JP7354591B2 - 高周波焼入れ方法及び高周波焼入れ装置 - Google Patents
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Description
<カムシャフト>
図1は、本実施形態に係る高周波焼入れ方法及び装置の処理対象であるカムシャフト11(軸部材)の側面図を示している。
図2は、本実施形態に係る高周波焼入れ装置100の構成の概略を示す図である。
高周波加熱装置110は、カムシャフト11の8個のカム部C1~C8に対し高周波加熱を行うための装置である。高周波加熱装置110としては、特に限定されるものではなく、一般的な高周波焼入れにおいて用いられる公知の装置を使用することができる。
冷却装置120は、高周波加熱されたカムシャフト11に対して冷却剤を吹き付ける等の方法によりカムシャフト11、特にカム部C1~C8を急激に冷却して焼入れを行うための装置である。冷却装置120としては、特に限定されるものではなく、一般的な高周波焼入れにおいて用いられる公知の装置を使用することができる。冷却剤も、高周波焼入れにおいて一般的に用いられる冷却剤を使用することができ、具体的には例えば水等の冷却剤を使用することができる。
温度測定装置130は、カムシャフト11の8個のカム部C1~C8のうち複数のカム部の温度を測定するための装置であり、好ましくは全てのカム部C1~C8の温度を測定するための装置である。複数のカム部の温度を測定するから、ワーク11の品質保証の精度を高めることができる。また、全てのカム部C1~C8の温度を測定することにより、ワーク11の品質保証の精度を効果的に高めることができる。なお、複数のカム部又はカム部C1~C8の全ての温度をできる限り同一のタイミングで測定できる装置であることが望ましい。温度測定装置130としては、具体的には例えば、放射温度計、熱画像計測装置等が挙げられ、熱画像計測装置を用いることが好ましい。放射温度計を用いる場合は、例えば測定対象のカム部の個数分の放射温度計を用いて複数のカム部の各々の温度を、好ましくはできる限り同一のタイミングで、測定するようにすればよい。なお、放射温度計の数は、軸部材の構成、特に高周波焼入れ対象の所定部位の数により適宜変更され得る。熱画像計測装置は、対象物から放出される赤外線を検出することによりその対象物の温度を測定する装置である。熱画像計測装置を用いれば、カムシャフト11が放出する赤外線を検出することにより、カム部C1~C8を含むカムシャフト11全体の温度を極めて短時間、すなわちほぼ同一のタイミングで容易に測定できる。
分別装置140は、制御装置150の後述する判定部152により判定されたカムシャフト11の良品と不良品とを分別するための装置である。具体的には例えば、良品及び不良品に判定結果の刻印を行い、両者を別の分別箱へ分別していくような装置を採用することができる。すなわち、分別装置140は、カムシャフト11を搬送する公知の搬送機、刻印を行う公知の刻印機、刻印に基づいて分別を行う公知の分別機及び分別箱等の組合せにより構成されてもよい。具体的には例えば、搬送機は一般的なベルトコンベヤ装置等、刻印機は例えば一般的なレーザー刻印機等、分別機は刻印を読み取るセンサ等を備えた公知の分別機等を用いることができる。
制御装置150は、高周波加熱装置110、冷却装置120、温度測定装置130、及び分別装置140と通信可能に接続されており、後述する高周波焼入れ工程全体を制御・管理するための装置である。制御装置150は、記憶部151と、判定部152(判定装置)と、制御部153とを備える。制御装置150は、限定する意図ではないが、汎用のコンピュータ、ネットワークサーバ等により構成される。また、制御装置150は、図示しない表示部及び入力部等を備える。表示部及び入力部は、限定する意図ではないが、モニタ、キーボード、タッチパネル等により構成される。制御装置150及びその各部の詳細については、後述する高周波焼入れ方法の項目において説明する。
図2には図示していないが、高周波焼入れ装置100は、上述の各装置にカムシャフト11を搬入・搬出するための搬送装置を備えている。搬送装置は、限定する意図ではないが、ローダ等の公知の装置を採用することができる。
本実施形態に係る高周波焼入れ方法を主に図2~図4を参照して説明する。
準備工程S11において、ワーク11は高周波焼入れ装置100に搬入される。制御装置150は、ワーク11の識別コード情報、機種情報、温度条件情報等のワーク情報を取得する。ワーク情報は、記憶部151に記録される(S31)。制御部153は、読み取ったワーク情報と予め記憶部151に記録された情報とを照合して、当該ワーク11に対応する高周波加熱条件及び焼入れ条件を記憶部151より読み出し、高周波加熱装置110及び冷却装置120の各々の運転条件として設定する。なお、ワーク11に対応する各条件は、作業者が入力部から入力して設定する等の他の方法を用いてもよい。
高周波加熱工程S12は、高周波加熱装置110によりワーク11の8個のカム部C1~C8の高周波加熱を行う工程である。
