JP2008062594A - 生地及び該生地を用いた製品 - Google Patents
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Abstract
【課題】
例えば持ち歩きに供しても何ら不快感も与えない災害時の避難用の袋とすることが出来る難燃性と防水性、さらには熱線遮断性と保温性をも兼ね備えた生地、及びその生地を用いた避難袋などの製品を提供する。
【解決手段】
基材となるプラスチックフィルムの表面に金属を蒸着して金属蒸着層を積層してなる金属蒸着フィルムと、難燃性布帛と、よりなる生地であって、前記金属蒸着フィルムと前記布帛とが接着剤によって貼着されてなり、前記接着剤が難燃剤を含有してなり、前記難燃性布帛が難燃性糸を織編してなるもの、又は難燃性糸含む数種類の糸を織編してなるものであり、前記プラスチックフィルムが難燃性プラスチックフィルムである、という構成を有している生地とした。
【選択図】 なし
例えば持ち歩きに供しても何ら不快感も与えない災害時の避難用の袋とすることが出来る難燃性と防水性、さらには熱線遮断性と保温性をも兼ね備えた生地、及びその生地を用いた避難袋などの製品を提供する。
【解決手段】
基材となるプラスチックフィルムの表面に金属を蒸着して金属蒸着層を積層してなる金属蒸着フィルムと、難燃性布帛と、よりなる生地であって、前記金属蒸着フィルムと前記布帛とが接着剤によって貼着されてなり、前記接着剤が難燃剤を含有してなり、前記難燃性布帛が難燃性糸を織編してなるもの、又は難燃性糸含む数種類の糸を織編してなるものであり、前記プラスチックフィルムが難燃性プラスチックフィルムである、という構成を有している生地とした。
【選択図】 なし
Description
本発明は生地に関する発明であって、具体的には従来のものに比して柔軟で軽量であり、かつ難燃性と防水性、熱線遮断性、さらには保温性を兼ね備えた生地及びその生地を用いて得られる防災用品等の製品に関する。
昨今、自然災害の猛威が周知なものとなるのにつれて、災害時への備えとして種々の防災用品に広く関心が向けられている。そのための物資は種々あるが、必需品とも言うべきは個人一人分が生活する上で2日若しくは3日分必要な食料やその他災害時において最低限必要な物資をまとめた避難袋と呼ばれる非常持ち出し袋である。尚、一般的には避難袋と表現した場合その内包物まで含むことが多いが、以下の説明では純粋な生地を縫製して得られる「袋」そのものの話であることを断っておく。
この避難袋は、通常は難燃性を備えたものであることが求められる。これは、実際の災害において特に火による被害が多く、また避難袋そのものが焼失してしまうことで肝心の防災用具が失われてしまうことを防ぐためである。よってこの観点から従来の避難袋は難燃性であることに主眼が置かれていたのである。
そして難燃性の避難袋とするために、その布地も当然難燃性であることが求められており、又は難燃性の布地を縫製するためには当然難燃性の繊維を利用している。例えば吸液性の繊維素材である天然繊維素材や化学繊維素材に対して、ハロゲン系化合物、リン酸系化合物、無機系化合物等の難燃剤を含浸させ、それを乾燥させる難燃化処理を施す、又は布帛等を先に織りあげてしまい、しかる後に同様の難燃化処理を施す、等が行われている。
しかし、このような従来の難燃性確保に重点を置いた避難袋であると、昨今の自然災害時において種々の問題が生じることが明らかになってきた。即ち、火や炎に対しては避難袋が難燃性であることは有効であるが、例えば大雨や台風、大雪に際してはむしろ湿気が避難袋内に侵入することが多発し、その内包物の多くが痛んでしまい、場合によっては本当に必要な時に役に立たなかったりすることが発生していた。
例えば地震が発生した時、持ち出そうとした避難袋が難燃性であるならば、それは二次災害の火災から内包物を守るのには大変有益であるが、火災の消火時の大量の放水を浴びることにより避難袋が大量の水にさらされてしまい、火災から逃げることが出来ても肝心の避難袋が役に立たない、ということがおこってしまう。また大雨の時に避難袋を持って避難をする際に、避難袋が大雨や豪雨にさらされてしまい、避難所についた時には内包物が殆ど水浸し同然の状態となって何も使えなくなる、ということがおこってしまっていた。
そこで、避難袋に用いる布地に対して、単に難燃性であるだけではなく、防水性も備えた布地やシートが求められるようになってきた。この難燃性に加え防水性も備えた素材としては、例えば以下のようなものが種々提案されている。
