JP2008071841A - 光波長変換装置、及びそれを用いた画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】変調信号パターンに依存せずに安定した高階調の制御も可能な光波長変換装置ないし方法を提供することである。
【解決手段】光波長変換装置は、活性領域101bの両側に、反射率分布の異なる2つのDBR領域101a、101cを配置している。2つのDBR領域101a、101cには所定の電流を注入しておく。一方のDBR領域101cの電流量を減少させ、他方のDBR領域101aの電流量を増加させたときに2つの反射率分布がオーバーラップし、DBR発振が得られる。変調信号のパターンによる温度ドリフトがDBR領域101a、101cに発生しても、2つの反射率分布のシフトする方向は逆であってそれらの交差点の波長位置は変化しないので、発振波長は変化しない。
【選択図】図1
【解決手段】光波長変換装置は、活性領域101bの両側に、反射率分布の異なる2つのDBR領域101a、101cを配置している。2つのDBR領域101a、101cには所定の電流を注入しておく。一方のDBR領域101cの電流量を減少させ、他方のDBR領域101aの電流量を増加させたときに2つの反射率分布がオーバーラップし、DBR発振が得られる。変調信号のパターンによる温度ドリフトがDBR領域101a、101cに発生しても、2つの反射率分布のシフトする方向は逆であってそれらの交差点の波長位置は変化しないので、発振波長は変化しない。
【選択図】図1
Description
本発明は、半導体レーザ光を第2高調波に変換する光波長変換装置及び方法などに関するものである。特に、レーザーディスプレイ、電子写真方式の画像形成、光記録、光計測用などの光源として利用される、高速変調駆動も可能なレーザ光を出射する光波長変換装置、及びそれを用いた画像表示装置に関する。
半導体レーザは、小型、高出力且つ低コストでの製造が可能であるという特徴を生かし、光通信システム、CD・DVD、計測機器等、様々な分野で利用されている。しかし、近年になりようやく青紫色レーザが実用化されたが、緑色や紫外域以下の波長帯の半導体レーザは未だ製品化されていない。色の三原色の一つである緑色や、レーザ加工機、高密度光メモリーなどに応用される短波長高出力の小型レーザに対する期待は大きい。
この様な背景のもと、短波長レーザ光源を得る方法として、これまでに第2高調波発生(SHG; Second Harmonic Generation)を用いた方式が種々提案されている。光波長変換素子(SHG素子)として一般的には、周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN;
Periodically Poled Lithium Niobate)が用いられる。また、SHG素子の波長選択幅は通常1nm以下と狭いため、基本波光源としては、シングルモード性と波長安定性の良いDFB(Distributed
Feedback)レーザやDBR(Distributed Bragg Reflector)レーザが用いられる。
Periodically Poled Lithium Niobate)が用いられる。また、SHG素子の波長選択幅は通常1nm以下と狭いため、基本波光源としては、シングルモード性と波長安定性の良いDFB(Distributed
Feedback)レーザやDBR(Distributed Bragg Reflector)レーザが用いられる。
この様な半導体レーザに変調電流を注入した場合、その変調パターンに依存した熱履歴によって発振波長が変動し、その結果としてSHG光の出力も変動してしまうという問題が知られている。そのため、その問題を考慮したSHGレーザ光源が開示されている(特許文献1参照)。図9はその構成を示す図である。このSHGレーザ光源は、図9に示される様に、DBR領域813、位相調整領域812、活性領域811を有するDBR半導体レーザ810と、SHG素子820と、駆動回路830を備えている。駆動回路830は、活性領域811からDBR領域813に伝達する熱量と位相領域812からDBR領域813に伝達する熱量の和が一定になる様に、活性領域811への注入電流量と位相領域812への注入電流量を制御している。これにより、DBR半導体レーザ810からの基本波光の波長を安定化させて、SHG素子820からのSHG光(第2高調波光)の変調パターン依存を低減している。
