JP2008056970A - 金属含有ダイヤモンドライクカーボンコーティング組成物 - Google Patents

金属含有ダイヤモンドライクカーボンコーティング組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】市販の金属ダイヤモンドライクカーボンコーティング組成物に比べて、優れた硬度、および純粋な転がり時の破損に対する耐性を有する金属ダイヤモンドライクカーボンコーティング組成物を提供すること。
【解決手段】基体10は、第1の層12と、その上に堆積されかつ約0.5〜10μmの厚さを有する第2の層14とから構成された金属ダイヤモンドライクカーボンコーティングを含む。第1の層12は、遷移金属から構成され、かつ第1の表面と、基体10と接触している第2の表面とを含む。第2の層14は、Cと、W、Nb、Tiおよびこれらの組合せから成る群より選択された遷移金属とから構成され、やはり、第1の表面と、第1の層12の第1の表面と接触している第2の表面とを含む。この組成物は、約−50〜−750Vの範囲の負のバイアス電位範囲にわたって、約10×10-153-1-1以下のアブレシブ摩耗率を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属ダイヤモンドライクカーボンコーティング組成物に関し、より詳細には、クロムなどの遷移金属、または遷移金属炭化物の中間層と、炭素とチタン、タングステン、またはニオブなどの遷移金属とでできた外層とを含む金属ダイヤモンドライクカーボンコーティング組成物、ならびにその製造方法に関する。
(関連出願の相互参照)
該当なし。
(連邦政府による資金提供を受けた研究)
米国政府は、本発明の払込済ライセンスを有し、限られた状況において、米国陸軍が授与したDAAH10−98−2−0004の条件に規定されている合理的な条件に基づいて他人にライセンスを付与するように、本特許の所有者に要求する権利を有する。
長年の間、ダイヤモンドライクカーボン(diamond−like carbon)(DLC)フィルムは、硬く、特に鋼鉄に対して低い摩擦係数(μ)を有することが知られている。これらの低いμ値(≒0.2)は、アモルファス水素化(a−C:HまたはDLCと略記される)フィルム、ならびに金属含有炭化水素(Me−C:HまたはMe−DLC)フィルムに認められてきた。今日、どちらのタイプのコーティングも、いくつかの応用例、中でも、機械要素や工具の分野での応用例が知られている。DLCコーティングならびにMe−DLCコーティングは、それらのコーティング特性に加えて、低い基体温度(<200℃)で堆積させ得ることが重要な一面である。
DLCとMe−DLCとの比較は、どちらの被覆材料、ならびに対応する堆積技術にも、利点および欠点があることを示している。高度に架橋結合された炭素原子のネットワークからなる硬質DLCコーティングは、高い圧縮応力(数GPa)を有する。前述の高い応力値のため、しばしば基体、特に鋼鉄との接着性が悪くなり、したがって、実際の応用ではその使用が制限されている。
DLCフィルムを調製する多くの方法が開発されてきている。最も一般に適用されている方法は、負に自己バイアスさせた基体を用いた、炭化水素ガスの無線周波数(radio frequency)(r.f.)グロー放電である。しかし、このr.f.技術を、産業的に適切な寸法および幾何形状にスケールアップするには、いくつかの問題がある。
一般に、低い金属含有量(Me/Cの原子比が約0.3まで)を有するMe−DLCフィルムは、a−C:Hよりも大幅に低い圧縮応力を有する(<1GPa)。かかるフィルムは、金属炭化物が組み込まれたアモルファス炭素(DLC)のネットワークからなる。かかるコーティングの摩擦係数は、DLCコーティングの摩擦係数とかなり類似している。しかし、Me−DLCコーティングの耐摩耗性は、一般に、DLCの耐摩耗性よりも低い。一時は、Me−DLCコーティングに関して報告された最も低いアブレシブ摩耗率でも、金属を含まないDLCコーティングに関して報告されたアブレシブ摩耗率より少なくとも2倍は高かった。
