JP2008048733A - 癌の発症危険率を予測する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】肺癌、頭頸部癌、大腸癌、乳癌、食道癌、前立腺癌、膵臓癌、および胃癌の発症危険率をより高精度でかつ広範に予測し、統計学的有意差をもって使用できるms-SNPを有する遺伝子とその遺伝子型を同定すること。
【解決手段】TDG遺伝子、RAD18遺伝子、RAD23B遺伝子、SNM1B遺伝子、MAD1L1遺伝子、AURKA遺伝子、NIN遺伝子、NOB1P遺伝子、CEP152遺伝子、CEP192遺伝子、WISP3遺伝子、PTPN13遺伝子、PTPRJ遺伝子、RASSF6遺伝子、CASP9遺伝子、TRAP1遺伝子、RAD17遺伝子、DUSP6遺伝子、EXO1遺伝子、ADH1B遺伝子、WRN遺伝子、TP53遺伝子、AXIN2遺伝子、PCNT2遺伝子、HER2遺伝子、ERBIN遺伝子、PTPN12遺伝子、BARD1遺伝子、及びIRAK1遺伝子から選ばれる遺伝子の少なくとも1種のミスセンス1塩基多型を調べることを特徴とする、肺癌、頭頸部癌、大腸癌、乳癌、食道癌、前立腺癌、膵臓癌、および胃癌からなる群より選択される少なくとも1種の癌の発症危険率を予測する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、染色体上の遺伝子のミスセンス1塩基多型を調べることにより肺癌、頭頸部癌、大腸癌、食道癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、および胃癌の発症危険率を予測する方法、該方法に用いることのできるオリゴヌクレオチド、プライマーセット、ならびにキットに関する。
癌(悪性新生物)は1981年以降わが国の死亡原因の第一位となり、その後癌による死亡者数は人口の高齢化に伴い増え続けているのが現状である。癌の種類には、食生活に伴い発生する癌、女性特有の癌、ウイルスにより発生する癌、喫煙により発生する癌など様々であるが、わが国で特に増加の著しいのは、肺癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌などである。
肺癌の我が国における死亡率は1960年以降男女とも一貫して増加しており、日本人人口10万人当たりの男女別肺癌死亡者数は2000年には1960年のそれぞれ8.0倍、7.2倍となっている(非特許文献1参照)。男性の肺癌死亡数は1995年から胃癌を抜いて第1位を占め、女性でも第3位である。肺癌検診は、胸部間接撮影や直接撮影により行われてきたが、その技術的進歩はほぼ限界に達し、早期の病巣の発見は極めて困難と考えられている。肺癌の中でも肺癌全体の8から9割を占める肺腺癌、肺扁平上皮癌は化学療法や放射線療法に感受性が低く外科手術の対象となっており、早期発見が特に重要であるが、X線撮影像で明らかに陽性となるのはステージIII期以降のものであり、この末期の肺癌患者の5年生存率は10%未満と言われている。近年、低線量高速らせんCT(コンピューター断層装置)による肺癌検診が一部実用化されているが、コストが高く、一般市民に対する検診として普及するにはまだ時間がかかると考えられる。また、間接的早期発見診断の一方法として喀痰中細胞の細胞診も実用化されているが、深部肺癌等に関しては感度が低いことが指摘されている。我が国における肺癌死亡率を低下させるための方策として、肺癌患者の早期発見とともに、肺癌の発症危険率の高い人に対して喫煙などの環境要因の暴露を極力取り除くことによって、肺癌患者そのものの発生を抑止しようという考え方がある。しかし、日本人における肺癌の発症危険率の高くなる遺伝的背景については、いまだ系統的研究はない。一部の薬物代謝酵素(チトクロームP450群)やDNA修復酵素(APE1、OGG1, REV)の遺伝子における遺伝的多型が肺癌の発症リスクに関与するという散発的な研究発表がこれまでに数編報告されているのみである(例えば、非特許文献2参照)。
頭頸部癌は鎖骨から上の頭部、頸部のうち、脳や脊髄などを除く部位に発生する癌と定義されている。頭頸部癌の診断においては、視診・触診が主体となっており、喉頭癌や口腔癌は早期発見の比率が高いが、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌、上顎洞癌は観察しにくいため発見が遅れ、ステージIで発見されるケースはわずか数%と言われている。肺癌と同様に、日本人における頭頸部癌の発症危険率の高くなる遺伝的背景についても、いまだ系統的研究はない。僅かに口腔癌の発症に、薬物代謝酵素遺伝子(CYP,GSTM,GSTP,NAT,ALDH)の多型が影響することを報じた論文が数編あるのみである(例えば、非特許文献3参照)。
大腸癌は結腸癌、直腸癌の総称で、近年の生活習慣の欧米化に並行して発症率が激増している悪性腫瘍である(男性2位、女性1位)。遺伝的背景の効果が大きい遺伝性大腸癌は全体の1割以下であり、多くが弧発性症例である。早期発見診断は便潜血検査や腫瘍マーカー検診等の間接法と内視鏡による直接診断があるが、直接診断以外は感度、信頼性、共に満足できるものではない。また、肺癌と同様に、日本人における大腸癌の発症危険率の高くなる遺伝的背景についても、いまだ系統的研究はない。これまでに薬物代謝酵素遺伝子群(CYP, MTHFR, ADH2, ALDH2, PLD2, MTRR)や癌浸潤に関わるプロテアーゼ遺伝子(MMP1,MMP3)、転写因子や信号伝達系遺伝子など、総計で約15種類の多型が大腸癌の発症リスクに関与するという報告が日本人についてなされているが(非特許文献4参照)、同一個人についてのそれらの重複を系統的に解析した例はない。
食道癌は消化器癌としては胃癌、大腸癌、肝癌に次いで発症数が多く、増加傾向にあり、しかも予後不良となりやすい難治性癌である。決定的な早期発見診断法もなく、上部消化管内視鏡診断の際に注意する程度である。予後不良のため、遺伝的に発症リスクの高い個人をスクリーニングすることによって、早期発見診断の機会を増加させ、更に予防的な措置を講ずる必要がある。食道癌の発症には飲酒が大きな影響を与え、アルコールの代謝に関する酵素2種類の遺伝子(ADH1B, ALDH2)ミスセンス多型が食道癌の発症リスクに大きく影響すると言われているが(非特許文献5参照)、その他の遺伝的因子に関しては殆ど報告がない。
乳癌は女性の悪性腫瘍の中では現在最も増加傾向の著しいもので、女性の悪性腫瘍発症数の第2位を占め、しかも比較的若年層からも発症が増加しているという特徴がある。米国等では乳癌関連遺伝子(BRCA1, BRCA2)の変異検索による遺伝子診断が実用化されつつあるが、我が国における乳癌発症にはこれらの遺伝子の関与が比較的低いことが立証されている。早期発見診断は触診とマンモグラフィーというX線検査であるが、発見時に既に浸潤、転移を伴う症例も多い。乳癌は比較的遺伝的背景の影響が大きいとされるが、肺癌と同様に、日本人における乳癌の発症危険率の高くなる遺伝的背景についても、いまだ系統的研究はない。これまでに日本人の乳癌発症に関与するとされた遺伝子多型が約10種報告されているが、それらの多くはCYP遺伝子群など代謝酵素系遺伝子である(非特許文献6参照)。また、同一個人についてのそれらの重複を系統的に解析した報告もない。
前立腺癌は近年急激に発症数が増加しており、男性の癌死亡の第3位を占めるようになった。近い将来、男性の癌死亡の第一位を占めるようになるという予測もある程である。最近では、前立腺癌特異抗原 (PSA)検査により、早期発見がある程度可能となっているが、その信頼性は約30%に留まっているため、偽陽性または偽陰性も多い。体質遺伝診断法としての癌関連遺伝子の多型解析は、特に我が国では進展しておらず、代謝関連遺伝子やホルモン作用に関する遺伝子の多型など僅かな知見があるのみである。
膵臓癌も近年増加傾向にある悪性腫瘍で、特にその早期発見診断が困難であるため、進行癌として発見され、手術不適応、予後不良のケースが多い。生存率も極端に低く、男女の差も余りないことから、体質遺伝診断やそれに基づく早期発見診断法の確立が待望されている。しかしながら、膵臓癌の発症リスクに関わる遺伝子多型の研究は圧倒的に立ち遅れており、我が国での報告は代謝関連遺伝子を解析した僅か数編に過ぎない。
胃癌は近年癌による死亡数の第一位を肺癌に譲り、早期発見法の普及や外科、化学療法の進展により、死亡数は低下傾向にある。しかしながら、その年間罹患数は依然として我が国の癌で第一位であり、対策の必要性、重要性は不変である。特に、スキルス型胃癌は予後不良であり、早急な対策が望まれる。日本に多い癌であったため、発症リスクに関わる遺伝子多型の研究は比較的多いが、代謝関連遺伝子が多く、又、系統的な検索は立ち遅れている。
1塩基多型(single nucleotide polymorphism、以下、SNPと呼ぶ)は疾患の発症や増悪に関連する遺伝子を見つけるために有用であるが、特に、翻訳領域にあってなおかつアミノ酸変化を伴うミスセンスSNP(以下、ms-SNPと表記する)は、その遺伝子から翻訳されるタンパク質のアミノ酸配列を変化させるので、該タンパク質の機能を変化させたり、遺伝子の発現量の調節異常に繋がる場合がある。したがって、ms-SNPを疾患の発症危険率の予測や薬剤の種類および量の使い分けに利用することができる可能性がある。
ある遺伝子の変異や多型が、癌の発症にどの程度関与するかを検定し、個人の遺伝的要因による発癌の危険率を予測する試みがなされている。これまで、そのような試みは、薬剤代謝酵素遺伝子、DNAの複製・修復に関連する遺伝子、癌抑制遺伝子など、癌の発症に関与する可能性がある遺伝子を対象に行われている。例えば、癌抑制遺伝子であるBRCA1遺伝子の生殖細胞系列突然変異はヒト乳癌および卵巣癌の発症危険度の診断に利用できることが報告されている(特許文献1参照)。また、DNA修復に関与するX-ray cross-complementing group 1 protein(XRCC1)遺伝子のms-SNPの1つとして、コードするXRCC1タンパクの399番目のアミノ酸がアルギニンまたはグルタミンとなるms-SNPが発見されているが、年齢を合わせた200例の非ヒスパニック系白人の患者−対照研究(非特許文献7参照)によると、該タンパクの399番目のアミノ酸がグルタミンとなる対立遺伝子(以下、アリルと呼ぶ)を2つ持っている、すなわち該アリルをホモで持つ人は肺腺癌の発症危険率が高くなることが推定される。また、癌抑制遺伝子p53(TP53)の遺伝子産物の72番目のアミノ酸のコドンがプロリンとなるアリルをホモで持つ人は、アルギニンとなるアリルをホモで持つ人と比較して肺腺癌となる危険率が高いと報告されている(非特許文献8参照)。
本発明者らもまた、ms-SNPがSNPデータベース上に報告される遺伝子の中から、DNA修復に関与する遺伝子[RAD17ヒトホモログ(RAD17)遺伝子、DNAポリメラーゼδ(POLD1)遺伝子、エキソヌクレアーゼ1ヒトホモログ(EXO1)遺伝子、ウェルナー症候群(WRN)遺伝子、ATR(ataxia-telangiectasia and rad3-related)遺伝子、DNAポリメラーゼι(POLI)遺伝子]、癌抑制遺伝子[Ras結合ドメインファミリー蛋白質1(Ras association domain family protein 1:RASSF1)遺伝子、二重特異性ホスファターゼ6(Dual-specificity phosphatase 6:DUSP6)遺伝子]、染色体再構築に関与する遺伝子(ETL1遺伝子)のms-SNPに関し、肺癌や頭頸部癌の発症危険率との関係を明らかにした(特許文献2)。
「日本医師会雑誌」,2002年,第128巻,第3号,pp.379−381 Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. (米国),1999年、第8巻、第8号、pp.669−674 Carcinogenesis. (米国),1998年、第19巻、第10号、pp.1803−1807 Cancer Research,(米国),2005年、第65巻、第7号、pp.2979−2982 J Clin Gastroenterol.,1997年、第25巻、第4号、pp.568−575 Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2004年、第13巻、第8号、pp.1407−1411 Mutation Research,(オランダ),2001年、第461巻、第4号,pp.273−278 Cancer Research(米国),2001年、第61巻、第24号,pp.8718−8722 特表2002−502227号公報 特開平2005−245362号公報
上記のように、癌の発症危険率と関係するms-SNPの情報を用いることにより、遺伝的に癌の発症危険率の高い人を早期に発見することができ、また、それらの人に対して発癌の予防措置や定期的な検査を行えば、早期発見が困難な癌の死亡率を低下させることが可能となる。
従って、本発明の課題は、より高精度でかつ広範に癌発症危険率の予測に統計学的有意差をもって使用できるms-SNPを有する遺伝子とその遺伝子型を同定することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、発癌に関係する候補遺伝子のms-SNPを広汎に検索し、選ばれたms-SNPについて肺腺癌、肺扁平上皮癌、頭頸部癌、大腸癌、食道癌、および乳癌それぞれの患者群(総計約700名)と健常人群(約200名と250名の2 群、総計約450名)とで相関解析を行った結果、DNA修復に関与するチミングリコシラーゼ(TDG)遺伝子(配列番号1)、RAD18ヒトホモログ(RAD18)遺伝子(配列番号2)、RAD23Bヒトホモログ(RAD23B)遺伝子(配列番号3)、SNM1B遺伝子(配列番号4)、細胞周期調節に関わる MAD1L1遺伝子(配列番号5)、染色体の正確な分配に関与するオーロラキナーゼ(AURKA)遺伝子(配列番号6)、NIN遺伝子(配列番号7)、NOB1P遺伝子(配列番号8)、CEP152遺伝子(配列番号9)、CEP192遺伝子(配列番号10)、癌抑制遺伝子候補であるWISP3遺伝子(配列番号11)、PTPN13遺伝子(配列番号12)、PTPRJ遺伝子(配列番号13)、RASSF6遺伝子(配列番号14)、および細胞死誘導に重要なCASP9遺伝子(配列番号15)、並びにTRAP1(HSP75)遺伝子(配列番号16)の16遺伝子のms-SNPが、上記の少なくとも1種の癌発症危険率の予測に統計学的有意差をもって使用できることを見出した。
これらの遺伝子のms-SNPで肺癌、頭頸部癌、大腸癌、食道癌、および乳癌の発症危険率との関係が報告されたものは、食道癌と乳癌におけるAURKA遺伝子のms-SNP以外にはない(Cancer Research, 64巻8号, p.2680-2683,(2004); Carcinogenesis, 25巻11号, p.2225-2230, (2004))。
また、上記遺伝子に加え、本発明者により既に肺癌や頭頸部癌の発症危険率との関係が報告されている遺伝子のうち(特開平2005−245362号公報)、RAD17遺伝子(配列番号17)について大腸癌、DUSP6遺伝子(配列番号18)について食道癌、EXO1遺伝子(配列番号19)について乳癌と食道癌の発症危険率との関係を新たに見出した。
さらに、食道癌等のリスク因子として公知であるADH1B遺伝子(配列番号20)のms-SNPについても、肺癌、乳癌、前立腺癌の発症危険率との関係を新たに見出した。
一方、上記の癌種のうち、頭頸部癌、食道癌、乳癌については症例数を大幅に増やし、また新たに胃癌、前立腺癌、膵臓癌等の症例を計280例以上集積して各々40種以上の遺伝子多型を解析した。その結果、上記の20種の遺伝子多型に加えて、DNA修復に関与するWRN遺伝子(配列番号21)、癌抑制遺伝子TP53遺伝子(配列番号22)、およびAXIN2遺伝子(配列番号23)、染色体分配に関わるPCNT2遺伝子(配列番号24)、プロト癌遺伝子HER2遺伝子(配列番号25)、およびその調節遺伝子であるERBIN遺伝子(配列番号26)、癌抑制遺伝子候補であるPTPN12遺伝子(配列番号27)の2種のミスセンス1塩基多型、信号伝達に関わるBARD1遺伝子(配列番号28)、ならびにIRAK1遺伝子(配列番号29)の10種の遺伝子多型が新たに肺癌、大腸癌、頭頸部癌、食道癌、乳癌、胃癌、前立腺癌、膵臓癌のうち少なくとも1種の癌発症危険率の予測に統計学的有意差をもって使用できることを見出した。
WRN遺伝子(配列番号21)、癌抑制遺伝子TP53遺伝子(配列番号22)、およびAXIN2遺伝子(配列番号23)は、本発明者により既に肺癌や頭頸部癌の発症危険率との関係が報告されている遺伝子(特開平2005−245362号公報)に含まれるか、または公知の遺伝子多型であるが、該当する癌の発症との相関は本発明で初めて明らかになったものである。
本発明はかかる知見により完成されたものである。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1) 被験者の染色体上の遺伝子における、以下の(a1)〜(a34)から選ばれる少なくとも1種のミスセンス1塩基多型を調べることを特徴とする、肺癌、頭頸部癌、大腸癌、乳癌、食道癌、前立腺癌、膵臓癌、および胃癌からなる群より選択される少なくとも1種の癌の発症危険率を予測する方法。なお、これらの8種の癌は我が国における全悪性腫瘍の年間罹患総数の約7割に達する。
(a1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
(a2)配列番号2に示すRAD18遺伝子がコードするアミノ酸配列における302番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)またはCAA(Gln)であるミスセンス1塩基多型
(a3)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGCT(Ala)またはGTT(Val)であるミスセンス1塩基多型
(a4)配列番号4に示すSNM1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における61番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)またはCAC(His)であるミスセンス1塩基多型
(a5)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)またはCAC(His)であるミスセンス1塩基多型
(a6)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがATT(Ile)またはTTT(Phe)であるミスセンス1塩基多型
(a7)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)またはGCA(Ala)であるミスセンス1塩基多型
(a8)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1131番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)またはCAG(Gln)であるミスセンス1塩基多型
(a9)配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)またはCAG(Gln)であるミスセンス1塩基多型
(a10)配列番号9に示すCEP152遺伝子がコードするアミノ酸配列における54番目のアミノ酸のコドンがTCG(Ser)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a11)配列番号10に示すCEP192遺伝子がコードするアミノ酸配列における956番目のアミノ酸のコドンがCCC(Pro)またはTCC(Ser)であるミスセンス1塩基多型
(a12)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAG(Gln)またはCAT(His)であるミスセンス1塩基多型
(a13)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)またはATA(Ile)であるミスセンス1塩基多型
(a14)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)またはGAC(Asp)であるミスセンス1塩基多型
(a15)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)またはCCA(Pro)であるミスセンス1塩基多型
(a16)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)またはCAA(Gln)であるミスセンス1塩基多型
(a17)配列番号14に示すRASSF6遺伝子がコードするアミノ酸配列における163番目のアミノ酸のコドンがTCT(Ser)またはCCT(Pro)であるミスセンス1塩基多型
(a18)配列番号15に示すCASP9遺伝子がコードするアミノ酸配列における28番目のアミノ酸のコドンがGTC(Val)またはGCC(Ala)であるミスセンス1塩基多型
(a19)配列番号16に示すTRAP1遺伝子がコードするアミノ酸配列における307番目のアミノ酸のコドンがCGT(Arg)またはGGT(Gly)であるミスセンス1塩基多型
(a20)配列番号17に示すRAD17遺伝子がコードするアミノ酸配列における546番目のアミノ酸のコドンがCTC(Leu)またはCGC(Arg)であるミスセンス1塩基多型
(a21)配列番号18に示すDUSP6遺伝子がコードするアミノ酸配列における114番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a22)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における439番目のアミノ酸のコドンがACG(Thr)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
(a23)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における757番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)またはCTT(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a24)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)またはCGC(Arg)であるミスセンス1塩基多型
(a25)配列番号21に示すWRN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1074番目のアミノ酸のコドンがTTT(Phe)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a26)配列番号22に示すTP53遺伝子がコードするアミノ酸配列における72番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)またはCCC (Pro)であるミスセンス1塩基多型
(a27)配列番号23に示すAXIN2遺伝子がコードするアミノ酸配列における50番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)またはTCT(Ser)であるミスセンス1塩基多型
(a28)配列番号24に示すPCNT2遺伝子がコードするアミノ酸配列における2274番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)またはCTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a29)配列番号25に示すHER2遺伝子がコードするアミノ酸配列における1170番目のアミノ酸のコドンがCCC(Pro)またはGCC(Ala)であるミスセンス1塩基多型
(a30)配列番号26に示すERBIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1112番目のアミノ酸のコドンがTCA(Ser)またはTTA(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a31)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における322番目のアミノ酸のコドンがATC(Ile)またはGTC(Val)であるミスセンス1塩基多型
(a32)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における573番目のアミノ酸のコドンがGCA(Ala)またはACA(Thr)であるミスセンス1塩基多型
(a33)配列番号28に示すBARD1遺伝子がコードするアミノ酸配列における507番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
(a34)配列番号29に示すIRAK1遺伝子がコードするアミノ酸配列における532番目のアミノ酸のコドンがTCG(Ser)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(2) 肺癌が、全肺癌(非小細胞肺癌)、肺腺癌、または肺扁平上皮癌である、(1)に記載の方法。
(3) 被験者が、以下の(b1)〜(b15)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、全肺癌(非小細胞肺癌)の発症危険率を予測する方法。
(b1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(b2)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルとGCA(Ala)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(b3)配列番号10に示すCEP192遺伝子がコードするアミノ酸配列における956番目のアミノ酸のコドンがTCC(Ser)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(b4)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(b5)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(b6)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)のアリルであるホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルであるホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Met/Met-Tyr/Tyr)
(b7)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルとGAC(Asp)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Ile-Tyr/Asp)
(b8)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)
(b9)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルとCGC(Arg)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(b10)配列番号2に示すRAD18遺伝子がコードするアミノ酸配列における302番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(b11)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがTTT(Phe)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(b12)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(b13)配列番号24に示すPCNT2遺伝子がコードするアミノ酸配列における2274番目のアミノ酸のコドンがCTG(Leu)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(b14)配列番号26に示すERBIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1112番目のアミノ酸のコドンがTTA(Leu)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(b15)配列番号28に示すBARD1遺伝子がコードするアミノ酸配列における507番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(4) 被験者が、以下の(c1)〜(c15)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、肺腺癌の発症危険率を予測する方法。
(c1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(c2)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルとGCA(Ala)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(c3)配列番号10に示すCEP192遺伝子がコードするアミノ酸配列における956番目のアミノ酸のコドンがTCC(Ser)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(c4)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(c5)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)のアリルであるホモ型の遺伝子型
(c6)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)のアリルであるホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルであるホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Met/Met-Tyr/Tyr)
(c7)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルとGAC(Asp)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Ile-Tyr/Asp)
(c8)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)
(c9)配列番号14に示すRASSF6遺伝子がコードするアミノ酸配列における163番目のアミノ酸のコドンがTCT(Ser)であるアリルとCCT(Pro)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(c10)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルとCGC(Arg)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(c11)配列番号4に示すSNM1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における61番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(c12)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがTTT(Phe)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(c13)配列番号15に示すCASP9遺伝子がコードするアミノ酸配列における28番目のアミノ酸のコドンがGCC(Ala)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(c14)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGTT(Val)であるアリルを少なくとも1個含む遺伝子型
(c15)配列番号24に示すPCNT2遺伝子がコードするアミノ酸配列における2274番目のアミノ酸のコドンがCTG(Leu)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(5)被験者が、以下の(d1)〜(d13)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、肺扁平上皮癌の発症危険率を予測する方法。
(d1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(d2)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(d3)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1131番目のアミノ酸のコドンがCAG(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(d4)配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)であるアリルとCAG(Gln)であるヘテロ型の遺伝子型
(d5)配列番号9に示すCEP152遺伝子がコードするアミノ酸配列における54番目のアミノ酸のコドンがTTG(Leu) であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(d6)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(d7)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(d8)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)のアリルであるホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルであるホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Met/Met-Tyr/Tyr)
(d9)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルとGAC(Asp)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Ile-Tyr/Asp)
(d10)配列番号2に示すRAD18遺伝子がコードするアミノ酸配列における302番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(d11)配列番号15に示すCASP9遺伝子がコードするアミノ酸配列における28番目のアミノ酸のコドンがGTC(Val)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(d12)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)、または前記アミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)およびCCA(Pro)のヘテロ型の遺伝子型と326番目のアミノ酸のコドンが少なくとも1個はCGA(Arg)アリルの遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Gln/Pro-Gln/Arg またはGln/Pro-Arg/Arg)
(d13)配列番号28に示すBARD1遺伝子がコードするアミノ酸配列における507番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(6)被験者が、以下の(e1)〜(e6)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、頭頸部癌の発症危険率を予測する方法。
(e1)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGTT(Val)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(e2)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(e3)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルとGAC(Asp)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Met/Met-Tyr/Asp)。
(e4)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)
(e5)配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)であるアリルとCAG(Gln)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(e6)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における322番目のアミノ酸のコドンがATC(Ile)であるアリルのホモ型と前記アミノ酸配列における573番目のアミノ酸のコドンがACA(Thr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Ile-Thr/Thr)、並びに同アミノ酸配列における322番目と573番目のアミノ酸のコドンが共にヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Val-Ala/Thr)
(7)被験者が、以下の(f1)〜(f5)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、大腸癌の発症危険率を予測する方法。
(f1)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(f2)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルとGAC(Asp)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Met/Met-Tyr/Asp)
(f3)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)であるアリルのホモ型である遺伝子型
(f4)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)
(f5)配列番号17に示すRAD17遺伝子がコードするアミノ酸配列における546番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(8)被験者が、以下の(g1)〜(g11)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、食道癌の発症危険率を予測する方法。
(g1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(g2)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGCT(Ala)であるアリルとGTT(Val)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(g3)配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)であるアリルとCAG(Gln)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(g4)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)であるアリルとCAA(Gln)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(g5)配列番号18に示すDUSP6遺伝子がコードするアミノ酸配列における114番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(g6)配列番号16に示すTRAP1遺伝子がコードするアミノ酸配列における307番目のアミノ酸のコドンがCGT(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(g7)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(g8)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Ile-Tyr/Tyr)、または前記アミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)とATG(Met)のヘテロ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがGAC(Asp)またはTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Met-Tyr/TyrまたはIle/Met-Asp/Asp)
(g9)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における757番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(g10)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における322番目のアミノ酸のコドンがATC(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における573番目のアミノ酸のコドンがACA(Thr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Ile-Thr/Thr)、並びに同アミノ酸配列における322番目と573番目のアミノ酸のコドンが共にヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Val-Ala/Thr)
(g11)配列番号29に示すIRAK1遺伝子がコードするアミノ酸配列における532番目のアミノ酸のコドンがTTG(Leu)である遺伝子型(男性のみに適用、X染色体上にあるため、1アリルしか存在しない)
(9)被験者が、以下の(h1)〜(h7)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、乳癌の発症危険率を予測する方法。
(h1)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における439番目のアミノ酸のコドンがACG(Thr)であるアリルとATG(Met)であるアリルのヘテロ型遺伝子型
(h2)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルとCGC(Arg)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(h3)配列番号10に示すCEP192遺伝子がコードするアミノ酸配列における956番目のアミノ酸のコドンがTCC(Ser)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(h4)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(h5)配列番号17に示すRAD17遺伝子がコードするアミノ酸配列における546番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(h6)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における757番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(h7)配列番号25に示すHER2遺伝子がコードするアミノ酸配列における1170番目のアミノ酸のコドンがGCC(Ala)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(10)被験者が、以下の(i1)〜(i10)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、前立腺癌の発症危険率を予測する方法。
(i1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(i2)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがATT(Ile) であるアリルとTTT(Phe)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(i3)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(i4)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Ile/Ile-Tyr/Tyr)
(i5)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルとCGA(Arg)であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Arg)、または前記アミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)およびCCA(Pro)のヘテロ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)およびCGA(Arg)アリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Gln/Pro-Gln/Arg)
(i6)配列番号16に示すTRAP1遺伝子がコードするアミノ酸配列における307番目のアミノ酸のコドンがCGT(Arg)であるアリルとGGT(Gly) であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型
(i7)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における757番目のアミノ酸のコドンがCTT(Leu)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(i8)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(i9)配列番号22に示すTP53遺伝子がコードするアミノ酸配列における72番目のアミノ酸のコドンがCCC (Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(i10)配列番号23に示すAXIN2遺伝子がコードするアミノ酸配列における50番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)であるアリルとTCT(Ser)であるであるアリルとのヘテロ型の遺伝子型
(11)被験者が、以下の(j1)〜(j9)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、膵臓癌の発症危険率を予測する方法。
