JP2008078099A - 固体電解質膜、固体電解質膜の製造方法、固体電解質膜を備えた燃料電池、及び燃料電池の製造方法 - Google Patents

固体電解質膜、固体電解質膜の製造方法、固体電解質膜を備えた燃料電池、及び燃料電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、膜強度と発電効率に優れた固体電解質膜、固体電解質膜の製造方法、固体電解質膜を備えた燃料電池、及び燃料電池の製造方法を提供する。
【解決手段】電解質が充填された貫通孔を有する多孔質材料層と、前記多孔質材料層の主面の少なくともいずれかに対向して設けられ、電解質が充填された開孔を有する無機材料層と、を備えたことを特徴とする固体電解質膜が提供される。また、貫通孔を有する多孔質材料層の主面に対向して無機材料層を形成する工程と、前記無機材料層に開孔を形成する工程と、前記貫通孔と前記開孔に電解質を充填する工程と、を備えたことを特徴とする固体電解質膜の製造方法が提供される。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体電解質膜、固体電解質膜の製造方法、固体電解質膜を備えた燃料電池、及び燃料電池の製造方法に関する。
近年の電子技術の進歩に伴い、電子機器の小型化、高性能化、ポータブル化が進んでおり、これに使用される電池の小型化、高エネルギー密度化の要求が強まっている。そのような中、小型軽量でありながら高容量の燃料電池が注目されている。
特に、メタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)は、水素ガスを使用する燃料電池に比べて、水素ガスの取り扱いの困難さや有機燃料を改質して水素を作り出す装置等の必要がないため、小型化に適している。この直接メタノール形燃料電池では、アノード電極側にメタノールと水を供給し、固体電解質膜近傍の触媒でメタノールと水とを反応させてプロトン(H)と電子(e)とを取り出している。しかし、このような直接メタノール形燃料電池においては、アノード電極とカソード電極との間に設けられた固体電解質膜をメタノールが透過してしまう、「メタノールクロスオーバー」と呼ばれる現象が起こり、発電効率が著しく低下してしまうという問題がある。
そのため、このメタノールクロスオーバーを抑制した多孔質の固体電解質膜が提案されている(特許文献1〜3を参照)。
しかしながら、特許文献1に開示されているような無機材料のみを用いた膜では、薄型化が困難なためプロトン(H)の通過距離が長く、プロトン(H)の伝導性に問題があった。また、特許文献2や特許文献3に開示されているような有機材料のみを用いた膜では、膜自体の強度が低く、また、燃料電池の燃料への接触により膨潤が起こり、メタノールクロスオーバーが増大するという問題があった。
特開2005−285413号公報 特開2005−276747号公報 特開2005−268032号公報
本発明は、膜強度と発電効率に優れた固体電解質膜、固体電解質膜の製造方法、固体電解質膜を備えた燃料電池、及び燃料電池の製造方法を提供する。
本発明の一態様によれば、電解質が充填された貫通孔を有する多孔質材料層と、前記多孔質材料層の主面の少なくともいずれかに対向して設けられ、電解質が充填された開孔を有する無機材料層と、を備えたことを特徴とする固体電解質膜が提供される。
また、本発明の他の一態様によれば、貫通孔を有する多孔質材料層の主面に対向して無機材料層を形成する工程と、前記無機材料層に開孔を形成する工程と、前記貫通孔と前記開孔に電解質を充填する工程と、を備えたことを特徴とする固体電解質膜の製造方法が提供される。
また、本発明のさらに他の態様によれば、上記の固体電解質膜と、カソード電極と、アノード電極と、を備えたことを特徴とする燃料電池が提供される。
また、本発明のさらに他の一態様によれば、上記の製造方法で固体電解質膜を製造する工程と、カソード電極側の集電体を形成し、その上に触媒を形成してカソード電極を作成する工程と、アノード電極側の集電体を作成し、その上に触媒を形成してアノード電極を作成する工程と、前記固体電解質膜の両側に、前記カソード電極と前記アノード電極とを接合する工程と、を備えたことを特徴とする燃料電池の製造方法が提供される。
本発明によれば、膜強度と発電効率に優れた固体電解質膜、固体電解質膜の製造方法、固体電解質膜を備えた燃料電池、及び燃料電池の製造方法が提供される。
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る固体電解質膜を説明するための模式断面図である。固体電解質膜1は、多孔質材料層2とその主面の両側に形成された無機材料層3とを備える。そして、多孔質材料層2には迷路状の貫通孔4が、無機材料層3には開孔5が設けられている。また、貫通孔4と開孔5には電解質9が充填されている。
