図9及び図10は、サーキュラーフレネルレンズシート101に対し、斜め下方又は斜め上方からのポインタ光110(ポインタから発した光のこと。)をレンズ面103及び非レンズ面104に入射させた場合の光の進行方向の説明図である。サーキュラーフレネルレンズシート101は、図9及び図10に示すように、投射装置側から投射された映像光を観察者側に偏向するフレネルレンズ面103と、実質的な偏向には寄与しない非レンズ面104とからなるフレネルレンズ102が観察者側になるように形成させたフレネルレンズシートであり、こうしたフレネルレンズシート101を有するスクリーン面にポインタ光110を当てると、観察者側から入射したポインタ光110は、レンズ面103と非レンズ面104を透過したり屈折したりして投射装置側に向かう。
しかしながら、通常、ポインタ光110の直径は数mm(例えば4〜5mm)であるのに対し、フレネルレンズ102のピッチPは100μm程度であり、ポインタ光の直径の数十分の1であることから、フレネルレンズシート101に入射したポインタ光110は、レンズ面103で屈折した光と非レンズ面104で屈折又は反射した光とが混在した状態で投射装置側に出光したりフレネルレンズシート101内で迷光になったりするので、上記特許文献1,2に記載のようなカメラをスクリーン背面の投射装置側に設けた場合であっても、ポインタ光110の指示位置を正確に検出するのは実際にはかなり難しいという問題がある。なお、符号126の矢印は、投射装置が設置されている方向を示している。
詳しくは、図9に示すように、ポインタ光110が斜め下方からフレネルレンズシート101に入射した場合、レンズ面103に入射したポインタ光110の一部は屈折光となって筐体内に進むが、その屈折光は、投射装置の方向に向かわない多くの光111aと、投射装置の方向に向かう僅かな光111bとに分かれる。一方、非レンズ面104に入射したポインタ光110の一部も屈折光となって筐体内に進むが、その屈折光は、投射装置の方向に向かわない多くの光112aと、投射装置の方向に向かうごく僅かな光112bと、図示しない迷光とに分かれる。いずれにしても、観察者がスクリーン上の所定の位置にポインタ光110で指示した場合、フレネルレンズシート101を透過した屈折光はその多くが投射装置の方向以外の複数の方向に向かう光111a,112aとなるので、ポインタ光110がスクリーン上の他の位置を指した場合における透過屈折光との区別がつかなくなり、その結果、観察者側に配置されたカメラは、検出した光がどの位置を指したポインタ光の光であるかを正確に検出することができない。
また、図10に示すように、ポインタ光110が斜め上方からフレネルレンズシート101に入射した場合も同様、レンズ面103に入射したポインタ光110の一部は屈折光となって筐体内に進むが、その屈折光は、投射装置の方向に向かわない多くの光113aと、投射装置の方向に向かう少ない光113bとに分かれる。一方、レンズ面103に入射した光のうち非レンズ面104にあたる光は非レンズ面104で反射して筐体内に進むが、その屈折光は、投射装置の方向に向かわない多くの光114aと、投射装置の方向に向かうごく僅かな光114bと、図示しない迷光とに分かれる。いずれにしても、観察者がスクリーン上の所定の位置にポインタ光110で指示した場合、フレネルレンズシート101を透過した屈折光はその多くが投射装置の方向以外の複数の方向に向かう光113a,114aとなるので、ポインタ光110がスクリーン上の他の位置を指した場合における透過屈折光との区別がつかなくなり、その結果、観察者側に配置されたカメラは、検出した光がどの位置を指したポインタ光の光であるかを正確に検出することができない。
特に最近のリアープロジェクションテレビは、LCDやDLP等の単光源投射装置が使用されてきていると共に、テレビ筐体のより一層の薄型化が要求されている。特に薄型化に対しては、フレネル中心がシートの中央にある従来型のサーキュラーフレネルレンズシートとは異なり、フレネル中心がシート内にあるが画像の表示領域外に位置するように設計されたサーキュラーフレネルレンズシートや、フレネル中心がシート内にないサーキュラーフレネルレンズシートを構成部材として備えるスクリーンが検討されている。こうしたフレネルレンズシートを、特許文献1,2で適用されているようなフレネル中心がシートの中央にある従来型のレンズシートに置き換えて適用した場合、特にポインタ光110が非レンズ面104で屈折又は反射し易く、その結果、多くの透過光が投射装置の方向以外の複数の方向に向かう光となって、ポインタ光110がスクリーン上の他の位置を指した場合における透過屈折光との区別がつかなくなり易いという問題があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、画像表示領域外にフレネル中心を有するサーキュラーフレネルレンズシートを有した薄型のリアープロジェクションテレビにおいて、そのスクリーン上の任意の位置座標を、観察者が遠隔操作で誤動作なく簡便かつ正確に入力することができる平易な対話型リアープロジェクションテレビシステムを提案することにある。
本発明者は、誤動作が生じ難い対話型の薄型リアープロジェクションテレビシステムについて、画像表示領域外にフレネル中心を有するサーキュラーフレネルレンズシートを用いて検討を進めていたところ、カメラの設置場所をフレネル中心の軸線上に設けた場合に限り、スクリーンの周辺部にポインタ光で指示した場合や観察者がスクリーンの正面以外の位置からスクリーンに向かってポインタ光を指示した場合であっても、ポインタ光により指示された位置を極めて正確に検出できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、上記課題を解決するための本発明の対話型リアープロジェクションテレビシステムは、画像が表示される表示領域外にフレネル中心を有すると共にフレネルレンズが観察者側になるように配置されているサーキュラーフレネルレンズシートを少なくとも有する透過型のスクリーンと、前記フレネル中心の軸線上に設けられ、前記スクリーンから離れた場所にいる観察者が所持する指示装置によって指示された前記スクリーン上の指示位置を検出する位置検出装置と、前記スクリーンの表示領域に画像を表示すると共に前記位置検出装置により検出された指示位置に関わる情報を前記スクリーン上に形成する投射装置と、を少なくとも有することを特徴とする。
