JP2008064465A - バイオセンサ用表面 - Google Patents

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博文 矢島
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勝美 内田
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Abstract

【課題】より高い感度を有するバイオセンサ用測定チップを作成することが可能なバイオセンサ用表面を提供すること。
【解決手段】アナライトと結合することによって相転移を生じる刺激応答性高分子と、アナライトと結合させるための生体物質認識分子と、を含み、前記刺激応答性高分子にスペーサー分子を介して前記生体物質認識分子が結合されてなる高分子化合物を用いた。
【選択図】なし

Description

本発明は、刺激応答性高分子にスペーサー分子を介して生体物質認識分子が結合されてなる高分子化合物を含むバイオセンサ用表面、及びこのバイオセンサ用表面を有するバイオセンサ用測定チップ、バイオセンサに関する。
バイオセンシングは、センサ基板に担持した生体物質認識分子(リガンド)に対し、特異的相互作用を示す生体分子が結合することによって発生するシグナルやシグナル変化を検出するものである。
中でも、標識物質を必要とすることなく、リガンドの変化を高感度に検出することができる表面プラズモン共鳴(SPR)を用いたセンサが広く利用されている。表面プラズモン共鳴を利用したバイオセンサで一般的に使用される測定チップは、ガラス基板上に成膜された金属膜の上に、多孔性材料が形成されており、この多孔性材料の表面及び内部に酵素、抗体等の生理活性物質が担持又は固定されている。多孔性材料としては、例えば合成繊維、天然繊維、無機繊維等からなる織物、編物、不織布や、多孔性の無機又は有機材料等が使用されている(特許文献1参照)。
特開平3−164195号
しかしながら、従来の測定チップに使用されている多孔性材料では、測定チップ表面での生体分子の非特異的吸着が起こり、ノイズが生じ、感度が低くなる問題があった。また、感度を向上させる方法として、親水性高分子を生体物質認識分子の担持層として用いる方法が挙げられる。しかしながら担持する生体物質認識分子の密度を増大させること以外はあまり行われておらず、密度の増大にも限界があった。
以上の課題に鑑み、本発明はより高い感度を有するバイオセンサ用測定チップ(以下、センサチップともいう)を作成することが可能なバイオセンサ用表面及びこれを用いたバイオセンサ用測定チップ、バイオセンサを提供することを目的とする。
本発明者らは、刺激応答性高分子をセンサチップの表面に固定し、そこに生体物質認識分子を結合させることで、ターゲット分子(アナライト)が結合したことによる屈折率変化に加えて、ターゲット分子が結合したことによる刺激応答性高分子の相転移変化によって屈折率が変化することを見出し、本発明を完成するに至った。
(1) 表面プラズモン共鳴分析に使用されるバイオセンサの表面を構成するバイオセンサ用表面であって、アナライトと結合することによって相転移を生じる刺激応答性高分子と、アナライトと結合させるための生体物質認識分子と、を含み、前記刺激応答性高分子にスペーサー分子を介して前記生体物質認識分子が結合されてなる高分子化合物を含むバイオセンサ用表面。
(2) 前記刺激応答性高分子は、温度応答性高分子である(1)に記載のバイオセンサ用表面。
(3) 前記温度応答性高分子は、ポリN−イソプロピルアクリルアミドである(2)に記載のバイオセンサ用表面。
(4) 前記スペーサー分子は、ポリエチレングリコール及び/又はポリエチレングリコール誘導体である(1)から(3)いずれかに記載のバイオセンサ用表面。
(5) 前記生体物質認識分子は、低分子有機化合物、酵素、微生物、核酸、非免疫蛋白質、免疫グロブリン結合性蛋白質、糖結合性蛋白質、糖を認識する糖鎖、脂肪酸若しくは脂肪酸エステル、或いはリガンド結合能を有するポリペプチド若しくはオリゴペプチドからなる群から選ばれるいずれか1種である(1)から(4)いずれかに記載のバイオセンサ用表面。
(6) (1)から(5)いずれかに記載のバイオセンサ用表面を有するバイオセンサ用測定チップ。
(7) (6)に記載のバイオセンサ用測定チップを備えるバイオセンサ。
(8) (1)から(5)いずれかに記載のバイオセンサ用表面を用いることにより、表面プラズモン共鳴分析に使用されるバイオセンサのシグナルを増強させる方法。