特開2002-43698号公報
前記特許文献1に開示される方法によれば、変調電流パターンによるDBR領域813の温度変化は或る程度小さくなる。しかしながら、活性領域811に変調電流を入力して基本波光を変調しているので、SHG素子820に入力される光エネルギーが変動する。そのため、SHG素子820の温度が変動し、その位相整合波長が安定化しないことになる。その結果、SHG素子820からのSHG光の出力が不安定となってしまう。
上記課題に鑑み、本発明の光波長変換装置は、DBRレーザ、光波長変換素子、制御手段を備える。DBRレーザは、活性領域と、分布ブラッグ反射器(DBR)が形成された第1のDBR領域及び第2のDBR領域とを少なくとも有する。光波長変換素子は、DBRレーザから発せられる基本波光を入射してその第2高調波光を出力する。制御手段は、変調信号に応じてDBRレーザへの注入電流を周期ごとに制御してその発振波長と光出力を制御する。また、DBRレーザは、第1のDBR領域と第2のDBR領域への注入電流が制御されることで第1のDBR領域の第1の反射率分布と第2のDBR領域の第2の反射率分布の波長軸上での重畳・分離程度が調整されて発振状態を変化できる構成を有する。更に、第1の反射率分布は、波長の増加に対して反射率が減少する波長域を備え、第2の反射率分布は、波長の増加に対して反射率が増加する波長域を備える。
また、上記課題に鑑み、本発明の光波長変換方法は、上記光波長変換装置を用いる光波長変換方法である。制御手段は、第1の反射率分布と第2の反射率分布が波長軸上で離れる様に第1のDBR領域及び第2のDBR領域に電流を注入して第2高調波光の出力が比較的小さいOFF状態をもたらす。また、第1の反射率分布と第2の反射率分布が波長軸上で近づいて一部重なる様に、第1のDBR領域への注入電流を減少して第1の反射率分布を波長軸上で長波長側にシフトさせ且つ第2のDBR領域への注入電流を増加して第2の反射率分布を波長軸上で短波長側にシフトさせる。こうして、第2高調波光の出力が比較的大きいON状態をもたらす。更に、制御手段は、変調信号に応じて、第1のDBR領域及び第2のDBR領域の注入電流への注入電流を周期ごとに制御して前記ON状態と前記OFF状態を切り替える。
また、上記課題に鑑み、本発明のレーザーディスプレイ、レーザービームプリンタなどの画像形成装置は、上記光波長変換装置及び少なくとも1つの光走査素子を有する。そして、光波長変換装置によって発せられた光を光走査素子で走査し、且つ変調信号に応じて第2高調波光の光量を調整することで、画像が形成される。
更に、上記課題に鑑み、上記光波長変換装置などに使用できるDBRレーザは、活性領域と、分布ブラッグ反射器(DBR)が形成された第1のDBR領域及び第2のDBR領域とを少なくとも有する。そして、第1のDBR領域と第2のDBR領域への注入電流が夫々制御されることで第1のDBR領域の第1の反射率分布と第2のDBR領域の第2の反射率分布の波長軸上での重畳・分離程度が調整されて発振状態を変化できる構成を有する。更に、第1の反射率分布は、波長の増加に対して反射率が減少する波長域を備え、第2の反射率分布は、波長の増加に対して反射率が増加する波長域を備える。
本発明によれば、比較的簡便な上記DBRレーザの制御方法によって、1つの発振状態において、上記第1の反射率分布と第2の反射率分布の交差点の波長にDBRレーザの発振波長を安定的に確立できる。また、上記DBRレーザを光波長変換装置ないし方法に用いるとき、少なくとも上記ON状態を安定性且つ制御性良く実現できて、変調信号パターンに依存せずに安定した高階調の制御も可能な光波長変換装置ないし方法を実現できる。また、本発明による光波長変換装置ないし方法を用いて、高精細の階調表現を有する画像も形成可能な画像形成装置を実現できる。