(j1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(j2)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(j3)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルとGCA(Ala)であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型と、前記アミノ酸配列における1131番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)アリルのホモ型である遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Ala-Pro/Pro)
(j4)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(j5)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルとATG(Met)であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型と、前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)またはGAC(Asp)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Ile/Met-Tyr/Tyr またはIle/Met-Asp/Asp)
(j6)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルとCGA(Arg) であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型(Gln/Arg)
(j7)配列番号15に示すCASP9遺伝子がコードするアミノ酸配列における28番目のアミノ酸のコドンがGCC(Ala)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(j8)配列番号16に示すTRAP1遺伝子がコードするアミノ酸配列における307番目のアミノ酸のコドンがGGT(Gly) であるアリルのホモ型の遺伝子型
(j9)配列番号21に示すWRN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1074番目のアミノ酸のコドンがTTG(Leu)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(12)被験者が、以下の(k1)〜(k8)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、胃癌の発症危険率を予測する方法。
(k1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(k2)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGTT(Val)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(k3)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(k4)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがATT(Ile) であるアリルとTTT(Phe)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(k5)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルとGCA(Ala)であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型と、前記アミノ酸配列における1131番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)であるアリルとCAG(Gln)でありアリルとのヘテロ型である遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Ala-Pro/Gln)
(k6)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Ile/Ile-Tyr/Tyr)、並びに前記アミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがGAC(Asp)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Met/Met-Asp/Asp)
(k7)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)
(k8)配列番号14に示すRASSF6遺伝子がコードするアミノ酸配列における163番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(13)以下の(a1)〜(a34)から選ばれる少なくとも1種のミスセンス1塩基多型部位を含む連続する少なくとも10塩基の配列、またはその相補配列にハイブリダイズすることができる、請求項1〜12に記載の方法においてプローブとして用いるオリゴヌクレオチド。
(a1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
(a2)配列番号2に示すRAD18遺伝子がコードするアミノ酸配列における302番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)またはCAA(Gln)であるミスセンス1塩基多型
(a3)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGCT(Ala)またはGTT(Val)であるミスセンス1塩基多型
(a4)配列番号4に示すSNM1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における61番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)またはCAC(His)であるミスセンス1塩基多型
(a5)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)またはCAC(His)であるミスセンス1塩基多型
(a6)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがATT(Ile)またはTTT(Phe)であるミスセンス1塩基多型
(a7)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)またはGCA(Ala)であるミスセンス1塩基多型
(a8)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1131番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)またはCAG(Gln)であるミスセンス1塩基多型
(a9)配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)またはCAG(Gln)であるミスセンス1塩基多型
(a10)配列番号9に示すCEP152遺伝子がコードするアミノ酸配列における54番目のアミノ酸のコドンがTCG(Ser)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a11)配列番号10に示すCEP192遺伝子がコードするアミノ酸配列における956番目のアミノ酸のコドンがCCC(Pro)またはTCC(Ser)であるミスセンス1塩基多型
(a12)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAG(Gln)またはCAT(His)であるミスセンス1塩基多型
(a13)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)またはATA(Ile)であるミスセンス1塩基多型
(a14)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)またはGAC(Asp)であるミスセンス1塩基多型
(a15)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)またはCCA(Pro)であるミスセンス1塩基多型
(a16)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)またはCAA(Gln)であるミスセンス1塩基多型
(a17)配列番号14に示すRASSF6遺伝子がコードするアミノ酸配列における163番目のアミノ酸のコドンがTCT(Ser)またはCCT(Pro)であるミスセンス1塩基多型
(a18)配列番号15に示すCASP9遺伝子がコードするアミノ酸配列における28番目のアミノ酸のコドンがGTC(Val)またはGCC(Ala)であるミスセンス1塩基多型
(a19)配列番号16に示すTRAP1遺伝子がコードするアミノ酸配列における307番目のアミノ酸のコドンがCGT(Arg)またはGGT(Gly)であるミスセンス1塩基多型
(a20)配列番号17に示すRAD17遺伝子がコードするアミノ酸配列における546番目のアミノ酸のコドンがCTC(Leu)またはCGC(Arg)であるミスセンス1塩基多型
(a21)配列番号18に示すDUSP6遺伝子がコードするアミノ酸配列における114番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a22)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における439番目のアミノ酸のコドンがACG(Thr)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
(a23)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における757番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)またはCTT(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a24)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)またはCGC(Arg)であるミスセンス1塩基多型
(a25)配列番号21に示すWRN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1074番目のアミノ酸のコドンがTTT(Phe)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a26)配列番号22に示すTP53遺伝子がコードするアミノ酸配列における72番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)またはCCC (Pro)であるミスセンス1塩基多型
(a27)配列番号23に示すAXIN2遺伝子がコードするアミノ酸配列における50番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)またはTCT(Ser)であるミスセンス1塩基多型
(a28)配列番号24に示すPCNT2遺伝子がコードするアミノ酸配列における2274番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)またはCTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a29)配列番号25に示すHER2遺伝子がコードするアミノ酸配列における1170番目のアミノ酸のコドンがCCC(Pro)またはGCC(Ala)であるミスセンス1塩基多型
(a30)配列番号26に示すERBIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1112番目のアミノ酸のコドンがTCA(Ser)またはTTA(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a31)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における322番目のアミノ酸のコドンがATC(Ile)またはGTC(Val)であるミスセンス1塩基多型
(a32)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における573番目のアミノ酸のコドンがGCA(Ala)またはACA(Thr)であるミスセンス1塩基多型
(a33)配列番号28に示すBARD1遺伝子がコードするアミノ酸配列における507番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
(a34)配列番号29に示すIRAK1遺伝子がコードするアミノ酸配列における532番目のアミノ酸のコドンがTCG(Ser)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(14)以下の(a1)〜(a34)から選ばれる少なくとも1種のミスセンス1塩基多型部位を含む連続する少なくとも10塩基の配列、またはその相補配列を増幅することができる、請求項1〜12に記載の方法においてプライマーとして用いるオリゴヌクレオチド。
(a1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
(a2)配列番号2に示すRAD18遺伝子がコードするアミノ酸配列における302番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)またはCAA(Gln)であるミスセンス1塩基多型
(a3)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGCT(Ala)またはGTT(Val)であるミスセンス1塩基多型
(a4)配列番号4に示すSNM1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における61番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)またはCAC(His)であるミスセンス1塩基多型
(a5)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)またはCAC(His)であるミスセンス1塩基多型
(a6)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがATT(Ile)またはTTT(Phe)であるミスセンス1塩基多型
(a7)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)またはGCA(Ala)であるミスセンス1塩基多型
(a8)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1131番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)またはCAG(Gln)であるミスセンス1塩基多型
(a9)配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)またはCAG(Gln)であるミスセンス1塩基多型
(a10)配列番号9に示すCEP152遺伝子がコードするアミノ酸配列における54番目のアミノ酸のコドンがTCG(Ser)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a11)配列番号10に示すCEP192遺伝子がコードするアミノ酸配列における956番目のアミノ酸のコドンがCCC(Pro)またはTCC(Ser)であるミスセンス1塩基多型
(a12)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAG(Gln)またはCAT(His)であるミスセンス1塩基多型
(a13)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)またはATA(Ile)であるミスセンス1塩基多型
(a14)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)またはGAC(Asp)であるミスセンス1塩基多型
(a15)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)またはCCA(Pro)であるミスセンス1塩基多型
(a16)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)またはCAA(Gln)であるミスセンス1塩基多型
(a17)配列番号14に示すRASSF6遺伝子がコードするアミノ酸配列における163番目のアミノ酸のコドンがTCT(Ser)またはCCT(Pro)であるミスセンス1塩基多型
(a18)配列番号15に示すCASP9遺伝子がコードするアミノ酸配列における28番目のアミノ酸のコドンがGTC(Val)またはGCC(Ala)であるミスセンス1塩基多型
(a19)配列番号16に示すTRAP1遺伝子がコードするアミノ酸配列における307番目のアミノ酸のコドンがCGT(Arg)またはGGT(Gly)であるミスセンス1塩基多型
(a20)配列番号17に示すRAD17遺伝子がコードするアミノ酸配列における546番目のアミノ酸のコドンがCTC(Leu)またはCGC(Arg)であるミスセンス1塩基多型
(a21)配列番号18に示すDUSP6遺伝子がコードするアミノ酸配列における114番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a22)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における439番目のアミノ酸のコドンがACG(Thr)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
(a23)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における757番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)またはCTT(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a24)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)またはCGC(Arg)であるミスセンス1塩基多型
(a25)配列番号21に示すWRN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1074番目のアミノ酸のコドンがTTT(Phe)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a26)配列番号22に示すTP53遺伝子がコードするアミノ酸配列における72番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)またはCCC (Pro)であるミスセンス1塩基多型
(a27)配列番号23に示すAXIN2遺伝子がコードするアミノ酸配列における50番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)またはTCT(Ser)であるミスセンス1塩基多型
(a28)配列番号24に示すPCNT2遺伝子がコードするアミノ酸配列における2274番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)またはCTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a29)配列番号25に示すHER2遺伝子がコードするアミノ酸配列における1170番目のアミノ酸のコドンがCCC(Pro)またはGCC(Ala)であるミスセンス1塩基多型
(a30)配列番号26に示すERBIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1112番目のアミノ酸のコドンがTCA(Ser)またはTTA(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(a31)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における322番目のアミノ酸のコドンがATC(Ile)またはGTC(Val)であるミスセンス1塩基多型
(a32)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における573番目のアミノ酸のコドンがGCA(Ala)またはACA(Thr)であるミスセンス1塩基多型
(a33)配列番号28に示すBARD1遺伝子がコードするアミノ酸配列における507番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
(a34)配列番号29に示すIRAK1遺伝子がコードするアミノ酸配列における532番目のアミノ酸のコドンがTCG(Ser)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
(15)配列番号29+(2n−1)(nは1〜33までの整数を示す)で示されるフォワードプライマーと、配列番号29+(2n)(nは1〜33までの整数を示す)で示されるリバースプライマーからなる癌発症危険性判定用プライマーセット。
(16)(13)若しくは(14)に記載のオリゴヌクレオチド、または(15)に記載のプライマーセットを含む、被験者の癌発症危険性判定用キット。
本発明によれば、被験者のミスセンス1塩基多型を解析することによって、該被験者の肺腺癌、肺扁平上皮癌、頭頸部癌、食道癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、および胃癌の発症危険率(癌体質遺伝要因)を予測する方法が提供される。これらの癌種は我が国における全悪性腫瘍の推計年間罹患数の約7割を占める。本発明の方法は、被験者の末梢血血球DNAを採取して遺伝子型の解析を行うものであるので、簡便で被験者に負担はなく、またどの年齢でも実施できる。本発明の方法は、発癌のリスクを事前に知ることによって適確な生活習慣の改善などを通じて癌発症予防に役立ち、また最適な間隔で一般検診や癌ドック検診を受診することによって癌の早期発見も可能である。従って、本発明の方法は、激増しつつある悪性腫瘍による死亡率の低下と、その診療に関わる国民医療費の大幅削減に貢献できるものと期待される。
以下、本発明を詳細に説明する。
[1] 解析するms-SNPの候補の選択
遺伝子のSNPの情報を集めたデータベースから、DNA修復や発癌と関係する機能を有する遺伝子のSNPを、肺癌、頭頸部癌、大腸癌、乳癌、食道癌、前立腺癌、膵臓癌、および胃癌の発症危険率と関係するSNPの候補として選択する。SNPとしてはms-SNPが好ましい。一般に利用可能なSNPのデータベースとして、例えば、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のSNPデータベースなどが挙げられる。
また、SNPの出現頻度、すなわちSNPとして登録されている2つの配列のうち、出現頻度の低い方の配列を有するアリル(マイナーアリル)の出現頻度は、1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましい。候補として選択したSNPが、解析サンプル数や出現頻度が明確にされていないSNPの場合は、100以上の検体のDNAについて、下記[2]に記載の方法に基づいて、SNPタイピングを行い、該SNPの出現頻度を確認しておくことが好ましい。
[2] 遺伝子型の決定方法
[1]で候補として選択したms-SNPについて、健常人と癌患者それぞれの遺伝子型、すなわち染色体上の2つのアリルがms-SNPのどちらの配列を有しているかを決定する。SNPに関する遺伝子型の決定は、SNPタイピングとも呼ばれる。SNPタイピングに用いる試料はゲノムDNAが好適であるが、ms-SNPの場合にはcDNAであってもよい。ゲノムDNAは癌患者または健常人から採取した血液等の検体から、例えば公知の方法〔Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕によって抽出できる。ゲノムDNA抽出にはDNeasy Tissue Kit〔キアゲン(QIAGEN)社製〕やWizard SV Genomic〔プロメガ(Promega)社製〕のような市販キットを使用することも可能である。cDNAは検体からRNAを抽出し、RNAに含まれるmRNAを逆転写酵素を用いてcDNAに変換することによって得られる。RNAの抽出には例えば公知の方法〔Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕に加え、RNeasy(キアゲン社製)やSV total RNA(プロメガ社製)のような市販キットを使用することも可能である。
本発明において用いることのできるSNPタイピングの方法としては、例えば、以下の(i)から(xiii)の方法があげられる。
(i)塩基配列決定による方法
試料のDNAの、SNPが存在する領域の塩基配列決定を行うことにより、直接遺伝子型を決定する方法である。塩基配列決定は、例えば、蛍光シーケンサーなどを用いて行うことができる。ゲノムDNAを試料とする場合は、SNPが存在するゲノム領域をPCR法によって増幅し、増幅された断片に対して配列決定を行う。
(ii)プライマー伸長反応を用いる方法
試料のDNAを鋳型とし、SNPが存在する位置の直前にアニーリングするように設計したプライマーおよび塩基ごとに異なる標識をしたダイデオキシヌクレオチドを用いた伸長反応を行うことで標識ダイデオキシヌクレオチドを取り込ませて、取り込む標識の違い、あるいは、標識を取り込むか否かを検出する方法である。例えばSNaPshot法(遺伝子医学, 5, 398-403, 2001)は、プライマー伸長反応によって取り込んだ蛍光標識を、蛍光シーケンサーなどを使って検出する方法である。また、プライマー伸長反応によって生成した標識プライマーをMALDI TOF-MS(matrix-assisted laser desorption ionization time of flight mass spectrum)で検出する方法もある(遺伝子ビジネスの世紀, 日経BP社, 200-202, 2000)。
(iii)DNAチップを利用する方法
各アリルの配列特異的にハイブリダイズできる15〜25塩基のオリゴDNAプローブを、ガラスやシリコンなどの基盤上に格子状に固定化したDNAチップと、蛍光標識した試料のDNAとをハイブリダイズさせ、各プローブ上の蛍光量を測定する方法である。SNPを大量、高速に解析する目的に適している。ゲノムDNAの場合は、ms-SNPの部位を含む適当な長さの領域をPCRにより増幅したDNAを用いる。
(iv)プローブを結合したビーズを用いる方法
ビーズ様の粒子に、各アリルの配列特異的にハイブリダイズできるオリゴDNAプローブを結合させ、これに試料のDNAおよびオリゴDNAプローブと相補的な配列を有する標識したオリゴDNAをハイブリダイズさせ、標識したオリゴDNAが結合するか否かをもって所望のSNPを検査する方法も利用可能である(Mutat. Res., 461, 273-278, 2001)。ゲノムDNAの場合は、ms-SNPの部位を含む適当な長さの領域をPCRにより増幅したDNAを用いる。この方法に好適に用いられるビーズとしては、例えばルミネックス・ビーズ〔ルミネックス(Luminex)社製〕があげられる。ルミネックス・ビーズは、ビーズ番号により濃度の異なる2種類の蛍光色素によって標識されており、該ビーズに励起ビームを照射することによって発する該2種類の蛍光強度を、区別して精密に測定することによって、ビーズの種類を容易に区別することができる。したがって、プローブごとに違う番号のビーズを用い、1つのチューブ内でビーズを混合して反応させることにより、各プローブについて同時に測定を行うことができる利点を有する。現在まで最大100種類のビーズを識別しうる。また、該ビーズは表面にはカルボキシル基が表出しており、アミノ標識末端をアミノ化したオリゴDNAプローブを公知の方法でビーズ表面上に固相化できる。
(v)TaqMan PCR法
TaqMan PCR法(遺伝子医学, 5, 398-403, 2001)は、試料のDNAを鋳型としてSNPを含む位置で増幅されたPCR産物に対して各アリルの配列特異的にハイブリダイズできるオリゴDNAプローブをハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしたプローブが耐熱性ポリメラーゼの有するエキソヌクレアーゼ活性によって破壊される度合いを検出する方法である。該方法の場合、プローブの5'と3'の両方に異なる蛍光標識を付加し、その間で起きるエネルギー転移反応を利用することで検出を容易にしている。
(vi)ARMS法
ARMS(amplification refractory mutation system)法は、MASA(mutant allel-specific amplification)法とも呼ばれ、PCRプライマーの3'端または3'近傍がSNPによってミスマッチとなるよう設計されたプライマーを使ってPCRを行った場合に、PCRが起きにくくなることを利用したものである。これをTaqMan法へ応用した方法、すなわちPCR産物の形成の有無をPCRプライマーによる増幅領域に設計され、かつ5'と3'の両方に異なる蛍光標識を付加されたプローブの分解で検出する方法も考案されている(遺伝子医学, 5, 398-403, 2001)。また、該方法においてサイバーグリーンのように2本鎖DNAにインターカレートして蛍光を発する性質の蛍光物質がPCR産物に取り込まれ、蛍光を発することを利用して検出を容易にする方法もある。
(vii)コンフロントPCR法
コンフロントPCR法はARMS法の変法であり、SNPの一方のアリルによって3'端がミスマッチとなるセンス鎖のプライマーと、もう一方のアリルによって3'端がミスマッチとなるアンチセンス鎖のプライマー、さらにそれぞれの該プライマーに対となって適切な長さのPCR産物を生じるためのプライマーの計4種類を混ぜて、試料のDNAを鋳型として一度にPCRを行い、生じるPCR産物の長さによってどちらのアリルであったかを判定する方法である。
(viii)一本鎖DNA高次構造多型法
一本鎖DNA高次構造多型(SSCP;single-strand conformation polymorphism)法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86, 2766-2770 1989)は塩基配列による一本鎖DNAの立体構造の差を利用してSNPタイピングを行う方法である。まず試料のDNAを鋳型とし、放射性物質または蛍光物質で標識されたDNAプライマーによってPCRを行うことでPCR産物を標識しておく。その後、PCR産物を1本鎖化した後に尿素などの変性剤を含まないゲルで電気泳動を行う。もし、SNPが存在すれば立体構造が異なり違いを検出することが可能である。
(ix)ヘテロデュープレックス法
ヘテロデュープレックス法(Genomics, 12, 301-306, 1992)は、正常と変異(多型)のある遺伝子のPCR産物を混合して再アニールさせ、生じたホモとヘテロ2本鎖DNAが示す挙動の変化を変性剤を含まないゲルの電気泳動で解析する手法である。該方法の変法として、ゲル電気泳動の代わりにHPLCを使い、ホモとヘテロ2本鎖DNAのカラムへの保持力の差を用いて検出する方法(DHPLC法:denaturing high performance liquid chromatography法)がある(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 196-200 1996)。
(x)RFLP法
RFLP(restriction fragment length polymorphism)法では、試料のDNAのSNPを含む領域をPCRにより増幅した後、SNPのある部位を制限酵素で切断する方法であり、SNPがあるために切断断片の大きさに違いが生じることを利用した方法である。RFLP法の変法としては、SNPのある部位で目的とするアリルがあった場合に所望の制限酵素が切断できるように設計されたプライマーを用いてPCRを行うことによって増幅断片を得て、その後に該制限酵素によって切断し、切断断片の大きさに違いが生じることを利用する方法も可能である。
(xi)ミスマッチ特異的切断を利用する方法
標識した特定のアリルの配列をもつPCR産物またはcRNAプローブに試料DNAのSNPを含む領域のPCR産物をハイブリダイズさせ、その後にミスマッチ特異的に切断する操作を行って、SNPの部位でミスマッチがあった場合に生ずる正常より短くなったプローブを検出する方法である。ミスマッチ特異的切断方法としては、プローブにcRNAを用いてミスマッチ部位をRNaseAで切断する方法(Cell, 53, 549-554, 1988)、化学修飾によってミスマッチ塩基を取り除き鎖切断を行う方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 4397-4401 1988)、大腸菌のミスマッチ修復酵素系を用いて特異的に切断する方法などがある。
同様にミスマッチ特異的切断を使用する方法にインベーダー法があげられる(Clin. Chem., 47, 164-172, 2001)。この方法は、DNAの特異的配列に対し、あらかじめ設計されたプローブが結合し形成される3重鎖構造を認識した場合のみ特異的に切断する酵素であるクリーバーゼによって切断された断片を検出する技術である。
また、宝酒造が開発したICAN(isothermal and chimeric primer-initiated amplification of nucleic acids)法の変法であるUCAN法(http://www.takara.co.jp/news/2001/10-12/01-i-033.htm)もミスマッチ特異的に切断する操作によって検出する方法である。該方法はDNAの特異的配列に対し、あらかじめ設計されたDNA-RNA-DNAプライマーが結合し形成される2本鎖にRNaseHを作用させることでミスマッチがない場合にはプライマーが切断され3'末端が露出し、DNAポリメラーゼ反応が進行する。これ以降の反応においてはICAN法と同様の原理(http://www.takara.co.jp/news/2000/07-09/00-i-019.htm)により、RNaseHによって5'末端近傍が切り取られそこに新たに結合したプローブが結合することによって鎖置換反応が進行しDNA増幅が起きる。この増幅断片の有無を検出することによってSNPを検出する技術である。
(xii)DGGE法およびTGGE法
DGGE(denaturing gradient gel electrophoresis)法では、尿素とホルムアミドなどの変性剤の濃度勾配中を泳動させることによって、変異のために起こる半変性状態での挙動の変化を検出する(Nature, 313, 495-498, 1985)。TGGE(temperature gradient gel electrophoresis)法は温度勾配中を泳動させる方法である。
(xiii)リガーゼを利用する方法
耐熱性DNAリガーゼを用いて、SNP部位を境界とする2本のオリゴヌクレチドプローブの連結産物が生成するか否かで検出する方法(ligase chain reaction法)もSNPタイピングに好適に用いられる。リガーゼを利用する方法としては、RCA(rolling circle amplification)法もあげられる。SNPの部位で切れ目をもつよう設計された1本鎖のDNAが試料DNAと反応した時に該DNAと完全にマッチした場合にはDNAリガーゼによって環状の1本鎖DNAとなる。この環状1本鎖DNAを鋳型にしてPCRを行い、増幅断片を検出する方法である(Nucleic Acids Res., 26, 5073-5078, 1998)。
[3] 発症危険率の予測に使用できるms-SNPの選択
[1]で選択したms-SNPの候補について、[2]に記載した方法で、数十人以上の健常人および特定の癌患者それぞれの遺伝子型を決定する。本発明においては、患者として肺腺癌、肺扁平上皮癌、頭頸部癌、大腸癌、食道癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、または胃癌の患者を用いる。癌の発症率は、年齢、性、喫煙歴、および飲酒歴等により影響を受けるので、対照となる健常人群は、患者群と年齢、性比、喫煙歴、および飲酒歴の割合がほぼ一致するように標準化した健常人群を用いるのが好ましい。該ms-SNPが、遺伝子Xにおいて配列aまたはbで表される場合、遺伝子型としては(i)aのアリルのホモ型(a/a)、(ii)aのアリルとbのアリルのヘテロ型(a/b)および(iii)bのアリルのホモ型(b/b)があげられる。また、1つのアリルの有無に着目した、(iv)aのアリルを有する遺伝子型(a/aまたはa/b)および(v)bのアリルを有する遺伝子型(b/bまたはa/b)という遺伝子型もあげられる。各遺伝子型の出現頻度が、患者群と対照とする健常人群で差があるかどうかを検定する。差があると検定された遺伝子型がある場合、該遺伝子型は該癌の発症危険率に関与する遺伝子型であり、対応するms-SNPを該癌の発症危険率の予測のために使用できるms-SNPとして選択する。
患者群と対照とする健常人群の各遺伝子型の出現頻度に差があるかどうかを検定するためには、分割表を作成するのが好ましい。ある遺伝子型について検定する場合、まず患者群および健常人群で遺伝子型を調べた結果を健常人であるか患者であるか、該遺伝子型であるかそうでないかの2つの要因で分類した2×2の分割表を作成する。ます目には、それぞれの要因の組み合わせに該当する人数が入る。
この分割表をもとに、患者群および健常人群それぞれにおける、該遺伝子型の出現率(該遺伝子型である人数/群の全人数)または出現オッズ(該遺伝子型である人数/該遺伝子型ではない人数)を求める。さらに、該遺伝子型の、健常人群における出現率に対する患者群における出現率の比である尤度比、あるいは健常人群における出現オッズに対する患者群における出現オッズの比であるオッズ比を求め、検定に用いることができる。
尤度比またはオッズ比が1でない場合は、該遺伝子型の出現頻度に患者群と健常人群で差があることを表しており、尤度比またはオッズ比が1より大きい場合は、該遺伝子型の出現頻度が健常人群と比べて患者群で高く、1より小さい場合は、該遺伝子型の出現頻度が健常人群と比べて患者群で低いことを表す。例えば、尤度比またはオッズ比が1.5以上または0.5以下の遺伝子型をその癌の発症危険率に関与する遺伝子として選択することができ、該遺伝子型に対応するms-SNPをその癌の発症危険率の予測に用いることができる。
遺伝子型の出現頻度の尤度比またはオッズ比は、該遺伝子型を有していない人の発症率(該遺伝子型を有していない人の中で患者である割合)に対する該遺伝子型を有している人の発症率(該遺伝子型を有している人の中で患者である割合)の比、または該遺伝子型を有していない人の発症オッズ(該遺伝子型を有している人の中で健常者に対する患者の比)に対する該遺伝子型を有している人の発症オッズ(該遺伝子型を有している人の中で健常者に対する患者の比)の比と等しくなるので、該遺伝子型を有する人の発症危険率の指標となる。
ただし、尤度比またはオッズ比から選択された遺伝子型の母集団における出現頻度を、[1]で求めたマイナーアリルの頻度から計算したとき、その出現頻度が50%をこえる場合は、該遺伝子型自体は、発症危険率の予測に用いないことが好ましい。例えば、遺伝子X(マイナーアリルbの頻度30%)において、メジャーアリルaを有する遺伝子型のオッズ比が10という結果がでた場合、aを有する遺伝子型の出現頻度は、(1-0.3)2+2×(1-0.3)×0.3すなわち91%となる。この場合、アリルaを有する遺伝子型のヒトの発症率または発症オッズが10倍高くなったと考えるより、アリルaを有しない遺伝子型のヒト、すなわちマイナーアリルbのホモ型(b/b)の遺伝子型のヒトの発症率または発症オッズが1/10に抑制されていると考える方が合理的である。したがって、このような場合は、該遺伝子型ではない遺伝子型を発症危険率に関与している遺伝子型として選択する方が好ましい。上記の例でいえば、発症危険率の予測にはアリルaを有する遺伝子型ではなく、アリルbのホモ型の遺伝子型を用いるのが好ましい。
該尤度比またはオッズ比が統計学的有意であるかどうかは、95%信頼区間を求めることにより検定でき、95%信頼区間が1をまたがない場合は有意であるといえる。95%信頼区間は「探索的データ解析ツール/ビュジュアル統計ソフト StatFlex Ver.5.0 活用マニュアル」(株式会社アーテック)に記載の式に基づいて求めることができる。また、表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)等を利用して計算することもできる。尤度比またはオッズ比から発症危険率に関与する遺伝子型を選択する場合、その尤度比またはオッズ比が統計学的有意である遺伝子型を選択するのが、より好ましい。
また、この分割表をもとに、χ2検定により、あるいはFisherの直接確率、φ係数やユールの連関係数を求めることにより、この2つの要因に関連があるかないか、すなわち患者群と健常人群における該遺伝子型の出現頻度に差があるかどうかを検定することもできる。χ2検定では、分割表の値から検定統計量χ2値を文献〔「探索的データ解析ツール/ビュジュアル統計ソフト StatFlex Ver.5.0活用マニュアル」(株式会社アーテック)〕に記載の式から求める。自由度1のχ2分布における求めたχ2値の確率Pを求め、Pが有意水準、例えば0.05よりも小さければ、患者群と健常人群における該遺伝子型の出現頻度に差があるといえる。Fisherの直接確率は、分割表の値から検定のための有意確率を直接求めるもので、得られた確率が、有意水準(例えば0.05)よりも小さければ、患者群と健常人群の間で該遺伝子型の出現頻度に差があるといえる。また、φ係数やユールの連関係数は、2つの要因の関連の強さを表す統計量で、その絶対値が1に近いほど関連が強い、すなわち患者群と健常人群における該遺伝子型の出現頻度に差があることを表す。
[1]で選択した候補のうち、上記の評価によって、肺癌、頭頸部癌、大腸癌、食道癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、および胃癌のいずれか少なくとも1種の発症危険率の予測に使用できるms-SNPとして、以下の(a1)〜(a34)に示すms-SNPが決定できた。なお、各コドンの配列の直後の括弧内にそのコドンがコードするアミノ酸を示す。また、それぞれのマイナーアリル頻度は本研究において日本人健常人集団の200検体以上を解析して得られた実測値である。
(a1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs2888805、マイナーアリルATGの頻度33%)
(a2)配列番号2に示すRAD18遺伝子がコードするアミノ酸配列における302番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)またはCAA(Gln)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs373572、マイナーアリルCAAの頻度38%)
(a3)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGCT(Ala)またはGTT(Val)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs1805329、マイナーアリルGTTの頻度17%)
(a4)配列番号4に示すSNM1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における61番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)またはCAC(His)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs12022378、マイナーアリルCACの頻度43%)
(a5)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)またはCAC(His)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs1801368、マイナーアリルCACの頻度48%)
(a6)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがATT(Ile)またはTTT(Phe)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs2273535、マイナーアリルTTTの頻度33%)
(a7)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)またはGCA(Ala)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs2236316、マイナーアリルGCAの頻度18%)
(a8)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1131番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)またはCAG(Gln)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs12882191、マイナーアリルCAGの頻度21%)
(a9)配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)またはCAG(Gln)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs3811348、マイナーアリルCAGの頻度17%)
(a10)配列番号9に示すCEP152遺伝子がコードするアミノ酸配列における54番目のアミノ酸のコドンがTCG(Ser)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs2289181、マイナーアリルTTGの頻度15%)
(a11)配列番号10に示すCEP192遺伝子がコードするアミノ酸配列における956番目のアミノ酸のコドンがCCC(Pro)またはTCC(Ser)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs578208、マイナーアリルTCCの頻度11%)
(a12)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAG(Gln)またはCAT(His)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs1230345、マイナーアリルCATの頻度27%)
(a13)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)またはATA(Ile)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs2230600、マイナーアリルATAの頻度48%)
(a14)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)またはGAC(Asp)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs989902、マイナーアリルGACの頻度45%)