刺激応答性高分子は、アナライトの結合によって高次構造を可逆的に変化させること、即ち、可逆的な相転移を生じさせることが可能な高分子である。高次構造の変化は、刺激応答性高分子の相転移温度に依存し、この相転移温度は自身の内部環境によって変化する。このため、(1)〜(5)の発明によれば、生体物質認識分子を刺激応答性高分子に結合させることにより、より容易に相転移(体積変化)を生じさせることが可能となる。その結果、アナライトがこの生体物質認識分子に結合する際に、高分子化合物の相転移をより大きく生じさせる。このような高分子化合物の相転移変化は、屈折率に影響を及ぼす。その結果、刺激応答性高分子単独でアナライトと結合させる場合と比べ、屈折率の変化をより大きくすることができる。従って、従来よりもシグナルを増幅させることが可能となる。
また、(6)の発明によれば、(1)〜(5)に記載のバイオセンサ用表面を用いることによって、シグナル増幅効果機能を有するバイオセンサ用測定チップを提供することが可能となる。さらに、(7)の発明によれば、(6)に記載のバイオセンサ用測定チップを用いることによって従来よりも高い感度で測定することが可能となる。これによって、測定対象試料の量が少なくても正確に測定することが可能となる。さらに、(8)の発明によれば、(1)〜(5)に記載のバイオセンサ用表面を用いることによって、表面プラズモン共鳴分析に使用されるバイオセンサのシグナルを増強させる方法を提供することが可能となる。
本発明によれば、従来よりも、より高感度のバイオセンサ表面及びバイオセンサ用測定チップ等を提供することが可能となる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
[高分子化合物]
本発明に係るバイオセンサ表面は、刺激応答性高分子にスペーサー分子を介して生体物質認識分子が結合されてなる高分子化合物を含む。
ここで、本発明における「刺激応答性高分子」とは、アナライトの結合によって相転移、即ち、高次構造の変化を生じさせる高分子をいう。この高次構造の変化は、可逆的な変化である。
本発明に係る刺激応答性高分子としては、一般的な刺激応答性高分子、即ち、熱や光、pH等の外部刺激に対して高次構造を変化させる高分子が用いられる。中でも、熱の変化により、高次構造を可逆的に変化させることが可能な温度応答性高分子を用いることが好ましい。
この温度応答性高分子は、下限臨界溶液温度(LCST)を境に、相転移による体積変化を生じさせるものであるため、アナライトの結合によって、測定温度によっては測定温度を変化させなくても体積変化が期待される。この体積変化は、屈折率の変動をもたらすため、アナライトが結合しているときとしていないときとで屈折率が大きく異なる。従って、より高感度のバイオセンサを提供することが可能となる。
なお、本発明における高分子化合物の「体積変化」とは、収縮を意味する。
温度応答性高分子としては、ポリ(N−置換アクリルアミド)、ポリ(N−置換メタクリルアミド)、ポリ(N,N−二置換アクリルアミド)、ポリビニルエーテル類、等を使用することができる。具体的には、ポリ(N−エチルアクリルアミド)、ポリ(N−シクロプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−n−プロピルアクリルアミド)、ポリ(N−シクロプロピルメタクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルメタクリルアミド)、ポリ(N−n−プロピルメタクリルアミド)、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリビニルメチルエーテル等が例示され、また、これらの単独ポリマーのみならず、これらの高分子のモノマー単位の2種以上を組み合わせた共重合体や、他の重合性モノマーとの共重合体も含まれる。
中でも、相転移温度が30℃前後と比較的体温に近いことからポリN−イソプロピルアクリルアミドを用いることが好ましい。
また、光応答性高分子としては、アゾベンゼン、ジアリールエテン、スピロピラン、スピロオキサジン、フルギド、ロイコ色素等の光応答性分子やこれらの有機化合物の誘導体から適宜選択された構造を付加させた高分子を用いることができる。これらの刺激応答性高分子は、複数種を組み合わせて使用してもよい。
刺激応答性高分子の、質量平均分子量は1000〜1000000であることが好ましい。また、刺激応答性高分子は、親水性基と疎水性基を有し、ゲル状になるものであることが好ましい。