例えば特許文献1に記載のものは、難燃性ポリエステル繊維よりなる布帛表面に、有機フッ素化ポリマー系撥水剤が付与され、裏面に熱溶融性ポリウレタン樹脂とハロゲン化ウレタン化合物の混合樹脂がコーティングされた構成となっている。また特許文献2に記載のものは、難燃性ポリエステル繊維よりなる布帛裏面に、熱溶融性ポリウレタン樹脂と特定のホスフェート化合物とが混合された処理剤がコーティングされた構成となっている。さらに特許文献3に記載のものは、アクリル系繊維性基布の表面に、透明ポリエステル系熱可塑性樹脂と、これと混合して透明混合体を形成することが出来る難燃剤を含む透明防水性難燃性樹脂被服層を形成した構成となっている。
この特許文献1に記載の防炎防水性帆布であれば防炎性と防水性とを兼ね備えた帆布とすることが可能かもしれず、また帆布を縫製して避難袋とすることも可能かもしれないが、この帆布は、難燃性繊維で織りあげた布帛の表面に有機フッ素化ポリマー系撥水剤が付与される、という構成であることからもわかるように、付与された撥水剤が摩耗等により、また折り曲げられた箇所で擦り切れて剥落してしまうと、その箇所ではもはや防水性を発揮することはなく、即ちその箇所から水分の侵入を許してしまうことになる。そしてこの帆布を避難袋としたならば、袋の表面は頻繁に外部と擦れたり、また表面にしわが常時不規則に発生することで、防水性を寄与すべき撥水剤は容易に剥落してしまう。故にこの帆布を前述した効果の得られる避難袋の原材料として用いることは出来ない。
特許文献2に記載の難燃防水性カバーであれば難燃性と防水性とを兼ね備えたカバーとすることが可能かもしれないが、このカバーの原材料となる布帛は、難燃性ポリエステル繊維よりなる布帛の裏面に防水性を有する処理剤をコーティングした構成であり、カバーとして使用を続けると何度も擦れたりすることで処理剤が摩耗し、やがては消滅してしまい、その結果防水性が維持出来なくなってしまい、問題である。また材料となる布帛は繊維を織りあげたものであるため、厳密には繊維同士の間に隙間が生じているので、処理剤をコーティングしてもその隙間から浸水する可能性は充分にあり、また上述のように摩耗により処理剤が存在しなくなると、織りあげた繊維の隙間からより一層浸水しやすくなってしまい、ひいては防水性の維持が不可能となってしまっていた。そして仮に耐久性を向上させるためにコーティング層の厚みを増加させるならば、全体の重量が増してしまい、実用的なものとすることが出来ない。故にこの布帛を前述した効果の得られる避難袋の原材料として用いることは出来ない。
特許文献3に記載の難燃性防水シートであれば、やはり防水性と難燃性とを兼ね備えたものとすることが可能かもしれないが、このシートの原材料は基布であり、その表面に防水性難燃性樹脂被覆層を形成してなる構成であり、即ち上述同様にシートを繰返し使用することによって基布が何度も曲げられたりすることでこのシートに形成された樹脂層が摩耗等によって剥離、脱落してしまい、その結果上記同様に防水性を維持出来なくなる可能性が高く、問題となる可能性が充分にある。故にこの基布を前述した効果の得られる避難袋の原材料として用いることは出来ない。
またそもそも引用文献2及び3に係る発明は実質シート生地に関するものであるため、これを織りあげて避難袋とすることは、シートの持つ柔軟性や風合等の観点から大変困難であり、また仮に実際に製作してみても避難袋として持ち歩くには重たく、ごわつき感、違和感が非常に大きく、先述した目的に応じた目的に供することが出来ない。
そこで本発明はこのような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、例えば持ち歩きに供しても何ら不快感も与えない災害時の避難用の袋とすることが出来る難燃性と防水性、さらには熱線遮断性と保温性をも兼ね備えた生地、及びその生地を用いた避難袋などの製品を提供することである。
上記課題を解決するため、本願発明の請求項1に記載の発明は、基材となるプラスチックフィルムの表面に金属を蒸着して金属蒸着層を積層してなる金属蒸着フィルムと、難燃性布帛と、よりなる生地であって、前記金属蒸着フィルムと前記布帛とが接着剤によって貼着されてなり、前記接着剤が難燃剤を含有してなり、前記難燃性布帛が難燃性糸を織編してなるもの、又は難燃性糸含む数種類の糸を織編してなるものであり、前記プラスチックフィルムが難燃性プラスチックフィルムであること、を特徴とする。
本願発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の生地であって、前記金属が、アルミニウム、銀、インジウム、チタン、クロム、錫、又はニッケルの何れか若しくは複数であること、を特徴とする。
