JP2008065140A - 光損傷性を改善したニオブ酸リチウム単結晶またはタンタル酸リチウム単結晶、および、それを用いた光学素子 - Google Patents

光損傷性を改善したニオブ酸リチウム単結晶またはタンタル酸リチウム単結晶、および、それを用いた光学素子 Download PDF

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Abstract


【課題】高耐光損傷性を有するニオブ酸リチウム単結晶およびタンタル酸リチウム単結晶、ならびに、これを用いた光学素子を提供する。
【解決手段】実質的に定比組成のニオブ酸リチウム単結晶またはタンタル酸リチウム単結晶は、Er、Tm、YbおよびLuからなる群から少なくとも1つ選択される元素を0.3mol%〜3.0mol%含む。また、この元素を0.4mol%〜1.0mol%含んでもよい。この単結晶を用いて光学素子を作製する。
【選択図】図6

Description

本発明は、ニオブ酸リチウム単結晶およびタンタル酸リチウム単結晶、ならびに、それを用いた光学素子に関する。より詳細には、高耐光損傷性を有するニオブ酸リチウム単結晶およびタンタル酸リチウム単結晶、ならびに、それを用いた光学素子に関する。
近年、非線形光学効果を有する光学単結晶を利用した波長変換素子が注目されている。このような光学単結晶のなかでも、コングルエント組成のニオブ酸リチウム単結晶(以降では単にCLNと呼ぶ)およびコングルエント組成のタンタル酸リチウム単結晶(以降では単にCLTと呼ぶ)、ならびに、実質的に定比組成のニオブ酸リチウム単結晶(以降では単にSLNと呼ぶ)および実質的に定比組成のタンタル酸リチウム単結晶(以降では単にSLTと呼ぶ)は、非線形光学定数が大きいこと、工業的に高品質で大口径な単結晶の製造方法が確立していることなどから、有用とされている。
特に、SLNおよびSLTは、CLNおよびCLTに比べて抗電界がきわめて小さいため、高アスペクト比の周期分極反転構造を有する光学素子の製造が可能になったことにより、注目されている。
しかしながら、これらSLNおよびSLTにレーザ光を照射すると、SLNおよびSLT内で光損傷(または光誘起屈折率変化)が生じ、波長変換効率の低下、光の透過率の低下、ビームファニングの発生等の光学特性が低下することが知られている。
このような光損傷の発生を低減するために、各種のドーパントを用いる方法がある。例えば、Mg、Zn、InまたはScをSLNまたはSLTにドープすることによって耐光損傷性の改善を図る技術がある(例えば、特許文献1を参照。)。ScをCLNまたはCLTにドープすることによって耐光損傷性を改善する技術がある(例えば、特許文献2を参照。)。
上記特許文献1および特許文献2に示されるドーパントを用いた場合、キュリー温度が上昇する場合がある。その場合には、キュリー温度と分解開始温度(1215℃)とが近いため、ポーリング処理が困難になり得る。ノンドープのSLNのキュリー温度は1202℃〜1203℃であることが知られている。このノンドープSLNに、Mg、ZnまたはScの耐光損傷性を向上させる添加剤を加えるとキュリー温度が上昇し、分解開始温度に非常に近いかそれを超えることになり、ポーリングが殆ど不可能になる。また、種々のアプリケーションに応じて、適切なドーパントを適用できることが望ましい。
一方、Nd、Eu、Yb、Ce、TbをSLNまたはSLTにドープして大口径の多結晶を製造する技術がある(例えば、特許文献3を参照。)。
上記特許文献3は、具体的なドーパントの効果を開示していないが、これらののドーパントは、主に、発光を目的とするドーパントとして知られている。これらドーパントの効果および適切なドーピング量を明確にすることが望まれる。
特開2003−267798号公報 登録1956727号 特開2003−171199号公報
したがって、本発明の目的は、高耐光損傷性を有するニオブ酸リチウム単結晶およびタンタル酸リチウム単結晶を提供することである。
本発明による実質的に定比組成のニオブ酸リチウム単結晶またはタンタル酸リチウム単結晶は、Er、Tm、YbおよびLuからなる群から少なくとも1つ選択される元素を0.3mol%〜3.0mol%含み、これにより上記目的を達成する。
前記単結晶は、前記元素を0.4mol%〜1.0mol%含んでもよい。
前記単結晶は、光学素子用であり得る。
本発明による光学素子は、上記単結晶を用いており、これにより上記目的を達成する。