また、本発明における刺激応答性高分子は、当該刺激応答性高分子のモノマーを溶媒に溶解させ、公知の重合方法により得られる。具体的には、N−イソプロピルアクリルアミドを、開始剤を用いて共重合させる。開始剤としては、ラジカル重合では、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド(ABAH)、2−[N−(2−ヒドロキシエチル)カルバモイル]プロピル−2−ジチオベンゾエートを用いることが好ましい。
なお、得られたポリN−イソプロピルアクリルアミドを用いてゲルを製造する際には架橋剤を用いることが好ましい。架橋剤としては、具体的にはN,N´−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
本発明に係る高分子化合物は、上記刺激応答性高分子に、スペーサー分子を介して生体物質認識分子が結合されている。
刺激応答性高分子の体積変化は、上述のように、自身の内部環境によって変化する。このため、生体物質認識分子を刺激応答性高分子に結合させることにより、アナライトの結合により相転移(体積変化)を生じさせることが可能となる。その結果、刺激応答性高分子を単独で用いた場合と比べ、屈折率の変化を大きくすることができ、より高い感度を有するバイオセンサ用表面を提供することが可能となる。
本発明における、「スペーサー分子」とは、上記刺激応答性と、この刺激応答性高分子に結合するリガンドを繋ぐ役割を果たしている。スペーサー分子としては、生体物質認識分子と刺激応答性高分子の両方に結合可能な基を有している分子であり、かつ、非特異的な吸着・結合を抑制するものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、ポリアルキレングリコール及び、ポリアルキレングリコール誘導体等が挙げられる。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びこれらの共重合体が挙げられる。
ポリアルキレン誘導体としては、ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等の誘導体が挙げられる。中でもポリエチレングリコールを用いることが好ましい。
スペーサー分子の質量平均分子量は、1000〜20000であることが好ましく、5000〜10000であることがより好ましい。
本発明における「生体物質認識分子」とは、アナライトと結合するものであれば特に限定されない。例えば、低分子有機化合物、酵素、微生物、核酸、非免疫蛋白質、免疫グロブリン結合性蛋白質、糖結合性蛋白質、糖を認識する糖鎖、脂肪酸若しくは脂肪酸エステル、或いはリガンド結合能を有するポリペプチド若しくはオリゴペプチド等が挙げられる。
低分子有機化合物としては、通常の有機化学合成の方法で合成することができる任意の化合物が挙げられ、好ましくは、糖類が挙げられる。糖類としては、グルコース、フルクトース、ヘプトース、セドヘプツロース、ヘキソース、リブロース、ガラクトース、タロース、アロース、ペントース、アピオース、リボース等の単糖類、マルトース、ラクトース、スクロース等の二糖類が挙げられる。
酵素としては、例えば酸化還元酵素、加水分解酵素、異性化酵素、脱離酵素、合成酵素等を使用することができる。具体的には、測定対象物がグルコースであれば、グルコースオキシダーゼを、測定対象物がコレステロールであれば、コレステロールオキシダーゼを使用することができる。また、農薬、殺虫剤、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、抗生物質、麻薬、コカイン、ヘロイン、クラック等を測定対象物とする場合には、それらから代謝される物質と特異的反応を示す、例えばアセチルコリンエステラーゼ、カテコールアミンエステラーゼ、ノルアドレナリンエステラーゼ、ドーパミンエステラーゼ等の酵素を使用することができる。なお、これらの酵素は、活性部位に変異を加えたものであることが好ましい。
微生物としては、特に限定されることなく、大腸菌をはじめとする種々の微生物を使用することができる。核酸としては、測定の対象とする核酸と相補的にハイブリダイズするものを使用することができる。核酸は、DNA(cDNAを含む)、RNAのいずれも使用できる。DNAの種類は特に限定されず、天然由来のDNA、遺伝子組換え技術により調製した組換えDNA、又は化学合成DNAのいずれを用いてもよい。
非免疫蛋白質としては、例えばアビジン(ストレプトアビジン)、ビオチン又はレセプター等を使用できる。
免疫グロブリン結合性蛋白質としては、例えばプロテインA或いはプロテインG、リウマチ因子(RF)等を使用することができる。
