ・・・・・(1)
つまり、この焼戻しパラメータがほぼ等しい場合には、焼戻し処理の温度や時間を変更した場合でも、ほぼ一定の焼戻し効果を得ることができる。
本実施形態では、上述した構成を備えた高周波誘導焼戻し装置10において、例えば、形状の異なる各部品ごとに最適な焼戻し条件の選定を行う際の処理の流れについて、図5および図6のフローチャートを用いて説明すれば以下の通りである。
すなわち、まず、ステップS1において、高周波誘導焼戻し装置10における所定の位置にワークWをセットして、高周波誘導加熱コイル11をワークWの内周面側に挿入する。
次に、ステップS3において、高周波誘導加熱コイル11の電源をONにして電流を流し、ワークWの熱処理部Waに対する誘導加熱を開始する。
次に、ステップS4において、上述した表面温度の上限値(220℃)と下限値(190℃)とに基づいて、高周波誘導加熱コイル11のON/OFF制御によって、熱処理部Waにおける表面と内部との温度が均一になるように温度コントロールを行う。
次に、ステップS6において、ステップS5において算出された焼戻しパラメータが所定の設定値に達したか否かを判定する。ここで、焼戻しパラメータが所定の値に達していない場合には、ステップS4へ戻って繰り返し高周波誘導加熱コイル11をON/OFFして温度コントロールが行われる。一方、焼戻しパラメータが所定の設定値に達している場合には、焼戻し処理が完了したものと判断して、ステップS7へ進む。
次に、ステップS8において、予め用意された複数の焼戻し条件によるテストのうち、全てのテストを完了したか否かを判定する。ここで、まだ実施されていない焼戻し条件でのテストが残っている場合には、ステップS3へ戻り、異なる焼戻し条件を設定して再度誘導加熱を開始して焼戻し処理を行う。一方、全ての焼戻し条件によるテストが完了した場合には、ステップS9へと進む。
次に、ステップS10において、ステップS9において記憶された各焼戻し条件の中から、所定の基準に基づいて焼戻し条件の順位付けを行うとともに、所定の基準に最も適した焼戻し条件を選定する。本実施形態では、最適な焼戻し条件の選定の基準として、熱処理部Waの表面と内部とにおける焼戻しパラメータの積算値の差が小さいものを用いている。なお、表面と内部とにおける焼戻しパラメータの差は、図3に示す表面温度と内部温度の遷移を示す折れ線とX軸との間に形成されるグラフの面積の差として表される。このため、昇温時から均熱時にかけて熱処理部Waの表面と内部とにおける温度差が少なく、焼戻し時間が短いものが最適な焼戻し条件として選定される。
すなわち、本実施形態の高周波誘導焼戻し方法では、ステップS11からステップS16にかけて、選定された焼戻し条件による焼戻し処理が施されたワークWをサンプリングし、このワークWの表面硬度等に関する検査を行って、本当に焼戻し条件が最適なものであるか否かをチェックする工程を含んでいる。
次に、ステップS12において、ワークWが、高周波誘導焼戻し装置10における所定の位置へセットされる。
次に、ステップS13において、高周波誘導加熱コイル11を用いて、所定の条件により、ワークWの熱処理部Waに対して焼入れ処理を行う。
次に、ステップS15において、焼戻し処理が施されたワークWの熱処理部Waにおける表面硬度や残留応力に関する品質検査が行われる。
次に、ステップS16において、上記品質検査の結果、品質が所定の基準を満たすものであるか否かを判定する。ここで、所定の基準を満たさない場合には、選定された焼戻し条件が最適ではないと判断して、2番目に順位付けされた焼戻し条件により、再度焼戻し処理を行う。一方、所定の基準を満たす場合には、ステップS17へと進む。
次に、ステップS18において、最終的に選定された焼戻し条件を設定し、各部品ごとに最適な焼戻し効果が得られるように、それぞれ量産化を行う。
(1)
本実施形態の高周波誘導焼戻し方法は、高周波誘導加熱コイル11を用いてワークWの焼戻し処理を行う方法であって、図5に示すように、高周波誘導加熱コイル11によってワークWの熱処理部Waを加熱しながら、熱処理部Waにおける表面と内部との温度を測定し、予め設定された表面温度の上限値・下限値に応じて、表面と内部の温度が均一になるまで高周波誘導加熱コイル11のON/OFF制御を行う。そして、このような焼戻し処理を、複数の焼戻し条件によって実施した後、これらの条件を記憶するとともに、所定の条件に基づいて最適な焼戻し条件の選定を行う。