多孔質材料層2は、プロトン(H)の伝導と有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)を抑制する機能を有する。後述するように、無機材料層3はそれのみで有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)を抑制するのではなく、多孔質材料層2の寸法変化を妨げて有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)を抑制する機能を有する。
貫通孔4を迷路状とするのは、有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)を抑制する機能を重視したためである。無機材料層3に設けられる孔を開孔5(ストレートな孔)としたのは、プロトン(H)の伝導性を重視したためであり、これを貫通孔4と同じように迷路状とすれば固体電解質膜1全体としてのプロトン(H)の伝導性に問題が生じるからである。
多孔質材料層2は、耐熱性のある有機材料、無機材料、もしくはこれらの複合材料から構成されるものとすることができる。
具体的には、有機材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリシラザンなどを、無機材料として、酸化シリコン、炭化シリコン、窒化シリコン、アルミナ、酸化ジルコニウム、セリア、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ホウ素などを、複合材料として、ポリプロピレンにガラス繊維や有機繊維を複合混入させたものなど、を例示することができる。
ただし、多孔質材料層2は有機材料や複合材料から構成されることがより好ましい。有機材料や複合材料とすれば、より薄い固体電解質膜1を形成させることができ、プロトン(H)の伝導に有利となるからである。また、有機材料や複合材料は柔軟性に富み、割れや欠けなどの破損に強く、小型化に適しているからでもある。
これらの材料に迷路状の貫通孔4を設けて多孔質化する方法としては、相分離法、発泡法、ゾルゲル法などの公知の化学的、物理的方法を用いることができる。
無機材料層3は、耐熱性のある無機材料から構成されるものとすることができる。具体的には、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミ、酸化ホウ素、酸化ビスマス、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムなどを例示することができる。これらの材料に開孔5を設ける方法については後述する。
貫通孔4と開孔5に充填される電解質9の材質は、その骨格中に少なくともヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン基、前記カルボキシル基と前記スルホン基の少なくとも2種が反応してなるエステル基、エーテル基を含有するものとすることができる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレンを主成分とするもの、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(α−メチルスチレン)スルホン酸などを例示することができる。これらの材料を貫通孔4と開孔5に充填する方法については後述する。
多孔質材料層2の厚さは、0.01マイクロメートル以上、100マイクロメートル以下とすることが好ましい。0.01マイクロメートルより薄くなれば固体電解質膜1としての強度が弱くなりすぎ、また、100マイクロメートルより厚くなればプロトン(H)の通過距離が長くなりすぎるためその伝導性に問題が生じるからである。この場合、プロトン(H)の伝導性を重視して10マイクロメートル以上、30マイクロメートル以下とすることがより好ましい。
また、例えば、多孔質材料層2が有機材料のみから形成される場合は、製造や取扱の容易さを考慮して、10マイクロメートル程度以上とすることが好ましい。ただし、無機材料のみ、または複合材料の場合は10マイクロメートルよりも薄くすることができる。
多孔質材料層2の貫通孔4の孔径は、0.01マイクロメートル以上、200マイクロメートル以下とすることが好ましい。0.01マイクロメートルより小さくなれば、プロトン(H)の伝導性に問題が生じ、200マイクロメートルより大きくなれば後述する無機材料層3による有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)の抑制が困難になるからである。この場合、これらのバランスを考慮して0.1マイクロメートル以上、10マイクロメートル以下とすることがより好ましい。尚、孔径は、貫通孔4の開口形状を円形に換算した時の直径である。
多孔質材料層2の貫通孔4の空隙率は、30%以上、80%以下とすることが好ましい。30%より小さくなれば、プロトン(H)の伝導性に問題が生じ、80%より大きくなれば後述する無機材料層3による有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)の抑制が困難になるからである。この場合、有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)の抑制を重視して30%以上、60%以下とすることがより好ましい。
