JP2008048605A - ダイオキシン類の分解方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ダイオキシン汚染物質にダイオキシン類に対する分解能を有する微生物を含むコンポストを混合して、短時間でダイオキシン類を分解する方法の提供。
【解決手段】大気との接触が遮断された容器内の気体に含まれる酸素の割合を0.1〜1.0体積%の微好気条件とするとともに、少なくともダイオキシン類に対する分解能を有する微生物を含むコンポストとダイオキシン汚染物質とを投入し、これらの混合物中に含まれる微生物数が前記混合物の乾燥重量1gあたり1.0×1010〜1.0×1012個である場合に、前記混合物に、更に1日あたり前記混合物の乾燥重量1gあたり0.008g以上の有機物を添加して、前記ダイオキシン汚染物質に含まれるダイオキシン類を分解する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ダイオキシン汚染物質と、ダイオキシン類に対する分解能を有する微生物とを混合することによって、ダイオキシン汚染物質に含まれるダイオキシン類を分解する方法に関する。
昨今、例えばゴミの焼却などによって生じたダイオキシン類による、土壌、底質、焼却灰、地下水等の汚染が問題となっている。
そこで、ダイオキシン類に汚染された土壌、底質、焼却灰、地下水等(以下「ダイオキシン汚染物質」ともいう。)に含まれるダイオキシン類を分解する方法の開発が進められている。
ダイオキシン類の分解方法としては、例えば、溶融法、熱分解法、超臨海抽出法などが知られているが、いずれも、多くのエネルギーが必要であり、コストがかかり、また、装置の操作が煩雑である。
そこで、ダイオキシン類を、より低いエネルギーで、低コストで、簡易に分解するために、ダイオキシン汚染物質に、ダイオキシン類に対する分解能を有する微生物を含むコンポスト(以下「DXNコンポスト」ともいう。)を混合することによって、ダイオキシン汚染物質に含まれるダイオキシン類を分解する方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、有機塩素系化合物で汚染された被処理物質に、嫌気性微生物および好気性微生物を混合し、嫌気的条件および好気的条件を交互に繰り返しながら、有機塩素系化合物に嫌気性微生物および好気性微生物を作用させて分解処理することを特徴とする、有機塩素系化合物で汚染された物質の浄化方法について記載されている。
特開2003−164849号公報
しかしながら、ダイオキシン汚染物質にDXNコンポストを混合する方法を採用する場合には、ダイオキシン類の分解に時間を要する。例えば、気体に含まれる酸素の割合が通常の大気と同様に約20体積%である条件下でダイオキシン類を分解した場合には、ダイオキシン類の半減期は約200日になる。
したがって、ダイオキシン汚染物質にDXNコンポストを混合する方法によってダイオキシン類を分解する場合に、さらに分解速度を向上させることが望まれている。
本発明は、以上説明した従来の実情を鑑みて提案されたものであり、ダイオキシン汚染物質に、少なくともダイオキシン類に対する分解能を有する微生物を含むコンポストを混合することによって、ダイオキシン汚染物質に含まれるダイオキシン類を分解する方法であって、かつダイオキシン類の分解が短時間で行われる方法を提供することを目的とする。
本発明者は、大気との接触が遮断された容器内に、少なくともダイオキシン類に対する分解能を有する微生物を含むコンポストとダイオキシン汚染物質とを投入し、前記ダイオキシン汚染物質に含まれるダイオキシン類を分解するに際し、前記容器内の気体に含まれる酸素の割合を0.1〜1.0体積%の微好気条件とするとともに、前記ダイオキシン汚染物質と前記コンポストとの混合物中に含まれる微生物数が前記混合物の乾燥重量1gあたり1.0×1010〜1.0×1012個である場合に、前記混合物に、更に1日あたり前記混合物の乾燥重量1gあたり0.008g以上の有機物を添加することにより、ダイオキシン類の分解速度が速くなることを見出し、本発明を完成した。