この発明によれば、画像が表示される表示領域外にフレネル中心を有すると共にフレネルレンズが観察者側になるように配置されているサーキュラーフレネルレンズシートをスクリーンの構成部材として用いた場合、そのスクリーンから離れた場所にいる観察者は、指示装置を用いてそのスクリーンに向かって位置座標を指示するが、その指示位置は、フレネル中心の軸線上に設けられた位置検出装置により誤りなく検出される。この理由は、画像が表示される表示領域外にフレネル中心を有すると共にフレネルレンズが観察者側になるように配置されているサーキュラーフレネルレンズシートにおいて、レンズ面に入射した指示光は偏向されてフレネル中心の軸線方向に必ず向かうが、非レンズ面に入射した指示光は殊に大きく偏向されてフレネル中心の軸線方向には向かわないことから、位置検出装置をフレネル中心の軸線上に配置すれば、フレネル中心の軸線方向に向かう光が光量の小さい微弱光であっても他の光と混同することなくポインタ光の光として正確に検出できるためである。なお、フレネル中心の軸線方向に向かう光は光量の小さい微弱光であることがあるので、位置検出装置をフレネル中心の軸線上に配置されていない場合には、たとえ位置検出装置が投射装置の近傍に配置されている場合であっても、その微弱光をポインタ光の光として正確に検出することができない。
さらに、この本発明によれば、位置検出装置をそのフレネル中心の軸線上に設けるが、用いるフレネルレンズシートは、画像が表示される表示領域外にフレネル中心を有する構造からなるサーキュラーフレネルレンズシートであるので、位置検出装置は、投射装置から投射される映像光を遮蔽することはなく、かつ表示画像又は処理画像を位置検出装置の存在を気にすることなくスクリーン上に表示することができる。
本発明の対話型リアープロジェクションテレビシステムにおいて、前記サーキュラーフレネルレンズシートが、当該シート内にフレネル中心を有することを特徴とし、又は、前記サーキュラーフレネルレンズシートが、当該シート内にフレネル中心を有しないことを特徴とする。
これらの発明によれば、画像が表示される表示領域外にフレネル中心を有すると共にフレネルレンズが観察者側になるように配置されているサーキュラーフレネルレンズシートとして、シート内にフレネル中心を有するシート、又は、シート内にフレネル中心を有しないシートを用いることができるが、これらいずれもシートも、レンズ面に入射した指示光は偏向されてフレネル中心の軸線方向に必ず向かうが、非レンズ面に入射した指示光は殊に大きく偏向されてフレネル中心の軸線方向には向かわないことから、位置検出装置をこれらフレネルレンズシートのフレネル中心の軸線上に配置すれば、フレネル中心の軸線方向に向かう光が光量の小さい微弱光であっても他の光と混同することなく検出することができる。
本発明の対話型リアープロジェクションテレビシステムにおいて、前記位置検出装置が、前記投射装置と前記スクリーンとの間、又は、前記投射装置と前記スクリーンの反対側の筐体壁との間、に配置されていることを特徴とする。
この発明によれば、位置検出装置が、フレネル中心の軸線上の、投射装置とスクリーンとの間又は投射装置とスクリーンの反対側の筐体壁との間に配置されているので、位置検出装置は、フレネル中心の軸線方向に向かう光が光量の小さい微弱光であっても他の光と混同することなく検出することができると共に、投射装置から投射される映像光を遮蔽することはなく、かつ表示画像又は処理画像を位置検出装置の存在を気にすることなくスクリーン上に表示することができる。
本発明の対話型リアープロジェクションテレビシステムにおいて、前記指示装置が少なくとも特定波長の指示光を発光する装置であり、前記位置検出装置が少なくとも前記指示光を検出する装置であることを特徴とする。
この発明によれば、指示装置が少なくとも特定波長の指示光を発光する装置であり、位置検出装置が指示光を検出する装置であるので、特定波長からなる信号光を検出する位置検出装置により、任意の信号処理を行うことが可能となる。なお、「少なくとも」としたのは、指示装置が特定波長の指示光を発する他、例えば検出開始信号用の光を発することを含んでもよいためである。
本発明の対話型リアープロジェクションテレビシステムにおいて、前記位置検出装置が、前記特定波長の指示光の最大値を指示位置として検出する受光素子を備えたカメラであることを特徴とする。
投射装置とスクリーンと観察者の位置関係において、観察者は必ず映像光が見える位置にいるので、投射装置から見た場合、光の逆進性から、観察者の発する指示光の光量が小さく微弱光であったとしても必ず見えることになる。したがって、使用したフレネルレンズシートのレンズ面に入射し、偏向されてフレネル中心の軸線方向に向かう指示光はたとえ光量が小さく微弱光であったとしても、軸線方向に向かう指示光の中ではフレネル中心の軸線上で最大値を示す。この発明によれば、位置検出装置が特定波長の指示光の最大値を指示位置として検出するカメラであるので、フレネル中心の軸線上に配置したカメラによって、フレネル中心の軸線方向に向かう指示光を他の光と混同することなく検出することができる。
本発明の対話型リアープロジェクションテレビシステムにおいて、前記特定波長の指示光が赤外光であり、前記投射装置から投射される映像光は当該特定波長の赤外光が遮蔽された光で構成されていることを特徴とする。
この発明によれば、特定波長の指示光が赤外光であり、投射装置から投射される映像光はその特定波長の赤外光が遮蔽された光で構成されているので、位置検出装置は、指示装置から発せられた指示光と映像光とを混同せずに検出することができる。その結果、指示位置を誤ることなく検出することができる。