本願発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の生地であって、前記金属蒸着フィルムは前記プラスチックフィルムの片面又は両面に金属蒸着層が積層されてなり、前記金属蒸着フィルムと前記難燃性布帛とが、前記金属蒸着層側と前記難燃性布帛とが接するように前記接着剤を介して貼着されてなること、を特徴とする。
本願発明の請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の生地であって、前記金属蒸着フィルムは前記プラスチックフィルムの片面又は両面に金属蒸着層が積層されてなり、1枚の前記金属蒸着フィルムの両側それぞれに、前記接着剤を介して前記難燃性布帛が貼着されてなること、を特徴とする。
本願発明の請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の生地であって、前記プラスチックフィルムが難燃ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、アラミドフィルム、フッ素樹脂フィルムであることを特徴とする。
本願発明の請求項6に記載の発明は、請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の生地であって、前記接着剤が含有する難燃剤がハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤、若しくは酸化アンチモン系難燃剤の何れか若しくは複数を原料としたものであること、を特徴とする。
本願発明の請求項7に記載の発明は、請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の生地であって、前記難燃性布帛に用いられる前記糸がポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、又は天然繊維の何れか若しくは複数によるものであること、を特徴とする。
本願発明の請求項8に記載の発明は、請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の生地であって、前記難燃性布帛が、糸原料の時点で難燃性がある難燃糸で織編された布帛若しくは織編された布地又は不織布に対し後処理で難燃処理を行い難燃性布帛としたものであること、を特徴とする。
本願発明の請求項9に記載の発明は、請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の布帛を縫製して得られる袋であること、を特徴とする。
本願発明の請求項10に記載の発明は、請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の布帛を縫製して得られる布製品であること、を特徴とする。
以上のように、本願発明に係る生地であれば、要すれば布帛にプラスチックフィルムを貼着した構成であるので、布帛だけであると生地を構成する繊維同士の間に隙間が生じるが、プラスチックフィルムが存在することでこの隙間がふさがれるため、防水性機能を発揮することが出来るし、隙間がふさがれることより外気の透過を遮断することが出来ることより保温性も発揮することが出来るようになる。さらに布帛を難燃性とすれば、本願発明に係る生地であれば難燃性と防水性とを同時に発揮することが出来るようになる。またプラスチックフィルムに金属を蒸着することで、熱線遮断性と保温性をさらに備えた生地とすることが出来る。
さらに本願発明に係る生地に貼着するプラスチックフィルムそのものが難燃性であれば、より一層難燃性機能が高いものとなる。そしてプラスチックフィルム自体も柔軟なものであれば、得られる生地のしなやかさも損なわれることがない。
また2枚の布帛でプラスチックフィルムを挟み込むような構成とすれば、得られる生地の表面にプラスチックフィルムが露出することがなくなり、即ち生地の持つ触感はそのまま生かすことが出来るようになる。
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
本願発明に係る生地について、第1の実施の形態として説明する。
本実施の形態に係る生地は、基材となるプラスチックフィルムの表面に金属を蒸着して金属蒸着層を積層してなる金属蒸着フィルムと、難燃性布帛と、よりなる生地であって、前記金属蒸着フィルムと前記布帛とが接着剤によって貼着されてなり、前記接着剤が難燃剤を含有してなり、前記難燃性布帛が難燃性糸を織編してなるもの、又は難燃性糸含む数種類の糸を織編してなるものであり、前記プラスチックフィルムが難燃性プラスチックフィルムである、という構成を有している。以下、順次説明をする。