一般に、Me−C:H(Me−DLC)コーティングは、産業用バッチコータ(batch coater)内で、反応性マグネトロンスパッタリングによって、アルゴン炭化水素混合ガス内で金属または金属炭化物ターゲットを用いて調製される。これら2種類のコーティングを比較すると、DLCコーティングの電気抵抗率(>106Ωcm)は、Me−DLCの電気抵抗率(10-3〜1Ωcm)よりも遙かに高いことに留意されたい。
例えば、ボエボジン(Voevodin)らによる論文では、マグネトロンスパッタリングを用いたパルスレーザ堆積技術を使用して、炭化チタンや炭化タングステンを含むアモルファスダイヤモンドライクカーボンフィルムが調製された。別の論文では、ウェイ(Wei)らが、グラファイトおよびドーパント(Cu、Ti、Si)をアブレーション(ablate)可能とする、特殊なターゲット構成を有するパルスレーザ技術を使用している。これらの元素の数パーセントが、炭素マトリックスに組み込まれ、それによって、接着性が著しく向上した。しかし、前述の複合フィルムの特性を、ケイ.ベウィログア(K.Bewilogua)、シー.ブイ.クーパー(C.V.Cooper)、シー.シュペヒト(C.Specht)、ジェイ.シュレーダー(J.Schroder)、アール.ウィットルフ(R.Wittorf)、およびエム.グリシュケ(M.Grischke)による論文、題名「金属含有DLC(Me−DLC)コーティングの堆積および特性に対するターゲット材料の影響(Effect of target material on deposition and properties of metal−containing DLC(Me−DLC)coatings)」、表面・コーティング技術(Surface&Coatings Technology) 127,224〜232、エルゼビア(Elsevier)(2000年)(その全体を参照により本明細書に組み込む)で論じられているように、様々な調製技術を用いて調製された水素含有Me−DLCフィルムと比較することは、困難であると思われる。
したがって、市販の金属ダイヤモンドライクカーボンコーティング組成物に比べて、優れた硬度、および純粋な転がり(rolling)時の破損に対する耐性を有する金属ダイヤモンドライクカーボンコーティング組成物が求められている。
本発明によれば、第1の遷移金属組成物を有し、かつ、第1の表面と、基体と接触している第2の表面とを有する第1の層を概略含む、金属含有ダイヤモンドライクカーボンコーティング組成物が提供される。このコーティングはまた、炭素と、タングステン、ニオブ、チタン、およびこれらの組合せから成る群より選択された第2の遷移金属とを有し、かつ、第1の表面と、第1の層の第1の表面と接触している第2の表面とを有する第2の層を含む。好ましくは、コーティングの厚さは、約0.5マイクロメートルから10マイクロメートルである。さらに、この組成物は、任意選択で、低いアブレシブ摩耗率を有することができる。かかる低いアブレシブ摩耗率は、約1×10-103-1-1を超えてはならない。かかるコーティングは、約−50から−750ボルトDCのバイアス電位範囲を有する基体バイアス電位を用いて堆積させることができる。
したがって、本発明が、遷移金属を含む中間層と、遷移金属および炭素を含む外側機能層とを有する金属含有コーティングを教示することが理解され得る。
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細を、添付の図面および以下の説明に記載する。本発明のその他の特徴、目的、および利点は、以下の説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
様々な図面を通じて、同じ参照番号および表示は、同じ要素を示す。