糖結合性蛋白質としては、レクチン等が挙げられる。脂肪酸或いは脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ステアリン酸エチル、アラキジン酸エチル、ベヘン酸エチル等が挙げられる。
上記生体物質認識分子は、検出対象の試料によって適宜選択することが可能である。
本発明に係る高分子化合物は、上記の方法により得られる刺激応答性高分子に、スペーサー分子を介して生体物質認識分子を結合させることにより得られる。具体的には、まずスペーサー分子と生体物質認識分子を反応させる。そして所定の濃度で溶媒に溶解させたゲル状又は溶液の刺激応答性高分子に、架橋剤とスペーサー分子が付加された生体物質認識分子を反応させる。反応方法としては、熱や光による処理が挙げられる。中でも、紫外線を照射して重合させる反応方法であることが好ましい。
刺激応答性高分子を溶解させる溶媒としては、水、テトラヒドロフラン、メタノール等が挙げられる。刺激応答性高分子の濃度としては、刺激応答性高分子を形成するモノマーの濃度が0.05g/mol〜0.3g/molとなるように調製することが好ましい。
なお、刺激応答性高分子とスペーサー分子を付加させた生体物質認識分子との反応は、後述する金属膜が形成された基板の上で行うことが好ましい。このように基板上で反応させることにより、膜状の高分子化合物を得ることが可能となる。
具体的には、ゲル状、又は溶液に溶解させた刺激応答性高分子に、スペーサー分子が付加された生体物質認識分子と架橋剤を溶解させ、高分子化合物用調製溶液(以下、調製溶液とする)を製造する。この調製溶液を上記金属膜が形成された基板の上に塗布、或いは金属膜が形成された基板を浸漬させる。そして上記と同様に、熱や光によって重合反応させることにより、金属膜上に高分子化合物を結合させる。中でも、紫外線を照射して重合させる反応方法であることが好ましい。
紫外線の照射条件としては、得られる高分子化合物の膜厚や、使用する溶媒の種類によって異なるが、0℃〜100℃のもと2時間〜24時間であることが好ましく、50℃〜80℃で5時間〜12時間であることがより好ましい。例えば、溶媒が水の場合、紫外線を照射して4℃〜10℃のもと重合する。また、溶媒がメタノールの場合、60℃程度で重合することが好ましい。
なお、より大きな膜厚のものを得るために、紫外線を照射する際は、アルゴン雰囲気下で行うことが好ましい。
架橋剤としては、刺激応答性高分子のゲルを調製する際に用いる架橋剤と同様の架橋剤、即ち、N,N´−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。中でも、N,N´−メチレンビスアクリルアミドを用いることが好ましい。
[バイオセンサ用測定チップ]
本発明に係るバイオセンサ用測定チップ(センサチップ)は、透明基板の表面に金属膜が配置されている表面プラズモン共鳴用として用いることが可能である。このセンサチップは、センサより照射された光を透過及び反射する部分と、測定対象である生理活性物質を固定する部分と、を含む。この測定チップはセンサ本体に固着されるものであってもよく、また着脱可能なものであってもよい。
センサチップに用いられる基板としては、透明で金属膜を固定化することが可能であれば、特に限定されるものではない。一般的にはガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等のレーザー光に対して透明な材料からなるものが使用できる。このような基板は、好ましくは、偏光に対して異方性を示さずかつ加工性の優れた材料が望ましい。基板の厚さは特には限定されないが、通常0.1mm〜20mm程度であることが好ましい。
金属膜としては、例えば、表面プラズモン共鳴を生じさせるようなものであれば、特に限定されるものではない。この金属膜に使用することのできる金属としては、金、銀、銅、アルミニウム、白金等が挙げられる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。また、上記基板への付着性を考慮して、基板と金、銀等からなる層との間にクロム等からなる介在層を設けてもよい。
金属膜の膜厚は特に限定されるものではないが、例えば、100オングストローム〜2000オングストロームであるのが好ましく、特に200オングストローム〜600オングストロームであるのが好ましい。2000オングストロームを越えると、媒質の表面プラズモン現象を十分検出することが困難となり、感度が低下してしまうおそれがある。また、クロム等からなる介在層を設ける場合、その介在層の厚さは、5〜50オングストロームであるのが好ましい。