本願発明に係る生地について、第1の実施の形態として説明する。
本実施の形態に係る生地は、基材となるプラスチックフィルムの表面に金属を蒸着して金属蒸着層を積層してなる金属蒸着フィルムと、難燃性布帛と、よりなる生地であって、前記金属蒸着フィルムと前記布帛とが接着剤によって貼着されてなり、前記接着剤が難燃剤を含有してなり、前記難燃性布帛が難燃性糸を織編してなるもの、又は難燃性糸含む数種類の糸を織編してなるものであり、前記プラスチックフィルムが難燃性プラスチックフィルムである、という構成を有している。以下、順次説明をする。
まず難燃性布帛につき説明する。
本実施の形態における生地には難燃性が求められており、そのため布帛も難燃性であることが必要であるが、布帛を難燃性とするためにはこの布帛を織編するために用いる糸を全て難燃性の糸にする、又は複数種類の糸を用いる中に難燃性の糸を用いる、といったことが考えられる。この場合、全てを難燃性の糸とすれば布帛全体は難燃性になるが、従来難燃性の糸は触感が固い又ははごわつくものが多いので、布帛を織編する際に普通の糸と難燃性の糸とを混合して用いれば、触感、柔らかさ、といった点でより好ましいものとすることが考えられる。尚、この際、普通の糸と難燃性の糸とを用いるその割合については特段制限するものではなく、充分な難燃性が確保出来る程度に難燃性の糸を用いればよい。難燃性の糸を一部使用する形態としても構わないのは、布帛が完全に燃えないものとすることが好ましいのは当然であるが、そうでなくとも、燃え始めた時であっても急激に燃え広がらないこと、燃え始めたことに気づいてもそれを消すのに充分な時間が確保出来る程に燃え広がる速度が遅ければ充分に実用に供することが可能だからである。
本実施の形態における生地には難燃性が求められており、そのため布帛も難燃性であることが必要であるが、布帛を難燃性とするためにはこの布帛を織編するために用いる糸を全て難燃性の糸にする、又は複数種類の糸を用いる中に難燃性の糸を用いる、といったことが考えられる。この場合、全てを難燃性の糸とすれば布帛全体は難燃性になるが、従来難燃性の糸は触感が固い又ははごわつくものが多いので、布帛を織編する際に普通の糸と難燃性の糸とを混合して用いれば、触感、柔らかさ、といった点でより好ましいものとすることが考えられる。尚、この際、普通の糸と難燃性の糸とを用いるその割合については特段制限するものではなく、充分な難燃性が確保出来る程度に難燃性の糸を用いればよい。難燃性の糸を一部使用する形態としても構わないのは、布帛が完全に燃えないものとすることが好ましいのは当然であるが、そうでなくとも、燃え始めた時であっても急激に燃え広がらないこと、燃え始めたことに気づいてもそれを消すのに充分な時間が確保出来る程に燃え広がる速度が遅ければ充分に実用に供することが可能だからである。
ここで示した難燃性の糸とは、従来公知のものであって構わないが、例えばアラミド繊維、難燃アクリル繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、又は難燃ポリエステル繊維であると好適であり、本実施の形態では難燃ポリエステル繊維を用いて織編してなる布帛を用いることとする。
また普通のポリエステル繊維で布帛にした場合には難燃性を付与するために、難燃性の塗液を塗布することにより難燃化することも出来る。難燃性の塗液としては、公知のものを用いればよいが、例えばハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、又は窒素系難燃剤を原材料とした塗液を用意し、これを用いることが考えられる。そしてこの塗液を用いる場合、布帛を織編するのに用いる繊維を先にこの塗液で難燃処理し、その後織編することも考えられるし、先に布帛を織編し、得られた布帛をこの塗液で難燃処理させることにより難燃化することも出来る。
さらに後述する理由により、この布帛を不織布とすることも考えられる。この場合、不織布の原材料に難燃性のものを用いてもよいし、通常の不織布に対して前述同様に難燃性塗液をコーティングすることも考えられるが、ここではこれ以上の詳述を省略する。
次に金属蒸着フィルムにつき説明する。
この金属蒸着フィルムは、従来公知の金属蒸着フィルムの基材として用いられるプラスチックフィルムの表面に、やはり従来公知の蒸着手法によって金属が蒸着されてなるものである。