本実施形態の高周波誘導焼戻し方法では、図5に示すように、高周波誘導加熱コイル11のON/OFF制御を自動的に行って取得された複数の焼戻し条件のうち、最適な条件を選定する際の所定条件として、熱処理部Waにおける表面と内部とにおける焼戻しパラメータ(上記関係式(1)参照)の積算値の差が小さいものを用いている。
(3)
本実施形態の高周波誘導焼戻し方法では、図1に示すように、複数の温度センサS1,S2を用いて、ワークWの熱処理部Waにおける表面と内部の温度を測定する。
(4)
本実施形態の高周波誘導焼戻し方法では、図6に示すように、焼戻しパラメータ等の基準によって最適な焼戻し条件を選定した後、その条件によって処理されたワークWについて品質検査を行う。
(5)
本実施形態の高周波誘導焼戻し方法では、図6に示すように、最適な焼戻し条件として選定された条件で処理されたワークWについて、表面硬度および残留応力に関する品質検査を行う。
(6)
本実施形態の高周波誘導焼戻し方法では、図6に示すように、上述した品質面での検査結果が所定の品質性能を満たさない場合には、再度、最適な焼戻し条件の選定を行う。
本実施形態の高周波誘導焼戻し方法では、図6に示すように、最適な焼戻し条件として選定された条件を設定して、複数のワークWをセットして製品の量産化を行う。
これにより、効率よく選定された最適な焼戻し条件によって焼戻し処理を行うことで、製品の量産を効率よく行うことができる。特に、図6に示すように、表面硬度等の検査も行って品質面での検証がなされた焼戻し条件に基づいて製品の量産化を行うことで、より確実に、性能面でも優れた製品を効率よく実施することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、本発明を高周波誘導焼戻し方法として説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
この場合でも、各種焼戻し条件のデータ取得から最適条件の選定までの処理の自動化により、処理を効率よく行うことができるという、上記と同様の効果を得ることができる。
(B)
上記実施形態では、図4に示すように、被加熱体であるワークWの材質として、炭素鋼(S48C)を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
この場合でも、図7(a)および図7(b)に示すように、焼戻しパラメータと表面硬度(HRc)との相関は、図4に示す炭素鋼(S48C)と近似しているため、これらの他の材質を被加熱体のワークとして用いた場合でも、上記と同様の効果を得ることができる。
上記実施形態では、図5に示すステップS10のように、最適な焼戻し条件を選定する際の基準として、ワークWの表面と内部とにおける焼戻しパラメータ(温度、時間)の積算値の差が小さいものを例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
上記実施形態では、最適な焼戻し条件を選定した後、その条件によって焼戻し処理されたワークWの検査を行って、要求される所定の性能を有しているか否かをチェックする例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、最適な焼戻し条件の選定後、その条件を用いてそのまま量産化を行ってもよい。
(E)
上記実施形態では、最適な焼戻し条件の選定後に、表面硬度と残留応力についてのワークWの検査を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
(F)
上記実施形態では、最適な焼戻し条件を選定後、複数のワークWをセットして、焼戻し処理を量産化する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
(G)
上記実施形態では、被加熱体として、建設機械に搭載される部品(ワークW)を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
(H)