以下、本発明の実施形態を説明する。一実施形態に係る光波長変換装置は、活性領域と、分布ブラッグ反射器(DBR)が形成された第1のDBR領域及び第2のDBR領域とを少なくとも有するDBRレーザを備える。更に、DBRレーザから発せられる基本波光を入射してその第2高調波光を出力する光波長変換素子と、制御手段を有する。制御手段は、変調信号に応じてDBRレーザへの注入電流を周期ごとに制御してその発振波長と光出力を制御することで光波長変換素子からの第2高調波光の光量を変調信号に応じて変調する。DBRレーザは、第1のDBR領域と第2のDBR領域への注入電流が制御されることで第1のDBR領域の第1の反射率分布と第2のDBR領域の第2の反射率分布の波長軸上での重畳・分離程度が調整されて発振状態を変化できる構成を有する。ここで、第1の反射率分布は、波長の増加に対して反射率が減少する波長域を備えると共に第2の反射率分布は、波長の増加に対して反射率が増加する波長域を備え、これらの波長域において上記重畳・分離程度が調整される。
光波長変換素子の位相整合波長は、第1の反射率分布と第2の反射率分布が波長軸上で近づいて一部重なるときに両反射率分布の積がピークとなる波長近傍に設定されている。こうした構成において、SHG光出力が比較的小さいOFF状態は、第1のDBR領域及び第2のDBR領域に所定の電流を注入して第1の反射率分布と第2の反射率分布を波長軸上で離れさせることで、実現される。一方、SHG光出力が大きいON状態は、第1のDBR領域への注入電流を減少して第1の反射率分布を長波長側にシフトし、第2のDBR領域への注入電流を増して第2の反射率分布を短波長側にシフトし、且つ2つの反射率分布の波長域を重ねることで、実現される。これにより、制御手段は、変調信号に応じて、第1のDBR領域及び第2のDBR領域への注入電流を周期ごとに制御して前記ON状態と前記OFF状態を切り替えて光波長変換素子からの第2高調波光の光量を変調することができる。
ここで、制御手段は、光波長変換素子に入力される各周期における光エネルギーが一定となる様にDBRレーザの光出力態様を制御する条件を満たしつつ、変調信号に応じてDBRレーザの活性領域への注入電流を制御する。その為に、制御手段は、活性領域には各周期において発生熱量一定態様で電流を注入する。例えば、活性領域に一定の電流を注入する。これは、光波長変換素子のSHG光出力の波長依存性を変化させないための条件である。
また、好適には、制御手段は、各周期において発生熱量一定態様でDBRレーザの第1のDBR領域と第2のDBR領域へ電流を注入するという条件を満たしつつ、変調信号に応じて第1のDBR領域と第2のDBR領域への注入電流を制御する。これは、DBR領域の注入電流と反射率分布の関係の特性がほぼ一定となる様にするという条件である。
例えば、制御手段は、第1及び第2のDBR領域の夫々に、大きい方から順に第1の変調電流、第2の変調電流、第3の変調電流の3値からなる駆動電流を注入する。このとき、制御手段は、(Ihi×Vhi-I0×V0)×thi = (I0×V0-Ilo×Vlo)×tloの関係にある様に駆動電流を調整する。ここにおいて、1周期内において、その周期がtであり、第1、第2、第3の変調電流が夫々Ihi、I0、Iloの3値であり、この電流のときのDBR領域の駆動電圧が夫々Vhi、V0、Vloであり、この電流が注入される時間がthi、t-(thi+tlo)、tloで表される。
以下、更に詳細に説明する。図1(a)は、本実施形態に係る光波長変換装置の構成を示す模式図である。図1(a)において、101は半導体DBRレーザ、101a、101b、101cは夫々第2のDBR領域、活性領域、第1のDBR領域である。102はコリメータレンズ、103は集光レンズ、104はSHG素子、105は分極反転領域、106は光導波路である。また、107は波長フィルタ、108はSHG光、109は、変調信号に応じてDBRレーザ101への注入電流を制御してその発振波長と光出力(すなわち発振状態)を制御する制御手段である。SHG素子104の位相整合波長は、ON状態でのDBRレーザ101の発振波長にほぼ一致する様に設定されている。活性領域101bには、所定の一定電流が注入されている。或いは、活性領域101bへの注入電流は、単位時間あたりの熱量が一定であるならば、或る一定周期での変調電流や、アナログ的に変化する電流であってもよい。これにより、DBRレーザ101からの光出力は、ON状態及びOFF状態に係らず、ほぼ一定に維持される。従って、SHG素子104に入力される光エネルギーはほぼ一定となって、その温度が安定化して位相整合波長が安定的に維持される。