この金属蒸着フィルムは、従来公知の金属蒸着フィルムの基材として用いられるプラスチックフィルムの表面に、やはり従来公知の蒸着手法によって金属が蒸着されてなるものである。
まず用いられる基材としてのプラスチックフィルムであるが、これについては一般的に蒸着フィルムの基材として用いられているものであって、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム等であってもよいが、本実施の形態においては、係る生地には難燃性が備わっていることが必要であるので、このプラスチックフィルム自身も難燃性が備わっていることが望ましく、本実施の形態ではポリフェニレンサルファイド(以下「PPS」とも言う。)フィルムであるものとする。このPPSフィルムであれば難燃性を備えるだけではなく、厚みも薄いので柔軟性があるので、これを本実施の形態に係る生地に用いても、生地全体の柔軟性が損なわれることはないと言える。尚、PPSフィルム以外であっても、難燃性を備え、かつ柔軟性をも備えたプラスチックフィルムであれば、本発明に用いることは可能であることを断っておく。
さて、この難燃性のプラスチックフィルムの表面に金属を蒸着することで金属蒸着フィルムが得られるのであるが、その際に用いられる金属としては、例えばアルミニウム、銀、インジウム、チタン、クロム、錫、又はニッケルの何れか若しくは複数であること、が考えられ、本実施の形態においてはアルミニウムであることとするが、これに限定されるものではないことを断っておく。
このアルミニウムを蒸着するには、従来公知の真空蒸着法等の手法によって蒸着されればよいが、密着力を向上させるために、PPSフィルムの表面に予め何らかの処理を施してあっても構わない。即ち、コロナ処理やプラズマ処理を施し、その面に積層をすることで密着力を向上させる、ということが可能となる。又は、いわゆるアンダーコートと呼ばれる層を予めPPSフィルムの表面に対し塗布等の手法によって積層しておき、そのさらに表面にアルミニウムを蒸着させることも考えられる。
さらには、本実施の形態に係る金属蒸着フィルムでは、PPSフィルムの片面に対してアルミニウムを蒸着させ積層させることとするが、必ずしもこの構成に限定されず、例えばPPSフィルムの両面に金属を蒸着させてあっても構わないものとする。
尚、金属蒸着フィルムを構成する基材となるプラスチックフィルムの厚みは6μm以上25μm以下であること、また金属蒸着層の厚みは20nm以上80nm以下であることが好ましい。
これは、プラスチックフィルムの厚みが6μm以下であると、後述するような用い方をすれば容易に破損してしまうためであり、25μm以上とすると、やはり後述するような用い方をすれば、金属蒸着フィルム全体の厚みが増してしまい、その結果、本実施の形態により得られる生地の柔軟性が確保出来なくなるからである。同様に金属蒸着層の厚みを20nm以下とすると、金属蒸着層の機能が発揮されず、また厚みを80nm以上とすると、プラスチックフィルムとの密着力の低下やカール等の問題が生じ好ましくない。
このようにして難燃性布帛と金属蒸着フィルムとを準備したら、次にこれらを接着剤を介して貼着する。そこで次にこの接着剤について説明する。
この接着剤は、例えば、ウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂による公知なものであってもよいが、本実施の形態に係る生地を難燃性とするために、接着剤も難燃性を有したものであることが望ましい。そのために、接着剤自体が難燃性を有していてもよいし、前述の公知な接着剤に難燃剤を含有することも考えられる。この場合用いられる難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、鱗茎難燃剤、窒素系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤、若しくは酸化アンチモン系難燃剤、等が考えられ、本実施の形態ではウレタン系樹脂にハロゲン系難燃剤を含有した接着剤を用いることとする。
この接着剤を用いて、前述した難燃性布帛と金属蒸着フィルムとを貼着するのであるが、その貼着方法としては、金属蒸着フィルムを挟み込むようにして、その両側に難燃性布帛を貼着すること、又は難燃性布帛側に金属蒸着フィルムの金属蒸着層が位置するようにこれらを貼着すること、が考えられるが、本実施の形態では前述した構成で貼着してなるものとする。