(a15)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)またはCCA(Pro)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs1566734、マイナーアリルCCAの頻度17%)
(a16)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)またはCAA(Gln)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs1503185、マイナーアリルCAAの頻度19%)
(a17)配列番号14に示すRASSF6遺伝子がコードするアミノ酸配列における163番目のアミノ酸のコドンがTCT(Ser)またはCCT(Pro)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs12507775、マイナーアリルCCTの頻度17%)
(a18)配列番号15に示すCASP9遺伝子がコードするアミノ酸配列における28番目のアミノ酸のコドンがGTC(Val)またはGCC(Ala)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs1052571、マイナーアリルGCCの頻度36%)
(a19)配列番号16に示すTRAP1遺伝子がコードするアミノ酸配列における307番目のアミノ酸のコドンがCGT(Arg)またはGGT(Gly)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs13926、マイナーアリルGGTの頻度40%)
(a20)配列番号17に示すRAD17遺伝子がコードするアミノ酸配列における546番目のアミノ酸のコドンがCTC(Leu)またはCGC(Arg)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs1045051、マイナーアリルCGCの頻度33%)
(a21)配列番号18に示すDUSP6遺伝子がコードするアミノ酸配列における114番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs2279574、マイナーアリルTTGの頻度47%)
(a22)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における439番目のアミノ酸のコドンがACG(Thr)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs4149963、マイナーアリルATGの頻度10%)
(a23)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における757番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)またはCTT(Leu)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs9350、マイナーアリルCTTの頻度46%)
(a24)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)またはCGC(Arg)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs1229984、マイナーアリルCGCの頻度21%)
(a25)配列番号21に示すWRN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1074番目のアミノ酸のコドンがTTT(Phe)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs2725362、マイナーアリルTTGの頻度40%)
(a26)配列番号22に示すTP53遺伝子がコードするアミノ酸配列における72番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)またはCCC (Pro)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs1042522、マイナーアリルCCCの頻度34%)
(a27)配列番号23に示すAXIN2遺伝子がコードするアミノ酸配列における50番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)またはTCT(Ser)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs2240308、マイナーアリルTCTの頻度31%)
(a28)配列番号24に示すPCNT2遺伝子がコードするアミノ酸配列における2274番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)またはCTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs2070425、マイナーアリルCTGの頻度46%)
(a29)配列番号25に示すHER2遺伝子がコードするアミノ酸配列における1140番目のアミノ酸のコドンがCCC(Pro)またはGCC(Ala)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs1058808、マイナーアリルGCCの頻度46%)
(a30)配列番号26に示すERBIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1112番目のアミノ酸のコドンがTCA(Ser)またはTTA(Leu)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs3805466、マイナーアリルTTAの頻度26%)
(a31)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における322番目のアミノ酸のコドンがATC(Ile)またはGTC(Val)であるミスセンス1塩基多型
(NCBI SNPデータベース番号:rs9640663、マイナーアリルGTCの頻度7%)
(a32)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における573番目のアミノ酸のコドンがGCA(Ala)またはACA(Thr)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs3750050、マイナーアリルACAの頻度35%)
(a33)配列番号28に示すBARD1遺伝子がコードするアミノ酸配列における507番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs2070094、マイナーアリルATGの頻度27%)
(a34)配列番号29に示すIRAK1遺伝子がコードするアミノ酸配列における532番目のアミノ酸のコドンがTCG(Ser)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型(NCBI SNPデータベース番号:rs1059703、マイナーアリルTTGの頻度20%)
また、上記のms-SNPを指標とした癌の発症危険率の予測は、具体的には、被験者における当該ms-SNPの遺伝子型を調べることによって行う。
全肺癌(非小細胞肺癌)において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に高い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、全肺癌(非小細胞肺癌)の発症リスクが高いと判定できる。
(b1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(b2)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルとGCA(Ala)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(b3)配列番号10に示すCEP192遺伝子がコードするアミノ酸配列における956番目のアミノ酸のコドンがTCC(Ser)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(b4)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(b5)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(b6)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)のアリルであるホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルであるホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Met/Met-Tyr/Tyr)
(b7)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルとGAC(Asp)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Ile-Tyr/Asp)
(b8)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)
(b9)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルとCGC(Arg)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(b15)配列番号28に示すBARD1遺伝子がコードするアミノ酸配列における507番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
また、全肺癌(非小細胞肺癌)において、健常人群に対し患者群における出現頻度が近有意に高い遺伝子型としては、例えば、配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGCT(Ala)であるアリルとGTT(Val)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型;配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)であるアリルとCAG(Gln)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型が挙げられる。
一方、全肺癌(非小細胞肺癌)において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に低い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、全肺癌(非小細胞肺癌)の発症リスクが低いと判定できる。
(b10)配列番号2に示すRAD18遺伝子がコードするアミノ酸配列における302番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(b11)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがTTT(Phe)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(b12)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(b13)配列番号24に示すPCNT2遺伝子がコードするアミノ酸配列における2274番目のアミノ酸のコドンがCTG(Leu)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(b14)配列番号26に示すERBIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1112番目のアミノ酸のコドンがTTA(Leu)であるアリルのホモ型の遺伝子型
肺腺癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に高い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、肺腺癌の発症リスクが高いと判定できる。
(c1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(c2)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルとGCA(Ala)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(c3)配列番号10に示すCEP192遺伝子がコードするアミノ酸配列における956番目のアミノ酸のコドンがTCC(Ser)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(c4)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(c5)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)のアリルであるホモ型の遺伝子型
(c6)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)のアリルであるホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルであるホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Met/Met-Tyr/Tyr)
(c7)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルとGAC(Asp)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Ile-Tyr/Asp)
(c8)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)
(c9)配列番号14に示すRASSF6遺伝子がコードするアミノ酸配列における163番目のアミノ酸のコドンがTCT(Ser)であるアリルとCCT(Pro)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(c10)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルとCGC(Arg)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(c13)配列番号15に示すCASP9遺伝子がコードするアミノ酸配列における28番目のアミノ酸のコドンがGCC(Ala)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(c14)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGTT(Val)であるアリルを少なくとも1個含む遺伝子型
また、肺腺癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が近有意に高い遺伝子型としては、例えば、配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGCT(Ala)であるアリルとGTT(Val)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型;配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルのホモ型の遺伝子型が挙げられる。
一方、肺腺癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に低い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、肺腺癌の発症リスクが低いと判定できる。
(c11)配列番号4に示すSNM1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における61番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(c12)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがTTT(Phe)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(c15)配列番号24に示すPCNT2遺伝子がコードするアミノ酸配列における2274番目のアミノ酸のコドンがCTG(Leu)であるアリルのホモ型の遺伝子型
肺扁平上皮癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に高い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、肺扁平上皮癌の発症リスクが高いと判定できる。
(d1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(d2)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(d3)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1131番目のアミノ酸のコドンがCAG(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(d4)配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)であるアリルとCAG(Gln)であるヘテロ型の遺伝子型
(d5)配列番号9に示すCEP152遺伝子がコードするアミノ酸配列における54番目のアミノ酸のコドンがTTG(Leu) であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(d6)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(d7)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(d8)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)のアリルであるホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルであるホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Met/Met-Tyr/Tyr)
(d9)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルとGAC(Asp)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Ile-Tyr/Asp)
(d12)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)、または前記アミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)およびCCA(Pro)のヘテロ型の遺伝子型と326番目のアミノ酸のコドンが少なくとも1個はCGA(Arg)アリルの遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Gln/Pro-Gln/Arg またはGln/Pro-Arg/Arg)
(d13)配列番号28に示すBARD1遺伝子がコードするアミノ酸配列における507番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
また、肺扁平上皮癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が近有意に高い遺伝子型としては、例えば、配列番号4に示すSNM1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における61番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルのホモ型の遺伝子型;配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型が挙げられる。
一方、肺扁平上皮癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に低い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、肺扁平上皮癌の発症リスクが低いと判定できる。
(d10)配列番号2に示すRAD18遺伝子がコードするアミノ酸配列における302番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(d11)配列番号15に示すCASP9遺伝子がコードするアミノ酸配列における28番目のアミノ酸のコドンがGTC(Val)であるアリルのホモ型の遺伝子型
なお、上記全肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌に対して出現頻度が有意に高い遺伝子型であるPTPN13遺伝子の2つの複合遺伝子型(Met/Met-Tyr/TyrとIle/Ile-Tyr/Asp)については、これらの何れかを有する例を合算した場合に、より有意に高リスクと判定できる。
頭頸部癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に高い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、頭頸部癌の発症リスクが高いと判定できる。
(e1)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGTT(Val)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(e2)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(e3)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルとGAC(Asp)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Met/Met-Tyr/Asp)。
(e4)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)
(e5)配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)であるアリルとCAG(Gln)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
また、頭頸部癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が近有意に高い遺伝子型としては、配列番号4に示すSNM1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における61番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型;配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)であるアリルとCAG(Gln)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型;配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型が挙げられる。
一方、頭頸部癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に低い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、頭頸部癌の発症リスクが低いと判定できる。
(e6)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における322番目のアミノ酸のコドンがATC(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における573番目のアミノ酸のコドンがACA(Thr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Ile-Thr/Thr)、並びに同アミノ酸配列における322番目と573番目のアミノ酸のコドンが共にヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Val-Ala/Thr)
大腸癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に高い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、大腸癌の発症リスクが高いと判定できる。
(f1)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(f2)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルとGAC(Asp)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Met/Met-Tyr/Asp)
(f3)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)であるアリルのホモ型である遺伝子型
(f4)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)
(f5)配列番号17に示すRAD17遺伝子がコードするアミノ酸配列における546番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
また、大腸癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が近有意に高い遺伝子型としては、配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGCT(Ala)であるアリルとGTT(Val)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型;配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)であるアリルとCAG(Gln)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型が挙げられる。
食道癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に高い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、食道癌の発症リスクが高いと判定できる。
(g1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(g2)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGCT(Ala)であるアリルとGTT(Val)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(g3)配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)であるアリルとCAG(Gln)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(g4)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)であるアリルとCAA(Gln)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(g5)配列番号18に示すDUSP6遺伝子がコードするアミノ酸配列における114番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(g8)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Ile/Ile-Tyr/Tyr)
(g9)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における757番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(g11)配列番号29に示すIRAK1遺伝子がコードするアミノ酸配列における532番目のアミノ酸のコドンがTTG(Leu)である遺伝子型(男性のみに適用、X染色体上にあるため、1アリルしか存在しない)
また、食道癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が近有意に高い遺伝子型としては、配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型;配列番号9に示すCEP152遺伝子がコードするアミノ酸配列における54番目のアミノ酸のコドンがTTG(Leu)であるアリルのホモ型の遺伝子型が挙げられる。
一方、食道癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に低い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、肺腺癌の発症リスクが低いと判定できる。
(g6)配列番号16に示すTRAP1遺伝子がコードするアミノ酸配列における307番目のアミノ酸のコドンがCGT(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(g7)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(g8)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)とATG(Met)のヘテロ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがGAC(Asp)またはTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Met-Tyr/TyrまたはIle/Met-Asp/Asp)
(g10)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における322番目のアミノ酸のコドンがATC(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における573番目のアミノ酸のコドンがACA(Thr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Ile/Ile-Thr/Thr)、並びに同アミノ酸配列における322番目と573番目のアミノ酸のコドンが共にヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Ile/Val-Ala/Thr)
乳癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に高い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、乳癌の発症リスクが高いと判定できる。
(h1)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における439番目のアミノ酸のコドンがACG(Thr)であるアリルとATG(Met)であるアリルのヘテロ型遺伝子型
(h2)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルとCGC(Arg)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(h4)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(h5)配列番号17に示すRAD17遺伝子がコードするアミノ酸配列における546番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(h6)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における757番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(h7)配列番号25に示すHER2遺伝子がコードするアミノ酸配列における1170番目のアミノ酸のコドンがGCC(Ala)であるアリルのホモ型の遺伝子型
一方、乳癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に低い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、乳癌の発症リスクが低いと判定できる。
(h3)配列番号10に示すCEP192遺伝子がコードするアミノ酸配列における956番目のアミノ酸のコドンがTCC(Ser)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
公知であるGPX1(グルタチオン過酸化酵素)遺伝子がコードするアミノ酸配列における200番目のアミノ酸(Pro/Leu)のコドンがCTC(Leu)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
前立腺癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に高い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、前立腺癌の発症リスクが高いと判定できる。
(i1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(i2)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがATT(Ile) であるアリルとTTT(Phe)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(i3)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(i4)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Ile/Ile-Tyr/Tyr)
(i5)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルとCGA(Arg)であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Arg)、または前記アミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)およびCCA(Pro)のヘテロ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)およびCGA(Arg)アリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Gln/Pro-Gln/Arg)
(i6)配列番号16に示すTRAP1遺伝子がコードするアミノ酸配列における307番目のアミノ酸のコドンがCGT(Arg)であるアリルとGGT(Gly) であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型
(i8)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(i9)配列番号22に示すTP53遺伝子がコードするアミノ酸配列における72番目のアミノ酸のコドンがCCC (Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型
一方、前立腺癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に低い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、前立腺癌の発症リスクが低いと判定できる。
(i7)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における757番目のアミノ酸のコドンがCTT(Leu)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(i10)配列番号23に示すAXIN2遺伝子がコードするアミノ酸配列における50番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)であるアリルとTCT(Ser)であるであるアリルとのヘテロ型の遺伝子型
膵臓癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に高い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、膵臓癌の発症リスクが高いと判定できる。
(j1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(j3)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルとGCA(Ala)であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型と、前記アミノ酸配列における1131番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)アリルのホモ型である遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Ala-Pro/Pro)
(j4)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
(j6)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルとCGA(Arg)であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型(Gln/Arg)
(j7)配列番号15に示すCASP9遺伝子がコードするアミノ酸配列における28番目のアミノ酸のコドンがGCC(Ala)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(j8)配列番号16に示すTRAP1遺伝子がコードするアミノ酸配列における307番目のアミノ酸のコドンがGGT(Gly) であるアリルのホモ型の遺伝子型
(j9)配列番号21に示すWRN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1074番目のアミノ酸のコドンがTTG(Leu)であるアリルのホモ型の遺伝子型
一方、膵臓癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に低い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、膵臓癌の発症リスクが低いと判定できる。
(j2)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(j5)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルとATG(Met)であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型と、前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)またはGAC(Asp)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Ile/Met-Tyr/Tyr またはIle/Met-Asp/Asp)
胃癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に高い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、胃癌の発症リスクが高いと判定できる。
(k1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(k2)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGTT(Val)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(k4)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがATT(Ile) であるアリルとTTT(Phe)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
(k5)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルとGCA(Ala)であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型と、前記アミノ酸配列における1131番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)であるアリルとCAG(Gln)でありアリルとのヘテロ型である遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Ala-Pro/Gln)
(k6)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Ile/Ile-Tyr/Tyr)、並びに前記アミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがGAC(Asp)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Met/Met-Asp/Asp)
(k7)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)
一方、胃癌において、健常人群に対し患者群における出現頻度が有意に低い遺伝子型としては、以下の遺伝子型があげられ、被験者がこれらの遺伝子型を有する場合には、胃癌の発症リスクが低いと判定できる。
(k3)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
(k8)配列番号14に示すRASSF6遺伝子がコードするアミノ酸配列における163番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
[4] 癌発症危険率の予測方法
発症危険率を予測する癌を肺腺癌、肺扁平上皮癌、頭頸部癌、大腸癌、食道癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、および胃癌の中から選ぶ。[3]で挙げられたms-SNPの中から、選択した癌の発症危険率に関与するms-SNPを1つ以上選ぶ。選んだms-SNPについて、被験者の遺伝子型を[2]に記載した方法で調べる。発症危険率の指標となる数値としては、[3]で求められる選択した癌における該遺伝子型の出現頻度の尤度比またはオッズ比を用いることができる。ただし、母集団における出現頻度が50%をこえる遺伝子型については1とする。また、オッズ比が有意でない遺伝子型についても1としてもよい。
本発明においては、各々の癌種に関し、個人毎に統計学的に有意または有意に極めて近い多数のms-SNPについて同時に遺伝子型を調べてもよい。。複数のms-SNPについて重複を解析する場合は、それらが互いに独立事象であるとき、それぞれの遺伝子型の数値(オッズ比)を掛け合わせて得られる累積オッズ比(COR: cumulative odds ratio)で評価できる。得られた数値が1より大きいほど、発症危険率が高く、1より小さいほど発症危険率が低いことが予測できる。例えば、大腸癌に関する個々の遺伝子型のオッズ比が1.8, 2.0, 3.0 であるような3種の遺伝子型を重複して持つ個人は、累積オッズ比が10.8となり、これらを単独で持つ人に比べ高い発症危険率を示すと考えられる。
[5] SNPタイピングに用いるオリゴヌクレオチド
本発明によれば、前記の種々のSNPタイピング手法においてプローブまたはプライマーとして用いるオリゴヌクレオチドもまた提供される。
前記プローブとして用いられるオリゴヌクレオチドは、前記の対象遺伝子のms-SNP部位を含み、被検試料とハイブリダイズし、採用する検出条件下に検出可能な程度の特異性を与えるものである限り特に限定はされない。プローブは、必要に応じて、蛍光物質や放射性物質等の適当な手段により標識してもよい。プローブは、例えば前記の対象遺伝子のms-SNP部位を含む連続する少なくとも10塩基以上、好ましくは10〜100塩基の配列、より好ましくは10〜50塩基の配列、又はそれらの相補配列にハイブリダイズすることのできるオリゴヌクレオチドを用いることができる。また、一塩基多型部位がプローブのほぼ中心部に存在するようにオリゴヌクレオチドを選択するのが好ましい。該オリゴヌクレオチドは、プローブとして機能し得る限り、即ち、目的の対立遺伝子型の配列とハイブリダイズするが、他の対立遺伝子型の配列とはハイブリダイズしない条件下でハイブリダイズする限り、その配列において1又はそれ以上の置換、欠失、付加を含んでいてもよい。また、プローブには、RCA(rolling circle amplification)法による増幅に用いられる一本鎖プローブ(パドロックプローブ)のように、ゲノムDNAとアニールし、環状になることによって上記のブロープの条件を満たすプローブが含まれる。
本発明に用いるハイブリダイゼーション条件は、対立遺伝子型(アリル)を区別するのに十分な条件である。例えば、試料が一の対立遺伝子型の場合にはハイブリダイズするが、他の対立遺伝子型の場合にはハイブリダイズしないような条件、例えばストリンジェントな条件である。ここで、「ストリンジェントな条件」としては、例えば、例えば、モレキュラークローニング・ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Sambrook et al, 1989)に記載の条件等が挙げられる。具体的には、例えば、6xSSC(1xSSCの組成:0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5% SDS、5 xデンハート液及び100μg/mlニシン精子DNAを含む溶液中プローブとともに65℃で一晩保温するという条件等が挙げられる。
プローブは、一端を基板に固定してDNAチップとして用いることもできる。この場合、DNAチップには、一の対立遺伝子型に対応するプローブのみが固定されていても、両方の対立遺伝子型に対応するプローブが固定されていてもよい。
プライマー対としては、対象遺伝子におけるms-SNP部位を挟むように設計、合成された2つのオリゴヌクレオチド配列を有するものであることができる。
具体的には、後記実施例に示される配列番号29+(2n−1)(nは1〜33までの整数を示す)で示されるフォワードプライマーと、配列番号29+(2n)(nは1〜33までの整数を示す)で示されるリバースプライマーのセットを挙げることができる。