DBRレーザ101の波長は、DBRレーザとして発振可能でありSHG素子104の非線形効果がある波長帯であればどの様なものでもよい。また、DBRレーザ101は位相領域を備えていてもよい。SHG素子としては、LiNbO3(LN)、KNbO3(KN)、KTiOPO4(KTP)、LiTaO3(LT)などの非線形光学結晶を用いることができる。
図1(b)、(c)は第1、第2のDBR領域101c、101aの反射率分布を模式的に示した図である。図1(b)はOFF状態(SHG光出力が比較的小さい状態)を示している。OFF状態を達成するために、第1のDBR領域101c及び第2のDBR領域101aに所定の電流を注入したときに前記第1の反射率分布と前記第2の反射率分布が波長軸上で離れる様に、回折格子の周期、導波路屈折率などが設定されている。このとき、2つのDBR領域の反射率のピーク波長が離れているため、どちらかのピーク波長近傍においてDBRモードで発振するか、若しくは、ファブリペローモードで発振する。いずれにしても、ON状態での発振波長とは異なった位置ないし発振状態で発振し、このレーザ光はSHG素子104による波長変換を受けない。従って、OFF状態でのDBRモードの発振状態は、SHG素子104に入力させる光エネルギーをほぼ一定に保っているという条件を満たしていれば、それ程に安定性を求められるものではないので、上記の如き発振でも許容される。
図1(c)はON状態(SHG光出力が比較的大きい状態)を示している。ON状態を達成するために、DBRレーザ101は、第1のDBR領域101cへの注入電流を減少することで前記第1の反射率分布を波長軸上で長波長側にシフトできる様になっている。更に、DBRレーザ101は、第2のDBR領域101aへの注入電流を増加することで前記第2の反射率分布を波長軸上で短波長側にシフトできる様になっている。こうして、ON状態では2つの反射率分布の波長域が重なっている。
図2(a)、(b)は発振波長を説明する図である。図2(a)は、図1(c)の反射率分布が交差している付近を拡げた図であり、図2(b)は反射率の積を模式的に示した図である。一般に、反射率の積が大きいほど発振しきい値が小さいことが知られている。従って、ON状態では2つの反射率分布が交差する点の波長で発振する。前述した様に、この発振波長に、SHG素子104の位相整合波長がほぼ一致する様に設定されているので、ON状態ではSHG光出力が大きい状態となる。
ON状態とOFF状態を繰り返しスイッチングする場合、例えば、図3に示した様な変調電流を第1、第2のDBR領域101c、101aに注入する。第1のDBR領域101cには、ON時に低電流、OFF時に高電流を注入する。第2のDBR領域101aには、ON時に高電流、OFF時に低電流を注入する。単位周期あたりのON電流注入時間を制御することにより、SHG光出力を変調させて、例えば、画像の階調を表現することが可能となる。
ここで、1周期におけるON状態の時間割合が高い状態が連続した場合を考える。ディスプレイでは、全面に渡って白で描画、といった状態に相当する。このとき、第1のDBR領域101cではON状態に対応するON電流は低電流なので、時間とともに第1のDBR領域101cの温度が減少する。その結果、反射率分布は短波長側にシフトする。一方、第2のDBR領域101aではON電流は高電流なので、時間とともに第2のDBR領域101aの温度が増加する。その結果、反射率分布は長波長側にシフトする。この様子を模式的に示したものが図4である。図4(a)に示す様に、2つの反射率分布はその間隔が離れる方向に(すなわち交差点を挟んで対称的に逆方向に)シフトする。従って、図4(b)
に示す様に、反射率の積のピークの位置(2つの反射率分布の交差点の波長位置)は変化しないので、ON状態でのレーザ光の発振波長は変化しないで安定している。その結果、SHG素子104によってON状態でのレーザ光を効率良く波長変換できる。