前記ダイオキシン汚染物質と前記コンポストとの混合物の表面の温度は、好ましくは20〜55℃である。
本発明のダイオキシン類の分解方法によれば、少なくともダイオキシンに対する分解能を有する微生物を含むコンポストを用いて、ダイオキシン汚染物質に含まれるダイオキシン類を短時間で分解することが可能となる。
最初に、本発明のダイオキシン類の分解方法によって分解されるダイオキシン類を含むダイオキシン汚染物質、および本発明のダイオキシン類の分解方法に用いられるDXNコンポストについて説明する。
<ダイオキシン汚染物質>
ダイオキシン汚染物質は、ダイオキシン類を1pg/g以上含有する土壌、底質、焼却灰、地下水等である。
ダイオキシン類とは、ポリ塩化ジベンゾパラダイオキシンおよびポリ塩化ジベンゾフランを意味し、これらの化合物は、実験動物に対して体重減少、胸線萎縮、肝毒性、免疫毒性、発ガン性、催奇形性、内分泌撹乱性等の毒性症状を惹起する有機化合物である。ポリ塩化ジベンゾパラダイオキシンおよびポリ塩化ジベンゾフランには、それぞれ75種および135種の化合物が存在するが、本発明におけるダイオキシン類とは、これらの全てを包含する。
<DXNコンポスト>
DXNコンポストに含まれる微生物は、嫌気性微生物であっても好気性微生物であってもよく、両者の混合物でもよく、ダイオキシン汚染物質中のダイオキシン類に対する分解能を有するものであれば特に制限はない。また、微生物製剤であってもよい。
ダイオキシン汚染物質に混合される微生物は、単一種に限らず、複数の種や菌株を含む微生物群であってもよい。これらの微生物は、ダイオキシン汚染物質などに存在し、ダイオキシン汚染物質などから既知のスクリーニング方法により採取することができるので、それを培養して種菌として使用できる。また、本発明に適合する範囲で、ダイオキシン類等に対する分解活性を持つことが知られている公知の微生物種、菌株、菌群等を使用することができる。
ダイオキシン類に対する分解能を有する嫌気性微生物の代表的な例としては、メタノバクテリウム(Methanobacterium)属、メタノサルシナ(Methanosarcina)属、メタノロブス(Methanolobus)属等の嫌気性古細菌、アセトバクテリウム(Acetobacterium)属、デスルフォバクテリウム(Desulfobacterium)属、デスルフォモニル(Desulfomonile)属、デハロスピリルム(Dehalospirillum)属、デハロバクター(Dehalobacter)属、デハロバクテリウム(Dehalobacterium)属、デハロコッコイデス(Dehalococcoides)属、クロストリジウム(Clostridium)属等の嫌気性細菌のほか、シトロバクター(Citrobacter)属、エシェリキア(Escherichia)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、セラチア(Serratia)属、プロテウス(Proteus)属、シュワネラ(Shewanella)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属等の通性嫌気性細菌を挙げることができる。
また、ダイオキシン類に対する分解能を有する好気性微生物の代表的な例としては、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属、バークホリデリア(Burkholderia)属、ラルストニア(Ralstonia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ノカルジオイデス(Nocardioides)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、テラバクター(Terrabacter)属等を挙げることができる。