金属膜の形成は公知の方法を用いて行うことが可能である。例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、電気めっき法、無電解めっき法等によって行うことができる。
また、金属膜と高分子化合物の密着性を向上させるために、金属膜に予め開始剤を結合させていてもよい。開始剤としては、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライドが挙げられる。開始剤の結合は、開始剤を溶解させた溶液に浸漬させることにより行われる。
基板上に金属膜を形成した後、本発明に係る高分子化合物を塗布して、結合処理を行う。結合処理としては、熱や光による処理が挙げられる。中でも、紫外線を照射して重合させる処理であることが好ましい。なお、この結合処理は、上述したように、刺激応答性高分子を金属膜上に塗布した後に、スペーサー分子が付加された生体物質認識分子を結合させる反応と同時に行ってもよい。
結合処理により形成された高分子化合物膜の膜厚は、1nm〜100nm以下であることが好ましく、10nm〜70nmであることがより好ましい。膜厚が1nm未満である場合には、本発明の効果が得られにくくなる傾向にあり、また膜厚が100nmを越える場合にはシグナルの強度が低下する傾向にある。
[バイオセンサ]
本発明に係るバイオセンサは、上記センサチップに固定されている生体物質認識分子と相互作用を示す生理活性物質を検出・測定するものである。測定・検出方法は、非電気化学的方法により行われることが好ましく、特に表面プラズモン共鳴によるものであることが好ましい。以下、表面プラズモン共鳴を用いたバイオセンサについて説明する。
表面プラズモン共鳴を用いたバイオセンサとしては、Kretschmann配置と称される系を用いるものが好ましく用いられる。この系を用いるバイオセンサは、プリズム状に形成された誘電体層と、上記センサチップと、光を発生させる光源と、上記光を誘電体層と金属膜との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光の強度を測定して表面プラズモン共鳴の状態を検出する光検出手段と、を備える。
そして、上記センサチップの金属膜は、プリズムと平行に対向して接触するように配置される。
光源としては、例えばレーザー光が挙げられる。また、光検出手段としては、ダイオードアレイ等が挙げられる。
また、このバイオセンサの使用可能な温度としては、2℃〜40℃であることが好ましく、4℃〜40℃であることが更に好ましい。
上記のバイオセンサを用いた試料の測定は、通常行われている手順に従って行われる。
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこの実施例の記載に何等限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例では、高分子化合物として、ラクトース末端を持つポリエチレングリコール(下記構造式参照)をグラフトさせたポリイソプロピルアクリルアミドを用いた。
Figure 2008064465
〔高分子化合物形成用の反応溶液の製造〕
刺激応答性高分子として、ポリN−イソプロピルアクリルアミド(以下、NIPAmとする)を用いるため、そのモノマーであるN−イソプロピルアクリルアミドを用いた。
<スペーサー分子が付加された生体物質認識分子の合成>
スペーサー分子として、ポリエチレングリコールを、生体物質認識分子として、ラクトースを用いた。生体物質認識分子の合成スキームは、以下の通りである。
Figure 2008064465
まず、片末端にメタクリロイル基、もう片末端にラクトース基を有するヘテロ二官能性ポリエチレングリコールを合成する。
テトラヒドロフラン30mlに、3,3−ジエトキシ−1−プロパノール0.158ml(1mmol)、カリウムナフタレン2.9ml(1mmol、0.3416mol/l)を入れ、アルゴン雰囲気の元攪拌しながら10分間メタル化を行い、3,3−ジエトキシ−1−プロパンオキサイドを生成させた。次いで、エチレンオキサイド5.8ml(108mmol)を冷却したシリンジで加えた。次いで、2日間室温で重合を行った後に無水メタクリル酸0.745ml(10mmol)を加え、24時間攪拌しながら、反応を停止させた。重合後はジエチルエーテル中で再沈させ、吸引ろ過により、ポリマーを回収した。その後、クロロホルムに溶解させ、クロロホルム抽出を行い、その溶液をエバポレーションにより濃縮した後、ベンゼン凍結乾燥を行い、片末端にアセタール基、もう片末端にメタクリロイル基を有するヘテロ二官能性ポリエチレングリコール(Ace−PEGMA)を合成した。
