JP2008042061A - レーザー再生増幅器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 リング型の共振器を有するレーザー再生増幅器において、前記共振器内に少なくとも、レンズ3と、レンズ3から共振器モードビームのビームウエスト位置にレーザー媒質4とを配置し、レーザー媒質4において発生する熱レンズがレーザー媒質4の入射位置における共振器モードビーム半径に与える影響を低減するとともに、レンズ3の焦点距離と前記共振器長を所定値に設定することにより、レーザー媒質4の入射位置における共振器モードビーム半径を、レーザー媒質4が当該レーザー再生増幅器に適した利得を有する値となるようにしたことを特徴とするレーザー再生増幅器である。
【選択図】 図1
Description
しかしながら、このようなレーザー再生増幅器において、高出力パルスを平均的に得ようとすると、レーザー媒質中に発生する熱レンズ効果が、被増幅レーザー光の多数回の通過により累積的に作用するため、被増幅レーザー光のビーム半径が大きく変化し、効率の低下、さらには動作不能に陥るという問題があった。
このような問題に対処するために、特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4には、ジグザグスラブ形状の増幅器を用いること記載されている。
また、特許文献5および非特許文献1には、2本のレーザーロッドを対象配置することにより、相互に熱レンズ効果を打ち消す手段が記載されている。
また、特許文献6には、レーザー結晶の熱レンズ効果を位相共役鏡またはディフォーマブルミラーで能動的に補償することが記載されている。
さらに、特許文献7には、熱レンズ効果の補正をレンズで行うことが記載されている。
また、特許文献5および非特許文献1に記載のものは、レーザーロッドを2本必要とする上に、両者の対称性が不完全であると、打ち消すことができなくなるという問題があった。
また、特許文献6に記載のものは、位相共役鏡レーザー光が完全に同じ条件で逆方向に反射増幅される場合においてのみ有効であり、リング型共振器には適用できない。また、現在知られている位相共役鏡は限られたパワー密度領域でのみ動作するものであり、再生増幅器には適用できない。また、ディフォーマブルミラーは大型かつ複雑で高価なものであり、能動的に補償するために別途ビーム歪み量を検出する検出装置と、その歪み量に基づいてミラーの形状を決定して駆動するためのコンピュータが必要となる問題があった。
さらに、特許文献7に記載のものは、再生増幅器ではなく、レーザー媒質を4回通過するだけのマルチパス増幅器に関するものである。マルチパス増幅器では各増幅ごとに光路が異なるため、簡単なレンズによる補正が可能であるが、再生増幅器では、同じ光路を多数回通過するために単に補正用レンズを挿入しただけでは熱レンズ効果を補償することはできないという問題があった。
第1の手段は、リング型の共振器を有するレーザー再生増幅器において、前記共振器内に少なくとも、レンズと、該レンズから共振器モードビームのビームウエスト位置にレーザー媒質とを配置し、前記レーザー媒質において発生する熱レンズが前記レーザー媒質の入射位置における共振器モードビーム半径に与える影響を低減するとともに、前記レンズの焦点距離と前記共振器長を所定値に設定することにより、前記レーザー媒質の入射位置における共振器モードビーム半径を、レーザー媒質が当該レーザー再生増幅器に適した利得を有する値となるようにしたことを特徴とするレーザー再生増幅器である。
第2の手段は、共振器長Lのリング型共振器を有するレーザー波長λのレーザー再生増幅器において、前記共振器内に少なくとも、レンズと、該レンズから共振器モードビームのビームウエスト位置に前記レンズの焦点距離fよりもレーザー媒質で発生する熱レンズの焦点距離fTが長いレーザー媒質とを配置し、前記レーザー媒質の入射位置における励起レーザービームの半径を下記の数式で示される前記レーザー媒質における共振器モードビームの半径ωとなるようにし、かつ励起レーザーのパルスエネルギーによる前記レーザー媒質内の蓄積フリューエンス値が前記レーザー媒質の飽和フリューエンス値の1倍以上5倍以下としたことを特徴とするレーザー再生増幅器である。
第4の手段は、第2の手段または第3の手段において、前記レーザー媒質は、所定の温度以下に下がると熱伝導率が上昇または温度勾配による屈折率変化が低下する物質であって、前記所定の温度以下に冷却されていることを特徴とするレーザー再生増幅器である。