本発明による実質的に定比組成のニオブ酸リチウム単結晶およびタンタル酸リチウム単結晶は、Er、Tm、YbおよびLuからなる群から少なくとも1つ選択される元素を0.3mol%〜3mol%含む。これら特定された元素をドーピングすることにより、耐光損傷性を向上させることができる。耐光損傷性を向上させるためのドーパント種が増えるため、種々の用途に合わせた幅広い材料設計が可能になる。また、従来よりも少ないドーピング量でも耐光損傷性を向上できるので、単結晶育成時におけるドーパントに基づくクラック、インクルージョン等が発生しにくくなり得る。その結果、単結晶製造の歩留まりを向上し得る。
(本発明の概要)
発明者らは、実質的に定比組成のニオブ酸リチウム単結晶(SLN)、および、実質的に定比組成のタンタル酸リチウム単結晶(SLT)に、Er、Tm、YbおよびLuからなる群から少なくとも1つ選択される元素を0.3mol%〜3mol%ドーピングすることによって、耐光損傷性が向上することを見出した。
なお、本明細書において、実質的に「定比組成である」とは、LiO/(Nb+LiO)、または、LiO/(Ta+LiO)のモル分率が完全に0.50ではないものの、化学量論比に近い組成(LiO/(Nb+LiO)、または、LiO/(Ta+LiO)のモル分率=0.495〜0.5)を有していることを言う。
発明者らは、耐光損傷性の向上に寄与するドーパントの要件として(A)希土類元素、(B)特定のイオン半径、および、(C)ドーピング量を見出した。各要件について説明する。
(A)希土類元素について
発明者らは、希土類元素が、耐光損傷性の向上に有効であることを見出した。希土類元素は、SLNおよびSLT中の1価のイオンLiと、3価のイオンとして置換される。この際、SLNおよびSLTの1分子当たり2個の過剰なチャージが発生する。この過剰なチャージが、光伝導度σの増加に寄与する。光伝導度σが増加すると、光誘起屈折率効果の立ち上がり時間τは低下する。このことは、光誘起屈折率効果の立ち上がり時間が小さくなることにより、常光と異常光との屈折率差は小さくなり、結果、耐光損傷性の向上につながる。
上記希土類元素において、このような効果を奏するのは、その電子配置に起因すると考えられる。上記希土類元素のうちランタノイドは、4f電子軌道の外側にある5s、5p、6d起動に先に電子が埋まり、その後、4f電子軌道に電子が入る(すなわち、内遷移元素である)。その結果、ランタノイドの3価イオンの電子配置は、それぞれ、5s5p(La)、4f5s5p(Ce)、4f5s5p(Pr)、4f5s5p(Nd)、4f5s5p(Pm)、4f5s5p(Sm)、4f5s5p(Eu)、4f5s5p(Gd)、4f5s5p(Tb)、4f5s5p(Dy)、4f105s5p(Ho)、4f115s5p(Er)、4f125s5p(Tm)、4f135s5p(Yb)および4f145s5p(Lu)と表される。このことから、ランタノイドは、互いに共通した特性を有している。
(B)イオン半径について
上記希土類元素によって、耐光損傷性を向上させるには、下記(C)に述べる所定量をドープする必要がある。発明者らは、必要量ドープ可能な(6配位の)イオン半径が、0.86〜0.89Å(R. D. Shannon and C. T. Prewitt, Acta Cryst., B29(1996)925)の範囲であることを見出した。
0.89Åより大きなイオン半径を有するドーパントの場合、例えば、希土類元素中のSm(イオン半径0.96Å)の場合、置換可能であるものの、十分な量のSmをLiと置換することができない。そのため、耐光損傷性の向上は見られない。また、0.86Åより小さなイオン半径を有するドーパントの場合、特に、Liのイオン半径(0.65Å)より小さなイオン半径を有するドーパントの場合には、格子間にドーパントが位置しやすくなり、耐光損傷性の向上が見られない場合がある。
(C)ドーピング量について
SLNおよびSLTについては、ドーピング量は、0.3〜3.0mol%の範囲であり、より好ましくは、0.4〜1.0mol%の範囲である。これは、ドーピング量が0.3mol%未満の場合には、耐光損傷性の向上が見られないためである。また、ドーピング量が3.0mol%を超える場合には、耐光損傷性の向上は飽和状態となり、ドーピング量が多すぎるために結晶の育成を困難にする場合がある。ドーピング量が、0.3〜3.0mol%、とりわけ、0.4〜1.0mol%の範囲であれば、確実に耐光損傷性を改善するとともに、結晶の育成に悪影響を及ぼすことはない。