に示す様に、反射率の積のピークの位置(2つの反射率分布の交差点の波長位置)は変化しないので、ON状態でのレーザ光の発振波長は変化しないで安定している。その結果、SHG素子104によってON状態でのレーザ光を効率良く波長変換できる。
1周期におけるOFF状態の時間割合が高い状態が連続した場合は、2つの反射率分布は夫々上記の場合とは反対の方向にシフトする。従って、2つの反射率分布は近づく方向にシフトして反射率の積のピークの位置は変化せず、ON状態でのレーザ光の発振波長は変化しない。いずれにせよ、第1のDBR領域101cと第2のDBR領域101aには、一方に高電流のときは他方に低電流、一方に低電流のときは他方に高電流という様な態様で電流が注入される。従って、両DBR領域に温度シフトがあるとすると、それは互いに対称的に逆の方向に起こって2つの反射率の積のピークの位置は変化しないことになる。すなわち、両DBR領域の電流量を夫々減少させ、増加させたときに反射率分布がオーバーラップしてDBR発振が得られるので、変調信号のパターンによる多少の温度ドリフトが発生しても、反射率分布のシフトする方向は逆であり、発振波長は変化しない。
以上に説明した様に、本実施形態によれば、比較的簡便な上記DBRレーザの制御方法で、多少の温度ドリフトがあっても、ON状態でのDBRレーザの発振波長安定性を確立できる。また、上記実施形態において上記DBRレーザを光波長変換装置ないし方法に用いるとき、光波長変換素子の位相整合波長を上記交差点の波長に設定し、DBRレーザから光波長変換素子への入力エネルギーを安定化させている。従って、ON状態でのDBRレーザの発振波長の安定性を確立できると共にDBRレーザ及び光波長変換素子の熱的安定性を確保でき、少なくとも上記ON状態を安定性且つ制御性良く実現できる。こうして、変調信号パターンに依存せずに安定した高階調の制御も可能な光波長変換装置ないし方法を実現できる。
以下に、図面に沿って本発明のより具体的な実施例を説明する。
(実施例1)
図1(a)に本発明による第1の実施例の構成図を示す。半導体DBRレーザ101は、第2のDBR領域101a、活性領域101b、及び第1のDBR領域101cを有する。活性領域101bの光伝播方向両側に、第2のDBR領域101aと第1のDBR領域101cが配置されている。更に、位相領域を備えてもよい。第1のDBR領域101c及び第2のDBR領域101aは、夫々、pn接合に垂直に電流を流すことにより活性層の屈折率を変化させることで反射率分布をシフトさせることができる。
(実施例1)
図1(a)に本発明による第1の実施例の構成図を示す。半導体DBRレーザ101は、第2のDBR領域101a、活性領域101b、及び第1のDBR領域101cを有する。活性領域101bの光伝播方向両側に、第2のDBR領域101aと第1のDBR領域101cが配置されている。更に、位相領域を備えてもよい。第1のDBR領域101c及び第2のDBR領域101aは、夫々、pn接合に垂直に電流を流すことにより活性層の屈折率を変化させることで反射率分布をシフトさせることができる。
制御手段109よって活性領域101b、位相領域(不図示)、DBR領域101c、101aに電流を流すことによってこの半導体DBRレーザ101より発生された基本波レーザ光は、コリメータレンズ102、集光レンズ103を通じてSHG素子104に集光される。SHG素子104は、素子長12mmのニオブ酸リチウム(LiNbO3)からなり、分極反転領域105が周期的に作られた光導波路106を有する導波路型擬似位相整合素子である。こうした構成により、半導体DBRレーザ101からの基本波レーザ光を半分の波長のSHG光108に変換することができる。SHG素子108からは基本波レーザ光、SHG光108ともに出力されるため、波長フィルタ107を用いて基本波レーザ光をカットしている。ここでは、SHG素子104は分極反転周期を調整することにより位相整合波長を1064.0nmに合わせている。
本実施例の第1のDBR領域101cの層構成を図5に示す。図5において、201はn型GaAs基板、203はn型AlGaAsクラッド層、205はアンドープInGaAs導波路層、207はアンドープInGaAs回折格子層、209はp型AlGaAsクラッド層、211はp側電極、213はn側電極である。回折格子207の周期や深さは、ブラッグ波長が1062nm、結合係数κが72[cm-1]、回折格子の領域長Lが250μm(κL=1.8)となる様に設定されている。このときの反射率と反射位相の関係を図6に示す。第2のDBR領域101aについては、ブラッグ波長が1066nmに設定されている以外は第1のDBR領域101cと共通である。