本発明の対話型リアープロジェクションテレビシステムにおいて、前記特定波長の指示光が赤外光であり、前記投射装置と前記スクリーンとの間には当該特定波長の赤外光を遮蔽するカットフィルターが設けられていることを特徴とする。
この発明によれば、特定波長の指示光が赤外光であり、投射装置とスクリーンとの間にはその特定波長の赤外光を遮蔽するカットフィルターが設けられているので、位置検出装置は、指示装置から発せられた指示光と映像光とを混同せずに検出することができる。その結果、指示位置を誤ることなく検出することができる。
本発明の対話型リアープロジェクションテレビシステムにおいて、前記指示装置が発光する指示光が非偏光光であり、前記投射装置から投射される映像光が偏光光であり、前記スクリーンと前記位置検出装置との間には、前記サーキュラーフレネルレンズシートで反射した映像光を遮蔽する偏光フィルターが設けられていることを特徴とする。
この発明によれば、指示装置が発光する指示光が非偏光光であり、投射装置から投射される映像光が偏光光であり、スクリーンと位置検出装置との間には、サーキュラーフレネルレンズシートで反射した映像光を遮蔽する偏光フィルターが設けられているので、位置検出装置は、指示装置から発せられた非偏光光と、偏光光である映像光とを混同せずに検出することができる。その結果、指示位置を誤ることなく検出することができる。
本発明の対話型リアープロジェクションテレビシステムにおいて、前記位置検出装置で検出した指示位置を前記スクリーン上の画像位置に変換して記憶する制御部を有し、前記投射装置は、前記制御部が記憶する指示位置の軌跡を前記画像と同期して表示する装置であることを特徴とする。
この発明によれば、投射装置は、制御部が記憶する指示位置の軌跡を例えば動画像と同期して表示するので、例えば、画像を処理する範囲を正確に把握したり、画像を背景として捉えて指定する画像を重畳して動作させたりすること等が可能となる。
本発明の対話型リアープロジェクションテレビシステムにおいて、前記位置検出装置で検出した指示位置を前記スクリーン上の画像位置に変換して記憶する記憶装置を有し、前記投射装置は、前記記憶装置が記憶する位置情報を画像化して前記スクリーン上の所定の位置に前記画像と一緒に表示することを特徴とする。
この発明によれば、投射装置は、記憶装置が記憶する位置情報を画像化してスクリーン上の所定の位置に画像と一緒に表示するので、特に動画像の各種処理に有効で、例えば任意の位置を動画像の動きに合わせてポイントアウトして画像表示を行ったり、動画像の中の指示位置の範囲を静止画として表示したり、あるいは、別途に指示信号を重畳することで動画像中で注視するある指定した範囲のある瞬間の映像を捉えて拡大したり若しくは静止画表示をしたり、といった画像表示を行うことができる。なお、ここでいう「ポイントアウト」とは、例えば動いているボールを指定したら、そのボールを自動追跡する意味である。
本発明の対話型リアープロジェクションテレビシステムによれば、画像が表示される表示領域外にフレネル中心を有すると共にフレネルレンズが観察者側になるように配置されているサーキュラーフレネルレンズシートをスクリーンの構成部材として用いた場合、そのスクリーンから離れた場所にいる観察者は、指示装置を用いてそのスクリーンに向かって位置座標を指示するが、その指示位置は、フレネル中心の軸線上に設けられた位置検出装置により誤りなく検出することができる。また、本発明の対話型リアープロジェクションテレビシステムにおいては、位置検出装置をそのフレネル中心の軸線上に設けるが、用いるフレネルレンズシートは、画像が表示される表示領域外にフレネル中心を有する構造からなるサーキュラーフレネルレンズシートであるので、位置検出装置は、投射装置から投射される映像光を遮蔽することはなく、かつ表示画像又は処理画像を位置検出装置の存在を気にすることなくスクリーン上に表示することができる。
こうした作用効果を奏する本発明の対話型リアープロジェクションテレビシステムは、スクリーン上の任意の位置座標を、観察者が遠隔操作で誤動作なく簡便かつ正確に入力することができる対話型リアープロジェクションテレビシステムとして好ましく用いることができる。特に、LCDやDLP等の単光源投射装置を用いたリアープロジェクションテレビシステムのように、表示が鮮明な背面投射型表示装置において特に好ましく使用できる。
以下、本発明の対話型リアープロジェクションテレビシステム(以下、単に「PTVシステム」ということがある。)について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明の技術的範囲は以下の実施形態に限定解釈されるものではない。
図1は、本発明のPTVシステムの一例を示す構成図である。本発明のPTVシステム1は、筐体3の観察者側の面には透過型のスクリーン10が配置され、そのスクリーン10の背面側には映像光5を投射する投射装置40が配置された背面投射型の画像表示装置であり、詳しくは、画像が表示される表示領域Aの外にフレネル中心2を有すると共にフレネルレンズ12(図2,図3を参照)が観察者側になるように配置されているサーキュラーフレネルレンズシート11を少なくとも有する透過型のスクリーン10と、フレネル中心2の軸線L上に設けられ、そのスクリーン10から離れた場所にいる観察者Mが所持する指示装置20によって指示されたスクリーン10上の指示位置Sを検出する位置検出装置30と、スクリーン10の表示領域Aに画像を表示すると共に位置検出装置30により検出された指示位置Sに関わる情報をスクリーン10上に形成する投射装置40とを少なくとも有している。なお、符号50は制御部を表している。以下に、本発明のPTVシステム1の構成について、順に詳しく説明する。
(スクリーン)