上記実施形態では、最適な焼戻し条件を選定するためのデータ採取を自動化するために、ワークWの熱処理部Waにおける表面温度の上限値と下限値とを220℃と190℃とにそれぞれ設定した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、上限値と下限値の設定値を変更した場合には、焼戻し処理の効果に影響が出ることも考えられるが、焼戻しパラメータが一定であれば、表面硬度等の性能面への影響はほとんどないことが分かっている。このため、設定温度を変えた場合でも、ほぼ一定の性能を維持したい場合には、設定温度を変更した際にはそれに合わせて時間も変更して焼戻しパラメータをほぼ一定とすることがより好ましい。
上記実施形態では、2つの温度センサS1,S2を用いて、ワーク(被加熱体)Wの表面と内部との温度を測定しながら焼戻し処理を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、被加熱体の形状が複雑な場合等においては、3つ以上の温度センサを用いて、被加熱体の各部の温度を測定して焼戻し処理を行ってもよい。
11 高周波誘導加熱コイル
12 制御部
S1,S2 温度センサ
W ワーク(被加熱体)
Wa 熱処理部
Claims (9)
- 被加熱体に対向する位置に配置された高周波誘導加熱コイルを用いて、前記被加熱体の焼戻し処理を行う高周波誘導焼戻し方法であって、
所定の位置へセットされた前記被加熱体を前記高周波誘導加熱コイルによって加熱しながら、前記被加熱体の表面および内部の温度を測定する第1のステップと、
予め設定された表面温度の上限値と下限値とに基づいて、前記被加熱体の表面と内部との温度が均一になるまで前記高周波誘導加熱コイルのON/OFF制御を行う第2のステップと、
前記第1・第2のステップを、焼戻し条件を変えた複数のテストパターンについて繰り返し行う第3のステップと、
前記第3のステップにおいて得られた前記複数のテストパターンの結果を記憶する第4のステップと、
前記複数のテストパターンの結果の中から、所定条件に基づいて最適な焼戻し条件を選定する第5のステップと、
を備えている高周波誘導焼戻し方法。 - 前記第5のステップにおける前記所定条件には、前記被加熱体の表面および内部の焼戻しパラメータの差が小さいものが含まれる、
請求項1に記載の高周波誘導焼戻し方法。 - 前記第5のステップにおける前記所定条件には、前記被加熱体の表面および内部の焼戻し完了までに要する時間が短いものが含まれる、
請求項1または2に記載の高周波誘導焼戻し方法。 - 前記第1のステップでは、複数の温度センサを用いて、前記被加熱体の表面および内部の温度を測定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の高周波誘導焼戻し方法。 - 前記第5のステップにおいて選定された条件によって処理された前記被加熱体の検査を行う第6のステップをさらに備えている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の高周波誘導焼戻し方法。 - 前記第6のステップでは、前記被加熱体の硬度および残留応力の少なくとも一方に関する検査を行う、
請求項5に記載の高周波誘導焼戻し方法。 - 前記第6のステップにおける検査結果に基づいて、前記最適な焼戻し条件の選定を再度行う、
請求項5または6に記載の高周波誘導焼戻し方法。 - 前記最適な焼戻し条件に基づいて、複数の前記被加熱体の焼戻し処理を行う第7のステップを、さらに備えた、
請求項1から7のいずれか1項に記載の高周波誘導焼戻し方法。 - 被加熱体に対向する位置に配置された高周波誘導加熱コイルを用いて、前記被加熱体の焼戻し処理を行う高周波誘導焼戻しプログラムであって、
所定の位置へセットされた前記被加熱体を前記高周波誘導加熱コイルによって加熱しながら、前記被加熱体の表面および内部の温度を測定する第1のステップと、
予め設定された上限値と下限値とに基づいて、前記被加熱体の表面と内部との温度が均一になるまで前記高周波誘導加熱コイルのON/OFF制御を行う第2のステップと、
前記第1・第2のステップを、焼戻し条件を変えた複数のテストパターンについて繰り返し行う第3のステップと、
前記第3のステップにおいて得られた前記複数のテストパターンの結果を記憶する第4のステップと、
前記複数のテストパターンの結果の中から、所定条件に基づいて最適な焼戻し条件を選定する第5のステップと、
を備えている高周波誘導焼戻し方法をコンピュータに実行させる高周波焼戻しプログラム。
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