また、上記の嫌気的微生物と好気的微生物とをダイオキシン汚染物質とともに培養・増殖させることにより、これらの微生物を十分に馴致された状態にして利用することができる。これにより得られ、ダイオキシン類の分解に用いられるのに好ましい微生物の特徴の一例として、馴致の結果、キノンプロファイル(Hiraishi, A.1999, J. Biosci. Bioeng.; Vol. 88: p449-460)に基づき、(i)メナキノン含有微生物が70%以上を占めること、(ii)MK−7、MK−8(H2)、MK−8(H4)、MK−9(H2)のいずれかの分子種2種類の組み合わせが全体の40%を越えていること、等が挙げられ、かかる特徴を備えた微生物群を含むコンポストを利用することによりダイオキシン汚染物質の効率的な分解処理が実現可能となる。
つぎに、本発明のダイオキシン類の分解方法について説明する。
<ダイオキシン類の分解方法>
本発明のダイオキシン類の分解方法は、大気との接触が遮断された容器内に、上述したダイオキシン類に対する分解能を有する微生物を含むコンポストと、上述したダイオキシン汚染物質とを投入して、前記容器内の気体に含まれる酸素の割合を0.1〜1.0体積%とする。
ダイオキシン類が分解されるときには、最初に嫌気性細菌による脱塩素化反応が起こり、次いで好気性細菌による酸化分解反応が起こるが、酸化分解反応の反応速度と比較して脱塩素化反応の反応速度は遅いので、脱塩素化反応が律速段階となる。したがって、脱塩素化反応の反応速度を上昇させることにより、ダイオキシン類の分解速度を上昇させることが可能となる。脱塩素化反応は、嫌気性細菌による反応なので、気体に含まれる酸素の割合が下がるに従って反応速度が上昇し、ダイオキシン類の分解速度も上昇する。
一方、酸化分解反応が起こるためには酸素が必要となる。したがって、気体に含まれる酸素の割合が下がりすぎると、脱塩素化反応の反応速度は速まるものの酸化分解反応が生じにくくなり、酸化分解反応が律速段階となってダイオキシン類の分解速度が下降してしまう。
したがって、ダイオキシン類の分解速度を速めるには、上述したDXNコンポストと上述したダイオキシン汚染物質との混合物(以下「DXN混合物」ともいう。)中に、酸素がわずかに含まれることが好ましい。
具体的には、大気との接触が遮断された容器内に、上述したDXNコンポストと上述したダイオキシン汚染物質とを添加し、DXNコンポストとダイオキシン汚染物質とを混合してダイオキシン汚染物質に含まれるダイオキシン類を分解するに際し、前記容器内の気体に含まれる酸素の割合を、0.1〜1.0体積%、好ましくは0.3〜0.7体積%、より好ましくは0.5体積%の微好気条件とする。
前記容器内の気体に含まれる酸素の割合を上記範囲とすることにより、DXN混合物中の気体に含まれる酸素の割合が0を超え1.0体積%以下になり、DXN混合物中に酸素がわずかに含まれた状態となるので、嫌気性細菌による脱塩素反応の速度と好気性細菌による分解反応の速度とが同程度となり、ダイオキシン類の分解速度が速くなる。
DXN混合物中の気体に含まれる酸素の割合は、DXN混合物の酸化還元電位(ORP)や溶存酸素(DO)を測定することによって検出できる。
また、本願発明者らは、容器内の気体に含まれる酸素の割合を上述した範囲とした場合に、DXN混合物におけるダイオキシン類の濃度が指数関数的に減少し、一次反応に近似できることを見出している。したがって、本発明のダイオキシン類の分解方法は、ダイオキシン類を長期に亘って安定して分解することができ、実用上有効である。
容器内の気体に含まれる酸素の割合を上記範囲に調整する方法としては、ダイオキシン汚染物質とDXNコンポストとが投入された容器に、市販の窒素ガスを供給する方法が挙げられる。市販の窒素ガスは特に分析機器用などの高純度である必要はなく低純度のものでよい。このような市販の窒素ガスは、通常、窒素含有量が99.0〜99.9体積%であり、残りの0.1〜1.0体積%はほとんど酸素である。したがって、容器内に市販の窒素ガスを供給することによって、容器の中の気体に含まれる酸素の割合を上記範囲に調整することができる。供給される窒素ガスは、容器内に滞留していてもよく、容器内を通過して排出されてもよい。