無機材料層3の厚さは、0.01マイクロメートル以上、100マイクロメートル以下とすることが好ましい。0.01マイクロメートルより薄くなれば、無機材料層3の強度が弱くなるため後述する多孔質材料層2の膨潤などによる有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)を抑制する効果が小さくなり、100マイクロメートルより厚くなればプロトン(H)の通過距離が長くなるため、プロトン(H)の伝導性に問題が出るからである。この場合、例えば、多孔質材料層2の膨潤などによる有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)を抑制する効果を重視して0.5マイクロメートル以上、10マイクロメートル以下とすることがより好ましい。
無機材料層3の開孔5の孔径は、0.01マイクロメートル以上、200マイクロメートル以下とすることが好ましい。0.01マイクロメートルより小さくなれば、プロトン(H)の伝導性に問題が生じ、200マイクロメートルより大きくなれば、無機材料層3の強度が弱くなるため後述する多孔質材料層2の膨潤などによる有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)を抑制する効果が小さくなるからである。この場合、これらのバランスを考慮して0.1マイクロメートル以上、10マイクロメートル以下とすることがより好ましい。また、例えば、加工の容易性を考慮すれば、0.05マイクロメートル以上とすることもできる。尚、孔径は、開孔5の開口形状を円形に換算した時の直径である。
無機材料層3の開孔5の開孔率は、20%以上、90%以下とすることが好ましい。20%より小さくなれば、プロトン(H)の伝導性に問題が生じ、90%より大きくなれば、無機材料層3の強度が弱くなるため後述する多孔質材料層2の膨潤などによる有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)を抑制する効果が小さくなるからである。この場合、プロトン(H)の伝導性を重視して50%以上、80%以下とすることがより好ましい。
無機材料層3の開孔5の孔径と無機材料層3の厚さとの比(無機材料層3の開孔5の孔径/無機材料層3の厚さ)は、プロトン(H)の伝導性と膨潤による有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)を抑制する効果とのバランスを考慮して、100以下とすることが好ましい。さらに、プロトン(H)の伝導性を確保しつつ膨潤による有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)を抑制する効果を重視すれば、1以下とすることがより好ましい。
無機材料層3の開孔5の開口形状と配置について説明する。
開孔5の開口形状を「円形」とすれば、応力集中を緩和して、孔の存在による無機材料層3の強度の低下を抑えることができる。また、開孔5の開口形状を「角形」とすれば、隣接する孔同士の間のスペースを有効に使えるので、「円形」の場合に比べて開孔率を高くすることができる。また、「角形」を、平面充填とすることができる正多角形(正三角形、正方形、正六角形)とすれば、開孔率を最も高くすることができる。開孔5の配置は、格子状や平面充填となるような配置にすることができる。特に、正六角形を平面充填(ハニカム構造)となるようにすれば、孔が存在することによる無機材料層3の強度の低下を最小限に抑えつつ、開孔率を最も高くすることができる。
図2は、開孔5の開口形状を円形とし、千鳥状に配置した場合を説明するための模式図である。図2に示したものでは、開孔5の直径d1を10マイクロメートル、隣接する孔同士の間のスペースa1を2マイクロメートルとした。この時の、開孔率は63.9%であった。尚、スペースa1を3マイクロメートルとした場合の開孔率は、53.4%であった。
図3は、開孔5の開口形状を正六角形とし、平面充填となるようにした場合(ハニカム構造)を説明するための模式図である。図3に示したものでは、開孔5の対角寸法d2を100マイクロメートル、隣接する孔同士の間のスペースa2を20マイクロメートルとした。この時の、開孔率は85.3%であった。
このように、開孔5の開口形状を正六角形とし、平面充填(ハニカム構造)となるようにすれば、高い開孔率と強度を有する無機材料層3を得ることができる。
開孔5の分布については、一般的には均一とすることができる。しかしながら、固体電解質膜1の主面が略鉛直になるような状態で燃料電池を作動させるような場合は、鉛直上方に行くほど開孔5の分布を密になるようにすることもできる。尚、この場合、鉛直上方に行くほど開孔5の孔の開口面積が大きくなるようにしてもよい。後述する触媒との反応が不均一になる場合があるからである。