オリゴヌクレオチドは対象遺伝子の配列情報に基づいて常法に従って合成することができる。例えば、通常のホスホルアミダイト法、リン酸トリエステル法などの化学合成法によることもでき、また市販されている自動オリゴヌクレオチド合成装置、例えば(Pharmacia LKB Gene Assembler Plus: ファルマシア社製)などを使用して合成することもできる。二本鎖断片は、化学合成した一本鎖生成物とその相補鎖を合成し、両者を適当な条件下でアニーリングさせるか、または適当なプライマー配列とDNAポリメラーゼとを用いて、上記一本鎖生成物に相補鎖を付加させることによって得ることができる。
[6] 癌発症危険率判定用キット
肺腺癌、肺扁平上皮癌、頭頸部癌、大腸癌、食道癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、および胃癌の発症危険率を測定するためのキットには、上記[2]に記載した遺伝子型の決定方法に使用する各ms-SNPに対応したプライマーやプローブが含まれる。さらに、ms-SNPを含む領域のDNAを検体のゲノムDNAから増幅するためのプライマーセット、およびそれぞれの遺伝子型の決定に用いる反応に必要な酵素や緩衝液等の試薬類を含んでもよい。2種類以上の遺伝子のms-SNPを調べる場合は、1つの操作で、複数のms-SNPを同時にかつ容易に調べられるSNaPshot法、DNAチップを用いる法、ルミネックス・ビーズを用いる方法、TaqMan PCR法などが適している。
例えば、SNaPshot法を用いる試薬には、ms-SNPが存在する位置の5'側の直前にアニーリングするように設計した15〜50塩基のオリゴDNAプライマーが含まれる。さらに、伸長反応に必要な、塩基ごとに異なる標識をしたダイデオキシヌクレオチド、DNAポリメラーゼ、ポリメラーゼ反応用緩衝液を含むのが好ましい。2種類以上の遺伝子のms-SNPを同時に調べる場合には、プライマーの長さをそれぞれのms-SNPで変え、区別できるようにする。
DNAチップを利用する試薬では、ms-SNPの2種類のアリルの配列それぞれに特異的にハイブリダイズするように設計した15〜25塩基のオリゴDNAプローブをシリコンやガラス等の基盤に固定化したDNAチップ、検体DNA増幅のためのプライマーセットが含まれる。オリゴDNAプローブは、2種類のアリルの配列を区別してハイブリダイズできるように、ms-SNPの部位をほぼ中央に有し、15〜25塩基の長さのものが好ましい。
ルミネックス・ビーズを利用する試薬には、DNAチップのプローブと同様に設計したオリゴDNAプローブをそれぞれ固相化した異なる番号のビーズ、プローブと相補的な配列からなるビオチン化オリゴDNA、および検体DNA増幅のためのプライマーセットが含まれる。2種類以上の遺伝子のms-SNPを同時に調べる場合には、全て異なる番号のビーズを用いるようにする。
TaqMan PCR法を用いる試薬には、DNAチップのプローブと同様に設計し、5'と3'の両方に異なる蛍光標識を付加したオリゴDNAプローブ、および検体DNA増幅のためのプライマーセットが含まれる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)肺癌、頭頸部癌、大腸癌、乳癌、食道癌、前立腺癌、膵臓癌、および胃癌の発症危険率に関与するms-SNPの候補の選択
SNPデータベース、ヒトESTデータベースから、DNA修復及び癌化に関する遺伝子のms-SNPを検索した。結果として202遺伝子、302ヵ所のms-SNPを見出した。
これらのうち、45種の遺伝子を選択し、その中の下記の遺伝子について、マイナーなアリルの頻度が5%以上で存在し、上記の癌の何れかに関係するm-SNPが確定できた。
(第1群)TDG遺伝子、RAD18遺伝子、RAD23B遺伝子、SNM1B遺伝子、MAD1L1遺伝子、AURKA遺伝子、NIN遺伝子、NOB1P遺伝子、CEP152遺伝子、CEP192遺伝子、WISP3遺伝子、PTPN13遺伝子、PTPRJ遺伝子、RASSF6遺伝子、CASP9遺伝子、TRAP1遺伝子の16遺伝子(下記表1A、下記表1Bの番号1〜16)
(第2群)RAD17遺伝子、DUSP6遺伝子、EXO1遺伝子、ADH1B遺伝子の4遺伝子(下記表1Bの番号17〜20)
(第3群)WRN遺伝子、TP53遺伝子、AXIN2遺伝子、PCNT2遺伝子、HER2遺伝子、ERBIN遺伝子、PTPN12遺伝子、BARD1遺伝子、及びIRAK1遺伝子の9遺伝子(下記表1Bの番号21〜29)
第2群のRAD17遺伝子、EXO1遺伝子、DUSP6遺伝子、ADH1B遺伝子の4遺伝子については、本発明者により既に肺癌や頭頸部癌の発症危険率との関係が報告されているが、大腸癌、食道癌、および乳癌の発症危険率との関連が今回新たに見出された。
Figure 2008048733
Figure 2008048733
前記の計29種の遺伝子に関するcDNA情報、SNP情報を下記表2にまとめて示す。
Figure 2008048733
ms-SNPのアリル頻度を調べるための検体としては、健常人匿名化検体、インフォームドコンセントを得た癌患者の検体および癌細胞株を用いた。健常人匿名化検体としては、匿名化した健常人から採取した血液から分離した末梢血単核球を用いた。癌患者の検体は、癌(肺癌、頭頸部癌、大腸癌、食道癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、および胃癌)患者から岡山大学附属病院において手術により摘出した癌部を含む組織の非癌部、または血液から分離した末梢血単核球を用いた。同病院病理部の複数の病理医により、肺癌は肺腺癌、肺扁平上皮癌のどちらかに診断された。頭頸部癌は全て扁平上皮癌であった。
これらの検体から、以下のようにしてゲノムDNAを調製した。まず、検体を10 mM Tris-10 mM EDTA (pH7.5)に懸濁し、SDSを0.1%、プロテイナーゼKを100μg/mlの濃度になるようにそれぞれ添加し、37℃で12時間消化した。反応後の溶液をTrisバッファーで飽和したフェノールで抽出し、水層をクロロフォルム抽出した後、エタノール沈殿を行った。遠心分離により得られたゲノムDNAを、70%エタノールで洗浄後、10 mM Tris-1 mM EDTA (pH 7.5) に溶解した。ゲノムDNAの量は紫外線吸収法で定量した。このゲノムDNAを用いて以下の実施例2〜21、および23〜47に記載した方法により遺伝子型の解析を行い、アリル頻度および癌発症危険度(オッズ比など)を求めた。
(実施例2)TDG遺伝子のms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
TDG遺伝子については、RFLP法を用いて、コードする367番目のアミノ酸のコドンがGTG (バリン;Val)とATG (メチオニン;Met)のどちらであるかを調べた。すなわち、ATGの場合は、制限酵素Nla IIIの認識配列(CATG)となり、Nla IIIで切断されるが、GTGの場合にはNla IIIの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がNla IIIでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺腺癌患者109例、肺扁平上皮癌患者47例、頭頸部癌患者63例、大腸癌患者113例、食道癌患者67例、ならびに年齢、性比、喫煙歴を患者集団とマッチさせた健常人(以下、標準化した健常人という)200例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずTDG遺伝子の第9イントロン後部と第10エクソンの中央部それぞれの配列からなる下記のプライマーセット#1(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、これらのゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを62℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #1
TDG-ex10-S1: 5’- GGGCGATAGAGTAAGACCCAG(配列番号30)
TDG-ex10-AS1: 5’- GCTTTCTTCTTCCTGTTCTTGTG(配列番号31)
222bpのPCR増幅産物を制限酵素Nla III〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Nla IIIによる切断を受けない222bpのバンドが現れた場合には、TDG遺伝子がコードする367番目のアミノ酸がバリン(コドンGTG)であるアリル(以下、バリン型アリルとする)と判定し、Nla IIIによって切断された99bpと123bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がメチオニン(コドンATG)であるアリル(以下、メチオニン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、TDG遺伝子第367コドンのバリン型アリルのホモ型(Val/Val)、メチオニン型アリルのホモ型(Met/Met)および両アリルのヘテロ型(Val/Met)の各遺伝子型のオッズ比および95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表3に示すように、健常人群に対する肺腺癌患者群におけるメチオニン型アリルのホモ型の遺伝子型のオッズ比は2.73、95%信頼区間は1.12から6.02となり、健常人群と肺腺癌患者群の2群間において統計学的有意差で高リスクが認められた。同様に、健常人群と肺扁平上皮癌患者群との間及び健常人群と食道癌患者群との間にも統計学的有意差が認められた[各々(Met/Met型のオッズ比:4.07,信頼区間:1.58-10.5)及び(Met/Met型のオッズ比:3.01,信頼区間:1.22-7.46)]。ほかの頭頸部癌や大腸癌患者では有意差は見られなかったが、同じMet/Metホモ型が大腸癌の発症を抑制する傾向が見られた(オッズ比:0.45, 95%信頼区間:0.20-1.05)。よって、TDG遺伝子の第367番コドンの遺伝子型が、メチオニン型アリルのホモ型であることは、肺腺癌、肺扁平上皮癌並びに食道癌の発症危険率を高める遺伝的要因となることが明らかとなった。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約 6%、約750 万人存在すると推定される。
Figure 2008048733
(実施例3)RAD18遺伝子のms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
RAD18遺伝子については、RFLP変法を用いて、コードする302番目のアミノ酸のコドンがCGA(アルギニン;Arg)とCAA(グルタミン;Gln)のどちらであるかを調べた。すなわち、CGAの場合は、制限酵素Bst BIの認識配列(TTCGAA)となり、Bst BIで切断されるが、CAAの場合にはBst BIの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がBst BIでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺腺癌患者108例、肺扁平上皮癌患者47例、頭頸部癌患者61例、大腸癌患者113例、食道癌患者67例、および標準化した健常人197例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずRAD18遺伝子のイントロン7と第8エクソン中央部にある該SNP 部位直下(1塩基変異を導入)それぞれの配列からなる下記のプライマーセット#2(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを60℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #2
RAD18-Ex8-S1: 5’- ATACCCATCACCCATCTTCTTC(配列番号32)
RAD18-Ex8-AS3: 5’- TAGTCTTCTCTATATTTTCGATTTTT(配列番号33)
148bpのPCR増幅産物を制限酵素Bst BI〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Bst BIによる切断を受けない148bpのバンドが現れた場合には、RAD18遺伝子がコードする302番目のアミノ酸がグルタミン(コドンCAA)であるアリル(以下、グルタミン型アリルとする)と判定し、Bst BIによって切断された128bpと28bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がアルギニン(コドンCGA)であるアリル(以下、アルギニン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、RAD18遺伝子第302コドンのアルギニン型アリルのホモ型(Arg/Arg)、グルタミン型アリルのホモ型(Gln/Gln)および両アリルのヘテロ型(Arg/Gln)の各遺伝子型のオッズ比および95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表4に示すように、健常人群に対する肺扁平上皮癌患者群におけるアルギニン型アリルのホモ型(Arg/Arg)の遺伝子型のオッズ比は0.34、95%信頼区間は0.18から0.74となり1をまたがないため、健常人群と肺扁平上皮癌患者群の2群間において統計学的有意差が認められた。オッズ比の0.34はこの遺伝子型以外の遺伝子型の人の肺扁平上皮癌に対する発症危険率を1とした時、Arg/Argの遺伝子型の人はその発症危険率が約三分の一となることを意味する。肺腺癌では有意に達しなかったが、肺腺癌と扁平上皮癌を合わせた全肺癌(非小細胞肺癌)でも有意なデータとなった(アルギニン型アリルのホモ遺伝子型のオッズ比:0.55, 95%信頼区間:0.35-0.88)。ほかの3種の癌でも統計学的に有意差に近い保護的傾向が見られた(表4未記載:頭頸部癌オッズ比:0.55, 95%信頼区間0.300-1.04)。よって、RAD18遺伝子第302コドンの遺伝子型が、アルギニン型アリルのホモ型であることは、肺癌、特に肺扁平上皮癌の発症危険率を低下させる遺伝的要因、すなわち保護的多型となることが明らかとなり、ほかの癌に対しても若干の保護的効果をもたらすと示唆された。因みにこの遺伝子型を持つ人は日本人の39%、約4,900万人存在すると推定される。
Figure 2008048733
(実施例4)RAD23B遺伝子のms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
RAD23B遺伝子については、RFLP法を用いて、コードする249番目のアミノ酸のコドンがGCT(アラニン;Ala)とGTT(バリン;Val)のどちらであるかを調べた。即ち、GCTの場合は、制限酵素Ban IIの認識配列(GGGCTC)となり、Ban IIで切断されるが、GTTの場合にはBan IIの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がBan IIでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺腺癌患者104例、肺扁平上皮癌患者44例、頭頸部癌患者63例、大腸癌患者113例、食道癌患者67例、および標準化した健常人197例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずRAD23B遺伝子の第6イントロン最後部と第7イントロンの先端部それぞれの配列からなる下記のプライマーセット#3(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型として第7エクソンのPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを62℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行った。
Primer Set #3
RAD23B-ex7-S1: 5’- CCCTGGAGATAGAGAAAGTCAG(配列番号34)
RAD23B-ex7-AS1: 5’- CCATTCCCTCCCCATCCAGA(配列番号35)
222bpのPCR増幅産物を制限酵素Ban II〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。内部にある共通のBan II切断部位から生じる57 bpのバンドの他に、該多型の位置でBan IIによる切断を受けない165bpのバンドが現れた場合には、RAD23B遺伝子がコードする249番目のアミノ酸がバリン(コドンGTT)であるアリル(以下、バリン型アリルとする)と判定し、Ban IIによって切断された61bpと104bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がアラニン(コドンGCT)であるアリル(以下、アラニン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、RAD23B遺伝子第249コドンのアラニン型アリルのホモ型(Ala/Ala)、バリン型アリルのホモ型(Val/Val))および両アリルのヘテロ型(Ala/Val)の各遺伝子型のオッズ比および95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表5に示すように、健常人群に対する頭頸部癌患者群におけるバリン型アリルのホモ型の遺伝子型のオッズ比は8.41、95%信頼区間は1.59から44.5となり、健常人群と頭頸部癌患者群の2群間において統計学的有意差で極めて高いリスクが認められた(P= 0.0102)。また、健常人群と食道癌患者群との間ではアラニン/バリンヘテロ型の分布に統計学的有意差が認められた(Ala/Val型のオッズ比:1.88, 95%信頼区間:1.07-3.31)。健常人群とほかの癌患者群の間では明確な有意差は見られなかったが、アラニン/バリンヘテロ型が肺腺癌と大腸癌の発症リスクを促進する傾向が見られた。よって、RAD23B遺伝子の第249番コドンの遺伝子型が、バリン型アリルのホモ型であることは頭頸部癌の、アラニン/バリン型のヘテロ型であることは食道癌の発症危険率を高める遺伝的要因となることが明らかとなった。因みに前者の遺伝子型を持つ人は我が国に約4%、約480万人、後者は約27%, 約3,400万人存在すると推定される。
Figure 2008048733
(実施例5)SNM1B遺伝子のms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
SNM1B遺伝子については、RFLP法を用いて、コードする61番目のアミノ酸のコドンがTAC(チロシン;Tyr)とCAC(ヒスチジン;His)のどちらであるかを調べた。即ち、CACの場合は、制限酵素Hph Iの認識配列(TCACC)となり、Hph Iで切断されるが、TACの場合にはHph Iの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がHph Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺腺癌患者101例、肺扁平上皮癌患者52例、頭頸部癌患者84例、食道癌患者63例、および標準化した健常人201例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずSNM1B遺伝子の第1エクソン先端部と第1イントロンの先端部それぞれの配列からなる下記のプライマーセット#4(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型として第1エクソンのPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを63℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行った。
Primer Set #4
SNM1B-Ex1-S1: 5’-TGGACTTCTGGAGCCTGCGC(配列番号36)
SNM1B-Ex1-AS1: 5’-CACGTTCCTATTCTGGGTTAAAG(配列番号37)
306bpのPCR増幅産物を制限酵素Hph I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Hph Iによる切断を受けない306bpのバンドが現れた場合には、SNM1B遺伝子がコードする61番目のアミノ酸がチロシン(コドンTAC)であるアリル(以下、チロシン型アリルとする)と判定し、Hph Iによって切断された135bpと171bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がヒスチジン(コドンCAC)であるアリル(以下、ヒスチジン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、SNMB1遺伝子第61コドンのチロシン型アリルのホモ型(Tyr/Tyr)、ヒスチジン型アリルのホモ型(His/His))および両アリルのヘテロ型(Tyr/His)の各遺伝子型のオッズ比および95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表6に示すように、健常人群に対する肺腺癌患者群におけるヒスチジン型アリルのホモ型の遺伝子型のオッズ比は0.49、95%信頼区間は0.24から1.00となり、健常人群と肺腺癌患者群の2群間において統計学的有意差をもって保護的作用が認められた。しかし、同じ肺癌でも肺扁平上皮癌の場合は、統計学的有意レベルに僅かに及ばないものの、ヒスチジン型アリルのホモ型は癌発症に促進的作用を示した(オッズ比:2.27, 95%信頼区間:0.97-5.23)。また、健常人群と頭頸部癌患者群との間ではチロシン型アリルのホモ型が統計学的近有意差で高リスクの傾向が認められた(Tyr/Tyr型のオッズ比:1.47, 95%信頼区間:0.87-2.47)。健常人群とほかの癌患者群の間では明確な有意差は見られなかった。よって、SNM1B遺伝子の第61番コドンの遺伝子型がヒスチジン型アリルのホモ型であることは肺腺癌の発症を抑制するが、同じ遺伝子型は肺扁平上皮癌の発症危険率を、またチロシン型アリルのホモ型は頭頸部癌の発症危険率を高める傾向を示すことが明らかとなった。因みに前者の遺伝子型を持つ人は我が国に約20%、約2,500万人、後者は約34%, 約4,200万人存在すると推定される。
Figure 2008048733
(実施例6)MAD1L1遺伝子のms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
MAD1L1遺伝子については、RFLP法を用いて、コードする558番目のアミノ酸のコドンがCGC(アルギニン;Arg)とCAC(ヒスチジン;His)のどちらであるかを調べた。即ち、CGCの場合は制限酵素Bst U1の認識配列(CGCG)となり、Bst U1で切断されるが、CACの場合にはBst U1の認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がBst U1でこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺腺癌患者104例、肺扁平上皮癌患者47例、頭頸部癌患者62例、大腸癌患者113例、食道癌患者67例、および標準化した健常人197例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずMAD1L1遺伝子の第17イントロン最後部と第18エクソンの中央部それぞれの配列からなる下記のプライマーセット#5(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型として第18エクソンのPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを62℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行った。
Primer Set #5
MAD1L1-Ex18-S1: 5’-CTGTGCTGTGTGTGTTCCTGC(配列番号38)
MAD1L1-Ex18-AS1: 5’-CGGTGCCTCCTCTCTCCATG(配列番号39)
177bpのPCR増幅産物を制限酵素Bst U1〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。該ms-SNP 部位でBst U1による切断を受けない142bpのバンドが現れた場合には、MAD1L1遺伝子がコードする558番目のアミノ酸がヒスチジン(コドンCAC)であるアリル(以下、ヒスチジン型アリルとする)と判定し、Bst U1によって切断された100bpと42bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がアルギニン(コドンCGC)であるアリル(以下、アルギニン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、MAD1L1遺伝子第558コドンのアルギニン型アリルのホモ型(Arg/Arg)、ヒスチジン型アリルのホモ型(His/His)および両アリルのヘテロ型(Arg/His)の各遺伝子型のオッズ比並びに95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表7に示すように、健常人群に対する肺扁平上皮癌患者群におけるアルギニン型アリルのホモ型の遺伝子型のオッズ比は3.93、95%信頼区間は1.38から11.2となり、健常人群と肺扁平上皮癌患者群の2群間において統計学的有意差をもって高リスクが認められた(P= 0.0076)。また、同じ遺伝子型は頭頸部癌および食道癌の発症率でも高リスクの傾向が認められた。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約29%, 約3,600万人存在すると推定される。一方、MAD1L1遺伝子第558コドンのヒスチジン型アリルのホモ型(His/His)は、大腸癌の発症危険度促進に明確な有意差が見られ(オッズ比:2.24, 95%信頼区間:1.20-4.21, P = 0.012)、他の癌種と際立った対照を見せた。以上のように、MAD1L1遺伝子の第558番コドンの遺伝子型が、アルギニン型アリルのホモ型であることは肺扁平上皮癌の、ヒスチジン型のホモ型であることは大腸癌の発症危険率を高める遺伝的要因となることが明らかとなった。
Figure 2008048733
(実施例7)AURKA遺伝子第3エクソンのms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
AURKA遺伝子 (STK6, STK15 とも呼ばれる)については、RFLP法を用いて、コードする31番目のアミノ酸のコドンがATT(イソロイシン;Ile)とTTT(フェニルアラニン;Phe)のどちらであるかを調べた。即ち、ATTの場合は制限酵素Apo Iの認識配列(PuAATTPy)となりApo Iで切断されるが、TTTの場合にはApo Iの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅した後、増幅DNA断片がApo Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺腺癌患者104例、肺扁平上皮癌患者43例、頭頸部癌患者63例、大腸癌患者113例、食道癌患者67例、および標準化した健常人246例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずAURKA遺伝子の第2イントロン最後部と第3イントロンの先端部それぞれの配列からなる下記のプライマーセット#6(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型として第3エクソンのPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを61℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行った。
Primer Set #6
STK6-EX3-S1: 5’-TTTATTTTCTCTTCCATTCTAGGC(配列番号40)
STK6-Ex3-AS3: 5’-ACGACGACAAAGAAGGACTATC(配列番号41)
346 bpのPCR増幅産物を制限酵素Apo I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。内部にあるApo I切断部位から生じる213 bpのバンドの他に、該ms-SNP 部位でApo Iによる切断を受けない133bpのバンドが現れた場合には、AURKA遺伝子がコードする31番目のアミノ酸がフェニルアラニン(コドンTTT)であるアリル(以下、フェニルアラニン型アリルとする)と判定し、Apo Iによって切断された69bpと64bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がイソロイシン(コドンATT)であるアリル(イソロイシン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、AURKA遺伝子第31コドンのイソロイシン型アリルのホモ型(Ile/Ile)、フェニルアラニン型アリルのホモ型(Phe/Phe)および両アリルのヘテロ型(Ile/Phe)の各遺伝子型のオッズ比並びに95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表8に示すように、健常人群に対する肺腺癌患者群におけるフェニルアラニン型アリルのホモ型の遺伝子型のオッズ比は0.23、95%信頼区間は0.07から0.78となり、健常人群と肺腺癌患者群の2群間において統計学的有意差をもって保護的効果が認められた(P=0.012)。また、同じ遺伝子型は肺扁平上皮癌の発症率では統計学的有意差を示さなかったが、肺腺癌と肺扁平上皮癌を合計した全肺癌では有意に保護的効果が認められた(P=0.0048)。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約11%, 約1,370万人存在すると推定される。
一方、AURKA遺伝子第31コドンのイソロイシン/フェニルアラニン型アリルのヘテロ型(Ile/Phe)は、食道癌の発症を明確な有意差で抑制する。下記表8では食道癌についてIle/Ile ホモ型のオッズ比が高いことが示されているが、この場合は全国民の約半数が高リスクということになり、現実的ではないので、ヘテロ型を保護的遺伝子型とした。このことは以前から多数の報告があり、公知の事実であるが、本研究では同じms-SNPが肺癌の発症に関して保護的作用を示すこと、しかも食道癌等で観察された遺伝子型と異なる遺伝子型が関与することを発見した。以上のように、AURKA遺伝子の第31番コドンの遺伝子型が、フェニルアラニン型アリルのホモ型であることは肺癌、特に肺腺癌の発症を抑制する効果があることが明らかとなった。また同遺伝子多型のヘテロ型は食道癌の発症を抑制することを確認したが、他の肺扁平上皮癌、頭頸部癌、大腸癌については無関係であった。
Figure 2008048733
(実施例8)NIN遺伝子のms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
NIN遺伝子については、第18エクソンに存在する二箇所のms-SNP(コドン1117 とコドン1131)を同時に解析した。肺腺癌患者108例、肺扁平上皮癌患者47例、大腸癌患者113例、食道癌患者67例、および標準化した健常人195例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずNIN遺伝子の第18エクソン内部でコドン1117とコドン1131を共に含むDNA領域をPCR増幅した。実際には第18エクソン内で第1117コドン上流部分と第1131コドン下流部分それぞれの配列からなる下記のプライマーセット#7(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、これらのゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを64℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行った。
Primer Set #7
NIN-Ex18-S1: 5’-GGAAAATGTGAAAATGGCTACTGA(配列番号42)
NIN-Ex18-AS1: 5’-CTTCGTTCGGTTTTGCTGTAAAACC(配列番号43)
得られた163bpのPCR増幅断片を検体として、コドン1117 とコドン1131の各々に特有な制限酵素によるRFLP法を用いて、各コドンの遺伝子型を解析した。
1)コドン1117:本遺伝子がコードする1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(プロリン;Pro)とGCA(アラニン;Ala)のどちらであるかを調べた。即ち、GCAの場合は制限酵素Mnl Iの認識配列(GAGG)となりMnl Iで切断されるが、CCAの場合にはMnl Iの認識配列にはならないことを利用し、増幅DNA断片がMnl Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
163 bpのPCR増幅産物を制限酵素Mnl I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。該ms-SNP 部位でMnl Iによる切断を受けない163bpのバンドが現れた場合には、NIN遺伝子がコードする1117番目のアミノ酸がプロリン(コドンCCA)であるアリル(以下、プロリン型アリルとする)と判定し、Mnl Iによって切断された85bpと78bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がアラニン(コドンGCA)であるアリル(以下、アラニン型アリル)と判定した。
2)コドン1131:本遺伝子がコードする1131番目のアミノ酸のコドンがCCG(プロリン;Pro)とCAG(グルタミン;Gln)のどちらであるかを調べた。即ち、CCGの場合は制限酵素Hpa IIの認識配列(CCGG)となりHpa IIで切断されるが、CAGの場合にはHpa IIの認識配列にはならないことを利用し、増幅DNA断片がHpa IIでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
163 bpのPCR増幅産物を制限酵素Hpa II〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。該ms-SNP 部位でHpa IIによる切断を受けない163bpのバンドが現れた場合には、NIN遺伝子がコードする1131番目のアミノ酸がグルタミン(コドンCAG)であるアリル(以下、グルタミン型アリルとする)と判定し、Hpa IIによって切断された138bpと25bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がプロリン(コドンCCG)であるアリル(以下、プロリン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、NIN遺伝子第1117コドンのプロリン型アリルのホモ型(Pro/Pro)、アラニン型アリルのホモ型(Ala/Ala)および両アリルのヘテロ型(Pro/Ala)の各遺伝子型のオッズ比並びに95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。同様に、NIN遺伝子第1131コドンのプロリン型アリルのホモ型(Pro/Pro)、グルタミン型アリルのホモ型(Gln/Gln)および両アリルのヘテロ型(Pro/Gln)の各遺伝子型のオッズ比並びに95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表9Aに示すように、NIN遺伝子第1117コドンに関しては、健常人群に対する肺腺癌患者群におけるプロリン/アラニン型両アリルのヘテロ型の遺伝子型のオッズ比は2.16、95%信頼区間は1.31から3.59となり、健常人群と肺腺癌患者群の2群間において統計学的有意差をもって高リスクが認められた(P=0.0038)。また、同じ遺伝子型は肺扁平上皮癌の発症率では統計学的有意差を示さなかったが、肺腺癌と肺扁平上皮癌を合計した全肺癌でも有意に高リスクが認められた (オッズ比:1.73, P=0.024)。なお、この遺伝子型を持つ人は我が国に約24%, 約3,000万人存在すると推定される。他の癌種では有意な結果は得られなかったが、近有意な結果として、大腸癌の発症危険度はこのアリルのうち少なくとも1つのアラニン型アリルを含む遺伝子型が約1.7倍の値を示した。
一方、下記表9Bに示すように、NIN遺伝子第1131コドンに関しては、ヘテロ型(Pro/Gln)が肺腺癌の発症危険度を高めたが(オッズ比:1.78, P=0.028)、マイナーアリルホモ型(Gln/Gln)が肺扁平上皮癌のリスクを上昇させた(オッズ比:2.73, 95%信頼区間:1.01-7.36)。
以上のように、NIN遺伝子の第1117または1131番コドンの遺伝子型が、両アリルのヘテロ型であることは肺癌、特に肺腺癌の発症を促進する効果があることが明らかとなった。また同遺伝子第1131コドンのマイナーアリル(グルタミン型)のホモ型を持つ人は肺扁平上皮癌の発症危険度が高いことが明らかになった。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約6 %, 約750万人存在すると推定される、なお、第1131コドンのSNPに関しては他の食道癌、大腸癌では無関係であった。
Figure 2008048733
Figure 2008048733
(実施例9)NOB1P遺伝子のms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
NOB1P遺伝子については、RFLP法を用いて、コードする231番目のアミノ酸のコドンがCGG(アルギニン;Arg)とCAG(グルタミン;Gln)のどちらであるかを調べた。すなわち、CAGの場合は、制限酵素Bfu AIの認識配列(GCAGGT)となり、Bfu AIで切断されるが、CGGの場合にはBfu AIの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がBfu AIでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺腺癌患者109例、肺扁平上皮癌患者52例、頭頸部癌患者91例、大腸癌患者113例、および標準化した健常人202例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずNOB1P遺伝子の第6エクソン中央部とイントロン6との境界部分それぞれの配列からなる下記のプライマーセット#8(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを63℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #8
NOB1P-Ex6-S1: 5’-GAGGAGGAGGAAGAAAACGGG(配列番号44)
NOB1P-Ex6-AS1: 5’-GGCCCACCCTACCCACTTGCA(配列番号45)
184bpのPCR増幅産物を制限酵素Bfu AI〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Bfu AIによる切断を受けない184bpのバンドが現れた場合には、NOB1P遺伝子がコードする231番目のアミノ酸がアルギニン(コドンCGG)であるアリル(以下、アルギニン型アリルとする)と判定し、Bfu AIによって切断された125bpと59bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がグルタミン(コドンCAG)であるアリル(以下、グルタミン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、NOB1P遺伝子第231 コドンがアルギニン型アリルのホモ型(Arg/Arg)、グルタミン型アリルのホモ型(Gln/Gln)および両アリルのヘテロ型(Arg/Gln)の各遺伝子型のオッズ比および95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表10に示すように、健常人群に対する肺扁平上皮癌患者群における両アリルのヘテロ型の遺伝子型のオッズ比は2.43、95%信頼区間は1.27から4.85となり、健常人群と肺扁平上皮癌患者群の2群間において統計学的有意差が認められた。同様に、健常人群と食道癌患者群との間にも統計学的有意差が認められた(ヘテロ型のオッズ比:2.43、95%信頼区間:1.32-4.45)が、ほかの癌では有意差は見られなかった。ただし、大腸癌や頭頸部癌でもヘテロ型が有意に近い高リスクを示した。よって、NOB1P遺伝子第231コドンの遺伝子型が、アルギニン型とグルタミン型アリルのヘテロ型であることは、肺扁平上皮癌並びに食道癌の発症危険率を高める遺伝的要因となり、大腸癌や頭頸部癌でも同じ傾向であることが明らかとなった。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に22%、約2,750 万人存在すると推定される。有意差を示した上記2種の癌は共に扁平上皮癌であるという共通性があり、他の癌との違いが意味を持つことが示唆された。
Figure 2008048733
(実施例10)CEP152遺伝子のms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
CEP152遺伝子(KIAA0912 とも呼ばれる)については、RFLP法を用いて、コードする54番目のアミノ酸のコドンがTCG(セリン;Ser)とTTG(ロイシン;Leu)のどちらであるかを調べた。即ち、TCGの場合は制限酵素Bst BIの認識配列(TTCGAA)となりBst BIで切断されるが、TTGの場合にはBst BIの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅した後、増幅DNA断片がBst BIでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺腺癌患者109例、肺扁平上皮癌患者47例、頭頸部癌患者63例、大腸癌患者113例、食道癌患者67例、および標準化した健常人200例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずCEP152遺伝子の第2イントロン最後部と第3エクソンのコドン54直下の部分(1塩基変異を導入)それぞれの配列からなる下記のプライマーセット#9(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型として第3エクソンのPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを62℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行った。
Primer Set #9
CEP152-Ex3-S1: 5’-TGATATTGATGCAGACCTTTTGAC(配列番号46)
CEP152-Ex3-AS1: 5’-TGTGCCATCCTCGCTGCAGTTC(配列番号47)
124 bpのPCR増幅産物を制限酵素Bst BI〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。該ms-SNP 部位でBst BIによる切断を受けない124bpのバンドが現れた場合には、CEP152遺伝子がコードする54番目のアミノ酸がロイシン(コドンTTG)であるアリル(以下、ロイシン型アリルとする)と判定し、Bst BIによって切断された101bpと23bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がセリン(コドンTCG)のアリル(以下、セリン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、CEP152遺伝子第54コドンのロイシン型アリルのホモ型(Leu/Leu)、セリン型アリルのホモ型(Ser/Ser)および両アリルのヘテロ型(Leu/Ser)の各遺伝子型のオッズ比並びに95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表11に示すように、健常人群に対する肺扁平上皮癌患者群における少なくとも1個のロイシン型アリルを持つ遺伝子型のオッズ比は1.98、95%信頼区間は1.02から3.85となり、健常人群と肺扁平上皮癌患者群の2群間において統計学的有意差をもって高リスクが認められた。又、大腸癌の発症危険度に関しても同じ遺伝子型で同様の傾向が見られた。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約25%, 約3,100万人存在すると推定される。一方、CEP152遺伝子第54コドンのロイシン型アリルのホモ型(Leu/Leu)は、食道癌の発症を統計学的に近有意差で促進する傾向が見られた(オッズ比: 4.97)。他の癌種に関してはどの遺伝子型も発症危険度に関連は認められなかった。以上のように、CEP152遺伝子の第54番コドンの遺伝子型が、少なくとも1個のロイシン型アリルを含むことは肺扁平上皮癌の発症を促進する効果があることが明らかとなった。
Figure 2008048733
(実施例11)CEP192遺伝子第19エクソンのms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
CEP192遺伝子 (KIAA1569 とも呼ばれる)については、RFLP法を用いて、コードする956番目のアミノ酸のコドンがCCC (プロリン;Pro)とTCC (セリン;Ser)のどちらであるかを調べた。即ち、TCCの場合は制限酵素Hinf Iの認識配列(GANTC)となりHinf Iで切断されるが、CCCの場合にはHinf Iの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅した後、増幅DNA断片がHinf Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺腺癌患者109例、肺扁平上皮癌患者48例、頭頸部癌患者63例、大腸癌患者113例、食道癌患者67例、および標準化した健常人202例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずCEP192遺伝子の第19エクソン先端部と第19イントロンの先端部それぞれの配列からなる下記のプライマーセット#10(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型として第19エクソンのPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを62℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行った。
Primer Set #10
CEP192-Ex19-S1: 5’-TAGCCTGGCGCTGTTTCACGT(配列番号48)
CEP192-Ex19-AS1: 5’-AAGCCAGTTCTCTCCCACCTG(配列番号49)