難燃性布帛/金属蒸着フィルム/難燃性布帛、という構成とすれば、得られる生地に表裏がなくなるため、これを用いて何らかの製品を縫製する場合でも生地の表裏をいちいち確認する必要もなく、また得られる生地の表面はどちら側も布帛が位置するため、この生地の触感は表裏ともに同様なものとすることが出来る。また難燃性布帛/金属蒸着フィルム、という構成とした場合は、製造コストの抑制が可能であり、また貼着工程も1回で済むので簡潔に生地が得られることとなる。尚、この場合においては、金属蒸着フィルムにおける金属蒸着面は片面であること、また貼着にさいしては難燃性布帛側に金属蒸着層が位置するようにこれらを貼着すること、が好ましい。これは、金属蒸着面が表面側に位置すると、得られた生地が何かと接触する度に金属蒸着面が傷つき、ひいては金属蒸着層が脱落することにより、金属蒸着層を設けることにより得られる効果が消失してしまうからである。
またここで用いる金属蒸着フィルムの金属蒸着層は、基材となるPPSフィルムの片面にのみ積層されていればそれで充分な効果を発揮するので本実施の形態では片面にのみ積層されたものを用いることとするが、当然これは両面に積層されたものであっても構わない。
このようにして得られた生地は、布帛が難燃性を有し、また金属蒸着フィルムも基材となるプラスチックフィルムが難燃性のものであり、さらには接着剤も難燃剤を含有してなるので、全体としても充分な難燃性を有したものとなる。また金属蒸着フィルムを貼着していることにより、通常糸を織編して得られる布帛であれば必ず存在する糸同士の間に生じる空間をフィルムがふさぐこととなるので、例えばこの生地に水がかかっても、その水は金属蒸着フィルムの基材であるプラスチックフィルムが防ぐ形となり、反対側へと浸透することはなく、つまり防水性を有した生地とすることが出来る。また前述したように布帛を不織布とすれば、より一層確実な防水性を得ることが可能となる。
このようにして得られた生地は、布帛が難燃性を有し、また金属蒸着フィルムも基材となるプラスチックフィルムが難燃性のものであり、さらには接着剤も難燃剤を含有してなるので、全体としても充分な難燃性を有したものとなる。また金属蒸着フィルムを貼着していることにより、通常糸を織編して得られる布帛であれば必ず存在する糸同士の間に生じる空間をフィルムがふさぐこととなるので、例えばこの生地に水がかかっても、その水は金属蒸着フィルムの基材であるプラスチックフィルムが防ぐ形となり、反対側へと浸透することはなく、つまり防水性を有した生地とすることが出来る。また前述したように布帛を不織布とすれば、より一層確実な防水性を得ることが可能となる。
さらには金属蒸着フィルムが存在することにより、その蒸着された金属による効果をも得られるようになる。例えばアルミニウムを蒸着したものであれば一定の熱量を保持することが可能であり、また銀を蒸着したものであれば抗菌性を発揮することも考えられる。さらにクロムやチタンを蒸着したものであれば耐食性に優れかつ保温性や熱線遮断性を備えた生地とすることが出来る。そして錫を蒸着したものであれば絶縁性を付与することが出来るので電子部品等のような絶縁性が必要な物質の保管に役立ち、ニッケルを蒸着したものであれば磁気シールド性を付与出来るので写真フィルム等のような磁気を嫌う物品の保管に役立ち、またインジウムを蒸着したものであれば電磁波のみを透過出来る性質を付与出来るので内容物を視認させたくないものの電磁波による内容物検査の際には内容物を開示せずに確認出来る状況に対応することが可能となる。
そしてこのようにして得られた生地によって袋を縫製すれば、その袋は災害時の避難袋として大変有用なものとすることが出来る。つまり、袋自体は難燃性を有するので、火災による災害避難時であっても袋が焼失することがなく、また防水性を有しているので、雨や雪にさらされても内容物が水浸しになることがなく、さらには保温性を有するので、内容物が冷気や暖気によって痛むことをある程度遅らせることが出来るようになる。そして布帛を用いているので、持ち歩きに供しても何ら不快感も与えない災害時の避難用の袋とすることが出来る。
また本実施の形態に係る生地を、例えば被服類などの布製品に用いれば、得られる製品は同様の性質を備えたものと出来るので、例えば防災ずきんとすれば避難時でも火の粉や雨などから頭部を守ることが出来るようになる。
さらに、付与される性質が電磁波透過性であったり、磁気シールド性であるならば、そのような性質を付与された生地で収納袋とすると、これを空港などでの持ち物検査機に通した場合、電磁波透過性が付与された場合は内容物が視認出来ないものの検査機で内容物が確認出来るので、いちいち内容物を開示する必要がなくなること、また磁気シールド性であれば、例えば写真フィルムを入れておけば不用意に感光してしまうことがなくなること、といった利点を有する旅行用品等の収納袋を得ることが出来るようになる。