上記の方法で合成したAce−PEGMA1.5gを、酢酸30mlと水3mlの混合溶媒に溶解させ、30℃のウォーターバス中で5時間攪拌しながら反応を行った。その後、すばやく反応溶液をクロロホルム抽出し、エーテル中に再沈させた。ポリマーは吸引ろ過により回収し、ベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行うことにより、Ace−PEGMAの脱保護を行い、Aldehyde−PEGMAを得た。
上記の方法で得られたAldehyde−PEGMAの濃度が20mg/ml、p−アミノフェニル−β−D−ラクトピラノシドがポリマーに対して5倍mol量となるように仕込み、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)をポリマーに対して10倍mol量加え、50mMのリン酸緩衝溶液(pH7.0,I=0.15)中で1日間反応させた。このあと、蒸留水に対して透析(MWCO 1000)を3日間行い、蒸留水に置換することで精製とし、凍結乾燥によりポリマー(Lac−PEGMA)を回収した。得られたポリマーはH−NMR測定により同定を行った。
N−イソプロピルアクリルアミド150mgに、Lac−PEGMA21.9mgと、架橋剤としてN,N´−メチレンビスアクリルアミド0.1μL(0.1Mの溶液にして)を水1mLに溶解させ、高分子化合物の前駆体である反応溶液を得た。
[バイオセンサ用測定チップの製造]
まず、市販の金基板をピラニア溶液で洗浄し、超純水ですすいだ後に、1mMの11−メルカプトウンデカン酸エタノール溶液に4℃で一晩浸漬させ金表面に固定化した。0.25M N−ヒドロキシスクシンイミド水溶液と3.75Mの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド水溶液(EDC水溶液)の1:1混合溶液に30分間浸漬させることで11−メルカプトウンデカン酸のカルボキシル基を活性エステルにする。
その後、水でしっかりとすすぎ、200mMの2,2−アゾビス(2−アミドジノプロパン)ジヒドロクロライド(開始剤)水溶液に2時間浸漬させ、カップリング反応させることで開始剤を金表面に固定化した。この反応を図1(A)に示す。
水ですすいだ基板を、上記反応液に浸漬させ、4℃下で紫外線(1mW/cm)照射によって、3時間重合させた。さらに、膜厚を厚くするために、60℃で12時間反応させた。
その後、4℃で超純水中に保管した。この反応を図1(B)に示す。この一連の工程により、基板上に形成された高分子化合物の構造は、図1(C)に示される通りである。図1(C)中、格子状に形成されている部分は、ポリイソプロピルアクリルアミドであり、拡大されている部分は、スペーサー分子を付加させた生体物質認識分子である。
[比較例1]
刺激応答性高分子を形成するためのモノマーとして、実施例1に記載のN−イソプロピルアクリルアミド150mgを用いた。さらに、架橋剤のN,N´−メチレンビスアクリルアミド0.1μL(0.1Mの溶液にして)を水1mLに溶解させ、高分子化合物の前駆体である反応溶液を得た。
この反応溶液を実施例1と同様の方法で基板に塗布してバイオセンサ用測定チップを製造した。
[比較例2]
基板に金属膜を形成しただけのものをバイオセンサ用測定チップとした。
[特異的吸着量の評価]
上記の方法で調製したセンサチップを用い、表面プラズモン共鳴測定を行った。今回はラクトースとリシン凝集素(以下、RCA120とする)の特異的認識能の検討を行った。
図2は、実施例1及び比較例1,2の認識能の測定結果を示した図である。これより、実施例1のセンサチップが比較例1,2のセンサチップに比べ、RCA120の認識能が高いことが示された。これより、高分子化合物中のラクトースがRCA120を認識していることが確認できた。また、比較例2の方が、比較例1より吸着量が多いのは、金とRCA120との静電的相互作用が大きいためであると考えられる。そのため、比較例1ではその静電的相互作用がNIPAmによって阻害されたために、比較例2よりも吸着量が少なかったと考えられる。
図3は、実施例1において、RCA120100μg/ml溶液に対する、高分子化合物の濃度依存性を検討した結果を示す。この結果から本発明に係る高分子化合物の濃度の減少に従い、吸着量が減少していることが確認できた。