155 bpのPCR増幅産物を制限酵素Hinf I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。該ms-SNP 部位でHinf Iによる切断を受けない155bpのバンドが現れた場合には、CEP192遺伝子がコードする956番目のアミノ酸がプロリン(コドンCCC)であるアリル(以下、プロリン型アリルとする)と判定し、Hinf Iによって切断された32bpと123bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がセリン(コドンTCC)のアリル(以下、セリン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、CEP192遺伝子第956コドンのプロリン型アリルのホモ型(Pro/Pro)、セリン型アリルのホモ型(Ser/Ser)および両アリルのヘテロ型(Pro/Ser)の各遺伝子型のオッズ比並びに95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表12に示すように、健常人群に対する肺腺癌患者群におけるセリン型アリルをホモで持つ遺伝子型のオッズ比は11.8、95%信頼区間は1.39から99.5となり、肺肺腺癌患者群において統計学的有意差をもって極めて高いリスクが認められた。肺扁平上皮癌の発症危険度はこの遺伝子多型と無関係であったが、肺扁平上皮癌と肺腺癌を合計した全肺癌については、肺腺癌と同様にSer/Serホモ型が高いリスクを統計学的有意で示した(オッズ比:9.55)。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約1%, 約125万人存在すると推定される。一方、CEP192遺伝子第956コドンのプロリン型とセリン型アリルのヘテロ型(Pro/Ser)は、頭頸部癌の発症を統計学的に近有意差で抑制する傾向が見られた(オッズ比: 0.50)。他の癌種に関してはどの遺伝子型も発症危険度に関連は認められなかった。以上のように、CEP192遺伝子の第956番コドンの遺伝子型がセリン型アリルのホモ型であることは、肺癌、特に肺腺癌の発症リスクを増大させる効果があることが明らかとなった。
Figure 2008048733
(実施例12)WISP3遺伝子のms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
WISP3遺伝子については、RFLP法を用いて、コードする56番目のアミノ酸のコドンがCAG(グルタミン)とCAT (ヒスチジン)のどちらであるかを調べた。即ち、CAGの場合は制限酵素Dde Iの認識配列(CTNAG)となりDde Iで切断されるが、CATの場合にはDde Iの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅した後、増幅DNA断片がDde Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺腺癌患者107例、肺扁平上皮癌患者47例、頭頸部癌患者63例、大腸癌患者113例、食道癌患者67例、および標準化した健常人195例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずWISP3遺伝子の第3エクソン内部で第56コドンを挟む上流部と下流部それぞれの配列からなる下記のプライマーセット#11(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型として第3エクソンのPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを60℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行った。
Primer Set #11
WISP3-Ex3-S1: 5’-ACAGTTTTGTCACTGGCCCTG(配列番号50)
WISP3-Ex3-AS1: 5’-AGATTTCCCCTGGTTGCTTGG(配列番号51)
122 bpのPCR増幅産物を制限酵素Dde I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。該ms-SNP 部位でDde Iによる切断を受けない122bpのバンドが現れた場合には、WISP3遺伝子がコードする56番目のアミノ酸がヒスチジン(コドンCAT)であるアリル(以下、ヒスチジン型アリルとする)と判定し、Dde Iによって切断された30bpと92bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がグルタミン(コドンCAG)のアリル(以下、グルタミン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、WISP3遺伝子第56コドンのグルタミン型アリルのホモ型(Gln/Gln)、ヒスチジン型アリルのホモ型(His/His)および両アリルのヘテロ型(Gln/His)の各遺伝子型のオッズ比並びに95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表13に示すように、肺癌患者群における少なくとも1個のヒスチジン型アリルを持つ遺伝子型の健常人群に対するオッズ比は1.70〜2.54、95%信頼区間は1.0以上となり、肺癌患者群において統計学的有意差をもって高いリスクが認められた。特に肺扁平上皮癌の発症危険度が高く(オッズ比:2.54)、肺扁平上皮癌と肺腺癌を合計した全肺癌および肺腺癌についても、同遺伝子型が統計学的有意を示した。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約41%, 約5,000万人存在すると推定され、その頻度が格段に高いことから我が国における肺癌の発症に大きなインパクトを持つと考えられる。一方、WISP3遺伝子第56コドンのms-SNPは、他の癌種に関してはどの遺伝子型も発症危険度に関連は認められなかった。以上のように、WISP3遺伝子の第56番コドンの遺伝子型が少なくとも1個のヒスチジン型アリルを持つ遺伝子型であることは、肺癌、特に肺扁平上皮癌の発症リスクを増大させる効果があることが明らかとなった。
Figure 2008048733
(実施例13)PTPN13遺伝子のms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
(A) PTPN13遺伝子の第1527, 第2086コドンの解析
PTPN13遺伝子については、第28エクソンと第38エクソンに存在する二箇所のms-SNP(コドン1527 とコドン2086)を同時に解析した。肺腺癌患者101例、肺扁平上皮癌患者51例、頭頸部癌患者94例、大腸癌患者110例、食道癌患者65例、および標準化した健常人196例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずPTPN13遺伝子第28エクソン内のコドン1527を含むDNA領域と第38エクソン内のコドン2086を含むDNA領域とを個別にPCR増幅した。実際には第27イントロンと第28エクソン内の領域 (プライマーセット#12A)および第37イントロンと第38イントロン内の領域 (プライマーセット#12B)それぞれの配列からなる下記のプライマー(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、これらのゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを62℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行った。
Primer Set #12A
PTPN13-Ex28-S: 5’-GCTATAAATACGGGAAAATGGGC(配列番号52)
PTPN13-Ex28-AS: 5’-CATCAATTTTTCCACTTTCTGCTG(配列番号53)
Primer Set #12B
PTPN13-Ex38-S: 5’-CTTGTCCCTTTCTCGTGTCAAT(配列番号54)
PTPN13-Ex38-AS: 5’-ATGAATGAGGAACAGAAGAAGAAC(配列番号55)
得られた278bpおよび313bpのPCR増幅断片を検体として、コドン1527とコドン2086の各々に特有な制限酵素によるRFLP法を用いて、各コドンの遺伝子型を解析した。
1)コドン1527: PTPN13遺伝子がコードする1527番目のアミノ酸のコドンがATA(イソロイシン)とATG(メチオニン)のどちらであるかを調べた。即ち、ATAの場合は制限酵素Bsa WIの認識配列(ACCGGA)となりBsa WIで切断されるが、ATGの場合にはBsa WIの認識配列にはならないことを利用し、増幅DNA断片がBsa WIでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
278 bpのPCR増幅産物を制限酵素Bsa WI〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。該ms-SNP 部位でBsa WIによる切断を受けない278bpのバンドが現れた場合には、PTPN13遺伝子がコードする1527番目のアミノ酸がメチオニン(コドンATG)であるアリル(以下、メチオニン型アリルとする)と判定し、Bsa WIによって切断された198bpと80bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がイソロイシン(コドンATA)であるアリル(以下、イソロイシン型アリル)と判定した。
2)コドン2086: PTPN13遺伝子がコードする2086番目のアミノ酸のコドンがGAC(アスパラギン酸)とTAC(チロシン)のどちらであるかを調べた。即ち、GACの場合は制限酵素Hinf Iの認識配列(GANTC)となりHinf Iで切断されるが、TACの場合にはHinf Iの認識配列にはならないことを利用し、増幅DNA断片がHinf Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
313 bpのPCR増幅産物を制限酵素Hinf I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。該ms-SNP 部位でHinf Iによる切断を受けない313bpのバンドが現れた場合には、PTPN13遺伝子がコードする2086番目のアミノ酸がチロシン(コドンTAC)であるアリル(以下、チロシン型アリルとする)と判定し、Hinf Iによって切断された188bpと125bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がアスパラギン酸(コドンGAC)であるアリル(以下、アスパラギン酸型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、PTPN13遺伝子第1527コドンのメチオニン型アリルのホモ型(Met/Met)、イソロイシン型アリルのホモ型(Ile/Ile)および両アリルのヘテロ型(Met /Ile)の各遺伝子型のオッズ比並びに95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。同様に、PTPN13遺伝子第2086コドンのチロシン型アリルのホモ型(Tyr/Tyr)、アスパラギン酸型アリルのホモ型(Asp/Asp)および両アリルのヘテロ型(Tyr/Asp)の各遺伝子型のオッズ比並びに95%信頼区間を同様に計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。さらに、PTPN13遺伝子の二ケ所のms-SNPの効果をより総合的に解析するために、これらの遺伝子型の複合遺伝子型解析を実施した。
その結果、下記表14Aに示すように、PTPN13遺伝子第1527コドンに関しては、健常人群に対する肺癌患者群におけるメチオニン/イソロイシン型両アリルのヘテロ型の遺伝子型のオッズ比は0.43〜0.48、95%信頼区間は0.92以下となり、肺癌患者群(全肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌)において統計学的有意差をもって保護的効果が認められた (P=0.032以下)。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約61%, 約7,600万人存在すると推定される。他の癌種では有意な結果は得られなかったが、極めて有意に近い結果として、大腸癌の発症危険度はメチオニン型アリルをホモで含む遺伝子型が約0.5倍の保護的効果を示した。一方、上記の裏返しとして、第1527コドンのイソロイシン型アリルのホモ型は肺腺癌や全肺癌の発症危険度を促進することが示された(オッズ比:約1.85)。
一方、下記表14Bに示すように、PTPN13遺伝子第2086コドンに関しては、ヘテロ型(Tyr/Asp)が肺癌および頭頸部癌の発症危険度を抑制した(オッズ比:0.53〜0.60)。逆の見方では、チロシン型アリルホモ型(Tyr/Tyr)が肺癌および頭頸部癌のリスクを上昇させた(オッズ比:1.7〜2.09)。
以上のように、PTPN13遺伝子の第1527または2086番コドンの遺伝子型が、両アリルのヘテロ型であることは肺癌の発症を抑制する効果がある、または第1527コドンのマイナーアリル及び2086番コドンのメジャーアリルのホモ型は肺癌や頭頸部癌の発症危険度を増大させることが明らかとなった。なお、個別に解析するとこれらのms-SNPは食道癌、大腸癌については有意差を示さなかったが、第2086コドンのチロシン型アリルホモ型(Tyr/Tyr)は食道癌の発症を促進する傾向があった(表14B未記載:オッズ比:1.58, 95% 信頼区間:0.87-2.86)。
Figure 2008048733
Figure 2008048733
(B) PTPN13遺伝子第1527, 第2086コドンに関する複合遺伝子型解析
PTPN13遺伝子の二ケ所のms-SNPの効果をより総合的に解析するために、これらの遺伝子型の複合遺伝子型解析を実施した。肺腺癌患者97例、肺扁平上皮癌患者48例、頭頸部癌患者88例、大腸癌患者101例、および標準化した健常人183例の各検体について、PTPN13遺伝子第1527, 第2086コドンの遺伝子型全ての組み合わせデータが得られ、全ての複合遺伝子型頻度と各癌種の発症リスクとの関連を解析した。解析データの概要を下記表14Cに整理して示した。第28,第38エクソンの二つのms-SNP, 第1527, 第2086コドンの遺伝子型をアミノ酸の1文字表記で示す。[メチオニン(M),イソロイシン(I),チロシン(Y),アスパラギン酸(D)] 。また、全部で9種の複合遺伝子型のうち、健常人と癌患者群で分布に差のあったもののみを示す。前述のように、二つのms-SNPの遺伝子型が共にヘテロ型を示す人(MI-YD型)は健常人で45% に達し、肺癌および頭頸部癌患者では有意にその割合が低かった(保護的効果)。逆に複合遺伝子型MM-YYとII-YDを合計したものは健常人で18%を占めるが、肺癌患者では35%になり、有意に高リスクを示した。また個別の解析では有意とならなかった頭頸部癌と大腸癌の患者において、複合遺伝子型MI-YYが健常人の二倍以上の割合で存在し、有意に高リスクであることが判明した。
Figure 2008048733
(実施例14)PTPRJ遺伝子のms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
(A) PTPRJ遺伝子の第276, 第326コドンの解析
PTPRJ遺伝子については、第5エクソンと第6エクソンに存在する二箇所のms-SNP(コドン276 とコドン326)を同時に解析した。肺腺癌患者98例、肺扁平上皮癌患者50例、頭頸部癌患者94例、大腸癌患者109例、食道癌患者67例、および標準化した健常人197例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずPTPRJ遺伝子第5エクソン内のコドン276を含むDNA領域と第6エクソン内のコドン326を含むDNA領域とを個別にPCR増幅した。実際には第5エクソンと第5イントロン先端部の領域 (プライマーセット#13A)および第5イントロン最後部と第6エクソン内の領域 (プライマーセット#13B)それぞれの配列からなる下記のプライマー(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、これらのゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを64℃又は62℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行った。
Primer Set #13A
PTPRJ-Ex5-S: 5’-AATACAACATCAACCCGTATCTTGTAC(配列番号56)
PTPRJ-Ex5-AS: 5’-CTGAAAGTAAGAACCAGTAAGGGA(配列番号57)
Primer Set #13B
PTPRJ-Ex6-S: 5’-GTGCTTGAAACAGATGCCAGC(配列番号58)
PTPRJ-Ex6-AS: 5’-TTCTGTGCCATTCGCTGCTTG(配列番号59)
得られた125bpおよび201bpのPCR増幅断片を検体とし、各々コドン276 とコドン326に特有な制限酵素によるRFLP法を用いて、各コドンの遺伝子型を解析した。
1)コドン276: PTPRJ遺伝子がコードする276番目のアミノ酸のコドンがCAA (グルタミン)とCCA(プロリン)のどちらであるかを調べた。即ち、CAAの場合は制限酵素Bsr GIの認識配列(TGTACA)となりBsr GIで切断されるが、CCAの場合にはBsr GIの認識配列にはならないことを利用し、増幅DNA断片がBsr GIでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
125 bpのPCR増幅産物を制限酵素Bsr GI〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。該ms-SNP 部位でBsr GIによる切断を受けない125bpのバンドが現れた場合には、PTPRJ遺伝子がコードする276番目のアミノ酸がプロリン(コドンCCA)であるアリル(以下、プロリン型アリルとする)と判定し、Bsr GIによって切断された25bpと100bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がグルタミン(コドンCAA)であるアリル(以下、グルタミン型アリル)と判定した。
2)コドン326: PTPRJ遺伝子がコードする326番目のアミノ酸のコドンがCGA(アルギニン)とCAA(グルタミン)のどちらであるかを調べた。即ち、CGAの場合は制限酵素Ava Iの認識配列(CPyCGPuG)となりAva Iで切断されるが、CAAの場合にはAva Iの認識配列にはならないことを利用し、増幅DNA断片がAva Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
201 bpのPCR増幅産物を制限酵素Ava I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。該ms-SNP 部位でAva Iによる切断を受けない201bpのバンドが現れた場合には、PTPRJ遺伝子がコードする326番目のアミノ酸がグルタミン(コドンCAA)であるアリル(以下、グルタミン型アリルとする)と判定し、Ava Iによって切断された115bpと86bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がアルギニン(コドンCGA)であるアリル(以下、アルギニン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、PTPRJ遺伝子第276コドンのグルタミン型アリルのホモ型(Gln/Gln)、プロリン型アリルのホモ型(Pro/Pro)および両アリルのヘテロ型(Gln/Pro)の各遺伝子型のオッズ比並びに95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。同様に、PTPRJ遺伝子第326コドンのアルギニン型アリルのホモ型(Arg/Arg)、グルタミン型アリルのホモ型(Gln/Gln)および両アリルのヘテロ型(Arg/Gln)の各遺伝子型のオッズ比並びに95%信頼区間を同様に計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。さらに、PTPRJ遺伝子の二ケ所のms-SNPの効果をより総合的に解析するために、これらの遺伝子型の複合遺伝子型解析を実施した。
その結果、下記表15Aに示すように、PTPRJ遺伝子第276コドンに関しては、健常人群に対する何れの癌患者群においても、単独では統計学的に有意な結果は得られなかった。極めて有意に近い結果として、食道癌の発症危険度はグルタミン型アリルとプロリン型アリルとをヘテロで含む遺伝子型が約1.7倍の促進効果を示した。また、同じ遺伝子型が大腸癌発症の高リスク傾向を示した。一方、第276コドンのプロリン型アリルのホモ型は肺腺癌の発症危険度を促進する傾向が示された(オッズ比3.18)。
一方、下記表15Bに示すように、PTPRJ遺伝子第326コドンに関しては、グルタミン型アリルの存在が大腸癌と食道癌の発症危険度を有意に促進した。アルギニン型とグルタミン型アリルのヘテロ型(Arg/Gln)のオッズ比は夫々2.42, 1.98であったが、大腸癌ではグルタミン型アリルのホモ型が最も高い危険度を示した(オッズ比3.09)。肺癌や頭頸部癌においても、少なくとも1個のグルタミン型アリルを持つ遺伝子型は癌発症を促進する傾向があったが、そのインパクトは相対的に軽度であった。以上の逆の見方として、アルギニン型アリルホモ型(Arg/Arg)が上記の癌、特に大腸癌や食道癌の発症リスクを低減させた(オッズ比:0.39, 0.57)。
以上のように、PTPRJ遺伝子の第276または326番コドンの遺伝子型が、両アリルのヘテロ型、またはマイナーアリルのホモ型であることは肺癌、頭頸部癌、大腸癌及び食道癌の発症を促進する傾向があることが明らかとなった。なお、個別の解析ではこれらのms-SNPは食道癌、大腸癌についてのみ有意差を示した。そこで、PTPRJ遺伝子の二ケ所のms-SNPの効果をより総合的に解析するために、これらの遺伝子型の複合遺伝子型解析を実施した。
Figure 2008048733
Figure 2008048733
(B) PTPRJ遺伝子第276, 第326コドンに関する複合遺伝子型解析
PTPRJ遺伝子の二ケ所のms-SNPの効果をより総合的に解析するために、これらの遺伝子型の複合遺伝子型解析を実施した。肺腺癌患者89例、肺扁平上皮癌患者46例、頭頸部癌患者90例、大腸癌患者101例、および標準化した健常人188例の各検体について、PTPRJ遺伝子第276, 第326コドンの遺伝子型全ての組み合わせデータが得られ、全ての複合遺伝子型頻度と各癌種の発症リスクとの関連を解析した。食道癌については第326コドンの解析のみを行ったため、複合遺伝子型解析は実施していない。解析データの概要を下記表15Cに整理して示した。第5, 第6エクソンの二つのms-SNP, 第276, 第326コドンの遺伝子型をアミノ酸の1文字表記で示す[グルタミン(Q),プロリン(P),アルギニン(R)]。 また、全部で9種の複合遺伝子型のうち、健常人と癌患者群で分布に差のあったもののみを示す。これらの遺伝子型が共にメジャーアリルのホモ型を示す人(QQ-RR型)は健常人で65% に達したが、大腸癌患者では有意にその割合が低かった(保護的効果:オッズ比:0.48, 95%信頼区間:0.29-0.78, P値0.0039)。逆に第276, 第326コドンの遺伝子型がそれぞれメジャーホモ型及びヘテロ型である複合遺伝子型QQ-RQは健常人で3%, 約375万人を占めるが、大腸癌患者では13%になり、有意に高リスクを示した(オッズ比5.41)。また個別の解析では有意とならなかった全肺癌、肺腺癌と頭頸部癌の患者において、両コドンがマイナーホモ型である複合遺伝子型PP-QQが健常人(1%, 125万人)の4倍以上の割合で存在し、有意に高リスクであることが判明した(各オッズ比4.97, 5.54, 5.47)。肺扁平上皮癌は何れの遺伝子型も有意な結果を示さなかったが、両アリルが共にヘテロ型(QP-RQ)(健常人で21%, 2,600万人)が高リスクである傾向を示した(オッズ比1.79)。
以上のように、PTPRJ遺伝子の二つのms-SNPはそれぞれ単独では第326コドンのみが大腸癌と食道癌で有意なリスクを示したが、二つを総合した複合遺伝子型で解析すると、肺腺癌や頭頸部癌でも有意なリスクを示す遺伝子型が存在することが判明した。
Figure 2008048733
(実施例15)RASSF6遺伝子のms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
RASSF6遺伝子については、RFLP法を用いて、コードする163番目のアミノ酸のコドンがTCT(セリン;Ser)とCCT(プロリン;Pro)のどちらであるかを調べた。すなわち、TCTの場合は、制限酵素Ase Iの認識配列(ATTAAT)となり、Ase Iで切断されるが、CCTの場合にはAse Iの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がAse Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺腺癌患者109例、肺扁平上皮癌患者50例、大腸癌患者105例、および標準化した健常人200例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずRASSF6遺伝子の第5イントロン最後部から第6エクソン先端部の該SNP部位直前までの配列(1塩基置換を導入)と第6エクソン中央部の配列からなる下記のプライマーセット#14(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを60℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #14
RASSF6-Ex6-S1: 5’-TAATCTATTCTTCCCAGACTATTAA(配列番号60)
RASSF6-Ex6-AS1:5’-CTTCATCCTTTTTCTCACCAGA(配列番号61)
130bpのPCR増幅産物を制限酵素Ase I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Ase Iによる切断を受けない130bpのバンドが現れた場合には、RASSF6遺伝子がコードする163番目のアミノ酸がプロリン(コドンCCT)であるアリル(以下、プロリン型アリルとする)と判定し、Ase Iによって切断された23bpと107bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がセリン(コドンTCT)であるアリル(以下、セリン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、RASSF6遺伝子第163コドンがセリン型アリルのホモ型(Ser/Ser)、プロリン型アリルのホモ型(Pro/Pro)および両アリルのヘテロ型(Ser/Pro)の各遺伝子型のオッズ比および95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表16に示すように、健常人群に対する肺腺癌患者群における両アリルのヘテロ型の遺伝子型のオッズ比は1.89、95%信頼区間は1.13から3.19となり、肺腺癌患者群において統計学的有意差で高リスクが認められた。肺扁平上皮癌では有意差は見られなかったが、肺腺癌と肺扁平上皮癌とを合算した全肺癌患者群でも同じ遺伝子型に統計学的近有意差が認められた(ヘテロ型のオッズ比:1.48、95%信頼区間:0.92-2.38)。なお、大腸癌に関しては全く無関係であった。よって、RASSF6遺伝子第163 コドンの遺伝子型が、セリン型とプロリン型アリルのヘテロ型であることは、肺癌、特に肺腺癌の発症危険率を高める遺伝的要因となることが明らかとなった。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約22%、2,700 万人存在すると推定される。
Figure 2008048733
(実施例16)CASP9遺伝子第1エクソンのms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
CASP9遺伝子については、RFLP法を用いて、コードする28番目のアミノ酸のコドンがGTC (バリン;Val)とGCC(アラニン;Ala)のどちらであるかを調べた。すなわち、GTCの場合は、制限酵素Aat IIの認識配列(GACGTC)となり、Aat IIで切断されるが、GCCの場合にはAat IIの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がAat IIでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺腺癌患者100例、肺扁平上皮癌患者46例、大腸癌患者113例、食道癌患者67例、および標準化した健常人246例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずCASP9遺伝子の第1エクソン先頭部から第1エクソンと第1イントロンの境界部先端部の配列からなる下記のプライマーセット#15(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを62℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #15
CASP9-Ex1-S1: 5’-GGCCTGGAGTCTTAGTTGGC(配列番号62)
CASP9-Ex1-AS1: 5’-CGGGGGCGCACCTGGATGT(配列番号63)
171bpのPCR増幅産物を制限酵素Aat II〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Aat IIによる切断を受けない171bpのバンドが現れた場合には、CASP9遺伝子がコードする28番目のアミノ酸がアラニン(コドンGCC)であるアリル(以下、アラニン型アリルとする)と判定し、Aat IIによって切断された109bpと62bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がバリン(コドンGTC)であるアリル(以下、バリン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、CASP9遺伝子第28コドンがバリン型アリルのホモ型(Val/Val)、アラニン型アリルのホモ型(Ala/Ala)および両アリルのヘテロ型(Val/Ala)の各遺伝子型のオッズ比および95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表17に示すように、健常人群に対する肺扁平上皮癌患者群におけるバリン型アリルのホモ型の遺伝子型のオッズ比は0.41、95%信頼区間は0.20から0.85となり、肺扁平上皮癌患者群において統計学的有意差で保護的効果が認められた。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約43%、5,300 万人存在すると見積もられる。他の癌種については有意差は見られなかったが、食道癌患者群ではバリン型アリルとアラニン型アリルとのヘテロ遺伝子型が統計学的近有意差で若干の高リスクが認められた(ヘテロ型のオッズ比:1.55, 95%信頼区間:0.90-2.67)。よって、CASP9遺伝子第28 コドンの遺伝子型がバリン型アリルのホモ型であることは、肺扁平上皮癌の発症危険度を抑制すること、またバリン型とアラニン型アリルのヘテロ型であることは、食道癌の発症危険率を高める傾向があることが明らかとなった。
Figure 2008048733
(実施例17)TRAP1遺伝子第9エクソンのms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
TRAP1遺伝子については、RFLP法を用いて、コードする307番目のアミノ酸のコドンがCGT(Arg)とGGT(Gly)のどちらであるかを調べた。すなわち、GGTの場合は、制限酵素Hph Iの認識配列(GGTGA)となり、Hph Iで切断されるが、CGTの場合にはHph Iの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がHph Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺腺癌患者102例、肺扁平上皮癌患者58例、大腸癌患者92例、頭頸部癌患者89例、食道癌患者67例および標準化した健常人199例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずTRAP1遺伝子の第8イントロン末端部の配列と第9エクソン末端部の配列からなる下記のプライマーセット#16(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを60℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #16
TRAP1-Ex9-S1: 5’- TGAACACGACGCCCTCCCCG(配列番号64)
TRAP1-Ex9-AS1: 5’- CCTCACCATGTCGGGCACGTA(配列番号65)
199bpのPCR増幅産物を制限酵素 Hph I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Hph Iによる切断を受けない199bpのバンドが現れた場合には、TRAP1遺伝子がコードする307番目のアミノ酸がアルギニン(コドンCGT)であるアリル(以下、アルギニン型アリルとする)と判定し、Hph Iによって切断された80bpと119bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がグリシン(コドンGGT)であるアリル(以下、グリシン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、TRAP1遺伝子第307コドンがアルギニン型アリルのホモ型(Arg/Arg)、グリシン型アリルのホモ型(Gly/Gly)、および両アリルのヘテロ型(Arg/Gly)の各遺伝子型のオッズ比および95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表18に示すように、健常人群に対する食道癌患者群におけるアルギニン型アリルのホモ型の遺伝子型のオッズ比は0.42、95%信頼区間は0.22から0.81となり、食道癌患者群において統計学的有意差で保護的効果が認められた (P = 0.0076)。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約39%、4,800 万人存在すると推定される。また、食道癌患者では、少なくとも1個のグリシン型アリルを持つ遺伝子型が統計的に有意な高リスクを示した(オッズ比:2.39, 95%信頼区間:1.24-4.60)が、この遺伝子型に該当する人は日本全国で7,600 万人も存在し現実的リスク評価ではないと判断された。これらの集団のリスクを1とした時、アルギニン型アリルホモ型のリスクが0.42 とする方が実際的である。なお、本遺伝子の多型に関しては、解析した他の癌種すべてにおいて有意差は見られなかったが、上記と同じアルギニンホモ型が肺扁平上皮癌の発症を抑制する傾向が見られた(オッズ比:0.55, 95%信頼区間:0.29-1.06)。よって、TRAP1遺伝子第307コドンがアルギニン型アリルのホモ型の遺伝子型であることは、食道癌の発症危険度を有意に低下させることが明らかとなった。
Figure 2008048733
(実施例18)RAD17遺伝子第15エクソンのms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
RAD17遺伝子については、RFLP法を用いて、コードする546番目のアミノ酸のコドンがCTC (ロイシン;Leu)とCGC (アルギニン;Arg)のどちらであるかを調べた。すなわち、CGCの場合は、制限酵素Aci Iの認識配列(CCGC)となり、Aci Iで切断されるが、CTCの場合にはAci Iの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がAci Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺腺癌患者104例、肺扁平上皮癌患者45例、大腸癌患者113例、頭頸部癌患者63例、食道癌患者67例、および標準化した健常人246例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずRAD17遺伝子の第15エクソン先端部の配列と第15イントロン内の配列からなる下記のプライマーセット#17(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを62℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #17
RAD17-Ex15-S1: 5’- CAGTATCGGGAAAATTGCCTGG(配列番号66)
RAD17-Ex15-AS1: 5’- GGTTGCAGTGAGCCGAGATC(配列番号67)
263bpのPCR増幅産物を制限酵素Aci I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Aci Iによる切断を受けない263bpのバンドが現れた場合には、RAD17遺伝子がコードする546番目のアミノ酸がロイシン(コドンCTC)であるアリル(以下、ロイシン型アリルとする)と判定し、Aci Iによって切断された66bpと197bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がアルギニン(コドンCGC)であるアリル(以下、アルギニン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、RAD17遺伝子第546コドンがロイシン型アリルのホモ型(Leu/Leu)、アルギニン型アリルのホモ型(Arg/Arg)および両アリルのヘテロ型(Leu/Arg)の各遺伝子型のオッズ比および95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表19に示すように、健常人群に対する全肺癌、肺腺癌および大腸癌患者群におけるアルギニン型アリルのホモ型の遺伝子型のオッズ比は何れも2.00以上、95%信頼区間は1.00から4.41となり、全肺癌、肺腺癌および大腸癌患者群において統計学的有意差で高リスクが認められた。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約9.4%、1,200 万人存在すると推定される。また、頭頸部癌患者では、ロイシン型アリルのホモ遺伝子型が統計学的に近有意な高リスクを示した(オッズ比:1.66, 95%信頼区間:0.93-2.94)。他の癌種については有意差は見られなかった。よって、RAD17遺伝子第546コドンがアルギニン型アリルのホモ型の遺伝子型であることは、全肺癌、肺腺癌および大腸癌の発症危険度を有意に上昇させること、またロイシン型アリルのホモ遺伝子型は、頭頸部癌の発症危険率を高める傾向があることが明らかとなった。なお、以上の知見のうち、肺癌および頭頸部癌に関するものは既に公知であるが(特開平2005−245362号公報)、大腸癌に関する知見は新規である。
Figure 2008048733
(実施例19)DUSP6遺伝子第2エクソンのms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
DUSP6遺伝子については、RFLP法を用いて、コードする114番目のアミノ酸のコドンがTTG (ロイシン;Leu)とGTG (バリン;Val)のどちらであるかを調べた。すなわち、GTGの場合は、制限酵素Bsp1286 Iの認識配列(GTGCTC)となり、Bsp1286 Iで切断されるが、TTGの場合にはBsp1286 Iの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がBsp1286 Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺腺癌患者102例、肺扁平上皮癌患者44例、大腸癌患者108例、頭頸部癌患者63例、食道癌患者67例、および標準化した健常人246例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずDUSP6遺伝子の第2エクソン先端部の配列と第2イントロン内の配列からなる下記のプライマーセット#18(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを61℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #18
DUSP6-Ex2-S1: 5’- TACGACGAGAGCAGCAGCGA(配列番号68)
DUSP6-Ex2-AS1: 5’- TTTTCAATCCACGCGCCCCG(配列番号69)
185bpのPCR増幅産物を制限酵素Bsp1286 I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Bsp1286 Iによる切断を受けない185bpのバンドが現れた場合には、DUSP6遺伝子がコードする114番目のアミノ酸がロイシン(コドンTTG)であるアリル(以下、ロイシン型アリルとする)と判定し、Bsp1286 Iによって切断された51bpと134bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がバリン(コドンGTG)であるアリル(以下、バリン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、DUSP6遺伝子第114コドンがロイシン型アリルのホモ型(Leu/Leu)、バリン型アリルのホモ型(Val/Val)および両アリルのヘテロ型(Leu/Val)の各遺伝子型のオッズ比および95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表20に示すように、健常人群に対する肺扁平上皮癌患者群におけるロイシン型アリルのホモ型の遺伝子型のオッズ比は1.99、95%信頼区間は1.00から3.87となり、統計学的有意差で高リスクが認められた。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約34%、4,200 万人存在すると推定される。また、頭頸部癌患者では、ロイシン型とバリン型両アリルのヘテロ遺伝子型が統計学的に有意な高リスクを示した(オッズ比:2.20, 95%信頼区間:1.23-3.93)。この遺伝子型は日本人の約半数(48%)を占めており、頭頸部癌発症の遺伝的要因として大きなインパクトを持つ可能性がある。一方、今回新しく食道癌の発症危険率がDUSP6遺伝子第114コドンのバリン型アリルのホモ遺伝子型で有意に高いという結果が得られた(オッズ比:2.19, 95%信頼区間:1.03-4.67)。この遺伝子型は我が国に約18%, 2,200万人存在すると推定される。なお、他の癌種については有意差は見られなかった。以上のように、DUSP6遺伝子第114コドンがロイシン型アリルのホモ遺伝子型であることは、肺扁平上皮癌の発症危険度を有意に上昇させること、またロイシン型とバリン型アリルのヘテロ遺伝子型は頭頸部癌の発症危険率を有意に高めることが明らかとなった。さらに、バリン型アリルのホモ遺伝子型は食道癌の発症危険度を有意に高めることも明らかになった。なお、以上の知見のうち、肺癌および頭頸部癌に関するものは既に公知であるが(特開平2005−245362号公報)、食道癌に関する知見は新規である。
Figure 2008048733
(実施例20)EXO1遺伝子第9エクソンのms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
EXO1遺伝子については、RFLP法を用いて、コードする439番目のアミノ酸のコドンがACG (スレオニン;Thr)とATG (メチオニン;Met)のどちらであるかを調べた。すなわち、ACGの場合は、制限酵素Bsa AIの認識配列(TACGTA)となり、Bsa AIで切断されるが、ATGの場合にはBsa AIの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がBsa AIでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺腺癌患者100例、肺扁平上皮癌患者45例、大腸癌患者113例、頭頸部癌患者63例、食道癌患者67例、および標準化した健常人246例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずEXO1遺伝子の第8イントロン後半部の配列と第9エクソン先端部の該SNP部位直下の配列(1塩基置換を導入)からなる下記のプライマーセット#19(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを61℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。また、別に乳癌患者306例と女性健常人161例の検体からも同様に解析した。
Primer Set #19
EXO1-Ex 9-S1: 5’- TCTCTAAGTACAGGTGAAACAAAG(配列番号70)
EXO1-Ex 9-AS1: 5’- GAGCTATTTTTCTTGGTCTTCTAC(配列番号71)
125bpのPCR増幅産物を制限酵素Bsa AI〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Bsa AIによる切断を受けない125bpのバンドが現れた場合には、EXO1遺伝子がコードする439番目のアミノ酸がメチオニン(コドンATG)であるアリル(以下、メチオニン型アリルとする)と判定し、Bsa AIによって切断された100bpと25bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がスレオニン(コドンACG)であるアリル(以下、スレオニン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、EXO1遺伝子第439コドンがスレオニン型アリルのホモ型(Thr/Thr)、メチオニン型アリルのホモ型(Met/Met)および両アリルのヘテロ型(Thr/Met)の各遺伝子型のオッズ比および95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表21に示すように、健常人群に対する大腸癌患者群におけるスレオニン型とメチオニン型アリルのヘテロ遺伝子型のオッズ比は2.08、95%信頼区間は1.21から3.57となり、大腸癌患者群において統計学的有意差で高リスクが認められた(P=0.0092)。また、女性健常人を対照とした乳癌患者でも、同じ遺伝子型が統計学的に有意な高リスクを示した(オッズ比:1.76, P=0.043)。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約15%、1,800 万人存在すると推定される。他の癌種については有意差は見られなかったが、食道癌患者群では少なくとも1個のメチオニン型アリルを含む遺伝子型が統計学的近有意差で若干の高リスクが認められた(オッズ比:1.65、95%信頼区間:0.87-3.14)。よって、EXO1遺伝子第439 コドンがスレオニン型とメチオニン型アリルのヘテロの遺伝子型であることは、大腸癌と乳癌の発症危険度を有意に上昇させること、またメチオニン型アリルを1個以上含む遺伝子型は、食道癌の発症危険率を高める傾向があることが明らかとなった。なお、以上の知見のうち、大腸癌に関するものは既に公知であるが(Yamamoto,Hほか、2005 年、Carcinogenesis,第26巻,第2号,P.411-416)、乳癌と食道癌に関する知見は新規である。
Figure 2008048733