本発明のダイオキシン類分解方法では、容器内のDXN混合物のかくはんと静置とを繰り返すことが好ましい。かくはんは、一日のうち30〜120分行い、残りの時間はDXN混合物を静置していることがより好ましい。また、DXN混合物を3〜10分かくはんした後に57〜50分静置することを1日に10〜12回繰り返し、残りの時間はDXN混合物を静置することがさらに好ましい。このような条件下では、DXN混合物の酸素は好気微生物により消費されるだけでなく、一定の範囲に維持が可能になる。
前記かくはんを行うことにより、DXN混合物中の気体に含まれる酸素の割合を前記範囲に調整することが可能となり、ダイオキシン類の分解速度を速めることができる。
DXN混合物の周囲の温度は、20〜55℃であることが好ましく、25〜55℃であることがより好ましく、40〜50℃であることがさらに好ましい。
DXN混合物中のダイオキシン類は、微生物によって分解されるとともに、化学反応によっても分解される。DXN混合物の周囲の温度が上記範囲である場合には、DXNコンポストに含まれる微生物によるダイオキシン類の分解が促進され、また、化学的なダイオキシン類の分解も促進されるために、ダイオキシン類の分解速度が速くなる。なお、50℃以下が特に好ましいのは、50℃を超えると微生物反応の低下による反応速度の低下が生じるためである。
本発明において、DXN混合物中に含まれる微生物数とダイオキシン類の量との関係は、微生物数がDXN混合物の乾燥重量1gあたり1.0×1010〜1.0×1012個である場合に、DXN混合物に含まれるダイオキシン類の量がDXN混合物の乾燥重量1gあたり50000〜120000pgであることが好ましい。
また、DXN混合物中に含まれる微生物数が、乾燥重量1gあたり1.0×1010〜1.0×1012個である場合には、一日あたり乾燥重量1gにつき0.008g以上の有機物を添加することが好ましく、0.014g以上の有機物を添加することがより好ましい。上述した量の有機物を添加することにより、ダイオキシン類の分解速度がより速くなる。添加する有機物としては、具体的には、食品残渣(生ごみ、厨芥)、ペットフードなどをあらかじめ粉砕し、水分を加えて含水率50〜70%にしたものなどが挙げられる。
また、DXN混合物は、含水率が30〜50重量%であることが好ましく、pH4.5〜5.5であることが好ましい。pHがこのような弱酸性であれば嫌気性微生物の活動が活発(有機酸発酵による酸の生成)であり、上記範囲であると、ダイオキシン汚染物質に含まれるダイオキシン類の分解がより速くなる。
pHは、DXN混合物に例えば6N硫酸などの酸や4N水酸化ナトリウムなどのアルカリを供給することによって調整できる。また、含水率は、DXN混合物に水を供給することや、DXN混合物に温風を吹き付けることによって調整できる。
以上説明したように、本発明のダイオキシン類の分解方法によれば、低エネルギーかつ低コストでダイオキシン類を分解するDXNコンポストを用いて、ダイオキシン類を短時間で分解することができる。また、DXNコンポストを用いて、長期間安定してダイオキシン類を分解することができる。
つぎに、本発明について、実施例を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は、本実施例に限定されるものではない。
最初に、各実施例および各比較例で用いられるDXNコンポストを調整した。
<DXNコンポストの調整>
木材チップとダイオキシン類で汚染された土壌(ダイオキシン類を分解する微生物を含む)とを質量比で1:1で混合し、生ゴミを添加して1ヶ月培養して、ダイオキシン類に対する分解能を有するDXNコンポストを調整した。
(実施例1)
最初に、実施例1では、容器の気体に含まれる酸素の割合が0.5体積%、温度が25℃という条件で、ダイオキシン類を200日間分解し、時間の経過に従ったダイオキシン類の分解量の変化を測定した。