このように、本実施の形態に係る生地を用いた布製品であれば、難燃性、防水性、保温性、熱線遮断性等の種々の性質を備えてなることより、例えば防災用品や、その他例えば旅行用品として利用出来る収納袋として、等のように種々利用することが可能となるのである。
以下、本発明に係る生地につき、さらに実施例により説明する。
(実施例1)
まず糸の太さが10番手である難燃性ポリエステル糸(帝人株式会社製:商品名「スーパーエクスター」)を使い平織りした生地を得た。次いで、厚さが16μmのポリフェニレンサルファイドフィルム(東レ株式会社製:製品名「トレリナ」)の片面に厚さが60nmとなるようにアルミニウムを真空蒸着して、アルミニウム蒸着フィルムを得た。そしてこのアルミニウム蒸着フィルムのアルミニウム蒸着面側に、ポリエステル系接着剤(東洋モートン株式会社製:商品名「アドコート」)をドライ厚みが2μmとなるように塗布し、これに平織り生地を貼り合わせて、布帛を得た。
まず糸の太さが10番手である難燃性ポリエステル糸(帝人株式会社製:商品名「スーパーエクスター」)を使い平織りした生地を得た。次いで、厚さが16μmのポリフェニレンサルファイドフィルム(東レ株式会社製:製品名「トレリナ」)の片面に厚さが60nmとなるようにアルミニウムを真空蒸着して、アルミニウム蒸着フィルムを得た。そしてこのアルミニウム蒸着フィルムのアルミニウム蒸着面側に、ポリエステル系接着剤(東洋モートン株式会社製:商品名「アドコート」)をドライ厚みが2μmとなるように塗布し、これに平織り生地を貼り合わせて、布帛を得た。
(実施例2)
実施例1において用いた金属蒸着フィルムの金属をアルミニウムから銀に代えて、布帛を得た。尚、銀の蒸着厚みは80nmとした。
実施例1において用いた金属蒸着フィルムの金属をアルミニウムから銀に代えて、布帛を得た。尚、銀の蒸着厚みは80nmとした。
(比較例1)
実施例1において用いた平織りした生地のみをもって布帛とした。
実施例1において用いた平織りした生地のみをもって布帛とした。
(比較例1)
実施例1において用いた難燃性布帛のみをもって生地とした。
実施例1において用いた難燃性布帛のみをもって生地とした。
これら、得られた実施例1〜2に係る生地、及び比較例1に係る生地に対し、消防法に基づく防災製品性能試験基準である45度メセナミン法及び45度コイル法を実施した。また防水性についても試験をした。防水性については、単純に水を生地にふりかけてみて、裏側に水がしみ出さないかどうかを調べた。その結果は以下の通りであった。
45度メセナミン法 45度コイル法 防水性
実施例1 合格 合格 良
実施例2 合格 合格 良
比較例1 合格 不合格 不良
実施例1 合格 合格 良
実施例2 合格 合格 良
比較例1 合格 不合格 不良
このように、本願発明に係る生地であれば防炎性と同時に防水性も確保されるのに対し、従来の金属蒸着フィルムを用いない単純な生地であれば防炎性の点ではよいものの、防水性の点では好ましいものではないことがわかった。
Claims (10)
- 基材となるプラスチックフィルムの表面に金属を蒸着して金属蒸着層を積層してなる金属蒸着フィルムと、難燃性布帛と、よりなる生地であって、
前記金属蒸着フィルムと前記布帛とが接着剤によって貼着されてなり、
前記接着剤が難燃剤を含有してなり、
前記難燃性布帛が難燃性糸を織編してなるもの、又は難燃性糸含む数種類の糸を織編してなるものであり、
前記プラスチックフィルムが難燃性プラスチックフィルムであること、
を特徴とする、生地。 - 請求項1に記載の生地であって、
前記金属が、アルミニウム、銀、インジウム、チタン、クロム、錫、又はニッケルの何れか若しくは複数であること、
を特徴とする、生地。 - 請求項1又は請求項2に記載の生地であって、
前記金属蒸着フィルムは前記プラスチックフィルムの片面又は両面に金属蒸着層が積層されてなり、
前記金属蒸着フィルムと前記難燃性布帛とが、前記金属蒸着層側と前記難燃性布帛とが接するように前記接着剤を介して貼着されてなること、
を特徴とする、生地。 - 請求項1又は請求項2に記載の生地であって、
前記金属蒸着フィルムは前記プラスチックフィルムの片面又は両面に金属蒸着層が積層されてなり、
1枚の前記金属蒸着フィルムの両側それぞれに、前記接着剤を介して前記難燃性布帛が貼着されてなること、
を特徴とする、生地。 - 請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の生地であって、