本実施例では、第1のDBR領域101cについては図6の右側、第2のDBR領域101aについては図6の左側を用いることにより(図1(c)参照)、基本波レーザ光の発振状態が制御されることになる。変調時には、活性領域101bに所定の一定電流を注入した状態で、例えば、図3の様な変調電流をDBR領域101c、101aに注入する。ここでは、第1のDBR領域101cでは、ON状態に対応するON電流10mA、OFF状態に対応するOFF電流210mAを注入し、第2のDBR領域101aでは、ON電流210mA、OFF電流10mAを注入する。こうして、変調信号に基づく変調電流に従って、SHG光出力が比較的大きいON状態とSHG光出力が比較的小さいOFF状態との間で切り替えられる。これらの電流値は、変調電流の各周期においてDBRレーザ101のDBR領域での発生熱量がほぼ一定である電流注入条件を満たすものである。
上記電流注入態様により、DBRレーザ101の注入電流対反射率分布特性がほぼ一定となる様にされている訳であるが、本実施例では更に次の様になっている。すなわち、ここで温度ドリフトがあった場合、図4の様にDBR領域101c、101aの反射率分布が相反する方向にシフトするとともに、反射位相の分布も同様にシフトする。ただし、2つの反射率分布が交わる点での反射位相の和はキャンセルされて0となる。従って、温度ドリフトが生じても反射位相の変動はなく、少なくともON状態において、より安定に所望の波長(反射率分布が交わる点の波長)での発振が可能になる。
(実施例2)
実施例1では、温度ドリフトに強いことを示した。ただし、ディスプレイに用いる用途を考えると、よりパワー変動の小さいことが要求される場合もある。本実施例は、その点を考慮して、注入する電流の形状を工夫している。本実施例の光波長変換装置の構成は、実施例1の図1に示すものと同様であるため説明は割愛する。
実施例1では、温度ドリフトに強いことを示した。ただし、ディスプレイに用いる用途を考えると、よりパワー変動の小さいことが要求される場合もある。本実施例は、その点を考慮して、注入する電流の形状を工夫している。本実施例の光波長変換装置の構成は、実施例1の図1に示すものと同様であるため説明は割愛する。
本実施例では、図7の様に、第1、第2のDBR領域101c、101aに3値からなる変調電流を注入する。ここで、3値の変調電流を夫々Ihi、I0、Iloで表し、この電流のときのDBR領域101c、101aの駆動電圧を夫々Vhi、V0、Vloで表す。この電流が注入される時間がthi、t-(thi+tlo)、tloで表される場合、制御手段109は、(Ihi×Vhi-I0×V0)×thi = (I0×V0-Ilo×Vlo)×tloの関係にある様に駆動電流を調整する。定性的には、第1のDBR領域101cのON時間で減らされた熱量をその直後に付加して注入することを行っている。第2のDBR領域101aも考え方は同様であり、ON時間で増やされた熱量をその直後に差し引いて注入することを行っている。
この様な変調電流を注入すると、より確実に温度ドリフトが生じない様になることから、より安定に制御することが可能となる。勿論、本実施例も、実施例1で述べた様な温度ドリフトに強いという特徴は有している。よって、上記の関係式を完全に満たしていない場合には若干の温度ドリフトが残ることになるが、本実施例でも、少なくともON状態において、安定に所望の波長での発振が可能になる。
(実施例3)
実施例3は本発明による光波長変換装置を用いた画像表示装置に係る。図6に本実施例の画像表示装置の模式的構成図を示す。本画像表示装置において、例えば上記実施例2で説明した緑色の変調光を発する光波長変換装置301、赤色レーザを発する変調光源302、青色レーザを発する変調光源303より夫々出力されたレーザ光はダイクロイックミラー304によって合波される。合波されたレーザ光は水平走査素子305、垂直走査素子306によって走査され、スクリーン307上に走査線を形成する。フルカラーの画像情報から生成された赤、緑、青各色の階調情報(変調信号)により、各光源301、302、303の出力を変調することにより、スクリーン307上に2次元のフルカラー画像が表示される。ここでは、スクリーン307上の画像の画素に対応した変調信号に応じて画素の周期ごとに変調電流を制御すればよい。