したがって、発明者らは、上記(A)〜(C)の条件をいずれも満たすドーパントが、上記(A)に述べた希土類元素のうちEr、Tm、YbおよびLuであることを特定した。本発明のSLNおよびSLTは、これらEr、Tm、YbおよびLuからなる群から少なくとも1つ選択される元素を含む。これらの群からドーパントとして2以上の元素が選択された場合にも、上記(C)の条件を満たすようにドープされれば、耐光損傷性の向上は期待できることは言うまでもない。また、ドーパントとして、上述のEr、Tm、YbおよびLuからなる群から選択された元素と、従来技術のMg、Zn、InおよびScからなる群から選択された元素とを組み合わせて用いてもよい。
上述のドーパントを含むSLNおよびSLTは、光学素子に好適である。詳細には、本発明のSLNおよびSLTは、光損傷に敏感な波長変換素子、光変調器、光スイッチ等の光学素子に好適である。具体的な光学素子への適用は、当業者であれば、容易に類推する。また、従来の耐光損傷性を向上させるドーパントに加えて、さらなるドーパントの選択肢があることは、素子設計に応じて適宜ドーパントを選択できるので、製造上有利であり得る。
また、上述のドーパントはいずれも3価であるため、上述の2価のドーパントであるMgおよびZnに比べて、少ないドーピング量で耐光損傷性の向上が期待できる。また、少ないドーピング量で耐光損傷性を向上できるので、単結晶育成時におけるドーパントに基づくクラック、インクルージョン等が発生しにくくなる。その結果、単結晶製造の歩留まりを向上する。
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
本実施例では、原料連続供給システムを備えた二重るつぼ法を用いて、ドーパントとしてErを選択し、種々のドーパント濃度のSLN単結晶を製造した。
市販の高純度LiO、Nbの原料粉末を用い、LiO:Nb=0.58:0.42のLi成分過剰原料と、LiO:Nb=0.50:0.50の定比組成原料とを調製した。次に、Li成分過剰原料を1ton/cmの静水圧でラバープレス成形し、約1050℃、大気中で焼結させた。定比組成原料を約1150℃、大気中で焼結させ、粒径50μm〜500μmとなるように粉砕した。
次に、二重るつぼの外側るつぼおよび内側るつぼに、焼結したLi成分過剰原料と、市販の高純度Er粉末とを充填させた。なお、Er粉末は、二重るつぼ内の融液中のNbに対するEr濃度が、それぞれ、0、0.2、0.5、1.0および2.0mol%となるように充填された。なお、実施例で用いた高純度とは、99.999%以上である。
各Er濃度のSLN単結晶を以下の手順で製造した。
二重るつぼ内のLi成分過剰原料の融液に種結晶をつけ、引き上げ速度0.5mm/h、結晶回転数20rpmで単結晶を引き上げた。この際、結晶化したSLN単結晶に見合った量の定比組成原料を外側るつぼに自動的に供給した。これにより、種々の濃度のErがドープされた実質的に定比組成のニオブ酸リチウム単結晶(SLN)が得られた。
得られた種々の濃度のErがドープされたSLNについて、誘導結合高周波プラズマ発光分析(ICP発光分析)(Iris advantage、日本ジャーレル・アッシュ株式会社、日本)を用いて、組成等を測定した。また、示差熱分析法(Thermo Plus DSC8270、株式会社リガク、日本)を用いて、キュリー温度を測定した。結果を表1に示し、後述する。
次に、得られた種々の濃度のErがドープされたSLNについて、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)(Bio−Rad Win−IR、Varian, Inc.、米国)を用いて、吸収スペクトルを測定し、OH伸縮振動のバンド端(3450cm−1〜3550cm−1)のピークシフトを調べた。測定結果を図1および図2に示し、後述する。
得られた種々の濃度のErがドープされたSLNについて、He−Neレーザとグリーンレーザ(532nm)とを同軸入射し、複屈折変化を測定する装置を用いて、屈折率分散(常光と異常光との屈折率の差)の時間依存性を測定した。測定結果を図3に示し、後述する。次いで、屈折率分散から得られた光誘起屈折率効果の立ち上がり時間と光伝導度との関係を求めた。関係を図4に示し、後述する。
Erの仕込み濃度0.2および1.0mol%のSLNについて、光損傷を測定するシステム500(後述する)を用いて、光損傷を測定した。結果を図6に示し、後述する。
Luを0.5mol%ドープしたSLN単結晶を製造した。具体的には、Er粉末の代わりに、Lu粉末を用い、二重るつぼ内の融液中のNbに対するLu濃度が、1.0mol%となるように充填され以外は、実施例1と同様の手順であった。