(実施例21)ADH1B遺伝子第3エクソンのms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
ADH1B遺伝子については、RFLP法を用いて、コードする48番目のアミノ酸のコドンがCAC (ヒスチジン;His)とCGC(アルギニン;Arg)のどちらであるかを調べた。すなわち、CACの場合は、制限酵素Msl Iの認識配列(CAYNNNNRTG)となり、Msl Iで切断されるが、CGCの場合にはMsl Iの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がMsl Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺腺癌患者107例、肺扁平上皮癌患者47例、大腸癌患者113例、食道癌患者67例,および標準化した健常人196例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずADH1B遺伝子の第2イントロン後半部の配列と第3イントロン先端部の配列からなる下記のプライマーセット#20(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型として第3エクソンのPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを60℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。また、別に乳癌患者302例と女性健常人160例の検体からも同様に解析した。
Primer Set #20
ADH1B-Ex3-S1: 5’- TTTGGGTATGTTAAATTCATCTAGTT(配列番号72)
ADH1B-Ex3-AS1: 5’- GGAAATCCTGGATGGTGAACCACA(配列番号73)
258bpのPCR増幅産物を制限酵素Msl I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Msl Iによる切断を受けない258bpのバンドが現れた場合には、ADH1B遺伝子がコードする48番目のアミノ酸がアルギニン(コドンCGC)であるアリル(以下、アルギニン型アリルとする)と判定し、Msl Iによって切断された94bpと164bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がヒスチジン(コドンCAC)であるアリル(以下、ヒスチジン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、ADH1B遺伝子第48コドンがヒスチジン型アリルのホモ型(His/His)、アルギニン型アリルのホモ型(Arg/Arg)および両アリルのヘテロ型(His/Arg)の各遺伝子型のオッズ比および95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表22に示すように、健常人群に対する大腸癌、全肺癌および肺腺癌患者群におけるヒスチジン型とアルギニン型アリルのヘテロ型の遺伝子型のオッズ比は2.02〜2.57、95%信頼区間は何れも1.29以上となり、これらの癌患者群において統計学的有意差で高いリスクが認められた。また、女性健常人を対照とした乳癌患者でも、同じ遺伝子型が統計学的に有意な高リスクを示した(オッズ比1.54)。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約29%、3,600万人存在すると推定される。一方、ADH1B遺伝子第48コドンがアルギニン型アリルのホモ型である遺伝子型は、食道癌の発症危険度が極めて高く(オッズ比:10.5, 95%信頼区間:4.60-23.8, P=8.6x10-9)、よく知られているように、食道癌発症の最大の遺伝的要因と考えられる。この遺伝子型を持つ個人は日本人に約6.3%, 780万人分布すると推計される。他の癌種では有意差は見られなかったが、肺扁平上皮癌患者群でもヒスチジン型とアルギニン型アリルのヘテロ遺伝子型が統計学的近有意差で若干の高リスクが認められた(オッズ比:1.88、95%信頼区間:0.96-3.69)。よって、ADH1B遺伝子第48コドンがヒスチジン型とアルギニン型アリルのヘテロの遺伝子型であることは、肺癌、大腸癌および乳癌の発症危険度を有意に上昇させることが明らかとなり、またアルギニン型アリルをホモ型で含む遺伝子型は、食道癌の発症危険率を劇的に高めることが確認された。なお、以上の知見のうち、食道癌と大腸癌に関するものは既に公知であるが(J Clin Gastroenterol.,1997年、第25巻、第4号、pp.568−575)、肺癌と乳癌に関する知見は新規である。
Figure 2008048733
以上の実施例2から21に述べた方法により、肺癌、頭頸部癌、大腸癌、食道癌、乳癌の少なくとも1種の癌の発症危険率に影響する20遺伝子のms-SNPが新しく判明した。統計学的に有意なms-SNPデータを癌種別に下記表23に示す。表中、高リスクSNPとは癌発症危険率が統計学的に有意に高いSNP、保護的SNPとは癌発症危険率が統計学的に有意に低いSNPを意味する。
Figure 2008048733
表23に示すように、統計学的に有意なms-SNPは、全肺癌(非小細胞肺癌)に関しては高リスクSNPが8種、保護的SNPが2種の計10種;肺腺癌に関しては高リスクSNPが9種、保護的SNPが2種の計11種;肺扁平上皮癌に関しては高リスクSNPが8種、保護的SNPが2種の計10種;頭頸部癌に関しては高リスクSNPが4種;大腸癌に関しては高リスクSNPが5種;食道癌に関しては高リスクSNPが5種、保護的SNPが1種の計6種;乳癌に関しては高リスクSNPが2種あった。
また、上記20遺伝子のms-SNPと各癌の発症危険率との関連を癌種別に図1にまとめた。
(実施例22)複数のリスク関連ms-SNPが同一個人で重複することによる癌発症危険率の評価
本実施例では、各癌種の発症危険率に対して統計学的有意または統計学的近有意なms-SNP(高リスクSNP、保護的SNPを含む)の数種を用い、個人毎に全てのオッズ比データをかけ合わせた累積オッズ比(Cumulative Odds Ratio; COR)を算出した。
個人別累積オッズ(COR)計算に用いた各癌種の発症危険率に関わるms-SNPを表24に示す。表中、「H」は高リスクms-SNP、「L」は保護的ms-SNPを意味する。保護的ms-SNPは、肺腺癌に関する計16種のms-SNPのうち、SNM1B, AURKA, RAD18, DUSP6, AXIN2遺伝子の5種、肺扁平上皮癌に関する計13種のms-SNPのうち、RAD18, CASP遺伝子の2種、頭頸部癌に関する計9種のms-SNPのうち、RAD18, CEP192遺伝子の2種、大腸癌に関する計10種のms-SNPのうち、RAD18, PTPN13, EXO1遺伝子の3種、食道癌に関する計12種のms-SNPのうち、AURKA遺伝子の1種である。また、分類の項の「A」は今回新たに癌発症との関連性が見出されたms-SNP、「B」は一部の癌との関連性が公知のms-SNP(特開平2005−245362号公報)、「C」は一部の癌発症との関連性が公知であるが、多因子解析に使用できるms-SNP、「A/B」は「B」に該当するが、今回新たに公知でない別種の癌の発症との関連性が見出されたms-SNP、「A/C」は「C」に該当するが、今回新たに公知でない別種の癌発症との関連性が見出されたms-SNPを示す。
Figure 2008048733
(1) 肺腺癌のCOR
肺腺癌の発症危険率に関与する16種類のms-SNPについて、各個人毎に該遺伝子型を重複して持つ場合の累積オッズ比(COR)を求めた。健常人202名、肺腺癌患者108名について解析し、各COR値を示す人の分布を百分率で示した(図2)。右側の患者群でCOR の高い人の割合が多く、最高値は1,400 を超える。CORが6以上を示した人は健常人では9.7%であったが、肺腺癌患者群では44%に達し、患者群は遺伝的に元来高リスクであったことが判明した。CORが6以上を示す健常人(9.7%)は、日本に約1,200万人存在することになり、潜在的に肺腺癌に注意する必要がある。一方、CORが1.03以下の人は肺腺癌患者には4%しかいないが、健常人では25%(約3,120万人)に達し、これらの人は肺腺癌の罹患リスクが極めて低いことが予想される(オッズ比0.12)。
(2) 肺扁平上皮癌のCOR
同様に、肺扁平上皮癌の発症危険率に関与する13種類のms-SNPについて、各個人毎に該遺伝子型を持つ場合の累積オッズ比(COR)を求めた。健常人202名、肺扁平上皮癌患者49名について解析し、各COR値を示す人の分布を百分率で示した(図3)。CORが30を超える人は患者群では41%であったが、健常人ではわずか6.9%(860万人)で、実効オッズ比は10.0を示した。肺扁平上皮癌についても、国民の約40%(約5,000万人)はCOR<2を示し、肺扁平上皮癌の発症オッズ比が0.13と危険率が低いことが示された。
(3) 食道癌のCOR
同様に、食道癌の発症危険率に関与する12種類のms-SNPについて、各個人毎に該遺伝子型を持つ場合の累積オッズ比(COR)を求めた。健常人202名、食道癌患者67名について解析し、各COR値を示す人の分布を百分率で示した(図4)。患者ではCORが1,000を超える人が4名(6%)おり、患者群の平均CORも健常人群のそれを20倍以上も上回る。COR>40の人は患者群で約50%に対し、健常人群ではわずか5%(620万人)で、実効オッズ比も17.6 (95%信頼区間:7.92-38.9)という高値を示した。これらの人は食道癌の高リスク群として禁酒など有効な対策を講じる必要がある。一方、COR<3の人は患者群で9%に対し、健常人群では39%(4,800万人)で、これらの人は比較的食道癌になりにくいと考えられる(実効オッズ比;0.15)。
(4)累積オッズ比(COR)解析の全体評価
上記(1)〜(3)の解析に頭頸部癌や大腸癌に関する解析も加えて総合的にまとめたものを表25に示した。いずれの癌においても、癌患者群のCORは平均値、中央値共に健常人群の数倍〜数十倍となり、重複する高リスクSNPの数が患者群で圧倒的に多いことが示された。ある食道癌患者は食道癌発症高リスクms-SNPの遺伝子型11種中8種を重複して持ち、COR値が5,000を超える最高値を示した。
Figure 2008048733
また、それぞれの群毎にCORの数値を5段階に分類した時の分布状況を図5に示した。この結果は健常人群と患者群との明確な差異を示し、患者群で約40%を占める高リスクグループは健常人では5〜11%を占めること、逆に癌発症リスクが極めて低い人は患者群では4〜9%に対して健常人では約40%に達することが判明した。最も劇的な例は食道癌で、患者群の約半数はCORが40以上であったが、このような個人は健常人群ではわずか5%に過ぎない。この5%の内訳を見ると、飲酒歴のない女性が多くを占め、生活習慣も食道癌の発症に大きく影響することが確認された。図5のデータをより詳細に検討すると(表26)、実効オッズ比で低リスクに属する人が何れの癌種でも全国民の約6割に達し、明らかな高リスクの人は頭頸部癌以外では5〜10%、(頭頸部癌では約20%)、中間危険度の人は24〜38%という値を示した。
Figure 2008048733
以上のように、多数の関連ms-SNP遺伝子型のオッズ比をかけあわせた累積オッズ比を用いる癌発症危険率予測により、健常人中の約10%の危険群と約60%の安全群を予測することが可能となった。残りの約20〜40%はグレイゾーンであり、生活習慣や年齢、家族歴などを勘案して総合的に判断する必要がある。癌発症危険度が極めて高い要注意レベルの人は何れの癌でも約1〜3%、それぞれ国内におよそ100〜400万人存在すると推計される。本発明方法によれば、これらの超高リスクの人々をスクリーニングして癌予防に役立てることができ、「証拠に基づく癌予防」(Evidence-based Prevention of Cancer: EBP)の具体策として有効であると期待される。
(実施例23)癌の発症危険率に関与するTDG遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
実施例2に記載の方法に従い、RFLP法を用いて、TDG遺伝子がコードする367番目のアミノ酸のコドンがGTG (バリン;Val)とATG (メチオニン;Met)のどちらであるかを調べた。
胃癌患者101例、膵臓癌患者85例、前立腺癌患者98例、ならびに年齢、性比、喫煙歴を患者集団とマッチさせた健常人(以下、標準化した健常人という)200例(前立腺癌患者に対する対照としては年齢をマッチさせた男性健常人135例)の各検体からゲノムDNAを調製し、標的領域を増幅したあと、制限酵素NlaIIIを用いたRFLP法により遺伝子型を決定した。
その結果、下記表27に示すように、健常人群に対する胃癌患者群におけるメチオニン型アリルのホモ型の遺伝子型のオッズ比は3.00、95%信頼区間は1.32から6.80となり、健常人群と胃癌患者群の2群間において統計学的有意差で高リスクが認められた。同様に、健常人群と膵臓癌患者群との間及び健常人群と前立腺癌患者群との間にも統計学的有意差が認められた[各々(Met/Met型のオッズ比:2.42,信頼区間:1.00-5.94)及び(Met/Met型のオッズ比:4.32,信頼区間:1.50-12.4)]。よって、TDG遺伝子の第367番コドンの遺伝子型が、メチオニン型アリルのホモ型であることは、実施例2の肺腺癌、肺扁平上皮癌並びに食道癌に加えて、胃癌、膵臓癌、および前立腺癌の発症危険率を高める遺伝的要因となることが明らかとなった。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約 6%、約750 万人存在すると推定される。
Figure 2008048733
(実施例24)癌の発症危険率に関与するRAD23B遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
実施例4に記載の方法に従い、RFLP法を用いて、RAD23B遺伝子がコードする249番目のアミノ酸のコドンがGCT(アラニン;Ala)とGTT(バリン;Val)のどちらであるかを調べた。
胃癌患者101例、肺腺癌患者109例、前立腺癌患者98例、ならびに年齢、性比、喫煙歴を患者集団とマッチさせた健常人(以下、標準化した健常人という)200例(前立腺癌患者に対する対照としては年齢をマッチさせた男性健常人135例)の各検体からゲノムDNAを調製し、標的領域を増幅したあと、制限酵素BanIIを用いたRFLP法により遺伝子型を決定した。
その結果、下記表28に示すように、健常人群に対する胃癌患者群におけるバリン型アリルのホモ型の遺伝子型のオッズ比は10.9、95%信頼区間は2.31から51.0となり、健常人群と胃癌患者群の2群間において統計学的有意差で極めて高いリスクが認められた。同様に、健常人群と肺腺癌患者群との間にも統計学的有意差が認められた[(Val型アリルを持つ遺伝子型のオッズ比:1.62,信頼区間:1.00-2.65)。また、健常人群と前立腺癌患者群との間にも近有意な高リスク傾向が見られた(Val/Val型のオッズ比:4.24,信頼区間:0.84-21.5)]。よって、RAD23遺伝子の第249番コドンの遺伝子型が、バリン型アリルのホモ型であることは、実施例4の肺腺癌、並びに頭頸部癌に加えて、胃癌、および前立腺癌の発症危険率を高める遺伝的要因となることが明らかとなった。また、データは示さないが、各300例に近い乳癌患者と女性健常人の解析から、本遺伝子多型のヘテロ型が近有意の高リスクを示した(オッズ比:1.57,95%信頼区間:0.98-2.50)。
Figure 2008048733
(実施例25)癌の発症危険率に関与するMAD1L1遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
実施例6に記載の方法に従い、RFLP法を用いて、MAD1L1遺伝子がコードする558番目のアミノ酸のコドンがCGC(アルギニン;Arg)とCAC(ヒスチジン;His)のどちらであるかを調べた。
非小細胞肺癌患者173例、胃癌患者101例、食道癌患者193例、膵臓癌患者85例、ならびに年齢、性比、喫煙歴を患者集団とマッチさせた健常人(以下、標準化した健常人という)202例の各検体からゲノムDNAを調製し、標的領域を増幅したあと、制限酵素Bst U1を用いたRFLP法により遺伝子型を決定した。
その結果、下記表29に示すように、健常人群に対する全肺癌患者、食道癌患者、膵臓癌患者の各群におけるヒスチジン型アリルのホモ型の遺伝子型のオッズ比は0.55, 0.60, 0.31となり、95%信頼区間はいずれも1.0以下であったため、健常人群とこれら3種の癌患者群の間において統計学的有意差をもって保護的効果が認められた(P= 0.0017-0.033)。ところが、胃癌患者においては対立するアルギニン型アリルのホモ遺伝子型が統計学的有意差をもって保護的効果を示した(オッズ比:0.46, 95%信頼区間:0.25-0.86)。胃癌患者ではArg/Hisアリルのヘテロ遺伝子型が高リスク(オッズ比:1.97)を示したが、この遺伝子型の存在比は国民の半数近くを占めるため、前記アルギニン型アリルのホモ遺伝子型が保護的作用を受けるとした方が合理的である。以上のように、実施例6の結果と合わせると、MAD1L1遺伝子の本ミスセンス多型は頭頸部癌と乳癌を除く多くの癌種の発症リスクに関与することが明らかになった。
Figure 2008048733
(実施例26)癌の発症危険率に関与するAURKA遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
実施例7に記載の方法に従い、RFLP法を用いて、AURKA遺伝子がコードする31番目のアミノ酸のコドンがATT(イソロイシン;Ile)とTTT(フェニルアラニン;Phe)のどちらであるかを調べた。
胃癌患者101例、前立腺癌患者98例、膵臓癌患者85例、ならびに年齢、性比、喫煙歴を患者集団とマッチさせた健常人(以下、標準化した健常人という)202例の各検体からゲノムDNAを調製し、標的領域を増幅したあと、制限酵素ApoIを用いたRFLP法により遺伝子型を決定した。
その結果、下記表30に示すように、健常人群に対する胃癌患者と前立腺癌患者の各群におけるイソロイシン/フェニルアラニンアリルのヘテロ型の遺伝子型のオッズ比は1.67, 1.98となり、95%信頼区間はいずれも1.0以上であったため、健常人群とこれらの癌患者群の間において同ヘテロ型が統計学的有意差をもって高リスクが認められた(P= 0.043, 0.018)。また膵臓癌患者群においても同ヘテロ型の遺伝子型が高リスクを示す傾向が見られた(オッズ比:1.55, 95%信頼区間:0.90-2.67)。
Figure 2008048733
(実施例27)癌の発症危険率に関与するNIN遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
実施例8に記載の方法に従い、RFLP法を用いて、第18エクソンに存在する二箇所のms-SNP(コドン1117 とコドン1131)を同時に解析した。まず本遺伝子がコードする1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(プロリン;Pro)とGCA(アラニン;Ala)のどちらであるかをMnlIを用いたRFLP法によって調べた。また、本遺伝子がコードする1131番目のアミノ酸のコドンがCCG(プロリン;Pro)とCAG(グルタミン;Gln)のどちらであるかはHpaIIを用いたRFLP法によって調べた。
胃癌患者101例、膵臓癌患者85例、肺腺癌患者109例、ならびに年齢、性比、喫煙歴を患者集団とマッチさせた健常人(以下、標準化した健常人という)202例の各検体からゲノムDNAを調製し、標的領域を増幅したあと、制限酵素MnlI及びHpaIIを用いたRFLP法により遺伝子型を決定した。得られたデータを2種のSNPの遺伝子型の組み合わせによる9種類の複合遺伝子型の分布として集計した。
その結果、下記表31に示すように、健常人群に対する胃癌患者と肺腺癌患者の各群におけるNIN遺伝子第1117と1131コドンが共にヘテロ型である遺伝子型のオッズ比は2.42, 3.82となり、95%信頼区間はいずれも1.0以上であったため、健常人群とこれらの癌患者群の間において同ヘテロ型が統計学的有意差をもって高リスクが認められた(P= 0.045, 0.00096)。また膵臓癌患者群においては、同第1117コドンがヘテロ型で、かつ同第1131コドンがPro/Proのホモ型である遺伝子型が統計学的な有意差で高リスクを示した(オッズ比:2.19, 95%信頼区間:1.11-4.33, P=0.033)。以上のように、染色体の分配に関わるNIN遺伝子のミスセンス多型は実施例8の肺癌に加え、胃癌,膵臓癌の発症についても密接に関わることが判明した。
Figure 2008048733
注)複合遺伝子型のうち、健常人で残り10%を占めるマイナー遺伝子型は省略した。
(実施例28)癌の発症危険率に関与するNOB1P遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
実施例9に記載の方法に従い、RFLP法を用いて、コードする231番目のアミノ酸のコドンがCGG(アルギニン;Arg)とCAG(グルタミン;Gln)のどちらであるかを調べた。
実施例9に記載した癌種に加えて、頭頸部癌患者93例、大腸癌患者113例、ならびに年齢、性比、喫煙歴を患者集団とマッチさせた健常人(以下、標準化した健常人という)202例の各検体からゲノムDNAを調製し、標的領域を増幅したあと、制限酵素Bst U1を用いたRFLP法により遺伝子型を決定した。
その結果、下記表32に示すように、健常人群に対し、頭頸部癌患者でNOB1P遺伝子第231コドンの配列がヘテロである遺伝子型を持つ群は頭頸部癌の発症危険度が高いことが判明した(オッズ比:1.74, 95%信頼区間:1.00-3.01)。但し、Fisher法によるP値は有意水準以下であった。大腸癌患者においては、実施例9同様、同じ遺伝子型が近有意な高リスク傾向を示した(オッズ比:1.61, 95%信頼区間:0.96-2.71)。以上のように、染色体分配に関わるとされるNOB1P遺伝子のミスセンス多型は食道癌、肺扁平上皮癌、頭頸部癌のように、扁平上皮癌の発症危険度に関与することが強く示唆された。
Figure 2008048733
(実施例29)癌の発症危険率に関与するCEP192遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
実施例11に記載の方法に従い、RFLP法を用いて、コードする956番目のアミノ酸のコドンがCCC (プロリン;Pro)とTCC (セリン;Ser)のどちらであるかを調べた。
実施例11に記載した癌種のうち全肺癌173例(うち肺腺癌109例)に加えて、乳癌患者322例、ならびに年齢、性、喫煙歴を肺癌患者集団とマッチさせた健常人(以下、標準化した健常人という)202例、及び年齢、喫煙歴を乳癌患者集団とマッチさせた健常人女性288例の各検体からゲノムDNAを調製し、標的領域を増幅したあと、制限酵素Hinf Iを用いたRFLP法により遺伝子型を決定した。
その結果、下記表33に示すように、健常人群に対し、肺癌患者でセリンアリルをホモで持つ個人の肺癌発症リスクが極めて高いことが再確認された。また、新たに解析した乳癌においては、上記と異なり、セリンアリルを少なくとも1個持つ個人が統計学的に充分な有意差で乳癌発症に抵抗性であることが判明した(オッズ比:0.60, 95%信頼区間:0.37-0.97)(P = 0.0067) 。なお、この遺伝子型は男女で分布が異なり、女性では約30%,我が国におよそ2,100万人存在すると推計される。
Figure 2008048733
(実施例30)癌の発症危険率に関与するWISP3遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
実施例12に記載の方法に従い、RFLP法を用いて本遺伝子がコードする56番目のアミノ酸のコドンがCAG (グルタミン)とCAT (ヒスチジン)のどちらであるかを調べた。
実施例12に記載した癌種に加えて、膵臓癌患者85例、食道癌患者193例、前立腺癌患者98例、乳癌患者322例、ならびに年齢、性比、喫煙歴を患者集団とマッチさせた健常人(以下、標準化した健常人という)男性135例、女性288例の各検体からゲノムDNAを調製し、標的領域を増幅したあと、制限酵素Dde Iを用いたRFLP法により遺伝子型を決定した。
その結果、下記表34に示すように、膵臓癌患者群におけるヒスチジンアリルのホモ型、ヒスチジンとグルタミンアリルのヘテロ型、および少なくとも1個のヒスチジンアリルを持つ遺伝子型の健常人群に対するオッズ比はそれぞれ6.13, 1.81, 2.28、95%信頼区間はいずれも1.0以上となり、膵臓癌患者群において統計学的有意差をもってヒスチジンアリルの高いリスクが認められた。また前立腺癌に関しても全く同様の結果が得られた。特にヒスチジンアリルの量的効果が明白に見られることは注目される。さらに、多数の検体による乳癌患者の結果は、ヒスチジンとグルタミンアリルのヘテロ型、および少なくとも1個のヒスチジンアリルを持つ遺伝子型の健常人群に対するオッズ比はそれぞれ1.45, 1.46, 95%信頼区間はいずれも1.0以上となり、P値も0.04以下であることから、充分な有意差でこれらの遺伝子型の高リスクが証明された。実施例12に示したように、肺癌におけるこの遺伝子多型の効果は証明されており、本遺伝子の多型が広い特異性で癌発症に関与することが示された。ただし、頭頸部癌,胃癌,大腸癌に関しては無関係であることが判明している。
Figure 2008048733
(実施例31)癌の発症危険率に関与するPTPN13遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
実施例13に記載の方法に従い、RFLP法を用いて、第28エクソンと第38エクソンに存在する二箇所のms-SNP(コドン1527 とコドン2086)を同時に解析した。食道癌患者193例、胃癌患者101例、膵臓癌患者85例、前立腺癌患者98例、頭頸部癌患者93例、および標準化した健常人202例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずPTPN13遺伝子第28エクソン内のコドン1527を含むDNA領域と第38エクソン内のコドン2086を含むDNA領域とを個別にPCR増幅した。そのあと、本遺伝子がコードする1527番目のアミノ酸のコドンがATA(イソロイシン)とATG(メチオニン)のどちらであるかをBsa WIを用いたRFLP法によって調べた。また、本遺伝子がコードする2086番目のアミノ酸のコドンがGAC(アスパラギン酸)とTAC(チロシン)のどちらであるかはHinf Iを用いたRFLP法によって調べた。
・PTPN13遺伝子第1527, 第2086コドンに関する複合遺伝子型解析
PTPN13遺伝子の二ケ所のms-SNPの効果をより総合的に解析するために、これらの遺伝子型の複合遺伝子型解析を実施した。前記の各検体について、PTPN13遺伝子第1527, 第2086コドンの遺伝子型全ての組み合わせデータが得られ、全ての複合遺伝子型頻度と各癌種の発症リスクとの関連を解析した。解析データの概要を下記表35に整理して示した。第28,第38エクソンの二つのms-SNP, 第1527, 第2086コドンの遺伝子型をアミノ酸の1文字表記で示す。[メチオニン(M),イソロイシン(I),チロシン(Y),アスパラギン酸(D)] 。また、全部で9種の複合遺伝子型のうち、健常人と癌患者群で分布に差のあったもののみを示す。
その結果、下記表35に示したように、調べた5種類の癌全てにおいて、オッズ比2前後で統計学的に有意な高リスクを示す遺伝子型が存在した。ただし、膵臓癌においては、ある限られた複合遺伝子型のみが保護的リスクを示し、他の癌種と際立った違いがあった。実施例13の結果と総合すると、本遺伝子のミスセンス多型2種の総合解析は調べた全ての癌種で発症危険度に関与することが明らかとなり、本遺伝子の重要性が再確認された。
Figure 2008048733
(実施例32)癌の発症危険率に関与するPTPRJ遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
実施例14に記載の方法に従い、RFLP法を用いて、第5エクソンと第6エクソンに存在する二箇所のms-SNP(コドン276 とコドン326)を同時に解析した。食道癌患者193例、肺扁平上皮癌患者63例、胃癌患者101例、膵臓癌患者85例、前立腺癌患者98例、および標準化した健常人202例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずPTPRJ遺伝子第5エクソン内のコドン276を含むDNA領域と第6エクソン内のコドン326を含むDNA領域とを個別にPCR増幅した。そのあと、本遺伝子がコードする276番目のアミノ酸のコドンがCAA (グルタミン)とCCA(プロリン)のどちらであるかをBsr GIを用いたRFLP法によって調べた。また、本遺伝子がコードする326番目のアミノ酸のコドンがCGA(アルギニン)とCAA(グルタミン)のどちらであるかはAva Iを用いたRFLP法によって調べた。
・ PTPRJ遺伝子第276, 第326コドン単独の効果
第276コドンのms-SNPは単独では調べた何れの癌種についても癌発症危険度との関連は示されなかった。一方、第326コドンのms-SNPに関しては、アルギニン型,グルタミン型両アリルをヘテロに持つ遺伝子型の頻度が健常人の24%に対し、膵臓癌患者では41%に達し、統計学的に有意に高い危険度を示した(オッズ比:2.15, 95%信頼区間:1.24 - 3.71, P = 0.0128)。実施例14の結果と総合すると、PTPRJ遺伝子第326コドンのヘテロ型は単独で大腸癌,食道癌および膵臓癌の発症危険度を有意に促進することが明らかになった。因みに、この多型のヘテロ遺伝子型は24%、我が国に約3,000万人存在すると推計され,これらの癌の重要な遺伝的リスク因子となっていることが示唆される。
・PTPRJ遺伝子第276, 第326コドンに関する複合遺伝子型解析
PTPRJ遺伝子の二ケ所のms-SNPの効果をより総合的に解析するために、これらの遺伝子型の複合遺伝子型解析を実施した。前記の各検体について、PTPRJ遺伝子第276, 第326コドンの遺伝子型全ての組み合わせデータが得られ、全ての複合遺伝子型頻度と各癌種の発症リスクとの関連を解析した。解析データの概要を下記表36に整理して示した。第5, 第6エクソンの二つのms-SNP, 第276, 第326コドンの遺伝子型をアミノ酸の1文字表記で示す[プロリン(P),グルタミン(Q),アルギニン(R)] 。また、全部で9種の複合遺伝子型のうち、健常人と癌患者群で分布に差のあったもののみを示す。
その結果、下記表36に示したように、調べた5種類の癌全てにおいて、オッズ比2前後で統計学的に有意な高リスクを示す遺伝子型が存在した。また、胃癌と頭頸部癌においては、マイナーアリルホモの遺伝子型が極めて高いリスクを示した。さらに、表には記載していないが、前立腺癌においてはPP/RQという健常人では稀な遺伝子型が極めて高い発症危険度を示した(オッズ比:12.2, 95%信頼区間:1.46-101.5, P = 0.0062)。実施例14の結果と総合すると、本遺伝子のミスセンス多型2種の総合解析は調べた全ての癌種で発症危険度に関与することが明らかとなり、本遺伝子の重要性が再確認された。
Figure 2008048733
(実施例33)癌の発症危険率に関与するRASSF6遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
実施例15に記載の方法に従い、RFLP法を用いて、コードする163番目のアミノ酸のコドンがTCT(セリン;Ser)とCCT(プロリン;Pro)のどちらであるかを調べた。
胃癌患者101例、ならびに年齢、性比、喫煙歴を患者集団とマッチさせた健常人(以下、標準化した健常人という)202例の各検体からゲノムDNAを調製し、標的領域を増幅したあと、制限酵素Ase Iを用いたRFLP法により遺伝子型を決定した。
その結果、下記表37に示すように、健常人群に対して胃癌患者群における少なくとも1個のプロリンアリルを含む遺伝子型のオッズ比は0.53、95%信頼区間は0.28から0.98となり、胃癌患者群において統計学的有意差で保護的効果が認められた。実施例15において、RASSF6遺伝子第163 コドンの遺伝子型が、セリン型とプロリン型アリルのヘテロ型であることは、肺癌、特に肺腺癌の発症危険率を高める遺伝的要因となることが明らかとなっており、この胃癌における同遺伝子多型の効果は予想外であった。即ち、このヘテロ型遺伝子の存在は肺腺癌の発症を高め、胃癌の発症を抑えるという二面的な作用を示す。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約24%、3,000 万人存在すると推定される。
Figure 2008048733
(実施例34)癌の発症危険率に関与するCASP9遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
実施例16に記載の方法に従い、RFLP法を用いて、コードする28番目のアミノ酸のコドンがGTC (バリン;Val)とGCC(アラニン;Ala)のどちらであるかを調べた。
肺腺癌患者109例、膵臓癌患者85例、ならびに年齢、性比、喫煙歴を患者集団とマッチさせた健常人(以下、標準化した健常人という)202例の各検体からゲノムDNAを調製し、標的領域を増幅したあと、制限酵素Aat IIを用いたRFLP法により遺伝子型を決定した。
その結果、下記表38に示すように、健常人群に対する肺腺癌、および膵臓癌患者群におけるアラニン型アリルのホモ型の遺伝子型のオッズ比は2.18, 3.36、95%信頼区間はいずれも1.0以上となり、同遺伝子型を持つ個人は肺腺癌、および膵臓癌の発症リスクが高まることが判明した。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約7%、875 万人存在すると見積もられる。なお、実施例16においては、肺扁平上皮癌患者群においてバリン型アリルのホモ遺伝子型が統計学的有意差で保護的効果を示すと記載したが、これは本実施例で述べたアラニンアリルの高リスクと表裏一体の関係にある。
Figure 2008048733
(実施例35)癌の発症危険率に関与するTRAP1遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
実施例17に記載の方法に従い、RFLP法を用いて、コードする307番目のアミノ酸のコドンがCGT(Arg)とGGT(Gly)のどちらであるかを調べた。
膵臓癌患者85例、前立腺癌患者98例、ならびに年齢、性比、喫煙歴を患者集団とマッチさせた健常人(以下、標準化した健常人という)202例(男性健常人対照は135例)の各検体からゲノムDNAを調製し、標的領域を増幅したあと、制限酵素Hph Iを用いたRFLP法により遺伝子型を決定した。
その結果、下記表39に示すように、健常人群に対する膵臓癌患者群におけるグリシン型アリルのホモ型の遺伝子型のオッズ比は1.79, 95%信頼区間は1.0以上となり、同遺伝子型を持つ個人は膵臓癌の発症リスクが高まることが判明した。実施例17においては、同じ遺伝子型が食道癌の高リスクを示す(オッズ比:2.00)ことを記載している。因みにこの遺伝子型を持つ人は我が国に約18%、2250万人存在すると見積もられる。また、前立腺癌においては、同配列におけるアルギニン/グリシン両アリルのヘテロ遺伝子型が統計学的に信頼できる高いリスクを示した(オッズ比:2,17, 95%信頼区間:1.15-4.09, P = 0.0197)。TRAP1遺伝子産物は熱ショックタンパク質の1種で転写制御やアポトーシスに関係があり、発癌のリスク因子としての発見はこの知見が世界初である。
Figure 2008048733
(実施例36)癌の発症危険率に関与するRAD17遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
実施例18に記載の方法に従い、RFLP法を用いて、546番目のアミノ酸のコドンがCTC (ロイシン;Leu)とCGC (アルギニン;Arg)のどちらであるかを調べた。
乳癌患者322例、及び年齢、喫煙歴を乳癌患者集団とマッチさせた健常人女性288例の各検体からゲノムDNAを調製し、標的領域を増幅したあと、制限酵素Aci Iを用いたRFLP法により遺伝子型を決定した。
その結果、下記表40に示すように、健常人群に対する乳癌患者群におけるアルギニン型アリルを少なくとも1個持つ遺伝子型のオッズ比は1.41, 95%信頼区間は1.0以上となり、同遺伝子型を持つ個人は乳癌の発症リスクが高まることが判明した。オッズ比は相対的に大きな値ではないが、用いた検体数の多さから統計学信頼性は高く、フィッシャーのP値は0.027となっている。また、検出力も高く、5%有意水準で87% を示した。実施例18においては、アルギニンアリルのホモ遺伝子型が肺癌の高リスクを示す(オッズ比:1.85)ことを記載している。
Figure 2008048733
(実施例37)EXO1遺伝子第12エクソンのms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
本遺伝子多型は、本発明者により既に肺癌や頭頸部癌の発症危険率との関係は報告されているが(特開平2005−245362号公報)、ここで述べる3種の癌の発症危険度との関連は新規である。
EXO1遺伝子については、RFLP法を用いて、コードする757番目のアミノ酸のコドンがCCT (プロリン;Pro)とCTT (ロイシン;Leu)のどちらであるかを調べた。すなわち、CCTの場合は、制限酵素Mnl Iの認識配列(CCTC)となり、Mnl Iで切断されるが、CTTの場合にはMnl Iの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がMnl Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
食道癌患者193例、前立腺癌患者98例、乳癌患者322例、および標準化した健常人423例(男性135例、女性288例)の各検体からゲノムDNAを調製し、まずEXO1遺伝子の第11イントロン後半部の配列と第12イントロン先端部の該SNP部位直下の配列からなる下記のプライマーセット#S1(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを64℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #S1
EXO1-Ex12-S1: 5’- CAGAATGGTCTTAAAATGGGTG(配列番号74)
EXO1-Ex12-AS1: 5’- TTCAGAATAAGAAACAAGGCAAC(配列番号75)
255bpのPCR増幅産物を制限酵素Mnl I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Mnl Iによる切断を受けない255bpのバンドが現れた場合には、EXO1遺伝子がコードする757番目のアミノ酸がロイシン(コドンCTT)であるアリル(以下、ロイシン型アリルとする)と判定し、Mnl Iによって切断された102bpと153bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がプロリン(コドンCCT)であるアリル(以下、プロリン型アリル)と判定した。
それぞれの検体の判定に基づいて、それぞれの癌患者群と健常人群の2群間において、EXO1遺伝子第757コドンがプロリン型アリルのホモ型(Pro/Pro)、ロイシン型アリルのホモ型(Leu/Leu)および両アリルのヘテロ型(Pro/Leu)の各遺伝子型のオッズ比および95%信頼区間を表計算ソフトウェア・エクセル(マイクロソフト社製)を用いて計算し、統計学的有意差があるかどうかを検定した。有意差のあった場合は、Fisherの直接確率(P値、両側検定)を求めた。
その結果、下記表41に示すように、健常人群に対する食道癌および乳癌患者群におけるプロリン型アリルをホモで持つ遺伝子型のオッズ比は1.56および1.48, 95%信頼区間は1.0以上となり、同遺伝子型を持つ個人は食道癌および乳癌の発症リスクが高まることが判明した。オッズ比は相対的に大きな値ではないが、用いた検体数の多さから統計学信頼性は高く、フィッシャーのP値は0.025以下となっている。一方、前立腺癌においてはロイシンアリルをホモで持つ個人が有意に低リスクであることが示された。実施例20においては、本遺伝子の第439コドンの多型が大腸癌および乳癌の発症に関与することを記載している。
Figure 2008048733
(実施例38)癌の発症危険率に関与するADH1B遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
実施例21に記載の方法に従い、RFLP法を用いて、コードする48番目のアミノ酸のコドンがCAC (ヒスチジン;His)とCGC(アルギニン;Arg)のどちらであるかを調べた。実施例21で肺癌、大腸癌、食道癌、乳癌が全てこの遺伝子多型によって発症危険度が影響されることを記載したので、本実施例では前立腺癌、胃癌、膵臓癌について解析した。
前立腺癌患者98例、胃癌患者101例、膵臓癌患者85例、及び年齢、喫煙歴を肺癌患者集団とマッチさせた健常人202例の各検体からゲノムDNAを調製し、標的領域を増幅したあと、制限酵素Msl Iを用いたRFLP法により遺伝子型を決定した。
その結果、下記表42に示すように、健常人群に対する前立腺癌患者群におけるアルギニン型アリルを少なくとも1個持つ遺伝子型のオッズ比は1.89、 95%信頼区間は1.0以上となり、同遺伝子型を持つ個人は前立腺癌の発症リスクが有意に高いことが示された(P = 0.028)。 しかしながら、胃癌及び膵臓癌においては、同遺伝子型はボーダーライン有意差を示し、高リスクの傾向を示した。
Figure 2008048733
(実施例39)WRN遺伝子第26エクソンのms-SNPを利用した癌の発症危険率に関与する遺伝子型の解析
本遺伝子多型は、本発明者により既に肺癌や頭頸部癌の発症危険率との関係は報告されているが(特開平2005−245362号公報)、ここで述べる膵臓癌の発症危険度との関連は新規である。
WRN遺伝子については、RFLP法を用いて、コードする1074番目のアミノ酸のコドンがTTT(フェニルアラニン;Phe)とTTG(ロイシン;Leu)のどちらであるかを調べた。すなわち、1塩基置換を含むセンスプライマーの導入により、TTTの場合は、制限酵素Hind IIIの認識配列(AAGCTT)となり、Hind IIIで切断されるが、TTGの場合にはHind IIIの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がHind IIIでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
膵臓癌患者85例、胃癌患者101例、および標準化した健常人202例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずWRN遺伝子の第26エクソン内の該SNP部位直前の配列と第26イントロン先端部の配列からなる下記のプライマーセット#S2(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを66℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #S2
WRN-Ex26-S3 : 5’- ATGAAGAATTGTGTCCAAAGAAGCT(配列番号76)
WRN-Ex26-AS1 : 5’- TTCATTTTACTTGTGAGAGGCCT(配列番号77)
137bpのPCR増幅産物を制限酵素Hind III〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Hind IIIによる切断を受けない137bpのバンドが現れた場合には、WRN遺伝子がコードする1074番目のアミノ酸がロイシン(コドンTTG)であるアリル(以下、ロイシン型アリルとする)と判定し、Hind IIIによって切断された22bpと116bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がフェニルアラニン(コドンTTT)であるアリル(以下、フェニルアラニン型アリル)と判定した。
その結果、下記表43に示すように、健常人群に対する膵臓癌患者群におけるロイシン型アリルをホモで持つ遺伝子型のオッズ比は2.22、 95%信頼区間は1.0以上となり、同遺伝子型を持つ個人は膵臓癌の発症リスクが有意に高いことが示された(P = 0.034)。 しかしながら、胃癌においては、同遺伝子型はボーダーライン有意差を示し、若干の高リスク傾向を示した。因みに、この遺伝子型を持つ個人は我が国に約15%, 1,875万人存在すると推計される。
Figure 2008048733
(実施例40)癌の発症危険率に関与するTP53遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
TP53遺伝子第72コドンの多型と癌発症リスクについては、これまでに世界中で多数の報告があり、例えば、肺癌、大腸癌、乳癌がこの遺伝子多型によって発症危険度が変化することが記載されている論文がある。本発明者も既に肺癌や頭頸部癌の発症危険率との関係を報告しているが(特開平2005−245362号公報)、ここで述べる日本人の食道癌、前立腺癌の発症危険度との関連は新規である。
TP53遺伝子については、RFLP法を用いて、TP53遺伝子のコードする72番目のアミノ酸のコドンがCGC (アルギニン;Arg)とCCC(プロリン;Pro)のどちらであるかを調べた。すなわち、CGCの場合は、制限酵素Bst U1の認識配列(CGCG)となり、Bst U1で切断されるが、CCCの場合にはBst U1の認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がBst U1でこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
前立腺癌患者98例、食道癌患者193例、および標準化した健常人202例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずTP53遺伝子の第4エクソン内の該SNP部位をはさむ第3イントロンの配列と第4イントロン先端部の配列からなる下記のプライマーセット#S3(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを67℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #S3
TP53-Ex4-S1: 5’- GACTGCTCTTTTCACCCATCTA(配列番号78)
TP53-Ex4-AS1: 5’- TGCAGGGGGATACGGCCAG(配列番号79)
365 bpのPCR増幅産物を制限酵素Bst U1〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Bst U1による切断を受けない365 bpのバンドが現れた場合には、TP53遺伝子がコードする72番目のアミノ酸がプロリン(コドンCCC)であるアリル(以下、プロリン型アリルとする)と判定し、Bst U1によって切断された144 bpと221 bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がアルギニン(コドンCGC)であるアリル(以下、アルギニン型アリル)と判定した。
その結果、下記表44に示すように、健常人群に対する食道癌および前立腺癌患者群におけるプロリン型アリルをホモで持つ遺伝子型のオッズ比はそれぞれ1.96, 2.47、 95%信頼区間は1.0以上となり、同遺伝子型を持つ個人は食道癌および前立腺癌の発症リスクが有意に高いことが示された。 しかしながら、前立腺癌については、同遺伝子型のFisher 法によるP値はボーダーラインの有意差 ( P = 0.0667)を示し、若干の疑問が残っている。因みに、この遺伝子型を持つ個人は我が国に約9%, 1,100万人存在すると推計される。