実施例3は本発明による光波長変換装置を用いた画像表示装置に係る。図6に本実施例の画像表示装置の模式的構成図を示す。本画像表示装置において、例えば上記実施例2で説明した緑色の変調光を発する光波長変換装置301、赤色レーザを発する変調光源302、青色レーザを発する変調光源303より夫々出力されたレーザ光はダイクロイックミラー304によって合波される。合波されたレーザ光は水平走査素子305、垂直走査素子306によって走査され、スクリーン307上に走査線を形成する。フルカラーの画像情報から生成された赤、緑、青各色の階調情報(変調信号)により、各光源301、302、303の出力を変調することにより、スクリーン307上に2次元のフルカラー画像が表示される。ここでは、スクリーン307上の画像の画素に対応した変調信号に応じて画素の周期ごとに変調電流を制御すればよい。
本発明による光波長変換装置は、赤色の半導体レーザなどと同等の変調性能を持つので、上記画像表示装置は、高精細の階調表現を有する画像を表示できる。本発明の光波長変換装置ないし方法は、上記レーザーディスプレイの他に、レーザービームプリンタ、複写機などの画像形成装置にも使用できる。
101 … DBRレーザ
101a … DBRレーザの第2のDBR領域
101b … DBRレーザの活性領域
101c … DBRレーザの第1のDBR領域
104 …光波長変換素子(SHG素子)
108 …第2高調波光(SHG光)
109 …制御手段
301 …本発明の光波長変換装置(緑色変調光源)
302 …赤色変調光源
303 …青色変調光源
305 …光走査素子(水平走査素子)
306 …光走査素子(垂直走査素子)
307 … スクリーン
101a … DBRレーザの第2のDBR領域
101b … DBRレーザの活性領域
101c … DBRレーザの第1のDBR領域
104 …光波長変換素子(SHG素子)
108 …第2高調波光(SHG光)
109 …制御手段
301 …本発明の光波長変換装置(緑色変調光源)
302 …赤色変調光源
303 …青色変調光源
305 …光走査素子(水平走査素子)
306 …光走査素子(垂直走査素子)
307 … スクリーン
Claims (7)
- 活性領域と、分布ブラッグ反射器(DBR)が形成された第1のDBR領域及び第2のDBR領域とを少なくとも有するDBRレーザ、
前記DBRレーザから発せられる基本波光を入射してその第2高調波光を出力する光波長変換素子、
変調信号に応じてDBRレーザへの注入電流を周期ごとに制御してその発振波長と光出力を制御する制御手段、
を含み、
前記DBRレーザは、前記第1のDBR領域と第2のDBR領域への注入電流が制御されることで第1のDBR領域の第1の反射率分布と第2のDBR領域の第2の反射率分布の波長軸上での重畳・分離程度が調整されて発振状態を変化できる構成を有し、
前記第1の反射率分布は、波長の増加に対して反射率が減少する波長域を備え、前記第2の反射率分布は、波長の増加に対して反射率が増加する波長域を備える、
ことを特徴とする光波長変換装置。 - 前記第1の反射率分布と第2の反射率分布が波長軸上で近づいて一部重なるときに第1の反射率分布と第2の反射率分布の積がピークとなる波長近傍に前記光波長変換素子の位相整合波長が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の光波長変換装置。
- 請求項1または2に記載の光波長変換装置を用いる光波長変換方法であって、
前記制御手段は、
前記第1の反射率分布と第2の反射率分布が波長軸上で離れる様に第1のDBR領域及び第2のDBR領域に電流を注入して前記第2高調波光の出力が比較的小さいOFF状態をもたらし、