次に、多孔質材料層2の膨潤などによる有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)を抑制する効果について説明する。
燃料電池の燃料である有機燃料(例えば、メタノール)水溶液が多孔質材料層2に接触し続けると、有機燃料(例えば、メタノール)が多孔質材料層2に浸透して多孔質材料層2の膨潤が起こる。そして、このような膨潤が起こると、有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)が発生する。これは、膨潤により多孔質材料層2の貫通孔4が、寸法変化(押し広げられる)を起こすためであると考えられる。
有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)が発生して、カソード電極(空気極)側に有機燃料(例えば、メタノール)が到達すると、燃料である有機燃料(例えば、メタノール)はプロトン(H)や電子(e) を発生しないまま消費されてしまう。さらには、カソード電極(空気極)側の触媒、例えば白金(Pt)などを被毒して触媒活性の低下をも招き、発電効率を著しく低下させる。
本実施の形態においては、多孔質材料層2の主面に無機材料層3が形成されている。そのため、この無機材料層3により多孔質材料層2の膨潤などによる膨張を抑えて、貫通孔4の寸法変化を妨げ、有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)の発生を抑制することができる。
固体電解質膜1は、有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)を抑制する機能の他に、プロトン(H)を透過させる機能をも有する必要がある。この時、多孔質材料層2と無機材料層3との寸法関係において、プロトン(H)の伝導性を優先させれば、有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)を抑制する機能は低下する関係にある。そのため、双方の機能を考慮した固体電解質膜1(多孔質材料層2と無機材料層3)の寸法関係が必要となり、それが前述のものとなる。
また、燃料電池 を使用しないときは固体電解質膜1 は乾燥して収縮する。その上、触媒の活性を高めて発電効率を上げるために、燃料電池の動作温度は高くなる傾向にあり、温度変化による膨張と収縮も大きくなってきている。その結果、このような膨張と収縮によるストレスで、固体電解質膜 1から触媒層が剥離するなどの不具合が生じる虞もある。本実施の形態における無機材料層3は、このような場合においても、多孔質材料層2の寸法変化を妨げて触媒層の剥離や有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)などの不具合を抑制することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、高い膜強度と有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)を抑制して高い発電効率とを有する固体電解質膜を得ることができる。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る固体電解質膜を説明するための模式断面図である。固体電解質膜6は、多孔質材料層2と無機材料層3との間に電解質層7がさらに設けられている。多孔質材料層2と電解質層7、電解質層7と無機材料層3はそれぞれ密着するように形成されている。尚、図1に示した固体電解質膜1と同様の部分には同じ符号を付し説明は省略する。
多孔質材料層2と無機材料層3の界面における密着性が悪いと、プロトン(H)の伝導性が低下して発電効率の低下をもたらす原因となる。この密着性を高めるために設けられたのが電解質層7である。
電解質層7の材質は、プロトン(H)の伝導性と界面における密着性を考慮する必要があり、その骨格中に少なくともヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン基、前記カルボキシル基と前記スルホン基の少なくとも2種が反応してなるエステル基、エーテル基を含有するものとすることができる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレンを主成分とするもの、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(α−メチルスチレン)スルホン酸などを例示することができる。
電解質層7の厚さは、10マイクロメートル以下とすることが好ましい。10マイクロメートルより大きくすれば、プロトン(H)の伝導性に問題が生じるからである。
本実施形態によれば、多孔質材料層2と無機材料層3の界面における密着性を増すことにより、高い発電効率を有する固定電解質膜を得ることができる。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図5は、本発明の第3の実施形態に係る固体電解質膜を説明するための模式断面図である。固体電解質膜8は、多孔質材料層2と、その主面の一方の側に形成された無機材料層3とを備える。図1に示した固体電解質膜1と同様の部分には同じ符号を付し説明は省略する。