判定部152は、加熱条件実績情報のOK/NG判定を行う(加熱条件判定工程S21)。例えば、加熱条件実績情報が予め設定された高周波加熱条件と比較して妥当なものであればOKと判定される。一方、例えば、設備不良等の要因により、加熱条件実績情報が、予め設定された高周波加熱条件から大きく外れたものであればNGと判定される。OK/NG判定の基準はワーク11の仕様、装置の仕様等に応じて適宜設定される。このOK/NG判定の結果は、記憶部151に記録される(S33)。
高周波加熱装置110内から搬出されたワーク11は、次の焼入れ工程S14に進む準備のため、例えば大気下で約数秒間、待機する(待機工程S13)。
高周波加熱装置110内から搬出されたワーク11は、図2の矢印A3で示すように、冷却装置120内へ搬入される。そして、ワーク11に冷却剤が吹き付けられ、急激な冷却、すなわち焼入れが行われる(焼入れ工程S14)。焼入れが行われると、高周波加熱によりオーステナイト化した鋳鉄組織がマルテンサイト化する。なお、本明細書において、このカム部C1~C8の表面から一定の深さまでのマルテンサイト化された部分を「焼入れ硬化部」という。冷却剤の温度、吹き付け時間等の焼入れ条件は、鋳鉄組織がマルテンサイト化する温度にまでワーク11のカム部C1~C8を冷却できる条件である。焼入れ工程S14が終了すると、図2の矢印A4で示すように、ワーク11は、冷却装置120内から搬出される。
冷却条件判定工程S23において、判定部152は、冷却条件実績情報のOK/NG判定を行う。例えば、冷却条件実績情報が予め設定された焼入れ条件と比較して妥当なものであればOKと判定される。一方、例えば、設備不良等の要因により、冷却条件実績情報が、予め設定された焼入れ条件から大きく外れたものであればNGと判定される。OK/NG判定の基準はワーク11のワーク情報、装置の仕様等に応じて適宜設定される。このOK/NG判定の結果は、記憶部151に記録される(S37)。
安定化工程S15は、焼入れ工程S14後、すなわち冷却装置120からの搬出後に、ワーク11を大気中で放置してその温度を安定化させる工程である。
第1温度判定工程S24は、制御装置150の判定部152が、上述の第1温度に基づいて、ワーク11の品質の良否を判定する工程である。
第1温度判定工程S24で良品又は不良品と判定されたワーク11は、上述の分別装置140により、その判定結果に応じて分別される(分別工程S16)。
以上述べたように、本実施形態に係る高周波焼入れ方法及び装置は、安定化工程S15における第1温度を測定し、その第1温度に基づいてワーク11の品質の良否判定を行うから、温度測定が容易且つ高精度であるとともに、製品の全数チェックを容易に行うことができる。そうして、高周波焼入れにおける品質保証の精度を向上させることができる。
以下、本開示に係る他の実施形態について詳述する。なお、これらの実施形態の説明において、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
図5は、実施形態2に係る高周波焼入れ方法の工程を示すフローである。
実施形態1の高周波焼入れ方法では、高周波加熱工程S12後であり且つ焼入れ工程S14前に、待機工程S13を備える構成であった。本実施形態に係る高周波焼入れ方法では、待機工程S13(第2温度測定工程)において、ワーク11のカム部C1~C8の温度を測定するようにしている。
そして、第2温度判定工程S22(設備評価工程)において、判定部152(設備評価装置)は、第2温度が妥当な温度範囲内かどうかについて、OK/NG判定を行う。
実施形態1では、第1温度判定工程S24において、判定部152により、第1温度が所定範囲に含まれるか否かによりワーク11の品質の良否判定を行う構成であった。これに対し、本実施形態に係る第1温度判定工程S24(設備評価工程)では、判定部152(設備評価装置)により、第1温度を用いたワーク11の品質の良否判定に加えて、第1温度を用いた冷却装置120の設備評価を併せて行うようにしてもよい。
分別工程S16の刻印工程S161では、上述の情報に加え、第2温度判定情報もワーク11に刻印される。そうして、第1温度がOK判定であったワーク11が良品、NG判定であったワーク11が不良品として分別される。
以上述べたように、本実施形態に係る高周波焼入れ方法では、まず第2温度に基づいて高周波加熱装置110の設備状態の評価を行うことができる。そして、第2温度がOK判定であった場合には、第1温度に基づいて、冷却装置120の設備状態の評価を行うことができる。本構成によれば、高周波加熱装置110及び冷却装置120の設備状態をこまめにチェックすることができるとともに、エラー発生時にはこれらの装置の点検を速やかに行うことができる。そうして、カムシャフト11の歩留まりを高めるとともに、その品質保証の精度を効果的に高めることができる。