得られたLuをドープしたSLN単結晶について、実施例1と同様に、光損傷を測定した。結果を図6に示し、後述する。
比較例1
Mgを1.0mol%および2.75mol%ドープしたSLN単結晶を製造した。具体的には、Er粉末の代わりに、MgO粉末を用い、二重るつぼ内の融液中のNbに対するMg濃度が、それぞれ、1.0mol%および2.75mol%となるように充填され以外は、実施例1と同様の手順であった。
得られたMgをドープしたSLN単結晶について、実施例1と同様に、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いて、吸収スペクトルを測定し、OH伸縮振動のバンド端(3450cm−1〜3550cm−1)のピークシフトを調べた。測定結果を図2に示し、後述する。また得られたMgをドープしたSLN単結晶のキュリー温度を測定した。結果を後述する。
比較例2
Ndを0.2mol%ドープしたSLN単結晶を製造した。具体的には、Er粉末の代わりに、Nd粉末を用い、二重るつぼ内の融液中のNbに対するNd濃度が、2.0mol%となるように充填され以外は、実施例1と同様の手順であった。得られた単結晶は、3個の平面により構成され側面を有しており、その内部には多くのインクルージョンが観察された。このことは、さらに高濃度でNdをドープすることにより結晶の育成を困難にするととも、得られる結晶の品質を低下させることを示唆している。
得られたNdをドープしたSLN単結晶について、実施例1と同様に、光損傷を測定した。結果を図6に示し、後述する。
表1は、実施例1で製造された種々の濃度のErがドープされたSLN単結晶の組成、偏析係数およびキュリー温度を示す。いずれの単結晶も、Li/Nbが0.96〜1.0の範囲にあり、実質的に定比組成のニオブ酸リチウム単結晶であることが分かった。融液中のEr濃度(すなわち、Erの仕込み濃度)が、0.2mol%、0.5mol%、1.0mol%および2.0mol%である場合、単結晶中に実際にドーピングされたEr濃度は、それぞれ、0.08mol%、0.26mol%、0.46mol%および0.83mol%であることが分かった。以降では、実際にドーピングされた濃度を用いて、説明する。例えば、Erが0.26mol%ドープされたSLNの場合、簡単のため、Er0.26mol%SLNと表記する。
ErをドープしたSLNのキュリー温度は、いずれも、MgをドープしたSLNのキュリー温度(Mg1.0mol%SLN:1212℃、Mg2.0mol%SLN:1216℃)に比べて低く、SLNの分解開始温度(1215℃)より約20℃以上低いことが分かった。このことは、Erのドーピングによってニオブ酸リチウム単結晶のキュリー温度が低下するため、ポーリングが容易になり、その結果、加工時の歩留まりを向上させることができることを示唆する。
図1は、実施例1によるFTIRの結果を示す図である。
SLN単結晶中に含まれる−OH基の吸収位置(すなわちOH伸縮振動)によって、そのSLN単結晶の光損傷に対する耐性の程度が分かることが知られている。具体的には、OH伸縮振動のバンド端が高エネルギー側に現れるほど、耐光損傷性が高いことが知られている。そこで、実施例1で得られたEr0mol%〜0.83mol%SLNについてOH伸縮振動のバンド端を調べた。その結果、Er0mol%〜0.26mol%SLNのスペクトルにおけるOH伸縮振動のバンド端は、約3465cm−1に現れ、Er0.46mol〜0.84mol%SLNのスペクトルにおけるOH伸縮振動のバンド端は、約3520cm−1に現れることが分かった。このことから、ドーピング量の増加により、OH伸縮振動のバンド端が高エネルギー側(図1中の矢印で示す方向)にシフトし、耐光損傷性が向上し得ることが示唆される。次に、より詳細にOH伸縮振動のバンド端のシフト量について調べた。
図2は、実施例1および比較例1によるOH伸縮振動のバンド端のシフト量とドーパント濃度との関係を示す図である。
実施例1によれば、ドーピング量が0.26mol%〜0.46mol%の間において、OH伸縮振動のバンド端の顕著なシフトが見られた。一方、比較例1によれば、ドーピング量が0mol%〜1.0mol%の間において、OH伸縮振動のバンド端の顕著なシフトが見られた。このことから、Mgに比べてErの方が、少ないドーピング量でより早くOH伸縮振動のバンド端がシフトすることが分かった。図1および図2より、Erは、Mgに比べて、少ないドーピング量で光損傷性を改善できることが示された。
図3は、実施例1による屈折率差の時間依存性を示す図である。
