JP2008054646A - 微生物の活性制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】活性制御対象微生物2を含む培養液4に電極9,10,11を浸漬し、作用極9に電位を印加して培養液4の酸化還元電位を活性制御対象微生物2の至適範囲に制御し、活性制御対象微生物2を選択的に活性化する。培養液4の酸化還元電位の制御は、作用極9に印加された電位により酸化還元反応を生じる酸化還元物質3を培養液4に含ませて、作用極9に印加された電位により酸化還元物質3の酸化体と還元体の濃度比を制御することにより行うようにする。
【選択図】図4
Description
[数式1] A=X+0.22−B
[化学反応式1] Fe(III) + e− = Fe(II)
活性制御対象微生物2をPCE脱塩素微生物として、至適酸化還元電位を検討した。
培養液4aは以下のようにして調整した。即ち、NH4Cl;0.5g、K2HPO4;0.4g、MgCl2・6H2O;0.49g、CaCl2・2H2O;0.05g、KCl;0.052gを蒸留水1Lに溶解した無機塩培地に、1mLの微量金属溶液を加えた。微量金属溶液は、CuSO4・5H2O;5mg、CoCl2・2H2O;5mg、NiCl2・6H2O;5mg、NaMoO4・2H2O;5mg、ZnSO4;30mg、MnCl2・4H2O;5mgを蒸留水1Lに溶解して調整した。調整後の培養液4aは、オートクレーブ滅菌処理した。また、培養槽7に充填する培養液4bには、酵母エキス;0.5g、PCE;100ppm(0.1g添加)、Fe(III)−EDTA;0.842gをさらに加え、フィルター(0.22μm、Millex−GS、MILLIPORE、Ireland)によりろ過除菌してから使用した。尚、培養液4a、4b共に希水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを7.0に調整した。
PCE脱塩素微生物の培養には図2に示す電気培養装置1を使用した。電解槽5は外径75mm、高さ90mmのガラス製深底シャーレの内側を、一価の陽イオン透過性の交換膜(旭化成、K−192)6で仕切った二槽式とし、一方を培養槽7、他方を対極槽8とした。培養槽7には炭素板(40mm×70mm、4mm厚)の作用極9と、銀・塩化銀参照電極11(HS−205C、東亜DKK社)を設置した。対極槽8には炭素板(40mm×70mm、4mm厚)の対極10を設置した。これら3本の電極9,10,11は電位制御装置(扶桑製作所、POTENTIO/GALVANOSTAT model 110)12に結線して、培養槽7内の作用極9の電位を厳密に設定可能とした。
培養液の酸化還元電位制御性を確認するため、培養液4bのサイクリックボルタモグラムを測定した。測定には電気化学アナライザー(ALSモデル660B、BAS社)を使用し、サイクリックボルタンメトリー(CV)法により実施した。この際、電解系は3極式で行い、電極反応を見るための作用極には炭素円盤電極(面積:7.065mm2、BAS社)を、参照電極には銀・塩化銀電極(RE−1B、BAS社)、さらに電流を流すための対極には白金棒電極(1mm径×5cm、自作)を使用した。
PCE脱塩素微生物の至適酸化還元電位について検討した。
図2に示す電気培養装置1を培養に使用した。PCE脱塩素微生物群は、土壌より取得し馴化したものを継代培養して用いた。PCE脱塩素微生物群の初期添加量は100mLに対して106〜107cells/mLの懸濁液を5mLとした。酸化還元電位は、−0.7V、−0.6V、−0.5V、−0.4V、−0.3V、−0.2V、−0.1Vとした。また、電圧印加を行わずに培養を行い、これを比較データとした。培養期間は、3週間とした。培養後に培養液を1mL分取した。
次に、分取した培養液を、新鮮な培養液4bが10mL入っているバイアル瓶内に入れて植菌(再懸濁)し、通常(電圧印加を行わない)の培養を2,6,9,12日間おこなった。通常培養時には、バイアル瓶の蓋を閉めて、PCEの揮発を防ぐと共に、バイアル瓶内を嫌気条件とした。この培養液のPCEの濃度をガスクロマトグラフィー(GC390B、GLサイエンス社)により測定した。
(4)より至適酸化還元電位と判断した−0.6Vにおける培養期間とPCE脱塩素活性の関係について検討した。
図2に示す電気培養装置1を培養に使用した。PCE脱塩素微生物群及びその初期添加量は(4)と同様とした。培養期間は、1、2、4週間とした。比較データを得るため、電圧印加を行わずに培養を行った。培養後に培養液を1mL分取した。
次に、分取した培養液を、新鮮な培養液4bが10mL入っているバイアル瓶内に入れて植菌(再懸濁)し、通常(電圧印加を行わない)の培養を4日間おこなった。この培養液のPCEの濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した。
培養時の酸化還元電位と微生物の生育数の相関を調べるための実験を行った。