本発明のPTVシステム1を構成するスクリーン10は、図1に示すように、その背面側に配置された投射装置40から投射された映像光5を観察者側に透過することができる透過型のスクリーンである。このスクリーン10は、映像光5が投射されて画像が表示される表示領域Aと、映像光5が投射されずに画像が表示されない非表示領域Bとを有している。スクリーン10は、投射装置40から拡散光として拡大する映像光5を観察者側の方向に偏向するためのサーキュラーフレネルレンズシート11を少なくとも備えている。また、スクリーン10は、必要に応じて、偏向された映像光を水平方向又は垂直方向に拡散させて視野角を拡大するための光拡散シート16、その光拡散シート16を支持するための支持シート(図示しない)、蛍光灯等の外光がスクリーン前面に映り込んだり反射したりしない機能を有する前面シート(図示しない)等を備えていてもよい。
図2と図3は、それぞれ、スクリーン10を構成するサーキュラーフレネルレンズシートの例を示す模式的な斜視図(A)と横断面図(B)である。サーキュラーフレネルレンズシート11(以下、フレネルレンズシート11ともいう。)は、表示領域Aの外、すなわち非表示領域Bにフレネル中心2を有すると共に、レンズ面13と非レンズ面14とからなるフレネルレンズ12が観察者側になるように配置されているレンズシートである。より具体的には、図2と図3に示すサーキュラーフレネルレンズシート11は、表示領域Aの外にフレネル中心2を有する点では共通するが、図2は、シート内にフレネル中心2を有するフレネルレンズシート11Aを表しており、図3は、シート内にフレネル中心2を有しないフレネルレンズシート11Bを表している。本発明のPTVシステム1は、こうした形態のフレネルレンズシート11を用いた点に構成上の特徴がある。
サーキュラーフレネルレンズシート11において、フレネルレンズ12を構成するレンズ面13は、投射装置40から投射された映像光5を観察者側に偏向させるために、投射装置40側の平坦面15に対する角度θ1がフレネル中心2から離れるにしたがって連続的又は段階的に徐々に大きくなっている。具体的には、フレネルレンズシート11の仕様によっても異なるが、角度θ1は、フレネル中心2から離れるにしたがって、通常、0°程度〜70°程度の範囲で徐々に大きくなっている。なお、フレネルレンズ11のレンズ面のピッチPは、一定であってもよいし変化させてもよいが、通常は、0.5mm〜0.01mmの範囲内で一定のピッチで形成される。一方、フレネルレンズ12を構成する非レンズ面14は、フレネルレンズ12のレンズ面13を形成するための必須の面であり、通常、投射装置40側の平坦面15に対する角度θ2がおよそ約65°〜約90°の範囲内で形成されている。
こうしたサーキュラーフレネルレンズシート11は、必要に応じて従来公知の種々の技術要素を有していてもよい。例えば、シート内に光拡散剤や染料等のいずれかが含まれていてもよいし、投射装置40側の面や観察者側の面に無反射層やマット層が設けられていてもよい。また、スクリーン10に必要に応じて設けられる、上述の光拡散シート16、支持シート、前面シートにおいても、従来公知の種々の技術要素を有していてもよく、光拡散剤や染料等のいずれかが含まれ又は設けられていてもよい。また、光拡散シート16としては、シリンドリカルレンズが片面又は両面に形成されたものや、いわゆるハエの目レンズが形成されたものや、ブラックストライプ層や着色層が形成されたものであってもよい。また、各シートには、例えばノングレアー層、反射防止層、低反射層、ハードコート層、帯電防止層、防眩層、汚染防止層、偏光フィルター層、及び電磁波シールド層等が、その目的に応じて設けられていてもよい。
(指示装置、位置検出装置)
次に、指示装置20と位置検出装置30について説明する。指示装置20は、図1に示すように、スクリーン10から離れた場所にいる観察者Mが所持する装置であって、スクリーン10上の所定の位置を指示するための装置である。一方、位置検出装置30は、図1に示すように、指示装置20から発せられる指示光21等の指示信号に対応した装置であって、その指示装置20によって指示されたスクリーン10上の指示位置Sを検出するための装置である。位置検出装置30は、指示装置20から発する指示信号の種類に対応した装置である。
指示装置20としては、例えば、特定波長の指示光21を発光する装置を用いることができる。上記特定波長の指示光21としては、映像光5に主に含まれる可視光はあまり適当ではなく、可視光以外の赤外光や紫外光等のうち特定の波長範囲の光を利用することができる。赤外光を発することができる光源としては、例えば、800nm〜1000nm程度の赤外光を発生することができるGaAs型の発光ダイオードや、GaAs化合物半導体のレーザーダイオード等を用いることができる。
こうした特定波長の指示光21を発光する指示装置20を用いた場合、位置検出装置30は、それに対応した受光素子を有し、その受光素子により検知された指示光21を、映像光5等の他の光と混同せずに識別することができる。
また、指示装置20が非偏光光を発生させる装置であってもよい。この場合、投射装置40から投射する映像光5を偏光光とすれば、例えば図4に示すように、スクリーン10と位置検出装置30との間に偏光フィルター33を設けた位置検出装置30を用いることにより、指示装置20から発せられた非偏光光からなる指示光21を、投射装置40から投射された映像光5と混同せずに検出することができる。偏光フィルター33は、位置検出装置30に取り付けられた偏光板であることが好ましく、具体的には、位置検出装置30が備える受光素子の前面に配置されていることが好ましい。
また、投射装置40から映像光5が投射される箇所に偏光フィルター42を設けることもできる。このときの偏光フィルター42としては、右回りの偏光(右偏光という)のみを通過させる右偏光板や、左回りの偏光(左偏光という)のみを通過させる左偏光板を用いることができ、その偏光フィルター42を投射装置40に装着することにより、映像光5を偏光光とすることができる。このとき、右偏光板を投射装置40に装着すれば、右偏光板を通過した映像光5は右偏光のみを持つ光となってスクリーン10に投射されるので、そのスクリーン10で反射して位置検出装置30に到達する光も右偏光のみを持っている。このとき、左偏光光のみを通過させる左偏光板を位置検出装置30の前面に装着しておけば、右偏光のみを持つ光はその左偏光板でカットされるので、位置検出装置30内に入らない。一方、指示装置20からの指示光21は、通常、右偏光光と左偏光光を含む非偏光光であるので、指示装置20から発した指示光21は、スクリーン10を通過し、その指示光21のうちの左偏光光は位置検出装置30の前面にある左偏光板を通過して位置検出装置30で検出される。その結果、スクリーン10上に、投射装置40からの映像光5と、指示装置20からの指示光21とが投射され、それらの光が反射又は透過して位置検出装置30に到達した場合、指示装置20からの指示光21のみが検出されることになる。