各プロットから、常光および異常光の屈折率差は、Er0.46mol%SLNでもっとも小さく、Er0〜0.08mol%SLNでもっとも大きいことが分かる。屈折率差が小さいことは、光損傷によるビームファニングが発生しにくいことを示唆する。
得られた各プロットを関係式δΔn=δΔn[1−e(t/τ)]でフィッティングし、光誘起屈折率効果の立ち上がり時間τを求めた。ここで、Δnは、常光および異常光の屈折率差であり、Δnは、t時間後の飽和屈折率差である。次に、求めた立ち上がり時間τを用いて、関係式σ=εετから光伝導度σを算出した。ここで、εは自由空間の誘電率(=8.85×e−12F/m)であり、εはニオブ酸リチウム単結晶の誘電率(=28)である。
図4は、実施例1による立ち上がり時間τと、光伝導度σと、Erのドーピング量との関係を示す図である。
光伝導度が大きいほど、光損傷が小さいことが知られている。図4から、光伝導度は、ドーパント量の増加にしたがって、増加することが分かった。特にドーピング量0.4mol%近傍で最大となることが分かった。このことは、ドーピング量0.4mol%以上で、特に耐光損傷性が向上することを示唆する。
図5は、光損傷を測定するシステム500を示す図である。
システム500は、光源510と、集光レンズ520と、スクリーン530とを含む。ここでは、光源510として、Nd:YAG SHGレーザ(波長532nm)を用いた。測定は、光源510から発生されたレーザ光を、集光レンズ520を介して試料540にて集光させ、試料540を透過したレーザ光の形状550がスクリーン530に映し出される。映し出された形状550を、ビームプロファイラ(図示せず)を用いて、撮影し、光損傷を観察した。レーザ光は、SLNのY軸方向に照射された。
図6は、システム500によって撮影されたビーム形状を示す図である。
図6(A)は、Er0.26mol%SLNのビーム形状であり、図6(B)は、Er0.45mol%SLNのビーム形状であり、図6(C)は、Lu0.5mol%SLNのビーム形状であり、図6(D)は、Nd0.24mol%SLNのビーム形状である。
図6(A)のビーム形状は、Z軸方向に伸びた楕円形を示し、ビームファニングが生じていることを示す。このことより、ドーパントとしてErを選択した場合であっても、0.3mol%以上ドーピングされないと耐光損傷性が向上しないことが分かった。図6(D)のビーム形状もまた、Z軸方向に伸びた楕円刑を示し、ビームファニングが生じている。このことは、ドーパントしてNdを選択した場合、所定量のドーピングが達成できないため、耐光損傷の向上には不向きであることを示唆している。
一方、図6(B)および図6(C)のビーム形状は、円形を維持しており、ビームファニング、すなわち光損傷が発生していないことを示している。これより所定量のEr、Luをドープしたニオブ酸リチウム単結晶(SLN)は、耐光損傷性を有することが確認された。
実施例では、SLNについてのみ示したが、SLTについても同様の結果が得られることは当業者であれば容易に理解し得る。
以上説明してきたように、本発明による実質的に定比組成のニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウム単結晶は耐光損傷性を有する。このような単結晶は、波長変換素子、光変調器、光スイッチ等の光学素子に適用され得る。
実施例1によるFTIRの結果を示す図 実施例1および比較例1によるOH伸縮振動のバンド端のシフト量とドーパント濃度との関係を示す図 実施例1による屈折率差の時間依存性を示す図 実施例1による立ち上がり時間τと、求めた光伝導度σと、Erのドーピング量との関係を示す図 光損傷を測定するシステム500を示す図 システム500によって撮影されたビーム形状を示す図
符号の説明
500 システム
510 光源
520 集光レンズ
530 スクリーン
540 試料
550 形状

Claims (4)

  1. 実質的に定比組成のニオブ酸リチウム単結晶またはタンタル酸リチウム単結晶であって、
    Er、Tm、YbおよびLuからなる群から少なくとも1つ選択される元素を0.3mol%〜3.0mol%含む、単結晶。
  2. 前記元素を0.4mol%〜1.0mol%含む、請求項1に記載の単結晶。
  3. 前記単結晶は、光学素子用である、請求項1に記載の単結晶。
  4. 請求項1〜3に記載の単結晶を用いた光学素子。
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