実施形態2において、第2温度がNG判定の場合、及び、第2温度がOKであるにも拘わらず第1温度がNGと判定された場合には、エラーにより高周波焼入れ装置100全体の動作を停止させる構成であったが、当該構成に限られるものではない。具体的には例えば、第1温度又は第2温度でNG判定が出た場合であっても高周波焼入れ装置100全体の動作を継続させる構成としてもよい。例えば、第2温度がOKであり、第1温度がNGの場合、高周波加熱装置110の不具合により高周波加熱が断続的に行われた結果、測定された第2温度はOKであるが、実際には高周波加熱が不十分で、第1温度がNGと判定される場合も想定され得る。このような場合には、第1温度及び第2温度の両者の判定結果に基づいて、高周波加熱装置110及び冷却装置120双方の設備状態を評価して原因を検証することが効果的である。従って、このような場合には、第1温度又は第2温度でNG判定が出た場合であっても、高周波焼入れ装置100全体の動作を停止させない構成とすることが効果的である。
100 高周波焼入れ装置
110 高周波加熱装置
120 冷却装置
130 温度測定装置
140 分別装置
150 制御装置
151 記憶部
152 判定部(判定装置、設備評価装置)
153 制御部
C1~C8 カム部(所定部位)
S12 高周波加熱工程
S13 待機工程(第2温度測定工程)
S14 焼入れ工程
S15 安定化工程
S16 分別工程
S22 第2温度判定工程
S24 第1温度判定工程(判定工程)
Claims (10)
- 鋳鉄製の軸部材の複数の所定部位を高周波加熱する高周波加熱工程と、
前記高周波加熱工程後に、冷却剤により前記軸部材を冷却して該軸部材の焼入れを行う焼入れ工程と、
前記焼入れ工程後に、前記軸部材を放置して該軸部材の前記複数の所定部位の焼入れ硬化部の温度を安定化させる安定化工程と、
前記焼入れ工程後の前記軸部材の品質の良否を判定する判定工程と、を備え、
前記安定化工程において、前記焼入れ工程終了から所定時間経過後の全ての前記複数の所定部位の焼入れ硬化部の温度を第1温度として測定し、
前記安定化工程における前記所定時間は、1秒以上60秒以下であり、
前記判定工程において、前記第1温度が所定範囲内にあるときに、前記軸部材の品質を良と判定し、
前記第1温度の所定範囲は、150℃以上360℃以下である
ことを特徴とする高周波焼入れ方法。 - 請求項1において、
前記高周波加熱工程後であり且つ前記焼入れ工程前に、前記軸部材の全ての前記複数の所定部位の温度を第2温度として測定する第2温度測定工程と、
前記第1温度及び/又は前記第2温度に基づいて、前記高周波加熱工程及び/又は前記焼入れ工程における設備状態の評価を行う設備評価工程と、を備えた
ことを特徴とする高周波焼入れ方法。 - 請求項1又は請求項2において、
前記判定工程で良又は否と判定された前記軸部材をその判定結果に応じて分別する分別工程を備えた
ことを特徴とする高周波焼入れ方法。 - 請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記第1温度は、前記軸部材が放出する赤外線を検出する熱画像計測装置により測定される
ことを特徴とする高周波焼入れ方法。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記軸部材は、球状黒鉛鋳鉄製のカムシャフトであり、
前記複数の所定部位は、複数のカム部である
ことを特徴とする高周波焼入れ方法。 - 鋳鉄製の軸部材の複数の所定部位を高周波加熱する高周波加熱装置と、
加熱された前記軸部材を冷却剤により冷却して該軸部材の焼入れを行う冷却装置と、
前記軸部材の前記複数の所定部位の温度を測定する温度測定装置と、
前記軸部材の品質の良否を判定する判定装置とを備え、
前記温度測定装置は、前記焼入れの終了から所定時間経過後の全ての前記複数の所定部位の焼入れ硬化部の温度を第1温度として測定し、
前記所定時間は、1秒以上60秒以下であり、
前記判定装置は、前記第1温度が所定範囲内にあるときに、前記軸部材の品質を良と判定し、
前記第1温度の所定範囲は、150℃以上360℃以下である
ことを特徴とする高周波焼入れ装置。 - 請求項6において、
前記温度測定装置は、前記軸部材の高周波加熱後焼入れ前の全ての前記複数の所定部位の温度を第2温度として測定し、
前記第1温度及び/又は前記第2温度に基づいて、前記高周波加熱装置及び/又は前記冷却装置における設備状態の評価を行う設備評価装置を備えた
ことを特徴とする高周波焼入れ装置。 - 請求項6又は請求項7において、
前記判定装置の判定結果に基づいて、前記軸部材の良品と不良品とを分別する分別装置を備えた
ことを特徴とする高周波焼入れ装置。 - 請求項6乃至請求項8のいずれか一において、
前記温度測定装置は、前記軸部材が放出する赤外線を検出する熱画像計測装置である
ことを特徴とする高周波焼入れ装置。 - 請求項6乃至請求項9のいずれか一において、
前記軸部材は、球状黒鉛鋳鉄製のカムシャフトであり、
前記複数の所定部位は、複数のカム部である
ことを特徴とする高周波焼入れ装置。
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