前記の場合において、投射装置40に装着する右偏光板の代わりに左偏光板を用いても、偏光光と偏光板の関係が左右逆になる以外は同様となり、スクリーン10上に、投射装置40からの映像光5と、指示装置20からの指示光21とが投射され、それらの光が反射又は透過して位置検出装置30に到達した場合、指示装置20からの指示光21のみが検出されることになる。このように、投射装置40と位置検出装置30に異なる偏光フィルター(偏光板)を装着することにより、位置検出装置30には、投射装置40からの映像光5は入射せず、指示装置20からの指示光21だけが入射する。こうして、位置検出装置30は、不要な光を省いた指示装置20からの指示光21だけを検出することができる。
偏光板の構成及び動作については、既に知られたところであるので、本願では詳細な説明を省略するが、以下に概略を説明する。すなわち、右偏光板は、直線偏光光のみを通す直線偏光板と、直線偏光光を右偏光光にする1/4波長板から構成されるものである。具体的には、投射装置40から出た映像光5のうち、直線偏光光のみが直線偏光板を通過し、通過した直線偏光光は1/4波長板により右偏光光に変えられ、スクリーン10に投射される。一方、左偏光板は、右偏光光を直線偏光光に変える1/4波長板と、この直線偏光光を通過させないように透過軸が配置されている直線偏光板とから構成される。ここで、透過軸とは、直線偏光板に固有の軸であって、この軸方向と同じ方向の振動面を有する直線偏光光のみが直線偏光板を透過することができる軸である。1/4波長板に入る光には、投射装置40から出てスクリーン10で反射された右偏光光と、指示装置20からのあらゆる方向の偏光光を含む光(非偏光光)とがある。前記のスクリーン10で反射された右偏光光と、前記のあらゆる方向の偏光光を含む光中の右偏光光とは、1/4波長板により、直線偏光光Aと、直線偏光光Aを含む光Bとにそれぞれ変えられる。この直線偏光光Aの振動面と直線偏光板の透過軸とは直交するため、直線偏光光Aは、直線偏光板を通過することができない。そして、最終的に得られる光は、直線偏光光Aを含む光Bのうち、直線偏光板を通過した光である。
直線偏光板は、グラン−トムソン・プリズム、ニコル・プリズム、2色性色素材料を塗布した透明プラスチック材料等により実現することができる。1/4波長板は、水晶板、チタン酸バリウム結晶等により実現することができる。1/4波長板は、波長に応じてその厚さが決まるが、厚さを決めるための基準となる波長については、投射装置40から出力される光のうち、代表的な色の波長、出力される光の波長の上限値と下限値の平均、又は出力される光量を考慮した重み付き平均とすればよい。
また、直線偏光光を右偏光光に変えるためには、直線偏光板の透過軸と、1/4波長板の進相軸とを一定の関係になるように配置する必要がある。なお、1/4波長板には、1/4波長板に入射した直線偏光光がその偏光状態を変えないで1/4波長板を通過できる、互いに直交する2つの振動面の方向があるが、進相軸とは、この2つの方向のうち光の伝搬速度が速い方の方向と同じ方向を有する軸をいう。なお、上記においては、右偏光板と左偏光板の組み合せとしたが、本発明は、これに限られるものではなく、互いに透過軸が直交する直線偏光板を組み合わせてもよい。さらに、上記においては、1/4波長板を用いて円偏光を生成することを説明したが、他の波長板を用いて楕円偏光を生成してもよい。
また、上記においては、指示装置20の個数については言及していないが、単一の指示装置20を用いた場合であってもよいし、複数の指示装置を用いた場合であってもよい。なお、複数の指示装置20を用いる場合には、指示装置20からの光の周波数や強度をそれぞれ異なるようにしたり、指示装置20からの光の偏光状態を異なるようにしたりして、複数の指示装置20による指示位置の検出を可能にすることができる。
例えば、赤外線を発光する2つの指示装置を用いた場合、一方の指示装置Vには左偏光光のみを透過させる左偏光板を設け、他方の指示装置Wには右偏光光のみを透過させる右偏光板を設ければ、一方の指示装置Vからは左偏光光を持つ赤外光が投射され、他方の指示装置Wからは右偏光光を持つ赤外光が投射されることになる。そして、位置検出装置30の前には、右偏光光と左偏光光のうち、通過させる偏光光を選択することができる可変偏光板を設置する。なお、可変偏光板は、1/4波長板と1/2波長板と直線偏光板とから構成されるものであり、1/2波長板はTN(Twisted Nematic)液晶で構成されており、電圧が印加されていないときは入射した直線偏光光の振動面の方向を90度回転させるが、所定の電圧が印加されているときは入射した直線偏光の振動面の方向を変えないという特徴がある。
また、一方の指示装置Vからの左偏光光と他方の指示装置Wからの右偏光光とが可変偏光板に入射した場合、1/2波長板を通過後の光の振動面は、電圧印加時では、一方の指示装置Vからの光は垂直方向であるため、可変偏光板と直線偏光板を通過する。このとき、他方の指示装置Wからの光の振動面は水平方向であるため、可変偏光板も直線偏光板も通過しない。一方、電圧無印加時には逆になり、一方の指示装置Vからの光は可変偏光板を通過しないが、他方の指示装置Wからの光は可変偏光板を通過する。こうすることにより、複数の指示装置を用いた場合であっても、各指示装置からの光の偏光状態を異なるようにして対処できる。