有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)を抑制するためには、多孔質材料層2の主面の少なくとも一方の側に無機材料層3が形成されていればよい。この場合、燃料電池の発電効率を考慮して無機材料層3を形成させる面を選択することが好ましい。例えば、直接メタノール形燃料電池のアノード電極側の触媒(例えば、白金PtとルテニウムRu)とカソード電極側の触媒(例えば、白金Pt)とでは、アノード電極側の触媒の触媒効率の方が悪い。そのため、触媒効率が悪いアノード電極側の多孔質材料層2の主面を開放状態にした方が、発電効率の観点から好ましい。そのためこの例の場合は、触媒効率の高いカソード電極側の主面に無機材料層3を形成させるようにすることが好ましい。
このように、燃料電池の発電効率を考慮して、多孔質材料層2の主面の一方の側に無機材料層3を形成させるようにすれば、プロトン(H)の伝導性の観点からは有利となり、両側に形成させる場合よりも発電効率を高めることができる。ただし、耐久性や経年変化の観点からは、両側に無機材料層3を形成させる方が好ましい。
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図6は、本発明の第4の実施形態に係る固体電解質膜の製造方法を説明するためのフローチャートである。
まず、相分離法、発泡法、ゾルゲル法などの化学的、物理的方法を用いて多孔質材料層2を形成させる(ステップS1)。尚、多孔質材料層2は、市販の多孔質材料を適宜用いるようにしてもよい。その場合は、ステップS1は不要となる。例えば、厚さ25マイクロメートル、開孔率45%のポリイミド多孔膜(宇部興産製ユーピレックスPT)などを用いることができる。
次に、多孔質材料層2の主面に無機材料層3を形成させる(ステップ2)。例えば、前述のポリイミド多孔膜上に二酸化シリコン(SiO)を0.5マイクロメートル程度成膜する。成膜法としては、スパッタ法に代表される物理的成膜法や、CVD(Chemical Vapor Deposition)法に代表される化学的成膜法を用いることができる。例えば、二酸化シリコン(SiO)を成膜する方法としてRFスパッタ法を用い、その時の成膜条件として、ターゲットを二酸化シリコン(SiO)、圧力を1Pa程度、RFパワーを400ワット程度、スパッタガスとしてArガスを30sccm程度、多孔質材料層温度を40℃程度とすることができる。
ここで、無機材料層3は、多孔質材料層2に密着するように形成させることが好ましい。多孔質材料層2と無機材料層3との界面における密着性が悪いと、プロトン(H)の伝導性が低下して発電効率の低下をもたらす原因となるからである。そのため、前述のように多孔質材料層2と無機材料層3の間に電解質層7を形成させることもできる。例えば、電解質層7としては、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)を例示することがでる。その形成方法としては、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)溶液に多孔質材料層2を浸漬し、それを引き上げて乾燥させ溶媒を除去するようにすれば多孔質材料層2の主面に電解質層7を形成させることができる。尚、この場合は電解質層7を形成させる際に、後述する多孔質材料層2の貫通孔4へ電解質層7と同材質の電解質9を充填させるようにする。
このような電解質層7を設ければ、多孔質材料層2と無機材料層3との密着性を上げることができる。その結果、プロトン(H)の伝導性を向上させることができるので発電効率を高めることができる。
また、電解質層7を設けない場合においても、多孔質材料層2と無機材料層3との密着性を上げるために、多孔質材料層2の表面改質処理を行うことが好ましい。例えば、多孔質材料層2が有機材料から成り、無機材料層3として二酸化シリコン(SiO)のような酸化物を選択する場合は、多孔質材料層2の表面が親水性となるようにすることが好ましい。この場合の改質処理方法として、エキシマランプなどの紫外線光の照射による表面改質方法を例示することができる。特に、エキシマランプが発生する波長が172ナノメートルの真空紫外光は光子エネルギーが強く、また広い面積を照射できるので改質処理の効率を高めることができる。尚、表面改質処理は前述の電解質層7を設ける場合にも行うことが好ましい。
このような表面改質処理をすれば、多孔質材料層2と無機材料層3との密着性を上げることができる。その結果、プロトン(H)の伝導性を向上させることができるので発電効率を高めることができる。