図4は、実施例1において、阻害剤であるガラクトースが存在するとき(図中(a)参照)としないとき(図中(b)参照)とでのRCA120100μg/ml溶液に対する実施例1のセンサチップのSPRセンサグラムを示した図である。
この結果から、阻害剤であるガラクトースの存在下では、RCA120の吸着量が減ることがわかった。しかしながら、大過剰のガラクトースの存在下にも係わらず、RCA120が吸着した理由としては次のような理由が考えられる。本発明に係る高分子化合物中に存在する11−メルカプトウンデカン酸のカルボキシル基はブロッキングされていないため、その静電気的な力によってRCA120が吸着してしまったと考えられる。
図5は、実施例1において、牛血清アルブミン(BSA)1mg/mlをフローしたときのSPRセンサグラムを示した図である(図中(b)参照)。図中(a)は、牛血清アルブミンをフローしていないときのSPRセンサグラムを示している。この結果から特異的に結合しないBSAは、ほとんど吸着されないことが確認できた。
図2〜5より、本発明に係る高分子化合物のラクトース部位が特異的にRCA120を認識し、非特異的な吸着を抑制していることが示唆された。
また、実施例1において、所定の濃度でRCA120とBSAをフローさせたときの温度とSPR角度変化を図6に示す。この結果から、40℃においてRCA120100μg/ml溶液をフローしたときの吸着量が低下していることがわかる。これはNIPAmゲルが相転移したことによって、ゲルが収縮し、その疎水場の中にPEGが埋もれてしまい、ラクトース基による認識能が発揮されなかったためだと考えられる。それに対し、RCA12010μg/ml溶液をフローしたときは吸着量が低下していない。このことから、すべてのPEGがNIPAmの疎水場に埋もれているわけではなく、部分的に埋もれているため、濃度の低い場合では他の温度と同様の認識能を示すためだと考えられる。これは非特異的なBSAの吸着を抑えていることからもわかる。
なお、図中の符号の説明は以下の通りである。
▽:RCA120濃度100μg/ml
△:RCA120濃度10μg/ml
○:RCA120濃度1μg/ml
□:BSA濃度1000μg/ml
本発明に係る高分子化合物を基板に固定する工程を示した図である。 実施例1及び比較例1,2の認識能の測定結果を示した図である。 実施例1において、RCA120100μg/ml溶液に対する、高分子化合物の濃度依存性を検討した結果を示した図である。 実施例1において、ガラクトースが存在するときとしないときとでの実施例1のセンサチップのSPRセンサグラムを示した図である。 実施例1において、牛血清アルブミン(BSA)1mg/mlをフローしたときのSPRセンサグラムを示した図である。 実施例1において温度とSPR角度変化を示した図である。

Claims (8)

  1. 表面プラズモン共鳴分析に使用されるバイオセンサの表面を構成するバイオセンサ用表面であって、
    刺激応答性高分子にスペーサー分子を介して生体物質認識分子が結合されてなる高分子化合物を含み、
    前記刺激応答性高分子はアナライトと結合することによって相転移を生じるものであり、
    前記生体物質認識分子はアナライトと結合させるためのものであるバイオセンサ用表面。
  2. 前記刺激応答性高分子は、温度応答性高分子である請求項1に記載のバイオセンサ用表面。
  3. 前記温度応答性高分子は、ポリN−イソプロピルアクリルアミドである請求項2に記載のバイオセンサ用表面。
  4. 前記スペーサー分子は、ポリアルキレングリコール及び/又はポリアルキレングリコール誘導体である請求項1から3いずれかに記載のバイオセンサ用表面。
  5. 前記生体物質認識分子は、低分子有機化合物、酵素、微生物、核酸、非免疫蛋白質、免疫グロブリン結合性蛋白質、糖結合性蛋白質、糖を認識する糖鎖、脂肪酸若しくは脂肪酸エステル、或いはリガンド結合能を有するポリペプチド若しくはオリゴペプチドからなる群から選ばれるいずれか1種である請求項1から4いずれかに記載のバイオセンサ用表面。
  6. 請求項1から5いずれかに記載のバイオセンサ用表面を有するバイオセンサ用測定チップ。
  7. 請求項6に記載のバイオセンサ用測定チップを備えるバイオセンサ。
  8. 請求項1から5いずれかに記載のバイオセンサ用表面を用いることにより、表面プラズモン共鳴分析に使用されるバイオセンサのシグナルを増強させる方法。
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