図2に示す電気培養装置1を培養に使用した。PCE脱塩素微生物群及びその初期添加量は(4)と同様とした。培養時の酸化還元電位は、−0.7V、−0.6V、−0.5V、−0.4V、−0.3V、−0.2V、−0.1Vとした。また、電圧印加を行わずに培養し、これを比較データとした。培養期間は、1週間、2週間、3週間とした。微生物数は、光学顕微鏡観察による菌数カウントによって計測した。
(7)培養期間中の培養液中電流量
(6)の実験を行った際に、培養液の電流値を1日目から25日目まで測定した。その結果を図7に示す。酸化還元電位を−0.7V、−0.6V、−0.5V、−0.4Vとした場合には、3日目に電流値が安定した。酸化還元電位を−0.3V、−0.1Vとした場合には、5日目に電流値が安定した。酸化還元電位を−0.2Vとした場合には、7日目に電流値が安定した。どの酸化還元電位条件においても一週間程度で電流値の安定が見られた。
活性制御対象微生物2をDCE脱塩素微生物として、至適酸化還元電位を検討した。
培養液4aは以下のようにして調整した。即ち、クエン酸三ナトリウム二水和物;0.78g、NaHCO3;2.52g、トリスヒドロキシアミノメタン;2.29g、CaCl2・2H2O;0.015g、Na2S;0.48g、FeCl2;0.2g、レザズリン;1mgを蒸留水1Lに溶解した無機塩培地に、10mLのミネラル溶液と1mLのTrace elementを加えた。ミネラル溶液は、MgCl2・6H2O;50g、NaCl;50g、KH2PO4;20g、NH4Cl;30g、KCl;30gを蒸留水1Lに溶解して調整した。trace elementは、MnCl2・4H2O;1g、CoCl2・2H2O;1.9g、ZnCl2;0.7g、CuSO4・5H2O;0.04g、H3BO3;0.06g、NiCl2・6H2O;0.25g、NaMoO4・2H2O;0.44gを蒸留水1Lに溶解して調整した。調整後の培養液4aは、オートクレーブ滅菌処理した。また、培養槽7に充填する培養液4bには、酵母エキス;0.1g、DCE;5.8ppm(0.0058g添加)、Fe(III)−EDTA;0.842gをさらに加え、フィルター(0.22μm、Millex−GS、MILLIPORE、Ireland)によりろ過除菌してから使用した。尚、いずれの培養液も希水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを7.0に調整した。
電気培養装置1は実施例1と同様のものを用いたが、DCE脱塩素微生物の継代培養条件と揃えるため、嫌気ボックス14に注入するガスは、水素と二酸化炭素の混合ガス(H2:CO2=80:20)とした。
DCE脱塩素微生物の至適酸化還元電位について検討した。
図2に示す電気培養装置1を培養に使用した。DCE脱塩素微生物群は、土壌より取得し馴化したものを継代培養して用いた。DCE脱塩素微生物群の初期添加量は100mLに対して105〜106cells/mLの懸濁液を5mLとした。酸化還元電位は、−0.7V、−0.6V、−0.5V、−0.4V、−0.3V、−0.2Vとした。また、電圧印加を行わずに培養を行い、これを比較データとした。培養期間は3週間とした。培養後に培養液を1mL分取した。
次に、分取した培養液を、新鮮な培養液4bが10mL入っているバイアル瓶内に入れて植菌(再懸濁)し、通常(電圧印加を行わない)の培養を一週間おこなった。通常培養時には、バイアル瓶の蓋を閉めて、DCEの揮発を防ぐと共に、バイアル瓶内を嫌気条件とした。この培養液のDCEの濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した。
活性制御対象微生物2をVC脱塩素微生物として、至適酸化還元電位を検討した。
培養液4aは以下のようにして調整した。即ち、クエン酸三ナトリウム二水和物;0.78g、NaHCO3;2.52g、トリスヒドロキシアミノメタン;2.29g、CaCl2・2H2O;0.015gを蒸留水1Lに溶解した無機塩培地に、10mLのミネラル溶液と1mLのTrace elementを加えた。ミネラル溶液は、MgCl2・6H2O;50g、NaCl;50g、KH2PO4;20g、NH4Cl;30g、KCl;30gを蒸留水1Lに溶解して調整した。trace elementは、MnCl2・4H2O;1g、CoCl2・2H2O;1.9g、ZnCl2;0.7g、CuSO4・5H2O;0.04g、H3BO3;0.06g、NiCl2・6H2O;0.25g、NaMoO4・2H2O;0.44gを蒸留水1Lに溶解して調整した。調整後の培養液4aは、オートクレーブ滅菌処理した。また、培養槽7に充填する培養液4bには、酵母エキス;0.1g、VC;10ppm(0.01g添加)、Fe(III)−EDTA;0.842gをさらに加え、フィルター(0.22μm、Millex−GS、MILLIPORE、Ireland)によりろ過除菌してから使用した。尚、いずれの培養液も希水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを7.2に調整した。
電気培養装置1は実施例2と同様のものを用いた。
VC脱塩素微生物の至適酸化還元電位について検討した。