Me−DLCコーティングを、マグネトロンスパッタリングによって堆積させ、ここでは、対象とする金属から構成された4つのターゲットを堆積チャンバの内部に配置し、活性化し、そして、アルゴン(Ar)ガスおよびアセチレン(C22)ガスを用いてスパッタさせる。無心焼入れ(through−hardened)合金鉄、例えば、AISI M50から構成された転がり接触疲労ロッドを含む堆積基体、すなわち基体10を堆積チャンバ内に配置し、約−50から−750ボルトDCの範囲の直流(DC)電位を用いて負にバイアスさせる。スパッタリングターゲット組成物には、チタン元素(Ti)、ニオブ元素(Nb)、およびタングステン元素(W)が含まれる。
金属炭化水素(Me−DLC)コーティングを、ハウザー・テクノ・コーティング社(Hauzer Techno Coating)、ヴェンロー(Venlo)、オランダ(The Netherlands)から市販されている、不平衡モード(unbalanced mode)ハウジングHTC1000/4(ABS)コータ内で、反応性直流マグネトロンスパッタリングによって調製する。堆積の実施を開始する前に、真空チャンバ内の残留圧力を約10-3パスカル(Pa)未満に設定しておく。堆積を実施する間、真空チャンバ内の全ガス圧は、約0.3Pa〜0.6Paとする。本明細書にて述べる基体は、真空チャンバ内で基体ホルダを用いて支持し、約200℃までの温度に維持する。これらの基体ホルダによって、基体は、約12回転毎分の速度で、遊星、すなわち2軸回転(two−fold rotation)することが可能となった。全プロセスを通して、堆積速度は、通常、約2〜3マイクロメートル毎時である。
Me−DLC堆積プロセスは、一般に4つの工程を含む。第1に、基体を、当業者に周知のように、アルゴンエッチング法を用いて約0.3Paの圧力で清浄化する。この工程では、アルゴンガスを、所望のガス流量および/またはチャンバ圧力、一般に、それぞれ、約300標準立方センチメートル毎分(sccm)および0.3Paに達するまでチャンバに入れ、イオン化して、基体表面をスパッタクリーニングするためのAr+イオンを生成する。
第2に、次いで、Arイオンでエッチングされた基体上に、遷移金属、この場合はクロム(Cr)から構成される中間層12をスパッタ堆積させる。堆積プロセスのこの第2の段階の間、クロム金属から構成される1つまたは複数のターゲットに印加するDC電流を、目標値のまま一定に保持する。このプロセス工程では、アルゴンガスをチャンバ内に導入し、中間層が成長してその目標厚さに達するまで一定に保持する。Arイオンエッチング段階に関して、この第2のプロセス工程での、アルゴン流量、およびアルゴン分圧は、それぞれ約300sccm、および0.3〜0.6Paである。これらの堆積条件を維持しながら、クロム金属を、所望の厚さに達するまで基体表面上にスパッタ堆積させる。一般に、堆積した遷移金属中間層は、少なくとも約10ナノメートル(0.01マイクロメートル)から約2000ナノメートル(2.0マイクロメートル)以下の厚さを有し、好ましくは約100ナノメートル(0.1マイクロメートル)から300ナノメートル(0.3マイクロメートル)の厚さを有する。
第3に、クロム金属ターゲットに印加するdc電流をゼロになるまで低減させる。外層のスパッタ堆積に備えて、反応性混合ガスを真空チャンバから排出(flush)する。ある量のアルゴンガスを再度チャンバ内に導入し、次いで、ある量のアセチレンガスを、アルゴンガスとアセチレンガスとの比が、約1:1、すなわち50/50の混合物となるまで導入する。一般に、反応性混合ガス中に存在するアセチレンガスの量は、チャンバ容量の約15パーセントから45パーセントとなる。