まず、上記により得られたDXNコンポスト400gとダイオキシン類に汚染された土壌400gとを混合して、DXN混合物に含まれるダイオキシン類の濃度を乾燥土壌1gあたり51ngとして図1に示す固相バイオリアクター内の反応容器1に投入し、次いで、市販の窒素ガス(日本酸素(株)製Nガス,純度99%以上)(窒素99.5体積%と酸素0.5体積%とを含む)を反応容器1に供給した。
このとき、DXN混合物は、含水率が40重量%、pH5.0であった。また、DXN混合物に含まれる微生物数は、DXN混合物の乾燥重量1gあたり1.0×1011個であった。
なお、図1に示す固相バイオリアクターは、DXN混合物2が入れられる反応容器1と、反応容器1に投入されたDXN混合物2などを混合するかくはん部材3と、DXN混合物2の温度を測定する温度計4と、反応容器1内の気体の温度および相対湿度を測定する温度湿度計5と、反応容器1内に気体を供給する気体供給部6と、反応容器1内の気体を排出する気体排出部7と、反応容器1内の温度を調整するヒーター8と、ORP測定部9とを備える。
次いで、反応容器1内の温度を25℃に調整し、1日ごとに、DXN混合物の乾燥重量1gにつき0.005gの有機物(ペットフードサイエンスダイエット,アイムス(株)製)を添加した。また、1日に、55分間の静止を挟んだ5分間のかくはんを12回行った。また、この間に測定したORPから算出したDXN混合物中の気体に含まれる酸素の割合は、0を超え0.5体積%以下であった。
次いで、DXN混合物を3週間ごとに20gサンプリングし、ダイオキシン類の濃度を、「外因体内分泌撹乱化学物質調査暫定マニュアル(平成10年環境庁水質保全局水質管理課)」に記載されている農業分析法に準拠した方法に従って測定した。
測定結果から、時間の経過に伴ったダイオキシン類の濃度は、図2(A)に示すように指数関数的に減少することが判明した。なお、図2(A)に示すダイオキシン類の濃度は、DXN混合物の乾燥重量1gあたりのダイオキシン類の濃度を示している。
また、ダイオキシン類の分解率の逆数(C/C)の対数を算出したところ、図2(B)に示すように、時間の経過に伴って直線的に増加していた。したがって、本発明のダイオキシン類の分解方法では、ダイオキシン類の分解が一次反応に近似できることが判明した。
また、以下に示す式1に従って反応速度定数を算出したところ、反応速度定数KDXN=0.006733であった。
dCDXN/dt=−kDXN×CDXN・・・式1
ただし、tは時間を示しており、CDXNはダイオキシン類の濃度を示している。
以上の結果から、本発明のダイオキシン類の分解方法は、長期に亘って安定してダイオキシン類を分解できることが判明した。また、一次反応に近似できることから、反応速度定数が大きいほど反応速度が速いことが判明した。
(実施例2、比較例1〜3)
実施例2および比較例1〜3では、容器中の気体に含まれる酸素の割合を変化させてダイオキシン類の分解速度定数を測定した。また、ダイオキシン類の半減期を測定した。
まず、上記により得られたDXNコンポスト400gとダイオキシン類に汚染された土壌400gとを、反応容器1(容量2000mL)に投入して混合した。次いで、反応容器1内に、表1に示す割合の酸素を含む窒素ガスを供給した。
このとき、DXN混合物は、ダイオキシン類の濃度が表1に示す濃度であり、含水率が40重量%であり、pH5.0〜6.0であった。また、DXN混合物に含まれる微生物数は、DXN混合物の乾燥重量1gあたり1.0×1011個であった。
なお、反応容器1内に供給する気体の酸素と窒素との割合は、市販の窒素ガスと酸素ガスとの混合率を変化させることによって調整したが、市販の窒素ガスに0.5体積%の酸素が含まれていたため、0.5体積%の酸素を含む窒素ガスを反応容器1に供給する場合には、市販の窒素ガスのみを供給した。
次いで、反応容器1内の温度を25℃に調整し、24時間ごとに、DXN混合物の乾燥重量1gにつき0.014gの有機物(ペットフードサイエンスダイエット,アイムス(株)製)を添加した。また、1日に55分間の静止を挟んだ5分間のかくはんを12回行った。また、この間に測定したORPから算出したDXN混合物中の気体に含まれる酸素の割合は、実施例2では0を超え1.0体積%以下であり、比較例1〜3では1.0体積%を超えていた。