第5の手段は、第4の手段において、前記レーザー媒質は、チタンサファイアであって、140K以下の温度に冷却されていることを特徴とするレーザー再生増幅器である。
図1は、本発明のレーザー再生増幅器の基本構成を示す図である。
同図に示すように、4枚の反射鏡1によりリング共振器が構成される。リング共振器内には光スイッチ2が配置され、入力となるシードレーザー光Aをリング共振器内に導入するとともに、増幅後のレーザー光Bを出力としてリング共振器外に取り出す。リング共振器の特徴は、往復型増幅器と異なってレーザー光の進行方向が一方向に限られていることである。光スイッチ2は電気光学素子と偏向板で構成され、リング共振器では1個の光スイッチ2で入力と出力の動作を行い、しかも、入力ビームAと出力ビームBが完全に分離されているため、リング共振器外に別途分離装置を設ける必要がないという利点を有する。
同図に示すように、損失が低く、蓄積フリューエンスが高い方が効率が良くなる。しかしレーザー再生増幅器では利得を上げ過ぎると本来の共振器モード以外の寄生発振が発生し、急激に効率が低下する。従ってレーザー再生増幅器においては利得の最適値が存在する。
同図において、液体窒素冷却したチタンサファイアロッドからなるレーザー媒質4を2台の励起用グリーンレーザー5で両側から励起する。励起ビームの光路の関係でリング共振器を構成する反射鏡1を6枚使用しているが、原理的な構成は図1と全く同じである。光スイッチ2の動作時間が10nsであるので、共振器長は3m以上でなければならない。レーザー媒質4の熱レンズの焦点距離fTが2.2mに対して凸レンズ3の焦点距離fを1mとし、共振器長Lを3.8mとしたとき、レーザー媒質4における共振器モードビーム半径ωは0.39mmである。最大励起パワー180Wにおいては、励起パルスエネルギー18mJ、吸収係数97%、ストークス係数66.7%、ブリュースター入射の係数0.58であり、蓄積フリューエンスは1.4J/平方センチで、飽和フリューエンス0.92J/平方センチの1.6倍とした。このレーザー媒質4により0.8nJの入力レーザーパルスを10回増幅した後、出力として取り出した。
同図に示すように、180Wの励起パワーでは10kHzの繰り返しで100fs以下の極単パルスに圧縮可能なチャープドパルスが平均出力53Wで得られている。この出力はチタンサファイアレーザー再生増幅器から得られた出力としては世界最大級であり、1本のレーザーロッドとリング共振器という簡単な構成であるにも関わらず、複雑な多段増幅システムをもしのぐ出力が得られる。
2 光スイッチ
3 レンズ
4 レーザー媒質
5 励起用グリーンレーザー
A レーザー光
B レーザー光
Es 初期蓄積フリューエンスと飽和フリューエンスの比
ω レーザー媒質4における共振器モードビームの半径
f レンズ3の焦点距離
fT レーザー媒質4の熱レンズの焦点距離
L 共振器長
λ レーザー波長
π 円周率
Claims (5)
- リング型の共振器を有するレーザー再生増幅器において、前記共振器内に少なくとも、レンズと、該レンズから共振器モードビームのビームウエスト位置にレーザー媒質とを配置し、前記レーザー媒質において発生する熱レンズが前記レーザー媒質の入射位置における共振器モードビーム半径に与える影響を低減するとともに、前記レンズの焦点距離と前記共振器長を所定値に設定することにより、前記レーザー媒質の入射位置における共振器モードビーム半径を、レーザー媒質が当該レーザー再生増幅器に適した利得を有する値となるようにしたことを特徴とするレーザー再生増幅器。
- 一定の前記レーザー媒質における共振器モードビームの半径ωを実現するために、前記共振器長Lを前記熱レンズの焦点距離fTに対応して可変したことを特徴とする請求項2に記載のレーザー再生増幅器。
- 前記レーザー媒質は、所定の温度以下に下がると熱伝導率が上昇または温度勾配による屈折率変化が低下する物質であって、前記所定の温度以下に冷却されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のレーザー再生増幅器。
- 前記レーザー媒質は、チタンサファイアであって、140K以下の温度に冷却されていることを特徴とする請求項4に記載のレーザー再生増幅器。
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