第4に、次いで、基体の中間層上に、金属ダイヤモンドライクカーボンコーティング組成物製の外層14をスパッタ堆積させる。タングステン、ニオブ、チタン、およびこれらの組合せなどの金属から構成される1つまたは複数のターゲットに、DC電流を徐々に印加し、すなわち、ゼロから始めて、その強度を徐々に増大させる。ここでもやはり、最初に、ある量のアルゴンガスをチャンバ内に導入し、次いで、ある量のアセチレンガスを、アルゴンガスとアセチレンガスとの比が、約1:1となるまで導入する。やはり、この混合物中に一般に存在するアセチレンガスの量は、チャンバ容量の約15パーセントから45パーセントとなる。純粋な不活性ガスから、不活性ガスとアセチレンとの組合せに遷移する間、または、最終的なアセチレン不活性ガス混合物が得られた後、ターゲット金属が、各基体の遷移金属製中間層の第1の表面、すなわち外側表面上に、所望の厚さに達するまでスパッタ堆積され始める。これらの処理条件の結果、金属対炭素(Me/C)を原子比で0.1〜0.8の範囲で含んだMe−DLCコーティングが堆積される。例示の目的であり、限定的な意味で解釈すべきものではないが、堆積した外層は、約0.1マイクロメートルから10マイクロメートルの厚さを有し得る。結果として得られる、基体材料上に堆積させた金属含有ダイヤモンドライクカーボンコーティング組成物を図1に示す。図示のように、外層の第2の表面、すなわち外層の内側表面が、中間層の第1の表面、すなわち外側表面と接触しており、中間層の第2の表面、すなわち内側表面が、基体の外側表面と接触している。
(実験結果)
アブレシブ摩耗率:
次に、図2を参照すると、本明細書に記載の方法に従って、様々な金属ダイヤモンドライクカーボンコーティング組成物をその上に堆積させた、いくつかの板状基体試料について、アブレシブ摩耗率を求め、製造業者供給の金属ダイヤモンドライクカーボンコーティング(Balzers(登録商標) Balinit C(登録商標))で被覆された基体と比較した。
酸化アルミニウム(Al23)と水懸濁液とを用いて動作させるカロ(Calo)試験器を利用して、試料1〜7についてアブレシブ摩耗率を計算した。それらの結果を定量化するために、カロ(Calo)装置の回転ボールによって生じ、除去されたコーティングの容積を、回転ボールの垂直力およびトラック長で除算した。
基体10を表す試料1は、AISI M50で作成された転がり接触疲労ロッドの上に、0.1マイクロメートルの厚さを有するクロム金属(Cr)製の中間層と、1マイクロメートルの厚さを有するチタン(Ti)ダイヤモンドライクカーボン組成物製の外層とを堆積させたものである。
基体10を表す試料2は、AISI M50で作成された転がり接触疲労ロッドの上に、0.3マイクロメートルの厚さを有するクロム金属(Cr)製の中間層と、3マイクロメートルの厚さを有するチタン(Ti)ダイヤモンドライクカーボン組成物製の外層とを堆積させたものである。
基体10を表す試料3は、AISI M50で作成された転がり接触疲労ロッドの上に、0.1マイクロメートルの厚さを有するクロム金属(Cr)製の中間層と、1マイクロメートルの厚さを有するタングステン(W)ダイヤモンドライクカーボン組成物製の外層とを堆積させたものである。
基体10を表す試料4は、AISI M50で作成された転がり接触疲労ロッドの上に、0.3マイクロメートルの厚さを有するクロム金属(Cr)製の中間層と、3マイクロメートルの厚さを有するタングステン(W)ダイヤモンドライクカーボン組成物製の外層とを堆積させたものである。
基体10を表す試料5は、AISI M50で作成された転がり接触疲労ロッドの上に、0.1マイクロメートルの厚さを有するクロム金属(Cr)製の中間層と、1マイクロメートルの厚さを有するニオブ(Nb)ダイヤモンドライクカーボン組成物製の外層とを堆積させたものである。
基体10を表す試料6は、AISI M50で作成された転がり接触疲労ロッドの上に、0.3マイクロメートルの厚さを有するクロム金属(Cr)製の中間層と、3マイクロメートルの厚さを有するニオブ(Nb)ダイヤモンドライクカーボン組成物製の外層とを堆積させたものである。
基体10を表す試料7は、AISI M50で作成された転がり接触疲労ロッドを、0.3マイクロメートルの厚さを有するクロム金属(Cr)製の中間層と、3マイクロメートルの厚さを有する、浮遊電位を用いて堆積させたイリノイ州エルジン(Elgin)のバルザーズ社((Balzers(登録商標)Inc.)(国際本社はリヒテンシュタイン公国に所在)製のBalinit C(登録商標)、すなわち、タングステン(W)ダイヤモンドライクカーボンコーティング外層とで被覆したものである。