次いで、DXN混合物を3週間ごとに20gサンプリングし、ダイオキシン類の濃度を上記方法に従って測定した。
測定されたダイオキシン類の濃度から、上記式1に従って分解速度定数kDXNを算出し、また、ダイオキシン類の濃度の半減期を求めた。結果を表1に示す。なお、表1〜表3中「容器中の酸素の割合」は、反応容器1内の気体に含まれる酸素の割合を示す。
Figure 2008048605
表1に示すように、本発明の方法によってダイオキシン類が分解された実施例2では、分解速度定数が大きかった。すなわち、ダイオキシン類の分解速度が速かった。また、ダイオキシン類の半減期は80日であった。
これに対して、反応容器1中の気体に含まれる酸素の割合が1.0体積%より大幅に高い比較例1〜3では、いずれも分解速度定数が小さかった。すなわち、ダイオキシン類の分解速度が遅かった。また、反応容器1中の気体に含まれる酸素の割合が21.0体積%である比較例3では、ダイオキシン類の半減期は200日であった。
(実施例3〜6)
実施例3〜6では、ダイオキシン類を分解するときの温度を変化させて、ダイオキシン類の分解速度定数を測定した。
まず、上記により得られたDXNコンポスト400gとダイオキシン類に汚染された土壌400gとを混合し、固相バイオリアクターの反応容器1に添加した後、市販の窒素ガス(窒素99.5体積%と酸素0.5体積%とを含む。)を反応容器1に供給した。
このとき、DXN混合物は、ダイオキシン類の含有量が表2に示す通りであり、含水率が40重量%であり、pH5.0であった。また、DXN混合物に含まれる微生物の量は、DXN混合物の乾燥重量1gあたり1.0×1011個であった。
次いで、反応容器1内の温度を表2に示す温度とし、1日ごとに、DXN混合物の乾燥重量1gにつき0.014gの有機物(ペットフードサイエンスダイエット,アイムス(株)製)を添加した。また、1日に、55分間の静止を挟んだ5分間のかくはんを12回行った。また、この間に測定したORPから算出したDXN混合物中の気体に含まれる酸素の割合は、0を超え0.5体積%以下であった。
DXN混合物を3週間ごとに20gサンプリングし、ダイオキシン類の濃度を上記方法に従って測定した。測定結果から、上記式1に従って分解速度定数kDXNを算出した。結果を表2および図3に示す。
Figure 2008048605
表2および図3に示すように、いずれも分解速度定数は大きかったが、中でも、温度が25〜55℃の範囲内である実施例3〜5は、分解速度定数がより大きかった。すなわち、ダイオキシン類の分解速度が速かった。
また、図3より、分解速度定数は、50℃を超えると急激に低下し、55℃を超えると低い値となることが判明した。
(実施例7〜10、比較例4〜7)
実施例7〜10および比較例4〜7では、反応容器1内の気体に含まれる酸素の割合と有機物(ペットフードサイエンスダイエット,アイムス(株)製)の添加量とを変化させて、ダイオキシン類の分解速度定数を測定した。
まず、上記により得られたDXNコンポスト400gとダイオキシン類に汚染された土壌400gとを反応容器1に投入して、混合した。次いで、反応容器1内に、表3に示す割合の酸素を含む窒素ガスを供給した。なお、反応容器1内に供給する気体の酸素と窒素との割合は、前述した方法によって調整した。
このとき、DXN混合物は、ダイオキシン濃度が乾燥重量1gあたり80000pgであり、含水率が40重量%であり、pH5.0〜6.0であった。また、DXN混合物に含まれる微生物の量は、DXN混合物の乾燥重量1gあたり1.0×1011個であった。
次いで、反応容器1内の温度を25℃に調整し、1日ごとにDXN混合物の乾燥重量1gにつき表3に示す量の有機物を添加した。また、1日に、55分間の静止を挟んだ5分間のかくはんを12回行った。また、この間に測定したORPから算出したDXN混合物中の気体に含まれる酸素の割合は、0を超え0.5体積%以下であった。