前記第1の反射率分布と第2の反射率分布が波長軸上で近づいて一部重なる様に、第1のDBR領域への注入電流を減少して第1の反射率分布を波長軸上で長波長側にシフトさせ且つ第2のDBR領域への注入電流を増加して第2の反射率分布を波長軸上で短波長側にシフトさせて、前記第2高調波光の出力が比較的大きいON状態をもたらし、
前記変調信号に応じて、第1のDBR領域及び第2のDBR領域の注入電流への注入電流を周期ごとに制御して前記ON状態と前記OFF状態を切り替える、
ことを特徴とする光波長変換方法。 - 前記制御手段は、前記光波長変換素子に入力される各周期における光エネルギーが一定となる様にDBRレーザの光出力態様を制御する条件を満たしつつ、前記変調信号に応じてDBRレーザの活性領域への注入電流を制御することを特徴とする請求項3に記載の光波長変換方法。
- 前記制御手段は、各周期において発生熱量一定態様で前記第1のDBR領域と第2のDBR領域へ電流を注入するという条件を満たしつつ、前記変調信号に応じてDBRレーザの第1のDBR領域と第2のDBR領域への注入電流を制御することを特徴とする請求項3または4に記載の光波長変換方法。
- 請求項1または2に記載の光波長変換装置及び少なくとも1つの光走査素子を有し、前記光波長変換装置によって発せられた光を前記光走査素子で走査し、且つ変調信号に応じて第2高調波光の光量を調整することで画像が形成されることを特徴とする画像形成装置。
- 活性領域と、分布ブラッグ反射器(DBR)が形成された第1のDBR領域及び第2のDBR領域とを少なくとも有するDBRレーザであって、
前記第1のDBR領域と第2のDBR領域への注入電流が夫々制御されることで第1のDBR領域の第1の反射率分布と第2のDBR領域の第2の反射率分布の波長軸上での重畳・分離程度が調整されて発振状態を変化できる構成を有し、
前記第1の反射率分布は、波長の増加に対して反射率が減少する波長域を備え、前記第2の反射率分布は、波長の増加に対して反射率が増加する波長域を備える、
ことを特徴とするDBRレーザ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006247401A JP2008071841A (ja) | 2006-09-12 | 2006-09-12 | 光波長変換装置、及びそれを用いた画像表示装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006247401A JP2008071841A (ja) | 2006-09-12 | 2006-09-12 | 光波長変換装置、及びそれを用いた画像表示装置 |
Publications (1)
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JP2008071841A true JP2008071841A (ja) | 2008-03-27 |
Family
ID=39293197
Family Applications (1)
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JP2006247401A Pending JP2008071841A (ja) | 2006-09-12 | 2006-09-12 | 光波長変換装置、及びそれを用いた画像表示装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2008071841A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013219192A (ja) * | 2012-04-09 | 2013-10-24 | Fujitsu Ltd | 半導体レーザ |
-
2006
- 2006-09-12 JP JP2006247401A patent/JP2008071841A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2013219192A (ja) * | 2012-04-09 | 2013-10-24 | Fujitsu Ltd | 半導体レーザ |
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