次に、位置検出装置30について詳しく説明する。位置検出装置30は、指示装置20から発せられる指示信号(例えば指示光21)に対応した装置であって、その指示装置20によって指示されたスクリーン10上の指示位置Sを検出するための装置である。そして、指示装置20が少なくとも特定波長の指示光21を発光する装置である場合、この位置検出装置30も、少なくとも指示光21を検出する装置となるが、「少なくとも」としたのは、指示装置20が特定波長の指示光21を発する他、例えば検出開始信号用の光を発することを含んでもよいためである。こうした位置検出装置30により、特定波長からなる指示光21を検出することができ、本発明のPTVシステム1は、任意の信号処理を行うことが可能となる。
例えば指示装置20が赤外光を指示光21として発光する装置である場合、位置検出装置30を、赤外光を検出可能な受光素子を有するものとすれば、スクリーン10上に指示された赤外光の位置を識別することができる。
また、例えば、上述したように映像光5を偏光光とし、指示装置20からの指示光21を非偏光光とした場合には、図4に例示したように、受光素子の前面に偏光板を設けた位置検出装置30が用いられる。こうした位置検出装置30により、指示装置20からの指示光21と、投射装置40から投射された映像光5とを混同せずに識別することができ、指示装置20で指示された指示位置を誤りなく検出することができる。
特定波長の指示光21に対応した受光素子のうち、指示光21として赤外光を適用した場合における受光素子としては、例えばCdS等のフォトダイオードやフォトトランジスタ等の受光素子が好ましく用いられる。また、そうした受光素子を有する位置検出装置30は、特定波長の指示光21の最大値を指示位置として検出することができるカメラであることが好ましい。
フレネルレンズシート11のレンズ面13に入射し、偏向されてフレネル中心2の軸線Lの方向に向かう指示光(図10中の符号111b、112b及び図11中の符号113b,114bを参照))は、フレネル中心2の軸線L上で最大値を示すが、位置検出装置40を、特定波長の指示光21の最大値を指示位置として検出するカメラとすることにより、フレネル中心2の軸線L上に配置したカメラによって、フレネル中心2の軸線Lの方向に向かう指示光を他の光(例えば映像光)と混同することなく検出することができる。なお、特定波長の指示光21の最大値を指示位置として認識するためには、受光素子で受光した光をO/E変換する装置を備えることが望ましい。
また、指示装置20から発せられる特定波長の指示光21が赤外光である場合、図5に示すように、投射装置40とスクリーン10との間に特定波長の赤外光を遮蔽するカットフィルター43を設けることもできる。こうした構成とすることにより、投射装置40から投射される映像光5から特定波長の赤外光成分がカットされるので、カットフィルター43を通過した映像光5と、指示装置20からの指示光21とを区別することができる。その結果、位置検出装置30が検出した光の中に特定波長の赤外光成分が含まれている場合には、その赤外光の位置が指示装置20で指示された指示位置Sとなる。なお、特定波長の赤外光を遮蔽するカットフィルター43としては、例えば干渉フィルター、誘電多層膜フィルター、色ガラスフィルター等を例示することができる。
図6は、図2に示すサーキュラーフレネルレンズシート11Aをスクリーン10の構成部材として用いたときの本発明のPTVシステム1の構成を示す配置図であり、図7は、図3に示すサーキュラーフレネルレンズシート11Bをスクリーン10の構成部材として用いたときの本発明のPTVシステム1の構成を示す配置図である。本発明において、位置検出装置30は、図6及び図7に示すように、フレネル中心2の軸線L上に設けられている。位置検出装置30がフレネル中心2の軸線L上に設けられていれば、投射装置40とスクリーン10との間であっても、投射装置40とスクリーン10の反対側の筐体壁6との間であってもよいが、いずれの場合であっても投射装置40に近い位置に設けられていることが好ましく、投射装置40に隣接もしくは接触して設けられていることがより好ましい。
本発明では、位置検出装置30をフレネル中心2の軸線L上に設けるが、本発明で用いるサーキュラーフレネルレンズシート11は、画像が表示される表示領域Aの外である非表示領域Bにフレネル中心2を有すると共にフレネルレンズ12が観察者側になるように配置されている。そのため、スクリーン10から離れた場所にいる観察者Mが指示装置20を用いてそのスクリーン10上の位置座標を指示光21で指示したとき、図10及び図11に示したように、レンズ面13に入射した指示光21は偏向されてフレネル中心2の軸線方向に向かうが、非レンズ面14に入射した指示光21は殊に大きく偏向されてフレネル中心2の軸線方向には向かわないことから、位置検出装置30をフレネル中心2の軸線L上に配置すれば、フレネル中心2の軸線方向に向かう光の光量が小さい場合であっても他の光と混同することなく検出できる。なお、フレネル中心2の軸線方向に向かう光とは、例えば図10中の符号111b、112b及び図11中の符号113b,114bを指している。
フレネル中心2は、サーキュラーフレネルレンズシート11のレンズ中心であるので、投射装置40は通常このフレネル中心2の軸線上に配置される。そうすることにより、投射装置40から投射された映像光5はスクリーン10の正面方向にいる観察者側に偏向され、観察者は、スクリーン10上に映し出された画像を良好な画像として見ることができる。本発明では、そうしたフレネル中心2の軸線L上に位置検出装置30を設けているので、観察者Mから発せられる指示装置20からの指示光21のような、映像光5とは逆方向に進む光は、図10や図11に示すように、フレネル中心2の軸線L上に向かわない光(111a,112a,113a,114a)もあるが、レンズ面13で屈折する指示光21は、その強弱はあるにしろフレネル中心2の軸線上のいずれかの位置に向かう光(111b、112b、113b、114b)を含んでいる。その結果、フレネル中心2の軸線L上に位置検出装置30を配置しておけば、観察者Mから発せられる指示装置20からの指示光21を外光や迷光等の他の光と区別して検出することができる。