試料3および試料4(W−DLC)のアブレシブ摩耗率は、他の組成物のアブレシブ摩耗率よりも著しく低い。試料3および試料4は共に、金属対炭素比が、他の試料の金属対炭素比によりも遙かに低い。試料3および試料4の堆積に関して、結果として得られるアブレシブ摩耗率は、−100から−120V DCの範囲にわたって、バイアス電位とは極めて無関係であり、1×10-153-1-1以下のアブレシブ摩耗率を示した。金属対炭素比を約0.1〜0.3として、結果として得られる金属含有量を、Balzers(登録商標) Balinit C(登録商標)コーティングの金属含有量と同じ範囲に高くした場合の、結果として得られる試料3および試料4のW−DLCコーティングは、記録された本発明者らによる、従来技術の文献による調査を考慮すると予想外の結果を示している。さらに、これらのアブレシブ摩耗率の結果は、調査した他の組成物に優る際立った利点となっている。標準の、製造業者供給W−DLCコーティング(Balzers(登録商標) Balinit C(登録商標))に比べると、試料3および試料4はまた、試料7よりも優れている。試料3および試料4のアブレシブ摩耗率は、試料7で測定された15-20×10-153-1-1の範囲のアブレシブ摩耗率よりも1桁優れている。実証されたように、Me−DLCコーティング、より具体的には、例えば、試料7、すなわちバルザーズ社(Balzers(登録商標)Inc.)製のBalinit C(登録商標)のように、浮動バイアス電位を用いて付着させたのではなく、負のバイアス電位を用いて付着させたW−DLCコーティングは、遙かに優れたアブレシブ摩耗率の結果を示している。
接着性能:
次に、図3を参照すると、試料1〜試料6について、接着性能値を求めた。
これらのコーティングの接着性能試験は、150キログラムの負荷での、静止ロックウェル押込み試験(static Rockwell indentation)によって実施した。周知のVDI分類によれば、値HF−1が優れた接着性を示し、値HF−6が窪み周辺の完全な剥離を示している。
試料3および試料4は、Ti含有DLCコーティングおよびNb含有DLCコーティングのどちらと比べても、−100ボルトから−500ボルトの基体バイアス電位範囲にわたって、優れた接着性を示している。さらに、これらの結果は、基本的に、接着性が基体バイアス電位に伴って変動しないことを示し、したがって、より大きな部品を処理するのに有利となる。
一般に、大きな部品を処理する場合にあり得るように、ターゲットから基体までの距離が増大するにつれて、例えば、ターゲットから基体までの距離を移動するにつれて、金属ターゲットからスパッタされた原子は、運動エネルギーを失うことになる。これについては、大きな部品をコーティングするときに、より高い基体バイアス電位を印加することが好意的に議論される。しかし、他の組成物および堆積プロセスパラメータでは、より高い基体バイアス電位を使用すると、コーティングの劣化をもたらし、例えば、コーティング接着性が劣ることになる。図3に示すように、試料3および試料4のW−DLCコーティングは、コーティングの劣化を呈してはいない。
転がり接触疲労:
最後に、W−DLCコーティングのこの一群は、標準の、製造業者供給W−DLCコーティング(Balzers(登録商標) Balinit C(登録商標))に比べて、転がり接触疲労(rolling−contact−fatigue)(RCF)性能の劇的な改善を示している。