Figure 2008048733
(実施例41)癌の発症危険率に関与するAXIN2遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
AXIN2遺伝子第50コドンの多型と癌発症リスクについては、本発明者らにより既に肺癌の発症危険率との関係が報告されて公知であるが、ここで述べる前立腺癌の発症危険度との関連は新規である。
AXIN2遺伝子については、RFLP法を用いて、AXIN2遺伝子のコードする50番目のアミノ酸のコドンがCCT(プロリン;Pro) とTCT (セリン;Ser)のどちらであるかを調べた。すなわち、1塩基置換を含むセンスプライマーの導入により、TCTの場合は、制限酵素Afl IIIの認識配列(ACRYGT)となり、Afl IIIで切断されるが、CCCの場合にはAfl IIIの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がAfl IIIでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
前立腺癌患者98例、および標準化した健常人202例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずAXIN2遺伝子の第1エクソン内の該SNP部位直前の配列と第1イントロン先端部の配列からなる下記のプライマーセット#S4(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを67℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #S4
AXIN2-Ex1-S1: 5’- AAGGGCCAGGTCACCAAACACATG(配列番号80)
AXIN2-Ex1-AS1: 5’- CACCGGGTCAGAGGGGAATC(配列番号81)
110 bpのPCR増幅産物を制限酵素Afl III〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Afl IIIによる切断を受けない110 bpのバンドが現れた場合には、AXIN2遺伝子がコードする50番目のアミノ酸がセリン(コドンTCT)であるアリル(以下、セリン型アリルとする)と判定し、Afl IIIによって切断された23 bpと87 bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がプロリン(コドンCCT)であるアリル(以下、プロリン型アリル)と判定した。
その結果、下記表45に示すように、健常人群に対する前立腺癌患者群におけるプロリン型アリルとセリン型アリルをヘテロで持つ遺伝子型のオッズ比は0.49、95%信頼区間は1.0未満となり、同遺伝子型を持つ個人は前立腺癌の発症リスクが有意に低いことが示された。 セリン型アリルを少なくとも1個持つ遺伝子型でもほぼ同様の保護的効果を示した。しかしながら、逆の見方では、プロリン型アリルをホモで持つ44%の男性が他の遺伝子型に比べて約1.94倍の前立腺癌発症危険度を示すとも言える。
Figure 2008048733
(実施例42)癌の発症危険率に関与するPCNT2遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
PCNT2遺伝子の産物であるペリセントリンは中心体に存在し、細胞分裂の際の正常な染色体分配に関与する可能性がある。本遺伝子には多くのミスセンスSNPが知られているが、解析した4種のSNPのうち唯一第30エクソンのコドン2274におけるミスセンスSNPが陽性の結果をもたらした。
PCNT2遺伝子については、RFLP法を用いて、PCNT2遺伝子のコードする2274番目のアミノ酸のコドンがCCG(プロリン;Pro) とCTG(ロイシン;Leu)のどちらであるかを調べた。すなわち、この領域のPCR増幅断片について、CCGの場合は、制限酵素Nci Iの認識配列(CCC/GGG)となり、Nci Iで切断されるが、CTGの場合にはNci Iの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がNci Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺癌患者173例、大腸癌患者113例、および標準化した健常人202例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずPCNT2遺伝子の第30エクソン内の該SNP部位上流の配列と第30イントロン先端部の配列からなる下記のプライマーセット#S5(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを68℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #S5
PCNT2-Ex30-S1: 5’- GACTGGACCCTGGAGCCCT(配列番号82)
PCNT2-Ex30-AS1: 5’- GGGCAGACCACATTCCCACG(配列番号83)
280 bpのPCR増幅産物を制限酵素Nci I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Nci Iによる切断を受けない280 bpのバンドが現れた場合には、PCNT2遺伝子がコードする2274番目のアミノ酸がロイシン(コドンCTG)であるアリル(以下、ロイシン型アリルとする)と判定し、Nci Iによって切断された125 bpと155 bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がプロリン(コドンCCG)であるアリル(以下、プロリン型アリル)と判定した。
その結果、下記表46に示すように、健常人群に対する全肺癌および肺腺癌患者群におけるロイシン型アリルをホモで持つ遺伝子型のオッズ比はそれぞれ0.54, 0.48、95%信頼区間はいずれも1.0未満となり、同遺伝子型を持つ個人は全肺癌および肺腺癌の発症リスクが有意に低いことが示された。 プロリン型アリルとロイシン型アリルをヘテロで持つ遺伝子型のオッズ比は、肺癌では近有意に高いリスクを示した。一方、大腸癌でロイシン型アリルをホモで持つ遺伝子型のオッズ比は0.59で、境界領域の保護的効果を示した。しかしながら、大腸癌では、プロリン型アリルをホモで持つ33%の個人が他の遺伝子型に比べて約1.4倍の近有意発症危険度を示すことが示唆された。
Figure 2008048733
(実施例43)癌の発症危険率に関与するHER2遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
HER2(ERBB2)遺伝子の産物である膜貫通型受容体チロシンキナーゼは、ウイルス性癌遺伝子の由来となり、また乳癌など多くのヒト癌で過剰発現が見られる等、発癌の機構に密接に関与すると考えられている。本遺伝子の第655コドン(イソロイシン/バリン)のms-SNPは胃癌の発症危険度に関与するという国内での報告がある(Kuraoka,K.他,Int.J. Cancer, 107巻,p593-596,2003年)。
HER2遺伝子については、RFLP法を用いて、HER2遺伝子のコードする1170番目のアミノ酸のコドンがCCC(プロリン;Pro) とGCC(アラニン;Ala)のどちらであるかを調べた。すなわち、1塩基置換を導入したアンチセンスプライマーによるPCR増幅断片について、CCCの場合は、制限酵素Stu Iの認識配列(AGGCCT)となり、Stu Iで切断されるが、GCCの場合にはStu Iの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がStu Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
乳癌患者322例、および標準化した女性健常人288例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずHER2遺伝子の第26イントロン後端部の配列と第27エクソン内の該SNP部位直下の配列に1塩基置換を導入した配列からなる下記のプライマーセット#S6(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを68℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #S6
HER2-Ex27-S1: 5’- GTCACCTTCTCTTGACCTTT(配列番号84)
HER2-Ex27-AS1: 5’- TTCCCTGGGGAGAGAGTCTTAG(配列番号85)
141 bpのPCR増幅産物を制限酵素Stu I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Stu Iによる切断を受けない141 bpのバンドが現れた場合には、HER2遺伝子がコードする1170番目のアミノ酸がアラニン(コドンGCC)であるアリル(以下、アラニン型アリルとする)と判定し、Stu Iによって切断された118 bpと23 bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がプロリン(コドンCCC)であるアリル(以下、プロリン型アリル)と判定した。
その結果、下記表47に示すように、健常人群に対する乳癌患者群におけるアラニン型アリルをホモで持つ遺伝子型のオッズ比は1.91、95%信頼区間は1.25-2.90となり、P 値も0.0026と充分に低いため、同遺伝子型を持つ女性は乳癌の発症リスクが統計学的に極めて有意に高いことが判明した。この遺伝子型を持つ女性は我が国で約16%, 1,120万人存在すると推計される。
Figure 2008048733
(実施例44)癌の発症危険率に関与するERBIN遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
ERBIN(ERBB2IP)遺伝子の産物は、前記のERBB2膜貫通型受容体チロシンキナーゼと相互作用し、増殖信号を核に伝える重要な機能を持つと考えられている。
ERBIN遺伝子については、RFLP法を用いて、ERBIN遺伝子のコードする1112番目のアミノ酸のコドンがTCA(セリン;Ser) とTTA(ロイシン;Leu)のどちらであるかを調べた。すなわち、この領域のPCR増幅断片について、TCAの場合は、制限酵素MspA1Iの認識配列(CAGCTG)となり、MspA1Iで切断されるが、TTAの場合にはMspA1Iの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がMspA1Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺癌患者173例、食道癌患者193例および標準化した健常人202例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずERBIN遺伝子の第21エクソン内部で該SNP部位を挟む配列からなる下記のプライマーセット#S7(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを68℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #S7
ERBIN -Ex21-S1: 5’- CGGCAAAGTAGTGTGTCCTCC(配列番号86)
ERBIN -Ex21-AS1: 5’- AGAATGCTCAGAACCAACCCTT(配列番号87)
321 bpのPCR増幅産物を制限酵素MspA1I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。MspA1Iによる切断を受けない321 bpのバンドが現れた場合には、ERBIN遺伝子がコードする1112番目のアミノ酸がロイシン(コドンTTA)であるアリル(以下、ロイシン型アリルとする)と判定し、MspA1Iによって切断された112 bpと209 bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がセリン(コドンTCA)であるアリル(以下、セリン型アリル)と判定した。
その結果、下記表48に示すように、健常人群に対する全肺癌患者群におけるロイシン型アリルをホモで持つ遺伝子型のオッズ比は0.34、95%信頼区間は0.12-0.97となり、同遺伝子型を持つ個人は肺癌の発症リスクが統計学的に有意に低いことが判明した。ただし、 Fisher法によるP 値が0.059と有意水準を満たしていないため、この遺伝子型のインパクトはそれほど高くないと判断される。同じ遺伝子型の肺腺癌と食道癌の発症危険度に及ぼす影響は近有意域であった。
Figure 2008048733
(実施例45)癌の発症危険率に関与するPTPN12遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
PTPN12遺伝子は非受容体型のタンパク質チロシンホスファターゼの1種で、細胞増殖を促進するタンパク質チロシンキナーゼの機能に拮抗する作用があり、癌抑制作用があるものと考えられている。本発明でも関連する遺伝子、PTPN13が広汎な癌の発症危険度に関与することが明確になったため(実施例13)、PTPN12についても検討した。
(A) PTPN12遺伝子の第322, 第573コドンの解析
PTPN12遺伝子については、RFLP法を用いて、第12エクソンと第13エクソンに存在する二箇所のms-SNP(コドン322 とコドン573)を同時に解析した。
食道癌患者180例、頭頸部癌患者92例、および標準化した健常人202例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずPTPN12遺伝子第12エクソン内のコドン322を含むDNA領域と第13エクソン内のコドン573を含むDNA領域とを個別にPCR増幅した。そのあと、本遺伝子がコードする322番目のアミノ酸のコドンがATC(イソロイシン)とGTC(バリン)のどちらであるかを制限酵素Bcl Iを用いたRFLP法によって調べた。また、本遺伝子がコードする573番目のアミノ酸のコドンがGCA(アラニン)とACA(スレオニン)のどちらであるかは制限酵素Pst Iを用いたRFLP法によって調べた。具体的には以下のように行った。
1)コドン322:まずPTPN12遺伝子の第12エクソンを挟むイントロン11とイントロン12中の配列からなる下記のプライマーセット#S8(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを64℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #S8
PTPN12-Ex12-S1: 5’- AGGATTGAAAAGCACAGAAACA(配列番号88)
PTPN12-Ex12-AS1: 5’- AAGACATACAATACCTGCGGG(配列番号89)
193 bpのPCR増幅産物を制限酵素Bcl I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Bcl Iによる切断を受けない193 bpのバンドが現れた場合には、PTPN12遺伝子がコードする322番目のアミノ酸のコドンが バリン(コドンGTC)であるアリル(以下、バリン型アリルとする)と判定し、Bcl Iによって切断された118 bpと75 bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がイソロイシン(コドンATC)であるアリル(以下、イソロイシン型アリル)と判定した。
2)コドン573:まずPTPN12遺伝子の第13エクソン内のコドン573を挟む領域をエクソン13内の配列で、コドン573直下の配列に1塩基置換を導入したアンチセンスプライマーを含む下記のプライマーセット#S9(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを68℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #S9
PTPN12 -Ex13-S1: 5’- GGACATGTAACGTGGTCATTTCA(配列番号90)
PTPN12 -Ex13-AS1: 5’- GATCAGGTGTTTCAACTTGTGCTG(配列番号91)
148 bpのPCR増幅産物を制限酵素Pst I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Pst Iによる切断を受けない148 bpのバンドが現れた場合には、PTPN12遺伝子がコードする573番目のアミノ酸のコドンが スレオニン(コドンACA)であるアリル(以下、スレオニン型アリルとする)と判定し、Pst Iによって切断された124 bpと24 bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がアラニン(コドンGCA)であるアリル(以下、アラニン型アリル)と判定した。
(B) PTPN12遺伝子第322, 第573コドンに関する複合遺伝子型解析
PTPN12遺伝子の二ケ所のms-SNPの効果をより総合的に解析するために、これらの遺伝子型の複合遺伝子型解析を実施した。前記の各検体について、PTPN12遺伝子第322, 第573コドンの遺伝子型全ての組み合わせデータが得られ、全ての複合遺伝子型頻度と各癌種の発症リスクとの関連を解析した。
解析データを下記表49に示した。第12, 第13エクソンの二つのms-SNP, 第322, 第573コドンの遺伝子型をアミノ酸の1文字表記で示す。[イソロイシン(I), バリン(V), アラニン(A), スレオニン(T)] 。また、全部で9種の複合遺伝子型のうち、健常人と癌患者群で分布に差のあったもののみを示す。下記表49に示すように、健常人群に対する頭頸部癌および食道癌患者群の比較において、コドン322とコドン573の配列が各スレオニンとアラニンのホモ型である複合遺伝子型並びに各イソロイシン/バリン、アラニン/スレオニンのヘテロ型である複合遺伝子型を加えた群は、それぞれの癌発症危険度が有意に低下していることが明らかになった(オッズ比:0.42, 0.54; 95%信頼区間:1.0 未満)。ただし、 食道癌患者群ではFisher法によるP 値が0.065と有意水準を満たしていないため、この遺伝子型のインパクトはそれほど高くないと判断される。なお、肺癌においてはコドン322の配列がイソロイシン/イソロイシンのホモ型で、かつコドン573がアラニン/スレオニンのヘテロ型である複合遺伝子型が近有意に高い発症危険度を示した(データ未記載)。
Figure 2008048733
(実施例46)癌の発症危険率に関与するBARD1遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
BARD1遺伝子の産物は、乳癌の重要な抑制遺伝子であり欧米では遺伝性乳癌の原因遺伝子となっているBRCA遺伝子産物と相互作用し、乳癌の発症に関係すると考えられている。実際に、BARD1遺伝子の多型が乳癌や卵巣癌の発症危険度に関わるという欧米の報告がある。しかし日本人の乳癌では今までの所、相関は報告されていない。
本実施例では、肺癌について、BARD1遺伝子のコードする507番目のアミノ酸のコドンがGTG(バリン;Val) とATG(メチオニン;Met)のどちらであるかをRFLP法によって調べた。すなわち、この領域のPCR増幅断片について、ATGの場合は、制限酵素Nsi Iの認識配列(ATGCAT)となり、Nsi Iで切断されるが、GTGの場合にはNsi Iの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がNsi Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
肺癌患者173例、および標準化した健常人202例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずBARD1遺伝子の第6エクソン内部で該SNP部位を挟み、SNP部位直下に1塩基置換を導入したアンチセンスプライマーを含む下記のプライマーセット#S10(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを68℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #S10
BARD1 -Ex6-S1: 5’- CTTGCAATCATGGGCACCTGAA(配列番号92)
BARD1 -Ex6-AS1: 5’- GGAAAGTAACAGCTTGACTATATGCA(配列番号93)
143 bpのPCR増幅産物を制限酵素Nsi I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Nsi Iによる切断を受けない143 bpのバンドが現れた場合には、BARD1遺伝子がコードする507番目のアミノ酸がバリン(コドンGTG)であるアリル(以下、バリン型アリルとする)と判定し、Nsi Iによって切断された119 bpと24 bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がメチオニン(コドンATG)であるアリル(以下、メチオニン型アリル)と判定した。
その結果、下記表50に示すように、健常人群に対する全肺癌および肺扁平上皮癌患者群の比較において、コドン507の配列がメチオニンのホモ型である遺伝子型は、それぞれの癌発症危険度が統計学的に極めて有意に亢進していることが明らかになった(オッズ比:2.41,および 3.55; 95%信頼区間:1.1 以上)(P値:0.025および0.012 )。 これまで乳癌や卵巣癌に関係すると思われていた遺伝子の多型が肺癌にも影響するという初めての知見である。なお、この遺伝子型は日本人の約7%、870万人存在すると推計される。また、バリン/メチオニンのヘテロ遺伝子型も有意に極めて近いレベルで高リスクを示す傾向があり、メチオニン型アリルの優性効果が示唆された。
Figure 2008048733
(実施例47)癌の発症危険率に関与するIRAK1遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
IRAK1遺伝子の産物は、細胞増殖に関与するサイトカインであるIL-1の受容体と相互作用するプロテインキナーゼであり、増殖信号の細胞内伝達に関わると考えられる。本遺伝子はX染色体に位置するため、男性では1個の遺伝子しか存在しない。したがって男性では本遺伝子のms-SNPはその効果が直接反映される可能性が高いと考えられる。
ここでは、男性の食道癌について、IRAK1遺伝子のコードする532番目のアミノ酸のコドンがTCG (セリン;Ser) とTTG (ロイシン;Leu)のどちらであるかをRFLP法によって調べた。すなわち、この領域のPCR増幅断片について、TCGの場合は、制限酵素Bsm Iの認識配列(NGCATTC)となり、Bsm Iで切断されるが、TTGの場合にはBsm Iの認識配列にはならないことを利用し、この領域を含むDNA断片をゲノムDNAを鋳型として増幅し、増幅DNA断片がBsm Iでこの箇所が切断されるかどうかを調べた。具体的には以下のように行った。
男性食道癌患者140例、および標準化した男性健常人131例の各検体からゲノムDNAを調製し、まずIRAK1遺伝子の第11イントロン内の配列と、第12エクソン内の該SNP下流の配列からなるアンチセンスプライマーを含む下記のプライマーセット#S11(インビトロジェン(Invitrogen)社の受託合成品)を用い、このゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、変性を94℃で30秒間、アニーリングを69℃で60秒間、伸長を72℃で60秒間のサイクルを30回行う条件によって行った。
Primer Set #S11
IRAK1 -Ex12-S1: 5’- TCCCTCTTTTCCACTTGCAGGT(配列番号94)
IRAK1 -Ex12-AS1: 5’- CTAGGCTCTCGTCACTCTCCA(配列番号95)
258 bpのPCR増幅産物を制限酵素Bsm I〔ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)社製〕で37℃、一晩インキュベーションすることによって切断反応を行った。反応後のPCR増幅産物を3%アガロースゲルの電気泳動にかけることによって分離した。Bsm Iによる切断を受けない258 bpのバンドが現れた場合には、IRAK1遺伝子がコードする532番目のアミノ酸がロイシン(コドンTTG)であるアリル(以下、ロイシン型アリルとする)と判定し、Bsm Iによって切断された70 bpと188 bpのバンドが現れた場合には、同アミノ酸がセリン(コドンTCG)であるアリル(以下、セリン型アリル)と判定した。
その結果、下記表51に示すように、男性健常人群に対する男性食道癌患者群の比較において、IRAK1遺伝子のコドン532の配列がロイシンである遺伝子型は、食道癌の発症危険度が統計学的に有意に亢進していることが明らかになった(オッズ比:1.91; 95%信頼区間:1.1 以上)(P値:0.0081 )。 X染色体上に存在する遺伝子の多型で実際にヒト癌の発症危険度に関与することが明らかになった最初の例と考えられる。
Figure 2008048733
(実施例48)乳癌の発症危険率に関与する他の遺伝子のms-SNP遺伝子型の解析
乳癌の発症危険度に関与するms-SNPとして公知のものに、GPX1(グルタチオン過酸化酵素1)遺伝子の第2エクソン、第200コドンのプロリン/ロイシン(CCC/CTC)多型がある。乳癌患者250例と女性健常人247例の検体について、RFLPによりこの遺伝子型の分布を解析した。その結果、ロイシン型アリルを少なくとも1個含む遺伝子型を持つ個人の乳癌発症危険度が統計学的に有意に低下することが確認された(オッズ比:0.52, 95%信頼区間:0.30 - 0.92 , P値:0.025)。
また、ALDH2(アルデヒド脱水素酵素2)遺伝子の第504コドンにおける、グルタミン酸/リジン(GAA/AAA)多型に関しても、乳癌のリスクになりうるという報告があるため、乳癌患者294例と女性健常人282例の検体を用いて、RFLPによりこの遺伝子型の分布を解析した。その結果、リジン型アリルをホモで持つ遺伝子型の女性は統計学的近有意で乳癌発症危険度が増大することが確認された(オッズ比:1.75, 95%信頼区間:0.93 - 3.31)。
従って、上記遺伝子は、本願において見出された乳癌の発症危険予測に用いられる遺伝子とともに用いて、累積オッズ比の計算による総合的癌発症危険度の予測には用いることができる。
上記実施例2〜21、および実施例23〜47において、肺癌(肺腺癌、肺扁平上皮癌)、頭頸部癌、大腸癌、食道癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌の少なくとも1種の癌の発症危険率に影響する29遺伝子が判明した。このうちの26遺伝子と上記のいずれかの癌との関連性が公知のPOLD1遺伝子、RASSF1遺伝子、ALDH2遺伝子、ADH1C遺伝子、GPX1遺伝子の5遺伝子について、ms-SNP(癌発症危険率が統計学的に有意に高いSNPと癌発症危険率が統計学的に有意に低いSNPを含む)を癌種別に下記表52に示す。
Figure 2008048733
Figure 2008048733
表52中、番号(No.)欄の数字は配列番号に一致、※印は一部の癌との関連性が公知の遺伝子を示す。遺伝子名の網かけは新規発明を、オッズ比欄の網かけは保護的SNPを、P値欄の網かけは0.05以上のものを示す。検出力 (Power)はCochran-Armitageの方法に従って算出した。この値が80%未満の場合は偽陽性の確率が20%以上となるもので、網かけで示した。
(実施例49)検出力(Power)による癌の発症危険度予測に関する統計データの信頼性評価
本発明によって得られた癌の発症危険度予測に関する統計データの信頼性を検出力 (Power)によって検証した。検出力は該当する遺伝子変化の効果(オッズ比)、健常人群における遺伝子型頻度、浸透率、検体数、有意水準などによって規定される「確かさ」の総合的評価である。この検出力は80%以上であることが望ましい。検出力はWEB上で公開されている検出力計算ソフト(Cochran-Armitage法)を用い、有意水準0.05, 0.01 の2通りの場合について計算した(URL:http://ihg.gst.de/cgi-bin/hw/power2.pl)。なお、浸透率は現在の各種癌の罹患率が今後40年間継続すると仮定した場合の40年間の推定罹患数と患者群、健常人群双方の遺伝子型頻度に基づいて計算した。
その結果、表52に示されるように、有意水準0.05の場合、104通りのSNP-リスク組み合わせのうち、99組(95%)は検出力が80%以上であった。また、有意水準0.01の場合は73%が検出力80%以上であった。このように、本発明における癌発症危険度予測の統計学的パワーは、少なくとも個別の遺伝子多型については、幾つかの例外を除き、充分な信頼性があることが確認された。
また、表52に示されるように、重複するものを含めて、統計学的に有意なms-SNPは、全肺癌(非小細胞肺癌)に関しては高リスクSNPが12種、保護的SNPが3種の計15種;肺腺癌に関しては高リスクSNPが15種、保護的SNPが3種の計18種;肺扁平上皮癌に関しては高リスクSNPが8種、保護的SNPが1種の計9種;頭頸部癌に関しては高リスクSNPが5種、保護的SNPが1種の計6種;大腸癌に関しては高リスクSNPが7種;胃癌に関しては高リスクSNPが6種、保護的SNPが2種の計8種;膵臓癌に関しては高リスクSNPが8種、保護的SNPが2種の計10種;食道癌に関しては高リスクSNPが11種、保護的SNPが3種の計14種;前立腺癌に関しては高リスクSNPが9種、保護的SNPが2種の計11種;乳癌に関しては高リスクSNPが4種、保護的SNPが2種の計6種あった。
これらのms-SNPと各種の癌発症危険度との相関は合計すると104例に達するが、うち97例は本発明で初めて明らかになったものである。本研究に特徴的なことは、新規に見い出したリスクに関わる遺伝子多型が複数の癌種に共通して影響する場合が多く見られたことである。例えば、PTPN13, PTPRJは調べた癌種の全ての発症危険度に何れかの遺伝子型が関わり、TDG, WISP3, MAD1L1などは5種類以上の癌に関わることが判明した。このことは、これらの遺伝子は広汎な癌種の発症危険度に関わる一般的な体質遺伝因子であることを示唆している。
また、上記29遺伝子のうちの27遺伝子と、POLD1遺伝子、RASSF1遺伝子、ALDH2遺伝子、ADH1C遺伝子、GPX1遺伝子の5遺伝子の計32遺伝子におけるms-SNPと各癌の発症危険率との関連を癌種別に図6にまとめた。
(実施例50)複数のリスク関連ms-SNPが同一個人で重複することによる癌発症危険率の評価
本実施例では、各癌種の発症危険率に対して統計学的に有意な結果を与えたms-SNP(高リスクSNP、保護的SNPを含む)のみを用い、個人ごとに重複する全てのオッズ比データをかけ合わせた累積オッズ比(Cumulative Odds Ratio; COR)を算出した。
表52に記載した統計学的有意差を持つ遺伝子多型データを用いて、これまでに健常人202例、肺腺癌患者109例、肺扁平上皮癌患者57例、頭頸部癌患者93例、食道癌患者193例、大腸癌患者113例、前立腺癌患者98例、乳癌患者322例、胃癌患者101例、膵臓癌患者85例、合計1,373人の累積オッズ比計算を終了した。採用した遺伝子多型は、これらの検体のほぼ全ての解析が終了したもので、表52に記載した全てではない。乳癌についてのみは、統計学的に近有意な3種のSNP(高リスクSNPが2種、保護的SNPが1種)を加えて計算した。計算に用いた遺伝子多型は以下の通りである。
肺腺癌:(16 遺伝子)
RAD17(OR:1.86), POLD1(OR:3.2), RASSF1(OR:2.56), WISP3(OR:1.65), CEP192(OR:11.8),ADH1B(OR:2.42), NIN(OR:3.82+1.97), PTPN13(OR:3.07+2.56), PTPRJ(OR:1.8),
RAD23B(OR:1.62), TDG(OR:2.73), RASSF6(OR:1.83), CASP9(OR:2.18), SNM1B(OR:0.49), AXIN2(OR:0.32), PCNT2(OR:0.48)
肺扁平上皮癌:(7遺伝子)
WISP3(OR:5.07+2.19), TDG(OR:3.74), NIN(OR:2.94), PTPN13(OR:2.62), PTPRJ(OR:2.37),NOB1P(OR:2.43), MAD1L1(OR:0.34)
頭頸部癌:(4 遺伝子)
RAD23B(OR:6.72), PTPN13(OR:2.37), PTPRJ(6.4+3.6), NOB1P(OR:1.74)
大腸癌:(6 遺伝子)
EXO1(ex9)(OR:1.69), ADH1B(OR:2.57), PTPN13(OR:9.9+2.2), PTPRJ(OR:4.14)
ALDH2(OR:1.59), MAD1L1(OR:1.91)
食道癌:(11 遺伝子)
ADH1B(OR:6.18), ALDH2(OR:2.43), TDG(OR:2.41), TP53(OR:1.96), ADH1C(OR:2.11),
PTPN13(OR:2.15), PTPRJ(OR:2.22), EXO1(ex12)(OR:1.56), TRAP1(OR:2.00),
PTPN13(OR:0.29), MAD1L1(OR:0.60)
胃癌:(8 遺伝子)
NIN(OR:2.42), PTPN13(OR:2.05), PTPRJ(OR:6.5+1.5), RAD23B(10.9), TDG(OR:3.0),
AURKA(OR:1.67), RASSF6(OR:0.53), MAD1L1(OR:0.46)
膵臓癌:(9 遺伝子)
WISP3(OR:6.13+1.81), CASP9(OR:3.36), WRN(OR:2.2), NIN(OR:2.19), PTPRJ(OR:2.15), TDG(OR:2.42), TRAP1(OR:1.79), MAD1L1(OR:0.31), PTPN13(OR:0.27)
前立腺癌:(10 遺伝子)
TDG(OR:4.32), AURKA(OR:1.98), TP53(OR:2.47), WISP3(OR:2.54), ADH1B(OR:1.89),
TRAP1(OR:2.17), PTPN13(OR:2.12), PTPRJ(OR:12+2.0), EXO1(ex12)(OR:0.42),
AXIN2(OR:0.49)
乳癌:(8 遺伝子)
EXO1(ex12)(OR:1.48), WISP3(OR:1.46), RAD17(OR:1.41), HER2(OR;1.91),
CEP192(OR:0.60), GPX1(OR:0.52), RAD23B(OR:1.56), ALDH2(OR:1.75),
EXO1(ex9)(OR:0.72)
注)OR:オッズ比(同じ遺伝子の複数のORは同一の対照に対し、異なる遺伝子型が異なる有意のリスクを示した場合である。アンダーラインは近有意)
(1)累積オッズ比(COR)の解析
上記の累積オッズ比の解析を総合的にまとめたものを表53に示した。いずれの癌においても、癌患者群のCORは平均値、中央値共に健常人群の数倍以上となり、重複する高リスクSNPの数が患者群に多いことが示された。例えば、ある肺腺癌患者は肺腺癌発症高リスクms-SNPの遺伝子型13種中8種を重複して持ち、COR値が1,000を超える最高値を示した。また、肺腺癌のCOR値の最低値と最高値は約3,700 倍の広がりがあり、個人による癌発症リスクが遺伝子型で大きく異なることが示された。
Figure 2008048733
(2)累積オッズ比(COR)分布様式の解析
各癌種でCORの分布は健常人と癌患者とで大きく異なり、癌患者ではCORの値が大きい方にシフトしている。それぞれの癌毎に、健常人と癌患者両群について、CORの分布帯を統計的に有意な分類で5段階に分類することができた。すなわち、最も発症危険度の低い超低リスク群、低リスク群、中間的な群、高リスク群、および最も発症危険度の高い超高リスク群である。中間群以外はその分布帯以外のリスクがより低い(または高い)群を合わせて対照とした時、統計学的有意差をもって、相対的なオッズ比が推定できた。このような5段階のCOR分布帯のデータを図7に示した。ただし、頭頸部癌では有意となった遺伝子多型の数が少ないため、4段階になっている。
この結果は健常人群と患者群との明確な差異を示し、健常人で僅か0.5% を占める超高リスク群から癌患者の約10〜20%が生じていること、健常人で約20%を占める高リスク群から約半数の癌患者が発症していることが判明した。一方、健常人で10〜30%を占める超低リスク群からは癌患者の僅か数%のみが発症していること、2番目に低いリスクの群も含めた低リスク健常人は、各癌とも全国で約7千万人になることが示されている。この超低リスク群と低リスク群を合算した4段階分類を図8に示す。合算した低リスク群は健常人の40〜70%を占め、癌発症危険度が相対的に低いことを示すが、注意すべきことはゼロではないと言うことである。この群を対照(オッズ比 = 1.00)とした時、中間群、高リスク群、超高リスク群の実効オッズ比を図8に示すが、超高リスク群ではその値が40〜140以上に及び、遺伝子型による差異が極めて大きいことが判明した。
(3)累積オッズ比(COR)分布解析に基づく40歳以上成人の癌発症危険度予測
前項の4段階評価を基本として、各COR分布帯の人口比、オッズ比などを表54に整理して示した(ただし、頭頸部癌のみは有意となった遺伝子多型の数が少ないため、3段階で示した)。
Figure 2008048733
同表には40歳以上の男女別に、各癌について該当するCOR分布帯のCORを示す遺伝子型重複をもつ個人が、今後30年間または20年間にどの程度の確率でその癌を発症するかを予測した。この予測は現在の各癌の罹患率が今後20〜30年間変わらないことを仮定しており、また生活習慣などを考慮していない。算出のための数式は以下の関数による(A癌に関するCOR分布帯Bの個人<男/女>の場合)。
発症確率/30年 =
A癌の年間罹患総数(男/女)x 30年x A癌患者群のCOR分布帯Bの割合
40歳以上(男/女)人口 x 健常人群のA癌に関するCOR分布帯Bの割合
結果は%で出るが、判りやすくするために何人に一人発症するかで表した。なお、大腸癌と胃癌に関しては、超高リスク群の場合に30年間では100%を超えてしまうため、20年間の発症危険度とした。
表54から明らかなように、日本で約16万人と推定される各癌の超高リスク群に属する40歳以上の男性は、大腸癌と胃癌では20年間に4人中3人、肺癌と食道癌では30年間に2人中1人が発症する確率となる。一方、低リスク群に属する40歳以上の男性(約2千万人)は大腸癌と胃癌について60人中1人、肺癌と食道癌についても200人中1人ほどの発症危険度となる。又、女性の場合は発症リスクが大幅に低下するが、肺腺癌、大腸癌、胃癌などの超高リスク群については、ほぼ3人中1人の確率となる。これらの癌と膵臓癌は罹患率に男女差が少なく、遺伝的体質が大きく影響する可能性が高いと考えられる。それに対し、食道癌、肺扁平上皮癌などは飲酒、喫煙などの生活習慣がより大きな因子となっていると考えられる。
以上のように、多数の関連ms-SNP遺伝子型のオッズ比をかけあわせた累積オッズ比を用いる本発明の癌発症危険率予測法により、健常人中の約10〜20%の危険群と約60〜70%の安全群を予測することが可能となった。残りの約10〜30%はグレイゾーンであり、生活習慣や年齢、家族歴などを勘案して総合的に判断する必要がある。癌発症危険度が極めて高い要注意レベルの人は何れの癌でも約0.5〜3%、それぞれ国内におよそ60〜400万人存在すると推計される。
本発明方法によれば、これらの超高リスクの人々をスクリーニングして特定し、生活習慣の改善等による癌発症の予防や集中的な診断による早期発見に役立てることができる。このように、本発明は「証拠に基づく癌予防」(Evidence-based Prevention of Cancer: EBP)の具体策として有効であると期待される。
図1は、20遺伝子のms-SNPと各癌の発症危険率との関係を示す(図中、Aは統計学的有意差のあったms-SNP、Bは統計学的近有意差のあったms-SNPを示す。網掛けは保護的SNP、カッコは公知である情報を示す)。 図2は肺腺癌の累積オッズ比(COR)の分布を示す。 図3は肺扁平上皮癌の累積オッズ比(COR)の分布を示す。 図4は食道癌の累積オッズ比(COR)の分布を示す。 図5は癌種別累積オッズ比(COR)の分布を示す。 図6は、32遺伝子のms-SNPと各癌の発症危険率との関係を示す(図中、Aは統計学的有意差のあったms-SNP、Bは統計学的近有意差のあったms-SNPを示す。空欄は解析の結果、該当癌種の発症危険度と相関しないことが判明したもの、網掛けは保護的SNP、カッコは公知である情報を示す)。 図7は癌種別累積オッズ比(COR)の分布(5段階)を示す。 図8は癌種別累積オッズ比(COR)の分布(4段階)を示す。

Claims (16)

  1. 被験者の染色体上の遺伝子における、以下の(a1)〜(a34)から選ばれる少なくとも1種のミスセンス1塩基多型を調べることを特徴とする、肺癌、頭頸部癌、大腸癌、乳癌、食道癌、前立腺癌、膵臓癌、および胃癌からなる群より選択される少なくとも1種の癌の発症危険率を予測する方法。
    (a1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
    (a2)配列番号2に示すRAD18遺伝子がコードするアミノ酸配列における302番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)またはCAA(Gln)であるミスセンス1塩基多型
    (a3)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGCT(Ala)またはGTT(Val)であるミスセンス1塩基多型
    (a4)配列番号4に示すSNM1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における61番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)またはCAC(His)であるミスセンス1塩基多型
    (a5)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)またはCAC(His)であるミスセンス1塩基多型
    (a6)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがATT(Ile)またはTTT(Phe)であるミスセンス1塩基多型
    (a7)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)またはGCA(Ala)であるミスセンス1塩基多型
    (a8)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1131番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)またはCAG(Gln)であるミスセンス1塩基多型
    (a9)配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)またはCAG(Gln)であるミスセンス1塩基多型
    (a10)配列番号9に示すCEP152遺伝子がコードするアミノ酸配列における54番目のアミノ酸のコドンがTCG(Ser)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a11)配列番号10に示すCEP192遺伝子がコードするアミノ酸配列における956番目のアミノ酸のコドンがCCC(Pro)またはTCC(Ser)であるミスセンス1塩基多型
    (a12)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAG(Gln)またはCAT(His)であるミスセンス1塩基多型
    (a13)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)またはATA(Ile)であるミスセンス1塩基多型
    (a14)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)またはGAC(Asp)であるミスセンス1塩基多型
    (a15)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)またはCCA(Pro)であるミスセンス1塩基多型
    (a16)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)またはCAA(Gln)であるミスセンス1塩基多型
    (a17)配列番号14に示すRASSF6遺伝子がコードするアミノ酸配列における163番目のアミノ酸のコドンがTCT(Ser)またはCCT(Pro)であるミスセンス1塩基多型
    (a18)配列番号15に示すCASP9遺伝子がコードするアミノ酸配列における28番目のアミノ酸のコドンがGTC(Val)またはGCC(Ala)であるミスセンス1塩基多型
    (a19)配列番号16に示すTRAP1遺伝子がコードするアミノ酸配列における307番目のアミノ酸のコドンがCGT(Arg)またはGGT(Gly)であるミスセンス1塩基多型
    (a20)配列番号17に示すRAD17遺伝子がコードするアミノ酸配列における546番目のアミノ酸のコドンがCTC(Leu)またはCGC(Arg)であるミスセンス1塩基多型
    (a21)配列番号18に示すDUSP6遺伝子がコードするアミノ酸配列における114番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a22)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における439番目のアミノ酸のコドンがACG(Thr)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
    (a23)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における757番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)またはCTT(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a24)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)またはCGC(Arg)であるミスセンス1塩基多型
    (a25)配列番号21に示すWRN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1074番目のアミノ酸のコドンがTTT(Phe)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a26)配列番号22に示すTP53遺伝子がコードするアミノ酸配列における72番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)またはCCC (Pro)であるミスセンス1塩基多型
    (a27)配列番号23に示すAXIN2遺伝子がコードするアミノ酸配列における50番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)またはTCT(Ser)であるミスセンス1塩基多型