次に、無機材料層3に開孔5を設ける(ステップS3)。開孔5を設ける方法としては、ドライエッチング法やウェットエッチング法などを用いることができる。ここでは、ウェットエッチング法を用いる場合を例示する。まず、無機材料層3の上に紫外線硬化型樹脂を数十マイクロメートル程度にスピンコートし、焼成、露光、現像、ポストベークを経て開孔5のパターンを形成させる。その後、バッファード弗酸にてエッチングを行い、剥離液を用いてレジストを除去すれば無機材料層3に所望の開孔5を設けることができる。
次に、多孔質材料層2の貫通孔4と無機材料層3の開孔5に電解質9を充填させる(ステップS4)。電解質9を充填させる方法としては、多孔質材料層2と無機材料層3とを電解質溶液中に浸漬させ、これを引き上げて乾燥させ溶媒を除去する方法を例示することができる。この時、浸漬と乾燥は数回繰り返すようにする。尚、電解質溶液の溶媒は、水と界面活性剤、有機溶剤、またはこれらの混合溶液などが使用されるが、電解質9が溶解できるか、または安定して分散するものである必要がある。電解質溶液としてはナフィオン(登録商標、デュポン社製)溶液を例示することができる。
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
図7は、本発明の第5の実施形態に係る燃料電池を説明するための模式図である。尚、説明の便宜上、メタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)で説明をする。
図7に示すように、燃料電池10は、図1で説明した固体電解質膜1とカソード電極16とアノード電極17を設けた電解質膜電極接合体18(MEA:Membrane Electrode Assembly)を備えている。尚、電解質膜電極接合体18は図示しないケースに収められている。尚、固体電解質膜は図4や図5で説明したものを用いてもよい。
固体電解質膜1は、前述したように多孔質材料層2とその主面に形成された無機材料層3とを備える。そして、多孔質材料層2には迷路状の貫通孔4が、無機材料層3には開孔5が設けられており、貫通孔4と開孔5には電解質9が充填されている。
具体例を例示すれば、多孔質材料層2を、厚さ25マイクロメートル、開孔率45%のポリイミド多孔膜とし、無機材料層3を、厚さ0.5マイクロメートル程度の二酸化シリコン(SiO)とすることができる。また、電解質9の材質は、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)とすることができる。開孔5は、図3に示したように、開口形状を正六角形とし平面充填となるようにすることができる(ハニカム構造)。具体例を例示すれば、開孔5の対角寸法を100マイクロメートル、隣接する孔同士の間のスペースを20マイクロメートルとすることができる。貫通孔4の孔径は1マイクロメートル程度とすることができる。
カソード電極16の集電体11には、PTFE(Polytetrafluoroethylene)溶液を含浸させて撥水処理を行った多孔質性のカーボン織布またはカーボンペーパー(PTFE含有量は5重量%程度)を用いることができる。カソード電極16の触媒12には、白金(Pt)の微粒子を、活性炭・黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボン上に担持させたものを用いることができる。この時、触媒中の白金(Pt)の含有量は、10重量%〜70重量%程度とすることが好ましい。
アノード電極17の集電体13には、PTFE(Polytetrafluoroethylene)溶液を含浸させて撥水処理を行った多孔質性のカーボン織布またはカーボンペーパー(PTFE含有量は5重量%程度)を用いることができる。アノード電極17の触媒14には、白金(Pt)−ルテニウム(Ru)の微粒子を、活性炭・黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボン上に担持させたものを用いることができる。この時、触媒中の白金(Pt)とルテニウム(Ru)の合計含有量は10重量%〜70重量%程度とすることが好ましい。また、白金(Pt)とルテニウム(Ru)の重量比は、白金(Pt):ルテニウム(Ru)=5:1〜1:2程度が好ましい。集電体11と集電体13は負荷15と電気的に接続されている。
その他、図示は省略するが、カソード電極16側には、空気(酸素:O)の供給や発生した水を水蒸気として排出するための空気孔が複数設けられている。また、アノード電極17側には、燃料(メタノール水溶液)を供給するための燃料供給口と残余の燃料(メタノール水溶液)や反応によって生じた炭酸ガス(二酸化炭素:CO)を外部に排出するための燃料排出口が設けられている。
尚、具体例として例示した材質、寸法、断面形状、開口形状、配置、成分比などはこれらに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
次に、燃料電池10の作用について説明する。
アノード電極17側に、燃料であるメタノール水溶液が燃料供給口から供給されると、メタノール水溶液はアノード電極17の触媒14により下記の式(1)の酸化反応を生ずる。そして、この反応により二酸化炭素COとプロトン(H)と電子(e)とを発生させる。プロトン(H)は、固体電解質膜1を透過してカソード電極16側に移動する。電子(e)は、負荷15を通って仕事をした後、カソード電極16側に移動する。