3週間ごとに20gのサンプリングを行い、ダイオキシン類の濃度を上記方法に従って測定した。測定結果から、以下に示す式1に従って分解速度定数kDXNを算出した。結果を表3および図4に示す。なお、表3および図4中「有機物量」は、DXN混合物の乾燥重量1gあたりの重量を示す。
Figure 2008048605
表3より、本発明のダイオキシン分解方法によってダイオキシン類が分解された実施例7〜10では、分解速度定数が大きかった。すなわち、ダイオキシン類の分解速度が速かった。とくに、有機物を1日あたりDXN混合物の乾燥重量1gにつき0.008g以上添加した実施例9および実施例10は、分解速度定数が大きかった。
これに対して、反応容器1内の気体に含まれる酸素の割合が1.0体積%を大幅に超える比較例4〜7では、有機化合物の添加量に拘わらず、分解速度定数が小さかった、すなわち、ダイオキシン類の分解が遅かった。
また、図4より、本発明のダイオキシン分解方法によってダイオキシン類が分解された実施例7〜10では、1日に添加する有機物の量をDXN混合物の乾燥重量1gにつき0.008g以上に増やすことによって分解速度定数が増大するが、反応容器1内の気体に含まれる酸素の割合が1.0体積%を大幅に超える比較例4〜7では、1日に添加する有機物の量をDXN混合物の乾燥重量1gにつき0.008g以上に増やしても、分解速度定数の増大が見られないことが判明した。
本実施の形態で用いた固相バイオリアクターを示す一部切り欠き断面図である。 (A)は、本発明のダイオキシン類の分解方法によってダイオキシンを長期間に亘って分解した場合の、ダイオキシン類の濃度の変化を示すグラフであり、(B)は、ダイオキシン類の分解率の逆数の対数の変化を示すグラフである。 温度の変化に応じたダイオキシン類の分解速度定数を示すグラフである。 有機物の添加量の違いに応じたダイオキシン類の分解速度定数を、酸素の割合毎に示すグラフである。
符号の説明
1 反応容器
2 DXNコンポスト
3 かくはん部材
4 温度計
5 温度湿度計
6 気体供給部
7 気体排出部
8 ヒーター
9 ORP測定部

Claims (2)

  1. 大気との接触が遮断された容器内に、少なくともダイオキシン類に対する分解能を有する微生物を含むコンポストとダイオキシン汚染物質とを投入し、前記ダイオキシン汚染物質に含まれるダイオキシン類を分解するダイオキシン類の分解方法であって、
    前記容器内の気体に含まれる酸素の割合を0.1〜1.0体積%の微好気条件とするとともに、
    前記ダイオキシン汚染物質と前記コンポストとの混合物中に含まれる微生物数が前記混合物の乾燥重量1gあたり1.0×1010〜1.0×1012個である場合に、前記混合物に、更に1日あたり前記混合物の乾燥重量1gあたり0.008g以上の有機物を添加する、ダイオキシン類の分解方法。
  2. 前記ダイオキシン汚染物質と前記コンポストとの混合物の表面の温度が20〜55℃である請求項1に記載のダイオキシン類の分解方法。
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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012050652A (ja) * 2010-08-31 2012-03-15 Ryu Shinke 廃油の有害物質分解処理方法及びその分解処理プラント
ITRM20130082A1 (it) * 2013-02-13 2014-08-14 Teseco S P A Formulato di natura biologica e suo uso per la decontaminazione di matrici solide contenenti contaminanti organici recalcitranti.

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