    (a28)配列番号24に示すPCNT2遺伝子がコードするアミノ酸配列における2274番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)またはCTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a29)配列番号25に示すHER2遺伝子がコードするアミノ酸配列における1170番目のアミノ酸のコドンがCCC(Pro)またはGCC(Ala)であるミスセンス1塩基多型
    (a30)配列番号26に示すERBIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1112番目のアミノ酸のコドンがTCA(Ser)またはTTA(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a31)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における322番目のアミノ酸のコドンがATC(Ile)またはGTC(Val)であるミスセンス1塩基多型
    (a32)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における573番目のアミノ酸のコドンがGCA(Ala)またはACA(Thr)であるミスセンス1塩基多型
    (a33)配列番号28に示すBARD1遺伝子がコードするアミノ酸配列における507番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
    (a34)配列番号29に示すIRAK1遺伝子がコードするアミノ酸配列における532番目のアミノ酸のコドンがTCG(Ser)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
  2. 肺癌が、全肺癌(非小細胞肺癌)、肺腺癌、または肺扁平上皮癌である、請求項1に記載の方法。
  3. 被験者が、以下の(b1)〜(b15)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、全肺癌(非小細胞肺癌)の発症危険率を予測する方法。
    (b1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (b2)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルとGCA(Ala)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
    (b3)配列番号10に示すCEP192遺伝子がコードするアミノ酸配列における956番目のアミノ酸のコドンがTCC(Ser)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (b4)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
    (b5)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (b6)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)のアリルであるホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルであるホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Met/Met-Tyr/Tyr)
    (b7)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルとGAC(Asp)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Ile-Tyr/Asp)
    (b8)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)
    (b9)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルとCGC(Arg)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
    (b10)配列番号2に示すRAD18遺伝子がコードするアミノ酸配列における302番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (b11)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがTTT(Phe)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (b12)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (b13)配列番号24に示すPCNT2遺伝子がコードするアミノ酸配列における2274番目のアミノ酸のコドンがCTG(Leu)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (b14)配列番号26に示すERBIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1112番目のアミノ酸のコドンがTTA(Leu)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (b15)配列番号28に示すBARD1遺伝子がコードするアミノ酸配列における507番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
  4. 被験者が、以下の(c1)〜(c15)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、肺腺癌の発症危険率を予測する方法。
    (c1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (c2)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルとGCA(Ala)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
    (c3)配列番号10に示すCEP192遺伝子がコードするアミノ酸配列における956番目のアミノ酸のコドンがTCC(Ser)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (c4)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
    (c5)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)のアリルであるホモ型の遺伝子型
    (c6)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)のアリルであるホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルであるホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Met/Met-Tyr/Tyr)
    (c7)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルとGAC(Asp)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Ile-Tyr/Asp)
    (c8)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)
    (c9)配列番号14に示すRASSF6遺伝子がコードするアミノ酸配列における163番目のアミノ酸のコドンがTCT(Ser)であるアリルとCCT(Pro)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
    (c10)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルとCGC(Arg)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
    (c11)配列番号4に示すSNM1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における61番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (c12)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがTTT(Phe)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (c13)配列番号15に示すCASP9遺伝子がコードするアミノ酸配列における28番目のアミノ酸のコドンがGCC(Ala)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (c14)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGTT(Val)であるアリルを少なくとも1個含む遺伝子型
    (c15)配列番号24に示すPCNT2遺伝子がコードするアミノ酸配列における2274番目のアミノ酸のコドンがCTG(Leu)であるアリルのホモ型の遺伝子型
  5. 被験者が、以下の(d1)〜(d13)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、肺扁平上皮癌の発症危険率を予測する方法。
    (d1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (d2)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (d3)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1131番目のアミノ酸のコドンがCAG(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (d4)配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)であるアリルとCAG(Gln)であるヘテロ型の遺伝子型
    (d5)配列番号9に示すCEP152遺伝子がコードするアミノ酸配列における54番目のアミノ酸のコドンがTTG(Leu) であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
    (d6)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
    (d7)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (d8)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)のアリルであるホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルであるホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Met/Met-Tyr/Tyr)
    (d9)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルとGAC(Asp)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Ile-Tyr/Asp)
    (d10)配列番号2に示すRAD18遺伝子がコードするアミノ酸配列における302番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (d11)配列番号15に示すCASP9遺伝子がコードするアミノ酸配列における28番目のアミノ酸のコドンがGTC(Val)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (d12)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)、または前記アミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)およびCCA(Pro)のヘテロ型の遺伝子型と326番目のアミノ酸のコドンが少なくとも1個はCGA(Arg)アリルの遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Gln/Pro-Gln/Arg またはGln/Pro-Arg/Arg)
    (d13)配列番号28に示すBARD1遺伝子がコードするアミノ酸配列における507番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
  6. 被験者が、以下の(e1)〜(e6)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、頭頸部癌の発症危険率を予測する方法。
    (e1)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGTT(Val)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (e2)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (e3)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルとGAC(Asp)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Met/Met-Tyr/Asp)。
    (e4)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)
    (e5)配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)であるアリルとCAG(Gln)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
    (e6)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における322番目のアミノ酸のコドンがATC(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における573番目のアミノ酸のコドンがACA(Thr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Ile-Thr/Thr)、並びに同アミノ酸配列における322番目と573番目のアミノ酸のコドンが共にヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Val-Ala/Thr)
  7. 被験者が、以下の(f1)〜(f5)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、大腸癌の発症危険率を予測する方法。
    (f1)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (f2)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルとGAC(Asp)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Met/Met-Tyr/Asp)
    (f3)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)であるアリルのホモ型である遺伝子型
    (f4)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)
    (f5)配列番号17に示すRAD17遺伝子がコードするアミノ酸配列における546番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
  8. 被験者が、以下の(g1)〜(g11)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、食道癌の発症危険率を予測する方法。
    (g1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (g2)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGCT(Ala)であるアリルとGTT(Val)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
    (g3)配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)であるアリルとCAG(Gln)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
    (g4)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)であるアリルとCAA(Gln)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
    (g5)配列番号18に示すDUSP6遺伝子がコードするアミノ酸配列における114番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (g6)配列番号16に示すTRAP1遺伝子がコードするアミノ酸配列における307番目のアミノ酸のコドンがCGT(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (g7)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (g8)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Ile-Tyr/Tyr)、または前記アミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)とATG(Met)のヘテロ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがGAC(Asp)またはTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Met-Tyr/TyrまたはIle/Met-Asp/Asp)
    (g9)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における757番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (g10)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における322番目のアミノ酸のコドンがATC(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における573番目のアミノ酸のコドンがACA(Thr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Ile-Thr/Thr)、並びに同アミノ酸配列における322番目と573番目のアミノ酸のコドンが共にヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Ile/Val-Ala/Thr)
    (g11)配列番号29に示すIRAK1遺伝子がコードするアミノ酸配列における532番目のアミノ酸のコドンがTTG(Leu)である遺伝子型(男性のみに適用、X染色体上にあるため、1アリルしか存在しない)
  9. 被験者が、以下の(h1)〜(h7)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、乳癌の発症危険率を予測する方法。
    (h1)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における439番目のアミノ酸のコドンがACG(Thr)であるアリルとATG(Met)であるアリルのヘテロ型遺伝子型
    (h2)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルとCGC(Arg)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
    (h3)配列番号10に示すCEP192遺伝子がコードするアミノ酸配列における956番目のアミノ酸のコドンがTCC(Ser)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
    (h4)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
    (h5)配列番号17に示すRAD17遺伝子がコードするアミノ酸配列における546番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
    (h6)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における757番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (h7)配列番号25に示すHER2遺伝子がコードするアミノ酸配列における1170番目のアミノ酸のコドンがGCC(Ala)であるアリルのホモ型の遺伝子型
  10. 被験者が、以下の(i1)〜(i10)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、前立腺癌の発症危険率を予測する方法。
    (i1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (i2)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがATT(Ile) であるアリルとTTT(Phe)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
    (i3)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
    (i4)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Ile/Ile-Tyr/Tyr)
    (i5)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルとCGA(Arg)であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Arg)、または前記アミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)およびCCA(Pro)のヘテロ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)およびCGA(Arg)アリルのヘテロ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Gln/Pro-Gln/Arg)
    (i6)配列番号16に示すTRAP1遺伝子がコードするアミノ酸配列における307番目のアミノ酸のコドンがCGT(Arg)であるアリルとGGT(Gly) であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型
    (i7)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における757番目のアミノ酸のコドンがCTT(Leu)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (i8)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
    (i9)配列番号22に示すTP53遺伝子がコードするアミノ酸配列における72番目のアミノ酸のコドンがCCC (Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (i10)配列番号23に示すAXIN2遺伝子がコードするアミノ酸配列における50番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)であるアリルとTCT(Ser)であるであるアリルとのヘテロ型の遺伝子型
  11. 被験者が、以下の(j1)〜(j9) から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、膵臓癌の発症危険率を予測する方法。
    (j1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (j2)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (j3)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルとGCA(Ala)であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型と、前記アミノ酸配列における1131番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)アリルのホモ型である遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Ala-Pro/Pro)
    (j4)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAT(His)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
    (j5)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルとATG(Met)であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型と、前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)またはGAC(Asp)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Ile/Met-Tyr/Tyr またはIle/Met-Asp/Asp)
    (j6)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルとCGA(Arg) であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型(Gln/Arg)
    (j7)配列番号15に示すCASP9遺伝子がコードするアミノ酸配列における28番目のアミノ酸のコドンがGCC(Ala)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (j8)配列番号16に示すTRAP1遺伝子がコードするアミノ酸配列における307番目のアミノ酸のコドンがGGT(Gly) であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (j9)配列番号21に示すWRN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1074番目のアミノ酸のコドンがTTG(Leu)であるアリルのホモ型の遺伝子型
  12. 被験者が、以下の(k1)〜(k8)から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有するかどうかを調べることを特徴とする、胃癌の発症危険率を予測する方法。
    (k1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (k2)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGTT(Val)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (k3)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)であるアリルのホモ型の遺伝子型
    (k4)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがATT(Ile) であるアリルとTTT(Phe)であるアリルのヘテロ型の遺伝子型
    (k5)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルとGCA(Ala)であるアリルとのヘテロ型の遺伝子型と、前記アミノ酸配列における1131番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)であるアリルとCAG(Gln)でありアリルとのヘテロ型である遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Ala-Pro/Gln)
    (k6)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATA(Ile)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Ile/Ile-Tyr/Tyr)、並びに前記アミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがGAC(Asp)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型 (Met/Met-Asp/Asp)
    (k7)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)であるアリルのホモ型の遺伝子型と前記アミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)であるアリルのホモ型の遺伝子型からなる複合遺伝子型(Pro/Pro-Gln/Gln)
    (k8)配列番号14に示すRASSF6遺伝子がコードするアミノ酸配列における163番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)であるアリルを少なくとも1個有する遺伝子型
  13. 以下の(a1)〜(a34)から選ばれる少なくとも1種のミスセンス1塩基多型部位を含む連続する少なくとも10塩基の配列、またはその相補配列にハイブリダイズすることができる、請求項1〜12に記載の方法においてプローブとして用いるオリゴヌクレオチド。
    (a1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
    (a2)配列番号2に示すRAD18遺伝子がコードするアミノ酸配列における302番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)またはCAA(Gln)であるミスセンス1塩基多型
    (a3)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGCT(Ala)またはGTT(Val)であるミスセンス1塩基多型
    (a4)配列番号4に示すSNM1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における61番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)またはCAC(His)であるミスセンス1塩基多型
    (a5)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)またはCAC(His)であるミスセンス1塩基多型
    (a6)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがATT(Ile)またはTTT(Phe)であるミスセンス1塩基多型
    (a7)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)またはGCA(Ala)であるミスセンス1塩基多型
    (a8)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1131番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)またはCAG(Gln)であるミスセンス1塩基多型
    (a9)配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)またはCAG(Gln)であるミスセンス1塩基多型
    (a10)配列番号9に示すCEP152遺伝子がコードするアミノ酸配列における54番目のアミノ酸のコドンがTCG(Ser)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a11)配列番号10に示すCEP192遺伝子がコードするアミノ酸配列における956番目のアミノ酸のコドンがCCC(Pro)またはTCC(Ser)であるミスセンス1塩基多型
    (a12)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAG(Gln)またはCAT(His)であるミスセンス1塩基多型
    (a13)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)またはATA(Ile)であるミスセンス1塩基多型
    (a14)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)またはGAC(Asp)であるミスセンス1塩基多型
    (a15)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)またはCCA(Pro)であるミスセンス1塩基多型
    (a16)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)またはCAA(Gln)であるミスセンス1塩基多型
    (a17)配列番号14に示すRASSF6遺伝子がコードするアミノ酸配列における163番目のアミノ酸のコドンがTCT(Ser)またはCCT(Pro)であるミスセンス1塩基多型
    (a18)配列番号15に示すCASP9遺伝子がコードするアミノ酸配列における28番目のアミノ酸のコドンがGTC(Val)またはGCC(Ala)であるミスセンス1塩基多型
    (a19)配列番号16に示すTRAP1遺伝子がコードするアミノ酸配列における307番目のアミノ酸のコドンがCGT(Arg)またはGGT(Gly)であるミスセンス1塩基多型
    (a20)配列番号17に示すRAD17遺伝子がコードするアミノ酸配列における546番目のアミノ酸のコドンがCTC(Leu)またはCGC(Arg)であるミスセンス1塩基多型
    (a21)配列番号18に示すDUSP6遺伝子がコードするアミノ酸配列における114番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a22)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における439番目のアミノ酸のコドンがACG(Thr)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
    (a23)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における757番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)またはCTT(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a24)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)またはCGC(Arg)であるミスセンス1塩基多型
    (a25)配列番号21に示すWRN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1074番目のアミノ酸のコドンがTTT(Phe)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a26)配列番号22に示すTP53遺伝子がコードするアミノ酸配列における72番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)またはCCC (Pro)であるミスセンス1塩基多型
    (a27)配列番号23に示すAXIN2遺伝子がコードするアミノ酸配列における50番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)またはTCT(Ser)であるミスセンス1塩基多型
    (a28)配列番号24に示すPCNT2遺伝子がコードするアミノ酸配列における2274番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)またはCTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a29)配列番号25に示すHER2遺伝子がコードするアミノ酸配列における1170番目のアミノ酸のコドンがCCC(Pro)またはGCC(Ala)であるミスセンス1塩基多型
    (a30)配列番号26に示すERBIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1112番目のアミノ酸のコドンがTCA(Ser)またはTTA(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a31)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における322番目のアミノ酸のコドンがATC(Ile)またはGTC(Val)であるミスセンス1塩基多型
    (a32)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における573番目のアミノ酸のコドンがGCA(Ala)またはACA(Thr)であるミスセンス1塩基多型
    (a33)配列番号28に示すBARD1遺伝子がコードするアミノ酸配列における507番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
    (a34)配列番号29に示すIRAK1遺伝子がコードするアミノ酸配列における532番目のアミノ酸のコドンがTCG(Ser)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
  14. 以下の(a1)〜(a34)から選ばれる少なくとも1種のミスセンス1塩基多型部位を含む連続する少なくとも10塩基の配列、またはその相補配列を増幅することができる、請求項1〜12に記載の方法においてプライマーとして用いるオリゴヌクレオチド。
    (a1)配列番号1に示すTDG遺伝子がコードするアミノ酸配列における367番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
    (a2)配列番号2に示すRAD18遺伝子がコードするアミノ酸配列における302番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)またはCAA(Gln)であるミスセンス1塩基多型
    (a3)配列番号3に示すRAD23B遺伝子がコードするアミノ酸配列における249番目のアミノ酸のコドンがGCT(Ala)またはGTT(Val)であるミスセンス1塩基多型
    (a4)配列番号4に示すSNM1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における61番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)またはCAC(His)であるミスセンス1塩基多型
    (a5)配列番号5に示すMAD1L1遺伝子がコードするアミノ酸配列における558番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)またはCAC(His)であるミスセンス1塩基多型
    (a6)配列番号6に示すAURKA遺伝子がコードするアミノ酸配列における31番目のアミノ酸のコドンがATT(Ile)またはTTT(Phe)であるミスセンス1塩基多型
    (a7)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1117番目のアミノ酸のコドンがCCA(Pro)またはGCA(Ala)であるミスセンス1塩基多型
    (a8)配列番号7に示すNIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1131番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)またはCAG(Gln)であるミスセンス1塩基多型
    (a9)配列番号8に示すNOB1P遺伝子がコードするアミノ酸配列における231番目のアミノ酸のコドンがCGG(Arg)またはCAG(Gln)であるミスセンス1塩基多型
    (a10)配列番号9に示すCEP152遺伝子がコードするアミノ酸配列における54番目のアミノ酸のコドンがTCG(Ser)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a11)配列番号10に示すCEP192遺伝子がコードするアミノ酸配列における956番目のアミノ酸のコドンがCCC(Pro)またはTCC(Ser)であるミスセンス1塩基多型
    (a12)配列番号11に示すWISP3遺伝子がコードするアミノ酸配列における56番目のアミノ酸のコドンがCAG(Gln)またはCAT(His)であるミスセンス1塩基多型
    (a13)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における1527番目のアミノ酸のコドンがATG(Met)またはATA(Ile)であるミスセンス1塩基多型
    (a14)配列番号12に示すPTPN13遺伝子がコードするアミノ酸配列における2086番目のアミノ酸のコドンがTAC(Tyr)またはGAC(Asp)であるミスセンス1塩基多型
    (a15)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における276番目のアミノ酸のコドンがCAA(Gln)またはCCA(Pro)であるミスセンス1塩基多型
    (a16)配列番号13に示すPTPRJ遺伝子がコードするアミノ酸配列における326番目のアミノ酸のコドンがCGA(Arg)またはCAA(Gln)であるミスセンス1塩基多型
    (a17)配列番号14に示すRASSF6遺伝子がコードするアミノ酸配列における163番目のアミノ酸のコドンがTCT(Ser)またはCCT(Pro)であるミスセンス1塩基多型
    (a18)配列番号15に示すCASP9遺伝子がコードするアミノ酸配列における28番目のアミノ酸のコドンがGTC(Val)またはGCC(Ala)であるミスセンス1塩基多型
    (a19)配列番号16に示すTRAP1遺伝子がコードするアミノ酸配列における307番目のアミノ酸のコドンがCGT(Arg)またはGGT(Gly)であるミスセンス1塩基多型
    (a20)配列番号17に示すRAD17遺伝子がコードするアミノ酸配列における546番目のアミノ酸のコドンがCTC(Leu)またはCGC(Arg)であるミスセンス1塩基多型
    (a21)配列番号18に示すDUSP6遺伝子がコードするアミノ酸配列における114番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a22)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における439番目のアミノ酸のコドンがACG(Thr)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
    (a23)配列番号19に示すEXO1遺伝子がコードするアミノ酸配列における757番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)またはCTT(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a24)配列番号20に示すADH1B遺伝子がコードするアミノ酸配列における48番目のアミノ酸のコドンがCAC(His)またはCGC(Arg)であるミスセンス1塩基多型
    (a25)配列番号21に示すWRN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1074番目のアミノ酸のコドンがTTT(Phe)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a26)配列番号22に示すTP53遺伝子がコードするアミノ酸配列における72番目のアミノ酸のコドンがCGC(Arg)またはCCC (Pro)であるミスセンス1塩基多型
    (a27)配列番号23に示すAXIN2遺伝子がコードするアミノ酸配列における50番目のアミノ酸のコドンがCCT(Pro)またはTCT(Ser)であるミスセンス1塩基多型
    (a28)配列番号24に示すPCNT2遺伝子がコードするアミノ酸配列における2274番目のアミノ酸のコドンがCCG(Pro)またはCTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a29)配列番号25に示すHER2遺伝子がコードするアミノ酸配列における1170番目のアミノ酸のコドンがCCC(Pro)またはGCC(Ala)であるミスセンス1塩基多型
    (a30)配列番号26に示すERBIN遺伝子がコードするアミノ酸配列における1112番目のアミノ酸のコドンがTCA(Ser)またはTTA(Leu)であるミスセンス1塩基多型
    (a31)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における322番目のアミノ酸のコドンがATC(Ile)またはGTC(Val)であるミスセンス1塩基多型
    (a32)配列番号27に示すPTPN12遺伝子がコードするアミノ酸配列における573番目のアミノ酸のコドンがGCA(Ala)またはACA(Thr)であるミスセンス1塩基多型
    (a33)配列番号28に示すBARD1遺伝子がコードするアミノ酸配列における507番目のアミノ酸のコドンがGTG(Val)またはATG(Met)であるミスセンス1塩基多型
    (a34)配列番号29に示すIRAK1遺伝子がコードするアミノ酸配列における532番目のアミノ酸のコドンがTCG(Ser)またはTTG(Leu)であるミスセンス1塩基多型
  15. 配列番号29+(2n−1)(nは1〜33までの整数を示す)で示されるフォワードプライマーと、配列番号29+(2n)(nは1〜33までの整数を示す)で示されるリバースプライマーからなる癌発症危険性判定用プライマーセット。
  16. 請求項13若しくは14に記載のオリゴヌクレオチド、または請求項15に記載のプライマーセットを含む、被験者の癌発症危険性判定用キット。
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