CHOH+HO→CO+6H+6e …(1)

カソード電極16側に到達したプロトン(H)と、負荷15を通って仕事をした後にカソード電極16に側に到達した電子(e)とが、カソード電極16の触媒12により空気中の酸素Oと反応して式(2)の還元反応を生じる。

6H+6e+3/2O2→3H2O …(2)

アノード電極17側で発生した二酸化炭素(CO)は、残余のメタノール水溶液とともに燃料排出口から外部に排出される。また、カソード電極16側で発生した水は、水蒸気として空気孔から排出される。
本実施の形態に係る燃料電池には、前述した固体電解質膜が設けられている。そのため、本実施の形態によれば、高い膜強度と有機燃料の透過(例えば、メタノールクロスオーバー)を抑制して高い発電効率を有する燃料電池を得ることができる。
次に、本発明の第6の実施形態に係る燃料電池の製造方法について説明する。
図8は、本発明の第6の実施形態に係る燃料電池の製造方法を説明するためのフローチャートである。
前述した方法により本発明に係る固体電解質膜1を作成する(ステップS10)。尚、固体電解質膜は図4や図5で説明したものであってもよい。
多孔質性のカーボン織布またはカーボンペーパーにPTFE(Polytetrafluoroethylene)溶液を含浸させてカソード電極16側の集電体11を作成する(ステップS20)。この時、PTFE含有量は5重量%程度とする。
次に、白金(Pt)の微粒子と、活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンと、溶剤とを混合してペースト状にし、それを触媒12とするために集電体11上に塗布して、カソード電極16を作成する(ステップS30)。この時、触媒12中の白金(Pt)の含有量は、10重量%〜70重量%程度とすることが好ましい。
一方、多孔質性のカーボン織布またはカーボンペーパーにPTFE(Polytetrafluoroethylene)溶液を含浸させてアノード電極17側の集電体13を作成する(ステップS40)。この時、PTFE含有量は5重量%程度とする。
次に、白金(Pt)−ルテニウム(Ru)の微粒子と、活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンと、溶剤とを混合してペースト状にし、それを触媒14とするために集電体13上に塗布して、アノード電極17を作成する(ステップS50)。この時、触媒14中の白金(Pt)とルテニウム(Ru)の合計含有量は10重量%〜70重量%程度とすることが好ましい。また、白金(Pt)とルテニウム(Ru)の重量比は、白金(Pt):ルテニウム(Ru)=5:1〜1:2程度が好ましい。
次に、このようにして作成した固体電解質膜1、カソード電極16、アノード電極17とで電解質膜電極接合体18を形成させ、これを乾燥させる(ステップS60)。この時、乾燥は、窒素やアルゴン(Ar)などの不活性ガス中や真空中で行うことが好ましい。
最後に、これを適宜ケースに収納するなどして燃料電池10を作成する(ステップS70)。
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
前述の具体例に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
例えば、アノード電極17側の触媒14としては、有機燃料を酸化できるものであればよく、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、錫、ルテニウムおよび金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と白金との合金の微粒子などであってもよい。
また、燃料電池も単一の電解質膜電極接合体で構成したものを図示したが、電解質膜電極接合体を複数枚積層したスタック構造としてもよい。
また、燃料についてもメタノール水溶液を例示し、固体電解質膜の透過を「メタノールクロスオーバー」として説明したが、これに限定されるものではなく、他の有機燃料に対しても同様の効果が期待できる。他の有機燃料としては、メタノールの他にも、エタノール、プロパノ−ルなどのアルコール類、ジメチルエーテルなどのエーテル類、シクロヘキサンなどのシクロパラフィン類、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基などの親水基を有するシクロパラフィン類などを例示することができる。尚、このような有機燃料は、通常5〜90重量%程度の水溶液として用いられる。