また、位置検出装置30を投射装置40に隣接もしくは接触して設けることが特に好ましいが、その理由としては、投射装置40が設けられた位置は投射する映像光5の発光元であり、しかもその投射装置40はフレネル中心2の軸線L上に設けられているので、映像光5とは逆方向に進む光である指示光21を検出する位置検出装置30の設置位置として、フレネル中心2の軸線L上であって投射装置40にできるだけ近い位置が最も望ましいことになる。そして、フレネル中心2の軸線L上に設けられた位置検出装置30を投射装置40にできるだけ近づければ、位置検出装置30で検出される指示光21の形状は、略円形形状がより絞られて小さくなり、光量の多い円形形状になるので好ましい。一方、フレネル中心2の軸線L上であっても投射装置40から離れていくと、位置検出装置30で検出される指示光21の形状は、略円形形状が大きくなり、ややぼけた感じの円形形状になる。ただし、これらはいずれも位置検出装置30をフレネル中心2の軸線L上に設けているので、形状の大小はあるにしろ、その円形の中心位置が最も光量が多い場合が多く、その円形の中心位置が、観察者Mから発せられる指示装置20からの指示光21が示す位置座標を表すものとなり、指示位置Sを誤りなく検出することができる。
これに対し、位置検出装置30をフレネル中心2の軸線L上に設けない場合には、位置検出装置30で検出される指示光21の形状は、円形形状にはなり難く、楕円形状のようになるので、容易にはその中心位置を判断できず、観察者Mから発せられる指示装置20からの指示光21が示す位置座標を容易には判断できないものとなる。
以上のように、本発明においては、画像が表示される表示領域外にフレネル中心2を有する構造のサーキュラーフレネルレンズシート11を用いるので、位置検出装置30をそのフレネル中心2の軸線L上に設けても、その位置検出装置30が投射装置40から投射される映像光5を遮蔽しない。その結果、投射装置40から投射された映像光5によってスクリーン10上に映し出される表示画像又は処理画像は、フレネル中心2の軸線L上に設けられた位置検出装置30に影響されることなくスクリーン上に表示される。
(投射装置)
次に、投射装置40について説明する。投射装置40は、スクリーン10の表示領域Aに画像を表示すると共に位置検出装置30により検出された指示位置Sに関わる情報をスクリーン10上に形成する装置であり、用いたサーキュラーフレネルレンズシート11のフレネル中心2の軸線上に設けられる。投射装置40としては、近年のデジタル化、高精細化、コンパクト化の要求に対応した、LCD(Liquid Crystal Display)やDLP(Digital Light Processing)等の単光源投射装置を好ましく用いることができるが、従来型の3管式CRTも用いることも可能である。なお、単光源投射装置は、小型のものが多く、フレネル中心2の軸線上に容易に設けることができるが、3管式CRTは大型であるので、通常は、その真ん中の管がフレネル中心2の軸線上になるように設けることが好ましい。
また、投射装置40は、図6(A)及び図7(A)に示すように、映像光5を直接スクリーン10に向かって投射させるものであってもよいし、図6(B)及び図7(B)に示すように、反射ミラー4で映像光5を反射させてスクリーン10に投射させるものであってもよい。いずれもの場合であっても、近年のPTVシステムの薄型化要求により、投射装置40から投射する映像光5の拡散角θはより大きくなる傾向があるので、そうした薄型化要求に応えることができる投射装置40が好ましく用いられる。
投射装置40は、制御部50が記憶する指示位置Sの軌跡を画像と同期して表示する装置であることが望ましく、又は、制御部50内のハードディスク53が記憶する位置情報を画像化してスクリーン10上の所定の位置に画像と一緒に表示する装置であることが望ましい。これにより、例えば、画像を処理する範囲を正確に把握したり、画像を背景として捉えて指定する画像を重畳して動作させたりすること等が可能となる。なお、このように、指示位置の軌跡を画像と同期して表示するためには、例えば、指示位置が手振れのため正確に指示できない場合(例えば、キーボードを映して所定のキーをクリックするような場合)では、指示位置が軌跡の面としての中心にあることを認識させる処理、又は指示位置の通過回数が最も多い位置にあることを認識させる処理が必要となる。
また、投射装置40は、位置検出装置30で検出した指示位置に関わる位置情報を記憶する記憶装置を有し、その位置情報を画像化してスクリーン10上の所定の位置に画像と一緒に表示する装置であることが望ましい。これにより、例えば特に動画像の各種処理に有効で、例えば任意の位置を動画像の動きに合わせてポイントアウトして画像表示を行ったり、動画像の中の指示位置の範囲を静止画として表示したり、あるいは、別途に指示信号を重畳することで動画像中で注視するある指定した範囲のある瞬間の映像を捉えて拡大したり若しくは静止画表示をしたり、といった画像表示を行うことができる。なお、ここでいう「ポイントアウト」とは、例えば動いているボールを指定したら、そのボールを自動追跡する意味である。
(制御システム)
次に、本発明のPTVシステム全体の制御システムについて説明する。図1に示す本発明のPTVシステム1の基本的な構成は、スクリーン10と、指示装置20でスクリーン10上に指示された指示位置Sを検出する位置検出装置30と、位置検出装置30が検出した位置信号を処理すると共に処理された位置信号を必要に応じて画像信号に変換して画像情報とし、その画像情報を本来の画像情報に加えて投射装置40に映像信号として送る制御部50と、その制御部50からの映像信号をスクリーン10上に映像光5として投射する投射装置40とを備えている。