本発明に従って実施したRCF実験を表す図を、図4Aおよび図4Bに示す。直径0.5インチ(12.7mm)の3つの粗面化ボール(B1、B2、B3)を、1対のベアリングカップ(BC1およびBC2)内で、(上述の通りの)試料1製の、直径0.375インチ(9.525mm)の転がり接触疲労ロッド(R1)に接して半径方向に装填する。ベアリングカップ(BC1、BC2)に締付け力(F)を加え、それによって、粗面化ボールとロッドとの間に半径方向の負荷を加える。米国陸軍が使用している合成タービンエンジン潤滑油であるMIL−L−23699と同じ油で滴下注油しながら、ロッドをその縦軸線(L1)で(D1)の方向に3,600回転毎分(3,600rpm)で回転させる。
試料1〜試料7製の転がり接触疲労ロッドをそれぞれ、5×106サイクルにかけて、加わった接触応力の最も高い量、すなわち、破損の誘起が避けがたくなる転がり接触応力限界(rolling−contact stress limit)(RCSL)を求めた。標準の、製造業者供給W−DLCコーティング(Balzers(登録商標) Balinit C(登録商標))では、RCSLは、400Ksi(2.76GPa)となることが求められた。本発明のW−DLCコーティングでは、RCSLは、700Ksi(4.83GPa)であった。Ti−DLCコーティングでは、RCSLは、800Ksi(5.52GPa)であった。Nb−DLCコーティングでは、RCSLは、400Ksi(2.76GPa)であった。
約400Ksi(2.76GPa)の一定の接触応力レベルに換算した場合、W−DLCまたはTi−DLCで被覆された部品のRCSLの増大は、その部品の転がり接触疲労寿命を、標準の、製造業者供給W−DLCコーティング(Balzers(登録商標) Balinit C(登録商標))の与える転がり接触疲労寿命の約10〜15倍まで増大させることになると推定される。
本発明の例示的な実施形態を、その特定の実施形態および応用例に関して示し、説明してきたが、本明細書に記載の本発明に、いくつかの変形、改変、または変更を行うことができ、これらはいずれも、本発明の趣旨および範囲から逸脱するものではないことが、当業者には明らかであろう。したがって、かかる変形形態、改変形態、および変更形態は全て、本発明の範囲に含まれるものとみなされる。
本発明の前述の説明を、本発明の特定の実施形態および応用例に関して示し、説明してきたが、この説明は、例示および説明の目的で示したものであり、網羅的なものでも、または、本発明を、開示の特定の実施形態および応用例に限定するものでもない。本明細書に記載の本発明に、いくつかの変形、改変、変型または変更を行うことができ、これらはいずれも、本発明の趣旨および範囲から逸脱するものではないことが、当業者には明らかであろう。これらの特定の実施形態および応用例は、本発明の原理およびその実際的な応用例を最も良く説明するために選択し、記載したものであり、それによって、当業者は、本発明を様々な実施形態で、企図される特定の用途に適した様々な改変形態と共に利用することが可能となる。したがって、かかる変形形態、改変形態、変型形態、および変更形態は全て、添付の特許請求の範囲を、公正に、法的に、かつ衡平的に認められる範囲に従って解釈したときに定められる、本発明の範囲に含まれるとみなされるべきである。
転がり接触疲労ロッドを含む基体上に堆積させた中間層と外層とを有する、金属ダイヤモンドライクカーボンコーティングを示す図である。 クロム製の中間層と、炭素とタングステン、チタン、およびニオブなどの金属とでできた外層とを含む、金属ダイヤモンドライクコーティング組成物に関する、金属濃度とアブレシブ摩耗率との関係を示すグラフである。 基体バイアス電位の関数としての、金属ダイヤモンドライクコーティングの接着性能を表す棒グラフである。 実施例で説明した試料1〜試料7の組成物で被覆された回転ロッドと接触して配置された3つの粗面化ボールの構成の上面図を示す、転がり接触疲労(RCF)実験を表す図である。 回転ロッドと接触して配置された粗面化ボールの側面図を示す、図4Aの転がり接触疲労(RCF)実験を表す図である。
符号の説明
10…基体
12…中間層
14…外層
1、B2、B3…粗面化ボール
C1、BC2…一対のベアリングカップ
1…回転方向
F…締付け力