前記プラスチックフィルムが難燃ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、アラミドフィルム、フッ素樹脂フィルムであること、
を特徴とする、生地。 - 請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の生地であって、
前記接着剤が含有する難燃剤がハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤、若しくは酸化アンチモン系難燃剤の何れか若しくは複数を原料としたものであること、
を特徴とする、生地。 - 請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の生地であって、
前記難燃性布帛に用いられる前記糸がポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、又は天然繊維の何れか若しくは複数によるものであること、
を特徴とする、生地。 - 請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の生地であって、
前記難燃性布帛が、糸原料の時点で難燃性がある難燃糸で織編された布帛若しくは織編された布地又は不織布に対し後処理で難燃処理を行い難燃性布帛としたものであること、
を特徴とする、生地。 - 請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の布帛を縫製して得られること、
を特徴とする、袋。 - 請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の布帛を縫製して得られること、
を特徴とする、布製品。
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---|---|---|---|
JP2006245139A JP2008062594A (ja) | 2006-09-11 | 2006-09-11 | 生地及び該生地を用いた製品 |
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JP2006245139A JP2008062594A (ja) | 2006-09-11 | 2006-09-11 | 生地及び該生地を用いた製品 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015504379A (ja) * | 2011-11-17 | 2015-02-12 | シン,ヨン−スゥン | 不燃断熱シートとその製造装置及びその製造方法 |
DE102013214298B4 (de) | 2013-07-22 | 2022-08-25 | Robert Bosch Gmbh | Rückhaltevorrichtung für einen Aufsassen eines Fahrzeugs, Verfahren zum Verwenden einer derartigen Rückhaltevorrichtung, Bekleidungsstück für einen Aufsassen eines Fahrzeugs und Sicherheitssystem zum lösbaren Anbinden eines Aufsassen an ein Fahrzeug |
-
2006
- 2006-09-11 JP JP2006245139A patent/JP2008062594A/ja active Pending
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DE102013214298B4 (de) | 2013-07-22 | 2022-08-25 | Robert Bosch Gmbh | Rückhaltevorrichtung für einen Aufsassen eines Fahrzeugs, Verfahren zum Verwenden einer derartigen Rückhaltevorrichtung, Bekleidungsstück für einen Aufsassen eines Fahrzeugs und Sicherheitssystem zum lösbaren Anbinden eines Aufsassen an ein Fahrzeug |
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