こうしたPTVシステム1において、制御部50は、位置検出装置30と投射装置40に接続されており、位置検出装置30が検出した位置信号を受け、その位置信号を必要に応じて画像処理し、投射装置40から発する映像光に乗せてスクリーン10に表示させるものである。この制御部50の具体的態様としては、例えば、(1)位置検出装置30で検出した指示位置Sを画像情報に変換して記憶し、投射装置40により、その指示位置Sの軌跡を画像と同期して表示させるようにしてもよいし、或いは、(2)位置検出装置30で検出した指示位置Sに関わる位置情報を記憶装置で記憶した後、投射装置40により、その位置情報を画像化してスクリーン10上の所定の位置に画像と一緒に表示するようにしてもよい。このときの記憶装置としては、制御部50が備えるものであってもよいし、投射装置40が備えるものであってもよい。
図8は、制御部50のハードウエアの一例を示す構成図である。制御部50は、図8に例示したように、PTVシステム全体を制御するものであり、CPU51と、位置検出装置30が検出した指示信号を画像情報に変換する位置情報制御部31と、位置情報制御部31で変換された画像情報を画像信号に変換する画像情報制御部41と、主記憶部52と、ハードディスク部53と、CPU51/位置情報制御部31/画像情報制御部41/主記憶部52/ハードディスク部53間を繋ぐバス54とで構成されている。なお、位置情報制御部31は、図8に示すように制御部50内に含まれていてもよいし、位置検出装置30内に含まれていてもよい。同様に、画像情報制御部41も、図8に示すように制御部50内に含まれていてもよいし、投射装置40内に含まれていてもよい。なお、こうした構成は本発明のPTVシステムの一例であり、図示の構成に限定されない。
主記憶部52は、CPU51が実行する制御部50の処理プログラムの実行時の記憶部であり、さらに位置情報制御部31や画像情報制御部41の処理プログラムの実行時の記憶部としても作用する。
ハードディスク53は、位置検出装置30で検出した指示位置Sの位置情報や、その位置情報をスクリーン10上に形成する画像情報に変換した画像データを記憶するものであり、具体的には、指示装置20により指定され、位置情報制御部31により識別された位置情報、及び指示装置20の識別情報等を記憶する装置である。また、このハードディスク53には、CPU51が実行する制御部50、位置情報制御部31及び画像情報制御部41の処理プログラムが記憶されており、その記憶情報は、処理プログラムの実行時に主記憶部52に転送される。
位置情報制御部31は、CPU51からの指示を受け、位置検出装置30で検出した検出信号をA/D変換し、得られたデジタルデータを主記憶部52に送るものである。
画像情報制御部41は、CPU51から、スクリーン10上に形成する画像情報を受け、その画像情報に基づいて投射装置40に出力するものである。
位置検出装置30と投射装置40とは、同期を取って動作させてもよいし、同期を取らないで動作させてもよい。同期を取って動作させる場合は、投射装置40の垂直帰線期間に位置検出装置30で撮影することが望ましい。
制御部50は、位置情報制御部31から位置情報を受けた後、その位置情報に従った処理を実行する。例えば、複数のメニューが画面上に表示されている場合に、指示位置Sが画面上のいずれか1つのメニューを指定したときは、指示された指示位置Sのメニューが選択されたと解釈し、そのメニューを開く処理を行う。この実行結果として、開かれたメニューを表示する画像を生成するためのデータを画像情報制御部41に送る。画像情報制御部41は、このデータに従って、所定の画像信号を生成し、生成した画像信号を投射装置40に送る。送られた画像信号は、投射装置40内で映像光5に変換され、映像光5をスクリーン10に投射する。
以上説明したように、本発明のPTVシステムは、一般家庭用のテレビシステムとして、例えば、番組中の好みの部分を拡大したり、劇中の人物をあらかじめ入力してあった他の人物に変換したりするといった画像のパフォーマンスの向上や、指示をゲームの入力機能として働かせたりすることはもちろん、PC端末であるマウスを用いた位置指定手段の代わりの信号送信手段(赤外線、電磁波、特定波長の指示光等)として用いるとことが可能である。
さらに、大画面として用いる産業用においては、殊にスクリーンが大画面であるため、指示装置20からの指示光21の投射点のサイズが小さくなりすぎる可能性があり、位置検出装置30で検出する場合、解像度が不足して誤検出されるという従来考えられていたような懸念もあるが、本発明のPTVシステム1では、そうした懸念は不要であり、指示位置Sを正確に検出することができる。
また、本発明のPTVシステムでは、指示位置Sを正確に検出することができるので、例えば、プレゼンテーションシステム、電子会議システム、管制システム、監視システム、プラント制御システム、等に好ましく用いることができる。
プレゼンテーションシステムに適用する場合には、所定の画像表示を行うと共に、プレゼンター(上記における観察者Mに相当する)の指示位置Sに応じて画像処理を行うことでさまざまな機能を付加をすることとができる。より具体的には、例えば、静止画のみならず動画であっても、ある部分の画像のみを拡大・縮小したり、移動したりすることが可能となる。その結果、大画面のスクリーンから離れた位置にいるプレゼンターが指示光等で指示することにより、従来にはないプレゼンテーションを行うことができる。
電子会議システムに適用する場合には、所定の画像表示を行うと共に、司会者、議長(上記における観察者に相当する)の指示位置に応じた情報の表示をすることとができる。より具体的には、例えば、指示位置の情報のバックデータ表示をすることが可能となり、その結果、大画面のスクリーンから離れた位置にいる司会者又は議長が指示光等で指示することにより、従来にはない電子会議を行うことができる。なお、「バックデータ」とは、例えば表作成ソフトで作成した図における、元の数値データ等の関連データの意味である。
管制システムや監視システムに適用する場合には、所定の画像表示を行うと共に、管制官や監視官(上記における観察者に相当する)の指示位置に応じ、管制や監視対象に関する情報を収集することができ、その情報を基にその後の指示や管制作業を行うことができる。その結果、大画面のスクリーンから離れた位置にいる管制官が指示光等で指示することにより、従来にはない管制を行うことができる。