本発明の第1の実施形態に係る固体電解質膜を説明するための模式断面図である。 開孔の開口形状を円形とし、千鳥状に配置した場合を説明するための模式図である。 開孔の開口形状を正六角形とし、平面充填となるようにした場合を説明するための模式図である。 本発明の第2の実施形態に係る固体電解質膜を説明するための模式断面図である。 本発明の第3の実施形態に係る固体電解質膜を説明するための模式断面図である。 本発明の第4の実施形態に係る固体電解質膜の製造方法を説明するためのフローチャートである。 本発明の第5の実施形態に係る燃料電池を説明するための模式図である。 本発明の第6の実施形態に係る燃料電池の製造方法を説明するためのフローチャートである。
符号の説明
1 固体電解質膜、2 多孔質材料層、3 無機材料層、4 貫通孔、5 開孔、6 固体電解質膜、7 電解質層、8 固体電解質膜、9 電解質、10 燃料電池、11 集電体、12 触媒、13 集電体、14 触媒、16 カソード電極、17 アノード電極、18 電解質膜電極接合体

Claims (16)

  1. 電解質が充填された貫通孔を有する多孔質材料層と、
    前記多孔質材料層の主面の少なくともいずれかに対向して設けられ、電解質が充填された開孔を有する無機材料層と、
    を備えたことを特徴とする固体電解質膜。
  2. 前記多孔質材料層と前記無機材料層との間に設けられた電解質層をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の固体電解質膜。
  3. 前記電解質層の厚さは、10マイクロメートル以下であることを特徴とする請求項2記載の固体電解質膜。
  4. 前記多孔質材料層は、有機材料から成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の固体電解質膜。
  5. 前記開孔の開口形状は、円形であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の固体電解質膜。
  6. 前記開孔の開口形状は、正多角形であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の固体電解質膜。
  7. 前記貫通孔の孔径は、0.01マイクロメートル以上、200マイクロメートル以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の固体電解質膜。
  8. 前記多孔質材料層の厚さは、0.01マイクロメートル以上、100マイクロメートル以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の固体電解質膜。
  9. 前記開孔の孔径は、0.01マイクロメートル以上、200マイクロメートル以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の固体電解質膜。
  10. 前記無機材料層の厚さは、0.01マイクロメートル以上、100マイクロメートル以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の固体電解質膜。
  11. 貫通孔を有する多孔質材料層の主面に対向して無機材料層を形成する工程と、
    前記無機材料層に開孔を形成する工程と、
    前記貫通孔と前記開孔に電解質を充填する工程と、
    を備えたことを特徴とする固体電解質膜の製造方法。
  12. 前記無機材料層を形成する工程の前に、前記多孔質材料層の前記主面を改質する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項11記載の固体電解質膜の製造方法。
  13. 前記無機材料層を形成する工程の前に、前記多孔質材料層の前記主面に対向して電解質層を形成する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項11または12に記載の固体電解質膜の製造方法。
  14. 請求項1〜10のいずれか1つに記載の固体電解質膜と、
    カソード電極と、
    アノード電極と、
    を備えたことを特徴とする燃料電池。
  15. 前記無機材料層は、前記カソード電極と前記アノード電極とのうちで、触媒効率がより高い触媒を有するものの側に設けられていることを特徴とする請求項14記載の燃料電池。
  16. 請求項11〜13のいずれか1つに記載の製造方法で固体電解質膜を製造する工程と、
    カソード電極側の集電体を形成し、その上に触媒を形成してカソード電極を作成する工程と、
    アノード電極側の集電体を作成し、その上に触媒を形成してアノード電極を作成する工程と、
    前記固体電解質膜の両側に、前記カソード電極と前記アノード電極とを接合する工程と、
    を備えたことを特徴とする燃料電池の製造方法。
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JP2009259425A (ja) * 2008-04-11 2009-11-05 Toyota Motor Corp 高分子電解質膜及びその製造方法

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