図2に示す電気培養装置1を培養に使用した。VC脱塩素微生物群は、土壌より取得し馴化したものを継代培養して用いた。VC脱塩素微生物群の初期添加量は100mLに対して105〜106cells/mLの懸濁液を5mLとした。酸化還元電位は、−0.6V、−0.5V、−0.4V、−0.3V、−0.2V、−0.1V、0.0Vとした。また、電圧印加を行わずに培養を行い、これを比較データとした。培養期間は一週間とした。培養後に培養液を1mL分取した。
次に、分取した培養液を、新鮮な培養液4bが10mL入っているバイアル瓶内に入れて植菌(再懸濁)し、通常(電圧印加を行わない)の培養を一週間おこなった。通常培養時には、バイアル瓶の蓋を閉めて、VCの揮発を防ぐと共に、バイアル瓶内を嫌気条件とした。この培養液のVCとETHの濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した。
培養期間とVC脱塩素活性の関係について検討した。
図2に示す電気培養装置1を培養に使用した。VC脱塩素微生物群と、その初期添加量は(3)と同様とした。酸化還元電位は、−0.6V、−0.5V、−0.4V、−0.3V、−0.2V、−0.1V、0.0Vとした。また、電圧印加を行わずに培養を行い、これを比較データとした。培養期間は三週間とした。培養後の培養液のOD660値を測定した。測定には分光光度計(U−3010分光光度計、HITACHI社)を用いた。
活性制御対象微生物2を硫酸還元菌として、至適酸化還元電位を検討した。
培養液4aは以下のようにして調整した。即ち、乳酸ナトリウム;4.0mL、NH4Cl;1.0g、K2HPO4;0.5g、MgSO4・7H2O;2.0g、クエン酸三ナトリウム二水和物;5.0g、CaSO4・2H2O;1.0gを蒸留水1Lに溶解して調整した。調整後の培養液4aは、オートクレーブ滅菌処理した。また、培養槽7に充填する培養液4bには、酵母エキス;1.0g、Fe(III)−EDTA;0.42gをさらに加え、フィルター(0.22μm、Millex−GS、MILLIPORE、Ireland)によりろ過除菌してから使用した。尚、いずれの培養液も希水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを7.2に調整した。
電気培養装置1は実施例1と同様のものを用いたが、硫酸還元菌の継代培養条件と揃えるため、嫌気ボックス14に注入するガスは、窒素ガスとした。
硫酸還元菌の至適酸化還元電位について検討した。
図2に示す電気培養装置1を培養に使用した。硫酸還元菌群は、土壌より取得し馴化したものを継代培養して用いた。硫酸還元菌群の初期添加量は50mLに対して107〜108cells/mLの懸濁液を1mLとした。酸化還元電位は、0.4V、−0.1V、−0.6Vとした。また、電圧印加を行わずに培養を行い、これを比較データとした。培養期間は一週間とした。この培養液の硫酸イオン(SO4 2−)濃度をイオンクロマトアナライザ(ICS-1500、DIONEX製)により測定した。また、硫酸還元菌群無添加で且つ電圧印加を行わなかった培養液についても硫酸イオン濃度を測定し、これをcontrolとした。
3 酸化還元物質
4,4a,4b 培養液
9 作用極
10 対極
11 参照電極
13 電子受容体物質
Claims (8)
- 活性制御対象微生物を含む培養液に電極を浸漬し、この電極に電位を印加して前記培養液の酸化還元電位を前記活性制御対象微生物の至適範囲に制御し、前記活性制御対象微生物を選択的に活性化することを特徴とする微生物の活性制御方法。
- 前記酸化還元電位の制御は、前記電極に印加された電位により酸化還元反応を生じる酸化還元物質を前記培養液に含ませて、前記電極に印加された電位により前記酸化還元物質の酸化体と還元体の濃度比を制御することにより行う請求項1に記載の微生物の活性制御方法。
- 前記培養液には、前記活性制御対象微生物の電子受容体として機能する物質がさらに含まれている請求項1に記載の微生物の活性制御方法。
- 前記活性制御対象微生物の活性化を嫌気環境下で行う請求項1に記載の微生物の活性制御方法。
- 前記活性制御対象微生物はテトラクロロエチレン(PCE)脱塩素微生物であり、前記培養液の酸化還元電位を銀・塩化銀電極に対して−0.7V超〜−0.5V未満に制御する請求項1に記載の微生物の活性制御方法。
- 前記活性制御対象微生物はジクロロエチレン(DCE)脱塩素微生物であり、前記培養液の酸化還元電位を銀・塩化銀電極に対して−0.5V〜−0.2V未満に制御する請求項1に記載の微生物の活性制御方法。
- 前記活性制御対象微生物はビニルクロライド(VC)脱塩素微生物であり、前記培養液の酸化還元電位を銀・塩化銀電極に対して−0.5V超〜−0.2V未満に制御する請求項1に記載の微生物の活性制御方法。
- 前記活性制御対象微生物は硫酸還元菌であり、前記培養液の酸化還元電位を銀・塩化銀電極に対して−0.6V〜−0.1Vに制御する請求項1に記載の微生物の活性制御方法。
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