1…縦軸線
1…転がり接触疲労ロッド

Claims (20)

  1. 遷移金属成分を有するダイヤモンドライクカーボンコーティング組成物であって、
    基体と、
    第1の遷移金属を含み、かつ、第1の表面と、前記基体と接触している第2の表面とを有する第1の層と、
    炭素と、第2の遷移金属とを含む第2の層と、
    を含むことを特徴とするコーティング組成物。
  2. 前記第2の遷移金属が、タングステン、ニオブ、チタン、およびこれらの組合せから成る群より選択されることを特徴とする請求項1記載のコーティング。
  3. 前記第1の遷移金属がクロムであることを特徴とする請求項1記載のコーティング。
  4. 前記第2の層が、約0.5マイクロメートルから10マイクロメートルの厚さを有することを特徴とする請求項1記載のコーティング。
  5. 前記第1の層が、約0.01マイクロメートルから2.0マイクロメートルの厚さを有することを特徴とする請求項1記載のコーティング。
  6. 前記第2の層が、低いアブレシブ摩耗率を有することを特徴とする請求項1記載のコーティング。
  7. 前記低いアブレシブ摩耗率が、1×10-103-1-1未満であることを特徴とする請求項6記載のコーティング。
  8. 前記第2の層が、約−50ボルトから−750ボルトの範囲を有する基体バイアス電位を使用して堆積されることを特徴とする請求項1記載のコーティング。
  9. 前記第2の層が、約0.1から0.8の金属対炭素比を有することを特徴とする請求項1記載のコーティング。
  10. 前記第1の層および第2の層が、少なくとも4ギガパスカルの転がり接触応力限界を有することを特徴とする請求項1記載のコーティング。
  11. 遷移金属成分を有するダイヤモンドライクカーボンコーティング組成物であって、
    基体と、
    第1の遷移金属を含み、かつ、第1の表面と、前記基体と接触している第2の表面とを有する第1の層であって、前記第1の層および第2の層が、少なくとも4ギガパスカルの転がり接触応力限界を有する第1の層と、
    炭素と、第2の遷移金属とを含む第2の層と、
    を含むことを特徴とするコーティング組成物。
  12. 前記第2の遷移金属が、タングステン、ニオブ、チタン、およびこれらの組合せから成る群より選択されることを特徴とする請求項11記載のコーティング。
  13. 前記第1の遷移金属がクロムであることを特徴とする請求項11記載のコーティング。
  14. 前記第2の層が、約0.5マイクロメートルから10マイクロメートルの厚さを有することを特徴とする請求項11記載のコーティング。
  15. 前記第1の層が、約0.01マイクロメートルから2.0マイクロメートルの厚さを有することを特徴とする請求項11記載のコーティング。
  16. 前記第2の層が、低いアブレシブ摩耗率を有することを特徴とする請求項11記載のコーティング。
  17. 前記低いアブレシブ摩耗率が、1×10-103-1-1未満であることを特徴とする請求項16記載のコーティング。
  18. 前記第2の層が、約−50ボルトから−750ボルトの範囲を有する基体バイアス電位を使用して堆積されることを特徴とする請求項11記載のコーティング。
  19. 前記第2の層が、約0.1から0.8の金属対炭素比を有することを特徴とする請求項11記載のコーティング。
  20. 遷移金属成分を有するダイヤモンドライクカーボンコーティング組成物であって、
    基体と、
    第1の遷移金属を含み、かつ、第1の表面と、前記基体と接触している第2の表面とを有する第1の層であって、前記第1の層および第2の層が、少なくとも4ギガパスカルの転がり接触応力限界を有する第1の層と、
    炭素と、第2の遷移金属とを含み、低いアブレシブ摩耗率を有する第2の層と、
    を含むことを特徴とするコーティング組成物。
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